説明

油性赤インキ組成物

【課題】低粘度で、隠蔽性とインキ安定性に優れたペイントマーカー用等として好適な油性赤インキ組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも隠蔽剤としてアルミナ処理が施された酸化チタンが低級アルコールへ分散剤としてポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである酸化チタンベースと、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254が低級アルコールへ分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである赤顔料ベースと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sであることを特徴とする油性赤インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性赤インキ組成物に関し、更に詳しくは、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤として酸化チタンとを用いた、低粘度で、隠蔽性とインキ安定性に優れたペイントマーカー用等として好適な油性赤インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、炭化水素系の溶剤に酸化チタンを分散させた酸化チタン分散ベースに着色剤として炭化水素系可溶性の染料を添加してなるペイントマーカー用インキ組成物が知られている。
また、エステル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを溶剤として、酸化チタンを分散させた分散ベースに着色剤を添加してなるペイントマーカー用インキ組成物(例えば、特許文献1参照)や、赤顔料として良好な色相となり高品質であるC.I.ピグメントレッド254を使用した流動性に優れた塗料組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記染料を添加してなるインキ組成物は、耐光性が乏しく、色あせてしまうという課題があり、上記プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用した場合には、臭気の課題を抱えていた。
また、上記C.I.ピグメントレッド254を使用した塗料組成物の粘度は、流動性が改良されているが、金属、ガラス、黒などの上でも鮮やかに書けるペイントマーカー用のインキには粘度が未だ大きく、使用には課題があり不適であった。
【0004】
他方、本発明の近接技術として、平均粒子径が0.2μm以下にC.I.ピグメントレッド254(ジケトピロロピロール系顔料)が分散されたインキ組成物において、低級アルコールと、分散剤と、剥離剤と、界面活性剤からなる組成のホワイトボードマーカー用赤インキ組成物(例えば、特許文献3参照)が知られている。
しかしながら、この平均粒径を0.2μm以下に分散された赤インキ組成物は、安定性に乏しく、粘度が経時変化で粘度が大きくなる点に課題がある。また、粒子径が小さいために塗膜の隠蔽性が乏しく、更に、インキ分野およびインキを構成する成分が明らかに異なるため、本発明とは区別化されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−322401号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平7−331182号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開平5−279615号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤として酸化チタンとを含有せしめた油性赤インキ組成物であっても、低粘度で、隠蔽性とインキ安定性に優れたペイントマーカー用等として好適な油性赤インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも隠蔽剤としてアルミナ単独処理が施された酸化チタンがポリビニルブチラールにより分散された粒子径を特定範囲とした酸化チタンベースと、特定物性のポリビニルブチラールを用いてC.I.ピグメントレッド254を特定範囲の粒子径に分散させた赤顔料ベースと固着樹脂を使用することにより、または、赤顔料として粒子径が特定範囲のC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤として粒子径が特定範囲のアルミナ処理が施された酸化チタンと、低級アルコールと、分散剤として特定物性のポリビニルブチラールと、固着樹脂とを使用することにより、上記目的の隠蔽性とインキ安定性と低粘度インキを同時に実現したペイントマーカー用等として好適な油性赤インキ組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) 少なくとも隠蔽剤としてアルミナ単独処理が施された酸化チタンが低級アルコールへ分散剤としてポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである酸化チタンベースと、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254が低級アルコールへ分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである赤顔料ベースと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sであることを特徴とする油性赤インキ組成物。
