説明

汚泥濃縮部構造

【課題】ハニカムスクリーンに含侵されていた分離水が濃縮槽の汚泥のある側に戻らないようにして汚泥濃縮効率を向上させるようにした汚泥濃縮部構造を提供する。
【解決手段】フロック化汚泥8が供給されると共に、濃縮汚泥12を排出し得るようにした濃縮槽16内にハニカムスクリーン17aが回転可能に配置された汚泥濃縮部構造であって、ハニカムスクリーン17aの裏面側には圧縮空気をハニカムスクリーン17aに吹付けるための空気ノズル24が配置され、ハニカムスクリーン17aの表面側には、空気ヘッダ24から吹付けられた圧縮空気によりハニカムスクリーン17aから排出された分離液18を受けて外部へ導くための樋25を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥濃縮部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上水、下水、工業用水等の水処理において発生する高含水汚泥を効率よく濃縮し脱水する汚泥の濃縮脱水処理装置としては、図4〜図6に示すごときものがある。
【0003】
図4において、汚泥の濃縮脱水処理装置1は、混合汚泥2(生汚泥や余剰汚泥だけの場合もある)を貯留しておく汚泥貯留槽3と、汚泥貯留槽3から混合汚泥2を他へ供給するポンプや供給管等からなる汚泥供給手段4と、凝集剤供給部5と、汚泥供給手段4から供給される混合汚泥2と凝集剤供給部5から供給される高分子凝集剤6をモータ駆動の撹拌手段7により撹拌混合し、混合汚泥2の汚泥粒子を凝集してフロック化汚泥8を生成するための凝集槽9と、凝集槽9から管路等の自然落下手段10を介して自然流下供給されたフロック化汚泥8を濾過濃縮するための汚泥濃縮部11と、汚泥濃縮部11で生成された濃縮汚泥12を自然流下供給によりロータリプレス等の脱水機13に供給する濃縮汚泥供給手段14とを備えている。15は汚泥貯留槽3に設けたモータ駆動の撹拌手段である。
【0004】
図4、図5に示すように、汚泥濃縮部11は、自然落下手段10から供給されたフロック化汚泥8を重力濾過濃縮する濃縮槽16と、濃縮槽16内のフロック化汚泥8を濾過する、円盤状の適宜な厚み(汚泥の渣が絡み巻付かず且つ必要十分な強度が得られる厚み)を有するハニカムスクリーン17a及びハニカムスクリーン17aが固設された水平駆動軸17cに連結されてハニカムスクリーン17aを低速で回転させる駆動モータ17bを備えた濾過手段17と、ハニカムスクリーン17aにより濾過生成された分離液18を貯留するよう濃縮槽16に接続された分離液貯留槽部19と、ハニカムスクリーン17aの分離液濾過方向下流側(裏面側)に圧縮空気を吹付ける圧縮空気供給手段20と、圧縮空気供給手段20からの圧縮空気の空気ノズル24とからなっている。
【0005】
図6に示すように、自然落下手段10は、濃縮槽16におけるハニカムスクリーン17aの面に対し略平行な水平方向の一方側に、ハニカムスクリーン17a下方における回転方向の上流側となるよう、略水平に接続されている。又、濃縮汚泥供給手段14は、濃縮槽16の底部に固設した下部ホッパ部26に接続されている。
【0006】
図6に拡大して示す濾過手段17のハニカムスクリーン17aは、SUS304、SUS316、Ti等の耐食性の強い金属製部材からなる直径700〜1000ミリで且つ円盤状のメタルハニカムストレーナーであり、中心の水平駆動軸17cを濃縮槽16の側板に設けた軸受に回転可能に支持されており、槽内を5〜20rpm程度のゆっくりとした速度で回転させられるようになっている。ハニカムスクリーン17aは、幅約20mmの強靱な外リングと、外リング内に幅20ミリ、厚み50ミクロン(20〜100ミクロンの任意の厚みのものが使用できる)の金属箔平板と金属箔波板が交互に積層されている。又、ハニカムスクリーン17aの空隙率は、35番メッシュ、36番メッシュ(金網)において、メタルハニカムストレーナでは83%であり、20番メッシュ以下のメタルハニカムストレーナの空隙率は90%を越えている。
