説明

沈埋函の製作方法

【課題】 高い安全性、高い作業効率、高品質を確保しつつ短期間で沈埋函の鋼殻を製作可能な沈埋函の製作方法を提供する。
【解決手段】 上床版の複数の小鋼殻ブロック(22a,22b)を天地逆置きし、該天地逆置きした上床版の各小鋼殻ブロックの上面にそれぞれ対応する側壁の小鋼殻ブロック(32)及び中間壁の小鋼殻ブロック(42,52)の各一端を接合して複数の合体鋼殻ブロック(80a,80b)を中組立ヤード(300)で中組立し(第三工程)、これら複数の合体鋼殻ブロック(80a,80b)をそれぞれ反転させて下床版鋼殻ブロック(11)の上面の各対応する位置に載置し、該複数の合体鋼殻ブロックの側壁の小鋼殻ブロック(32)及び中間壁の小鋼殻ブロック(42,52)の各他端を下床版鋼殻ブロック(11)の上面に接合するとともに隣り合う前記合体鋼殻ブロック(80a,80b)同士を接合して沈埋函鋼殻(1)を大組立ヤード(200)で大組立する(第四工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈埋函(沈埋トンネル用函体)の製作方法に係り、詳しくは、沈埋函の組立工法に関する。
【背景技術】
【0002】
水底トンネル等の建設に適用される沈埋工法として、沈埋函を分割して陸上で製作し、当該分割した各部分の両端部分をそれぞれ仮隔壁で閉塞して建設地点まで回航し、水底に沈埋させ、隣り合う部分同士を接合し仮隔壁を除去してトンネルを構築する方法が知られている。
沈埋函は主として下床版、上床版、側壁、中壁、隔壁からなり、鉄筋コンクリート構造のものが一般的であるが、近年では鋼板とコンクリートとを一体化して製造する合成構造の沈埋函も開発されている。
【0003】
合成構造としては、例えば下床版から側壁、中壁、隔壁、上床版の順に鋼板で鋼殻を作りながらコンクリートを順次打設する方法が知られており(特許文献1、2等参照)、最近では、外殻鋼板及びウェブ鋼板で鋼殻を形成し当該鋼殻内の空隙にコンクリートを打設する構造、即ち外殻鋼板でコンクリートを挟み込むようなフルサンドイッチ構造が考案されている。
【0004】
このようなフルサンドイッチ構造では、鋼殻が構造体をなし、当該鋼殻だけで十分な剛性と強度を確保できることから、先ず鋼殻だけで沈埋函の全体を製作しておき、その後にコンクリートを打設することが可能である。
そして、鋼殻を製作するに当たっては、下床版、上床版、側壁、中壁、隔壁の各鋼殻をそれぞれ複数の小ブロックに分割して予め別工程で製作しておき、これら複数の小鋼殻ブロックを組み立てることで沈埋函全体の鋼殻を製作することが可能である。
【0005】
これより、フルサンドイッチ構造の沈埋函の製作では、通常、先ず下床版の小鋼殻ブロックを溶接接合して沈埋函全体の下床版の鋼殻を形成し、順次側壁、中壁、隔壁の各小鋼殻ブロックを下床版の鋼殻に及び互いに溶接接合し、最後に側壁、中壁、隔壁の鋼殻の上端に上床版の小鋼殻ブロックを溶接接合して沈埋函の鋼殻を製作するようにしている。
【特許文献1】特開平8−260494号公報
【特許文献2】特開平9−295313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように下床版、上床版、側壁、中壁、隔壁の各鋼殻をそれぞれ複数の小鋼殻ブロックに分割して沈埋函の鋼殻を組み立てる場合、一般にはジブクレーン等で搬送して組み立てを行うことになるが、このようにジブクレーン等で搬送を行う場合、搬送荷重を軽減すべく小鋼殻ブロックの荷姿はそれほど大きなものにできないという制約がある。
【0007】
しかしながら、小鋼殻ブロックの荷姿を各々小さくし、小鋼殻ブロックの数が増えると、これら小鋼殻ブロックを組み立てる際の溶接工数が多大になり、組み立てに時間がかかり、短期間での製作が難しいという問題がある。
