説明

治療器具の定位を目的とした,センサの磁気追跡のためのシステム及び方法

磁気追跡センサを用いて遠隔オブジェクトの位置を特定するためのシステム及び方法。このシステム及び方法は,コイル130内に非対称に配置された磁気コア132を置くことと,このコイル130を規定している両端部に1個のDC電気回路136を接続することとを含む。このコイル130が外部のAC磁場108中に置かれている間に,このDC電気回路136は,当該コイル130にDC電流を流す。このDC電流は前記磁気コア132の飽和レベルを調整し,これにより6自由度でこのコイル130の磁気追跡を供するために,外部のAC磁場108中に置かれた当該コイル130の応答信号を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,関連作業エリア内に磁場が設けられ,一つ以上の磁気センサが局部的な磁場の値を検知するために操作され,道具,器具又は他の特定の物体の位置を決定するために,同センサの信号が処理されるタイプの磁気追跡システムに関する。一般に,磁場/電場のような場を発生させる素子又は当該素子のアセンブリ,及び場の検出素子又は当該素子のアセンブリを用いて,しばしばカテーテルのような治療のための手術道具と併せて,物理的な環境中若しくは関連するイメージ内の一つ以上の固定点又は組織と,作業エリア内の一つ以上の動いているか若しくは可視出来ない点又は組織との間の位置の相対的な変化を追跡するために,斯様なシステムが作動する。
【背景技術】
【0002】
追跡のための磁場発生アセンブリ又は磁場検知アセンブリは,種々の態様によって実行されることが出来,所望の場を発生させる又は検知するための適切な形状を配された,電流ループ若しくは電流経路を形成している従来からのアナログ導線のコイルであるとか,又は半導体若しくはマイクロリソグラフィを用いて作られたリード線若しくは回路基板上に形成されている電流経路(パターン)とかによって実行され得る。磁場の発生又は検知素子同士の間には,対称性又は二重性が在り得る。従って,例えば沢山の事例において,空間的に分布する磁場を発生する小さなマルチコイルアレイと,発生した磁場を検知する類似の,又は同一のものでさえあり得るコイルアレイとを持つことが生じ得る。小さなサイズのコイルは,到達できる磁場強度又は検知信号の振幅の到達可能なレベルを限定してしまうものの,このようなコイルは,近似的には双極の磁界を発生する可能性を提供する。磁場の発生と検知とのためのコイル構成は,代替的には,異なる大きさのものを採用することが可能で,例えば異なる軸に沿った磁場成分を作るために比較的大型で及び/又は高電流のコイルと,磁場の値を検出するためのより小型の又はより局在するコイルアセンブリとを採用することが出来る。磁場を検知し,取り付けられた器具の位置を追跡するために,検知用又は発生用に拘わらず,小型のコイルは例えば人体に固定されるか,又は治療場,又は手術道具すなわちカテーテル若しくは他の体内に挿入する器具に取り付けられる。
【0003】
一般には,どこにこの可動の磁気アセンブリが所与の瞬間に位置しているかの空間座標(例えば,絶対的又は相対的な位置座標及び方位座標)を規定することが,斯様な磁気追跡アセンブリの目的である。これゆえ,磁場分布又は信号値をある程度の精度で明らかにすることが必要であり,当該磁場を正確に検知することも必要である。この磁場分布は,磁場モデリング及び実験に基づいた磁場マッピングを組み合わせることによって特定されることが出来る。例えば後者は,較正ステップ又は初期化ステップとして実行されることが出来,干渉している組織の存在に対する理論的な磁場分布を訂正するために実行される。どの事例においても,この空間座標は一般には他の磁気アセンブリ(センサ又は送信機)に対する1個の磁気アセンブリ(送信機又はセンサ)のために計算される。一般に,これらの磁気アセンブリの一つは,それ自身が固定されている。
【0004】
5又は6(この差は通常,センサの巻きが特定されているかどうかである)の測定自由度を提供する殆どの磁気追跡システムは,どのような形にせよ磁場発生器モデルを利用する。とりわけ,双極モデル及び強化された双極モデルは,Jones(米国特許公報US 4,737,474及び米国特許公報US 5,307,072),Blood(米国特許公報US 4,945,305),Dumoulin(米国特許公報US 5,211,165及び米国特許公報US 5,377,678),Bladen(国際特許公開公報WO 94/04938),BenHaim(国際特許公開公報WO 96/05768)中に見出される。他のモデルは,Blood(米国特許公報US 5,600,330)及びAcker(米国特許公報US 5,752,513)中に見出され,これらは磁場が距離とは逆比例する線分電流源を使用している。