説明

油水分離装置及び厨房システム

【課題】シンク等から排出された排水中の油脂を自動的に回収できる技術の提供を課題とする。
【解決手段】油を含む排水100を貯留し、排水100に含まれる水と油とを比重差で水層101と油層102とに自然分離させる分離部11と、分離部11内の水層101の表面が予め定められた第1位置H1以上に上昇した際に、水層101の水を分離部11外に排出させる排水配管12と、排水配管12を開閉する開閉手段13と、予め定められた第1位置H1より上側に設けられ、油層102の油を分離部11外に排出させる油排出手段である排出孔14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油水分離装置及び厨房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レストラン等の業務用厨房に設置されているシンク(sink)には、例えば調理具の洗浄により生じた排水中の油脂等を取り除く油水分離装置が備えられているのが一般的である。この油水分離装置により油脂等が除去された排水は、下水管に排出される。従来の油水分離装置は、シンクで生じた排水を一旦貯留し、油と水との比重差で排水中の油脂を水から分離し、分離した油脂を作業員が掬って排出するように構成されているのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−230271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の油水分離装置は、排水から分離した油脂を、例えばレストラン等の従業員が柄杓で掬うことにより回収し、油脂専用の容器(バケツ)に移し替えてから廃棄していたので、手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、シンク等から排出された排水中の油脂を自動的に回収できる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明は、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の油水分離装置は、油を含む排水を貯留し、前記排水に含まれる水と油とを比重差で水層と油層とに自然分離させる分離部と、前記分離部内の前記水層の表面が予め定められた第1の位置より上側に上昇した際に、前記水層の前記水を前記分離部外に自動的に排出させる排水配管と、前記排水配管を開閉する開閉手段と、前記油層の前記油を前記分離部外に自動的に排出させる油排出手段と、を備える。
【0007】
本発明によれば、排水に含まれる油と水が分離部で比重差によって油層と水層とに自然分離し、水層の表面が予め定められた第1の位置より上側に上昇した際に、開閉手段によって排水配管を開放し又は予め開放しておくことにより、水層の水が排水配管を介して分離部の外側に自動的に排出される。また、油層の油は油排出手段によって分離部外に排出される。従って、排水から分離された油を人手で回収する必要がないので、手間を大幅に省くことができる。
【0008】
ここで、前記油排出手段は、前記予め定められた第1の位置より上側に設けられた油排出孔と、前記分離部内に前記油層を少なくとも前記油排出孔まで上昇させるための水を補給する水補給手段と、を有する構成にできる。本発明によれば、排水配管を開閉手段によって閉塞して水層の水を排出不可能とし、水補給手段により分離部内に水を供給して、油層を少なくとも油排出孔まで上昇させることにより、油層の油を油排出孔から分離部外に自動的に排出できる。
【0009】
また、前記油排出手段は、前記分離部内に設けられ前記油層の油を付着させる回転可能
な油付着部材と、前記油付着部材の回転に伴って前記油付着部材に付着した前記油を取り出す油取出部材と、を有する構成にできる。本発明によれば、油付着部材を回転させるだけで油層の油を分離部外に排出できるので、構成を簡略化できる。
【0010】
また、前記排水配管は、前記分離部の内側又は内側に配置されると共に上下に延伸し、且つ下端に開口が設けられた第1の上下配管と、前記第1の上下配管の上部側から水平方向に延伸して前記分離部の外側に突出する水平配管であって、内周面の下端縁が前記予め定められた第1の位置に配置された水平配管と、前記分離部の外側における前記水平配管の先端部から下方向に延伸する第2の上下配管と、を有する構成にできる。この構成によれば、排水配管の第1の上下配管が分離部の内側又は外側で上下に延び、且つ下端に開口
が設けられているので、分離部内の水層の水が排水配管によって排出される際に、水層の下側の水を排出できる。これにより、水層の上側に浮上した油層より下の水槽を更に下側から排出できるので、分離部外に排出される排水に油が含まれるのを抑制できる。
【0011】
また、前記開閉手段は、前記開閉手段は、前記外側上下配管と前記水平配管との接続部にて内周面を閉塞するボール部材と、前記ボール部材が上下移動可能に配置されるガイド部と、前記ボール部材を上下移動させる移動操作手段と、を有する構成にできる。この構成によれば、開閉手段の構成を簡略化できる。
【0012】
また、前記分離部に送水する前記排水を一時貯留する一時貯留タンクと、前記一時貯留タンク内の前記排水を吸水するポンプと、前記ポンプから送出された前記排水を前記分離部に送水する送水配管と、前記一時貯留タンク内の前記排水の表面が予め定められた第2の位置より上側に上昇した場合は、前記ポンプにおける前記排水の吸水位置を前記第2の位置より上側に設定し、前記一時貯留タンク内の前記排水の前記表面が前記第2の位置以下に降下した場合は、前記ポンプの前記吸水位置を前記第2の位置より下側に設定する吸水位置変更手段と、を備える構成にできる。
【0013】
この構成によれば、シンク等から排出された排水を一時貯留タンクに貯留した後分離部に送水するときに、ポンプが一時貯留タンク内の排水を吸水する位置を一時貯留タンクの貯水量に応じて変更することにより、排水に含まれる油を確実に分離部に送ることができる。例えば、一時貯留タンク内の排水の貯水量が多い場合は油層が一時貯留タンクの上側に上昇するので、一時貯留タンクの上側(第2の位置より上側)からポンプで吸水することにより排水に含まれる油を確実に分離部に送ることができる。また、貯水量が少ない場合は、ポンプが一時貯留タンクの第2の位置より下側から吸水することにより、油を確実に分離部に送ることができる。これにより、一時貯留タンク内に油が残留するのを抑制できるので、一時貯留タンクの清掃の手間を省くことができる。
【0014】
また、本発明の厨房システムは、床の下側に設けられ排水を集合する排水根太と、前記排水根太によって集合された前記排水を貯留する排水貯留部と、前記排水貯留部内の前記排水を水層と油層とに分離して自動的に外部に排出する上記油水分離装置と、を備える。
【0015】
本発明によれば、床上の例えばシンク等から排出された排水を油水分離装置によって油層と水層とに分離して油水分離装置の外側に自動的に排出できるので、厨房の排水処理を手間をかけずに簡単に行うことができる。
【0016】