(2) 赤顔料として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるアルミナ単独処理が施された酸化チタンと、低級アルコールと、分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sであることを特徴とする油性赤インキ組成物。
(3) ペイントマーカー用であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の油性赤インキ組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低粘度で、隠蔽性とインキ安定性に優れたペイントマーカー用等として好適な油性赤インキ組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の油性赤インキ組成物は、第1発明においては、少なくとも隠蔽剤としてアルミナ単独処理が施された酸化チタンが低級アルコールへ分散剤により分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである酸化チタンベースと、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254が低級アルコールへ分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである赤顔料ベースと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sであることを特徴とするものであり、また、第2発明においては、赤顔料として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるアルミナ単独処理が施された酸化チタンと、低級アルコールと、分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sであることを特徴とするものである。
以下において、「本発明」というときは、上記第1発明及び第2発明の両方を含むものである。
【0011】
本発明に用いる赤顔料は、C.I.ピグメントレッド254であり、この番手であれば特に限定されない。
C.I.ピグメントレッド254としては、平均粒子径等が異なる市販品、例えば、イルガジンDPPレッドBO、BP、BOX、BTR、2030、2031;、クロモフタールレッドBP、BOC、2028、2030;、イルガフォアレッドB−CF、BT−CF(以上、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、ホスパタームレッドD2G70(以上、クラリアント社製)などが挙げられ、これらは単独で、または、2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
本発明において、この赤顔料であるC.I.ピグメントレッド254の含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、1〜24質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、2〜16%とすることが望ましい。
また、赤顔料ベース中では、好ましくは、5〜30%、更に好ましくは、10〜20%とすることが望ましい。
この含有量がインキ組成物中で1%未満であると、発色の弱いインキ塗膜となり、一方、インキ組成物中で24%又は赤顔料ベース中で30%を超えると、インキ粘度又はベース粘度の安定性が悪くなり、好ましくない。なお、後述するが、インキ組成物全量中に占める赤顔料ベースの含有量は、20〜80%、好ましくは、30〜70%である。
【0012】
本発明に用いる溶媒となる低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられ、これらは少なくとも1種用いることができる。
この低級アルコールの含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、40〜90%、更に好ましくは、50〜80%とすることが望ましい。赤顔料ベース全量に対して、好ましくは、50〜95%、更に好ましくは、70〜90%とすることが望ましい。
この含有量がインキ組成物中で40%未満又は赤顔料ベース中で50%未満であると、インキ粘度又はベース粘度の安定性が悪くなり、一方、インキ組成物中で90%超過又は赤顔料ベース中で95%を超えると、発色の弱いインキ塗膜となり、好ましくない。
【0013】
本発明に用いる赤顔料の分散剤であるポリビニルブチラールは、平均重合度が100以上400未満となるポリビニルブチラールであれば特に限定されず、例えば、市販品のBL−1、BL−S、BL−10(以上、積水化学社製)、モビタールB14S(以上、クラレ社製)などが挙げられ、これらは少なくとも1種用いることができる。
