説明

油圧ショベルの機体つり上げ構造

【課題】 従来より油圧ショベルの一点づりを行う場合には、機体を水平状態に保持できなくて傾いたり、また運転席上方のキャノピルーフがつり上げ用のワイヤロープに干渉するためルーフ取外しを行うので、手間と時間を要し、具合が悪かった。本発明は油圧ショベルの一点づりを行う場合、機体を確実に水平状態に保持してつり上げできる機体つり上げ構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の第1実施例では機体の略重心の位置を通る垂直線上における上部旋回体用メインフレームのたて板部の一点部に機体つり上げ用の掛止部を設け、またキャノピのルーフを支柱に対して傾倒自在に構成した。また第2実施例ではブームの中間部背面側につり上げ用の掛止部を設けるとともに、ブーム上げ状態を上部旋回体に対して固定保持するための係止具を設けた。また第3実施例では上部旋回体の前部につり上げ用の掛止部材を設け、その掛止部材をつり上げ姿勢と格納姿勢とに姿勢変更自在に構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として油圧ショベルなど建設機械,作業車両の機体つり上げ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図18は、特開平6−330538号公報に記載されているつり下げ状態を示すバックホウの側面図である。図18に示すバックホウのブーム構造では、機体つり下げ用のフック部材(15)をブーム(8)の長手方向中間部分に取付けるとともに、前記フック部材(15)を、上方に揺動した起立姿勢にある前記ブーム(8)の上面よりも後方に張出したつり下げ姿勢と、前記ブーム(8)の長手方向に沿った格納姿勢とに姿勢変更自在に構成している。
【0003】また図19は、実開昭57−31359号公報に記載されているバックホウ作業車の全体側面図である。図20は、図19におけるバックホウ作業車のつり下げ状態を示す側面図である。図20に示すバックホウ作業車では、バックホウ装置3を構成するブーム3aに、旋回台6への取付側に位置させて車体つり下げ用第1係止具7を設けると共に、メインフレーム6a夫々に、カバー9と運転座席5aの間に上端部8aが位置する状態で、かつ、前記運転座席5aの位置変更に伴って上方に向かって露出する状態で車体つり下げ用第2係止具8’を設けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図18に示す従来技術のブーム構造をそなえたバックホウショベルをつり上げるときには、旋回台1に搭載されたエンジン(図示されていない)は停止させるので、ブームシリンダ(8c)にポンプ圧は作用していない。したがってブーム(8)の長手方向中間部分に取付けたフック部材(15)にワイヤケーブル(17)を引掛けてつり上げ操作を行うと、バックホウショベルの本体重量によってブームシリンダ(8c)にはその伸長方向に上記重量負荷が作用する。ブームシリンダ(8c)回路に接続されているコントロールバルブ(図示されていない)等の内部リークにより、前記ブームシリンダ(8c)が伸長変動し、機体が水平状態より大きく傾き出すので、つり上げ不具合をおこしてしまう。また図20に示す従来技術のバックホウ作業車では3点吊りをするようにしているが、この場合には図19に示すキャノピ5cをワイヤロープ10(図20に示す)に干渉しないように取外し、かつ運転座席5aの位置変更を行わなければならないので、かなりの手間と時間を要し、具合が悪い。またつり下げ用第2係止具8’を旋回台6の床面のカバー9より上方に向かって露出する状態に設けているので、その第2係止具8’上部の露出した部分に運転者が足を引掛けたり、あるいは他のものを引掛けたりするおそれがあるので具合が悪い。本発明は、油圧ショベルの上部旋回体における構成部材の一点部をつり上げるようにした、あるいはまたブームに機体つり上げ用の掛止部を設け、機体を確実に略水平状態に保持してつり上げできる油圧ショベルの機体つり上げ構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1実施例機体つり上げ構造では、下部走行体の上部に上部旋回体を連結した油圧ショベルの機体つり上げ構造において、前記油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上における上部旋回体の構成部材の一点部に、つり上げ用の掛止部材を設けた。そしてその場合に前記上部旋回体の構成部材を、メインフレームを形成するたて板部に設定し、また前記掛止部材はつり穴を開穿したブラケットに形成し、そのブラケットを、前記上部旋回体の床板より上方に突出しないように前記たて板部に固定して取付けた。そしてまた、前記上部旋回体に装備している運転席の上方側を覆うキャノピのルーフが機体の重心を通る垂直線と干渉しないように、前記ルーフをキャノピ支柱に対して傾倒自在に構成した。