また、下床版の鋼殻から順に側壁、中壁、隔壁の各鋼殻の組み立てを行い、最後に上床版の鋼殻を側壁、中壁、隔壁の鋼殻の各上端に溶接接合することになると、上床版の鋼殻の溶接作業が高所作業とならざるを得ないという問題があり、さらには、下方からの溶接作業が多いために溶接作業姿勢が不安定になり易く、作業効率が低下するとともに十分な溶接品質を確保し難いという問題がある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、高い安全性、高い作業効率、高品質を確保しつつ短期間で沈埋函の鋼殻を製作可能な沈埋函の製作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1の沈埋函の製作方法は、外殻鋼板及びウェブ鋼板を組み合わせて鋼殻を形成してなる沈埋函の製作方法であって、沈埋函を構成する下床版、上床版、側壁及び中間壁をさらに分割してそれぞれ複数の小鋼殻ブロックを製作する第一工程と、前記下床版の複数の小鋼殻ブロックを互いに接合して下床版鋼殻ブロックを製作する第二工程と、前記上床版の複数の小鋼殻ブロックを天地逆置きし、該天地逆置きした上床版の各小鋼殻ブロックの上面にそれぞれ対応する前記側壁の小鋼殻ブロック及び前記中間壁の小鋼殻ブロックの各一端を接合して複数の合体鋼殻ブロックを製作する第三工程と、前記複数の合体鋼殻ブロックをそれぞれ反転させて前記下床版鋼殻ブロックの上面の各対応する位置に載置し、該複数の合体鋼殻ブロックの前記側壁の小鋼殻ブロック及び前記中間壁の小鋼殻ブロックの各他端を前記下床版鋼殻ブロックの上面に接合するとともに隣り合う前記合体鋼殻ブロック同士を接合して沈埋函全体の鋼殻を製作する第四工程とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2の沈埋函の製作方法は、請求項1において、少なくとも前記第三工程における前記合体鋼殻ブロックの製作と前記第四工程における該合体鋼殻ブロックの前記側壁の小鋼殻ブロック及び前記中間壁の小鋼殻ブロックの各他端の前記下床版鋼殻ブロックの上面への接合及び隣り合う該合体鋼殻ブロック同士の接合とを並行して行うことを特徴とする。
【0011】
請求項3の沈埋函の製作方法は、請求項1または2記載において、ガントリクレーンを使用し、前記第四工程では、前記合体鋼殻ブロックを、前記ガントリクレーンの複数のワイヤで吊り下げ、該吊り下げた状態で前記複数のワイヤの一部を掛け替えて反転し、前記下床版鋼殻ブロックの上面の各対応する位置に移送し載置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の沈埋函の製作方法によれば、天地逆置きした上床版の各小鋼殻ブロックの上面にそれぞれ対応する側壁の小鋼殻ブロック及び中間壁の小鋼殻ブロックの各一端を接合して複数の合体鋼殻ブロックを製作し(第三工程)、これら複数の合体鋼殻ブロックをそれぞれ反転させて下床版鋼殻ブロックの上面の各対応する位置に載置し、該複数の合体鋼殻ブロックの側壁の小鋼殻ブロック及び中間壁の小鋼殻ブロックの各他端を下床版鋼殻ブロックの上面に接合するとともに隣り合う合体鋼殻ブロック同士を接合して沈埋函全体の鋼殻を製作する(第四工程)ようにしたので、接合は溶接であるところ、上床版の小鋼殻ブロックと側壁の小鋼殻ブロック及び中間壁の小鋼殻ブロックの各一端との溶接作業が高所作業でなくなり、また基本的に溶接作業が下向き作業となる。
【0013】
これにより、沈埋函の鋼殻を製作するに際し、高所足場の設置及び高所足場での作業が不要となるために高い安全性と高い作業効率を確保でき、また安定した溶接作業姿勢が確保されるために十分な溶接品質を確保することができる。
