説明

汚泥濃縮車

【課題】汚泥濃縮車の重心位置を可能な限り下げる。
【解決手段】配管系18を構成するタンク下部接続管32は、主にレシーバタンク12に貯留された濃縮汚泥の荷降ろし作業に用いられるものである。このタンク下部接続管32の外壁面に対し、レシーバタンク12の外壁面が密着若しくは近接するようにして、レシーバタンク12が車体フレーム35に位置決めされることで、車体に搭載された状態でのレシーバタンク12の位置を可能な限り低位置に搭載する。又、配管系18を構成するホースリール接続管36の少なくとも一部が、レシーバタンク12内を通過するようにして設置されることで、レシーバタンク12の外面を通過するようにホースリール接続管36が配置される場合に比べ、ホースリール接続管36の重量に起因する、汚泥濃縮車10の重心位置の上昇を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥濃縮車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄化槽は、その内部に生じた汚泥等の引き出し、調整及びこれらに伴う機器類の洗浄などの清掃作業を、年に1回以上(全ばっ気方式は6ヶ月に1回以上)行う必要があり、かかる清掃作業に、近年は汚泥濃縮車が用いられている。汚泥濃縮車は、内部に反応室及び汚泥室が形成されたレシーバタンクと、該レシーバタンクの内外で汚泥及び汚水の授受を行うための配管系とを備えている。そして、配管系には、汚泥分離装置、凝集液タンク、真空ポンプ等が含まれている(例えば、特許文献1、2参照。)
この汚泥濃縮車は、浄化槽内の汚泥等を引き出し、汚水と汚泥とを分離・濃縮して汚泥を回収し、汚水は張り水として浄化槽に戻すことが可能であることから、バキュームカーを利用して浄化槽内の汚泥等を引き出し、汚泥を濃縮することなくそのまま運搬する場合に比べ、浄化槽の清掃作業や汚泥等の運搬に要する労力及びコストは大きく低減されるものである。
【0003】
【特許文献1】特開平10−34196号公報
【特許文献2】特開2004−100221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、汚泥濃縮車は、当然に車両のある車両転倒角度に係る保安基準を満たすことが必要となるが、レシーバタンクや配管系の構造が自ずと複雑になってしまうことから、車体フレームに上記の各搭載機器を架装する際には、重心位置を可能な限り低い位置に設定する必要がある。
本発明は、係る課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汚泥濃縮車の重心位置を可能な限り下げ、車両転倒角度に係る保安基準を満足することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。又、各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。よって、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)浄化槽内の汚泥及び汚水を引き出し、汚水と汚泥とを分離して、汚水は張り水として浄化槽に戻し、汚泥は濃縮して回収する汚泥濃縮車であって、内部に汚泥濃縮部と汚泥貯留部とを備えるレシーバタンクと、該レシーバタンクの内外で汚泥及び汚水の授受を行うための配管系とを含み、前記レシーバタンクの下方にて車幅方向に延設され前記配管系を構成するタンク下部接続管の外壁面に対し、前記レシーバタンクの外壁面が密着若しくは近接するようにして、前記レシーバタンクが車体フレームに位置決めされている汚泥濃縮車。
【0007】
本項に記載の汚泥濃縮車において、配管系を構成するタンク下部接続管は、主にレシーバタンクに貯留された濃縮汚泥の荷降ろし作業に用いられるものであることから、その設置場所は、レシーバタンクの下方に位置し、かつ、車体フレームその他の搭載機器との干渉を回避する位置に限定される。このタンク下部接続管の外壁面に対し、レシーバタンクの外壁面が密着若しくは近接するようにして、レシーバタンクが車体フレームに位置決めされることで、車体に搭載された状態でのレシーバタンクの位置を可能な限り低位置に搭載し、汚泥濃縮車の重心位置を下げるものである。
【0008】
(2)浄化槽内の汚泥及び汚水を引き出し、汚水と汚泥とを分離して、汚水は張り水として浄化槽に戻し、汚泥は濃縮して回収する汚泥濃縮車であって、浄化槽へと挿入するホースのホースリールが外部上面に配置され、内部に汚泥濃縮部と汚泥貯留部とを備えるレシーバタンクと、該レシーバタンクの内外で汚泥及び汚水の授受を行うための配管系とを含み、該配管系を構成するホースリール接続管の少なくとも一部が、前記レシーバタンク内を通過するようにして設置されていることを特徴とする汚泥濃縮車
【0009】