これらのモデルは,磁場発生器の頂点の近傍で成り立たない。更に他のモデルが,Acker(米国特許公報US 5,558,091)及びMartinelli(米国特許公報US 5,592,939)中に見出され,これらはとりわけ準線形/均一磁場発生を用いている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気追跡が役に立ってきた領域の一つは,イメージガイド手術のエリアである。一般的なイメージガイド手術システムは,患者の体の手術可能な部位のイメージ一式を入手して,一つ以上の座標のセット,例えば手術作業領域の空間座標,イメージ自身の座標,又は患者の生体組織の目標となる特徴の座標を基準にして手術道具又は手術器具を追跡する。今日では,斯様なシステムは複数の手術手段のために開発されたか,又は提案されてきており,斯様なシステムは視線の制限のある環境において,位置を測定するために役立っている。とりわけ,生体の内部に在る医療器具の位置の特定は重要なアプリケーションである。例えば,カテーテル及びガイドワイヤは沢山の治療において追跡される。治療器具と組合わせた磁気追跡を用いる最も重要な挑戦の一つは,センサの小型化と並列化とである。
【0006】
交流(AC)磁気追跡システムとして分類出来るよく知られたシステムは,Seiler et al.による「原体照射療法における[腫瘍の]位置の連続した精密測定のための新しい追跡技術」(Phys. Med. Biol., 2000, N103-N110)というタイトルの論文中に記述されており,この内容はそっくりそのまま参照されて組込まれている。この論文で説明されている追跡システムは,センサとしてコイルを用いている。医療器具(例えば,ガイドワイヤ,カテーテル)は,これらのセンサを備えることが出来,従って追跡が可能である。これらセンサは大変小さいことが要求され,さもなければ,臨床的には容認されないほど器具の性能は著しく変わってしまうであろう。6自由度(6DOF)で追跡されねばならないとき,小さなガイドワイヤ(例えば0.011インチ径)は,これゆえ特に取り組む価値がある。従来の6DOFセンサは,少なくとも2個の非同一直線上にあるコイルから成っており,これゆえ,単独のコイルに比べてよりスペースを必要とする。治療器具の複数の部位を追跡するための追加のセンサが平行して通常は加えられており,各センサは自身の電気回路を必要とする。
【0007】
このように6DOFの磁気追跡を可能にする,少ないスペースしか必要とせず,ただ一つの電気回路のみを必要とし同回路が逐次動作されるシステム及び方法に対するニーズが在る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,磁気追跡を用いて遠隔オブジェクトの位置を決定するためのセンサ,システム,及び方法を提供する。ある実施例において磁気追跡センサは,コイルと,このコイル内に非対称に配置された磁気コアと,当該コイルを規定している両端部に接続されているDC電気回路とを含む。このDC電気回路は,前記磁気コアの飽和を調整するために,このコイルにDC電流を流し,これにより,同コイルの6DOFでの磁気追跡を供するように外部のAC磁場中に置かれた前記コイルの応答信号に影響を与える。
【0009】
本発明は,遠隔オブジェクトの位置を決定するためのシステムも提供する。このシステムはコイル内に非対称に置かれた磁気コアと,このコイルへDC電流を流すために,同コイルを規定している両端部に接続されているDC電気回路と,当該コイルからの応答信号を受け取るデータ入手システムと,同データ入手システムに結合されているモニタとを含む。このDC電流は磁気コアの飽和レベルを調整するために流され,これにより,前記モニタで可視可能な当該コイルの6DOFでの磁気追跡を可能にするように,外部のAC磁場中に置かれたコイルの応答信号に影響を与える。
【0010】
本発明は,遠隔オブジェクトの位置及び方位を決定するための方法も提供する。本方法はコイル内に非対称に磁気コアを配置することと,コイルを規定している両端部に接続され,コイルにDC電流を流すためにコイルを規定している両端部にDC電気回路を接続することと,外部のAC磁場中に当該コイルを配置することと,前記磁気コアの飽和レベルを調整するためにDC電流を流し,これによりこのコイルの6DOFの磁気追跡を供するよう外部のAC磁場中に置かれたコイルからの応答信号に影響を及ぼすこととを含む。
【0011】
開示されたセンサ,システム及び方法に付随する追加の特徴,機能及び長所は,以降の説明から明らかであるし,特に添付された図と関連して精査されたときに明らかである。
【0012】
