説明

油圧防振器

【課題】 加圧用のばねを小型にし、オイルリザーバを小型化して、取扱い易くすると共に、油漏れを防止する油圧防振器を提供する。
【解決手段】 油圧防振器1のシリンダ2の両端側部上に一対の支持ブロック7,8を対向して固定し、支持ブロック7,8間に油通管9及びオイルリザーバ10を支持する。オイルリザーバ10はシリンダ2に平行に一対設け、シリンダ2の油圧室5,6間を連通させる油通管9に連通し、シリンダ2とピストンロッド3との相対移動に伴いシリンダ2の油圧室を出入りする油量の変動差を吸収すると共に、作動油の過不足を調整するために作動油を出入り可能に収容する。各オイルリザーバ10の内部には貯留室10cに充填した作動油をばね13により加圧する移動可能な加圧蓋11をそれぞれ設ける。一対のオイルリザーバ10の加圧蓋11は油圧室5,6の油圧を分担して加圧するので、ばね13に小型のものを採用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、機械振動、風その他の外力に起因する振動により構築物自体やこれに支持された設備等の揺れを阻止するために、例えば構築物の梁材や支柱材などの構造材の相互間や、構造物と配管又は機器などとの間に設けられる油圧防振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
支持体と防振対象と間に介設される油圧式の防振器は、内部に作動油を充填したシリンダと、シリンダ内を二つの油圧室に区画するピストンと、シリンダに出入り自在に挿入されたピストンロッドとを具備する。このような油圧防振器は、シリンダの二つの油圧室に、オイルリザーバを連通させ、この連通路上に弁装置を設け、シリンダとピストンロッドの相対移動に伴い拡大、縮小する二つの油圧室から出入りする作動油の急激な流通を抑制する一方、作動油の緩慢な流通を許容することにより、構築物等に生じる振動を低減する。
従来、特許文献1に記載の油圧防振器は、シリンダに軸前方向に筒状のオイルリザーバを固定し、このオイルリザーバ内にばねにより作動油を加圧する加圧蓋を設けている。オイルリザーバは、二つの圧力室に対する容積変動の差異に伴うシリンダ内の作動油の余剰分を吸収し、又は不足分を補填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-054674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の油圧防振器においては、オイルリザーバ内への空気の混入を防ぎ、現場の干渉物や設置体勢に注意を払う煩わしさを排して取り付けることができる利点がある。一方、作動油を加圧するために大きなばね力を必要とするため、ばねのサイズが大型になり、オイルリザーバ自体が大型化し、装置の小型化を妨げるし、取付作業等で防振器本体の操作性を損ねており、またばねの圧縮量によって油圧に大きな変動が生じ、油圧変動による油漏れのおそれがある。
そこで、本発明は、小型のばねを使用でき、オイルリザーバを小型化して、取扱い易くすると共に、油漏れを防止する油圧防振器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明においては、支持体又は防振対象の一方に作動油を充填したシリンダ2を連結し、他方にシリンダ2に出入り自在に挿入されたピストンロッド3を連結し、シリンダ2内を収縮、拡大する二つの油圧室5,6に仕切るピストン4をピストンロッド3に固定し、シリンダ2の作動油の過不足を調整するように作動油を出入り可能に充填するオイルリザーバ10をシリンダに連通させ、シリンダ2の拡大又は縮小する二つの油圧室5,6を出入りする作動油の急激な流通を抑制する一方、作動油の緩慢な流通を許容する制御弁14をオイルリザーバ10とシリンダ2との間に設けて油圧防振器1を構成する。オイルリザーバ10は、シリンダ2に平行に一対固定され、内部の作動油をばね13により加圧する移動可能な加圧蓋11をそれぞれ備える。
オイルリザーバ10に、油圧室5,6間を連通する油通管9を連通させる。
オイルリザーバ10及び油通管9を、シリンダ2の両端部の側方にそれぞれ固定された軸線方向前後に対向する一対の支持ブロック7,8間に支持し、支持ブロックに、オイルリザーバ、油圧室及び油通管を接続するために必要な油通路7a,8aを形成する。
加圧蓋11に、オイルリザーバ10に対して出入り自在のロッド13を固定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、オイルリザーバを一対設けることにより、それぞれの加圧用のばねに必要なばね力を半減させた小型のものを用いることができ、オイルリザーバ自体を小型化でき、全体としてコンパクトになる結果、取付作業等の取扱いを妨げないし、また小型のばねにより油圧変動を小さくでき、油圧の変動による油漏れを防止することができる。また、加圧蓋からロッドを外部に突出させると、ピストン位置を外部から判定できるし、ロッドを介して加圧蓋を押し込むことによりエア抜きを可能にし、また給油時にロッドを引き出すことにより作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る油圧防振器の縦断面図である。
【図2】図1の油圧防振器の一部を切り欠いた平面図である。
【図3】図1の油圧防振器の一部を切り欠いた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図3において、油圧防振器1は、例えば図示しない構築物の構造材などの支持体と防振対象との間に介設される。油圧防振器1は、支持体に連結される円筒状のシリンダ2と、防振対象に連結されてシリンダ2に軸線方向へ出入り自在に挿入されたピストンロッド3と、ピストンロッド3の先端に固定され、シリンダ2内に摺動自在に気密に嵌合して第1及び第2の油圧室5,6に仕切るピストン4とを備えている。シリンダ2内の第1及び第2の油圧室5,6には作動油が充填される。
【0009】
