沈砂池およびその集砂方法
【課題】堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる工夫がなされた沈砂池を提供する。
【解決手段】池底部に設けられ、沈降した砂が堆積する溝Gを形成する溝形成壁30と、池底部に設けられ、溝Gが接続した集砂ピット4と、トラフ3に配置され、溝Gの延在方向における所定位置から溝Gに流体を吐出する1又は複数の吐出口からなる吐出口ユニット5とを備え、吐出口ユニット5は、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するものであることを特徴とする沈砂池1。
【解決手段】池底部に設けられ、沈降した砂が堆積する溝Gを形成する溝形成壁30と、池底部に設けられ、溝Gが接続した集砂ピット4と、トラフ3に配置され、溝Gの延在方向における所定位置から溝Gに流体を吐出する1又は複数の吐出口からなる吐出口ユニット5とを備え、吐出口ユニット5は、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するものであることを特徴とする沈砂池1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池およびその集砂方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理システムには、下水または雨水などの汚水を受け入れ、その汚水に含まれている砂を池底部に沈降させた後、池底部に堆積した砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除く沈砂池が設けられているものがある。この沈砂池には、沈砂池の池底部分に堆積した砂を集めるためのスクリューコンベアなどの機械部分を有する機械式の集砂手段を備えているものが存在する。機械式の集砂手段を備えた沈砂池として、たとえば特許文献1に記載されたものが知られている。また、沈砂池には、沈砂池の池底部に堆積した砂を、複数の吐出口から吐出した流体の流れにより集砂ピットに向けて移動させる集砂手段を備えているものも存在する。このような吐出口を備えた沈砂池として、たとえば特許文献2〜4に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−160417号公報
【特許文献2】特開2001−276507号公報
【特許文献3】特開2002−159803号公報
【特許文献4】特開平9−70503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される機械式の集砂手段を備えた沈砂池は、スクリューコンベアなどの機械部分が動作して砂を集砂ピットに集めるため、その機械部分が摩耗したり、汚物などが機械部分に噛み込んでトラブルが生じる可能性がある。さらに、汚水中にある機械部分が腐食する可能性もあり、維持管理費が高くなるという問題がある。吐出口から吐出した流体の流れにより砂を集砂ピットに向けて移動させる集砂手段を備えた沈砂池は、機械式の集砂手段を備えた集砂池の様に機械部分の摩耗などによる問題は生じない。しかし、特許文献2に示される沈砂池は、沈砂池内の汚水を取り除いた後に吐出口から流体を吐出させるものであり、沈砂池内から汚水を取り除く機会が得られる沈砂池にしか適用できないという問題がある。また、特許文献3や特許文献4に示される沈砂池は、吐出口から吐出する水の圧力に頼って砂を移動させようとするものである。しかし、堆積した砂を水の圧力に頼って移動させようとしても、砂が十分に移動しなかったり、せっかく池底に堆積した砂が上方に舞い上がってしまい、思うように砂が移動しないという問題がある。特許文献4に示される沈砂池は、砂の舞い上がりを防止するために隔壁を設けるものであるが、隔壁によって砂の移動が阻害されたり、隔壁の上や中に砂が溜まってしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる工夫がなされた沈砂池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の沈砂池は、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
池底部に設けられ、沈降した砂が堆積する溝を形成する溝形成壁と、
前記池底部に設けられ、前記溝が接続した集砂ピットと、
前記溝形成壁に配置され、前記溝の延在方向における所定位置から該溝に流体を吐出する1又は複数の吐出口からなる吐出口ユニットとを備え、
前記吐出口ユニットは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するものであることを特徴とする。
【0007】
本発明の沈砂池によれば、吐出口ユニットから毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するので、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
【0008】
ここで、前記吐出ユニットが複数の吐出口からなるものである場合には、該複数の吐出口からの吐出量の単位時間当たりの総計が毎分1000リットル以上3000リットル以下であることになる。
【0009】
また、前記突出口ユニットは、前記溝の延在方向に間隔をあけて前記溝形成壁に複数配置されていてもよい。
【0010】
本発明の沈砂池において、前記池底部は、前記溝に連なる底面を備え、
前記底面は、前記溝に向かって下方へ傾斜したものであることが好ましい。
【0011】
前記底面が溝に向かって傾斜しているので、沈降した砂を溝に集めることができる。
【0012】
本発明の沈砂池において、前記溝形成壁は、壁底部分に前記集砂ピットに向かって延在した延在部を有するものであり、
前記吐出口は、前記延在部に沿って流体を吐出するものであることが好ましい。
【0013】
こうすることで、砂を溝に沿って効率的に移動できる。
【0014】
本発明の沈砂池において、前記溝形成壁は、前記集砂ピットに向かって段階的に深くなる階段形状の壁底部分を有し、
前記吐出口ユニットは、階段形状の壁底部分における上段部と下段部を繋ぐ段差部に配置されたものであることも好ましい。
【0015】
吐出口ユニットを段差部に配置することで、吐出口ユニットが砂の移動の妨げとならない。
【0016】
本発明の沈砂池において、前記溝形成壁は、少なくとも一部が板状の部材の内周面からなるものであり、
前記板状の部材の外周面の一部を前記吐出口ユニットにつながる内壁の一部とした吐出ノズルを備えていることも好ましい態様の一つである。
【0017】
この態様によれば、吐出ノズルの構成が簡略化できる上に、吐出ノズルの上下方向の厚みを抑制することができる。
【0018】
本発明の沈砂池の集砂方法は、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において該砂を集める集砂方法であって、
前記砂を池底部に設けられた溝に沈降させる沈降ステップと、
前記溝の延在方向における所定位置から流体を該溝に吐出し、該溝に沈降した砂を該溝に接続した集砂ピットに向けて該流体の流れにより移動させる集砂ステップとを有し、
前記集砂ステップは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するステップであることを特徴とする。
【0019】
本発明の沈砂池の集砂方法によれば、吐出口ユニットから毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するので、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる沈砂池およびその集砂方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図である。
【図2】図1に示す沈砂池のA−A断面図である。
【図3】(a)は、トラフにおける図2で示したB1部を示した部分斜視図であり、(b)は、図2で示したB1部を拡大して示した部分断面図である。
【図4】(a)は、トラフと吐出ノズルを表す図2のC−C断面図であり、(b)は、(a)を上方からみた平面図である。
【図5】図5は、図2のD−D断面である。
【図6】(a)は、図2で示したE部を拡大して示した部分断面図であり、(b)は、(a)を左方から見た部分断面図である。
【図7】図1に示す沈砂池に設けられた給水設備のブロック図である。
【図8】吐出口から毎分3000リットル、毎分2000リットルおよび毎分1000リットルの水を吐出させたときの砂の移動距離を表すグラフである。
【図9】突出ノズルの変形例を示す部分断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態である沈砂池を幅方向の中央で切断した断面図である。