【0007】
上述の濃縮脱水処理装置1においては、汚泥貯留槽3に貯留された混合汚泥2は汚泥供給手段4により凝集槽9に供給されると共に、凝集剤供給部5からは高分子凝集剤6が凝集槽9に供給される。
【0008】
凝集槽9では、撹拌手段7により混合汚泥2と高分子凝集剤6が撹拌混合され、汚泥粒子が凝集してフロック化汚泥8が生成され、生成されたフロック化汚泥8は、自然落下手段10により汚泥濃縮部11の濃縮槽16へその側方から回転方向Dへ低速回転しているハニカムスクリーン17aの前面に、供給方向が回転方向Dと略平行となるよう供給される。
【0009】
濃縮槽16に導入されたフロック化汚泥8は、回転方向Dへ低速回転するハニカムスクリーン17aにより濾過され、ハニカムスクリーン17aを表面側から裏面側へ通過した分離液18は分離液貯留槽部19へ流入する。又、ハニカムスクリーン17aに付着した汚泥は、濃縮槽16に濃縮汚泥12が溜まっている場合は、濃縮汚泥12により掻取られて濃縮槽16内に供給され、濃縮槽16に濃縮汚泥12が溜まっていない場合、或いは、濃縮汚泥12により掻取られなかった場合は、ハニカムスクリーン17aにより液中から気中へ搬送されて、空気ノズル24から吹付けられる圧縮空気により吹剥がされて除去され、濃縮槽16に落下する。
【0010】
このため、濃縮槽16の汚泥は濃縮されて濃縮汚泥12が得られ、濃縮汚泥12は濃縮槽16の下部に設けた下部ホッパ部26から濃縮汚泥供給手段14により脱水機13へ送給され脱水される。
【0011】
汚泥の濃縮脱水処理装置の先行技術文献としては、特許文献1がある。特許文献1の濃縮脱水処理装置は基本的には、図4〜図6に示す濃縮脱水処理装置と略同じである。
【特許文献1】特開2002−28699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上述の濃縮脱水処理装置1においては、ハニカムスクリーン17aの空隙率は約83%以上と高く、このため、ハニカムスクリーン17aには多量の分離液18が含侵される。その結果、ハニカムスクリーン17aに含侵されている分離液18は、空気ノズル24から吹付けられる圧縮空気により、ハニカムスクリーン17aから排出されて濃縮槽16の汚泥のある側に落下するため、濃縮脱水処理装置1の汚泥濃縮効率が低下する原因となっている。
【0013】
なお、通常の回転数の場合、圧縮空気によりハニカムスクリーン17aから排出される分離液18の量は濃縮前の汚泥量と同程度となり、濃縮前の汚泥濃度が約2倍程度に薄められている。その結果、ハニカムスクリーン17aを通過した分離液18のみが汚泥の濃縮に貢献していることになる。
【0014】
本発明は、上述の実情に鑑み、ハニカムスクリーンに含侵されていた分離水が濃縮槽の汚泥のある側に戻らないようにして汚泥濃縮効率を向上させるようにした汚泥濃縮部構造を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の汚泥濃縮部構造は、フロック化汚泥が供給されると共に液が分離されて形成された濃縮汚泥を排出し得るようにした汚泥槽内にハニカムスクリーンが回転可能に配置された汚泥濃縮部構造であって、前記ハニカムスクリーンの分離液濾過方向下流側には、圧縮空気をハニカムスクリーンに吹付けるための空気ノズルが配置され、前記ハニカムスクリーンの分離液濾過方向上流側には、前記空気ノズルから吹付けられた圧縮空気によりハニカムスクリーンから排出された分離液を受けて外部へ導くための樋が設けられているものである。
【0016】
請求項2の汚泥濃縮部構造においては、空気ノズルは、ハニカムスクリーンが回転して上方から下方へ向かう側においてハニカムスクリーンが外嵌された水平駆動軸の配置位置よりも若干上方位置に、ハニカムスクリーンの径方向へ向けて略水平に配置され、樋はハニカムスクリーンが回転して上方から下方へ向かう側の前記水平駆動軸の配置位置よりも若干下方位置に、ハニカムスクリーンの径方向外方へ向けて配置されている。
