説明

汚泥脱水機

【課題】脱水対象汚泥に作用するろ過圧力を有効に利用し、スクリーンからの固形物の漏出を抑制しながら、汚泥供給部での脱水を促進し、ろ室上部とろ室下部とでの脱水状態のアンバランスを解消し、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる汚泥脱水機を提供する。
【解決手段】スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根を形成し、スクリュー羽根の周囲にスクリーン52を配置してスクリーン内にろ室を形成するものであって、スクリーン52はろ室上部に対応するスクリーン上部領域の開孔率がろ室下部に対応するスクリーン下部領域の開孔率よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥脱水機に関し、下水汚泥や工業廃水汚泥等の有機性汚泥を脱水する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の汚泥脱水機、たとえばスクリュープレス型脱水機は、本体ケーシングの外周部がスクリーンをなし、本体ケーシングを軸心方向に挿通してスクリュー軸を配置し、スクリュー軸にスクリュー羽根を形成している。スクリュー羽根は汚泥排出側ほどピッチが狭くなる形状をなし、あるいはスクリュー軸の軸径が汚泥排出側ほど太くなる形状をなす。
【0003】
本体ケーシングの汚泥排出側には開口に対向して背圧板を配置しており、背圧板はシリンダー装置によって開口に向けて出退自在であり、開口に向けて作用させる圧力を調整することにより脱水力(圧搾力)を制御する。
【0004】
本体ケーシングに投入した脱水対象汚泥は、スクリーンでろ過されながらスクリュー軸およびスクリュー羽根の回転によって汚泥排出側へ搬送される。この際に、スクリュー羽根のピッチが汚泥排出側ほど狭くなり、あるいはスクリュー軸の軸径が汚泥排出側ほど太くなることで、本体ケーシングにおけるスクリュー羽根の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行く。汚泥はろ室容積の減少による圧密力および背圧板による背圧の作用により脱水され、汚泥排出側の開口から本体ケーシングの外部へ排出される。
【0005】
ここで、以下の説明においては、スクリーン内での汚泥供給側のゾーンに必要な脱水力を「ろ過圧力」と定義し、「ろ過圧力」=「基準水頭圧」+「外部圧力」と定義する。「基準水頭圧」とは、外部ケーシング高さ(スクリーン径)など構造的に決定されるろ過圧力であり、「外部圧力」とは汚泥投入ホッパの水位など、運転上、調整可能なろ過圧力を指す。外部圧力は、汚泥供給側では汚泥供給圧が支配的となり、汚泥排出側では背圧が支配的となる。
【0006】
ところで、スクリーンの汚泥供給部付近でのろ室上部内の汚泥は、その汚泥濃度(固形物濃度)が低く、自由水中に凝集フロックが漂っているような状態である。一方、ろ室下部内の汚泥は、脱水作用を受けてろ室上部よりも汚泥濃度(固形物濃度)が高く、単位体積当たりに多くの凝集フロックが密集して存在する状態であり、凝集フロック間にわずかな自由水が存在する状態である。
【0007】
この自由水は液体で圧縮性が小さく、高い圧力を加えてもそれ自体が変性することはない。一方、凝集フロックは汚泥に凝集剤を加えて形成した半固形状の塊であり、その内部に内包水を有している。内包水を多く保持した状態の凝集フロックは軟弱で、高い圧力を加えるとそれ自体が崩壊(フロックの解体)する特性を持つが、一旦内部に保持している内包水を排出し圧縮された凝集フロックは、その強度を高め、比較的高い圧力にも耐えられるようになる特性を持つ。
【0008】
スクリュープレス型脱水機のスクリーン内部において、脱水工程の前半を担うろ過ゾーンでは、汚泥中の液相をなす自由水に効率良く「ろ過圧力」を加えてスクリーンを透過させて外部に排出して汚泥をろ過することが脱水効率を高めるうえで重要である。
【0009】