また、本発明に係る油水分離装置において、分離部に貯留される排水は、排水が分離部に送水される送水口から近い一側壁と油付着部材との間の排水である第1排水部分と、一側壁以外の他側壁と油付着部材との間の排水である第2排水部分とを有し、油付着部材は、円筒面を有し、分離部が貯留する排水表面に円筒面が接触し、第1排水部分の油を巻き込んで、排水中を通って第2排水部分方向に送り込む方向に回転してもよい。
【0017】
第1排水部分は、排水が分離部に送水される送水口から近い一側壁と油付着部材との間の排水である。第2排水部分は、一側壁以外の他側壁と油付着部材との間の排水である。油付着部材は、第1排水部分の油を、排水中を通って第2排水方向に送り込み可能に回転することにより、より多くの油を付着させ、油取出部材がより多くの油を取り出すことが可能である。
【0018】
また、本発明に係る油水分離装置において、分離部に貯留される排水は、分離部の一側壁と油付着部材との間の排水である第1排水部分と、一側壁以外の他側壁と油付着部材との間の排水であり、第1排水部分よりも領域が小さい第2排水部分とを有し、油付着部材は、第1排水部分の油を巻き込んで、排水中を通って第2排水部分に送り込む方向に回転してもよい。
【0019】
第1排水部分は、分離部の一側壁と油付着部材との間の排水である。第2排水部分は、一側壁以外の他側壁と油付着部材との間の排水であり、第1排水部分よりも領域が小さい。油付着部材は、第1排水部分の油を、排水中を通って第2排水部分に送り込み可能に回転することにより、より多くの油を付着させ、油取出部材がより多くの油を取り出すことが可能である。
【0020】
また、本発明に係る油水分離装置において、油排出手段は、前記分離部の突出部分に設けられ、油付着部材は、突出部分を設けた側壁以外の他側壁と油付着部材の回転の中心軸を通る鉛直面とで区切られる排水表面の油を巻き込んで、排水中を通って突出部分方向に送り込む方向に回転してもよい。その結果、油付着部材は、より多くの油を付着させ、油取出部材がより多くの油を取り出すことが可能である。
【0021】
更に、本発明に係る油水分離装置において、前記油排出手段は、前記油取出部材によって取り出された油を受け取り、前記分離部外に排出する油排出部材を更に有してもよい。分離部内の排水の表面を向く油取出部材の第1の面側から、油取出部材が油付着部材に付着した油を取り出すため、取り出された油が排水に落ちてしまう可能性がある。そこで、本発明によれば、油排出部材が、油取出部材によって取り出された油を受け取ることにより、油が排水に落ちにくく、確実に分離部外に排出することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、排水中に含まれる水と油を比重差で分離して、それぞれ分離部外に自動的に排出できるので、構成を簡略化できる。また、分離部内で排水から分離した油を人手で回収する必要がないので、手間を大幅に省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る油水分離装置を示す断面図である。
【図2】第1実施形に係る油水分離装置を示す上面図であり、図1のA矢視図である。
【図3】第1実施形態に係る油水分離装置の分離部を示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る油水分離装置の油収束板及び油排出孔を示す断面図であり、図3のB−B断面図である。
【図5】図5(a)は第1実施形態に係る吸水位置変更手段の上側の吸水口が開放され下側の吸水口が閉塞された状態を示す断面図、図5(b)は上側の吸水口が閉塞され下側の吸水口が開放された状態を示す断面図である。
【図6】第1実施形態に係る残渣排出用のダイヤフラムポンプを示す図であり、図1のC矢視図である。
【図7】図7(a)は第1実施形態に係る一時貯留タンク内の排水を分離部に排出するポンプの別の配置例を示す図、図7(b)は図7(a)のD矢視図である。
【図8】第2実施形態に係る油水分離装置を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係る油水分離層の排出は移管を示す図であり、図8のD−D断面図である。
【図10】第2実施形態に係る油付着部材及び第1ワイパーを示す図であり、図8のE−E断面図である。
【図11】第2実施形態に係る残渣回収用のバスケット及び第2ワイパーを示す図であり、図8のF−F断面図である。
【図12】第2実施形態に係るバスケット、第1及び第2ワイパー、分離部及び油付着部材、及びカバーボックスの分解斜視図である。
【図13】第3実施形態に係る厨房システムを示す斜視図である。
【図14】第3実施形態に係る排水根太及び排水貯留部を示す断面図であり、図13のG−G断面図である。
【図15】第3実施形態に係る排水貯留部を示す断面図であり、図13のH−H断面図である。
【図16】第3実施形態に係る排水貯留部、排水ポンプ及び油水分離装置の接続状態を示す図である。
【図17】第4実施形態に係る油水分離装置を示す断面図である。
【図18】第4実施形態に係るバスケット、第1及び第2ワイパー、分離部及び油付着部材、及びカバーボックスの分解斜視図である。
【図19】第4実施形態に係る油排出手段を示す断面概略図である。
【図20】第4実施形態に係る油付着部材を示す側面図である。
【図21】第4実施形態に係る油付着部材を示す上面図である。
【図22】第4実施形態に係る油排出手段を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)に係る油水分離装置及び厨房システムについて説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成には限定されない。
【0025】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る油水分離装置1の断面図、図2は油水分離装置1の上面図であり図1のA矢視図である。この油水分離装置1は、シンク2等から排出される油を含む排水100を貯留し、この排水100に含まれる水と油とを比重差で水層101と油層102とに自然分離させる分離部11と、この分離部11内の水層101の表面が予め定められた第1位置H1以上に上昇した際に、水層101の水を分離部11外に排出する排水手段である排水配管12と、この排水配管12を開閉する開閉手段13と、分離部11の第1位置H1より上側に設けられ、油層102の油を自重で分離部11外に排出させる油排出手段である油排出孔14と、分離部11内に油層102を上昇させるための水を補給する水補給手段15と、を備えている。
【0026】
また、この油水分離装置1は、シンク2等から排出された排水100を分離部11に送る前に一時貯留する一時貯留タンク16と、この一時貯留タンク16内の排水100を吸水して分離部11に送水する吸送水手段17とを備えている。一時貯留タンク16内には、排水100の表面100aの位置を検出するフロートスイッチ18が配置されている。
【0027】
次に、上記各構成要素について説明する。分離部11は、図3に示すように、断面四角形の筒状に形成された本体21と、本体21の下部側に設けられ排水100中の残渣を一箇所に集めるため適宜な角度で上下方向に傾斜している底部22と、本体21の上部側に開閉自在に設けられた蓋23とを有している。残渣を一箇所に集めるためには、底部22