【図11】図10に示す沈砂池に設けられた給水設備のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である沈砂池は、下水処理システムの上流側に配置され、下水または雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に相当する沈砂池1を上方から見た平面図であり、図2は、図1に示す沈砂池1のA−A断面図である。
【0024】
図1に示すように、沈砂池1は、トラフ3と、集砂ピット4と、ポンプ井5とを備えた平面視長方形状の池である。以下、沈砂池1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図示しない下水管などから沈砂池1に流れ込んだ汚水は、沈砂池1内をゆっくりと下流側に流れていく。図1および図2では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。トラフ3は、沈砂池1の池底部に設けられたものである。池底部には
後述するように傾斜面6が設けられ、傾斜面6につながるようにトラフ3が設けられている。沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂は、沈砂池1の上流側で池底部に向かって沈降し、池底部に堆積する。
【0025】
ポンプ井5は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井5は、沈砂池1の最も下流側に配置されている。また、図2に示すように、ポンプ井5の底面が沈砂池1における最深部となっている。ポンプ井5の内部には、揚水ポンプ51が設けられている。この揚水ポンプ51は、ポンプ井5に貯留された汚水を沈砂池1の外部に移動するものである。揚水ポンプ51には揚水管52が接続されている。揚水ポンプ51によって吸引された汚水は、この揚水管52を通して不図示の沈殿池に送られる。図2に示すWLは汚水の水面を表している。なお、この水面WLの位置は、沈砂池1へ流れ込む汚水の量によって、トラフ3の底面からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
【0026】
池底部の、ポンプ井5よりも上流側の部分には、集砂ピット4が設けられている。集砂ピット4の内部には、揚砂ポンプ41が設けられている。この揚砂ポンプ41は、集砂ピット4の底面近傍に配置されており、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1の外部に搬送するものである。揚砂ポンプ41には揚砂管42が接続されている。揚砂ポンプ41によって吸引された砂は、この揚砂管42を通して沈砂池1の外部に送られる。
【0027】
池底部の、集砂ピット4よりも上流側の部分には、トラフ3が設けられている。図1に示すように、トラフ3は、沈砂池1の幅方向中央に設けられたものである。また、トラフ3は、第1のU字状部材31と、第2のU字状部材32と、第3のU字状部材33と、第1の接続部材34と、第2の接続部材35とから構成されている。第1の接続部材34は、第1のU字状部材31と第2のU字状部材32とを繋ぐものである。また、第2の接続部材35は、第2のU字状部材32と第3のU字状部材33とを繋ぐものである。本実施形態では、各U字状部材31,32、33の長手方向の長さはそれぞれ5mである。各U字状部材31、32、33は、板厚4mmのステンレス製の板材(本発明にいう板状の部材の一例に相当)を、断面U字形状に成形したものである。
【0028】
図3(a)は、トラフ3における図2で示したB1部を示した部分斜視図である。この図3(a)では、トラフ3を透明なものとして表している。また、図3(b)は、図2で示したB1部を拡大して示した部分断面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、この第1のU字状部材31と第2のU字状部材32は、下側部分となる半円筒状部分と上側部分となる2つの平面部分とから構成されている。第1のU字状部材31と第2のU字状部材32とは、半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔が異なる。本実施形態では、第1のU字状部材31の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ300mmであり、第2のU字状部材32の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ350mmである。第1の接続部材34は、板厚4mmのステンレス製の板材を打ち抜き加工したものである。第1のU字状部材31と第1の接続部材34は溶接により接合されており、第2のU字状部材32と第1の接続部材34も溶接により接合されている。
【0030】
図1及び図2に示した第3のU字状部材33と第2の接続部材35も板厚4mmのステンレス製の板材で形成されている。第3のU字状部材33の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ400mmである。図2に示したB2部は、B1部と大きさが異なる他は同一の形状および構成を有するのでB1部のみ説明してB2部の説明は省略する。
【0031】
第1のU字状部材31の内周面310、第2のU字状部材32の内周面320、第3のU字状部材33の内周面(図示省略)、第1の接続部材34の下流側面340、第2のU字状部材32の下流側面(図示省略)、および後述する端面壁36(図6(a)参照)の下流側面360によって溝形成壁30が形成されている。この溝形成壁30によって、沈砂池1の最上流端部から集砂ピット4まで長手方向に延在する溝Gが形成されている。また、溝形成壁30の最下流側端部は、集砂ピット4側が開口しており、溝Gの最も下流側端部は集砂ピット4に接続されている。
【0032】
図3(b)に示すように、溝形成壁30の壁底部分300は、下流側の集砂ピット4に向かって段階的に深くなる階段形状を成している。この図3(b)でも、図の右側が上流側になり左側が下流側になる。壁底部分300は、階段形状の上段部となる第1の延在部301、階段形状の下段部となる第2の延在部302、およびこの階段形状の上段部と下段部とを繋ぐ段差部303とを有している。第1の延在部301と第2の延在部302は、長手方向に延在している。本実施形態では、第1の延在部301と第2の延在部302は、集砂ピット4に向かって水平に延在したものであるが、集砂ピット4に向かって下方に傾斜したものであってもよい。段差部303は、第1の延在部301と第2の延在部302に対して直角となっている部分である。段差部303には、水を吐出する第1の吐出口71が設けられている。本実施の形態における第1の吐出口71は、本発明の吐出口ユニットの一例に相当する。第1の吐出口71を段差部303に設けることで、上流側の吐出口(後述する第2の吐出口72)から水を吐出して溝Gの砂を移動させる際に、第1の吐出口71が砂の移動の妨げとなることを防止できる。なお、本実施形態における第1の吐出口71と第2の吐出口72の吐出口面積は、ともに2037mm2である。第1の吐出口71の上流側には、第1の吐出口71につながる空室75を形成する吐出ノズル7が設けられている。吐出ノズル7は、第1のU字状部材31の下部に固定されている。また、第1のU字状部材31の外周面311の一部が、吐出ノズル7の内壁の一部となっている。こうすることで、吐出ノズル7の構成を簡略化でき、吐出ノズル7の上下方向の厚みを薄くすることもできる。
【0033】
図4(a)は、トラフ3と吐出ノズル7を表す図2のC−C断面図であり、図4(b)は、図4(a)を上方からみた平面図である。なお、この図4(a)および図4(b)では、トラフ3と吐出ノズル7の板厚を誇張して表している。
【0034】
図4(a)に示すように、吐出ノズル7は第1のU字状部材31よりも幅方向に突出した流体受入口76を備えている。この流体受入口76には、水を供給する第1の給水管21(図7参照)が接続されている。図4(b)に示すように空室75は平面視でL字状をしている。流体受入口76から空室75に流入した水は、空室75で流れの向きが下流側に変化して第2の延在部302と平行になり、第2の延在部302に沿って第1の吐出口71から吐出される。第2の延在部302に沿って水を吐出することで、溝Gに堆積した砂を溝Gに沿って効率よく移動させることができる。
【0035】
図5は、図2のD−D断面である。この図5では背景を省略している。
【0036】
図5に示す様に、トラフ3の幅方向両側には傾斜面6が設けられている。この傾斜面6は、トラフ3に向かって下方に45度傾斜しており、沈砂池1の最上流端部から集砂ピット4の上流側端部の間で長手方向に延在している。沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、汚水が下流側へ流れていく課程において池底部に沈降していく。傾斜面6に沈降した砂は、傾斜した傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって沈降するので、沈降した砂を溝Gに集めることができる。なお、池底面の傾斜角度は、例えば30度であってもよく60度であってもよい。