一方、スクリーン内部において、脱水工程の後半を担う脱水ゾーンでは、汚泥中の凝集フロックを含む固相に対し、スクリューの回転によって生じる圧密力を徐々に高めながら内包水の排出を促進させ、機械的に圧搾してゆくことが重要である。
【0010】
このため、汚泥供給側と汚泥排出側とでスクリーンの孔径や目幅を変化させる場合がある。たとえば、汚泥供給側での孔径をφ1.2mm程度に大きく設定し、汚泥排出側でφ0.5mm程度に小さく設定する。あるいは、孔径を一定として汚泥供給側での開孔率を大きく設定し、汚泥排出側での開孔率を小さく設定する。
【0011】
このような構成としては、たとえば特許文献1に記載するものがある。これは、スクリュープレスの外胴がスクリューの軸心方向に沿って複数のユニットに分割してなり、各ユニットがスクリューの周囲に円筒状に配置するろ材を有し、ろ材がパンチングメタルやウェッジワイヤ等からなり、汚泥投入側に配置するユニットと汚泥排出側に配置するユニットとで目幅を変えるものである。
【0012】
また、特許文献2に記載するものは、半円筒状の外筒にスクリーンを設け、一対の外筒を合わせて外筒ユニットとし、外筒のスクリーンの孔径が汚泥供給側から汚泥排出側に行くほどに細孔となるものである。
【特許文献1】特開2003−33896号公報
【特許文献2】特開2002−346794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述した従来の汚泥脱水機において、一定の汚泥供給圧で運転する場合にあってスクリーン径が大きい大型機種では、スクリーン内のろ室上部とろ室下部とで水頭圧差に起因してろ過圧力に差異が生じる。
【0014】
ろ室上部ではろ過圧力が低いので、排出するろ液は清澄で、ろ水量が少なくなる。ろ室下部ではろ過圧力が高いので、排出するろ液のろ水量は多くなるが、固形物漏出量も多くなり、この結果として、ろ室内の上部領域と下部領域とでの脱水状態にアンバランスが生じる。
【0015】
このため、汚泥脱水機への汚泥供給圧は、ろ室下部における固形物漏出量が過剰とならない値に設定せざるを得ない。ろ室上部はろ過圧力に余裕がある運転となり、脱水効率が悪化してしまう。
【0016】
本発明は上記した課題を解決するものであり、脱水対象汚泥に作用するろ過圧力を有効に利用し、スクリーンからの固形物の漏出を抑制しながら、汚泥供給部での脱水を促進し、ろ室上部とろ室下部とでの脱水状態のアンバランスを解消し、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる汚泥脱水機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の汚泥脱水機は、スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根を形成し、スクリュー羽根の周囲にスクリーンを配置してスクリーン内にろ室を形成する汚泥脱水機であって、前記スクリーンはろ室上部に対応するスクリーン上部領域の開孔率がろ室下部に対応するスクリーン下部領域の開孔率よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
本発明の汚泥脱水機は、スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根を形成し、スクリュー羽根の周囲にスクリーンを配置してスクリーン内にろ室を形成する汚泥脱水機であって、前記スクリーンはろ室上部に対応するスクリーン上部領域に形成した孔がろ室下部に対応するスクリーン下部領域に形成した孔よりも大きく開口し、かつろ室上部に対応するスクリーン上部領域の開孔率とろ室下部に対応するスクリーン下部領域の開孔率とが実質的に等しいことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の汚泥脱水機において、スクリーンは汚泥供給側領域でのみスクリーン上部領域の開孔率がスクリーン下部領域の開孔率よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明の汚泥脱水機において、スクリーンは汚泥供給側領域でのみスクリーン上部領域の孔がスクリーン下部領域の孔よりも大きく開口することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の汚泥脱水機において、複数のスクリュー軸を有し、各スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根を形成し、全スクリュー羽根を含むスクリーンを配置してスクリーン内にろ室を形成したことを特徴とする。