は、水平面に対して断面四角形状の本体21の1つの角部に向かって傾斜するのが好ましい。
【0028】
分離部11の本体21内には、上下に延伸する複数枚、本実施形態では2枚の第1及び第2隔壁25,26が、互いに平行に設けられている。第1隔壁25は比較的長く形成され、その下端縁と底部22との間に排水100が通過する隙間が設けられている。また、第1隔壁25の上部は、後述のバスケット58の近くに配置されている。第1隔壁25の上部は、バスケット58から排出された排水100が第1隔壁25と分離槽11の側面との間に確実に落下するようにするため、上広がりに形成されている。
【0029】
第2隔壁26は、本体21の水平中心より下側に設けられている。また、第2隔壁26と底部22との間には、排水100が通過する隙間が設けられている。そして、吸送水手段17の送水配管40から分離部11の本体21内に送られた排水100は、バスケット58を介して第1隔壁25と本体21の側面との間に落下し、送水配管40からの流れに従って第1隔壁25と本体21の側面との間を降下し、降下した排水100の一部はさらに第1隔壁25の下端縁と底部22との隙間を通り第1隔壁25と第2隔壁26との間を上昇する。
【0030】
排水配管12は、分離部11内に配置されて上下に延伸し、且つ下端に開口30aが設けられた第1の上下配管である内側上下配管30と、この内側上下配管30の上部側から
水平方向に延伸して分離部11の外側に突出し、且つ内周面31aの下端縁が予め定められた第1位置H1に合わせて配置された水平配管31と、分離部11の本体21の外側で水平配管31の先端側から下方に延伸する第2の上下配管である外側上下配管32と、を有している。外側上下配管32から排出された水は、下水等に流される。
【0031】
開閉手段13は、排水配管12の水平配管31と外側上下配管32との接続部に設けられ、水平配管31及び外側上下配管32の直径より大きな直径を有する筒状のガイド部材33と、このガイド部材33内に上下移動自在に配置され、且つ水平配管31及び外側上下配管32の直径より大きな直径を有するボール部材34と、このボール部材34を上下移動させる移動操作手段である例えばソレノイド(図示せず)と、を有している。なお、開閉手段13のソレノイドは、使用環境に応じて分離部11内の排水100の貯水スピードを経験等で把握し、この貯水スピードに基づいてタイマーによって制御できる。なお、開閉手段13の筒状のガイド部材33は、ボール部材34により閉塞される直径であればよく、外側上下配管32の直径より小さな直径を有するものでもよい。例えば、外側上下配管32の上端を細く絞ったくびれ部を構成し、このくびれ部をボール部材34で閉塞可能とし、くびれ部より上部でボール部材34が移動可能な直径になるようにしてもよい。
【0032】
開閉手段13のボール部材34が上昇したときには、外側上下配管32が開放されて分離部11における本体21内の水層101の水が排水配管12から外部に排出可能な状態になる。また、図3中に破線で示すように、ボール部材34が降下したときには、ボール部材34によって外側上下配管32が閉塞されて、本体21内の水層101の水が排水不可能な状態になる。
【0033】
油排出孔14は、本体21の側面における予め定められた第1位置H1より上側に設けられている。この油排出孔14は、横長の長方形状に形成されている。油排出孔14の上側には、図4にも示すように、板状の油収束板35が設けられている。この油収束板35は、本体21内の油層102が上昇するにつれて当該油層102の油を油排出孔14側に導くものである。油収束板35は、第1隔壁25から本体21の排水配管12側の側面まで延びている。また、油収束板35は、その一端の略中央に油排出孔14の長辺と略同一長さで直線状の頂部35a(図3参照)が設けられ、この頂部35aの周辺部35bが下
り傾斜となるように形成されている。
【0034】
この油収束板35は、頂部35aが油排出孔14の上端縁付近に固定され、周辺部35bの先端が本体21の内側面、及び第1隔壁25に固定されている。油排出孔14から排出された油は、本体21の外側で油排出孔14の下側に設けられた油タンク56内に貯められる。
【0035】
更に、図1に示すように、本体21の上部側には、蓋23を開けたときに小物等が分離部11内の深いところに落下するのを防止するため、横仕切板43が斜めに設けられている。この横仕切板43には、バスケット58を通す孔43aが設けられている。また、バスケット58には、孔43aの周囲に係止させる鍔58aが設けられている。これにより、バスケット58は簡単に着脱できるので、清掃等のメンテナンスが容易になる。
【0036】
図1の水補給手段15は、図3に示すように、給水タンク55と、この給水タンク55内の水を本体21内に送水する給水配管36と、給水タンク55の給水配管36に対する開口55aを開閉する電磁弁37とを備えている。また、給水配管36は、給水タンク55に接続された縦配管部38と、本体21内に延伸する水平配管部39とによって略L字状に形成されている。水平配管部39は、分離部11内の予め定められた第1位置H1より僅かに下側に配置されている。この水平配管部39の上部側には、複数の孔39aが設けられている。また、水平配管部39の先端は開放されている。なお、電磁弁37の開閉は、分離部11内の排水100の貯水スピードに基づいてタイマーによって制御できる。
【0037】
また、水補給手段15から本体21に送水する水は、温度を高くするのが好ましい。この場合は、例えば厨房で使用するガスコンロ等の周囲に銅配管を配置し、給水タンク55内の水をこの銅配管によって循環させることにより、給水タンク55内に簡単に温度の高い水を貯めることができる。
【0038】
図1の吸送水手段17は、分離部11の本体21に接続された送水配管40と、一時貯留タンク16内の排水100を吸水して送水配管40に送水するポンプ41と、一時貯留タンク16内の排水100の貯水量に応じてポンプ41が一時貯留タンク16内の排水100を吸水する位置を変更する吸水位置変更手段42とを備えている。
【0039】
吸水位置変更手段42は、図5(a)に示すように、一時貯留タンク16内の上下方向に延伸すると共に、上端側及び下端側に吸水口45a,45bが設けられた縦配管45と、この縦配管45の中間から一時貯留タンク16の外側に延びる水平配管46と、一時貯留タンク16内の排水100の貯留量に応じて縦配管45の上下の吸水口45a,45bを開閉するフロート弁47と、を有している。
【0040】
フロート弁47は、排水100上に浮上するフロート48と、フロート48の下側に設けられ縦配管45の上側の吸水口45aを開閉する第1弁体49と、この第1弁体49の下側に設けられ、縦配管45内に設けられたガイド部45cによって縦配管45の延伸方向に移動自在に支持された弁棒50と、弁棒50の下端に設けられ縦配管45の下側の吸水口45bを開閉する第2弁体51とを有している。
【0041】
本実施形態では、吸水位置変更手段42は、図5(a)に示すように、排水100の表面100aが予め定められた第2位置H2より上側にある場合は、フロート48が排水100の表面100a上に浮上し、上側の第1弁体49が縦配管45の上側の吸水口45aから離間して吸水口45aが開放される。また、縦配管45の下側の吸水口45bが第2弁体51によって閉塞される。これにより、ポンプ41(図1参照)は、一時貯留タンク16内の排水100を第2位置H2の上側から吸水する。