【0017】
請求項3の汚泥濃縮部構造においては、樋はハニカムスクリーンの径方向外方へ向けて下り勾配に配置されており、請求項4の汚泥濃縮部構造においては、樋のハニカムスクリーン側端部とハニカムスクリーン表面との間には、ハニカムスクリーンへ圧縮空気が吹付けられることにより剥離した汚泥が、濃縮槽内に落下するよう隙間が形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1〜4記載の汚泥濃縮部構造によれば、空気ノズルから吹付けられた圧縮空気によりハニカムスクリーンから排出された分離液は樋により受けられて外部へ排出されるため、一旦濾過された分離液が再び濃縮槽内の汚泥のある側に戻ることがなく、従って、汚泥濃縮効率が向上する、という優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例で、図中、図4〜図6に示すものと同一のものは同一の符号が付してある。而して、本図示例においては、自然落下手段10は図6の場合と同様、濃縮槽16のハニカムスクリーン17a下方における回転方向上流側側部に接続されている。
【0020】
又、濃縮槽16の自然落下手段10接続側に対し反対側の他方の側部、すなわち、濃縮槽16のハニカムスクリーン17a下方における回転方向下流側の側部には、水平駆動軸17cよりも下方に位置し、且つ、濃縮槽16内空間から濃縮汚泥12を排出し得るよう濃縮汚泥排出用開口部16cが形成されている。又、濃縮槽16における濃縮汚泥排出用開口部16cの外方には、濃縮槽16と並んでホッパ22が配設されており、ホッパ22の下端には、図4に示す脱水機13に濃縮汚泥12を送給するための濃縮汚泥供給手段14が接続されている。
【0021】
濃縮槽16のハニカムスクリーン17aよりも分離液18濾過方向下流側における底部には、フロック化汚泥8が濾過されてハニカムスクリーン17aを通過してきた分離液18を排出するための管路23が接続されている。
【0022】
ハニカムスクリーン17aの分離液18濾過方向下流側、すなわち、ハニカムスクリーン17aの裏面側には、空気ノズル24が配置されている。空気ノズル24は、図1に示すように、ハニカムスクリーン17aが回転して上方から下方へ向かう側の水平駆動軸17c配置位置よりも若干上方位置に、ハニカムスクリーン17aの径方向へ向けて水平に配置されている。
【0023】
ハニカムスクリーン17aの分離液18濾過方向上流側、すなわち、ハニカムスクリーン17aの表面側には、空気ノズル24から吹付けられた圧縮空気によりハニカムスクリーン17aの空隙部から排出された分離液18を受けるための樋25が配設されている。樋25は図1に示すように、ハニカムスクリーン17aが回転して上方から下方へ向かう側の水平駆動軸17c配置位置よりも若干下方に、ハニカムスクリーン17aの径方向へ向けて若干下り勾配となるよう配置されていると共に、樋25のハニカムスクリーン17a側端部とハニカムスクリーン17a表面との間には、図2、図3に示すように、ハニカムスクリーン17aへ空気ノズル24が吹付けられることにより剥離した汚泥が、濃縮槽16内に落下するよう隙間Gが形成されている。
【0024】
次に、上記図示例の作動を説明する。
従来の場合と同様、濃縮槽16に導入されたフロック化汚泥8は、回転方向Dへ低速回転するハニカムスクリーン17aにより濾過され、ハニカムスクリーン17aを表面側から裏面側へ通過した分離液18は管路23から外部へ排出される。
【0025】
又、ハニカムスクリーン17aに付着した汚泥は、濃縮槽16に濃縮汚泥12が溜まっている場合は、濃縮汚泥12により掻取られて濃縮槽16内に供給され、濃縮槽16に濃縮汚泥12が溜まっていない場合、或いは、濃縮汚泥12により掻取られなかった場合は、ハニカムスクリーン17aにより液中から気中へ搬送されて、空気ノズル24から吹付けられてハニカムスクリーン17aの表面側に流出する圧縮空気により吹剥がされて除去され、隙間Gから濃縮槽16に落下する。