【0006】本発明の第1実施例機体つり上げ構造では機体のつり上げを行う場合に、キャノピのルーフを前側の下方へ向けて傾倒操作し、キャノピのルーフが機体の重心を通る垂直線と干渉しないようにしておく。それから上部旋回体のメインフレームにおけるたて板部に固定して取付けたブラケットのつり穴に、たとえば玉掛け用のシャックルを介してワイヤロープを引掛ける。前記つり穴の位置は、油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上に設定しているので、前記ワイヤロープをクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープがキャノピのルーフと干渉しないし、また機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。すなわち掛止部材であるブラケットを、上部旋回体の強度を有するメインフレームのたて板部に固定して設けたので、確実かつ容易に機体の一点づりを行うことができる。また前記たて板部に取付けたブラケットが上部旋回体の床板より上方に突出しないように形成したので、そのブラケットの部分に運転者が足を引掛けたり、あるいは他のものを引掛けたりするトラブルを防止できるとともに、前記ブラケットが油圧ショベルの外見上の美観を阻害することはない。
【0007】次に本発明の第2実施例機体つり上げ構造では、下部走行体の上部に上部旋回体を連結した油圧ショベルの機体つり上げ構造において、前記上部旋回体のフロント部に装着したブームの中間部の背面側に、機体つり上げ用の掛止部を設け、ブーム上げ状態における前記掛止部のつり穴が機体の重心を通る垂直線上に略合致するように設定するとともに、前記ブーム上げ状態を上部旋回体に対して固定保持するための係止具を、前記ブームと上部旋回体との間、あるいはまた前記ブームと、そのブームをスイング回動せしめるために上部旋回体前部に取付けているスイングブラケットとの間に設けた。そしてまた、前記上部旋回体に装備している運転席の上方側を覆うキャノピのルーフが機体の重心を通る垂直線と干渉しないように、前記ルーフをキャノピ支柱に対して傾倒自在に構成した。
【0008】本発明の第2実施例機体つり上げ構造では機体のつり上げを行う場合に、キャノピのルーフを前側の下方へ向けて傾倒操作し、キャノピのルーフが機体の重心を通る垂直線と干渉しないようにしておく。それからブームの中間部の背面側に設けた機体つり上げ用の掛止部のつり穴に、たとえば玉掛け用のシャックルを介してワイヤロープを引掛ける。前記つり穴の位置は、油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上に設定しているので、前記ワイヤロープをクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープがキャノピのルーフと干渉しないし、また前記係止具のロック固定により機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。すなわち前記係止具を設けたことにより、その係止具がブームに対して機械本体重量を支えるので、機体が傾き出すのを防止することができる。
【0009】次に本発明の第3実施例機体つり上げ構造では、下部走行体の上部に上部旋回体を連結した油圧ショベルの機体つり上げ構造において、前記上部旋回体の前部に機体つり上げ用の掛止部材を設け、その掛止部材を前記上部旋回体の前部より後方に張出したつり上げ姿勢と、上部旋回体の後方へ向けて傾倒せしめる格納姿勢とに姿勢変更自在に構成した。