請求項2の沈埋函の製作方法によれば、少なくとも合体鋼殻ブロックの製作(第三工程)と合体鋼殻ブロックの側壁の小鋼殻ブロック及び中間壁の小鋼殻ブロックの各他端の下床版鋼殻ブロックの上面への接合及び隣り合う合体鋼殻ブロック同士の接合(第四工程)とを並行して行うようにしたので、下床版鋼殻ブロック上での溶接作業(大組立)と合体鋼殻ブロックの溶接作業(中組立)とを同時進行させることができ、高い安全性及び十分な溶接品質を確保しつつ、より一層作業効率の向上を図り、製作期間の短縮化を図ることができる。
【0014】
請求項3の沈埋函の製作方法によれば、ガントリクレーンを使用するので、ジブクレーンを用いるよりも比較的重い鋼殻ブロックを移送可能であり、下床版、上床版、側壁及び中間壁の各小鋼殻ブロックひいては合体鋼殻ブロックを比較的大きなブロック割にすることが可能である。これより、下床版鋼殻ブロック上での溶接作業(大組立)や合体鋼殻ブロックの溶接作業(中組立)での溶接作業を極力少なくする一方、各小鋼殻ブロックの工場屋内での自動化した板継溶接(サブマージアーク溶接等)を多用することができ、溶接品質のばらつきを低減して一層高い溶接品質を確保することができ、鋼殻全体の寸法精度の向上を図ることができる。さらに、小鋼殻ブロックや合体鋼殻ブロックの移送回数が低減することになり、作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、ガントリクレーンを使用することで、合体鋼殻ブロックの天地を容易に反転させることができ、さらなる作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る沈埋函の製作方法に適用される沈埋函鋼殻1を分解して示す全体構成図である。
沈埋函は水底トンネル等に用いられる構造物であり、沈埋函鋼殻1は、外殻鋼板及びウェブ鋼板で鋼殻を形成して当該鋼殻内の空隙にコンクリートを打設する構造、即ち外殻鋼板でコンクリートを挟み込む所謂フルサンドイッチ構造の沈埋函の骨格をなすものである。
【0017】
同図に示すように、沈埋函鋼殻1は、主として下床版10、上床版20、側壁30、中壁40、隔壁50及び端部60の各鋼殻ブロック11、21、31、41、51、61からなり、これらが溶接接合されて構成される。なお、バルクヘッド70は完成した沈埋函鋼殻1を設置場所まで回航させる際に端部60の鋼殻ブロック61の開口を閉塞するための仮隔壁である。
【0018】
ところで、沈埋函鋼殻1は総重量が千トンを超えるような構造物であるため、製作にあたっては、同図中に分割線を入れて示すように、下床版10、上床版20、側壁30、中壁40、隔壁50をさらに分割してそれぞれ複数の小鋼殻ブロック12、22、32、42、52を製作し、これらを組み立てるようにしている。詳しくは、下床版10及び上床版20は例えば10個の部分に分割され、小鋼殻ブロック12及び小鋼殻ブロック22については、組み立ての都合等から一側については大きな小鋼殻ブロック12a、22a、他側については小さな小鋼殻ブロック12b、22bで構成される。
【0019】
なお、これら小鋼殻ブロック12、22、32、42、52の構造、即ち外殻鋼板及びウェブ鋼板の板組構造については公知であり、その詳細についてはここでは説明を省略する。
以下、上記のように構成される沈埋函鋼殻1の本発明に係る組立工法について説明する。
【0020】
小鋼殻ブロック12、22、32、42、52については、工場屋内において例えば自動化した板継溶接(サブマージアーク溶接等)を用いて製作される(第一工程)。