シリンダ2の両端部上には一対の支持ブロック7,8が対向して固定されており、これら支持ブロック7,8間にシリンダ2の軸線方向に油通管9及びオイルリザーバ10が支持される。一方の支持ブロック7には、シリンダ2の第1油圧室5と油通管9及びオイルリザーバ10とを連通させる油通路7aが設けられている。他方の支持ブロック8には、シリンダ2の第2油圧室6と油通管9とを連通させる油通路8aが設けられている。油通管9は、シリンダ2の油圧室5,6間に作動油を流通させるように連通する。オイルリザーバ10は、シリンダ2の軸線方向に沿い、油通管9の両側に平行に並んで一対設けられる。オイルリザーバ10の一端は一方の支持ブロック7の両端部に端蓋10cの開口を油通路7aに合致させて固定され、他端が他方の支持ブロック8の側面に固定板8bで固定される。オイルリザーバ10は、シリンダ2の軸線方向に沿った円筒状を成し、両端蓋10a,10bで閉塞される。オイルリザーバ10の内部は、加圧蓋11により作動油を充填する貯留室10cと、加圧蓋11を貯留室10c側へ押し込むばね13を収容するばね収容室10dとに仕切られる。貯留室10cは、油通管9を介してシリンダ2の油圧室5,6に連通する。加圧蓋11はオイルリザーバ10に軸線方向に移動自在に気密に嵌合している。加圧蓋11の収容室10b側には端蓋10bを出入り自在に貫通するガイドロッド12が固着されている。ばね13は、加圧蓋11を貯留室10c側に加圧するように圧縮状態で加圧蓋11とオイルリザーバ10の端蓋10bとの間に保持されており、貯留室10cを弾力的に拡大、縮小させる。オイルリザーバ10は、シリンダ2の油圧室5,6を出入りする油量の変動差を吸収すると共に、作動油の過不足を調整するために作動油を出入り可能に収容する。
【0010】
支持ブロック7,8の油通路7a,8aには、第1,第2の油圧室5,6の負圧により開かれる制御弁14,14が夫々設けられている。制御弁14は、シリンダ2とピストンロッド3の相対移動に伴い拡大又は縮小する二つの油圧室5,6に出入りする作動油の急激な流通を抑制する一方、作動油の緩慢な流通を無理なく許容するものである。
【0011】
この油圧防振器1は、地震等の振動により構築物が揺動して支持体及び防振対象の挙動と共に、ピストンロッド3がシリンダ2内に押し込まれ、あるいはそれから引き出されるようにピストン4が変位しようとして、油圧室5(6)の油圧が一気に変化しても、油通路7a,8a上の制御弁14が閉じて、作動油の流通を抑制し、振動を阻止する。一方、継続的な振動や外気温の影響などに伴う作動油の体積変動による緩慢な流れを制御弁14が無理なく許容する。
【0012】
オイルリザーバ10においては、ばね13により加圧蓋11が常時作動油を加圧している。ピストン4の移動により油圧室5,6間の容積変動に差異が生じたり、継続的な振動や外気温の影響などにより作動油自体の体積の増減が生じるが、内圧変化に応じて加圧蓋11が弾力的に変位して貯留室10cの容積を調整する。
【0013】
この油圧防振器においては一対のオイルリザーバを備えるため、シリンダ2の油圧室5,6を常時所定の油圧にすべくそれぞれ分担して加圧する。このため、オイルリザーバ10にばね力の小さい小型のばね13を用いることができ、オイルリザーバ自体を小型化でき、コンパクトになる結果、取付作業等の取扱い上の操作性を損ねず、またばね13の圧縮量を小さくして油圧変動を小さくでき、油圧変動による油漏れを防止することができる。さらに加圧蓋11からロッド12を外部に突出させるので、ピストン位置を外部から判定できるし、ロッド12を介して加圧蓋11を押し込むことによりエア抜きを可能にし、また給油時にロッド12を引き出すことにより作業性を高めることができる。
【符号の説明】
【0014】
1 油圧防振器
2 シリンダ
3 ピストンロッド
4 ピストン
5 油圧室
6 油圧室
7 支持ブロック
8 支持ブロック
9 油通管
10 オイルリザーバ
10c 貯留室
11 加圧蓋
12 ガイドロッド
13 ばね
14 制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体又は防振対象の一方に連結され、内部に作動油を充填したシリンダと、
前記シリンダ内を二つの油圧室に仕切るピストンと、
支持体又は防振対象の他方に連結され、前記ピストンに結合して、前記シリンダの一端から出入り自在に挿入されたピストンロッドと、
前記油圧室の作動油の過不足を調整するためにシリンダに連通して、作動油を出入り可能に収容し、内部の貯留室に充填した作動油をばね部材により加圧する移動可能な加圧蓋を備えるオイルリザーバと、
前記シリンダとピストンロッドの相対移動に伴い前記二つの油圧室を出入りする作動油の急激な流通を抑制して振動を阻止する一方、作動油の緩慢な流通を許容してシリンダとピストンロッドの緩慢な相対変位を可能にするために、作動油の流通路上に設けられた制御弁とを具備する油圧防振器において、
前記オイルリザーバは、前記シリンダに平行に一対固定されることを特徴とする油圧防振器。
【請求項2】
前記オイルリザーバは、油圧室間を連通させる油通管に連通することを特徴とする請求項1に記載の油圧防振器。
【請求項3】
前記オイルリザーバ及び前記油通管は、前記シリンダの両端部の側方にそれぞれ固定された軸線方向前後に対向する一対の支持ブロック間に支持され、
前記支持ブロックには、オイルリザーバ、油圧室及び油通管を接続するために必要な油通路が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の油圧防振器。
【請求項4】
前記加圧蓋には、前記オイルリザーバに対して出入り自在のロッドが固定されることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の油圧防振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127461(P2012−127461A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281160(P2010−281160)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】