【0042】
また、排水100の表面100aが、予め定められた第2位置H2と、縦配管45の上側の吸水口45aと同一レベルの第3位置H3との間にある場合は、縦配管45の上下の吸水口45a,45bが開放される。これにより、ポンプ41は、一時貯留タンク16内の排水100を上側と下側の両方から吸水する。
【0043】
更に、図5(b)に示すように、排水100の表面100aが縦配管45の上側の吸水口45aより下側にある場合は、この吸水口45aが第1弁体49によって閉塞され、下側の吸水口45bが開放される。これにより、ポンプ41は、一時貯留タンク16内の排水100を下側から吸水する。なお、ポンプ41は、一時貯留タンク16内の排水100の貯留スピードに応じて、タイマーによって制御できる。
【0044】
また、分離部11の外側には、図6に示すように、本体21の底部22における最下端部から残渣を含む排水100を吸引して排出するダイヤフラムポンプ57と、ダイヤフラムポンプ57から排出された排水100及び残渣を、分離部11の本体21内に設けられたバスケット58に送る配管52とが設けられている。バスケット58には多数の孔が設けられている。また、ダイヤフラムポンプ57は、底部22の最下端部に堆積する残渣の堆積スピードに応じてタイマーによって制御できる。
【0045】
次に、この油水分離装置1の作用を説明する。図1に示すように、シンク2等から排出された排水100は、一時貯留タンク16内に貯められる。この一時貯留タンク16内の排水100は、吸送水手段17のポンプ41によって吸引され、送水配管40を介して分離部11のバスケット58に排出される。
【0046】
このとき、図5(a)に示すように、一時貯留タンク16内の排水100の表面100aが第2位置H2より上側にある場合は、吸水位置変更手段42の上側の吸水口45aが開放され、下側の吸水口45bが閉塞される。従って、ポンプ41は排水100を上側からのみ吸水して分離部11に送水する。
【0047】
また、一時貯留タンク16内の排水100の表面100aが第2位置H2と第3位置H3との間にある場合は、図5(a)中に二点差線で示すように、吸水位置変更手段42の上下の吸水口45a,45bが開放される。これにより、ポンプ41は排水100を上側及び下側から吸水して分離部11に送水する。
【0048】
更に、一時貯留タンク16内の排水100の表面100aが第3位置H3より下側にある場合は、吸水位置変更手段42の上側の吸水口45aが閉塞され、下側の吸水口45bが開放される。これによって、ポンプ41は排水100を下側から吸水して分離部11に送水する。
【0049】
上記のごとく、一時貯留タンク16内の排水100の貯水量に応じてポンプ41が排水100の上側、下側又は上下両方から吸引するように変更することにより、排水100中に含まれ一時貯留タンク16内で自然分離した油を一時貯留タンク16内に残すことなく、分離部11に送水できる。すなわち、排水100の貯留量が多い場合は油層が一時貯留タンク16の上側にあるため、排水100の上側から吸水することにより油層の油を確実に吸引できる。また、排水100の貯留量が少ない場合は油層も一時貯留タンク16の下側にあるため、排水100の下側から吸引することにより油層の油を確実に吸引できる。一時貯留タンク16内に油が残留すると、この油が酸化して悪臭を発生し、また清掃に手間がかかるが、本実施形態の油水分離装置1によれば、一時貯留タンク16内に油が残留するのを抑制できるので、一時貯留タンク16の清掃の手間を省くことができる。
【0050】
また、吸送水手段17によって分離部11の本体21内に供給された排水100は、バスケット58によって異物が除去された後、第1隔壁25と本体21の側面との間を通過して本体21内に落下する。この排水100は、図3に示すように、本体21の側面と第1隔壁25との間を落下後の流れに従って降下し、第1隔壁25と第2隔壁26との間、及び第2隔壁26と本体21の側面との間を上昇する。このように、本体21内に供給された排水100が、本体21の側面、第1隔壁25及び第2隔壁26の間を上下に流れることにより、本体21内で比重差により水層101と油層102とに自然分離している最中の排水100を撹拌するのを抑制できるので、水層101と油層102との自然分離作用を邪魔することなく短時間で自然分離させることができる。
【0051】
また、分離部11の本体21内で排水100が自然分離した水層101の表面が、予め定めた第1位置H1より上側に上昇した際に、開閉手段13によって排水配管12の外側上下配管32を開放し又は予め開放しておくことにより、水層101のうち、第1位置H1より上側の水が自動的に排水配管12から外部に排出される。このときには、排水配管12の内側上下配管30の下端の開口30aから排水100の下側の部分が吸水されて外部に排出されるので、排水100中に油が含まれるのを抑制できる。
【0052】
また、開閉手段13により排水配管12の外側上下配管32を閉塞し、水補給手段15から本体21内に水を補給することにより、油層102を油収束板35まで上昇させることにより、油層102の油が油排出孔14から自動的に排出されて、本体21の外側に設けられた油タンク56内に貯められる。従って、従来のように分離部11内で排水100から分離された油層102の油を人手ですくい取る必要がないので、手間を大幅に省くことができる。
【0053】
また、分離部11の底部22が上下に傾斜しているので、底部22上に堆積した残渣が自重で底部22の最下部側に堆積する。この残渣をダイヤフラムポンプ57で吸引して、分離部11内のバスケット58に排出することにより排水100中の残渣を簡単に除去できるので、残渣を除去するための手間を省くことができる。
【0054】
本実施形態の油水分離装置1によれば、分離部11、排水配管12、開閉手段13、油排出孔14、及び水補給手段15によって構成できるので、構成を簡略化できる。また、排水配管12を、本体21内の内側に配置された内側上下配管30と、この内側上下配管30の上部側から本体21外に突出する水平配管31と、水平配管31の先端側で本体21の外側に設けられた外側上下配管32とで構成し、水平配管31の内周面31aの下端縁を予め定められた第1位置H1に合わせて配置したので、本体21内の水層101の表面が第1位置H1より上側に上昇した際に、水層101の水が排水配管12から自動的に外部に排出される。従って、本体21内で排水から分離された水層の水をポンプ等で排出する必要がないので、構成を簡略化できる。
【0055】
また、排水配管12の内側上下配管30の下端に吸水用の開口30aを設けたので、分離部11内の排水100を下側から吸水して排出できる。これにより、分離部11から排出される排水100に油が含まれるのを抑制できる。
【0056】
また、排水配管12を開閉手段13で閉塞し、水補給手段15によって本体21内に水を供給することにより油層102を上昇させ、油層102の油を油排出孔14から自動的に本体21外に排出させて油タンク56に貯めることができる。従って、従来のように分離部内で分離した油層の油を人手ですくい取る必要がないので、手間を省くことができる。