【0037】
図6(a)は、図2で示したE部を拡大して示した部分断面図であり、図6(b)は、図6(a)を左方から見た部分断面図である。
【0038】
図6(a)に示すように、第1のU字状部材31の最上流端部となる端面には、板状の端面壁36が取り付けられている。上述したように、端面壁36の下流側面360は、溝形成壁30の一部を形成している。図6(b)に示すように、この端面壁36には、第2の吐出口72が設けられている。本実施の形態における第2の吐出口72も、本発明の吐出口ユニットの一例に相当する。第2の吐出口72よりも上流側には、吐出口72につながる空室78を形成するL型管77が設けられている。このL型管77は、平面視でL字型をした管であり、水を供給する第2の給水管22(図7参照)が接続されている。空室78に流入した水は、空室78で流れの向きが下流側に変化して第1の延在部301と平行になり、第2の吐出口72から第1の延在部301に沿って吐出される。第1の延在部301に沿って水を吐出することで、溝Gに堆積した砂を溝Gに沿って効率よく移動させることができる。
【0039】
図7は、図1に示す沈砂池1に設けられた給水設備のブロック図である。
【0040】
沈砂池1には給水ポンプPが設けられている。この給水ポンプPは、毎分2000リットルの水を供給するポンプである。各吐出口71,72,73につながる各給水管21、22、23と給水ポンプPとの間には、分岐管24が設けられている。なお、図7には、
図2のB2部に設けられた第3の吐出口73と第3の給水管23が示されている。また、各給水管21、22、23には、それぞれ電動弁V1、V2、V3が設けられている。
【0041】
次に、本実施形態における沈砂池1の作用について説明する。まず、沈砂池1に汚水が流れ込む。上流側に存在するトラフ3が延在する部分を汚水が流れる間に、沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、沈砂池1の池底部に沈降していく。上述したように、この部分では、傾斜した傾斜面6に沈降した砂も傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって沈降するので、沈降した砂は溝Gに集まり、溝Gに堆積する。次に、給水ポンプPを駆動するとともに、電動弁V2を開く。この時、電動弁V1およびV3は閉じられている。給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、分岐管24、第2の給水管22を経由して第2の吐出口72から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第1のU字状部材31の内周面310によって形成された溝G内の砂は、第2のU字状部材32の内周面によって形成された溝Gまで移動する。なお、本発明者の研究によれば、毎分2000リットルの水を5分間吐出すると、溝G内に沈殿している砂は吐出口から10m先まで移動する。本発明者の行った実験結果を図8に示す。図8は、U字状部材の内周面底部が水深が2mの位置になるまで汚水を入れた沈砂池において、第1のU字状部材31と同形状のU字状部材を用い、そのU字状部材の上部から更に100mm程度まで砂を堆積させて、吐出流速16m/secで、吐出口から毎分3000リットル、毎分2000リットルおよび毎分1000リットルの水を吐出させたときの砂の移動距離を表すグラフである。図8のグラフにおける横軸は、吐出口から水を吐出した時間(秒)であり、図8のグラフにおける縦軸は、砂の移動距離(cm)である。
【0042】
この図8のグラフに示される曲線から、むやみに吐出時間を増加しても効率良く砂を移動させることができず、効率よく砂を移動できるのは、水の吐出時間を5分程度とした場合であることが分かる。また、水の吐出時間を5分とした場合、毎分1000リットルの水を吐出すると砂の移動距離は5m強であり、毎分2000リットルでは砂の移動距離は約10mであり、毎分3000リットルでは砂の移動距離は約15mであることが分かる。
【0043】
第2の吐出口72から5分間継続して水を吐出させたら、電動弁V2を閉じるとともに電動弁V1を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、第1の吐出口71から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第2のU字状部材32の内周面320によって形成された溝G内の砂が、第3のU字状部材33の内周面によって形成された溝Gまで移動する。その後、電動弁V1を閉じるとともに電動弁V3を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、第3の吐出口73から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第3のU字状部材32の内周面によって形成された溝G内の砂が、集砂ピット4まで移動する。最後に、給水ポンプPを停止して電動弁V3を閉じ、揚砂ポンプ41を駆動して集砂ピット4に移動した砂を沈砂池1の外部に搬送する。
【0044】
なお、本実施形態では、堆積した砂を効率良く所定距離移動させるには各吐出口からの吐出流量制御を行うことが最も効果的であることを前提にしているが、そうはいっても各吐出口71、72、73における水の吐出流速がいくらでも良いわけではなく、その吐出流速は、8m/sec以上24m/sec以下とすることが好ましい。8m/sec未満では、さすがに流速不足になってきてしまい、水圧との関係では砂を所定距離移動させられない場合も生じる。砂を所定距離移動させられなくなると、砂の移動方向に吐出口が多く必要になり、吐出口までの配管の数も多くなるため装置が雑多となり不経済である。24m/secよりも速くすると、溝Gに堆積した砂の一部が上方に舞い上がってしまい、その一部の砂が思うように移動しないことがある。さらに、集砂水として汚水を使用する場合、配管が小口径となりごみが詰まってしまう虞がある。また、各吐出口71、72、73における水の吐出圧は、0.1MPa以上0.3MPa以下とすることが好ましい。0.1MPa未満では、吐出口に加わる水圧と吐出ノズルおける圧力損失により、吐出口から水を吐出できないことがある。0.3MPaよりも大きいと、溝Gに堆積した砂の一部が上方に舞い上がってしまい、その一部の砂が思うように移動しないことがある。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の沈砂池1によれば、溝Gの延在方向(長手方向)に間隔をあけて各吐出口71、72、73を配置し、それぞれの吐出口71、72、73から毎分2000リットルの水を順に溝Gに吐出しているので、溝Gに堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
【0046】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。以下の説明では、これまで説明したきた沈砂池1との相違点を中心に説明する。また、これまで説明した構成要素と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0047】
図9は、吐出ノズル7の変形例を示す部分断面図である。
【0048】
この変形例では、吐出ノズル7の先端に、段差部303よりも溝G側に突出した吐出管79を設けている。この吐出管79の下流側端部には水を吐出する吐出口74が設けられている。この変形例では、吐出管79の、溝Gに突出している外形部分が、溝形成壁30の一部となる。なお、この変形例においては、吐出管79の、溝Gに突出している部分の真下に砂が堆積してしまうと、その砂を移動させることが困難になるという欠点がある。
【0049】
また、上述の実施形態では、溝Gの延在方向における所定位置(5m間隔)毎に、吐出口71,72,73をそれぞれ一つづつ設けた例を説明したが、溝Gの延在方向における所定位置毎に複数の吐出口を設けてもよい。所定位置毎に複数の吐出口を設けた場合には、所定位置毎に設けられた複数の吐出口から吐出する水の総量が毎分2000リットルとなる。また、本実施形態では、トラフ3を一つのみ設けた例を説明したが、トラフ3を並列に複数設けてもよい。また、本実施形態では、U字状部材31、32、33を断面視U字状に形成したが、半円形状に形成してもよく、上方が開口した矩形状であってもよく、下側に向かって曲率半径が小さくなる半卵形管形状としてもよい。半卵形管形状とした場合、石などの重量物が管の底部に沈降していても、その重量物を水の流れにより移動させやすいという効果がある。
【0050】
