説明

油圧ショベル用バケット

【課題】 同一のバケットに掘る、掴む、集める等の多数の機能を備える上、作業対象物の幅が異なる場合における対応性を向上した油圧ショベル用バケットを提供する。
【解決手段】 油圧ショベルのブームに着脱すべく形成された基部10と、該基部10に支持された二つの可動バケット30,30とを備え、各可動バケット30は、他方の可動バケット30に対し開閉回動可能に軸支されるとともに、その軸支部30bがスライド機構40を介して基部10に支持され、前記スライド機構40は、各可動バケット30を他方の可動バケット30に対し接近離間する方向にスライドさせるように、前記軸支部30bを基部10にスライド可能に支持している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油圧ショベルのブームの先端部に取り付けられて、掘削作業等に使用される油圧ショベル用バケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のバケットは、油圧ショベルのブームの先端部に着脱可能な基部と、該基部に固定された固定バケットと、同基部に開閉機構を介して装着された可動バケットとを備え、可動バケットが前記基部側を支点にして回動することで固定バケットとの間を開閉するように構成したものが一般的である。この従来のバッケットによれば、固定バケットに対し可動バケットが回動することにより開閉動作するため、地面や土砂の山等を掘ったり、廃棄物やコンクリートの破片、石等を掴んで摘み上げたり等の作業を行うことができる。
【0003】ところで、上記従来のバッケトでは、可動バケットが回動することにより開閉動作する構造のため、バケットのみの動作では地面に放置された土砂や廃棄物等を集めることができない。そのため、前記集める作業の際には、固定バケットと可動バケットを閉じた状態で、油圧ショベルを前進または後退させて両バケットの先端部で土砂や廃棄物等を掻き集めたり、あるいは、上記何れか一方のバケットの形状をした収集や掘削作業専用のバッケットに付け替えて、上記同様に油圧ショベルを前進または後退させて前記専用バケットの先端部で土砂や廃棄物等を掻き集めたりする必要があり、油圧ショベルの操作や、バケットの付け替え作業が面倒なため、作業時間がかかる上、作業効率も悪いという問題を有していた。そこで、本出願人は、特願平11−368138号による油圧ショベル用バケットを提案している。この油圧ショベル用バケットは、固定バケットに対し可動バケットを直線的に接近離間することができ、そのことによって、同一のバケットに掘る、掴む、集める等の多数の機能を備えたものである。
【0004】しかしながら、現場での作業は、その現場毎に作業対象物の幅が異なるため、バケット間の開閉幅が不足する場合もあり、より開閉幅の広い油圧ショベル用バケットが求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、同一のバケットに掘る、掴む、集める等の多数の機能を備える上、作業対象物の幅が異なる場合における対応性を向上した油圧ショベル用バケットを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明の技術的手段として、請求項1は、油圧ショベルのブームに着脱すべく形成された基部と、該基部に支持された二つの可動バケットとを備え、それら二つ可動バケットを回動駆動源により開閉回動させるとともにスライド駆動源により接近離間させるように構成した油圧ショベル用バケットであって、各可動バケットは、他方の可動バケットに対し開閉回動するように軸支されるとともに、その軸支部がスライド機構を介して前記基部に支持され、前記スライド機構は、各可動バケットを他方の可動バケットに対し接近離間する方向にスライドさせるように、前記軸支部を前記基部にスライド可能に支持していることを特徴とする。
【0007】ここで上記回転駆動源とは、具体的には、リンク機構を介して可動バケットを開閉回動する油圧シリンダーや、ギヤ機構を介して可動バケットを開閉回動するモーター等であり、上記スライド機構におけるスライドする部位と可動バケットとの間に配置される。また、上記スライド駆動源とは、例えば、シリンダー部を基部側に固定するとともにロッド部を可動バケットの上記軸支部に軸着した油圧シリンダーや、ラックピニオン機構を介して可動バケットの軸支部を基部に対してスライドさせるようにしたモーター等であり、上記基部と可動バケットとの間に配置される。また、スライド機構とは、可動バケットの軸支部を基部にスライド可能に係合した機構や、内外の筒体や枠体等をスライドさせることで伸縮するスライド伸縮機構を基部に設け、その先端部に可動バケットの軸支部を軸着した機構等を含む。
【0008】また、請求項2では、上記スライド機構は、内外に重ね合わせるように形成された複数のスライド部材をスライドさせることで、その全長が伸縮するように構成され、その最先端部に上記可動バケットを開閉回動可能に軸支していることを特徴とする。尚、上記スライド部材とは、例えば、内外に重ね合わせられるように形成された縦断面筒状や縦断面コの字状等の複数の長尺部材であり、それら複数のスライド部材が内外で長さ方向にスライドするように重ね合わせられる。
【0009】また、請求項3では、上記回動駆動源及び上記スライド駆動源は、上記各可動バケットを独立して駆動可能なように設けられていることを特徴とする。