【0010】本発明の第3実施例機体つり上げ構造では機体のつり上げを行う場合に、キャノピのルーフを前側の下方へ向けて傾倒操作し、キャノピのルーフが機体の重心を通る垂直線と干渉しないようにしておく。それから上部旋回体の前部に設けた機体つり上げ用の掛止部材を、上部旋回体の前部より後方に張出したつり上げ姿勢に操作設定し、その掛止部材のつり穴に、たとえば玉掛け用のシャックルを介してワイヤロープを引掛ける。前記つり穴の位置は、油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上に設定しているので、前記ワイヤロープをクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープがキャノピのルーフと干渉しないし、また機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。そして機体のつり上げを行わないときには前記掛止部材が邪魔にならないように、その掛止部材を上部旋回体の後方へ向けて傾倒操作し、低い高さの格納姿勢にすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルの側面図である。図において、1は油圧ショベルの下部走行体、2aは下部走行体1の上部に連結した上部旋回体、4は上部旋回体2aに装備している運転席、11は運転席4の上方側を覆うキャノピ、12はキャノピ11のルーフ、13はルーフ12後部下面側の基ブラケット部、14はルーフ12を上部旋回体2aに支持している支柱、16は上部旋回体2aの床板、18は上部旋回体2aの前部に突設せしめているスイングブラケット取付用フレーム部、19はスイングブラケット、20はスイングブラケット19を左右方向にスイング駆動するスイングシリンダ、21はスイングブラケット19に連結している作業アタッチメント、22は作業アタッチメント21のブーム、Y−Yは油圧ショベルの機体の重心Gを通る垂直線、中心線O−Oは上部旋回体2aの旋回中心、23は油圧ショベルをつり上げるクレーン(図示していない)のつり上げ用のフック、24はフック23と上部旋回体2aの掛止部材(後述する)との間に掛けているワイヤロープである。図2は、図1における上部旋回体2aの骨格としての構成部材であるメインフレーム25の平面図である。図において、26はメインフレーム25のたて板部、27はたて板部26に固着(溶接)した補強用のダブリング板、28はたてリブ、29はつり上げ用の掛止部材であるブラケット、30はブラケット29に開穿したつり穴、31はブラケット29をたて板部26に対して締付固定しているボルトである。図3は、図2のAより見た側面図である。図4は、図2におけるブラケット29をBより見た図である。図において、32はブラケット29のフック部、33はフランジ部、34はフランジ部33に穿設したボルト用ねじ穴、35は補強用のリブである。図5は、図4及び図2におけるブラケット29の平面図である。図6は図5のCより見た図であるが、フランジ部33のボルト用ねじ穴34は図示していない。
【0012】図7は、図1における上部旋回体2aの床板16付近を示す要部斜視図である。図において、36は床板16の上面に敷いているフロアマット、37は床板16に開穿したつり上げ時用の窓穴、38は機体つり上げを行わないときに窓穴37を閉塞しておくカバーである。図8は、図7におけるブラケット29のフック部32につり上げ用のワイヤロープ24(図1に示す)を掛けた状態を示す図である。図において、39は玉掛け用のつり金具例としてのシャックルである。なお仮想線イで示すたて板部26の穴は、油圧ショベルに配管されている油圧配管等を通す穴である。図9は、図1におけるキャノピ11の要部拡大図である。図において、40は支柱14の上端前部にルーフ12を前傾回動自在に枢支している支点ピン、41はルーフ12の基ブラケット部13下端部のピン穴42と支柱14の上端後部のピン穴43を貫通して嵌着している着脱操作用のピン、44は基ブラケット部13の後部側に支点ピン40の軸心と平行に開穿しているピン穴である。なお前記ピン穴42,43,44はいずれも支点ピン40の軸心より半径Rなる距離の位置に開穿しているので、図9に示すルーフ12前傾状態におけるピン41を抜き外し、ルーフ12を上方へ回動させて、基ブラケット部13のピン穴44と支柱14上端後部のピン穴43を合致せしめ、そのピン穴44と43にピン41を挿通することによって、ルーフ12を作業時状態(機体つり上げを行っていない場合で仮想線ロで示す状態)のキャノピ11にすることができる。