また、各吐出口71、72、73から吐出する水は、毎分1000リットル以上3000リットル以下であれば、毎分2000リットルでなくてもよい。毎分1000リットル未満の場合、溝Gに堆積した砂が殆ど移動しないことがある。毎分3000リットルよりも多いと、溝Gに堆積した砂が上方に舞い上がってしまい思うように砂が移動しないことがある。このことをさらに詳細に説明すると、本実施形態では、堆積した砂を効率良く所定距離移動させるには各吐出口からの吐出流量制御を行うことが最も効果的であることを前提にしているが、仮に、吐出流速を16m/secとした場合、吐出流量を毎分800リットルに落とすと、砂が所定距離移動しなくなるばかりか、吐出口やその吐出口につながる配管が小口径となり、集砂水として汚水を使用する場合、ごみが詰まってしまう虞がある。さらに、砂が所定距離移動しなくなるために、砂の移動方向に吐出口が多く必要になり、吐出口までの配管の数も多くなるため装置が雑多となり不経済である。一方、吐出流速を同じく16m/secとした場合、吐出流量を毎分3200リットルに上げると、溝Gに堆積した砂の一部が上方に舞い上がってしまい、その一部の砂が思うように移動しないことがある。
【0051】
また、ポンプPを3台設け、各ポンプPを各吐出口71、72、73それぞれと接続し、各ポンプPから同時に水を供給してもよい。各ポンプPから同時に供給することで砂の移動時間を短縮することができる。なお、図8に示したように、各吐出口から吐出する水の量は、毎分1000リットル以上3000リットル以下の範囲内であれば、多い方が砂の移動距離を増加させることができる。ただし、既設の沈砂池を改修して吐出口を設置する場合、沈砂池の水位が上昇してしまわないように、吐出口から同時に吐出する水の量を揚水ポンプ51の揚水量よりも少なくすることが好ましい。換言すれば、吐出口から吐出される水の単位時間あたりの吐出量の総量を、該単位時間あたりにくみ上げる揚水ポンプを備えた態様であることが好ましい。
【0052】
続いて、他の実施形態について説明する。この他の各実施形態の説明でも、これまで説明したきた沈砂池1との相違点を中心に説明する。また、これまで説明した構成要素と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0053】
図10は、本発明の他の実施形態である沈砂池10を幅方向の中央で切断した断面図である。
【0054】
この他の実施形態の沈砂池10は、先の実施形態の沈砂池1とは集砂ピット4を設けた位置が異なる。この沈砂池10は、集砂ピット4の上流側に上流側トラフ8を有し、集砂ピット4の下流側に下流側トラフ9を有している。また、先の実施形態とは異なり、上流側トラフ8および下流側トラフ9には、接続部材が存在せず、単体のU字状部材によって形成されている。上流側トラフ8と下流側トラフ9は、それぞれ板厚4mmのステンレス製の板材を、断面U字形状に成形したものである。この他の実施形態では、上流側トラフ8の長手方向の長さは7mであり、下流側トラフ9の長手方向の長さは8mである。
【0055】
図10に示すX1部およびX2部は、先の実施形態の説明で用いた図6(a)および図6(b)に示した構成と同一の構成をしており、上流側トラフ8に取り付けられた端面壁の下流側面に上流側吐出口81(図11参照)が設けられ、下流側トラフ9に取り付けられた端面壁の上流側面に下流側吐出口91(図11参照)が設けられている。この他の実施形態では、上流側トラフ8の内周面と、上流側トラフ8に取り付けられた端面壁の下流側面によって上流側溝形成壁80が形成されている。この上流側溝形成壁80によって上流側の溝Gが形成されている。この上流側の溝Gの最も下流側端部は、集砂ピット4に接続されている。また、下流側トラフ9の内周面と下流側トラフ9に取り付けられた端面壁の上流側面によって下流側溝形成壁90が形成されている。この下流側溝形成壁90によって下流側の溝Gが形成されている。この下流側の溝Gの最も上流側端部は、集砂ピット4に接続されている。
【0056】
図11は、図10に示す沈砂池10に設けられた給水設備のブロック図である。
【0057】
沈砂池10には給水ポンプPが設けられている。この給水ポンプPは、毎分2000リットルの水を供給するポンプである。各吐出口81,91につながる各給水管25、26と給水ポンプPとの間には、分岐管27が設けられている。また、各給水管25、26には、それぞれ電動弁V4、V5が設けられている。
【0058】
次に、本実施形態における沈砂池10の作用について説明する。まず、沈砂池10に汚水が流れ込む。上流側トラフ8、下流側トラフ9および集砂ピット4が存在する部分を汚水が流れる間に、沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、沈砂池1の池底に沈降していく。この部分では、傾斜した傾斜面6に沈降した砂も傾斜面6に沿って上流側トラフ8或いは下流側トラフ9に向かって沈降する。次に、給水ポンプPを駆動するとともに、電動弁V4を開く。この時、電動弁V5は閉じられている。給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、分岐管27、給水管25を経由して上流側吐出口81から吐出される。この吐出を5分間継続することで、上流側の溝G内の砂は、集砂ピット4まで移動する。次に、電動弁V4を閉じるとともに電動弁V5を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、下流側吐出口91から吐出される。この吐出を5分間継続することで、下流側の溝G内の砂は、集砂ピット4まで移動する。最後に、給水ポンプPを停止して電動弁V5を閉じ、揚砂ポンプ41を駆動して集砂ピット4に移動した砂を沈砂池1の外部に搬送する。以上の動作を所定時間毎に繰り返す。
【0059】
以上説明したように、他の実施形態の沈砂池10によれば、上流側溝形成壁80の上流側端部に上流側吐出口81を配置し、下流側溝形成壁90の下流側端部に下流側吐出口91を配置して、それぞれの吐出口から毎分2000リットルの水を上流側の溝Gと下流側の溝Gに向かって吐出しているので、溝に堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。また、この沈砂池10では、集砂ピット4の上流側と集砂ピット4の下流側にそれぞれ溝Gを設けることで、溝Gにおける延在方向の長さが短かくなる。溝Gにおける延在方向の長さを短くすることで、溝Gの途中に吐出口を省略でき、上流側トラフ8、下流側トラフ9の構造を簡略化できる。
【0060】
なお、以上説明した各実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 沈砂池
30 溝形成壁
300 壁底部分
301 第1の延在部
302 第2の延在部
303 段差部
4 集砂ピット
6 池底面
7 吐出ノズル
71 第1の吐出口
72 第2の吐出口
73 第3の吐出口
G 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池およびその集砂方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理システムには、下水または雨水などの汚水を受け入れ、その汚水に含まれている砂を池底部に沈降させた後、池底部に堆積した砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除く沈砂池が設けられているものがある。この沈砂池には、沈砂池の池底部分に堆積した砂を集めるためのスクリューコンベアなどの機械部分を有する機械式の集砂手段を備えているものが存在する。機械式の集砂手段を備えた沈砂池として、たとえば特許文献1に記載されたものが知られている。また、沈砂池には、沈砂池の池底部に堆積した砂を、複数の吐出口から吐出した流体の流れにより集砂ピットに向けて移動させる集砂手段を備えているものも存在する。このような吐出口を備えた沈砂池として、たとえば特許文献2〜4に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−160417号公報
【特許文献2】特開2001−276507号公報
【特許文献3】特開2002−159803号公報