【0026】
空気ノズル24から圧縮空気をハニカムスクリーン17aの裏面側に吹付けると、上述のようにハニカムスクリーン17aに付着していた汚泥は吹剥がされて除去されるが、ハニカムスクリーン17aの空隙部に含侵されている分離液18も、圧縮空気により排出されて樋25に落下し、樋25を通って外部へ排出され、管路23からの分離液18と合流して後工程へ送給される。ハニカムスクリーン17aから吹剥がされた汚泥は重いため、濃縮槽16の底部側へ落下するが、分離液18は軽いため吹飛ばされて樋25に流入する。
【0027】
従って、濃縮槽16の汚泥は効率良く濃縮されて濃縮汚泥12が得られ、濃縮汚泥12は濃縮槽16の濃縮汚泥排出用開口部16cからホッパ22へ排出され、ホッパ22から濃縮汚泥供給手段14を経て図4に示す脱水機13へ送給され脱水される。
【0028】
本図示例によれば、空気ノズル24から吹付けられた圧縮空気によりハニカムスクリーン17aから排出された分離液18は、樋25により受けられて外部へ排出されるため、一旦濾過された分離液18が再び濃縮槽16内の汚泥のある側に戻ることがなく、従って、汚泥濃縮効率が向上する。
【0029】
なお、本発明の汚泥濃縮部構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の汚泥濃縮部構造の実施の形態の一例を示す側断面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】図1のIII−III方向矢視図である。
【図4】一般的な濃縮脱水処理装置のブロック図である。
【図5】図4のV−V方向矢視図である。
【図6】図4、図5に示す濃縮脱水処理装置に用いられる汚泥濃縮部の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
8 フロック化汚泥
12 濃縮汚泥
16 濃縮槽
17a ハニカムスクリーン
18 分離液
24 空気ノズル
25 樋
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロック化汚泥が供給されると共に液が分離されて形成された濃縮汚泥を排出し得るようにした汚泥槽内にハニカムスクリーンが回転可能に配置された汚泥濃縮部構造であって、前記ハニカムスクリーンの分離液濾過方向下流側には、圧縮空気をハニカムスクリーンに吹付けるための空気ノズルが配置され、前記ハニカムスクリーンの分離液濾過方向上流側には、前記空気ノズルから吹付けられた圧縮空気によりハニカムスクリーンから排出された分離液を受けて外部へ導くための樋が設けられていることを特徴とする汚泥濃縮部構造。
【請求項2】
空気ノズルは、ハニカムスクリーンが回転して上方から下方へ向かう側においてハニカムスクリーンが外嵌された水平駆動軸の配置位置よりも若干上方位置に、ハニカムスクリーンの径方向へ向けて略水平に配置され、樋はハニカムスクリーンが回転して上方から下方へ向かう側の前記水平駆動軸の配置位置よりも若干下方位置に、ハニカムスクリーンの径方向外方へ向けて配置されている請求項1記載の汚泥濃縮部構造。
【請求項3】
樋はハニカムスクリーンの径方向外方へ向けて下り勾配に配置されている請求項1又は2記載の汚泥濃縮部構造。
【請求項4】
樋のハニカムスクリーン側端部とハニカムスクリーン表面との間には、ハニカムスクリーンへ圧縮空気が吹付けられることにより剥離した汚泥が、濃縮槽内に落下するよう隙間が形成されている請求項1、2又は3記載の汚泥濃縮部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−21136(P2006−21136A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201841(P2004−201841)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【Fターム(参考)】