【0057】
また、シンク2の排水100を一時貯留する一時貯留タンク16に吸水位置変更手段4
2を設けたので、一時貯留タンク16内の排水100の貯水量に応じて、ポンプ41が排水100を吸水する位置を変更できる。これにより、一時貯留タンク16内の排水100が増減しても排水100中の油を確実に分離部11に送ることができる。従って、一時貯留タンク16内に油が残留するのを抑制できるので、悪臭の発生を抑制し、清掃の手間を省くことができる。
【0058】
更に、分離部11の底部22に堆積した残渣をダイヤフラムポンプ57によって排出するので、残渣をかき回すことがない。従って、分離部11内の残渣を効率よく排出できる。これに対して残渣を渦巻きポンプ等によって排出した場合には、底部22上の残渣をかき回してしまうので残渣が分離部11内に残留する恐れがある。
【0059】
なお、上記実施形態では、一時貯留タンク16内の排水100を分離部11に送るポンプ41が、一時貯留タンク16から離れた位置に配置された場合について説明したが、図7(a),(b)に示すように、ポンプ41は一時貯留タンク16の直下に配置できる。この場合、一時貯留タンク16の下部に凹部16aを形成し、この凹部16a内にポンプ41を配置できる。これにより、一時貯留タンク16とポンプ41間の水平配管46を短くできるので、水平配管46に油が残留するのを抑制できる。また、ポンプ41は水中ポンプとして一時貯留タンク16内に配置してもよい。
【0060】
<第2実施形態>
第1実施形態の油水分離装置1は、水補給手段15によって分離部11内に水を補給することにより油層102を油排出孔14まで上昇させ、油層102の油を油排出孔14から自動的に分離部11の外側に排出したが、次に説明するように、油層102の油を機械的に分離部11外に排出できる。
【0061】
図8及び図9は、第2実施形態の油水分離装置80を示す。なお、第1実施形態の油水分離装置1と同様な部分には同一の符号を付けて、詳細な説明を省略する。この油水分離装置80は、排水100を水層101と油層102とに自然分離させる分離部81と、水層101の水を分離部81外に自動的に排出させる排水配管82(図9参照)と、排水配管82を開閉する開閉手段13と、油層102の油を分離部11外に排出させる油排出手段83と、を備えている。なお、図8中の符号99は、装置全体を覆うカバーボックスである。
【0062】
分離部81は、第1実施形態の分離部11と略同様であるが、ここでは、分離部11の側面に油排出手段83を収容する突出部分84が設けられている。油排出手段83については、後述する。図9の排水配管82は、分離部81の外側に配置され下端部が分離部81の下側に接続された第1の上下配管である第1外側上下配管85と、この第1外側上下
配管85の上部側に接続された水平配管86と、第1外側上下配管85に略平行で水平配管86の先端に接続された第2外側上下配管87とを有している。第1外側上下配管85と水平配管86との接続部分には、開閉手段13が設けられている。この排水配管82は第1実施形態の排水配管12と同様に、分離部11内の水層101の水が第1位置H1以上の位置に上昇した際に、水層101の水を下部側から排出する。
【0063】
図8の油排出手段83は、分離部81の突出部分84内に回転自在に設けられ表面に油が付着する油付着部材83aと、この油付着部材83aの回転に伴って油付着部材83aの表面に付着した油を取り出す油取出部材であるスクレーパ83bと、を有している。油付着部材83aは、図10にも示すように、ローラ状に形成されモータ88によって回転駆動される。この油付着部材83aは、表面に油が付着するが、水は付着しにくい金属で形成されている。また、本実施形態では、突出部分84の幅B1は、分離部81の幅H2の1/2より少し広く形成されている。
【0064】
図8のスクレーパ83bは、平板状に形成されている。このスクレーパ83bは油付着部材83a側から斜め下側に傾斜しており、その上側の先端部が油付着部材83aの表面に適宜な弾性力で押し付けられている。油付着部材83aが回転するのに伴って、油付着部材83aの表面に付着した油がスクレーパ83bによって剥離されて、スクレーパ83b上を流れ落ちる。この油は、突出部分84の下側に配置された油収集ボックス89に貯められる。この油収集ボックス89内の残渣は、底部の一端89aを中心として外側に倒すことにより、油収集ボックス89から簡単に取り出すことができる。
【0065】
図10に示すように、分離部81内には、油付着部材83aの側方に位置する油回収用の第1ワイパー90が設けられている。この第1ワイパー90は、油付着部材83a側の先端部90aに取り付けられた回転軸92を中心として、油層102の表面に沿って旋回可能に設けられている。また、第1ワイパー90は、図8に示すように、上下に延びる平板状に形成され、その水平中心が予め定めた第4の位置H4に配置されている。そして、油層102が予め定めた位置まで上昇した際に第1ワイパー90が旋回し、油層102の油を油付着部材83a側に集める。この第1ワイパー90は、支持部材(図示せず)によって分離部81に回転自在に取り付けられた回転軸92の下部側に取り付けられている。回転軸92及び第1ワイパー90は、回転ベルト93を介してモータ94によって回転駆動される。
【0066】
分離部81の上側には、吸送水手段17(図1参照)の送水配管40から排出された排水100中の異物を除去するバスケット58が設けられている。このバスケット58は、図11に示すように、略半円状に形成されている。図8に示すように、分離部81の底部22に堆積した残渣はダイヤフラムポンプ57によって吸引され、配管95を介してバスケット58に排出される。
【0067】
図11に示すように、バスケット58内には、残渣を集める第2ワイパー96が旋回自在に設けられている。この第2ワイパー96は、上下に延びる平板状に形成されている。第2ワイパー96は、図12に示すように、第1ワイパー90が取り付けられた回転軸92の上部側に取り付けられている。すなわち、第1ワイパー90と第2ワイパー96は、一本の回転軸92の下部側と上部側に取り付けられモータ94によって同時に旋回駆動される。なお、第1ワイパー90、第2ワイパー96、回転軸92、及びモータ94はユニット化できる。また、分離部81と油排出手段83もユニット化できる。
【0068】
図11に示すように、第2ワイパー96によって集められたバスケット58内の残渣は、第2ワイパー96によってバスケット58の側壁58aに設けられた残渣排出口58b(図11参照)から排出され、残渣排出口58bから斜め下側に延びる斜板58cを介して、残渣収集ボックス97内に落下する。この残渣収集ボックス97内の残渣は、図8に示すように、残渣回収ボックス97における底部の一端97aを支点として外側に倒すことにより簡単に取り出すことができる。なお、残渣収集ボックス97には、外側に倒すときに斜板58cとの衝突を避ける切り欠き(図示せず)を設けることができる。
【0069】
