説明

油処理剤及びこの油処理剤を利用した土壌改良剤

【課題】
従来の廃食油の処理剤は、下水や河川に流すタイプは配管に付着や環境汚染の問題があった。固形にしてごみとして捨てるタイプは回収、焼却の手間と二酸化炭素削減に寄与していない問題があった。土壌処理剤にするタイプは、土壌改良効果が低い問題があった。
【解決手段】
本油処理剤はケイカルと木質の粉砕粉を配合した混合物を主原料としたものである。本油処理剤に廃食油を混ぜることで、ケイカルの主成分である可溶性けい酸が油分を浸透吸収し、油の外部流出を防止する。またアルカリ分が土を中和調整柔らかくし土壌改良効果をもたらす。また木質の粉砕粉として椎茸の廃榾粉砕粉を使用することで土壌と混合した後の分解時間を早くし植物の発育に不可欠な窒素分を補い肥料効果を高めたものである。本油処理剤を土壌改良剤として使用することで環境汚染への影響を完全になくすとともに、自然環境保護の観点からも利用価値の高いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済みのてんぷら油等の廃食油を有用な土壌改良剤に利用可能とした油処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭等における使用済みのてんぷら油等の廃食油の処理に関しても地球環境の保全また資源の再利用とする気運が高まっている。このような社会背景のもと、既に多くの廃食油処理剤が提案され市販されている。ひとつは廃食油に添加し乳化させ下水や河川に流すタイプのものである。もしくは固化させて燃えるごみとして焼却処分するタイプのものである。またこの他にも木片粉、パーライト粉、シリカ等の混合物によって油分を吸収し土壌に混合出来るタイプのものである(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−70587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した下水や河川に流すタイプのものは、時間の経過とともに油分が分離し自然環境の汚染もしくは下水の配管に吸着し問題になっている。また焼却処分するタイプのものは回収および焼却に手間がかかった他に昨今の二酸化炭素削減運動に逆行し環境保全に寄与していないものである。もうひとつの土壌に混合できるタイプのものは、時間の経過とともに油分は分解するものの土壌改良剤等として効果が低かった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするものであり、使用済の廃食油を土壌改良剤もしくは肥料としても有効に利用できる油処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明に係る請求項1記載の油処理剤は、ケイカルと木質の粉砕粉を配合した混合物を主原料とすることを特徴とする。
【0006】
また本発明に係る請求項2記載の油処理剤は、木質の粉砕粉として椎茸の廃榾粉砕粉を使用することを特徴とする。
【0007】
また本発明に係る請求項3記載の油処理剤は、さらにEMパウダーを加えることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る請求項4記載の油処理剤は、さらに油分解性菌を加えることを特徴とする。
【0009】
また本発明に係る請求項5記載の土壌改良剤は、前記油処理剤に廃食油を吸収させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
原料であるケイカルは農業用土壌改良剤として広く普及しているものである。また木質の粉砕粉として使用する椎茸栽培終了後の廃榾は既に長期間椎茸菌により分解されていて、園芸栽培者等が有効な堆肥として利用しているものであり、通常の木片粉よりはるかに早く土壌で分解し肥料としての効果も見込めるものである。食油は自然界の植物から採取されたものであり、有害物質は含まれていないため土壌の微生物でも分解されるものである。
【0011】
従って、ケイカルと木質の粉砕粉として使用する椎茸の廃榾粉砕粉を混合した本発明の油処理剤は、家庭等の使用済みてんぷら油等の廃食油を有効に土壌改良剤もしくは肥料として有用できるものであり、自然環境保護の観点からも利用価値の高いものである。
【0012】
昨今、椎茸栽培農家の廃榾は農地等に野積みされ、悪臭や害虫の発生等の問題を抱えており、油処理剤の原料とすることで有効な再利用となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の油処理剤について詳しく説明する。本油処理剤の主原料はケイカルと木質の粉砕粉、具体的には椎茸の廃榾粉砕粉である。なおケイカルは、農業用土壌改良剤として広く普及しているものであり、けい酸質原料と石灰質原料を主成分とする多孔体を粉粒体としたものである。今回ケイカルとしては砂状の粒剤を使用し、椎茸の廃榾は約10ミリ以下に乾燥粉砕されたものを使用するものとする。前述のケイカルと椎茸の廃榾粉砕粉を同量の体積比で混合したものを主原料とする。
【0014】
本発明の油処理剤に対して使用済みのてんぷら油等の廃食油を混合すると、主原料の一部であるケイカルの主成分である可溶性けい酸が油分を浸透吸収し、油分がもれて外部に流出することを防止するとともに、石灰質原料のアルカリ分が土を中和調整し固まった土を柔らかく土壌改良するものである。また椎茸の廃榾粉砕粉を使用することで、土壌と混合した後の分解時間を早くし植物の発育に不可欠な窒素分を補い肥料効果を高めることができる。
【0015】
本発明の油処理剤に対して廃食油を同体積以下で混合した場合、可溶性けい酸が完全に油分を吸収し外部に油分が流出しないことを確認している。
【0016】
なお、木質の粉砕粉として、椎茸の廃榾粉砕粉を使用する説明をしてきたが、例えばオガ粉等の木質粉砕粉であれば分解速度は低下するものの充分利用可能である。
【0017】
また、本発明の油処理剤にEMパウダーを加えることで、EMパウダーの強い抗酸化力が、酸化(腐敗)から抗酸化(発酵)を促進し土壌改良効果と肥料効果を高めるものである。なお、EM(菌)とは、有用性微生物群のことである。
【0018】
また、本発明の油処理剤に油分解性菌を加えることで、油の分解を早めて土壌改良効果を促進させるものである。
【0019】
次に、本発明の油処理剤を利用して土壌改良剤を製造するための手順を図1に基づいて説明する。図に示すように廃食油1は、常温まで冷ましてから100ml分をコップに移し替える。次に別容器3に油100mlと本処理剤2を100g投入し油が吸収するまで良くかき混ぜる。約3〜5分で完全に吸収させる処理が終わったら土壌改良剤として使用可能となる。
【0020】
また、本発明の油処理剤をジッパー付スタンドタイプのポリエチレン袋に予め入れて使用することができる。この場合、廃食油と本油処理剤を計量し別容器に移し替えるような上述した作業をせずに、常温まで冷ました廃食油を直接前述の袋に油が吸収する量まで投入し、良くかき混ぜて吸収させた後ジッパーで封をすることで簡単に保管でき、必要時に土壌改良剤として使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本油処理剤を利用して、土壌改良剤を製造するための手順を示す流れ図。
【符号の説明】
【0022】
1:廃食油
2:油処理剤
3:容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイカルと木質の粉砕粉を配合した混合物を主原料とすることを特徴とする油処理剤。
【請求項2】
前記木質の粉砕粉は、椎茸の廃榾粉砕粉であることを特徴とする請求項1記載の油処理剤。
【請求項3】
前記油処理剤にさらにEMパウダーを加えることを特徴とする請求項1又は2記載の油処理剤。
【請求項4】
前記油処理剤にさらに油分解性菌を加えることを特徴とする請求項1又は2記載の油処理剤。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の油処理剤に廃食油を吸収させたことを特徴とする土壌改良剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−56792(P2008−56792A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234880(P2006−234880)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(306030390)
【Fターム(参考)】