用いるポリビニルブチラールの平均重合度が100未満のものでは、分散性が得られず、一方、400以上のものでは、インキの粘度が大きくなり、好ましくない。
この平均重合度が100以上400未満のポリビニルブチラールの含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、2〜20%、更に好ましくは、3〜15%とすることが望ましい。赤顔料ベース全量に対しては、好ましくは、2〜20%、更に好ましくは、5〜10%とすることが望ましい。
この含有量がインキ組成物中で2%未満又は赤顔料ベース中で2%未満であると、分散性が得られず、一方、インキ組成物中で20%超過又は赤顔料ベース中で20%を超えると、インキの粘度が大きくなり、好ましくない。
【0014】
本第1発明の赤顔料ベースは、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254が低級アルコールへ分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmとなるものであり、その調製は、少なくとも、上記赤顔料のC.I.ピグメントレッド254と、分散剤となる平均重合度が100以上400未満のポリビニルブチラールと、低級アルコールとを湿式分散機などにより、硬質ビーズ、例えば、ジルコニアビーズなどを用いて、連続分散せしめて、平均粒子径が0.21〜0.50μmとなるように赤顔料ベースが調製される。
上記赤顔料の平均粒子径が0.21μm以下であると、インキが不安定になり、一方、0.50μmを越えると、インキの粘度が大きくなり、好ましくない。
なお、上記範囲となる平均粒子径への調整は、ジルコニアビーズなどの硬質ビーズの粒径(φ)、分散機による分散時間などを調整することにより好適に実施することができる。
また、本発明(後述する実施例等を含む)において、平均粒子径の測定は、コールターN4プラス(コールター社製)を使用し、プロピレングリコールモノメチルエーテル希釈にて行った。
第2発明においては、後述するように、赤顔料、酸化チタン等を一緒に湿式分散機などにより、硬質ビーズ、例えば、ジルコニアビーズなどを用いて分散させて調製するので、分散後に得られる混合顔料(赤顔料+酸化チタン)の平均粒子径が0.21〜0.50μmとなるように調製するものであり、この平均粒子径が上記範囲(0.21〜0.50μm)外であると上述又は後述するように、好ましくないものとなる。
【0015】
本発明に用いる隠蔽剤としての酸化チタンは、ポリビニルブチラールとの分散性の点から、アルミナ単独処理が施された酸化チタンを用いるものであり、例えば、市販のCR60、CR67、PF737、CR680(以上、石原産業社製)、JR−301、405、600A、605、600E(以上テイカ社製)、R900(以上、デユポン社製)などを用いることができる。
この酸化チタンの含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、5〜40%、更に好ましくは、10〜35%とすることが望ましい。酸化チタンベース全量に対しては、好ましくは、10〜60%、更に好ましくは、30〜55%とすることが望ましい。
この含有量がインキ組成物中で5%未満又は酸化チタンベース中で10%未満であると、塗膜の隠蔽性に乏しく、一方、インキ組成物中で35%超過又は酸化チタンベース中で60%を超えると、インキの粘度が不安定になり、好ましくない。
なお、後述するが、インキ組成物全量中に占める酸化チタンベースの含有量は、30〜70%、好ましくは、40〜60%である。
【0016】
本発明の酸化チタンベースの分散剤としてのポリビニルブチラールは、上記赤顔料ベースで用いた平均重合度が100以上400未満となるポリビニルブチラール以外のポリビニルブチラール、市販品では、BL−1、BL−S、BL−10(以上、積水化学社製)、モビタールB14S(以上、クラレ社製)を用いることができるが、好ましくは、上述の平均重合度が100以上400未満となるポリビニルブチラールの使用が望ましい。
このポリビニルブチラールの含有量は、酸化チタンベース全量に対して、好ましくは、1〜20%、更に好ましくは、3〜10%とすることが望ましい。
この含有量が1%未満であると、安定性が得られず、一方、20%を超えると、粘度が大きくなり、好ましくない。
【0017】
本発明の酸化チタンベースに用いる溶媒となる低級アルコールとしては、上記赤顔料ベースに用いる低級アルコールを使用することができる。
この酸化チタンベースに用いる低級アルコールの含有量は、酸化チタンベース全量に対して、好ましくは、50〜90%、更に好ましくは、60〜80%とすることが望ましい。
この含有量が50%未満であると、インキの粘度が大きくなり、一方、90質量%を超えると、インキの隠蔽性が悪くなり、好ましくない。
【0018】
本発明の酸化チタンベースは、少なくとも隠蔽剤としてアルミナ単独処理が施された酸化チタンが低級アルコールへ分散剤としてポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmとなるものであり、その調製は、少なくとも、上記隠蔽剤としてアルミナ単独処理が施された酸化チタンと、ポリビニルブチラールと、低級アルコールとを湿式分散機などにより、硬質ビーズ、例えば、ジルコニアビーズなどを用いて、連続分散せしめて、平均粒子径が0.21〜0.50μmとなるように酸化チタンベースが調製される。