この油水分離装置80によれば、第1ワイパー90によって油層102の油を油付着部材83a側に集めて油付着部材83aの表面に付着させ、この油を油付着部材83aの回転に伴ってスクレーパ83bによって取り出すので、油層102の油を確実に除去できる。このとき、油付着部材83aの表面には水が付着しにくいので、油のみを除去できる。従って、油収集ボックス89内に貯められる油の量を少なくできるので、油収集ボックス89内の油を廃棄する手間を省くことができる。また、第2ワイパー96によって、バスケット58内に堆積した残渣を分離部81外に確実に排出できる。なお、第1ワイパー90及び第2ワイパー96を旋回させるモータ94のオン,オフ制御は、分離部81内の排
水100の貯留スピードに応じて、タイマーによって行うことができる。
【0070】
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態に係る厨房システム60を示す。なお、第1実施形態と同様な部分には、同一の符号を付けて詳細な説明を省略する。この厨房システム60は、格子状に並べられた複数のパネル61と、第1実施形態の油水分離装置1と、シンク2等から排出された排水100をパネル61の下側で集める排水根太62と、排水根太62の中間部に設けられ排水根太62内に排出された排水を貯留する排水貯留部63と、排水ポンプ64と油水分離装置1とを接続する配管76と、排水貯留部63内の排水100を油水分離装置1に送水する排水ポンプ64と、を備えている。油水分離装置1、排水根太62、排水貯留部63は、予め組み立てておくことができる。なお、第1実施形態の油水分離装置1に代えて、第2実施形態の油水分離装置80を使用できる。
【0071】
パネル61上には、複数のシンク2(一個のみ図示)が設けられている。このシンク2の排水100は、配管65によって排水根太62に流される。また、排水根太62の上側には、グレーチング66が設けられている。図14に示すように、排水根太62の上側には、排水根太62内の残留物を除去するため、複数の洗浄ノズル67が互いに適宜な間隔をあけて設けられている。また、排水根太62及びパネル61とコンクリート面68との間には、メンテナンス空間69が設けられている。排水根太62の両端には、押出洗浄用ノズル70が設けられている。また、排水根太62の一端には、オーバーフロー配管71が設けられている。
【0072】
図13の排水貯留部63は、図15に示すように、シンク2から延びる配管65が接続されている。排水貯留部63の上部側には、洗浄ノズル77が設けられている。また、排水貯留部63内には、フロートスイッチ75が設けられている。このフロートスイッチ75は、排水100の下限レベルL1、及び満水レベルL2を検出する。フロートスイッチ75が満水レベルL2を検知したときには、排水ポンプ64が起動する。排水ポンプ64の運転は、フロートスイッチ75が下限レベルL1を検出するまで継続する。また、フロートスイッチ75が下限レベルL1を検知したときには、排水ポンプ64が停止する。この排水貯留部63内の排水100は、図16に示すように、排水ポンプ64によって吸水され配管76を介して油水分離装置1に送水される。
【0073】
この厨房システム60によれば、油水分離装置1、排水根太62、排水貯留部63を予め組み立てておき、現地で設置するだけで工事を完了できるので、工期短縮が可能になる。また、シンク2から排出された排水100を排水貯留部63に貯留し、この排水100を配管76で油水分離装置1に送水するので、油水分離装置1の設置位置を自由に決定及び変更でき設計自由度が大きくなる。また、パネル61及び排水根太62の下側にメンテナンス空間69が設けられているので、各部のメンテナンスが容易になる。なお、パネル61の下側にオゾン発生装置を配置することにより、害虫忌避機能を実現できる。
【0074】
<第4実施形態>
図17から図22は、第4実施形態の油水分離装置80を示す。なお、第2実施形態の油水分離装置1と同様な部分には同一の符号を付けて、詳細な説明は省略する。また、必要に応じて第2実施形態の図面を参照する。この油水分離装置80は、排水100を水層101と油層102とに自然分離させる分離部81(図17参照)と、水層101の水を分離部81外に自動的に排出させる排水配管82(図9参照)と、排水配管82を開閉する開閉手段13(図9参照)と、油層102の油を分離部81外に排出させる油排出手段83(図17参照)と、を備えている。
【0075】
分離部81、排水配管82、及び開閉手段13は、第2実施形態の分離部81、排水配
管82、及び開閉手段13と同様であるため、説明を省略する。油排出手段83は、図17に示すように、分離部81の突出部分84内に回転自在に設けられ表面に油が付着する油付着部材83aと、この油付着部材83aの回転に伴って油付着部材83aの表面に付着した油を取り出す油取出部材でもあるスクレーパ83bと、スクレーパ83bによって取り出された油を受け取り、受け取った油を分離部81外に排出する油排出部材83cと、を有している。以下、油付着部材83aと、スクレーパ83bと、油排出部材83cの構成について各々説明する。
【0076】
先ず、油付着部材83aについて説明する。油付着部材83aは、図17及び図18に示すように、ローラ状に形成され、分離部81が貯留する排水100表面に円筒面が接触し、図10に示すモータ88によって回転駆動されている。この油付着部材83aは、表面に油が付着するが、水は付着しにくい金属で形成されている。空気中から排水100中へ油付着部材83aが入る時に、油付着部材83aは油層102中の油を巻き込んで回転する。
【0077】
また、分離部81に貯留される排水100は、図22に示すように、第1排水部分と、第2排水部分とを有する。第1排水部分は、排水100が分離部81に送水される送水口103から近い壁104と油付着部材83aとの間の排水100である。第2排水部分は、壁104以外の壁105と油付着部材83aとの間の排水100である。油付着部材83aは、第1排水部分の油を巻き込んで、排水100中を通って第2排水部分方向に送り込む方向に回転する。例えば、図19では、紙面に向かって反時計回りの方向である。第2排水部分は、油付着部材83aと突出部分84との間の排水と考えてもよい。但し、第1排水部分と第2排水部分は必ずしも分離されているわけではないが、以下に説明するように、油付着部材83aの回転により、第2排水部分には、第1排水部分よりも単位表面積あたり多くの油が溜まりやすくなる。尚、第1排水部分は、分離部81の壁104と油付着部材83aとの間の排水100の部分であり、第2排水部分は、壁104以外の壁105と油付着部材83aとの間の排水100であり、第1排水部分よりも領域が小さい部分として形成してもよい。
【0078】
他に、油付着部材83aは、突出部分84を設けた分離部81の壁105以外の壁104と油付着部材83aの回転の中心軸を通る鉛直面とで区切られる排水100表面の油を巻き込んで、排水100中を通って突出部分84方向に送り込む方向に回転してもよい。その結果、突出部分84方向には、多くの油が溜まりやすくなる。
【0079】