本項に記載の汚泥濃縮車は、配管系を構成するホースリール接続管の少なくとも一部が、レシーバタンク内を通過するようにして設置されることで、レシーバタンクの外面を通過するように配置される場合に比べ、ホースリール接続管の重量に起因する汚泥濃縮車の重心位置の上昇を抑えるものである。
なお、レシーバタンク内におけるホースリール接続管の設置経路に関しては、レシーバタンク内にホースリール接続管を通過させることに起因する、レシーバタンクの容量減少や、レシーバタンク内部の構造物との取り合いも勘案して、適宜決定するものである。
【0010】
(3)浄化槽内の汚泥及び汚水を引き出し、汚水と汚泥とを分離して、汚水は張り水として浄化槽に戻し、汚泥は濃縮して回収する汚泥濃縮車であって、浄化槽へと挿入するホースのホースリールが外部上面に配置され、内部に汚泥濃縮部と汚泥貯留部とを備えるレシーバタンクと、該レシーバタンクの内外で汚泥及び汚水の授受を行うための配管系とを含み、前記レシーバタンクの下方にて車幅方向に延設され前記配管系を構成するタンク下部接続管の外壁面に対し、前記レシーバタンクの外壁面が密着若しくは近接するようにして、前記レシーバタンクが車体フレームに位置決めされ、なおかつ、前記配管系を構成するホースリール接続管の少なくとも一部が、前記レシーバタンク内を通過するようにして設置されている汚泥濃縮車(請求項1)。
【0011】
本項に記載の汚泥濃縮車において、配管系を構成するタンク下部接続管は、主にレシーバタンクに貯留された濃縮汚泥の荷降ろし作業に用いられるものであることから、その設置場所は、レシーバタンクの下方に位置し、かつ、車体フレームとの干渉を回避する位置に限定される。このタンク下部接続管の外壁面に対し、レシーバタンクの外壁面が密着若しくは近接するようにして、レシーバタンクが車体フレームに位置決めされることで、車体に搭載された状態でのレシーバタンクの位置を可能な限り低位置に搭載し、汚泥濃縮車の重心位置を下げる。
又、配管系を構成するホースリール接続管の少なくとも一部が、レシーバタンク内を通過するようにして設置されることで、レシーバタンクの外面を通過するように配置される場合に比べ、ホースリール接続管の重量に起因する汚泥濃縮車の重心位置の上昇を抑えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明はこのように構成したので、汚泥濃縮車の重心位置を可能な限り下げ、車両転倒角度に係る保安基準を満足することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。本説明において、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る汚泥濃縮車10は、図1〜図3に示されるように、内部に反応室14及び汚泥室16が形成されたレシーバタンク12と、レシーバタンク12の内外で汚泥及び汚水の授受を行うための配管系18(図2)とを備えている。配管系18には、汚水と汚泥とを分離する汚泥分離装置20、汚泥を凝集させる凝集液を貯留すると共に、必要に応じ反応室14へと凝集液を送る凝集液タンク22、汚水と汚泥との分離、濃縮作業に用いられる空気の供給を反応室14に対して行う真空ポンプ24、及び、浄化槽100から汚泥及び汚水を引き出し、分離した汚水を浄化槽100に戻す際に用いられる汚水ポンプ26が含まれている。
【0015】
レシーバタンク12の外部上面には、浄化槽100へと挿入するホース28のホースリール30が配置されている。又、レシーバタンクの下方には、タンク下部接続管32が車幅方向に延設されており、タンク下部接続管32の外壁面に対し、レシーバタンク12の外壁面が密着若しくは近接するようにして、レシーバタンク12が車体フレーム35(図1)に位置決めされ、固定されている。図示の例では、レシーバタンク12とタンク下部接続管32との接続部分は、矩形断面を有する連結管34によって、図3(a)に斜線で示されるように矩形の大開口が形成されることで、汚泥室16に貯留される濃縮汚泥の流動抵抗を低減し、タンク下部接続管32を介した荷降ろし作業の円滑化を図っている。
【0016】
更に、ホースリール接続管36の一部が、レシーバタンク12内を通過するようにして、設置されている。本発明の実施の形態では、ホースリール接続管36には、図3(c)に示されるようにエルボ管が用いられており、上向き開口36aは、ホースリール30に巻き取られるホース28に接続し、横向き開口36bは、反応室14へとつながる配管に接続するものである。
なお、レシーバタンク12内におけるホースリール接続管36の設置経路に関しては、レシーバタンク12内にホースリール接続管36を通過させることに起因する、レシーバタンク12の容量減少や、レシーバタンク12内部の構造物との取り合いも勘案して、適宜決定するものであり、他の形状の管を用いることも可能である。
【0017】
