説明

油電ハイブリッド駆動装置および建設機械

【課題】油圧ショベル等の建設機械における上部旋回体を旋回させる旋回駆動装置及び建設機械に係り、特に油圧モータと電動機を有する油電ハイブリッド型の油電ハイブリッド駆動装置において、制動時に発電する際に発生する油圧モータによる機械的損失を低減することのできる油電ハイブリッド駆動装置及び建設機械を提供する。
【解決手段】電動モータと油圧モータがその両者の出力を連結して形成する油電ハイブリッド駆動装置において、油圧モータの出力にクラッチを備える。また、そのようなクラッチを備えた油電ハイブリッド駆動装置を建設機械に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械における上部旋回体を旋回させる旋回駆動装置及び建設機械に係り、特に油圧モータと電動機を有する油電ハイブリッド型の油電ハイブリッド駆動装置において、制動時に発電する際に発生する油圧モータによる機械的損失を低減することのできる油電ハイブリッド駆動装置及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧モータのみを動力源とする建設機械では、旋回部の旋回を停止するブレーキ時、すなわち制動時に油圧モータによる油圧ブレーキを使用する。より詳細には、油圧モータに対する圧油をリリーフ弁によりより制動する。これに対して、油圧モータと電動モータの両者を動力源とする油電ハイブリッド建設機械では、油圧モータと電動モータとが一体となった、油電ハイブリッド駆動装置が用いられる。この油電ハイブリッド駆動装置は、上部旋回体を駆動して旋回させた後に上部旋回体を制動し、この制動時に上部旋回体の慣性エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する。この油電ハイブリッド駆動装置は、回収した電気エネルギーを再利用するために、油圧ブレーキではなく電動機の発電作用によって発生するブレーキ作用を利用して減速させる。更にこの制動工程では、油電ハイブリッド駆動装置内の油圧モータでリリーフ弁による油圧ブレーキが発生しないように、前記油圧モータの出入力ポートを連通させる連通弁を備え、この連通弁を使用することにより油圧モータの出力軸を自由回転できる状態にしている。
【0003】
従来の油電ハイブリッド駆動装置を図1,2に示す。図1は、並列型の従来の油電ハイブリッド旋回駆動装置1の構成図である。油電ハイブリッド旋回駆動装置1は、油圧モータ2と電動機6を互いに連結する歯車装置4を備える。電動機6は、連結部8を介して歯車装置4と連結される。歯車装置4は、連結部12を介して減速機14と連結される。減速機14の出力が出力軸18である。油圧モータ2には連通弁10が連結される。
【0004】
以上の構成で油電ハイブリッド旋回駆動装置1は、油圧モータ2と電動機6の出力が歯車装置4を介して合成されて減速機14で減速並びに回転力が増幅され、出力軸18に出力される。
【0005】
一方、図2では、油電ハイブリッド旋回駆動装置19は、連通弁22と連結される油圧モータ20は、電動機24と直列に同軸上に配置して連結される。この電動機24は、連結部26,28を介して減速機30と連結される。減速機30の出力は出力軸凹部32と一体に形成された出力軸34と連結される。以上の構成で油電ハイブリッド旋回駆動装置19は、油圧モータ20と電動機24との出力を合成し、この出力を減速機30が減速し、出力軸34に出力する。
【0006】
また、特許文献1では、油圧ショベルのブームや旋回台等比較的大きな慣性体の慣性体エネルギーを効果的に回生すると共に、電動・発電機用の蓄電装置に対する補充充電の必要がないハイブリッド型駆動装置を備えた建設機械が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−291522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図1、図2に示される油電ハイブリッド旋回駆動装置1、19における制動工程では、油圧モータ2、20や歯車装置4等による機械的損失が発生してエネルギー損失するため、制動時に回収する慣性エネルギーが減少する。特に制動時に連通弁10、22を使用することにより油圧モータ2、20を自由回転できる状態にしているが、油圧モータ2、20内でシリンダーと、ピストン、弁板等によって摩擦抵抗等が発生することとなる。
【0009】
本発明は、前記の油電ハイブリッド駆動装置において、制動時に油圧モータによって消費される慣性エネルギーを低減するためになされたもので、油圧モータと電動機を接続・切離する装置を備える油電ハイブリッド駆動装置及び建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明による油電ハイブリッド駆動装置は、電動モータと油圧モータがその両者の出力を連結して形成する油電ハイブリッド駆動装置において、油圧モータの出力にクラッチを備えることを特徴とする。
【0011】
この場合、前記電動モータと前記油圧モータとを直列に連結してもよい。また、前記電動モータと前記油圧モータとを並列に連結してもよい。さらに、前記油電ハイブリッド駆動装置の出力を減速機と連結してもよい。加えて、前記油電ハイブリッド駆動装置を建設機械に搭載し、前記建設機械の上部旋回体の回転駆動部として用いることもできる。次いで、前記クラッチを前記上部旋回体の制動時に切離することもできる。
【0012】
前記目的を達成するための本発明による建設機械は、電動モータと油圧モータがその両者の出力を連結して形成して油圧モータの出力にクラッチを備える油電ハイブリッド駆動装置を搭載する。