【0013】次に、本発明の第1実施例機体つり上げ構造を図1〜図9について述べる。本発明の第1実施例では、油圧ショベルの機体の重心Gの位置を通る垂直線Y−Y上における、上部旋回体2a用メインフレーム25のたて板部26の一点部に、つり穴30を開穿した掛止部材としてブラケット29を設け、そのブラケット29を、前記上部旋回体2aの床板16(図7に示す)より上方に突出しないように前記メインフレーム25のたて板部26に固定(ボルト31による締付固定)して取付けた。そしてまた、運転席4の上方側を覆うキャノピ11のルーフ12が機体の重心Gを通る垂直線Y−Yと干渉しないように、前記ルーフ12をキャノピ11支柱14に対して傾倒自在に構成した。
【0014】次に、本発明の第1実施例機体つり上げ構造の作用について述べる。本発明の第1実施例機体つり上げ構造では機体のつり上げを行う場合に、キャノピ11のルーフ12を図1及び図9に示すように前側の下方へ向けて傾倒操作し、ルーフ12が機械の重心Gを通る垂直線Y−Yと干渉しないようにしておく。それから上部旋回体2a用メインフレーム25のたて板部26に固定して取付けたブラケット29のつり穴30に、たとえば玉掛け用のシャックル39(図8に示す)を介してワイヤロープ24を引掛ける。前記つり穴30の位置は、機体の重心Gを通る垂直線Y−Y上に設定しているので、前記ワイヤロープ24を図示していないクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープ24がキャノピ11のルーフ12と干渉しないし、また機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。すなわち掛止部材であるブラケット29を、上部旋回体2aの強度を有するメインフレーム25のたて板部26に固定して設けたので、確実かつ容易に機体の一点づりを行うことができる。また前記たて板部26に取付けたブラケット29が上部旋回体2aの床板16より上方に突出しないように形成したので、そのブラケット29の部分に運転室が足を引掛けたり、あるいは他のものを引掛けたりするトラブルを防止できるとともに、前記ブラケット29が油圧ショベルの外見上の美観を阻害することはない。
【0015】次に図10は、本発明の第2実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルの側面図である。図において、図1における油圧ショベルと同一構成要素を使用しているものに対しては同符号を付す。2bは油圧ショベルの上部旋回体、19’はスイングブラケット、21’はスイングブラケット19’に連結している作業アタッチメント、22’は作業アタッチメント21’のブーム、45はアーム、46はブームシリンダ、47はアームシリンダ、48はブーム22’の中間部の背面側に固設されているアームシリンダ取付用ブラケット、49はアームシリンダ取付用ブラケット48に一体形に形成しているワイヤロープ24’引掛用(シャックル39を介して引掛ける)の掛止部、50は掛止部49に開穿しているつり穴、51はスイングブラケット19’に固着(溶接)した係止用ブラケット、52はブーム22’に固着(溶接)した係止用ブラケット、53は係止用ブラケット51と52のそれぞれピン穴(符号を付していない)を貫通して嵌着せしめている結合ピンである。図1111は、図10におけるD部の要部拡大図である。図12R>2は、図11のE−Eより見た要部平面図である。図13R>3は、図11のFより見た係止用ブラケット52を示す図である。図において、54は係止用ブラケット52の内側に固着している補強用のリブ、符号ハはブーム22’に対して固着せしめている係止用ブラケット52の溶接部を示す。
【0016】次に、本発明の第2実施例機体つり上げ構造を図10〜図13について述べる。本発明の第2実施例では、上部旋回体2bのフロント部にスイングブラケット19’を介して装着したブーム22’の中間部背面側のアームシリンダ取付用ブラケット48と一体形に、機体つり上げ用の掛止部49を設け、ブーム22’上げ状態における前記掛止部49のつり穴50を機体の重心Gを通る垂直線Y−Y上に合致するように設定するとともに、前記ブーム22’上げ状態を上部旋回体2bに対して固定保持するための係止具として、スイングブラケット19’に係止用ブラケット51を、かつブーム22’に係止用ブラケット52をそれぞれ溶着し、前記係止用ブラケット51と52のそれぞれピン穴を貫通して嵌着する結合ピン53を設けた。またキャノピ11のルーフ12を支柱14に対して傾倒自在に構成しているが、その構造は図9に示す第1実施例の場合と同じである。
