説明

油液タンク接続管の配管構造及び油液タンク接続管の敷設工法

【課題】地下油液貯留タンクに連通するタンク接続管を合成樹脂管と金属管の端部同士を確実且つ堅牢に漏れなく接続して構成する。
【解決手段】一側の端部を地下の油液タンクに連通させ、他側の端部を地上に臨ませて油液貯留施設に埋設される油液タンク接続管1を、地下油液タンクに端部を接続して地中に埋設される部分に合成樹脂管2、端部を地上に臨ませて地上に露出する部分に金属管3をそれぞれ配置して構成し、両管2、3の端部同士を、一側に合成樹脂管2の端部が接合する拡径受口41、他側に金属管3の端部が接合する接続受口42を有する金属製の変換継手4を用いて一体に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンスタンドなどの油液貯留施設に敷設される油液タンク接続管の配管構造とその敷設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンドの敷地内には、ガソリンや軽油、灯油などの油液を貯留する油液タンクとともに、タンクに油液を補給するための注油管やタンク内の圧力を調整するための通気管などのタンク接続管が埋設されている。
【0003】
かかるタンク接続管は、図4に示されるように、その一端100aを油液タンク110に連通させ、他端100bを地上に臨ませてガソリンスタンドの敷地120内に敷設されており、一般に、地中に埋設された部分101に耐震性に優れたポリオレフィン系の合成樹脂管、地上へ立ち上げた部分102には合成樹脂管よりも耐候性や耐防炎性に優れた金属管をそれぞれ用い、両管を敷地120内に設けた点検口130の中で変換継手であるフランジ継手140により一体に接続して配管されている(例えば特許文献1、2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−58900号公報
【特許文献2】特開平11−159660号公報
【特許文献3】実用新案登録第3113448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のタンク接続管100では、合成樹脂管と金属管をゴムなどのパッキンを挟んでフランジ継手140で接続しているが、現場での配管施工作業で前記継手のフランジ部のネジを締め込む際にパッキンの装着位置がずれることが多く、パッキンの装着が不十分であることにも気付き難く、また、パッキンを適正な位置に装着して配管されていたとしても施工後にネジの緩みなどによってフランジ部に隙間ができるなどして、フランジ部から油液が漏れ出す危険性が高かった。
【0006】
このため、施工後も合成樹脂管と金属管の接続部における油液の漏出の有無を確認するための点検口140を敷地120内に設置しており、かかる点検口140の設置はこれを構成する部材費用と施工時間を要するため、施設全体の施工コストが嵩む一因ともなっていた。
【0007】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、タンク接続管を構成する合成樹脂管と金属管の端部同士をフランジ継手によらずに確実且つ堅牢に漏れなく接続し、これにより前記点検口を設けることなく油液貯留施設を構成できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明は、一側の端部を地下油液タンクに連通させ、他側の端部を地上に臨ませて油液貯留施設に埋設される油液タンク接続管の配管構造であって、前記地下油液タンクに端部を接続して地中に埋設される部分に合成樹脂管、端部を地上に臨ませて地上に露出する部分に金属管がそれぞれ配置され、両管の端部同士が、一側に前記合成樹脂管の端部が接合する拡径受口、他側に前記金属管の端部が接合する接続受口を有する金属製の変換継手により一体に接続された構成を有することを特徴とする。
【0009】
前記構成において、変換継手の接続受口に金属管の端部を溶接により接合し、拡径受口に合成樹脂管の端部を当該拡径受口内に嵌挿させた状態で、当該拡径受口に位置する前記合成樹脂管の内面の少なくとも一部に金属スリーブを配し、前記拡径受口の内周面に形成された凹溝又は凸溝に前記合成樹脂管の端部外周面を食い込ませることにより接合して、前記金属管と合成樹脂管を一体に接続することが好ましい。