更に、本発明の実施の形態では、図2に示されるように、配管系18には、メインエアクリーナ38、ドレンセパレータ40、エアブリーザ42、燃焼式脱臭器44、脱臭器(エアブライダー)46、オイルセパレータ48、安全弁50、逆止弁52等が含まれ、汚水と汚泥との分離・濃縮作業に用いられる空気の供給、排出時の脱臭を確実に行うものである。なお、図2において、矢印aは空気の流れを、矢印bは汚泥の流れを、矢印cは汚水の流れを、矢印dは凝集液の流れを、矢印eはバブリングエアの流れを、各々示している。
【0018】
そして、浄化槽100の内部に生じた汚泥等の引き出し作業に際しては、ホース28を介して浄化槽の汚泥及び汚水を反応室14に送り込み、バブリングエアによって凝集液を汚泥及び汚水に混ぜた後、汚泥分離装置20に送って汚泥と汚水とに分離する。そして、汚水については再びホース28を介して浄化槽100に戻すことにより、浄化槽100の張り水として再利用される。一方、濃縮汚泥については汚泥室16に一旦貯留され、下水処理施設等へと運搬、回収される。
【0019】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態により得られる作用効果は、以下の通りである。まず、配管系18を構成するタンク下部接続管32は、主にレシーバタンク12に貯留された濃縮汚泥の荷降ろし作業に用いられるものであることから、その設置場所は、レシーバタンク12の下方に位置し、かつ、車体フレーム35との干渉を回避する位置に限定される。このタンク下部接続管32の外壁面に対し、レシーバタンク12の外壁面が密着若しくは近接するようにして、レシーバタンク12が車体フレーム35に位置決めされることで、車体に搭載された状態でのレシーバタンク12の位置を可能な限り低位置に搭載し、汚泥濃縮車10の重心位置を下げることができる。
【0020】
又、配管系18を構成するホースリール接続管36の少なくとも一部が、レシーバタンク12内を通過するようにして設置されることで、レシーバタンク12の外面を通過するようにホースリール接続管36が配置される場合に比べ、ホースリール接続管36の重量に起因する、汚泥濃縮車10の重心位置の上昇を抑えることが可能となる。
したがって、本発明の実施の形態によれば、汚泥濃縮車10の重心位置を可能な限り下げ、車両転倒角度に係る保安基準を満足することが可能となる。
【0021】
なお、本発明の実施の形態に係る配管系18の特徴部分を、汚泥濃縮車10以外の、タンク搭載型車両に採用することにより、それらの車両の重心位置を下げ、又は、車両高さを抑える事が可能となる。例えば、汚泥濃縮車10と同様に、屎尿タンクの外部上面にホースリールが配置された衛生車(バキュームカー)であれば、屎尿タンク下部接続管の外壁面に対し、屎尿タンクの外壁面が密着若しくは近接するようにして、屎尿タンクが車体フレームに位置決めされ、又は、ホースリール接続管の一部が、屎尿タンク内を通過するようにして設置されることで、上記と同様の作用効果を得ることが可能となる。
又、廃液ローリや汚泥吸引車においても、夫々のタンク下部接続管の外壁面に対し、タンクの外壁面が密着若しくは近接するようにして、タンクが車体フレームに位置決めされ、又は、タンクの上部と下部とをつなぐ管が、適宜、タンク内を通過するようにして設置されることで、上記と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る汚泥濃縮車を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は裏面図である。
【図2】図1に示される汚泥濃縮車の配管系を示す概略図である。
【図3】図1に示される汚泥濃縮車のレシーバタンクの単体図であり、(a)平面図、(b)は左側面図、(c)は(b)のA−A線断面図、(d)は裏面図である。
【符号の説明】
【0023】
10:汚泥濃縮車、12:レシーバタンク、14:反応室、16:汚泥室、18:配管系、28:ホース、30:ホースリール、32:タンク下部接続管、36:ホースリール接続管、100:浄化槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽内の汚泥及び汚水を引き出し、汚水と汚泥とを分離して、汚水は張り水として浄化槽に戻し、汚泥は濃縮して回収する汚泥濃縮車であって、
浄化槽へと挿入するホースのホースリールが外部上面に配置され、内部に汚泥濃縮部と汚泥貯留部とを備えるレシーバタンクと、該レシーバタンクの内外で汚泥及び汚水の授受を行うための配管系とを含み、
前記レシーバタンクの下方にて車幅方向に延設され前記配管系を構成するタンク下部接続管の外壁面に対し、前記レシーバタンクの外壁面が密着若しくは近接するようにして、前記レシーバタンクが車体フレームに位置決めされ、
なおかつ、前記配管系を構成するホースリール接続管の少なくとも一部が、前記レシーバタンク内を通過するようにして設置されていることを特徴とする汚泥濃縮車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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