【0017】次に、本発明の第2実施例機体つり上げ構造の作用について述べる。本発明の第2実施例機体つり上げ構造では機体のつり上げを行う場合には、まず第1実施例の場合と同様にキャノピ11のルーフ12を図10R>0に示すように前側の下方へ向けて傾倒操作し、ルーフ12が機体の重心Gを通る垂直線Y−Yと干渉しないようにしておく。それからブーム22’の中間部背面側のアームシリンダ取付用ブラケット48に設けた掛止部49のつり穴50に、たとえば玉掛け用のシャックル39を介してワイヤロープ24’を引掛ける。前記つり穴50の位置は、機体の重心Gを通る垂直線Y−Y上に設定しているので、前記ワイヤロープ24’を図示していないクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープ24’がキャノピ11のルーフ12と干渉しないし、また機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。すなわち掛止具(係止用ブラケット51,52,及び結合ピン53)を設けたことにより、その係止具がブーム22’に対して機械本体重量を支えるので、機体が傾き出すのを防止することができる。なお図10〜図13R>3に示すこの第2実施例ではブーム22’とスイングブラケット19’に対して係止具を設けているが、ブーム22’と上部旋回体2b前部に対して設ける(図示していない)ようにしてもよい。
【0018】次に図14は、本発明の第3実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルの一部切開側面図である。図において、図1における油圧ショベルと同一構成要素を使用しているものに対しては同符号を付す。2cは油圧ショベルの上部旋回体、18は上部旋回体2cの前部に突設せしめているスイングブラケット取付用フレーム部(図2及び図3に図示しているスイングブラケット取付用フレーム部18と同じ構造のもので、メインフレームと一体形に形成している)、55はスイングブラケット取付用フレーム部18(以下、前部フレーム部18という)に固着(溶接)した基つり金具、56は中間つり金具、57は中間つり金具56の前部フレーム部18に対するストッパ部、58は基つり金具55に対して中間つり金具56を後方へ向けて回動自在に連結しているピン、59はフック板、60はフック板59に開穿したつり穴、61,62はフック板59を中間つり金具56に連結しているそれぞれピンである。図15は、図1414におけるH部の要部拡大図である。図16は、図15R>5のIより見た要部後面図である。図17は、図14〜図16における中間つり金具56及びフック板59を格納した状態を示す側面図である。
【0019】次に、本発明の第3実施例機体つり上げ構造を図14〜図17について述べる。本発明の第3実施例では、上部旋回体2cの前部に機体つり上げ用の掛止部材として、前部フレーム部18に基つり金具55を固着し、その基つり金具55に対して中間つり金具56を後方に回動自在にピン58にて連結し、前記中間つり金具56に対してつり穴60を開穿したフック板59をピン61及び62にて連結し、前記掛止部材を上部旋回体2cの前部より後方に張出したつり上げ姿勢(図14〜図16に示す状態の姿勢)と、上部旋回体2cの後方へ向けて傾倒せしめる格納姿勢(図17に示すようにピン58とピン62は取外さないで、ピン61だけを抜き外し、中間つり金具56とフック板59を回動傾倒された状態の姿勢)とに姿勢変更自在に構成した。また図14に示すようにキャノピ11のルーフ12を支柱14に対して傾倒自在に構成しているが、その構造は図9に示す第1実施例の場合と同じである。
【0020】次に、本発明の第3実施例機体つり上げ構造の作用について述べる。本発明の第3実施例機体つり上げ構造では機体のつり上げを行う場合には、まず第1実施例の場合と同様にキャノピ11のルーフ12を図14R>4に示すように前側の下方へ向けて傾倒操作し、ルーフ12が機体の重心Gを通る垂直線Y−Yと干渉しないようにしておく。それから上部旋回体2cの前部に設けた機体つり上げ用の掛止部材(基つり金具55、中間つり金具56、及びフック板59を連結した掛止部材をいう)を、上部旋回体2cの前部より後方に張出したつり上げ姿勢に操作設定し、その掛止部材のつり穴60に、たとえば玉掛け用のシャックル39を介してワイヤロープ24を引掛ける。前記つり穴60の位置は、機体の重心Gを通る垂直線Y−Y上に設定しているので、前記ワイヤロープ24を図示していないクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープ24がキャノピ11のルーフ12と干渉しないし、また機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。そして機体のつり上げを行わないときには前記掛止部材が邪魔にならないように、その掛止部材を上部旋回体2cの後方へ向けて傾倒操作し、低い高さh(図17及び図15に示す)の格納姿勢にすることができる。