次に、スクレーパ83bについて説明する。スクレーパ83bは、図17に示すように、平板状に形成されている。このスクレーパ83bは油付着部材83a側から斜め上側に傾斜しており、その下面の下側の先端部が油付着部材83aの表面に適宜な弾性力で押し付けられている。また、スクレーパ83bは、分離部81の突出部分84の壁105に、溶接又はネジ締めによって固定される。スクレーパ83bの取り付け角度に特に限定は無いが、油付着部材83aの中心軸を含む平面と同一面にあって、油付着部材83aの円筒面に直交する方向、又は該直交する方向からやや水平方向に傾けた方向が好ましい。更に、スクレーパ83bは、油付着部材83aが回転可能となる間隙を設けて固定される。但し、油付着部材83aの表面とスクレーパ83bの油付着部材83a側の縁部分との隙間は、油付着部材83a表面上の油膜の膜厚より小さく、距離D1とする。距離D1は、様々な食品の油を含む水を用いて、図19の油付着部材83aに油を付着させることで、実験的に求めることができる。また、スクレーパ83bの油付着部材83a表面側の縁部を油付着部材83aのモータ88による回転を阻止させない範囲で、油付着部材83aの表面に接触させてもよい。
【0080】
また、図18に示すように、スクレーパ83bの油付着部材83a表面側の縁部と油付
着部材83a表面との距離を調整する、高さ調整部材83d1を設けてもよい。高さ調整部材83d1は、平板状に形成され、長手方向の一方の一辺が、スクレーパ83bの油付着部材83aの表面側と反対側の縁部と連結されている。高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bによって形成される角度は、一定である。尚、高さ調整部材83d1の長手方向の他方の一辺は、分離部81内の壁に固定される。更に、高さ調整部材83d1は、スクレーパ83bの油付着部材83a表面側の縁部と油付着部材83a表面との距離を調整することが可能なように、上下にスライド可能であり、該高さ調整部材83d1のスライドを固定する固定するネジ部材(不図示)を有する。
【0081】
他に、高さ調整部材83d1の長手方向の一方の一辺と、スクレーパ83bの油付着部材83aの表面側と反対側の縁部の間にヒンジ83d2を設けてもよい(図18参照)。高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bがヒンジ83d2を中心軸として回転可能となる。更に、ヒンジ83d2の高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bの回転軸を挟むように、ヒンジ83d2の両端をネジ(不図示)で固定する、若しくは、ヒンジ83d2の高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bの回転軸に対して垂直方向にネジ(不図示)で固定することにより、高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bの回転を停止させ、高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bによって形成される角度を固定することが可能である。以上により、高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bがヒンジ83d2を中心軸として回転し、高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bによって形成される角度をネジ(不図示)により固定することにより、高さ調整部材83d1及びスクレーパ83bによって形成される角度を調整し、スクレーパ83bの油付着部材83a表面側の縁部と油付着部材83a表面との距離を調整することが可能である。
【0082】
更に、高さ調整部材83dは、図20及び図21に示すように、スクレーパ83bと油付着部材83aの円筒面から、平行移動するための油付着部材83aの両端面側に設け、一方のスライダー83eと、スライダー83eにスクレーパ83bを固定するネジ部材83fによって構成されてもよい。
【0083】
次に、油排出部材83cについて説明する。油排出部材83cは、図17及び図18に示すように、スクレーパ83bと同様、分離部81の突出部分84の壁105に、溶接又はネジ締めによって固定される。更に、油排出部材83cは、油付着部材83aが回転可能となる間隙を設けて固定される。但し、油付着部材83aの表面と油排出部材83cの油付着部材83a側の縁部分との間隙は、油付着部材83a表面上の油膜の膜厚より大きく、距離D2とする。距離D2も、様々な食品の油を含む水を用いて、油付着部材83aに油を付着させることで、実験的に求めることができる。油排出部材83cの距離D2も、スクレーパの距離D1と同様に、間隙の寸法を調整可能としてもよい。
【0084】
次に、第4実施形態における油排出手段83の、油層の油を分離部81外に排出させる過程を具体的に説明する。油付着部材83aは、第1排水部分の油を巻き込み、排水100中を通って第2排水部分に送り込む方向に回転する。第2排水部分の単位表面積あたりの油は、第1排水部分より多いので、油付着部材83aは、効果的に多くの油を付着させて、第2排水部分から上方向に回転し、油を巻き上げる。そして、油付着部材83aに付着した油は粘度が高いので、図19に示すように、スクレーパ83bまで上昇する。そして、排水100中の油層102が少なくなると、油付着部材83aは水層101中の水を多く巻き込んで回転する。尚、水は粘度が低いので、スクレーパ83bまで上昇せず、自重で排水100中へ落下する。そして、油付着部材83aが回転するのに伴って、油付着部材83aの表面に付着した油がスクレーパ83bによって剥離されて、スクレーパ83b下に流れ落ちる。つまり、図19に示すように、スクレーパ83bの下面の下側の先端部が油付着部材83aの表面に適宜な弾性力で押し付けられ、又は、油膜の膜厚より小さい距離D1以内の距離で間隙が維持されることによって、スクレーパ83bが油付着部材
83aに付着した油を取り出す。そして、油排出部材83cは、スクレーパ83b下に流れ落ちる油を受け取り、受け取った油を分離部81外に排出する。この油は、突出部分84の下側に配置された油収集ボックス89に貯められる。この油収集ボックス89内の残渣は、図17に示すように、底部の一端89aを中心として外側に倒すことにより、油収集ボックス89から簡単に取り出すことができる。
【0085】
尚、第4実施形態における油付着部材83aの回転方向は、第2実施形態における油付着部材83aの回転方向の逆である。第2実施形態における油付着部材83aは、図8に示すように、排水100中を通らずに突出部分84方向に送り込み可能に回転する。一方、第4実施形態における油付着部材83aは、図19に示すように、排水100中を通って突出部分84方向に送り込み可能に回転する。従って、第4実施形態は、第2実施形態よりも、油が付着した油付着部材83aがスクレーパ83bまで回転する距離が短く、より多くの油をスクレーパ83bによって剥離され、より多くの油を油排出部材83cによって分離部81外に排出することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 油水分離装置
2 シンク
11 分離部
12 排水配管
13 開閉手段
14 油排出孔(油排出手段)
15 水補給手段