【0013】
また、前記油電ハイブリッド駆動装置を前記建設機械の上部旋回体の回転駆動部として用いてもよい。さらに、前記クラッチを前記上部旋回体の制動時に切離することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油圧モータと電動機を接続・切離する装置を備えることで、制動時に油圧モータによって消費される慣性エネルギーを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の並列型の油電ハイブリッド駆動装置の構成図である。
【図2】従来の直列型の油電ハイブリッド駆動装置の構成図である。
【図3】本発明に係る並列型の油電ハイブリッド駆動装置の構成図である。
【図4】本発明に係る直列型の油電ハイブリッド駆動装置の構成図である。
【図5】本発明に係る直列型の油電ハイブリッド駆動装置を搭載した建設機械の構成図である。
【図6】本発明に係る直列型の油電ハイブリッド駆動装置のクラッチ部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3を用いて、本発明に係る可変容量型の油圧ポンプの構成について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明は、可変容量型の油圧ポンプに適用される発明であり、図1と同様の構成については特に言及せず、図1と異なる構成について、図3、4および5を用いて以下に説明する。
【0018】
図3は、本発明に係る並列型の油電ハイブリッド駆動装置35の構成図である。
【0019】
先ず、指示番号36は油圧パイロットバルブ36であり、そのパイロット信号通路は、切換弁を含む油圧回路40と図示せぬADコンバータを含む油電変換回路38とそれぞれ接続される。油圧回路40は、油圧モータ2に圧油通路が連通する。一方、油電変換回路38は、電動機6とクラッチ42とに連結される。油圧パイロットバルブ36は、そのジョイスティックの傾きからパイロットバルブ36のパイロット圧力またはエンコーダ等により検出される。
【0020】
油圧回路40は、油圧パイロットバルブ36によるパイロット信号通路に基づいて切換弁が作動し、図示されない吐出ポンプからの圧油によって、油圧モータ2が作動する。
【0021】
一方、油電変換回路38は、パイロット信号を前記ADコンバータによって電気信号に変換する。この電気信号が電動機6を駆動し、一方、他方の電気信号は、クラッチ42へ連結される。
【0022】
クラッチ42は、油圧モータと電動機の出力を歯車機構等の物理的な結合を接続または切離可能である。噛み合いクラッチ、湿式クラッチ、乾式クラッチ、粉体クラッチ、遠心クラッチ、電磁クラッチ、流体クラッチおよび円錐クラッチが使用される。
【0023】
また、油電変換回路38は、電動機6と連結する。油電変換回路38は、その内部に、ADコンバータと、中央演算処理装置と、記憶装置と、DAコンバータを有し、互いに電気的に連結される。この電動機6はレゾルバ等の回転センサが設けられ、回転数と回転方向を検出できるように配置され、その検出結果は中央演算処理装置に送られるように構成される。
【0024】
このように、構成した上で、記憶装置には、上部旋回体が旋回加速運動する信号データと、定常旋回信号データと、停止信号データと、旋回の制動信号データに対応する信号データが格納される。
【0025】
次に、油電ハイブリッド駆動装置の動作について説明する。
【0026】
油圧パイロットバルブ36により制御されたパイロット油圧は、油電変換回路38に入力される。その入力された信号と記憶装置に入力されたある特定の制動信号とを比較し、同一である場合は、クラッチ42を切断する信号が生成される。
【0027】
ここで、クラッチ42は減速時のみに切り離し動作をする。従って、減速時以外は、クラッチ42は切り離し動作をしない。
【0028】
中央演算処理装置は、予め記憶装置に記憶された条件を元にクラッチ切り離しの判断を行う。第一に、回転しているがジョイスティックが中立状態である場合、第二に回転しているが実回転方向とジョイスティックの指令回転方向が逆である場合、第三に回転している状態であって、ジョイスティックの指令回転方向が回転方向と同一方向であるが、回転数に対してジョイスティックの傾きが浅く、ハーフレバーでゆっくり減速している場合の3点が減速と判断する条件である。
【0029】
また、従来は制動時に連通弁を使用することにより油圧モータの出力軸を自由回転できる状態にしているが、油圧モータ内で発生するシリンダーとピストン、弁板等による摩擦抵抗等の機械的損失を低減するため、油圧モータ内で、発生するシリンダー、ピストン、弁板等による摩擦抵抗等の機械的損失を低減することとなり、制動時に回収する慣性エネルギーがその分多くなり、油電ハイブリッド旋回駆動装置のエネルギー回生効率を向上する。
【実施例2】
【0030】
続いて図4は、本発明に係る直列型の油電ハイブリッド駆動装置44の構成図である。図2と異なる点を中心として説明する。
【0031】
指示番号50は油圧パイロットバルブ50であり、そのパイロット信号通路は、切換弁を含む油圧回路52と図示せぬADコンバータを含む油電変換回路54とそれぞれ接続される。油圧回路52は、油圧モータ20に圧油通路が連通する。一方、油電変換回路54は、電動機24とクラッチ46とに連結される。
【0032】
油圧回路52は、油圧パイロットバルブ50によるパイロット信号通路に基づいて切換弁が作動し、図示されない吐出ポンプからの圧油によって、油圧モータ20が作動する。
【0033】