【特許文献4】特開平9−70503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される機械式の集砂手段を備えた沈砂池は、スクリューコンベアなどの機械部分が動作して砂を集砂ピットに集めるため、その機械部分が摩耗したり、汚物などが機械部分に噛み込んでトラブルが生じる可能性がある。さらに、汚水中にある機械部分が腐食する可能性もあり、維持管理費が高くなるという問題がある。吐出口から吐出した流体の流れにより砂を集砂ピットに向けて移動させる集砂手段を備えた沈砂池は、機械式の集砂手段を備えた集砂池の様に機械部分の摩耗などによる問題は生じない。しかし、特許文献2に示される沈砂池は、沈砂池内の汚水を取り除いた後に吐出口から流体を吐出させるものであり、沈砂池内から汚水を取り除く機会が得られる沈砂池にしか適用できないという問題がある。また、特許文献3や特許文献4に示される沈砂池は、吐出口から吐出する水の圧力に頼って砂を移動させようとするものである。しかし、堆積した砂を水の圧力に頼って移動させようとしても、砂が十分に移動しなかったり、せっかく池底に堆積した砂が上方に舞い上がってしまい、思うように砂が移動しないという問題がある。特許文献4に示される沈砂池は、砂の舞い上がりを防止するために隔壁を設けるものであるが、隔壁によって砂の移動が阻害されたり、隔壁の上や中に砂が溜まってしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる工夫がなされた沈砂池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の沈砂池は、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
池底部に設けられ、沈降した砂が堆積する溝を形成する溝形成壁と、
前記池底部に設けられ、前記溝が接続した集砂ピットと、
前記溝形成壁に配置され、前記溝の延在方向における所定位置から該溝に流体を吐出する1又は複数の吐出口からなる吐出口ユニットとを備え、
前記吐出口ユニットは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するものであることを特徴とする。
【0007】
本発明の沈砂池によれば、吐出口ユニットから毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するので、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
【0008】
ここで、前記吐出ユニットが複数の吐出口からなるものである場合には、該複数の吐出口からの吐出量の単位時間当たりの総計が毎分1000リットル以上3000リットル以下であることになる。
【0009】
また、前記突出口ユニットは、前記溝の延在方向に間隔をあけて前記溝形成壁に複数配置されていてもよい。
【0010】
本発明の沈砂池において、前記池底部は、前記溝に連なる底面を備え、
前記底面は、前記溝に向かって下方へ傾斜したものであることが好ましい。
【0011】
前記底面が溝に向かって傾斜しているので、沈降した砂を溝に集めることができる。
【0012】
本発明の沈砂池において、前記溝形成壁は、壁底部分に前記集砂ピットに向かって延在した延在部を有するものであり、
前記吐出口は、前記延在部に沿って流体を吐出するものであることが好ましい。
【0013】
こうすることで、砂を溝に沿って効率的に移動できる。
【0014】
本発明の沈砂池において、前記溝形成壁は、前記集砂ピットに向かって段階的に深くなる階段形状の壁底部分を有し、
前記吐出口ユニットは、階段形状の壁底部分における上段部と下段部を繋ぐ段差部に配置されたものであることも好ましい。
【0015】
吐出口ユニットを段差部に配置することで、吐出口ユニットが砂の移動の妨げとならない。
【0016】
本発明の沈砂池において、前記溝形成壁は、少なくとも一部が板状の部材の内周面からなるものであり、
前記板状の部材の外周面の一部を前記吐出口ユニットにつながる内壁の一部とした吐出ノズルを備えていることも好ましい態様の一つである。
【0017】
この態様によれば、吐出ノズルの構成が簡略化できる上に、吐出ノズルの上下方向の厚みを抑制することができる。
【0018】
本発明の沈砂池の集砂方法は、受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において該砂を集める集砂方法であって、
前記砂を池底部に設けられた溝に沈降させる沈降ステップと、
前記溝の延在方向における所定位置から流体を該溝に吐出し、該溝に沈降した砂を該溝に接続した集砂ピットに向けて該流体の流れにより移動させる集砂ステップとを有し、
前記集砂ステップは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するステップであることを特徴とする。
【0019】
本発明の沈砂池の集砂方法によれば、吐出口ユニットから毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するので、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる沈砂池およびその集砂方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図である。
【図2】図1に示す沈砂池のA−A断面図である。
【図3】(a)は、トラフにおける図2で示したB1部を示した部分斜視図であり、(b)は、図2で示したB1部を拡大して示した部分断面図である。
【図4】(a)は、トラフと吐出ノズルを表す図2のC−C断面図であり、(b)は、(a)を上方からみた平面図である。
【図5】図5は、図2のD−D断面である。
【図6】(a)は、図2で示したE部を拡大して示した部分断面図であり、(b)は、(a)を左方から見た部分断面図である。
【図7】図1に示す沈砂池に設けられた給水設備のブロック図である。
【図8】吐出口から毎分3000リットル、毎分2000リットルおよび毎分1000リットルの水を吐出させたときの砂の移動距離を表すグラフである。
【図9】突出ノズルの変形例を示す部分断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態である沈砂池を幅方向の中央で切断した断面図である。
【図11】図10に示す沈砂池に設けられた給水設備のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である沈砂池は、下水処理システムの上流側に配置され、下水または雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に相当する沈砂池1を上方から見た平面図であり、図2は、図1に示す沈砂池1のA−A断面図である。
【0024】
図1に示すように、沈砂池1は、トラフ3と、集砂ピット4と、ポンプ井5とを備えた平面視長方形状の池である。以下、沈砂池1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図示しない下水管などから沈砂池1に流れ込んだ汚水は、沈砂池1内をゆっくりと下流側に流れていく。図1および図2では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。トラフ3は、沈砂池1の池底部に設けられたものである。池底部には
後述するように傾斜面6が設けられ、傾斜面6につながるようにトラフ3が設けられている。沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂は、沈砂池1の上流側で池底部に向かって沈降し、池底部に堆積する。
【0025】
ポンプ井5は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井5は、沈砂池1の最も下流側に配置されている。また、図2に示すように、ポンプ井5の底面が沈砂池1における最深部となっている。ポンプ井5の内部には、揚水ポンプ51が設けられている。この揚水ポンプ51は、ポンプ井5に貯留された汚水を沈砂池1の外部に移動するものである。揚水ポンプ51には揚水管52が接続されている。揚水ポンプ51によって吸引された汚水は、この揚水管52を通して不図示の沈殿池に送られる。図2に示すWLは汚水の水面を表している。なお、この水面WLの位置は、沈砂池1へ流れ込む汚水の量によって、トラフ3の底面からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
【0026】
池底部の、ポンプ井5よりも上流側の部分には、集砂ピット4が設けられている。集砂ピット4の内部には、揚砂ポンプ41が設けられている。この揚砂ポンプ41は、集砂ピット4の底面近傍に配置されており、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1の外部に搬送するものである。揚砂ポンプ41には揚砂管42が接続されている。揚砂ポンプ41によって吸引された砂は、この揚砂管42を通して沈砂池1の外部に送られる。
【0027】
池底部の、集砂ピット4よりも上流側の部分には、トラフ3が設けられている。図1に示すように、トラフ3は、沈砂池1の幅方向中央に設けられたものである。また、トラフ3は、第1のU字状部材31と、第2のU字状部材32と、第3のU字状部材33と、第1の接続部材34と、第2の接続部材35とから構成されている。第1の接続部材34は、第1のU字状部材31と第2のU字状部材32とを繋ぐものである。また、第2の接続部材35は、第2のU字状部材32と第3のU字状部材33とを繋ぐものである。本実施形態では、各U字状部材31,32、33の長手方向の長さはそれぞれ5mである。各U字状部材31、32、33は、板厚4mmのステンレス製の板材(本発明にいう板状の部材の一例に相当)を、断面U字形状に成形したものである。
