説明

油圧ウインチの制御装置

【課題】燃費を悪化することなくウインチ用モータを最高速で駆動する。
【解決手段】油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2からの圧油により回転するウインチドラム駆動用の可変容量型油圧モータ3と、油圧ポンプ2から油圧モータ3への圧油の流れを制御する方向制御弁4と、油圧モータ2のモータ容量を変更する容量変更手段20と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段32と、回転数検出手段32により検出されたエンジン回転数が所定値Naより大きいと、容量変更手段20により変更可能なモータ容量の最小値をqmin1に制限し、エンジン回転数が所定値Na以下のときは、qmin1よりも小さいqmin2に制限する容量制限手段22,30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量モータを有する油圧ウインチの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウインチドラム駆動用の油圧モータの駆動圧に応じてモータ容量を制御するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この装置によれば、エンジンにより駆動される油圧ポンプからの圧油を油圧モータに供給し、油圧モータを駆動する。モータ駆動圧が小さいときはモータ容量は小さくなる。
【0003】
【特許文献1】実開平6−82407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、油圧モータを最高速で駆動するためには、エンジン回転数を最大としてポンプ流量を増やす必要があり、燃費の悪化および騒音の増大を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による油圧ウインチの制御装置は、油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により回転するウインチドラム駆動用の可変容量型油圧モータと、油圧ポンプから油圧モータへの圧油の流れを制御する方向制御弁と、油圧モータのモータ容量を変更する容量変更手段と、エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が所定値より大きいと、容量変更手段により変更可能なモータ容量の最小値を第1の最小容量に制限し、エンジン回転数が所定値以下のときは、モータ容量の最小値を第1の最小容量よりも小さい第2の最小容量に制限する容量制限手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明による油圧ウインチの制御装置は、油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により回転するウインチドラム駆動用の可変容量型油圧モータと、油圧ポンプから油圧モータへの圧油の流れを制御する方向制御弁と、油圧モータのモータ容量を変更する容量変更手段と、容量変更手段により変更可能なモータ容量の最小値を第1の最小容量または第1の最小容量より小さい第2の最小容量に制限する容量制限手段と、容量制限手段によりモータ容量の最小値が第2の最小容量に制御されると、第1の最小容量に制御されたときよりも、エンジン回転数の上限を小さくする回転数制御手段とを備えることを特徴とする。
巻下げ操作を検出する巻下げ検出手段を有し、巻下げ検出手段による巻下げ操作検出を条件としてモータ容量の最小値を第2の最小容量に制限することもできる。
油圧モータと方向制御弁の間の油圧回路に、カウンタバランス弁を設けることが好ましい。
容量変更手段を、移動量に応じてモータ容量を変更する第1のピストンと、第1のピストンの移動量を第1の最小容量に対応した第1の位置および第2の最小容量に対応した第2の位置に制限する第2のピストンとを有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エンジン回転数が所定値以下のときにモータ容量の最小値を小さくするようにしたので、エンジン回転数を低減してモータを最高速で駆動することができ、燃費が向上するとともに騒音を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図1〜図6を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るウインチの制御装置が適用されるクレーンの外観側面図である。図1のクレーンは、走行体101と、走行体101上に旋回可能に搭載される旋回体102と、旋回体102に起伏可能に支持されたブーム103とを有する。旋回体102には巻上ドラム105と起伏ドラム107が搭載され、巻上ドラム105の駆動により巻上ロープ104が巻き取りまたは繰り出され、吊り荷106が昇降する。また、起伏ドラム107の駆動により起伏ロープ108が巻き取りまたは繰り出され、ブーム103が起伏する。