【0021】
上記した構成により、スクリーン内に形成するろ室においてろ過圧力が脱水対象汚泥に作用する。しかしながら、スクリーン内のろ室上部では、ろ室下部よりも相対的に基準水頭圧が小さくなってろ過圧力も低くなる。
【0022】
そのために、従来ではろ室上部内の自由水の排出効率が悪く、上下ろ室間での脱水状態のアンバランスを生じてしまう。汚泥供給側のろ過ゾーンで自由水が十分に排出されずに、フロックが軟弱な状態であるろ室上部内の汚泥を汚泥排出側の脱水ゾーンで機械的に強く圧搾することでフロックの崩壊を招き、結果的に脱水機全体としての効率も低くなり、排出されるケーキ含水率も高くなる。
【0023】
ところで、汚泥供給部付近のろ室上部内の汚泥は、その汚泥濃度(固形物濃度)が低く、自由水中に凝集フロックが漂っているような状態である。一方、ろ室下部内の汚泥は、脱水作用を受けてろ室上部よりも汚泥濃度(固形物濃度)が高く、単位体積当たりに多くの凝集フロックが密集して存在する状態で、凝集フロック間にわずかな自由水が存在する状態である。
【0024】
本発明は上述した汚泥供給部付近おけるろ室上部内の汚泥とろ室下部内の汚泥とがその性状において相違することに着目し、ろ室上部に対応するスクリーン上部領域の開孔率をろ室下部に対応するスクリーン下部領域の開孔率よりも大きく設定するものである。あるいは同開孔率でスクリーン上部領域の孔径をスクリーン下部領域の孔径よりも大きく設定するものである。
【0025】
この結果、ろ室上部ではろ室下部よりも相対的に小さいろ過圧力の下で固形物の漏出を抑制しつつ、開孔率あるいは孔径が相対的に大きいスクリーン上部領域を通して容易にろ液を排出することができる。さらに、ろ室下部ではろ室上部よりも相対的に大きいろ過圧力の下でろ液の排出を十分に行いつつ、開孔率あるいは孔径が相対的に小さいスクリーン下部領域を通すことで固形物の漏出を抑制できる。
【0026】
よって、スクリーンから固形物が漏出することを抑制しながら、ろ室の汚泥供給部側での脱水を促進し、かつろ室の上下位置における脱水状態のアンバランスを解消し、その結果、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる。
【0027】
スクリーンの汚泥排出側では、ろ室内に高濃度の汚泥が充満し、ろ過圧力としては背圧が支配的となり、ろ室内の上下位置に起因する水頭圧差による影響は小さくなる。
このため、スクリーンは汚泥供給側領域でのみスクリーン上部領域の開孔率がスクリーン下部領域の開孔率よりも大きいか、あるいは実質的に同開孔率でスクリーン上部領域の孔径がスクリーン下部領域の孔径よりも大きい設定とすることにより、汚泥排出側において固形物の漏出を抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によれば、ろ室上部とろ室下部とにおいて性状が異なる汚泥供給部付近の汚泥に対し、ろ室上部に対応するスクリーン上部領域の開孔率をろ室下部に対応するスクリーン下部領域の開孔率よりも大きく設定するか、あるいは同開孔率でスクリーン上部領域の孔径をスクリーン下部領域の孔径よりも大きく設定することにより、固形物の漏出を抑制しつつ、ろ室の上下位置における脱水状態のアンバランスを解消して脱水効率を向上させることができる。
【0029】
また、汚泥脱水機において、複数のスクリュー軸を有する場合、例えばスクリュー軸を上下に配置した二軸型スクリュープレスの場合には、単軸の場合と比較してスクリーン最上部と最下部との間の距離が長くなるために、基準水頭圧に差が生じ易い傾向がある。このため、上下ろ室内のアンバランス解消効果と含水率低減効果が一層高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、本実施の形態に係るスクリュープレス型脱水機の基本的な構成は公知の技術によるものであり、詳細な説明を省略するが、概略的に以下のものである。