そして、これら小鋼殻ブロック12、22、32、42、52のうち、下床版10の小鋼殻ブロック12については、図2に示すように、ゴライアスクレーン(ガントリクレーン)100のワイヤ束102、104に吊られて大組立ヤード(例えば、ドック)200に順次移送される。詳しくは、大組立ヤード200には、複数の小鋼殻ブロック12を載置するための例えば木製の多数の架台202が予め設置されており、各小鋼殻ブロック12、即ち各小鋼殻ブロック12a、12bは対応する位置の複数の架台202上にそれぞれ載置される。
【0021】
このように大組立ヤード200に移送され架台202上に載置された小鋼殻ブロック12は、小鋼殻ブロック12aと小鋼殻ブロック12b及び隣り合う小鋼殻ブロック12a、12b同士が順次溶接接合され、これにより下床版鋼殻ブロック11が製作される(第二工程)。
一方、上床版20の小鋼殻ブロック22、側壁30の小鋼殻ブロック32、中壁40の小鋼殻ブロック42及び隔壁50の小鋼殻ブロック52については、図示しないもののゴライアスクレーン100のワイヤ束102、104に吊られて大組立ヤード200の横に設けられた中組立ヤード300に順次移送される。
【0022】
中組立ヤード300では、図3に示すように、上床版20の小鋼殻ブロック22、側壁30の小鋼殻ブロック32、中壁40の小鋼殻ブロック42及び隔壁50の小鋼殻ブロック52の中組立(プレエレクション)が行われる(第三工程)。
詳しくは、上床版20の小鋼殻ブロック22a、22bについては天地逆にして例えば架台(特に図示せず)の上に載置され、図3に示すように、当該天地逆にした小鋼殻ブロック22a、22bにそれぞれ側壁30の小鋼殻ブロック32、中壁40の小鋼殻ブロック42及び隔壁50の小鋼殻ブロック52の各上端(一端)を溶接接合することで合体鋼殻ブロック80a、80bが製作される。
【0023】
この際、合体鋼殻ブロック80a、80bには複数の吊りフックが適所に溶接される。詳しくは、合体鋼殻ブロック80aでは、小鋼殻ブロック22aの沈埋函幅方向両端及び中壁40の小鋼殻ブロック42と小鋼殻ブロック22aとの接合位置にそれぞれ複数の吊りフックが溶接される。合体鋼殻ブロック80bでは、小鋼殻ブロック22bの沈埋函幅方向両端にそれぞれ複数の吊りフックが溶接される。なお、これら吊りフックは使用後には適宜撤去される。
【0024】
また、合体鋼殻ブロック80a、80bのうち、後述する反転時にゴライアスクレーン100のワイヤ束102、104と干渉する部分、具体的には隔壁50の小鋼殻ブロック52の各下端(他端)にはそれぞれ補強治具81a、81bが仮設される。
このように中組立された合体鋼殻ブロック80a、80bは、上記の如く設けられた複数の吊りフックにそれぞれゴライアスクレーン100のワイヤ束102、104が掛けられ、ワイヤ束102、104に吊られて順次大組立ヤード200まで移送され、反転され、下床版鋼殻ブロック11に載置される(第四工程)。
【0025】
図3乃至図6には合体鋼殻ブロック80aを反転する手順が示されており、以下、合体鋼殻ブロック80aの反転手順を説明する。
図3に示すように、合体鋼殻ブロック80aは、最初は小鋼殻ブロック22aの沈埋函幅方向両端の一方、即ち小鋼殻ブロック22aの小鋼殻ブロック32側の端部に設けられた吊りフックにワイヤ束102が掛けられ、小鋼殻ブロック42と小鋼殻ブロック22aとの接合位置の吊りフックにワイヤ束104が掛けられて大組立ヤード200まで移送される。
【0026】
大組立ヤード200まで移送された合体鋼殻ブロック80aは、先ず、図4に示すようにワイヤ束104が送り出されることで中壁40の小鋼殻ブロック42側が下降させられる。即ち、合体鋼殻ブロック80aはワイヤ束102のみで吊り下げた状態とされる。そして、この状態でワイヤ束104が合体鋼殻ブロック80aから一旦外される。