【0010】
前記金属製の変換継手を用いた油液タンク接続管の配管は、油液貯留施設の敷地内に設置された油液タンクに向かって勾配配管となるように路盤を整形する工程と、変換継手の一側の拡径受口に地中に埋設する合成樹脂管を接続する工程と、前記変換継手の他側の接続受口に地上に突出させる金属管を接続する工程と、前記合成樹脂管の端部を前記油液タンクに連通させる工程と、前記変換継手に接続された金属管を当該金属管の端部が地上に露出するように向けて前記路盤上に配置し、これを埋設土で埋め戻す工程と、前記埋め戻した埋設土上に地盤面を舗装する工程とを含む油液タンク接続管の敷設工法に施工することができる。
【0011】
これによれば、変換継手として拡径受口を有する金属製の変換継手を用い、タンク接続管を構成する合成樹脂管と金属管を前記変換継手の両端部に接合して接続しているので、フランジ継手を用いて接続する場合のようなネジの締め付け操作は不要であり、変換継手の両端部に合成樹脂管と金属管の端部を密着接合させて、両管を漏れなく堅牢に接続することができる。タンク接続管内に油液を流通させたときに合成樹脂管と金属管の接続部から漏れ出すようなことはなく、前記接続部の水密性が確実に確保されるので、従来の油液貯留施設で設置が必要とされていた点検口が不要となり、油液貯留施設の全体の施工コストを抑えることが可能となる。
また、予め工場において変換継手の拡径受口に合成樹脂管を接続し気密検査を実施しておけば、これを施工現場で行うよりも接続部分の信頼性が向上し、また、現場での作業工程を簡略化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の油液タンク接続管(通気管)の配管構造例を示した図である。
【図2】変換継手に合成樹脂管を接合する手順を説明するための変換継手と合成樹脂管の断面図である。
【図3】変換継手で合成樹脂管と金属管を接続した状態の断面図である。
【図4】従来の油液タンク接続管(注油管)の配管構造例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、油液タンク内の圧力を調整するための通気管に本発明を適用した配管構造を示しており、図示されるように通気管である油液タンク接続管1は、一側の端部を地下油液タンク(図示せず)に連通させて全体を地中に埋設させた部分に合成樹脂管2、地中に埋設された部分から上方へ折れて上部を地上に突出させた部分に金属管3をそれぞれ配置し、両管2、3の端部同士を金属製の変換継手4で一体に接続して油液貯留施設の地下に敷設した構造となっている。
【0014】
より詳しくは、合成樹脂管2は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂材を用いて成形された管材であり、適宜な長さの合成樹脂管2、2同士を電気融着継手5により一体に接続し、当該一体に接続された管路の一側の端部を地下油液タンクに連通させ、前記管路の他側の端部を変換継手4を介して金属管3の端部に接続して、管路全体を地中に埋設させてある。また、金属管3は、エルボ管によりL字形に屈曲させてなる、鋳鉄管や鋼管などからなる管材であり、前記変換継手5に接続した端部側を地中に埋設し、他側の端部側を地表から上方へ適宜な高さ突出させて配管してある。
【0015】
変換継手4は、一側に合成樹脂管2の端部が接合する拡径受口41、他側を金属管3の端部が接合する接続受口42を有する金属性の管継手であり、図2に示されるように、拡径受口41はその内径が合成樹脂管2の外径と略同じに設定され、その内周面に凹溝と凸溝を交互に連続させた凹凸溝43が環状に列設され、当該凹状溝43を挟んで開口側と内方側の内面に環状に凹所44、44が設けられ、両凹所44、44にゴムパッキン45、45がそれぞれ装着されているとともに、前記内方側の凹所44よりもさらに奥側の端部に合成樹脂管2の端部が当接するストッパー段部46を設けて形成してある。また、変換継手4の接続受口42は、その内外径が金属管3と略同じに設定されて金属管3の端部が溶接により一体に接続するように設けてある。凹凸溝43に代えて、適宜な間隔を開けて複数設けた凹溝又は凸溝でもよい。