本システム及び方法を用い,作成する当業者の助けとするために,添付の図についての説明を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ここで述べられているように,本発明は,単一の電気回路のみを必要とし,小径の器具(例えば,ガイドワイヤ又はカテーテル)上に一つ又は数個のセンサの在る6DOFの磁気追跡システムを有利に可能にし,促進する。難しい血管形状内で,又は狭窄部を通過する際の器具の案内をサポートするために,本発明は有利に使われることが出来る。これらのセンサが直列に配置されている場合,本発明はガイドワイヤの全区画の形状及び位置を有利に推測することが出来る。複数の6DOFセンサは,ガイドワイヤの機械的な状態(例えば,歪分布図)の推測をも可能にする。
【0014】
図1は,例示的なAC磁気追跡システム100が概観的に描かれている。磁気追跡システム100がカテーテルのような治療器具102で使われ,患者106の体内の目標エリア104に対するカテーテル102の位置と方位とを検知する。当業者に知られている他の磁気追跡のアプリケーションと同様,システム100は磁場108を,磁場発生器110と磁気センサ112との間の情報キャリアとして用いる。例示的な実施例では,磁気センサ112はカテーテル102の先端部分に配置されている,高い交番周波数で精密な測定を提供している大変小さな埋め込み可能なセンサを含む。磁場発生器110は,人体に実用上無害で浸透するよう,例えば約12KHzの交番磁場を発生させるための信号発生器114に接続されている。
【0015】
磁場発生器110は,四面体形状のアセンブリの辺を形成するように6個の差動コイル116を含んでいる。各差動コイル116は,同軸上にお互いに背向している逆極性の2個のコイルから構成している。これゆえ,交番している磁場の半周期の間に磁極の列はS-N-N-SからN-S-S-Nへと変化する。ここにSは磁石のS極を意味し,NはN極を意味する。斯様なコイル構成は,主要な4極素子を持った多極磁場を創り出す。各コイル116は,合成材料で作られたコア(図示されず)上に83巻きの銅線を含む。この差動コイルは,一辺の長さが約16cmの四面体を形成する相互に接続されたプラスチック材料を活用して組み立てられているが,しかし他の形状及び寸法も同様に熟慮される。
【0016】
センサ112は基本的には,組み合わされる治療器具102に対して適切な線径を持つ約1000巻きの絶縁銅線で作られた小型のコイルである。センサ112は,合成材料の大変薄い膜でコーティングされている。磁場発生器110によって作り出された交番磁場108は,センサ112中に交番電圧を誘起し,この電圧は接続されているデータ入手エレクトロニクス118によって測定される。当該エレクトロニクスは,モニタ120上にセンサ112の位置及び方位を提供する。
【0017】
次に図2を参照すると,本発明は逐次動作することが出来る小さな6DOFセンサ112に導かれてゆく。磁気コア(3本が図示)としてコイル130の内側に斜めに取り付けられた一つ又は数個の軟磁性ワイヤ132を持つコイル130を,磁気センサ112は含んでいる。この軟磁性のワイヤ132は,充分に低い抗磁力,及び例えば以下に記述されているような充分に小さい線径/長さのアスペクト比等の適切な形状を持つ全ての適切な材料を含んでいる。ある実施例では,この軟磁性のワイヤ132は(5Cu, 2Cr, 77Niで残りがFeであると規定されている)μ‐メタルである。軟磁性ワイヤの減磁係数は大変小さく,これゆえ集束している磁束の効率は大変高いことに留意されねばならない。コイル130の両端部134は,DC電源138とメータ140として概観的に描かれているデータ入手エレクトロニクスとを含んだ直流(DC)回路136に電気的に接続されている。
【0018】
例示的な実施例において,この軟磁性ワイヤは800A/m未満の,好ましくは80A/m未満の抗磁力を持つ材料で構成されている。これらの性質を持つ材料は文献から既知であり,関連技術の当事者にも良く知られている。このワイヤの形状は減磁係数Nが10-2未満になるように設計されねばならず,好ましくは10-3未満が規定される。棒状のワイヤに関しては,減磁係数は約1/20と約1/70との間の線径対線長のアスペクト比に対応する。最も簡単な実施例は,相当する形状を持つ引抜き線であることに言及すべきである。代替的には編み線も使用可能であろうし,又は所望の減磁係数に設定されている(任意の減磁係数の)磁気サブエレメント(例えば整列している磁気微小球体)のマトリクスさえ使用することが出来,又はより高い直径対棒長のアスペクト比を持ち,必要とされる異方性(減磁係数)を得るために薄い磁性層がコーティングされている円筒状の棒でさえ使用することが可能である。
【0019】