このように合体鋼殻ブロック80aがワイヤ束102のみで吊り下げた状態とされ、ワイヤ束104が一旦外されると、図4中に矢印で示すように回転ジョイント106が回転させられ、これにより合体鋼殻ブロック80aは図5に示すように180°旋回した状態とされる。
【0027】
そして、この状態で、ワイヤ束104が今度は小鋼殻ブロック22aの沈埋函幅方向両端の他方、即ち中壁40の小鋼殻ブロック42側の端部に設けられた吊りフックに掛けられ、巻き上げられる。これにより、天地逆であった合体鋼殻ブロック80aが図6に示すように反転されて本来の正しい姿勢とされ、下床版鋼殻ブロック11の対応する位置に載置される。
【0028】
なお、ここでは合体鋼殻ブロック80aを例に説明したが、合体鋼殻ブロック80bについても同様に反転させられ、下床版鋼殻ブロック11の対応する位置に載置される。
合体鋼殻ブロック80a、80bが下床版鋼殻ブロック11に載置されると、合体鋼殻ブロック80aの小鋼殻ブロック32、小鋼殻ブロック42及び小鋼殻ブロック52の下端(他端)が溶接接合されるとともに、合体鋼殻ブロック80aと合体鋼殻ブロック80b及びそれぞれ隣り合う合体鋼殻ブロック80a、80b同士が溶接接合される。つまり、大組立ヤード200では、下床版鋼殻ブロック11と中組立した合体鋼殻ブロック80a、80bとを溶接接合するようにして沈埋函鋼殻1の大組立が行われる。
【0029】
ところで、当該沈埋函鋼殻1の大組立は大組立ヤード200で行われ、上記合体鋼殻ブロック80a、80bの中組立は中組立ヤード300で行われるため、沈埋函鋼殻1の大組立と合体鋼殻ブロック80a、80bの中組立とは独立であり、互いに並行して作業を行うことが可能である。
従って、ここでは、沈埋函鋼殻1の大組立ヤード200での大組立と合体鋼殻ブロック80a、80bの中組立ヤード300での中組立とを並行して行うようにする。
【0030】
このようにして下床版鋼殻ブロック11に全ての合体鋼殻ブロック80a、80bが溶接接合され、合体鋼殻ブロック80aと合体鋼殻ブロック80b及びそれぞれ隣り合う合体鋼殻ブロック80a、80b同士が全て溶接接合されたら、図7に示すように、端部鋼殻ブロック61が、ゴライアスクレーン100のワイヤ束102、104に吊られて移送され、下床版鋼殻ブロック11の両端及び当該両端に位置する合体鋼殻ブロック80a、80bと溶接接合される。これにより、沈埋函鋼殻1が完成する。
【0031】
そして、図8に示すように、最後にバルクヘッド70がゴライアスクレーン100のホイスト108に吊られて移送され、端部鋼殻ブロック61の開口を塞ぐように仮設される。
以上説明したように、本発明に係る沈埋函の製作方法によれば、天地逆置きした上床版20の各小鋼殻ブロック22a、22bの上面にそれぞれ対応する側壁30の小鋼殻ブロック32、中壁40の小鋼殻ブロック42及び隔壁50の小鋼殻ブロック52の各上端(一端)を溶接接合して複数の合体鋼殻ブロック80a、80bを製作し(第三工程)、これら複数の合体鋼殻ブロック80a、80bをそれぞれ反転させて下床版鋼殻ブロック11の上面の各対応する位置に載置し、当該合体鋼殻ブロック80a、80bの小鋼殻ブロック32、小鋼殻ブロック42及び小鋼殻ブロック52の各下端(他端)を下床版鋼殻ブロック11の上面に溶接接合するとともに合体鋼殻ブロック80aと合体鋼殻ブロック80b及びそれぞれ隣り合う合体鋼殻ブロック80a、80b同士を溶接接合して沈埋函鋼殻1を製作するようにしている(第四工程)。
【0032】
