説明

治療剤

【課題】 6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β阻害作用、抗肥満作用、皮膚老化抑制作用、抗ストレス作用等の機能が知られている。本発明の課題は、これら以外の疾病に有効である治療剤の提供にある。
【解決手段】 6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする高尿酸血症の予防または改善剤。6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする抗骨粗鬆症剤。6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする血圧降下剤。6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする抗疲労剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする各種疾病に有用な治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β阻害作用(特許文献1)、抗肥満作用(特許文献2)、皮膚老化抑制作用(特許文献3)、抗ストレス作用(特許文献4)等の機能が知られている。
しかしながら、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートが、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、顕著な効果でもって有効であるとの見地はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247805号公報
【特許文献2】特開2006−328056号公報
【特許文献3】特開2006−241005号公報
【特許文献4】特開2004−269415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする高尿酸血症の予防または改善剤である。
請求項2に記載の発明は、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする抗骨粗鬆症剤である。
請求項3に記載の発明は、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする血圧降下剤である。
請求項4に記載の発明は、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする抗疲労剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0008】
本発明で用いられる6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、公知の化合物であり、ワサビから抽出する方法、公知の化学的合成および精製法により合成する方法等により調製することができる(例えば前記特許文献1,2を参照)。また、市販品を利用することもできる。
【0009】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの投与量は、患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば、成人1日1〜数回、1日量約5mg〜10g、好ましくは100mg〜1g程度投与するのがよい。
【0010】
本発明の治療剤は、錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤等の固形または溶液の形態(以下、製剤ともいう)に公知の方法により適宜調製することができる。即ち、本発明に有用な固形製剤または液状製剤は、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。添加剤としては、例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤または香料などが挙げられる。
【0011】
また本発明の治療剤は、各種健康食品および機能性食品として摂取可能である。これらの例としては、各種のものをあげることができるが、健康食品および機能性食品の製造に関しては、通常用いられる、食品素材、食品添加物に加え、賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、分散剤、保存剤、湿潤化剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化材、カプセル基剤等の補助剤を用いた飲食品製剤形態で利用することができる。該補助剤の具体的な例示をすれば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはその塩、アラビアガム、ポリエチレングルコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、プルラン、カラギーナン、デキストリン、還元パラチノース、ソルビトール、キシリトール、ステビア、合成甘味料、クエン酸、アスコルビン酸、酸味料、重曹、ショ糖エステル、植物硬化油脂、塩化カリウム、サフラワー油、ミツロウ、大豆レシチン、香料等が配合できる。このような健康食品、機能性食品の製造に関しては、医薬品製剤の参考書、例えば「日本薬局方解説書(製剤総則)」(廣川書店)等を参考にすることができる。
【0012】
上記以外にも本発明の治療剤は飲食品として摂取することができる。具体的には、納豆、厚揚げ、豆腐、こんにゃく、団子、漬物、佃煮、コロッケ、サンドイッチ、ピザ、ハンバーガー、餃子、シューマイ、サラダ等の各種総菜や、各種粉末(ビーフ、ポーク、チキン等畜産物、海老、帆立、蜆、昆布等水産物、野菜・果実類、植物、酵母、藻類等)や、プリン、クッキー、クラッカー、パン、ケーキ、チョコレート、ポテトチップス、ビスケット、ドーナツ、ゼリーなどの洋菓子、煎餅、羊羹、大福、おはぎ、その他の饅頭、カステラなどの和菓子、冷菓(飴等)、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば、きしめん等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、コーンビーフ等の畜肉製品や、塩、胡椒、みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、甘味料、辛味料等の調味類や、明石焼き、たこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きうどん等の鉄板焼き食品や、チーズ、ハードタイプのヨーグルト等の乳製品や、油脂類・香料類(バニラ、柑橘類、かつお等)を粉末固形化したものや、粉末飲食品(インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ、味噌汁等)等の各種食品が挙げることができるが、これらに特に制限されない。
【0013】
さらに本発明においては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、レシチン、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(ギムネマ酸、大豆サポニン、人参サポニン等)、脂肪酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)、リン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、などを併用することもできる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の治療剤は、高尿酸血症の予防または改善剤、抗骨粗鬆症剤、血圧降下剤、抗疲労剤としてきわめて有用である。以下、上記各種薬効について実施例でもって説明する。
【0015】
実施例1(高尿酸血症の改善効果)
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートの粉末(以下、粉末1という)を用いて下記実験に供した。
【0016】
実験方法
供試動物はWistar系ラット雌(8週令、体重約180g)を1群6匹で用いた。
試験飼料に0.75%の濃度でアデニンを加えてラットに給与し、腎臓からの尿中への尿酸排泄阻害を起こさせて高尿酸血症のモデル動物とした。
対照群は、上記の0.75%アデニン飼料のみ、薬剤投与群は、0.75%アデニンと上記粉末1含有飼料とした。飼料は自由摂取としたが、薬剤投与群の試験飼料中の上記粉末1の濃度を、摂取量が1mg/kg体重となるように調整した。試験開始日及び24日目に血中の尿酸値を測定した。
その結果、対照群の試験開始日の血中尿酸濃度は、0.57mg/mlであり、24日目が2.33mg/mlであったのに対し、薬剤投与群の24日目の血中尿酸濃度は0.88mg/mlであった。
この結果から明らかなように、対照群では血中尿酸濃度が大幅に増加するのに対し、薬剤投与群ではいずれもその濃度は増加しなかった。したがって、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートは、高尿酸血症の予防または改善剤として有用であることが示された。
【0017】
実施例2(抗骨粗鬆症効果)
骨粗鬆症改善効果試験
SD系ラット(22週齢)メスの卵巣を外科的に取り除き、骨粗鬆症のモデルラットを作成した。卵巣摘出ラットを7匹ずつ6群に分け、35日間の試験期間中、1日置きに(計17回)、前記実施例1の粉末1の摂取量が1mg/kgとなるように、生理食塩水の分散した液体を2ml経口投与した。飼料はオリエンタル酵母株式会社のマウス・ラット・ハムスター用固形飼料CRF−1を用い、給餌および給水方法は自由摂取とした。試験期間中、各群間で、餌の摂取量に差は認められなかった。試験開始後35日目にラットの体重を測定した後、大腿骨を取り出した。大腿骨は、接着組織および筋肉を取り除いて分析に使用した。大腿骨の体積を測定した後、エタノールで3回洗浄し、次にアセトンで3回洗浄したのち、一晩乾燥し、その後、重量を測定して大腿骨の乾燥重量を求めた。体積および乾燥重量から、骨密度(乾燥重量g/体積mm3 )を測定した。なお対照実験として、前記粉末1を含まない生理食塩水をラットに投与したこと以外は、上記実験を繰り返した例(比較例)も併せて、その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例2と比較例とを対比したところ、実施例2はp<0.05の危険率で有意差が認められた。
【0020】
実施例3(血圧降下効果)
実施例1の粉末1を一般市販飼料(船橋農場製、船橋SP)に添加し、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHR−SP)を用いて最高血圧値、体重の変化を比較した。対照区は、粉末1を添加しない一般試料を用いた。A区を対照区、B区を本発明区とし、それぞれの飼料で5週齢の雄性SHR−SPを各区6匹ずつ7週間飼育し、12週齢に達した時の血圧値と体重の変化について調べた。表2に示すように血圧の変化においては、本発明区に有意な血圧上昇の抑制が認められた。なお、本発明区においては、粉末1の1日あたりの粉末1の摂取量が、5mg/kg体重となるように飼料中の粉末1の濃度を調整した。
【0021】
【表2】