【0008】
図2は、巻上ドラム駆動用のウインチの油圧回路図である。この油圧回路は、エンジン1により駆動される可変容量型の油圧ポンプ2と、一対のメイン管路L1,L2を介して油圧ポンプ2から供給される圧油によって駆動する可変容量型油圧モータ3と、油圧ポンプ2から油圧モータ3への圧油の流れを制御する方向制御弁4と、ポンプ吐出圧を制限するリリーフ弁5と、ウインチの駆動を指令する操作レバー6と、操作レバー6の操作量に応じたパイロット圧を発生するパイロット弁7と、方向制御弁4と油圧モータ3の間に介装されたカウンタバランス弁8と、管路L1,L2の高圧側の圧油を選択するシャトル弁9と、油圧モータ3のモータ容量(モータ傾転)を制御するモータ容量制御装置20とを有する。
【0009】
操作レバー6を巻上げまたは巻下げ操作すると、その操作量の増加に伴い方向制御弁4に作用するパイロット圧が大きくなり、方向制御弁4が位置イ側または位置ロ側に切り換わる。方向制御弁4が位置イ側に切り換わると、油圧ポンプ2の吐出油が管路L2を介して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3が巻上げ方向に回転する。方向制御弁4が位置ロ側に切り換わると、油圧ポンプ2の吐出油が管路L1を介して油圧モータ3に供給され、油圧モータ3が巻下げ方向に回転する。
【0010】
油圧ポンプ2のポンプ容量(ポンプ傾転)はレギュレータ2aにより制御される。レギュレータ2aにはポンプ吐出圧がフィードバックされ、ポンプ吐出圧とポンプ容量とにより決定される負荷がエンジン出力を上回らないように、ポンプ容量は、いわゆる馬力制御によりポンプ吐出圧に応じて制御される。この馬力制御によれば、ポンプ吐出圧が所定値以下ではポンプ容量は最大となる。この際、エンジン回転数を高めればポンプ吐出量が増大し、モータ2の回転速度が増速されるが、これでは燃費の悪化および騒音の増大を伴う。そこで、本実施の形態では以下のようにモータ制御装置20を構成する。
【0011】
図2に示すように、モータ制御装置20は、ピストンケース21C内の油室R1,R2に面して設けられて、モータ傾転を変化させるピストン21Aと、ピストンケース21C内の油室R2,R3に面して設けられて、ピストン21Aの移動を制限するピストン21Bと、油室R1,R3同士を連通または遮断する電磁切換弁22と、シャトル弁9から油室R1への油の流れを制御する制御弁23と、シャトル弁9から制御弁23への圧油の流れをカットするカットオフ弁24と、制御弁23に作用するパイロット圧を制御するパイロット制御弁25とを有する。
【0012】
油室R1に面したピストン21Aの径は、油室R2に面したピストン21Aの径よりも大きく、かつ、油室R3に面したピストン21Bの径よりも小さい。したがって、制御弁23とカットオフ弁24とがそれぞれa位置に切り換わり、油室R1,R2に互いに等しい圧力が作用した状態では、ピストン21Aはx2方向に移動し、モータ傾転は減少する。一方、制御弁23がc位置に切り換わり、油室R1の圧力がタンク圧になると、油室R2の圧力によりピストン21Aはx1方向に移動し、モータ傾転は増加する。このときのモータ傾転の変化は、フィードバック機構26により制御弁23にフィードバックされ、ピストン21Aと制御弁23とフィードバック機構26はサーボ機構として作用する。
【0013】
制御弁23はパイロット制御弁25を介して供給される油圧源28からのパイロット圧に応じて切り換わる。例えばオペレータがスイッチ操作により1速(低速)を指令するとパイロット制御弁25はb位置に切り換わり、2速(高速)を指令するa位置に切り換わる。パイロット制御弁25がa位置に切り換わると、制御弁23はa位置に切り換えられ、シャトル弁9からの圧油が油室R1に導かれてピストンがx2方向に移動し、モータ傾転が減少する。モータ傾転の減少量はフィードバック機構26により制御弁23にフィードバックされ、制御弁23はb位置に切り換わり、モータ傾転が安定する。
【0014】
カットオフ弁24は、シャトル弁9からの圧油の圧力に応じて切り換わる。シャトル弁9からの圧力がばね24aの付勢力(カットオフ圧)よりも小さいと、カットオフ弁24はa位置に切り換わり、シャトル弁9から油室R1への圧油の供給が許容される。シャトル弁9からの圧力がカットオフ圧と等しくなると、カットオフ弁24はb位置に切り換わり、油室R1への圧油の供給が禁止され、モータ傾転の減少が防止される。シャトル弁9からの圧力がカットオフ圧より大きくなると、カットオフ弁24はc位置に切り換わり、油室R1の圧油をタンクに戻し、モータ傾転が大きくなる。
【0015】
ピストン21Aの動きについて詳しく説明する。制御弁23がc位置に切り換わり、油室R1の圧力がタンク圧になると、ピストン21Aはx1方向に移動する。このとき、図3(a)に示すようにピストン21Aの端面がピストンケース21Cの端部210に当接すると、モータ傾転は最大(最大傾転qmax)となる。