【0021】
【発明の効果】本発明の第1実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルのつり上げを行う場合には、上部旋回体のメインフレームのたて板部に固定して取付けたブラケットのつり穴に、たとえば玉掛け用のシャックルを介してワイヤロープを引掛ける。前記つり穴の位置は、油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上に設定しているので、前記ワイヤロープをクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープがキャノピの予め傾倒回動させたルーフと干渉しないし、また機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。すなわち掛止部材であるブラケットを、上部旋回体の強度を有するメインフレームのたて板部に固定して設けたので、確実かつ容易に機体の一点づりを行うことができる。また前記たて板部に取付けたブラケットが上部旋回体の床板より上方に突出しないように形成したので、そのブラケットの部分に運転者が足を引掛けたり、あるいは他のものを引掛けたりするトラブルを防止できるとともに、前記ブラケットが油圧ショベルの外見上の美観を阻害することはない。また本発明の第2実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルのつり上げを行う場合には、ブームの中間部背面側に設けた機体つり上げ用の掛止部のつり穴に、たとえば玉掛け用のシャックルを介してワイヤロープを引掛ける。前記つり穴の位置は、油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上に設定しているので、前記ワイヤロープをクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープがキャノピの予め傾倒回動させたルーフと干渉しないし、また前記係止具のロック固定により機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。すなわち前記係止具を設けたことにより、その係止具がブームに対して機械本体重量を支えるので、機体を傾き出すのを防止することができる。また本発明の第3実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルのつり上げを行う場合には、上部旋回体の前部より後方に張出したつり上げ姿勢に操作設定し、その掛止部材のつり穴に、たとえば玉掛け用のシャックルを介してワイヤロープを引掛ける。前記つり穴の位置は、油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上に設定しているので、前記ワイヤロープをクレーンにてつり上げたときは、前記ワイヤロープがキャノピの予め傾倒回動させたルーフと干渉しないし、また機体を水平状態に保持して確実につり上げることができる。そして機体のつり上げを行わないときには前記掛止部材が邪魔にならないように、その掛止部材を上部旋回体の後方へ向けて傾倒操作し、低い高さの格納姿勢にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルの側面図である。
【図2】図1における上部旋回体のメインフレームの平面図である。
【図3】図2のAより見た側面図である。
【図4】図2におけるブラケットをBより見た図である。
【図5】図4及び図2におけるブラケットの平面図である。
【図6】図5のCより見た図である。
【図7】図1における上部旋回体の床板付近を示す要部斜視図である。
【図8】図7におけるブラケットのフック部につり上げ用のワイヤロープを掛けた状態を示す図である。
【図9】図1におけるキャノピの要部拡大図である。
【図10】本発明の第2実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルの側面図である。
