説明

油入変圧器

【課題】ラジエターを交換する際に、変圧器タンクとラジエターとの間で絶縁油を遮断するラジエターバルブにおいて排油を行うことができる油入変圧器を提供する。
【解決手段】ラジエターの交換の際には、バタフライ弁の操作軸11を操作し、弁体12を回動して弁座14に着座させることでラジエターバルブ1を閉じる。ラジエターバルブ1のラジエター側には排油機構7が設けられている。排油機構7は、弁通路13の最下位置に形成された排油溝8と、排油溝8の溝底8aに開口して繋がりラジエターバルブ1の外部に通じるように形成された排油路9と、排油路9に取り外し可能に設けられているプラグ10とを備えている。プラグ10を取外すことによって、交換するラジエター5内の絶縁油6は排油機構7から排油される。ラジエター毎に排油弁を設ける必要がなくなり、ラジエターの取付部品点数を削減し、油入変圧器の製造コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエターを備えた油入変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧器においては鉄心やコイルは発熱体となるので、これを冷却するため、発生した熱を絶縁性の油やガスなどの冷却媒体で受熱し、当該冷却媒体をラジエターを通る経路で循環させ、ラジエターにて大気中へ放熱することが行われている。
【0003】
従来の変圧器の概略が図4に示されている。図4(a)は平面図、同(b)は(a)のA−A矢視図である。図4に示すように、油入変圧器20は、鉄心やコイルを収容している変圧器容器21を備えるとともに、変圧器容器21に対して対称に接続される態様で複数個のラジエター22が付設されている。変圧器容器21内で鉄心やコイルから受熱した絶縁油のような冷却媒体は、変圧器容器21に形成された流出口に接続される絶縁油流入用の接続パイプ23aを通じて各ラジエター22内に流入し、ラジエター22で放熱して冷却された後、ラジエター22から絶縁油流出用の接続パイプ23bを通じて流出して流入口から変圧器容器21内へと循環するようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
各ラジエター22は、上記の上部接続パイプ23a及び下部接続パイプ23bと、上部及び下部の接続パイプ23に接続された左右一対の波形フィン24,24(一部のみ符号を付す)とを備えている。各波形フィン24は、断面が波形になった鋼板製の放熱板として構成形されており、波形フィン24の上下の端面が溶接されており、その内部は接続パイプ23a,23bと接続されて絶縁油が流入・流出可能な中空部とされている。
【0005】
各ラジエター22において、ラジエター22内に充満している絶縁油は、下部の接続パイプ23bから流入口を経て変圧器容器21内に流入し、熱源であるコイル、鉄心等により温められ、それによって変圧器10を冷却する。温められた絶縁油は膨張し比重が小さくなり、流出口から上部の接続パイプ23aを経てラジエター22内に流入する。ラジエター22内では、波形フィン24の各中空部に流入した絶縁油は、外気で冷却され比重が大きくなり下方に移動し、下部の接続パイプ23bを通り流入口から再び変圧器容器21に戻る。このように、冷却媒体としての絶縁油は、自然対流により油入変圧器10とラジエター22とを循環している。
【0006】
ラジエター22を備えた油入変圧器10において、ラジエター22の交換作業を行う場合、油入変圧器10のラジエター22〜変圧器容器21(タンク)間にラジエターバルブを備えており、ラジエターバルブを閉じてラジエター22と変圧器容器21との間を遮断してから、ラジエター22内の油だけをラジエター下部に設けた排油弁より排油している。変圧器容器21内の油は、閉弁状態にあるラジエターバルブによって外部に漏れることがない。また、絶縁油の交換作業においては、排油弁から油入変圧器10内の絶縁油を排油している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−3822号公報(段落0014〜0015、0020;図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のラジエター構造では、交換するラジエター内の油だけを排油するためにはラジエターにラジエターバルブとは別に専用の排油弁をラジエターに設ける必要がある。ラジエター毎に排油弁を独立して設けることになるため、排油弁のための材料費・製造費を要し、ラジエター付きの油入変圧器の製造コストが上昇する一要因となっている。