【0010】ここで、各可動バケットを独立して駆動可能なように設けられとは、例えば、上記回動駆動源と上記スライド駆動源とを、それぞれ各可動バケット毎に設けた態様等である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図4は、本発明に係る油圧ショベル用バケットの一例を示す。
【0012】この油圧ショベル用バケットAは、油圧ショベルのブームに着脱すべく形成された基部10と、該基部10に支持された二つの可動バケット30,30と、各可動バケット30を他方の可動バケット30に対し接近離間する方向にスライドさせるスライド機構40と、各可動バケット30を開閉回動させる回動駆動源60と、各可動バケット30をスライドさせるスライド駆動源50とを具備してなる。
【0013】基部10は、平板状の固定板11と回動板12とをそれらの略中心部で回動自在に軸着し、固定板11上面に取り付けられた油圧モーター20によって固定板11に対し回動板12を回動駆動可能にするとともに、同固定板11の上面に対向する一対の固定ブラケット14,14を直立固定し、これら固定ブラケット14,14に、油圧ショベルのブームに装着するための平行な二本の装着用軸(図示せず)を貫挿可能なように、軸受け部13,13,13,13を固定し、そして、回動板12の下面には平行板状の一対の固定ブラケット15,15を垂設し溶着してなる。
【0014】固定板11と回動板12の各々は、180°毎に重なり合うように形成された上下のピン穴11a,11a及びピン穴12a,12aと、重なり合ったピン穴11a,12aに係合可能なピン16(図3参照)とを備え、回動板12を、180°毎に回転させた位置で、ピン16を係合して固定できるように構成してある(図4参照)。
【0015】油圧モーター20は、油圧の供給を受けて駆動軸21を回転させる周知の回転駆動機構であり、その駆動軸21と回動板12との間にギア機構17を介することで、回動板12を固定板11に対し回動させるように構成してある。
【0016】各々の可動バケット30は、側面視略半円状を呈し、その下端側に、他方の可動バケット30と噛み合わせる鋸刃状の噛み合わせ部30aが形成されている。そして、各可動バケット30の基部10側(上端側)の外面には、左右(図3における左右)の支点板部31,31と、これら支点板部31,31の略中央に位置する可動板部32とを一体的に固定している。
【0017】各々の支点板部31は、略平行する一対の三角形状板からなり、それらの一辺部が可動バケット30の外面に溶着されるとともに、前記一辺部に対向する頂部側に軸支部30bを有する。この軸止部30bは、軸部材等を用いた周知のリンク結合手段によって、支点板部31をスライド機構40先端に軸着しており、可動バケット30が開閉回動する際の支点となる。
【0018】可動板部32は、前記支点板部31よりも大きめで略平行する一対の三角形状板からなり、それらの一辺部が可動バケット30の外面に溶着され、前記一辺部に対向する頂部側が後述する回動駆動源60のロッド61先端に軸着されるとともに、その軸着部よりも下側で上記軸支部30bに略対応する部位が、後述するスライド駆動源50における伸縮ロッド51の先端部に軸着されている。
【0019】スライド機構40は、内側に向かって略肉厚分づつ小さくなっている複数の縦断面コの字状のスライド部材41,42,43を、スライド可能に内外に重ね合わせ、その最先端のスライド部材41における先端部を、可動バケット30における支点板部31の軸支部30bに軸着するとともに、最後端のスライド部材43を、固定ブラケット15内面に固定された縦断面コの字状の支持枠44内にスライド可能に重ね合わせている。尚、このスライド機構40は、図3において、左右両側の固定ブラケット15,15の各々に設けられている。
【0020】したがって、このスライド機構40は、各可動バケット30の軸支部30bを基部10に対して水平スライドさせるように支持することで、各可動バケット30が他方の可動バケット30に対し接近離間する方向にスライドするようにしている。また、このスライド機構40の最先端部には可動バケット30が軸支部30bで軸着されているため、各可動バケット30は、前記軸支部30bを支点にして他方の可動バケット30に対する開閉方向に回動可能となっている。
【0021】回動駆動源60は、シリンダー部62の先端側でロッド61を直線的に往復動させる周知構造の油圧シリンダーである。この回動駆動源60のシリンダー部62は、左右(図3における左右)のスライド機構40,40における最先端側のスライド部41,41間にわたって支持板41aが固定され、該支持板41a上の略中央部にブラケット62aを介して取り付けられている。また、ロッド61の先端部は、上述したように可動板部32の頂部側に軸着されている。したがって、この回動駆動源60は、ロッド61の往復動により、各可動バケット30を、軸支部30bを支点にして他方の可動バケット30に対する開閉方向に回動させる。
【0022】スライド駆動源50は、シリンダー部52の両端側に伸縮ロッド51,51を備え、シリンダー部52への油圧の供給によって各伸縮ロッド51を段階的にスライド伸縮させる周知構造の三段式油圧シリンダーであり(図2参照)、シリンダー部52の一端側または他端側へ選択的に油圧が供給されることにより、選択された伸縮ロッド51が他方の伸縮ロッド51と独立してスライド伸縮するように構成されている。