【0031】
汚泥脱水機としてのスクリュープレス型脱水機は、本体51によりスクリーン52を支持しており、スクリーン52の内部には軸心方向に挿通してスクリュー軸(図示省略)およびスクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根(図示省略)を形成し、本体51の汚泥排出側にはスクリーン52の開口に対向して背圧板を配置している。
【0032】
本実施の形態において、スクリーン52は軸心方向で複数に分割し、かつ上下に分割した複数のセグメントからなり、汚泥供給側領域のろ室上部に対応するスクリーン上部領域のスクリーン(A1)52Aと、ろ室下部に対応するスクリーン下部領域のスクリーン(A2)52Bと、中央領域のろ室上部に対応するスクリーン上部領域のスクリーン(B1)52Cと、ろ室下部に対応するスクリーン下部領域のスクリーン(B2)52Dと、汚泥排出側領域のろ室上部に対応するスクリーン上部領域のスクリーン(C1)52Eと、ろ室下部に対応するスクリーン下部領域のスクリーン(C2)52Fとからなる。スクリーン52は軸心方向の分割数を任意に設定できる。
【0033】
本発明においてスクリーン52には、パンチングメタルやウェッジワイヤ等の種々の形態のろ材を適用可能であるが、本実施の形態ではパンチングメタルを適用した場合について説明する。また、本発明においてスクリーン52のろ過性の調整は、孔の大きさ、開孔率を要素として実現可能であり、孔はその形状が円形に限定されるものではないが、本実施の形態では孔の形状が円形であり、孔の大きさを孔径として説明する。
【0034】
パンチングメタルにおける開孔率は孔径および孔数(ピッチ)を要素として調整可能である。すなわち、図6に示すように、ろ過性が高度であるろ材Hと、ろ過性が中程度であるろ材Mと、ろ過性が低度であるろ材Lは、孔径を固定し、ピッチ(孔数)を変化させることで実現でき、一定孔径であればピッチを狭くして孔数を増やすほどに開孔率が大きくなる。あるいはピッチ(孔数)を固定し、孔径を変化させることでろ過性の調整を実現でき、一定孔数であれば孔径が大きくなるほどに開孔率が大きくなる。さらにはピッチ(孔数)および孔径を変化させることでろ過性の調整を実現でき、ピッチを狭くして孔数を増やすとともに孔径が大きくなるほどに開孔率が大きくなり、開孔率に伴ってろ過性が変化する。本発明において孔径の適切な範囲は、スクリーン上部領域では1.1mmから2.0mmであり、より好適には1.2mmから1.5mmであり、スクリーン下部領域では1.0mmから1.5mmであり、より好適には1.1mmから1.3mmである。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態においてスクリーン52は各セグメントの開孔率が汚泥排出側に近いほどに小さくなり、汚泥供給側領域のセグメントにおいてスクリーン上部領域をなすスクリーン(A1)52Aおよび中間領域のセグメントにおいてスクリーン上部領域をなすスクリーン(B1)52Cが、スクリーン下部領域をなすスクリーン(A2)52Bおよびスクリーン(B2)52Dに比べて開孔率を大きく設定している。
【0036】
例えば、孔径を上下で等しくした例を示すと、スクリーン(A1)52Aは孔径φ1.5mm×ピッチP2.25mm、開口率40.3%であり、スクリーン(B1)52Cは孔径φ1.0mm×ピッチP1.5mm、開口率40.3%であり、スクリーン(C1)52Eは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(A2)52Bは孔径φ1.5mm×ピッチP3.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(B2)52Dは孔径φ1.0mm×ピッチP2.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(C2)52Fは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%である。