【0028】
図3(a)は、トラフ3における図2で示したB1部を示した部分斜視図である。この図3(a)では、トラフ3を透明なものとして表している。また、図3(b)は、図2で示したB1部を拡大して示した部分断面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、この第1のU字状部材31と第2のU字状部材32は、下側部分となる半円筒状部分と上側部分となる2つの平面部分とから構成されている。第1のU字状部材31と第2のU字状部材32とは、半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔が異なる。本実施形態では、第1のU字状部材31の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ300mmであり、第2のU字状部材32の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ350mmである。第1の接続部材34は、板厚4mmのステンレス製の板材を打ち抜き加工したものである。第1のU字状部材31と第1の接続部材34は溶接により接合されており、第2のU字状部材32と第1の接続部材34も溶接により接合されている。
【0030】
図1及び図2に示した第3のU字状部材33と第2の接続部材35も板厚4mmのステンレス製の板材で形成されている。第3のU字状部材33の半円筒状部分の内径および平面部分の幅方向の間隔はそれぞれ400mmである。図2に示したB2部は、B1部と大きさが異なる他は同一の形状および構成を有するのでB1部のみ説明してB2部の説明は省略する。
【0031】
第1のU字状部材31の内周面310、第2のU字状部材32の内周面320、第3のU字状部材33の内周面(図示省略)、第1の接続部材34の下流側面340、第2のU字状部材32の下流側面(図示省略)、および後述する端面壁36(図6(a)参照)の下流側面360によって溝形成壁30が形成されている。この溝形成壁30によって、沈砂池1の最上流端部から集砂ピット4まで長手方向に延在する溝Gが形成されている。また、溝形成壁30の最下流側端部は、集砂ピット4側が開口しており、溝Gの最も下流側端部は集砂ピット4に接続されている。
【0032】
図3(b)に示すように、溝形成壁30の壁底部分300は、下流側の集砂ピット4に向かって段階的に深くなる階段形状を成している。この図3(b)でも、図の右側が上流側になり左側が下流側になる。壁底部分300は、階段形状の上段部となる第1の延在部301、階段形状の下段部となる第2の延在部302、およびこの階段形状の上段部と下段部とを繋ぐ段差部303とを有している。第1の延在部301と第2の延在部302は、長手方向に延在している。本実施形態では、第1の延在部301と第2の延在部302は、集砂ピット4に向かって水平に延在したものであるが、集砂ピット4に向かって下方に傾斜したものであってもよい。段差部303は、第1の延在部301と第2の延在部302に対して直角となっている部分である。段差部303には、水を吐出する第1の吐出口71が設けられている。本実施の形態における第1の吐出口71は、本発明の吐出口ユニットの一例に相当する。第1の吐出口71を段差部303に設けることで、上流側の吐出口(後述する第2の吐出口72)から水を吐出して溝Gの砂を移動させる際に、第1の吐出口71が砂の移動の妨げとなることを防止できる。なお、本実施形態における第1の吐出口71と第2の吐出口72の吐出口面積は、ともに2037mm2である。第1の吐出口71の上流側には、第1の吐出口71につながる空室75を形成する吐出ノズル7が設けられている。吐出ノズル7は、第1のU字状部材31の下部に固定されている。また、第1のU字状部材31の外周面311の一部が、吐出ノズル7の内壁の一部となっている。こうすることで、吐出ノズル7の構成を簡略化でき、吐出ノズル7の上下方向の厚みを薄くすることもできる。
【0033】
図4(a)は、トラフ3と吐出ノズル7を表す図2のC−C断面図であり、図4(b)は、図4(a)を上方からみた平面図である。なお、この図4(a)および図4(b)では、トラフ3と吐出ノズル7の板厚を誇張して表している。
【0034】
図4(a)に示すように、吐出ノズル7は第1のU字状部材31よりも幅方向に突出した流体受入口76を備えている。この流体受入口76には、水を供給する第1の給水管21(図7参照)が接続されている。図4(b)に示すように空室75は平面視でL字状をしている。流体受入口76から空室75に流入した水は、空室75で流れの向きが下流側に変化して第2の延在部302と平行になり、第2の延在部302に沿って第1の吐出口71から吐出される。第2の延在部302に沿って水を吐出することで、溝Gに堆積した砂を溝Gに沿って効率よく移動させることができる。
【0035】
図5は、図2のD−D断面である。この図5では背景を省略している。
【0036】
図5に示す様に、トラフ3の幅方向両側には傾斜面6が設けられている。この傾斜面6は、トラフ3に向かって下方に45度傾斜しており、沈砂池1の最上流端部から集砂ピット4の上流側端部の間で長手方向に延在している。沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、汚水が下流側へ流れていく課程において池底部に沈降していく。傾斜面6に沈降した砂は、傾斜した傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって沈降するので、沈降した砂を溝Gに集めることができる。なお、池底面の傾斜角度は、例えば30度であってもよく60度であってもよい。
【0037】
図6(a)は、図2で示したE部を拡大して示した部分断面図であり、図6(b)は、図6(a)を左方から見た部分断面図である。
【0038】
図6(a)に示すように、第1のU字状部材31の最上流端部となる端面には、板状の端面壁36が取り付けられている。上述したように、端面壁36の下流側面360は、溝形成壁30の一部を形成している。図6(b)に示すように、この端面壁36には、第2の吐出口72が設けられている。本実施の形態における第2の吐出口72も、本発明の吐出口ユニットの一例に相当する。第2の吐出口72よりも上流側には、吐出口72につながる空室78を形成するL型管77が設けられている。このL型管77は、平面視でL字型をした管であり、水を供給する第2の給水管22(図7参照)が接続されている。空室78に流入した水は、空室78で流れの向きが下流側に変化して第1の延在部301と平行になり、第2の吐出口72から第1の延在部301に沿って吐出される。第1の延在部301に沿って水を吐出することで、溝Gに堆積した砂を溝Gに沿って効率よく移動させることができる。
【0039】
図7は、図1に示す沈砂池1に設けられた給水設備のブロック図である。
【0040】
沈砂池1には給水ポンプPが設けられている。この給水ポンプPは、毎分2000リットルの水を供給するポンプである。各吐出口71,72,73につながる各給水管21、22、23と給水ポンプPとの間には、分岐管24が設けられている。なお、図7には、
図2のB2部に設けられた第3の吐出口73と第3の給水管23が示されている。また、各給水管21、22、23には、それぞれ電動弁V1、V2、V3が設けられている。
【0041】
次に、本実施形態における沈砂池1の作用について説明する。まず、沈砂池1に汚水が流れ込む。上流側に存在するトラフ3が延在する部分を汚水が流れる間に、沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、沈砂池1の池底部に沈降していく。上述したように、この部分では、傾斜した傾斜面6に沈降した砂も傾斜面6に沿って更にトラフ3に向かって沈降するので、沈降した砂は溝Gに集まり、溝Gに堆積する。次に、給水ポンプPを駆動するとともに、電動弁V2を開く。この時、電動弁V1およびV3は閉じられている。給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、分岐管24、第2の給水管22を経由して第2の吐出口72から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第1のU字状部材31の内周面310によって形成された溝G内の砂は、第2のU字状部材32の内周面によって形成された溝Gまで移動する。なお、本発明者の研究によれば、毎分2000リットルの水を5分間吐出すると、溝G内に沈殿している砂は吐出口から10m先まで移動する。本発明者の行った実験結果を図8に示す。図8は、U字状部材の内周面底部が水深が2mの位置になるまで汚水を入れた沈砂池において、第1のU字状部材31と同形状のU字状部材を用い、そのU字状部材の上部から更に100mm程度まで砂を堆積させて、吐出流速16m/secで、吐出口から毎分3000リットル、毎分2000リットルおよび毎分1000リットルの水を吐出させたときの砂の移動距離を表すグラフである。図8のグラフにおける横軸は、吐出口から水を吐出した時間(秒)であり、図8のグラフにおける縦軸は、砂の移動距離(cm)である。