【0023】そして、このスライド駆動源50のシリンダー部52は、上記固定ブラケット15,15間にわたって固定された支持板15a上の略中央部に、ブラケット52aを介して取り付けられている(図3参照)。また、このスライド駆動源50の伸縮ロッド51の最先端部は、上述したように、可動板部32における軸支部30bに対応する部位に軸着されている。したがって、このスライド駆動源50は、伸縮ロッド51の伸縮動作によって、可動バケット30を、他方の可動バケットに対し接近離間する方向にスライドさせ、その際、可動バケット30を支持しているスライド機構40も伸縮動させることになる。
【0024】尚、このスライド駆動源50は、上記各可動バケット30を独立してスライド駆動可能であれば、上記のように両端側に伸縮ロッド51,51を備える油圧シリンダーでなく、例えば、一端側に伸縮ロッドを備える単一の油圧シリンダーを、相反する向きに二つ設けるようにしても構わない。
【0025】而して、上記構成の油圧ショベル用バケットAは、各可動バケット30を、他方の可動バケット30に対し軸支部30bを支点にして開閉回動可能であるとともに、他方の可動バケット30に対して接近離間する方向にスライドすることも可能である。しかも、その開閉回動動作とスライド動作との各動作は、二つの回動駆動源60,60及びスライド駆動源50の両端側部位への選択的な油圧の供給によって、両可動バケット30,30の各々について独立して行うことができる。すなわち、一方の可動バケット30の開閉回動動作と、一方の可動バケット30のスライド動作と、他方の可動バケット30の開閉回動動作と、他方の可動バケット30のスライド動作とを、それぞれ独立して行うことができる。よって、上記油圧ショベル用バケットAによれば、両可動バケット30,30のスライド動作により開閉幅が比較的広い上、各可動バケット30の開閉回動動作とスライド動作との組み合わせによって多数パターンの動作が可能である。
【0026】尚、上記実施の形態におけるスライド機構40は、複数のスライド部材41,42,43による伸縮動作によって、スライド機構40の収納寸法をコンパクトにするようにした好ましい一例であるが、このスライド機構の他例としては、可動バケット30の軸支部30bを基部10の固定ブラケット15に直接的にスライド可能に係合した構成であっても構わない。
【0027】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。請求項1によれば、二つの可動バケットの接近離間と開閉回動とにより、掘る、掴む、集めるという三つの作業を行うことができる。しかも、二つの可動バケットが双方ともスライド可能であるため、双方の可動バケットの開閉幅を比較的広くすることができる。したがって、作業対象物の幅が異なる場合における対応性に優れている。例えば、土砂や廃棄物等の収集対象物を集める作業の際に、その現場毎の収集対象物の幅に応じて、双方の可動バケットを接近又は離間させることができ、その際に収集対象物の幅が比較的広い場合にも対応できる。更に、請求項2によれば、スライド機構が伸縮可能に構成されているため、双方の可動バケットが閉じられた状態をコンパクトにすることができ、そのことによって、運搬や収納の際の省スペース化をはかることができる。更に、請求項3によれば、作業内容に応じて一方の可動バケットのみを独立して駆動させることが可能であり、各種作業内容に応じた多数パターンの動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 同油圧ショベル用バケットの側面図。
【図2】 本発明に係わる油圧ショベル用バケットの概略構造を示す側面半断面図。
【図3】 同油圧ショベル用バケットの正面図。
【図4】 同油圧ショベル用バケットの基部を示す上面図であり、要部を切欠して示している。
【符号の説明】
10:基部
30:可動バケット
30b:軸支部
40:スライド機構
41,42,43:スライド部
50:スライド駆動源
60:回動駆動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】 油圧ショベルのブームに着脱すべく形成された基部と、該基部に支持された二つの可動バケットとを備え、それら二つ可動バケットを回動駆動源により開閉回動させるとともにスライド駆動源により接近離間させるように構成した油圧ショベル用バケットであって、各可動バケットは、他方の可動バケットに対し開閉回動するように軸支されるとともに、その軸支部がスライド機構を介して前記基部に支持され、前記スライド機構は、各可動バケットを他方の可動バケットに対し接近離間する方向にスライドさせるように、前記軸支部を前記基部にスライド可能に支持していることを特徴とする油圧ショベル用バケット。
【請求項2】 上記スライド機構は、内外に重ね合わせるように形成された複数のスライド部材をスライドさせることで、その全長が伸縮するように構成され、その最先端部に上記可動バケットを開閉回動可能に軸支していることを特徴とする請求項1記載の油圧ショベル用バケット。
【請求項3】 上記回動駆動源及び上記スライド駆動源は、上記各可動バケットを独立して駆動可能なように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の油圧ショベル用バケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−194764(P2002−194764A)
【公開日】平成14年7月10日(2002.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−391113(P2000−391113)
【出願日】平成12年12月22日(2000.12.22)
【出願人】(392011987)株式会社オノデラ (4)
【Fターム(参考)】