【0037】
あるいは、図2に示すように、下部領域の孔径を小さくした例では、スクリーン(A1)52Aは孔径φ1.0mm×ピッチP1.5mm、開口率40.3%であり、スクリーン(B1)52Cは孔径φ0.75mm×ピッチP1.19mm、開口率36%であり、スクリーン(C1)52Eは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(A2)52Bは孔径φ2.0mm×ピッチP3.5mm、開口率29.6%であり、スクリーン(B2)52Dは孔径φ1.2mm×ピッチP2.25mm、開口率25.8%であり、スクリーン(C2)52Fは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%である。
【0038】
上述したように、本実施の形態では開孔率を要素としてスクリーン52のろ過性を調整する。しかしながら、本発明におけるスクリーン52のろ過性の調整は、開孔率を実質的に等しくする条件下でスクリーン上部領域の孔径をスクリーン下部領域の孔径よりも大きく設定することでも実現可能である。
【0039】
例えば、図3に示すように、スクリーン(A1)52Aは孔径φ2.0mm×ピッチP3.0mm、開口率40.3%であり、スクリーン(B1)52Cは孔径φ1.0mm×ピッチP1.5mm、開口率40.3%であり、スクリーン(C1)52Eは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(A2)52Bは孔径φ1.5mm×ピッチP2.25mm、開口率40.3%であり、スクリーン(B2)52Dは孔径φ1.0mm×ピッチP1.5mm、開口率40.3%であり、スクリーン(C2)52Fは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%である。
【0040】
また、本発明におけるスクリーン52のろ過性の調整は、全てのセグメントにおいてスクリーン上部領域の開孔率をスクリーン下部領域の開孔率よりも大きく設定することでも実現でき、全てのセグメントにおいて開孔率を等しくする条件下でスクリーン上部領域の孔径をスクリーン下部領域の孔径よりも大きく設定することでも実現可能である。
【0041】
ところで、実際の市販品として存在するパンチングメタルの種類は、その孔径およびピッチが限られている。例えば、株式会社奥谷金網製作所の製品カタログに見られるパンチングメタルの種類では、その一群のものとして以下のものがある。
1.孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%
2.孔径φ0.8mm×ピッチP1.5mm、開口率25.8%
3.孔径φ1.0mm×ピッチP2.0mm、開口率22.7%
4.孔径φ1.5mm×ピッチP3.0mm、開口率22.7%
5.孔径φ2.0mm×ピッチP3.0mm、開口率40.3%
6.孔径φ2.0mm×ピッチP3.5mm、開口率29.6%
7.孔径φ2.0mm×ピッチP4.0mm、開口率22.7%
このため、上下の開孔率を実質的に等しくする条件下でスクリーン上部領域の孔径をスクリーン下部領域の孔径よりも大きく設定する場合にあって、上述した既存のパンチングメタルの製品群から選び出すパンチングメタルを用いて本発明を実現する場合には、厳密に言えば開口率が完全な同一にならず、上部領域より下部領域の開口率が若干大きくなる場合がある。しかしながら、これは既存のパンチングメタルの市販品を使用する場合に、その制約上生じるものであり、±5%程度であればスクリーン濾過性能からみれば誤差の範囲と言えるので、本発明においては実質的に等しい開孔率として扱う。
【0042】