【0042】
この図8のグラフに示される曲線から、むやみに吐出時間を増加しても効率良く砂を移動させることができず、効率よく砂を移動できるのは、水の吐出時間を5分程度とした場合であることが分かる。また、水の吐出時間を5分とした場合、毎分1000リットルの水を吐出すると砂の移動距離は5m強であり、毎分2000リットルでは砂の移動距離は約10mであり、毎分3000リットルでは砂の移動距離は約15mであることが分かる。
【0043】
第2の吐出口72から5分間継続して水を吐出させたら、電動弁V2を閉じるとともに電動弁V1を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、第1の吐出口71から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第2のU字状部材32の内周面320によって形成された溝G内の砂が、第3のU字状部材33の内周面によって形成された溝Gまで移動する。その後、電動弁V1を閉じるとともに電動弁V3を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、第3の吐出口73から吐出される。この吐出を5分間継続することで、第3のU字状部材32の内周面によって形成された溝G内の砂が、集砂ピット4まで移動する。最後に、給水ポンプPを停止して電動弁V3を閉じ、揚砂ポンプ41を駆動して集砂ピット4に移動した砂を沈砂池1の外部に搬送する。
【0044】
なお、本実施形態では、堆積した砂を効率良く所定距離移動させるには各吐出口からの吐出流量制御を行うことが最も効果的であることを前提にしているが、そうはいっても各吐出口71、72、73における水の吐出流速がいくらでも良いわけではなく、その吐出流速は、8m/sec以上24m/sec以下とすることが好ましい。8m/sec未満では、さすがに流速不足になってきてしまい、水圧との関係では砂を所定距離移動させられない場合も生じる。砂を所定距離移動させられなくなると、砂の移動方向に吐出口が多く必要になり、吐出口までの配管の数も多くなるため装置が雑多となり不経済である。24m/secよりも速くすると、溝Gに堆積した砂の一部が上方に舞い上がってしまい、その一部の砂が思うように移動しないことがある。さらに、集砂水として汚水を使用する場合、配管が小口径となりごみが詰まってしまう虞がある。また、各吐出口71、72、73における水の吐出圧は、0.1MPa以上0.3MPa以下とすることが好ましい。0.1MPa未満では、吐出口に加わる水圧と吐出ノズルおける圧力損失により、吐出口から水を吐出できないことがある。0.3MPaよりも大きいと、溝Gに堆積した砂の一部が上方に舞い上がってしまい、その一部の砂が思うように移動しないことがある。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の沈砂池1によれば、溝Gの延在方向(長手方向)に間隔をあけて各吐出口71、72、73を配置し、それぞれの吐出口71、72、73から毎分2000リットルの水を順に溝Gに吐出しているので、溝Gに堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。
【0046】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。以下の説明では、これまで説明したきた沈砂池1との相違点を中心に説明する。また、これまで説明した構成要素と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0047】
図9は、吐出ノズル7の変形例を示す部分断面図である。
【0048】
この変形例では、吐出ノズル7の先端に、段差部303よりも溝G側に突出した吐出管79を設けている。この吐出管79の下流側端部には水を吐出する吐出口74が設けられている。この変形例では、吐出管79の、溝Gに突出している外形部分が、溝形成壁30の一部となる。なお、この変形例においては、吐出管79の、溝Gに突出している部分の真下に砂が堆積してしまうと、その砂を移動させることが困難になるという欠点がある。
【0049】
また、上述の実施形態では、溝Gの延在方向における所定位置(5m間隔)毎に、吐出口71,72,73をそれぞれ一つづつ設けた例を説明したが、溝Gの延在方向における所定位置毎に複数の吐出口を設けてもよい。所定位置毎に複数の吐出口を設けた場合には、所定位置毎に設けられた複数の吐出口から吐出する水の総量が毎分2000リットルとなる。また、本実施形態では、トラフ3を一つのみ設けた例を説明したが、トラフ3を並列に複数設けてもよい。また、本実施形態では、U字状部材31、32、33を断面視U字状に形成したが、半円形状に形成してもよく、上方が開口した矩形状であってもよく、下側に向かって曲率半径が小さくなる半卵形管形状としてもよい。半卵形管形状とした場合、石などの重量物が管の底部に沈降していても、その重量物を水の流れにより移動させやすいという効果がある。
【0050】
また、各吐出口71、72、73から吐出する水は、毎分1000リットル以上3000リットル以下であれば、毎分2000リットルでなくてもよい。毎分1000リットル未満の場合、溝Gに堆積した砂が殆ど移動しないことがある。毎分3000リットルよりも多いと、溝Gに堆積した砂が上方に舞い上がってしまい思うように砂が移動しないことがある。このことをさらに詳細に説明すると、本実施形態では、堆積した砂を効率良く所定距離移動させるには各吐出口からの吐出流量制御を行うことが最も効果的であることを前提にしているが、仮に、吐出流速を16m/secとした場合、吐出流量を毎分800リットルに落とすと、砂が所定距離移動しなくなるばかりか、吐出口やその吐出口につながる配管が小口径となり、集砂水として汚水を使用する場合、ごみが詰まってしまう虞がある。さらに、砂が所定距離移動しなくなるために、砂の移動方向に吐出口が多く必要になり、吐出口までの配管の数も多くなるため装置が雑多となり不経済である。一方、吐出流速を同じく16m/secとした場合、吐出流量を毎分3200リットルに上げると、溝Gに堆積した砂の一部が上方に舞い上がってしまい、その一部の砂が思うように移動しないことがある。
【0051】
また、ポンプPを3台設け、各ポンプPを各吐出口71、72、73それぞれと接続し、各ポンプPから同時に水を供給してもよい。各ポンプPから同時に供給することで砂の移動時間を短縮することができる。なお、図8に示したように、各吐出口から吐出する水の量は、毎分1000リットル以上3000リットル以下の範囲内であれば、多い方が砂の移動距離を増加させることができる。ただし、既設の沈砂池を改修して吐出口を設置する場合、沈砂池の水位が上昇してしまわないように、吐出口から同時に吐出する水の量を揚水ポンプ51の揚水量よりも少なくすることが好ましい。換言すれば、吐出口から吐出される水の単位時間あたりの吐出量の総量を、該単位時間あたりにくみ上げる揚水ポンプを備えた態様であることが好ましい。
【0052】
続いて、他の実施形態について説明する。この他の各実施形態の説明でも、これまで説明したきた沈砂池1との相違点を中心に説明する。また、これまで説明した構成要素と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0053】
図10は、本発明の他の実施形態である沈砂池10を幅方向の中央で切断した断面図である。
【0054】
この他の実施形態の沈砂池10は、先の実施形態の沈砂池1とは集砂ピット4を設けた位置が異なる。この沈砂池10は、集砂ピット4の上流側に上流側トラフ8を有し、集砂ピット4の下流側に下流側トラフ9を有している。また、先の実施形態とは異なり、上流側トラフ8および下流側トラフ9には、接続部材が存在せず、単体のU字状部材によって形成されている。上流側トラフ8と下流側トラフ9は、それぞれ板厚4mmのステンレス製の板材を、断面U字形状に成形したものである。この他の実施形態では、上流側トラフ8の長手方向の長さは7mであり、下流側トラフ9の長手方向の長さは8mである。
【0055】