【0016】
変換継手4に合成樹脂管2を接続するには、前記変換継手4の拡径受口41に形成された凹凸溝43に、合成樹脂管2端部外周面を食い込ませることにより行うことができる。
すなわち、変換継手4に合成樹脂管2を接続する手順は、先ず、ステンレスなどの薄肉の金属板を合成樹脂管2の内径と同じ内径に設けて円筒状に形成してなる金属スリーブ47を合成樹脂管2の開口端部内面に嵌挿する。
次いで、金属スリーブ47が嵌挿された合成樹脂管2の端部を変換継手4の拡径受口41内に差し入れ、合成樹脂管2及び金属スリーブ47の端部がストッパー段部46に当接する位置まで合成樹脂管2を押し入れる。この際、拡径受口41に差し込む合成樹脂管2の端部を予め加熱軟化しておいてもよい。
そして、図2及び図3に示されるように、前記合成樹脂管2の他側の端部開口から拡径手段としての拡径具6を挿入して押し込めば、内部に拡径具6が圧入されることにより前記金属スリーブ47が拡径し、これに伴い合成樹脂管2の端部が拡径せしめられて外周側へと膨張し、その外周面が拡径受口41の内周面に形成された各凹凸溝43に食い込むとともにゴムパッキン45、45に圧接し、これにより変換継手4の拡径受口41内に合成樹脂管2の端部が強固に接合して合成樹脂管2が変換継手4に一体に接続することとなる。前記食い込みは、合成樹脂管2の端部外周面が拡径受口41内面に押し当てられて、当該外周面に凹凸溝43の跡がつく程度のものでもよい。
なお、金属管3は、合成樹脂管2を前記拡径受口41に接続した後、変換継手4の接続受口42にその端部接合部を溶接して一体に接続される。
【0017】
これらの部材が一体に接続して構成される油液タンク接続管1は、例えば以下の施工手順により敷設することができる。
先ず、油液貯留施設が建設される敷地内における油液タンクの埋設位置、注油管や通気管といった油液タンク接続管1や他の敷設管の配管のレイアウトなどを確認し、埋設した油液タンクの上部に設ける点検口の設置位置や注油管の注油口や通気管の設置位置といった、敷設される配管の出口位置を決定する。
【0018】
次いで、油液貯留施設の敷地を所定の深さ掘削し、油液タンクなどの地下に埋設される構造物を設置する。構造物設置後、その周囲を適宜に埋め戻すとともに、タンク接続管1を敷設するにあたり、油液タンクに向けて勾配配管(1/100以上)となるように路盤を整形する。
この際、配管の埋設深さは、舗装材による最低埋設深さを十分に確保するように配管勾配を考慮して、掘削及び埋め戻しを行って路盤を形成し、配管路床は山砂、川砂、洗浄砂などを敷き詰め、十分な支持力を有するように、突き棒やランマーなどで締め固める。
【0019】
路盤を整形したならば、前記の通り合成樹脂管2を敷設し次いで変換継手4に接続する。接続後、気密試験を行って接続部に漏れのないことを確認する。
なお、変換継手4に端部を接続した合成樹脂管2の他端部には、図3に示されるように電気融着継手5を用いて他の合成樹脂管2が接続され、その端部は油液タンクに連通される。
【0020】
次いで、図3に示されるように、前記変換継手4の接続受口42に金属管3の端部を溶接して一体に接続する。接続後、溶接箇所に防蝕処理を施し、気密試験を行って接続部に漏れのないことを確認する。なお、防蝕処理と気密試験は、アングル管を挟んでL字形に配管される複数の金属管3の端部同士の各溶接部分についても行われる。
【0021】
そして、前記変換継手4により接続された合成樹脂管2及び金属管3を、金属管3の開口端部が地上に露出するように向けて前記路盤上に配置し、これを埋設土で埋め戻して地中に敷設し、埋設土上に地盤面を舗装する。
この際、埋め戻しは、砂で100〜150mmづつ埋め戻し、その都度、前記合成樹脂管2及び金属管3に十分になじませながら突き棒などで突き固め、この突き固めを前記合成樹脂管2及び金属管3の配管上面から50mm以上の深さに埋設されるまで繰り返して行う。そして、地盤面の仕上げを鉄筋コンクリート舗装とする場合は、前記配管上面が地表から300mm以上の埋設深さとなるようにし、また、無舗装又はアスファルト舗装とする場合には、前記配管上面が地表から600mm以上の埋設深さとなるようにする。