16 一時貯留タンク
16a 凹部
17 吸送水手段
18 フロートスイッチ
21 本体
22 底部
23 蓋
25 第1隔壁
26 第2隔壁
30 内側上下配管
30a 開口
31 水平配管
31a 内周面
32 外側上下配管
33 ガイド部材
34 ボール部材
35 油収束板
35a 頂部
35b 周辺部
36 給水配管
37 電磁弁
38 縦配管部
39 水平配管部
39a 孔
40 送水配管
41 ポンプ
42 吸水位置変更手段
45 縦配管
45a,45b 吸水口
45c ガイド部
46 水平配管
47 フロート弁
48 フロート
49 弁体
50 弁棒
51 弁体
52 配管
55 給水タンク
55a 開口
56 油タンク
57 ダイヤフラムポンプ
58 バスケット
58a 側壁
58b 残渣排出口
58c 斜板
60 厨房システム
61 パネル
62 排水根太
63 排水貯留部
64 排水ポンプ
65 配管
66 グレーチング
67 洗浄ノズル
68 コンクリート面
69 メンテナンス空間
70 押出洗浄用ノズル
71 オーバーフロー配管
75 フロートスイッチ
76 配管
77 洗浄ノズル
80 油水分離装置
81 分離部
82 排水配管
83 油排出手段
83a 油付着部材
83b 油取出部材
83c 油排出部材
83d 高さ調整部材
83e スライダー
83f ネジ部材
84 突出部分
85 第1外側上下配管
86 水平配管
87 第2外側上下配管
88 モータ
89 油収集ボックス
89a 油収集ボックスの底部の一端
90 第1ワイパー
90a 先端部
92 回転軸
93 回転ベルト
94 モータ
95 配管
96 第2ワイパー
97 残渣収集ボックス
97a 底部の一端
99 カバーボックス
100 排水
100a 排水の表面
101 水層
102 油層
103 送水口
104,105 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を含む排水を貯留し、前記排水に含まれる水と油とを比重差で水層と油層とに自然分離させる分離部と、
前記分離部内の前記水層の表面が予め定められた第1の位置より上側に上昇した際に、前記水層の前記水を前記分離部外に排出させる排水配管と、
前記排水配管を開閉する開閉手段と、
前記油層の前記油を前記分離部外に排出させる油排出手段と、
を備える油水分離装置。
【請求項2】
前記油排出手段は、前記予め定められた第1の位置より上側に設けられた油排出孔と、前記分離部内に前記油層を少なくとも前記油排出孔まで上昇させるための水を補給する水補給手段と、
を備える請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記油排出手段は、前記分離部内に設けられ前記油層の油を付着させる回転可能な油付着部材と、前記油付着部材の回転に伴って前記油付着部材に付着した前記油を取り出す油取出部材と、
を有する請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記排水配管は、前記分離部の内側又は外側に配置されると共に上下に延伸し、且つ下端に開口が設けられた第1の上下配管と、前記第1の上下配管の上部側から水平方向に延伸して前記分離部の外側に突出する水平配管であって、内周面の下端縁が前記予め定められた第1の位置に配置された水平配管と、前記分離部の外側における前記水平配管の先端部から下方向に延伸する第2の上下配管と、
を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記開閉手段は、前記第2の上下配管と前記水平配管との接続部にて内周面を閉塞するボール部材と、前記ボール部材が上下移動可能に配置されるガイド部と、前記ボール部材を上下移動させる移動操作手段と、
を有する請求項4に記載の油水分離装置。
【請求項6】
前記分離部に送水する前記排水を一時貯留する一時貯留タンクと、前記一時貯留タンク内の前記排水を吸水するポンプと、前記ポンプから送出された前記排水を前記分離部に送水する送水配管と、前記一時貯留タンク内の前記排水の表面が予め定められた第2の位置より上側に上昇した場合は、前記ポンプにおける前記排水の吸水位置を前記予め定められた第2の位置より上側に設定し、前記一時貯留タンク内の前記排水の前記表面が前記第2の位置以下に降下した場合は、前記ポンプの前記吸水位置を前記第2の位置より下側に設定する吸水位置変更手段と、
を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の油水分離装置。
【請求項7】
前記吸水位置変更手段は、前記一時貯留タンク内の上下方向に延伸すると共に、上端側及び下端側に吸水口が設けられた縦配管と、前記縦配管の中間部から前記一時貯留タンクの外側に延びる水平配管と、前記一時貯留タンク内の前記排水の貯留量に応じて前記縦配管の上下の前記吸水口を開閉するフロート弁と、
を有する請求項6に記載の油水分離装置。
【請求項8】
床の下側に設けられ排水を集合する排水根太と、前記排水根太によって集合された前記排水を貯留する排水貯留部と、前記排水貯留部内の前記排水を水層と油層とに分離し、前記油層の油及び前記水層の水を自動的に外部に排出する請求項1から7のいずれか一項に
記載の油水分離装置と、
を備える厨房システム。
【請求項9】
前記分離部に貯留される前記排水は、前記排水が前記分離部に送水される送水口から近い一側壁と該油付着部材との間の前記排水である第1排水部分と、該一側壁以外の他側壁と該油付着部材との間の前記排水である第2排水部分とを有し、
前記油付着部材は、円筒面を有し、前記分離部が貯留する前記排水表面に該円筒面が接触し、前記第1排水部分の油を巻き込んで、該排水中を通って前記第2排水部分方向に送り込む方向に回転する、
請求項3に記載の油水分離装置。
【請求項10】
前記分離部に貯留される前記排水は、該分離部の一側壁と前記油付着部材との間の前記排水である第1排水部分と、前記一側壁以外の他側壁と該油付着部材との間の該排水であり、該第1排水部分よりも領域が小さい第2排水部分とを有し、
前記油付着部材は、前記第1排水部分の油を巻き込んで、該排水中を通って前記第2排水部分に送り込む方向に回転する、
請求項3に記載の油水分離装置。
【請求項11】
前記油排出手段は、前記分離部の突出部分に設けられ、
前記油付着部材は、前記突出部分を設けた側壁以外の他側壁と前記油付着部材の回転の中心軸を通る鉛直面とで区切られる前記排水表面の油を巻き込んで、該排水中を通って前記突出部分方向に送り込む方向に回転する、
請求項3に記載の油水分離装置。
【請求項12】
前記油排出手段は、前記油取出部材によって取り出された油を受け取り、前記分離部外に排出する油排出部材を更に有する、
請求項9から11の何れか一項に記載の油水分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−162530(P2010−162530A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166317(P2009−166317)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】