例えば、図4に示すように、スクリーン(A1)52Aは孔径φ1.5mm×ピッチP3.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(B1)52Cは孔径φ1.0mm×ピッチP2.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(C1)52Eは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%であり、スクリーン(A2)52Bは孔径φ1.2mm×ピッチP2.25mm、開口率25.8%であり、スクリーン(B2)52Dは孔径φ0.8mm×ピッチP1.5mm、開口率25.8%であり、スクリーン(C2)52Fは孔径φ0.5mm×ピッチP1.0mm、開口率22.7%とすることができる。
【0043】
また、本発明におけるスクリュープレス型脱水機は、図5に示すように、複数のスクリュー軸101を有し、各スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根102を形成し、全スクリュー羽根102を含むスクリーン52を配置してスクリーン内にろ室を形成するものにも適用可能である。
【0044】
上記した構成により、スクリーン52の内部に投入した脱水対象汚泥は、スクリーン52でろ過されながらスクリュー軸およびスクリュー羽根の回転によって汚泥排出側へ搬送される。この際に、スクリュー羽根のピッチが汚泥排出側ほど狭くなり、あるいはスクリュー軸の軸径が汚泥排出側ほど太くなることで、スクリュー羽根の1ピッチ当たりのろ室容積が減少して行く。汚泥はろ室容積の減少による圧密力および背圧板による背圧の作用により脱水され、汚泥排出側の開口からスクリーン52の外部へ排出される。
【0045】
前述したように、ろ過圧力はスクリーン内での汚泥供給側のゾーンに必要な脱水力であり、ろ過圧力は基準水頭圧と外部圧力からなる。基準水頭圧は外部ケーシング高さ(スクリーン径)など構造的に決定されるろ過圧力であり、外部圧力は汚泥投入ホッパの水位など、運転上、調整可能なろ過圧力である。
【0046】
しかしながら、スクリーン内のろ室上部では、ろ室下部よりも相対的に基準水頭圧が小さくなってろ過圧力も低くなる。
そのために、従来ではろ室上部内の自由水の排出効率が悪く、上下ろ室間での脱水状態のアンバランスを生じてしまう。汚泥供給側のろ過ゾーンで自由水が十分に排出されずに、フロックが軟弱な状態であるろ室上部内の汚泥を汚泥排出側の脱水ゾーンで機械的に圧搾することでフロックの崩壊を招き、結果的に脱水機全体としての効率も低くなり、排出されるケーキ含水率も高くなる。
【0047】
ところで、スクリーン52の内部のろ室において、汚泥投入口に近い汚泥供給側領域のろ室上部内の汚泥は、その汚泥濃度(固形物濃度)が低く、図7(a)に示すように、自由水Wの中で凝集フロックFが漂っているような状態である。一方、ろ室下部内の汚泥は、脱水作用を受けてろ室上部よりも汚泥濃度(固形物濃度)が高く、単位体積当たりに多くの凝集フロックが密集して存在する状態で、図7(b)に示すように、凝集フロックFの間にわずかな自由水Wが存在する状態である。凝集フロックFは汚泥に凝集剤を加えて形成した半固形状の塊であり、その内部に内包水W1を有している。内包水W1を多く保持した状態の凝集フロックFは軟弱であり、内包水W1を排出して圧縮した凝集フロックFは高い圧力にも耐える特性を持つ。
【0048】
本発明は上述した汚泥供給部付近おけるろ室上部内の汚泥とろ室下部内の汚泥とがその性状において相違することに着目したものであり、ろ室上部に対応するスクリーン上部領域をなすスクリーン(A1)52Aの開孔率を、ろ室上部に対応するスクリーン上部領域をなすスクリーン(A2)52Bの開孔率よりも大きく設定するものであり、あるいは実質的に同開孔率でスクリーン上部領域の孔径がスクリーン下部領域の孔径よりも大きい設定とするものである。
【0049】
この結果、ろ室上部ではろ室下部よりも相対的に小さいろ過圧力の下で固形物の漏出を抑制しつつ、開孔率あるいは孔径が相対的に大きいスクリーン上部領域を通して容易にろ液を排出することができる。さらに、ろ室下部ではろ室上部よりも相対的に大きいろ過圧力の下でろ液の排出を十分に行いつつ、開孔率あるいは孔径が相対的に小さいスクリーン下部領域を通すことで固形物の漏出を抑制できる。