【0016】
一方、制御弁23とカットオフ弁24とがそれぞれ図2のa位置に切り換わると、ピストン21Aはx2方向に移動し、モータ傾転は減少する。このとき、電磁切換弁22がa位置に切り換わっていれば、図3(b)に示すように油室R3の圧力によりピストン21Bは、ピストンケース21Cの段部211に当接するまでx1方向に移動する。これによりピストン21Aのx2方向への移動がピストン21Bにより制限され、ピストン21Aがピストン21Bの端面に当接すると、モータ傾転は最小(小傾転qmin1)となる。
【0017】
この状態から電磁切換弁22がb位置に切り換わると、油室R3の圧力がタンク圧となるため、ピストン21Aに作用する圧力がピストン21Bに作用する圧力よりも大きくなり、図3(c)に示すようにピストン21Aはピストン21Bを押動しつつx2方向に移動する。これによりモータ3の最小傾転は上記小傾転qmin1よりも小さい超小傾転qmin2となる。なお、この場合のピストン21Aの移動量は、例えばピストン21Bの端面がピストンケース21Cの端部212に当接することで制限される。電磁切換弁22の切換は後述するように制御される。
【0018】
図4は、本実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。コントローラ30には操作レバー6の巻下げ操作を検出する巻下検出器31と、エンジン回転数Nを検出する回転数検出器32と、油室R1とR2の差圧ΔPを検出する差圧検出器33と、省エネモードを指令する省エネモードスイッチ34とが接続されている。巻下検出器31は、例えば方向制御弁4に作用するパイロット圧を検出する圧力センサにより構成できる。差圧検出器33は、例えば油室R1,R3にそれぞれ接続された一対の圧力センサにより構成できる。
【0019】
コントローラ30は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ30では、上記各検出器31〜34とスイッチ34からの信号に基づき以下のような処理を実行し、電磁切換弁22とエンジン制御部1aにそれぞれ制御信号を出力する。
【0020】
図5は、コントローラ30で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばエンジンキースイッチのオンにより開始される。ステップS1では、各検出器31〜33とスイッチ34からの信号を読み込む。
【0021】
ステップS2では、巻下検出器31からの信号により操作レバー6が巻下操作されたか否かを判定する。例えば方向制御弁4の巻下側パイロットポートに作用する圧力が所定値以上のときに巻下操作ありと判定する。ステップS2が肯定されるとステップS3に進み、否定されるとステップS6に進む。ステップS3では、省エネモードスイッチ34がオンか否かを判定する。ステップS3が肯定されるとステップS4に進み、否定されるとステップS6に進む。
【0022】
ステップS4では、エンジン回転数Nが予め定めた所定値Na以下か否かを判定する。所定値Naは、モータ傾転が超小傾転qmin2となったときにモータ過回転を防止するような値に設定される。エンジン1の最高回転数をNmaxとすると、所定値Naは例えばNmaxの50%程度である。なお、エンジン回転数は、エンジン回転数制御部1aにおいて、例えばペダルやレバー等のエンジン回転数指令部材で指令した指令値となるように制御される。ステップS4が肯定されるとステップS5に進み、否定されるとステップS6に進む。ステップS5では、電磁切換弁22をb位置に切り換える。これによりモータ最小傾転が図3(c)に示す超小傾転qmin2となる。
【0023】
ステップS6では、電磁切換弁22をa位置に切り換える。次いで、ステップS7で、差圧検出器33により検出された差圧ΔPが所定値ΔPa以上か否かを判定する。これは電磁切換弁22が確実にa位置に切り換わっているか否かの判定である。すなわち電磁切換弁22がb位置に切り換わったままスティックすると、電磁切換弁22にa位置への切換信号を出力しても電磁切換弁22はa位置に切り換わらず、油室R1とR3に差圧ΔPが発生する。この差圧ΔPの発生の有無をステップS7で検出する。なお、ステップS6で電磁切換弁22の切換信号を出力後、差圧ΔPが安定するまで所定時間待機してから差圧ΔPを検出するようにしてもよい。ステップS7が肯定されるとステップS8に進む。
【0024】
ステップS8では、エンジン回転数制御部1aに制御信号を出力し、エンジン回転数の上限を所定値Naに制限する。例えばエンジン回転数指令部材によるエンジン回転数の指令値Nbと所定値Naとを比較し、Na≦Nbであればエンジン回転数をNaに制御し、Na>Nbであればエンジン回転数をNbに制御する。これによりエンジン回転数は少なくとも所定値Na以下となり、電磁切換弁22がスティックしてモータ最小傾転が超小傾転qmin2となった場合に、油圧モータ3が過回転することを防止できる。
【0025】