図10に示すX1部およびX2部は、先の実施形態の説明で用いた図6(a)および図6(b)に示した構成と同一の構成をしており、上流側トラフ8に取り付けられた端面壁の下流側面に上流側吐出口81(図11参照)が設けられ、下流側トラフ9に取り付けられた端面壁の上流側面に下流側吐出口91(図11参照)が設けられている。この他の実施形態では、上流側トラフ8の内周面と、上流側トラフ8に取り付けられた端面壁の下流側面によって上流側溝形成壁80が形成されている。この上流側溝形成壁80によって上流側の溝Gが形成されている。この上流側の溝Gの最も下流側端部は、集砂ピット4に接続されている。また、下流側トラフ9の内周面と下流側トラフ9に取り付けられた端面壁の上流側面によって下流側溝形成壁90が形成されている。この下流側溝形成壁90によって下流側の溝Gが形成されている。この下流側の溝Gの最も上流側端部は、集砂ピット4に接続されている。
【0056】
図11は、図10に示す沈砂池10に設けられた給水設備のブロック図である。
【0057】
沈砂池10には給水ポンプPが設けられている。この給水ポンプPは、毎分2000リットルの水を供給するポンプである。各吐出口81,91につながる各給水管25、26と給水ポンプPとの間には、分岐管27が設けられている。また、各給水管25、26には、それぞれ電動弁V4、V5が設けられている。
【0058】
次に、本実施形態における沈砂池10の作用について説明する。まず、沈砂池10に汚水が流れ込む。上流側トラフ8、下流側トラフ9および集砂ピット4が存在する部分を汚水が流れる間に、沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、沈砂池1の池底に沈降していく。この部分では、傾斜した傾斜面6に沈降した砂も傾斜面6に沿って上流側トラフ8或いは下流側トラフ9に向かって沈降する。次に、給水ポンプPを駆動するとともに、電動弁V4を開く。この時、電動弁V5は閉じられている。給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、分岐管27、給水管25を経由して上流側吐出口81から吐出される。この吐出を5分間継続することで、上流側の溝G内の砂は、集砂ピット4まで移動する。次に、電動弁V4を閉じるとともに電動弁V5を開く。これにより、給水ポンプPによって供給された毎分2000リットルの水は、下流側吐出口91から吐出される。この吐出を5分間継続することで、下流側の溝G内の砂は、集砂ピット4まで移動する。最後に、給水ポンプPを停止して電動弁V5を閉じ、揚砂ポンプ41を駆動して集砂ピット4に移動した砂を沈砂池1の外部に搬送する。以上の動作を所定時間毎に繰り返す。
【0059】
以上説明したように、他の実施形態の沈砂池10によれば、上流側溝形成壁80の上流側端部に上流側吐出口81を配置し、下流側溝形成壁90の下流側端部に下流側吐出口91を配置して、それぞれの吐出口から毎分2000リットルの水を上流側の溝Gと下流側の溝Gに向かって吐出しているので、溝に堆積した砂を効率良く所定距離移動させることができる。また、この沈砂池10では、集砂ピット4の上流側と集砂ピット4の下流側にそれぞれ溝Gを設けることで、溝Gにおける延在方向の長さが短かくなる。溝Gにおける延在方向の長さを短くすることで、溝Gの途中に吐出口を省略でき、上流側トラフ8、下流側トラフ9の構造を簡略化できる。
【0060】
なお、以上説明した各実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の実施形態や変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 沈砂池
30 溝形成壁
300 壁底部分
301 第1の延在部
302 第2の延在部
303 段差部
4 集砂ピット
6 池底面
7 吐出ノズル
71 第1の吐出口
72 第2の吐出口
73 第3の吐出口
G 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
池底部に設けられ、沈降した砂が堆積する溝を形成する溝形成壁と、
前記池底部に設けられ、前記溝が接続した集砂ピットと、
前記溝形成壁に配置され、前記溝の延在方向における所定位置から該溝に流体を吐出する1又は複数の吐出口からなる吐出口ユニットとを備え、
前記吐出口ユニットは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するものであることを特徴とする沈砂池。
【請求項2】
前記池底部は、前記溝に連なる底面を備え、
前記底面は、前記溝に向かって下方へ傾斜したものであることを特徴とする請求項1に記載の沈砂池。
【請求項3】
前記溝形成壁は、壁底部分に前記集砂ピットに向かって延在した延在部を有するものであり、
前記吐出口は、前記延在部に沿って流体を吐出するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の沈砂池。
【請求項4】
前記溝形成壁は、前記集砂ピットに向かって段階的に深くなる階段形状の壁底部分を有し、
前記吐出口ユニットは、階段形状の壁底部分における上段部と下段部を繋ぐ段差部に配置されたものであることを特徴とする請求項1乃至3記載の沈砂池。
【請求項5】
前記溝形成壁は、少なくとも一部が板状の部材の内周面からなるものであり、
前記板状の部材の外周面の一部を前記吐出口ユニットにつながる内壁の一部とした吐出ノズルを備えたことを特徴とする請求項4に記載の沈砂池。
【請求項6】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において該砂を集める集砂方法であって、
前記砂を池底部に設けられた溝に沈降させる沈降ステップと、
前記溝の延在方向における所定位置から流体を該溝に吐出し、該溝に沈降した砂を該溝に接続した集砂ピットに向けて該流体の流れにより移動させる集砂ステップとを有し、
前記集砂ステップは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するステップであることを特徴とする沈砂池の集砂方法。
【請求項1】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
池底部に設けられ、沈降した砂が堆積する溝を形成する溝形成壁と、
前記池底部に設けられ、前記溝が接続した集砂ピットと、
前記溝形成壁に配置され、前記溝の延在方向における所定位置から該溝に流体を吐出する1又は複数の吐出口からなる吐出口ユニットとを備え、
前記吐出口ユニットは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するものであることを特徴とする沈砂池。
【請求項2】
前記池底部は、前記溝に連なる底面を備え、
前記底面は、前記溝に向かって下方へ傾斜したものであることを特徴とする請求項1に記載の沈砂池。
【請求項3】
前記溝形成壁は、壁底部分に前記集砂ピットに向かって延在した延在部を有するものであり、
前記吐出口は、前記延在部に沿って流体を吐出するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の沈砂池。
【請求項4】
前記溝形成壁は、前記集砂ピットに向かって段階的に深くなる階段形状の壁底部分を有し、
前記吐出口ユニットは、階段形状の壁底部分における上段部と下段部を繋ぐ段差部に配置されたものであることを特徴とする請求項1乃至3記載の沈砂池。
【請求項5】
前記溝形成壁は、少なくとも一部が板状の部材の内周面からなるものであり、
前記板状の部材の外周面の一部を前記吐出口ユニットにつながる内壁の一部とした吐出ノズルを備えたことを特徴とする請求項4に記載の沈砂池。
【請求項6】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において該砂を集める集砂方法であって、
前記砂を池底部に設けられた溝に沈降させる沈降ステップと、
前記溝の延在方向における所定位置から流体を該溝に吐出し、該溝に沈降した砂を該溝に接続した集砂ピットに向けて該流体の流れにより移動させる集砂ステップとを有し、
前記集砂ステップは、毎分1000リットル以上3000リットル以下の流体を吐出するステップであることを特徴とする沈砂池の集砂方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【公開番号】特開2012−179577(P2012−179577A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45570(P2011−45570)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(508165490)アクアインテック株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(508165490)アクアインテック株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
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