従って、上床版20の小鋼殻ブロック22a、22bと側壁30の小鋼殻ブロック32、中壁40の小鋼殻ブロック42及び隔壁50の小鋼殻ブロック52の各上端(一端)との溶接作業を中組立ヤード300での低所作業とし、大組立ヤード200での高所作業を行わないようにでき、基本的に溶接作業を下向き作業にすることが可能である。
これにより、沈埋函鋼殻1を製作するに際し、大組立ヤード200に高所足場を設置する必要がなくなり、故に高所足場での不安定な作業が一切不要となり、高い安全性と高い作業効率を確保することができるとともに、安定した溶接作業姿勢を確保して十分な溶接品質を確保することができる。
【0033】
また、中組立ヤード300での上床版20の小鋼殻ブロック22a、22b、側壁30の小鋼殻ブロック32、中壁40の小鋼殻ブロック42及び隔壁50の小鋼殻ブロック52の溶接接合、即ち合体鋼殻ブロック80a、80bの中組立(第三工程)と大組立ヤード200での合体鋼殻ブロック80aの小鋼殻ブロック32、小鋼殻ブロック42及び小鋼殻ブロック52の下端(他端)の下床版鋼殻ブロック11への溶接接合並びに合体鋼殻ブロック80aと合体鋼殻ブロック80b及びそれぞれ隣り合う合体鋼殻ブロック80a、80b同士の溶接接合、即ち沈埋函鋼殻1の大組立(第四工程)とを並行して行うようにしているので、大組立ヤード200での大組立作業と中組立ヤード300での中組立作業とを同時進行させることができ、より一層作業効率の向上を図り、沈埋函鋼殻1の製作期間を短縮することができる。
【0034】
また、下床版10、上床版20、中壁40及び隔壁50の各小鋼殻ブロック12a、12b、22a、22b、32、42及び52や合体鋼殻ブロック80a、80bをゴライアスクレーン(ガントリクレーン)100を使用して移送するので、ジブクレーンよりも比較的重い鋼殻ブロックを移送可能であり、これら各小鋼殻ブロック12a、12b、22a、22b、32、42及び52ひいては合体鋼殻ブロック80a、80bを比較的大きなブロック割にすることが可能である。これより、大組立や中組立における溶接作業を極力少なくすることができる一方、各小鋼殻ブロック12a、12b、22a、22b、32、42及び52の製作において工場屋内での自動化した板継溶接(サブマージアーク溶接等)を多用することができ、溶接品質のばらつきを低減して一層高い溶接品質を確保することができ、沈埋函鋼殻1の寸法精度の向上を図ることができる。さらに、小鋼殻ブロック12a、12b、22a、22b、32、42及び52や合体鋼殻ブロック80a、80bの移送回数を低減でき、作業効率の向上をも図ることができる。
【0035】
また、ゴライアスクレーン100を使用することで、合体鋼殻ブロック80a、80bの天地を容易に反転させることができ、さらなる作業効率の向上を図ることができる。
以上で本発明に係る実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、上記実施形態では、下床版10及び上床版20をそれぞれ10個の部分に分割し、大きさの異なる小鋼殻ブロック12a、22a及び小鋼殻ブロック12b、22bから合体鋼殻ブロック80a、80bを製作するようにしたが、小鋼殻ブロック12a、12b、22a、22b、32、42及び52のブロック割についてはゴライアスクレーン100の能力の向上に伴ってさらに大きくしてもよく、分割する各鋼殻ブロックの形状については沈埋函鋼殻1の全体構造に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