【0009】
そこで、ラジエター付きの油入変圧器における製造コストの上昇要因が、ラジエター毎にラジエターバルブ・排油弁を各々独立して設けることによる製造費・材料費の増大であることに着目して、ラジエターバルブから排油を行う点に解決すべき課題がある。
この発明の目的は、ラジエターバルブから排油を行うことで、ラジエター付きの油入変圧器における製造コストの上昇を抑えて、使い勝手の良い油入変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明による油入変圧器は、コイル及び鉄心とともに前記コイル及び鉄心の冷却用としての冷却油が入れられた変圧器容器と、前記変圧器容器との間で前記冷却油を冷却するラジエターと、前記変圧器容器と前記ラジエターとを通じて前記冷却油を循環させるため前記変圧器容器と前記ラジエターとを接続する接続パイプと、前記接続パイプに設けられて前記冷却油の通過を遮断するラジエターバルブとを備えており、前記ラジエターバルブに前記冷却油を排出する排油機構を設けたことを特徴としている。
【0011】
前記排油機構は、前記ラジエターバルブの開閉される弁通路においてバルブ開閉位置よりも前記ラジエター側に設けられている。ラジエター接続側に排油溝を形成することで、前記ラジエターバルブが閉じられたときにラジエター側の絶縁油が排油溝を通じて排油される。また、前記排油機構は、前記弁通路の最下位置に形成された排油溝と、当該排油溝に開口して繋がり前記ラジエターバルブの外部に通じるように形成された排油路と、当該排油路に取り外し可能に設けられているプラグとを備えている。排油溝をラジエターバルブの弁通路の最下位置に形成することで、排油時には、ラジエター側の絶縁油が残すことなく排油される。更に、前記ラジエターバルブをバタフライ弁として構成し、前記排油溝は前記バタフライ弁の弁座に設けられているストッパに沿って形成することができる。バタフライ弁の弁体はストッパを越えて排油溝側に動くことはないので、弁体と排油溝との干渉が生じることはない。
【発明の効果】
【0012】
本発明による油入変圧器によれば、ラジエターバルブに排油弁の機能が集約されるので、ラジエター毎に独立した排油弁を設ける必要がなくなる。それにより、取付部品点数を削減し、ラジエターの取付部品を削減することができるため、ラジエターひいては油入変圧器の製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はラジエターを備えた本発明による油入変圧器の一実施例を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示す油入変圧器におけるラジエターバルブを一部を破断して示す構造図である。
【図3】図3は、図2に示すラジエターバルブの要部を示す斜視図である。
【図4】図4は、従来の変圧器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はラジエターバルブを設けた油入変圧器を示す。ラジエターバルブ1は、油入変圧器タンク2の下部に設けられた取付座4に取り付けて配置されている。ラジエター5は、下側ではラジエターバルブ1に対して、また上側では油入変圧器タンク2の上部の取付座3とに対して、それぞれ流入側(上部側)の接続パイプ16aと流出側(下部側)の接続パイプ16bとを介して取付けられた状態で配置される。接続パイプ16bは、絶縁油の循環を考慮してラジエター5の底部のレベルに接続されているので、ラジエター5内の絶縁油の排油に際いては、絶縁油はラジエター5内に残ることなく外部に排出可能となっている。
【0015】
ラジエター5及び油入変圧器タンク2内は、絶縁油6で満たされている。絶縁油6は、従来の油入変圧器の場合と同様にして、コイル及び鉄心が収容されている油入変圧器タンク2と、ラジエター5と、接続パイプ16a,16bとを通じて、コイル及び鉄心から熱を受けてラジエター5で放熱・冷却されることによって自然対流で循環する。
【0016】
図2はラジエターバルブ1について、その一部を破断した詳細図である。ラジエターバルブ1は、内部の弁通路13を直径方向に延びる操作軸11の回りに回動して、弁通路13を開閉する弁体12を備えたバタフライ弁である。弁通路13の内周には、弁体12が当接して弁通路13を遮断する弁座14が備わっている。操作軸11の外部に突出する軸端部11aはキャップ15によって覆われており、誤操作等から保護している。