上記酸化チタンの平均粒子径が0.21μm以下であると、インキの隠蔽性が悪くなり、一方、0.50μmを越えると、酸化チタンの沈降凝集物が多くなり、好ましくない。
なお、上記範囲となる平均粒子径への調整は、赤顔料ベースと同様に、ジルコニアビーズなどの硬質ビーズの粒径(φ)、分散機による分散時間などを調整することにより好適に実施することができる。
【0019】
本発明に用いる固着樹脂は、金属、ガラス、黒などの被筆記面での定着性を向上させるものであり、例えば、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性樹脂、テルペンフェノール樹脂、ケトン樹脂、スチレンアクリル樹脂などが挙げられ、これらは少なくとも1種用いることができる。
これらの固着樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対して、好ましくは、5〜30%、更に好ましくは、10〜25%とすることが望ましい。
この固着樹脂の含有量が5%未満であると、非吸収面へのインキ固着性が十分でなく、一方、30%を超えると、インキ粘度が大きくなり、好ましくない。
【0020】
本発明の油性赤インキ組成物において、第1発明では、予め赤顔料ベース、酸化チタンベースを用いるものであり、少なくとも、上記赤顔料ベース、酸化チタンベース及び固着樹脂を混合機、分散機などを用いて混合、分散することにより得られるものであり、また、第2発明では、予め赤顔料ベースと酸化チタンベースとを用意することなく、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤としてアルミナ処理が施された酸化チタンと、低級アルコールと、分散剤として平均重合度が100以上400未満となるポリビニルブチラールと、固着樹脂とを上述の各含有量の範囲となるように、混合分散させることにより得られるものであり、上記(1)及び(2)共に、インキ粘度を10〜50mPa・sとするものであり、好ましくは、15〜45mPa・sとすることが望ましい。
このインキ粘度が、10mPa・s未満では、酸化チタンの沈降凝集物が多くなり、一方、50mPa・sを越えると、インキがかすれたりして、好ましくない。
【0021】
上記範囲となるインキ粘度の調整は、第1発明では、インキ組成物全量に対して、上記調製の赤顔料ベースの含有量を20〜80%、上記調製の酸化チタンベースの含有量を30〜70%、固着樹脂の含有量を5〜30%、並びに、低級アルコールによる粘度調整とすることなどにより調整することができ、また、第2発明では、赤顔料の含有量、酸化チタンの含有量、ポリビニルブチラールの含有量、固着樹脂の含有量、並びに、低級アルコールによる粘度調整とすることなどにより調整することができる。
なお、本発明(後述する実施例等を含む)において、インキ粘度の測定は、TVE−20L型回転粘度計(東機産業社製)を使用し、測定温度25℃、標準ロータ(1°34′×R24)、10rpm(ずり速度38.3s−1)、または20rpm(ずり速度76.6s−1)にて行った。
【0022】
このように構成される本発明では、少なくとも隠蔽剤としてアルミナ単独処理が施された酸化チタンが低級アルコールへポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである酸化チタンベースと、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254が低級アルコールへ分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである赤顔料ベースと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sとすることにより、または、赤顔料として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるアルミナ単独処理が施された酸化チタンと、低級アルコールと、分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sとすることにより、低粘度で、隠蔽性とインキ安定性に優れたペイントマーカー用、中綿式マーキングペン用等として好適な油性赤インキ組成物が得られるものとなる。本発明では、酸化チタンの種類と赤顔料の種類を特定することにより、両顔料ともにポリビニルブチラールで分散することができ、そのため混合の際の凝集などがみられない優れたインキを得ることが出来る。
【0023】
本発明では、上記第1発明、第2発明により目的の油性赤インキ組成物が得られるものであり、これ以外の調製でも本発明の効果を発揮する油性赤インキ組成物が得られる。例えば、第1発明におけるベースではなく、ポリビニルブチラールと酸化チタンまたは赤顔料を乾式分散して得られた固形加工顔料を溶剤に溶解せしめてもよい。
【実施例】
【0024】
次に、実施例及び比較例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〕
(赤顔料ベースの調製)
C.I.ピグメントレッド254(チバスペシャリティーケミカルズ社製、イルガジンDPPレッド2030)12質量%と、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、平均重合度300、BL−1)8質量%と、プロピレングリコールモノメチルエーテル50質量%と、エタノール30質量%とを湿式分散機ダイノーミル(KDL シンマルエンタープライズ社製)により、ジルコニアビーズφ0.5mm、充填率75%を用いて、周速9m/sにて1時間連続分散し、平均粒子径が0.24μmとなる赤顔料ベースを得た。得られた赤顔料ベースのインキ粘度は34mPa・sであった。