一方、油電変換回路54は、パイロット信号を前記ADコンバータによって電気信号に変換する。この電気信号が電動機24を駆動し、一方、他方の電気信号は、クラッチ46へ連結される。
【0034】
クラッチ46は、油圧モータと電動機の出力を歯車機構等の物理的な結合を接続または切離可能である。
【0035】
また、油電変換回路54は、電動機24と連結する。油電変換回路54は、その内部に、ADコンバータと、中央演算処理装置と、記憶装置と、DAコンバータを有し、互いに電気的に連結される。
【0036】
次に、油電ハイブリッド駆動装置の動作について説明する。
【0037】
油圧パイロットバルブ50が選択されて、パイロット圧油が作動し、油電変換回路54に入力される。その入力された信号と記憶装置に入力された信号とを比較し、同一である場合は、クラッチ46を切断する信号が生成される。図6に、図4の拡大図を示す。クラッチカバー48はクラッチ46を被覆する。
【0038】
ここで、クラッチ46は減速時のみに切り離し動作をする。従って、減速時以外は、クラッチ46は切り離し動作をしない。
【0039】
中央演算処理装置は、予め記憶装置に記憶された条件を元にクラッチ切り離しの判断を行う。第一に、回転しているがジョイスティックが中立状態である場合、第二に回転しているが実回転方向とジョイスティックの指令回転方向が逆である場合、第三に回転している状態であって、ジョイスティックの指令回転方向が回転方向と同一方向であるが、回転数に対してジョイスティックの傾きが浅く、ハーフレバーでゆっくり減速している場合の3点が減速と判断する条件である。
【0040】
また、従来は制動時に連通弁を使用することにより油圧モータの出力軸を自由回転できる状態にしているが、油圧モータ内で発生するシリンダーとピストン、弁板等による摩擦抵抗等の機械的損失を低減するため、油圧モータ内で、発生するシリンダー、ピストン、弁板等による摩擦抵抗等の機械的損失を低減することとなり、制動時に回収する慣性エネルギーがその分多くなり、油電ハイブリッド旋回駆動装置のエネルギー回生効率を向上する。
【0041】
本発明に係る本発明に係る直列型の油電ハイブリッド駆動装置44を搭載した建設機械である油電ハイブリッドパワーショベル56の構成図を図5に示す。油電ハイブリッド駆動装置44は、上部旋回体58を駆動するために用いられる。
【0042】
以上本発明の好適な実施例について図面により説明したが、当業者であれば、上記の図面および説明に基づいて種々の変形をすることが可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0043】
1 油電ハイブリッド旋回駆動装置
2 油圧モータ
4 歯車装置
6 電動機
8 連結部
10 連通弁
12 連結部
14 減速機
18 出力軸
19 油電ハイブリッド旋回駆動装置
20 油圧モータ
22 連通弁
24 電動機
26、28 連結部
30 減速機
32 出力軸凹部
34 出力軸
35 油電ハイブリッド駆動装置
36 油圧パイロットバルブ
38 油電変換回路
40 油圧回路
42 クラッチ
44 油電ハイブリッド駆動装置
46 クラッチ
48 クラッチカバー
50 油圧パイロットバルブ
52 油圧回路
54 油電変換回路
56 油電ハイブリッドパワーショベル
58 上部旋回体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと油圧モータがその両者の出力を連結して形成する油電ハイブリッド駆動装置において、油圧モータの出力にクラッチを備えることを特徴とする油電ハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記電動モータと前記油圧モータとが直列に連結されることを特徴とする請求項1記載の油電ハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記電動モータと前記油圧モータとが並列に連結されることを特徴とする請求項1記載の油電ハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記油電ハイブリッド駆動装置の出力を減速機と連結することを特徴とする請求項1乃至3に記載の油電ハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記油電ハイブリッド駆動装置を建設機械に搭載し、前記建設機械の上部旋回体の回転駆動部として用いることを特徴とする請求項4記載の油電ハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
前記クラッチを前記上部旋回体の制動時に切離することを特徴とする請求項5記載の油電ハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
電動モータと油圧モータがその両者の出力を連結して形成して油圧モータの出力にクラッチを備える油電ハイブリッド駆動装置を搭載する建設機械。
【請求項8】
前記油電ハイブリッド駆動装置を前記建設機械の上部旋回体の回転駆動部として用いることを特徴とする請求項7記載の建設機械。
【請求項9】
前記クラッチを前記上部旋回体の制動時に切離することを特徴とする請求項8記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19150(P2013−19150A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152383(P2011−152383)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】