また、上記実施形態では、合体鋼殻ブロック80a、80bの中組立と沈埋函鋼殻1の大組立とを並行して行うようにしているが、合体鋼殻ブロック80a、80bの中組立(第三工程)についてはさらに下床版鋼殻ブロック11の製作(第二工程)と並行して行うようにしてもよく、これにより沈埋函鋼殻1の製作期間のさらなる短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る沈埋函の製作方法に適用される沈埋函鋼殻を分解して示す全体構成図である。
【図2】下床版鋼殻ブロックの組立状況を示す図である。
【図3】天地逆置きでの合体鋼殻ブロックの中組立状況及び移送状況を示す図である。
【図4】合体鋼殻ブロックの反転状況を示す図である。
【図5】図4に続く合体鋼殻ブロックの反転状況を示す図である。
【図6】反転した合体鋼殻ブロックの移送状況及び沈埋函鋼殻の大組立状況を示す図である。
【図7】端部鋼殻ブロックの組み付け状況を示す図である。
【図8】バルクヘッドの組み付け状況を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 沈埋函鋼殻
10 下床版
11 下床版鋼殻ブロック
12a、12b 小鋼殻ブロック
20 上床版
22a、22b 小鋼殻ブロック
30 側壁
32 小鋼殻ブロック
40 中壁
42 小鋼殻ブロック
50 隔壁
52 小鋼殻ブロック
60 端部
70 バルクヘッド
80a、80b 合体鋼殻ブロック
100 ゴライアスクレーン(ガントリクレーン)
102、104 ワイヤ束
200 大組立ヤード
300 中組立ヤード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻鋼板及びウェブ鋼板を組み合わせて鋼殻を形成してなる沈埋函の製作方法であって、
沈埋函を構成する下床版、上床版、側壁及び中間壁をさらに分割してそれぞれ複数の小鋼殻ブロックを製作する第一工程と、
前記下床版の複数の小鋼殻ブロックを互いに接合して下床版鋼殻ブロックを製作する第二工程と、
前記上床版の複数の小鋼殻ブロックを天地逆置きし、該天地逆置きした上床版の各小鋼殻ブロックの上面にそれぞれ対応する前記側壁の小鋼殻ブロック及び前記中間壁の小鋼殻ブロックの各一端を接合して複数の合体鋼殻ブロックを製作する第三工程と、
前記複数の合体鋼殻ブロックをそれぞれ反転させて前記下床版鋼殻ブロックの上面の各対応する位置に載置し、該複数の合体鋼殻ブロックの前記側壁の小鋼殻ブロック及び前記中間壁の小鋼殻ブロックの各他端を前記下床版鋼殻ブロックの上面に接合するとともに隣り合う前記合体鋼殻ブロック同士を接合して沈埋函全体の鋼殻を製作する第四工程と、
からなることを特徴とする沈埋函の製作方法。
【請求項2】
少なくとも前記第三工程における前記合体鋼殻ブロックの製作と前記第四工程における該合体鋼殻ブロックの前記側壁の小鋼殻ブロック及び前記中間壁の小鋼殻ブロックの各他端の前記下床版鋼殻ブロックの上面への接合及び隣り合う該合体鋼殻ブロック同士の接合とを並行して行うことを特徴とする、請求項1記載の沈埋函の製作方法。
【請求項3】
ガントリクレーンを使用し、前記第四工程では、前記合体鋼殻ブロックを、前記ガントリクレーンの複数のワイヤで吊り下げ、該吊り下げた状態で前記複数のワイヤの一部を掛け替えて反転し、前記下床版鋼殻ブロックの上面の各対応する位置に移送し載置することを特徴とする、請求項1または2記載の沈埋函の製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−85129(P2007−85129A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277981(P2005−277981)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】