【0026】
(酸化チタンベースの調製)
酸化チタンCR60(アルミナ単独処理、平均粒子径0.21μm、石原産業社製)50質量%と、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、平均重合度300、BL−1)5質量%と、プロピレングリコールモノメチルエーテル30質量%と、エタノール15質量%とを湿式分散機ダイノーミル(KDL シンマルエンタープライズ社製)により、ジルコニアビーズφ0.5mm、充填率65%を用いて、周速9m/sにて1時間連続分散し、平均粒子径0.30μmとなる酸化チタンベースを得た。得られた酸化チタンベースのインキ粘度は80mPa・sであった。
【0027】
(油性赤インキ組成物の調製)
得られた赤顔料ベース40質量%と、酸化チタンベース40質量%と、固着樹脂としてテルペンフェノール樹脂(YSポリスターS145、ヤスハラケミカル社製)5質量%とエタノール15質量%を3時間ラボミキサー(300rpm)にて1時間混合し、油性赤インキ組成物を得た。得られた油性赤インキ組成物の粘度は34mPa・sであった。
【0028】
〔実施例2〕
上記実施例1において、酸化チタンCR60を同量となるR900(アルミナ単独処理、平均粒径0.4μm、デュポン社製)に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が30mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、酸化チタンベースの平均粒子径が0.38μmであり、酸化チタンベースのインキ粘度は76mPa・sであった。
【0029】
〔実施例3〕
上記実施例1において、赤顔料:C.I.ピグメントレッド254(イルガジンDPPレッド2030)を同量のC.I.ピグメントレッド254であるイルガジンDPPレッドBO(チバスペシャリティーケミカルズ社製)に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が31mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、赤顔料ベースの平均粒子径は0.29μm、赤顔料ベースのインキ粘度は32mPa・sであった。
【0030】
〔実施例4〕
上記実施例1において、赤顔料(イルガジンDPPレッド2030)を同量のC.I.ピグメントレッド254であるイルガジンDPPレッドBP(チバスペシャリティーケミカルズ社製)に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が31mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、赤顔料ベースの平均粒子径は0.31μm、赤顔料ベースのインキ粘度は29mPa・sであった。
【0031】
〔実施例5〕
上記実施例1において、赤顔料ベースの分散剤BL−1を同量のモビタールB14S(平均重合度140、ポリビニルブチラール、クラレ社製)に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が27mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、赤顔料ベースの平均粒子径は0.25μm、赤顔料ベースのインキ粘度は18mPa・sであった。
【0032】
〔実施例6〕
C.I.ピグメントレッド254(チバスペシャリティーケミカルズ社製、イルガジンDPPレッド2030)6質量%と、R900(アルミナ処理、平均粒径0.4μm、デュポン社製)20質量%と、ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、平均重合度300、BL−1)2質量%と、プロピレングリコールモノメチルエーテル34質量%と、エタノール30質量%と、ケトンレジンK90(荒川化学社製)10質量%とを同時に、湿式分散機ダイノーミル(KDL シンマルエンタープライズ社製)により、ジルコニアビーズφ0.5mm、充填率75%を用いて、周速9m/sにて1時間連続分散し、混合顔料の平均粒子径が0.35μmとなる赤顔料インキを得た。得られた赤顔料インキ粘度は24mPa・sであった。
【0033】
〔比較例1〕
上記実施例1において、赤顔料ベースの調製においてジルコニアビーズφ0.1mmを使用して平均粒径0.18μmまで分散した赤顔料ベースを用いた以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が37mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、赤顔料ベースの平均粒子径が0.18μm、赤顔料ベースのインキ粘度は45mPa・sであった。
【0034】
〔比較例2〕