【図11】図10におけるD部の要部拡大図である。
【図12】図11のE−Eより見た要部平面図である。
【図13】図11のFより見た係止用ブラケットを示す図である。
【図14】本発明の第3実施例機体つり上げ構造をそなえた油圧ショベルの一部切開側面図である。
【図15】図14におけるH部の要部拡大図である。
【図16】図15のIより見た要部後面図である。
【図17】図14〜図16における中間つり金具及びフック板を格納した状態を示す側面図である。
【図18】従来技術の一実施例バックホウのつり下げ状態を示す側面図である。
【図19】従来技術の一実施例バックホウ作業車の全体側面図である。
【図20】図19におけるバックホウ作業車のつり下げ状態を示す側面図である。
【符号の説明】
2a,2b,2c 上部旋回体
8,22,22’ ブーム
10,24,24’ ワイヤロープ
11 キャノピ
12 ルーフ
16 床板
18 スイングブラケット取付用フレーム部(前部フレーム部)
25 メインフレーム
26 たて板部
29 ブラケット(掛止部材)
30,50,60 つり穴
48 アームシリンダ取付用ブラケット
49 掛止部
51,52 係止用ブラケット
53 結合ピン
55 基つり金具
56 中間つり金具
59 フック板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下部走行体の上部に上部旋回体を連結した油圧ショベルのつり上げるようにした機体つり上げ構造において、前記油圧ショベルの機体の略重心の位置を通る垂直線上における上部旋回体の構成部材の一点部に、つり上げ用の掛止部材を設けたことを特徴とする油圧ショベルの機体つり上げ構造。
【請求項2】 前記上部旋回体の構成部材を、メインフレームを形成するたて板部に設定したことを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルの機体つり上げ構造。
【請求項3】 前記掛止部材はつり穴を開穿したブラケットに形成し、そのブラケットを前記たて板部に固定して取付けたことを特徴とする請求項1及び2記載の油圧ショベルの機体つり上げ構造。
【請求項4】 前記たて板部に取付けたブラケットが、前記上部旋回体の床板より上方に突出しないように形成したことを特徴とする請求項3記載の油圧ショベルの機体つり上げ構造。
【請求項5】 下部走行体の上部に上部旋回体を連結した油圧ショベルの機体つり上げ構造において、前記上部旋回体のフロント部に装着したブームの中間部の背面側に、機体つり上げ用の掛止部を設け、ブーム上げ状態における前記掛止部のつり穴が機体の重心を通る垂直線上に略合致するように設定するとともに、前記ブーム上げ状態を上部旋回体に対して固定保持するための係止具を、前記ブームと上部旋回体との間に設けたことを特徴とする油圧ショベルの機体つり上げ構造。
【請求項6】 前記ブーム上げ状態を上部旋回体に対して固定保持するための係止具を、前記ブームと、そのブームをスイング回動せしめるために上部旋回体前部に取付けているスイングブラケットとの間に設けたことを特徴とする請求項5記載の油圧ショベルの機体つり上げ構造。
【請求項7】 下部走行体の上部に上部旋回体を連結した油圧ショベルの機体つり上げ構造において、前記上部旋回体の前部に機体つり上げ用の掛止部材を設け、その掛止部材を前記上部旋回体の前部より後方に張出したつり上げ姿勢と、上部旋回体の後方へ向けて傾倒せしめる格納姿勢とに姿勢変更自在に構成したことを特徴とする油圧ショベルの機体つり上げ構造。
【請求項8】 前記上部旋回体に装備している運転席の上方側を覆うキャノピのルーフが機体の重心を通る垂直線と干渉しないように、前記ルーフをキャノピ支柱に対して傾倒自在に構成したことを特徴とする請求項1,5,及び7記載の油圧ショベルの機体つり上げ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図13】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開平10−140610
【公開日】平成10年(1998)5月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−321095
【出願日】平成8年(1996)11月14日
【出願人】(000246273)油谷重工株式会社 (644)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)