【0017】
ラジエターバルブ1のバルブ〜ラジエター5間には排油機構7が設けられている。図3には、ラジエターバルブ1の排油機構7に臨んで、拡大して示す斜視図である。即ち、排油機構7は、ラジエターバルブ1のラジエター5側の部位に削設された排油溝8と、排油溝8の溝底8aに開口して繋がりラジエターバルブ1の外部に通じるように形成された排油路9と、排油路9に取り外し可能に設けられており、通常は栓として排油路9を閉じておくためのプラグ10とを備えている。排油溝8は弁通路13において、弁通路13の長手方向の幅よりも周方向に長い弧状に形成するのが好ましい。
【0018】
ラジエターバルブ1は、排油溝8が弁通路13の最下位置となるように、その取付け状態を調節して取付座4に取り付けられる。こうした配置によって、排油溝8は、ラジエター5及び下部の接続パイプ16bを含めて最も下位置を占めるので、ラジエター5及び接続パイプ16b内の絶縁油6は、ラジエター5及び接続パイプ16b内に残留することなく、全量が排油機構7を通じて排油される。排油溝8はバタフライ弁の弁座14に設けられているストッパ14aに沿って形成されている。バタフライ弁の弁体12はストッパ14aを越えて排油溝8側に移動することはないので、弁体12と排油溝8との干渉は生じることがない。
【0019】
ラジエターバルブ1のこうした構造により、ラジエター5を交換する際には、まず、キャップ15を取外してバタフライ弁の操作軸11を操作し、弁体12を回動して弁座14に着座させることで、ラジエターバルブ1を閉じる。その後、排油機構7のプラグ10を取外すことによって、交換するラジエター5内の絶縁油6だけを排油機構7から排油することができる。
【0020】
その結果、ラジエター5毎に排油弁を設ける必要がなくなり、取付部品点数を削減するとともに、ラジエター5の取付部品についても削減することができるため、油入変圧器の製造コストの低減を図ることができる。なお、絶縁油のみの交換の場合も、ラジエターバルブ1を閉じることなく、排油機構7を操作することで、排油機構7を通じて排油することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ラジエターバルブ 2 油入変圧器タンク
3 上部取付座 4 下部取付座
5 ラジエター 6 絶縁油
7 排油機構
8 排油溝 8a 溝底
9 排油路 10 プラグ
11 操作軸 12 弁体
13 弁通路
14 弁座 14a ストッパ
15 キャップ 16a,16b 接続パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル及び鉄心とともに前記コイル及び鉄心の冷却用としての冷却油が入れられた変圧器容器と、前記変圧器容器との間で前記冷却油を冷却するラジエターと、前記変圧器容器と前記ラジエターとを通じて前記冷却油を循環させるため前記変圧器容器と前記ラジエターとを接続する接続パイプと、前記接続パイプに設けられて前記冷却油の通過を遮断するラジエターバルブとを備え、
前記ラジエターバルブに前記冷却油を排出する排油機構を設けたことを特徴とする油入変圧器。
【請求項2】
前記排油機構は、前記ラジエターバルブの開閉される弁通路においてバルブ開閉位置よりも前記ラジエター側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の油入変圧器。
【請求項3】
前記排油機構は、前記弁通路の最下位置に形成された排油溝と、当該排油溝に開口して繋がり前記ラジエターバルブの外部に通じるように形成された排油路と、当該排油路に取り外し可能に設けられているプラグとを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の油入変圧器。
【請求項4】
前記ラジエターバルブはバタフライ弁として構成されており、前記排油溝は前記バタフライ弁の弁座に設けられているストッパに沿って形成されていることを特徴とする請求項3記載の油入変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−40588(P2011−40588A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187016(P2009−187016)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】