【0050】
よって、スクリーン52から固形物が漏出することを抑制しながら、ろ室の汚泥供給部側での脱水を促進し、かつろ室の上下位置における脱水状態のアンバランスを解消し、その結果、脱水機全体の脱水効率を向上させることができる。
【0051】
スクリーン52の汚泥排出側では、ろ室内に高濃度の汚泥が充満し、ろ過圧力としては背圧が支配的となり、ろ室内の上下位置に起因する水頭圧差による影響は小さくなる。
このため、スクリーン52は汚泥供給側領域でのみスクリーン上部領域の開孔率がスクリーン下部領域の開孔率よりも大きいか、あるいは実質的に同開孔率でスクリーン上部領域の孔径がスクリーン下部領域の孔径よりも大きい設定とすることにより、汚泥排出側において固形物の漏出を抑制できる。
【0052】
また、複数のスクリュー軸を有する場合、図5および図6に示すように、スクリュー軸101を上下に配置した二軸型スクリュープレスの場合には、単軸の場合と比較してスクリーン最上部と最下部との間の距離が長くなるために、基準水頭圧に差が生じ易い傾向がある。このため、上下ろ室内のアンバランス解消効果と含水率低減効果が一層高いものとなる。この場合、上部領域と下部領域の境界は、必ずしも上下を2等分する位置でなくてもよい。
【0053】
以下に、本発明の作用効果を従来の構成との比較において説明する。先に図6に示した、ろ過性が高度であるろ材Hと、ろ過性が中程度であるろ材Mと、ろ過性が低度であるろ材Lのそれぞれをろ材とする。たとえば、ろ材Hは開孔率40%に相当し、ろ材Mは開孔率25%に相当し、ろ材Lは開孔率15%に相当するものとして説明する。
1.従来
従来の構成であるスクリーン52のスクリーン上部領域とスクリーン下部領域とに同じろ材を適用した場合における時間あたりろ水量を図9(a)に示し、時間あたり固形物漏出量を図9(b)に示す。
【0054】
スクリーンのろ過面に作用するろ過圧力は外部圧力と基準水頭圧であり、ろ室の最上部においてろ材に作用するろ過圧力と、ろ室の最下部においてろ材に作用するろ過圧力とは標準水頭圧の分だけ異なる。すなわち、最下部のろ過圧力Pbは最上部のろ過圧力PtよりΔPだけ高くなる。
【0055】
このため、図9(b)に示すように、時間あたり固形物漏出量を要求レベルS’以下に維持する場合に、ろ材Hは最下部のろ過圧力Pbに対して固形物漏出量が要求レベルS’を超えることになり、ろ材Lは最下部のろ過圧力Pbおよび最上部のろ過圧力Ptに対して固形物漏出量の要求レベルS’を満たすが、その固形物漏出量は抑制し過ぎて非効率的である。ろ材Mは最下部のろ過圧力Pbおよび最上部のろ過圧力Ptに対して固形物漏出量がそれぞれSbm、Stmとなって要求レベルS’を満たす。しかしながら、図9(a)に示すように、時間あたりろ水量を要求レベルW’以上に維持する場合に、最下部のろ過圧力Pbに対して時間あたりろ水量がWbmとなって要求レベルW’を満たすが、最上部のろ過圧力Ptに対して時間あたりろ水量がWtmとなって要求レベルW’を満たさない。
【0056】
このように、スクリーン52のスクリーン上部領域とスクリーン下部領域とが同じろ材からなる場合には、時間あたりろ水量と時間あたり固形物漏出量がともに要求レベルを満たすことが困難となり、ろ室の上下位置においてろ水量に大きな差異を生じるとともに、ろ室上部でのろ過性が不十分となり、結果的として排出される脱水ケーキ含水率が高く、アンバランスを生じてしまう。
2.本発明
本発明の構成であるスクリーン52のスクリーン上部領域にろ材Hを適用し、スクリーン下部領域にろ材Mを適用した場合における時間あたりろ水量を図8(a)に示し、時間あたり固形物漏出量を図8(b)に示す。
【0057】
図8(b)に示すように、時間あたり固形物漏出量を要求レベルS’以下に維持する場合に、ろ材Hは最上部のろ過圧力Ptに対して固形物漏出量がSthとなって要求レベルS’を満たし、ろ材Mは最下部のろ過圧力Pbに対して固形物漏出量がSbmとなって要求レベルS’を満たす。