【0022】
実施例4(抗疲労効果)
STD DDY 雄性マウス(5週齢:各群n=3〜4)に対し、上記粉末1を経口摂取させた。摂取量は、10mg/kg体重である。なお、コントロール群のマウスには、純水のみを摂取させて試験を行った。
【0023】
摂取から30分後に、マウスを深さ80センチの水槽に入れて、無動に至るまでの時間を計測した。各試験群のマウス(各群n=3〜4)の無動に至るまでの時間の平均値として、コントロール群は約100秒であったのに対し、粉末1投与群は、約358秒であった。
以上から、粉末1に高い抗疲労効果が確認された。
【0024】
実施例5(抗疲労効果)
ボランティア男性12名(年齢34〜37歳)を、試験食群(実施例)とプラセボ群(比較例)に群分けした。試験食群(実施例)は、粉末1をオリーブ油を基剤としたソフトカプセルに加工し、毎日粉末1を500mg摂取する群である。プラセボ群(比較例)は粉末1を含まないオリーブ油が入ったソフトカプセルを毎日摂取する群である。
摂取を開始してから5週間後と9週間後に、自転車エルゴメータを用いる運動をボランティア男性に課した。該運動は、最大心拍数の80%負荷の運動強度で30分間継続するというものである。
ボランティア男性の運動直前及び運動直後の血中乳酸値を、市販の簡易血中乳酸測定器 で測定し、血中乳酸値の上昇量を調べた。
その結果、摂取を開始してから5週間後の該上昇量は、比較例が約6ミリモル/lであったのに対し、実施例では約5.31ミリモル/lであった。
摂取を開始してから9週間後の該上昇量は、比較例が約6ミリモル/lであったのに対し、実施例では約4.9ミリモル/lであった。
以上から、粉末1の抗疲労作用が明らかとなった。
【0025】
実施例6
ジュースの調製:
冷凍濃縮オレンジ果汁 5.0質量部
果糖ブドウ糖液糖 1.0質量部
クエン酸 0.10質量部
L−アスコルビン酸 0.09質量部
実施例1の粉末1 0.05質量部
【0026】
キャンディーの調製:
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
本発明の治療剤 残量
合計100.0wt%
【0027】
ヨーグルトの調製:
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
本発明の治療剤 1.0
香料 微量
水 残余
合計100.0wt%
【0028】
清涼飲料の調製:
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
本発明の治療剤 1.0
香料 適量
水 残余
合計100.0wt%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする高尿酸血症の予防または改善剤。
【請求項2】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする抗骨粗鬆症剤。
【請求項3】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする血圧降下剤。
【請求項4】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートを有効成分とする抗疲労剤。

【公開番号】特開2009−155334(P2009−155334A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−4540(P2009−4540)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】