本実施の形態の動作をまとめると次のようになる。操作レバー6の巻下げ操作時に、エンジン回転数が所定値Na以下であり、かつ、省エネモードスイッチ34がオンされると、電磁切換弁22はb位置に切り換わる(ステップS5)。このとき制御弁23とカットオフ弁24がともにa位置に切り換わると、モータ最小傾転は超小傾転qmin2となる。これによりモータ回転数を増速することができ、エンジン回転数が所定値Na以下の状態で油圧モータ3を最高速で駆動することができる。エンジン回転数が所定値Na以下のときにモータ最小傾転を超小傾転qmin2とするので、モータ3の過回転も防止できる。
【0026】
この場合、巻下げ時には、モータ入口側の負荷圧をそれほど大きくしなくてもカウンタバランス弁8が開口する。このためエンジン回転数が所定値Na以下でも十分な巻下げ速度を得ることができる。負荷圧が大きい場合は、油室R2の圧力が上昇し、モータ傾転は最大傾転qmaxとなる。したがって、吊り荷が重い場合に、モータ3が過回転することを防止できる。操作レバー6を巻上げ操作すると、電磁切換弁22はa位置に切り換わる(ステップS2→ステップS6)。したがって、巻上げ操作時には図3(a)の最大傾転qmaxと図3(b)の小傾転qmin1の間でモータ傾転が変化する。
【0027】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)操作レバー6の巻下げ操作、かつ、エンジン回転数が所定値Na以下、かつ、省エネモードスイッチ34がオンを条件として、電磁切換弁22をb位置に切り換え、モータ最小傾転を超小傾転qmin2とするようにした。これによりエンジン回転数を低減した状態でモータ3を最高速で駆動することができ、省エネを実現できるとともに、騒音を低減できる。
(2)ウインチ駆動用回路にカウンタバランス弁8を設けるので、負荷圧が巻下げ速度に与える影響は少なく、エンジン回転数を低減した状態でも十分な巻下げ速度を得ることができる。
【0028】
(3)ピストンケース21C内に一対のピストン21A,21Bを設け、ピストン21Bによりピストン21Aの移動を制限するので、モータ最小傾転を精度よく小傾転qmin1および超小傾転qmin2に制限できる。これに対し、例えば比例電磁弁等によりピストン21Aに作用する圧力を2段階に制御してモータ最小傾転を小傾転qmin1、超小傾転qmin2としたのでは、モータ傾転のばらつきが大きい。
(4)省エネモードスイッチ34の操作によりモータ最小傾転を小傾転qmin1および超小傾転qmin2とすることができ、オペレータの意思でモータ最小傾転を選択できるので、使い勝手がよい。
【0029】
なお、上記実施の形態では、省エネモードスイッチ34のオン時にエンジン回転数が所定値Na以下であれば、電磁切換弁22をb位置に切り換え、モータ最小傾転を超小傾転qmin2とするようにしたが、省エネモードスイッチ34のオン時に電磁切換弁22をb位置に切り換えるとともに、エンジン回転数を所定値Na以下に制限してもよい。この場合のコントローラ30における処理の一例を図6に示す。なお、図5と同一の箇所には同一の符号を付す。
【0030】
図6では、ステップS2で巻下げ操作が検出され、かつ、ステップS3で省エネモードスイッチ34のオンが検出されると、ステップS5で電磁切換弁22をb位置に切り換える。次いで、ステップS8でエンジン回転数制御部1aに制御信号を出力し、エンジン回転数の上限を所定値Naに制限する。一方、ステップS2で巻下げ操作以外が検出され、あるいは、ステップS3で省エネモードスイッチ34のオフが検出されると、ステップS6で電磁切換弁22をa位置に切り換える。次いで、ステップS7で差圧ΔPが所定値ΔPa以上か否かを判定し、肯定されるとステップS8でエンジン回転数の上限を制限する。このような図6の処理によっても、エンジン回転数を低減した状態でモータ3を最高速で駆動することができ、省エネを実現できるとともに、騒音を低減できる。
【0031】
なお、図5の処理では、巻下げ操作、かつ、省エネモードスイッチ34のオン、かつ、エンジン回転数が所定値Na以下であるときに、電磁切換弁22をb位置に切り換えるようにしたが、少なくともエンジン回転数が所定値Na以下のときに電磁切換弁22をb位置に切り換えるのであれば、容量制限手段としてのコントローラ30における処理は上述したものに限らない。電磁切換弁22の切換によりモータ最小傾転を小傾転qmin1(第1の最小容量)または超小傾転qmin2(第2の最小容量)に制限したが、他の構成によりモータ容量の最小値を制限してもよい。
【0032】
図6の処理では、巻下げ操作、かつ、省エネモードスイッチ34のオンで電磁切換弁22をb位置に切り換えるとともに、エンジン回転数制御部1aに制御信号を出力してエンジン回転数の上限を制限するようにしたが、少なくともモータ容量の最小値が超小傾転qmin2となったときにエンジン回転数の上限を制限するのであれば、回転数制御手段の構成は上述したものに限らない。例えばレバー巻下げ操作が検出されるとエンジン回転数の上限を制限し、かつモータ最小傾転を超小傾転qmin2とするようにしてもよい。