【0058】
図8(a)に示すように、時間あたりろ水量を要求レベルW’以上に維持する場合に、ろ材Hは最上部のろ過圧力Ptに対して時間あたりろ水量がWthとなって要求レベルW’を満たし、ろ材Mは最下部のろ過圧力Pbに対して時間あたりろ水量がWbmとなって要求レベルW’を満たす。
【0059】
このように、スクリーン52のスクリーン上部領域とスクリーン下部領域とが異なる開孔率のろ材からなり、スクリーン上部領域の開孔率が高い場合には、時間あたりろ水量と時間あたり固形物漏出量がともに要求レベルを満たし、ろ室上部でのろ過性が十分となり、ろ室の上下位置においてろ水量が均一化し、含水率のアンバランスが解消し、結果的として排出される脱水ケーキ含水率が低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態における汚泥脱水機を示す模式図
【図2】同実施の形態における汚泥脱水機の他の構成を示す模式図
【図3】同実施の形態における汚泥脱水機の他の構成を示す模式図
【図4】同実施の形態における汚泥脱水機の他の構成を示す模式図
【図5】本発明の他の実施の形態における汚泥脱水機を示し、(a)は正面図、(b)は側面図
【図6】ろ材の構成を示す図表
【図7】脱水対象汚泥の性状を示す模式図
【図8】(a)は本発明の構成におけるろ過圧力に対する時間あたりろ水量の変化を示すグラフ図、(b)は本発明の構成におけるろ過圧力に対する時間あたり固形物漏出量の変化を示すグラフ図
【図9】(a)は従来の構成におけるろ過圧力に対する時間あたりろ水量の変化を示すグラフ図、(b)は従来の構成におけるろ過圧力に対する時間あたり固形物漏出量の変化を示すグラフ図
【符号の説明】
【0061】
51 本体
52 スクリーン
52A スクリーンA1
52B スクリーンA2
52C スクリーンB1
52D スクリーンB2
52E スクリーンC1
52F スクリーンC2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根を形成し、スクリュー羽根の周囲にスクリーンを配置してスクリーン内にろ室を形成する汚泥脱水機であって、前記スクリーンはろ室上部に対応するスクリーン上部領域の開孔率がろ室下部に対応するスクリーン下部領域の開孔率よりも大きいことを特徴とする汚泥脱水機。
【請求項2】
スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根を形成し、スクリュー羽根の周囲にスクリーンを配置してスクリーン内にろ室を形成する汚泥脱水機であって、前記スクリーンはろ室上部に対応するスクリーン上部領域に形成した孔がろ室下部に対応するスクリーン下部領域に形成した孔よりも大きく開口し、かつろ室上部に対応するスクリーン上部領域の開孔率とろ室下部に対応するスクリーン下部領域の開孔率とが実質的に等しいことを特徴とする汚泥脱水機。
【請求項3】
スクリーンは汚泥供給側領域でのみスクリーン上部領域の開孔率がスクリーン下部領域の開孔率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の汚泥脱水機。
【請求項4】
スクリーンは汚泥供給側領域でのみスクリーン上部領域の孔がスクリーン下部領域の孔よりも大きく開口することを特徴とする請求項2に記載の汚泥脱水機。
【請求項5】
複数のスクリュー軸を有し、各スクリュー軸の軸心廻りにスクリュー羽根を形成し、全スクリュー羽根を含むスクリーンを配置してスクリーン内にろ室を形成したことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の汚泥脱水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−137114(P2010−137114A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312782(P2008−312782)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】