【0022】
このように構成される本形態の配管構造によれば、金属製の変換継手4の両端部に合成樹脂管2と金属管3を接続してタンク接続管1が配管されるので、フランジ継手を用いて接続する場合のようなネジの締め付け操作は不要であり、変換継手4の両端部に合成樹脂管2と金属管3の端部を密着接合させて両管2、3が漏れなく堅牢に接続され、油液が両管2、3の接続部から漏れ出すようなことはない。変換継手4の両端部における両管2、3の接続部の水密性が確実に確保されるので、従来の油液貯留施設で設置が必要とされていた点検口が不要となり、油液貯留施設の全体の施工コストを抑えることが可能となる。
【0023】
なお、本発明の配管構造は、図1に示した通気管の他に、油液タンクに油液を補強する注油管の配管にも適用可能であり、また、前述した配管の敷設工程は一例であり、本発明は前記工程に限定されない。
図示した形態では拡径スリーブ方式によって変換継手4に合成樹脂管2に接続したが、例えば合成樹脂管2を変換継手4の拡径受口41内に圧入して接続するなど、他の方式や方法を用いて接続してもよい。また、変換継手4の拡径受口に合成樹脂管2を接続する作業は施工現場で行ってもよいが、予め工場にて接続し気密検査をするまでの作業を行って、これを施工現場に持ち込むことで現場での作業工程を簡略化することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 油液接続管、2 合成樹脂管、3 金属管、4 変換継手、41 拡径受口、42 接続受口、43 凹凸溝、44 凹所、45 ゴムパッキン、46 ストッパー段部、47 金属スリーブ、5 電気融着継手、6 拡径具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側の端部を地下油液タンクに連通させ、他側の端部を地上に臨ませて油液貯留施設に埋設される油液タンク接続管の配管構造であって、
前記地下油液タンクに端部を接続して地中に埋設される部分に合成樹脂管、端部を地上に臨ませて地上に露出する部分に金属管がそれぞれ配置され、両管の端部同士が、一側に前記合成樹脂管の端部が接合する拡径受口、他側に前記金属管の端部が接合する接続受口を有する金属製の変換継手により一体に接続された構成を有することを特徴とする油液タンク接続管の配管構造。
【請求項2】
変換継手の接続受口に金属管の端部を溶接により接合し、拡径受口に合成樹脂管の端部を当該拡径受口内に嵌挿させた状態で、当該拡径受口に位置する前記合成樹脂管の内面の少なくとも一部に金属スリーブを配し、前記拡径受口の内周面に形成された凹溝又は凸溝に前記合成樹脂管の端部外周面を食い込ませることにより接合して、前記金属管と合成樹脂管を一体に接続した構成を有することを特徴とする請求項1に記載の油液タンク接続管の配管構造。
【請求項3】
油液タンクが埋設される油液貯留施設の敷地内にタンク接続管を配管する油液タンク接続管の敷設工法において、
前記敷地内に設置された油液タンクに向かって勾配配管となるように路盤を整形する工程と、
金属製の変換継手の一側の拡径受口に地中に埋設する合成樹脂管を接続する工程と、
前記変換継手の他側の接続受口に地上に突出させる金属管を接続する工程と、
前記合成樹脂管の端部を前記油液タンクに連通させる工程と、
前記変換継手に接続された金属管を当該金属管の端部が地上に露出するように向けて前記路盤上に配置し、これを埋設土で埋め戻す工程と、
前記埋め戻した埋設土上に地盤面を舗装する工程と、
を有することを特徴とする油液タンク接続管の敷設工法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−218788(P2012−218788A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88030(P2011−88030)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】