【0033】
回転数検出手段としての回転数検出器32の構成、巻下げ検出手段としての巻下げ検出器31の構成はいかなるものでもよい。ピストン21A(第1のピストン)によりモータ容量を変更し、ピストン21B(第2のピストン)によりピストン21Aの移動量を図3(b)の小傾転に対応した位置(第1の位置)と、図3(c)の超小傾転に対応した位置(第2の位置)に制限するようにしたが、容量変更手段はこれに限らない。モータ容量制御装置20の構成も上述したものに限らない。モータ最小傾転を超小傾転qmin2としてモータ速度を増速するようにしたが、ポンプ2を大型化してポンプ容量を増やしてモータ速度を増速することも可能である。
【0034】
以上のウインチの制御装置は、図1のクレーン以外にも適用することができる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の油圧ウインチの制御装置に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係るウインチの制御装置が搭載されたクレーンの外観側面図。
【図2】本実施の形態に係るウインチの油圧回路図。
【図3】本実施の形態に係るウインチの制御装置を構成するピストンの動作の一例を示す図。
【図4】本実施の形態に係るウインチの制御装置の構成を示すブロック図。
【図5】図4のコントローラで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【図6】図5の変形例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0036】
1a エンジン回転数制御部
2 油圧ポンプ
3 油圧モータ
4 方向制御弁
8 カウンタバランス弁
20 モータ容量制御装置
21A,21B ピストン
22 電磁切換弁
30 コントローラ
31 巻下検出器
32 回転数検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの圧油により回転するウインチドラム駆動用の可変容量型油圧モータと、
前記油圧ポンプから前記油圧モータへの圧油の流れを制御する方向制御弁と、
前記油圧モータのモータ容量を変更する容量変更手段と、
エンジン回転数を検出する回転数検出手段と、
前記回転数検出手段により検出されたエンジン回転数が所定値より大きいと、前記容量変更手段により変更可能なモータ容量の最小値を第1の最小容量に制限し、エンジン回転数が前記所定値以下のときは、モータ容量の最小値を前記第1の最小容量よりも小さい第2の最小容量に制限する容量制限手段とを備えることを特徴とする油圧ウインチの制御装置。
【請求項2】
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの圧油により回転するウインチドラム駆動用の可変容量型油圧モータと、
前記油圧ポンプから前記油圧モータへの圧油の流れを制御する方向制御弁と、
前記油圧モータのモータ容量を変更する容量変更手段と、
前記容量変更手段により変更可能なモータ容量の最小値を第1の最小容量または第1の最小容量より小さい第2の最小容量に制限する容量制限手段と、
前記容量制限手段によりモータ容量の最小値が前記第2の最小容量に制御されると、前記第1の最小容量に制御されたときよりも、エンジン回転数の上限を小さくする回転数制御手段とを備えることを特徴とする油圧ウインチの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧ウインチの制御装置において、
巻下げ操作を検出する巻下げ検出手段を有し、
前記容量制限手段は、前記巻下げ検出手段による巻下げ操作検出を条件としてモータ容量の最小値を前記第2の最小容量に制限することを特徴とする油圧ウインチの制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の油圧ウインチの制御装置において、
前記油圧モータと前記方向制御弁の間の油圧回路にはカウンタバランス弁が設けられることを特徴とする油圧ウインチの制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の油圧ウインチの制御装置において、
前記容量変更手段は、移動量に応じてモータ容量を変更する第1のピストンと、前記第1のピストンの移動量を前記第1の最小容量に対応した第1の位置および前記第2の最小容量に対応した第2の位置に制限する第2のピストンとを有することを特徴とする油圧ウインチの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−155022(P2009−155022A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334198(P2007−334198)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)