上記実施例1において、赤顔料ベースの調製において赤顔料の分散剤としてポリビニルブチラールBL−1を同量となる平均重合度600であるBM−1(積水化学社製)とした赤顔料ベースを用いた以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が37mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、赤顔料ベースの平均粒子径が0.25μm、赤顔料ベースのインキ粘度は45mPa・sであった。
【0035】
〔比較例3〕
上記実施例1の赤顔料(C.I.ピグメントレッド254)を同量となるC.I.ピグメントレッド17(色相は黄味の赤色)に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が55mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、赤顔料ベースの平均粒子径が0.45μm、赤顔料ベースのインキ粘度は95mPa・sであった。
【0036】
〔比較例4〕
実施例1の赤顔料(C.I.ピグメントレッド254)を同量のアルコール可溶性染料、スピロンレッドC−GHに変更した以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が18mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、赤顔料ベースのインキ粘度は13mPa・sであった。
【0037】
〔比較例5〕
上記実施例1をシリカアルミナ併用処理である酸化チタン(CR−90、石原産業社製)にしたこと以外は、上記実施例1と同様にして、インキ粘度が102mPa・sとなる油性赤インキ組成物を得た。
なお、酸化チタンベースの平均粒子径は0.86μm、酸化チタンベースのインキ粘度は209mPa・sであった。
【0038】
得られた各油性赤顔料インキ組成物について、下記方法により、加温後のインキ粘度、耐光性試験、筆記性を評価した。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0039】
加温後のインキ粘度の測定方法
インキの安定性を確認するために得られた各インキをガラス製サンプルビンに所定量とり、しっかりフタを閉めて、50℃の恒温槽に1週間放置した。これを取り出して覚まして初期の粘度測定と同条件にて測定した。
【0040】
(耐光性試験)
キセノンウェザーメータ(X25、スガ試験機)を用い、インキをコート紙に展色し、暴露時間100時間にて退色具合をグレースケールを参照して目視により下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:4〜5号退色(退色度合いは暴露前とほとんど変わらない)
△:3号退色(退色度合いは暴露前より少しの退色が確認できる)
×:2号退色以下(退色度合いは暴露前より退色が著しいのが確認できる)
【0041】
(筆記性の評価方法験)
得られた各インキを三菱鉛筆社製ペイントマーカーPX−20の容器に5g充填し、50℃に1週間保存後、ステンレス板に筆記し、描線のカスレ具合を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:良好に筆記できる
△:一部にカスレが見られる
×:筆記できない
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明となる実施例1〜6は、本発明の範囲外と比較例1〜5に較べ、低粘度であり、耐光性を有するので隠蔽性に優れると共に、インキ安定性に優れた油性赤インキ組成物となることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
ペイントマーカー用等として好適な油性赤インキ組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも隠蔽剤としてアルミナ単独処理が施された酸化チタンが低級アルコールへ分散剤としてポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである酸化チタンベースと、赤顔料としてC.I.ピグメントレッド254が低級アルコールへ分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールにより分散された平均粒子径が0.21〜0.50μmである赤顔料ベースと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sであることを特徴とする油性赤インキ組成物。
【請求項2】
赤顔料として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるC.I.ピグメントレッド254と、隠蔽剤として平均粒子径が0.21〜0.50μmであるアルミナ単独処理が施された酸化チタンと、低級アルコールと、分散剤として平均重合度が100以上400未満であるポリビニルブチラールと、固着樹脂とを含有し、かつ、インキ粘度が10〜50mPa・sであることを特徴とする油性赤インキ組成物。
【請求項3】
ペイントマーカー用であることを特徴とする請求項1又は2記載の油性赤インキ組成物。

【公開番号】特開2011−127050(P2011−127050A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288665(P2009−288665)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】