前記軟磁性ワイヤ132の役目は,外部磁場108を変化させて集束させることである。この変化は,読出しの間,追加のDC磁場を付与することによって軟磁性ワイヤ132の磁気が飽和する可能性に起因して発生する。この追加のDC磁場は,DC電源138を用いたDC回路136を介してDC電流がコイル130を通過することによって作り出される。DC電流の強さ及び各センサコイル130の性質が,センサ/軟磁性ワイヤが飽和するか否かを決定する。磁気的に飽和した軟磁性ワイヤ132は,しかしながら外部AC磁界108には応答しない。従って,センサ112の信号貢献度に対する軟磁性ワイヤ132の影響は,付与されたDC電流によって調整することが出来る。
【0020】
図2に例示されているように,斜めに配置された軟磁性ワイヤ132は,コイル130の対称性を更に打ち消す。コイルの軸方向の対称性は,このワイヤの斜めの位置に起因して打ち消される。従って,センサの信号は今やコイルの巻き角度に依存し,6DOFセンサとなる。これに対して,コアを持たない,又はコイルの巻きと同軸方向に配置されたコアを持つ従来のセンサは,コイルの対称性のために巻き角度には依存しない。
【0021】
6DOF測定は,軟磁性ワイヤ132の誘起電圧が各々受動か能動かを(例えば,飽和したか否か)連続して測ることにより行われる。これは,軟磁性ワイヤ132はその長さを規定している長手方向の軸に沿って大部分は磁化され,これゆえ線形な独立した測定になるので,誘起された電圧を2個の非同一直線上のコイルで測定するのと類似している。Seiler et al.による引例が上記で開示しているように,6DOFの値を求めるために充分に独立した測定を提供するよう,幾つかの勾配磁場が1回の追跡シーケンス中で起動されることが仮定される。
【0022】
図3は,一つの電気回路136に直列に接続された4個のセンサ112を例示している。データ入手{装置}118に供される信号応答は,1本のケーブル119(図1参照)又は一つの電気回路136によってアドレス指定された場合,各単一センサ112からの信号の重ね合わせたものとなる。しかしながら,異なる軟磁性ワイヤ132を用い,異なるDC電流を電気回路136に流すことによって,当該信号を分離することが出来る。電気回路136で供された各DC電流値に対して,センサ/軟磁性ワイヤの特定の一部のものを飽和させることが出来る。例えば,他のセンサ/軟磁性ワイヤが磁化の線形領域に残留している一方,幾つかのセンサ/軟磁性ワイヤは既に非線形(飽和の)領域にいることが出来る。これらの異なる応答は(特に非線形性が)検知され,測定シーケンスのために使用される。この態様にて,DC電気回路136で供されたDC電圧の振幅は,分離することが可能な全体信号を作り出すために追加された自由なパラメータとなる。センサアレイ中の異なるセンサを指定するために,DC電圧は測定シーケンスの間,任意でステップ状に変えられる。
【0023】
実際の位置測定は,以下に説明されるように,逆も実行することが出来る。AC電流が追跡されるべき微小コイル中を通過するとき,磁場発生器は,この場合DC磁場を作り出す。局地的なDC磁界をもたらし,これゆえコイルの位置をもたらす,このコイルのインピーダンスが連続して測定される。このDCベースの技術もまた良く知られており(例えば,Ascension Technology社の「Flock of Birds」視点追跡システムを参照),ACベースの技術が磁性材料によってより乱されないのに対して,DCベースの技術は伝導性の材料に対してより低感度であるという利点を提供する。斯様な技術は,例えば,両方のタイプの測定をインターリーブすることによって,測定精度を上げるため,又は伝導性材料か,磁性材料かに起因する問題を検出するために,上で説明した方法に加えて使うことが可能である。独立した測定をもたらすための磁気飽和をもはや使うことは出来ないので,この逆手法は6自由度の測定が出来ず,5自由度の測定のみ可能であることに留意すべきである。
【0024】
他のフリーパラメータはAC磁界108の振幅又は時間パターンを含む。このAC磁界108は,各センサ112の非線形挙動にも影響を及ぼすので,これらのパラメータはDC電流の強さと同じように活用することが出来る。これに加えて,空間的なAC磁界の振幅分布は,測定シーケンス中で変化させることが出来る。これらの追加のフリーパラメータは,(例えば分離が可能な応答信号のような)信号の視認化をサポートするために使うことが出来る。これゆえ,信号の視認化は一般的には主要な問題ではない。代替的には,例えばダイオードを含む他の非線形要素が,この信号を分離するために使用される。
【0025】
通常の磁気追跡装置向けに用いられているのと同様の方法で、本発明で提案された磁気追跡センサを備えた医療向け治療器具の製造が行われ得ることに本発明は関与していることが、従来技術の当事者によって認識されるであろう。上述の磁気追跡センサの一つの応用例は、例えば血栓症の治療に用いられている、複数の6DOFで追跡可能な小径のガイドワイヤを含む。斯様な器具は難しい血管形状中で、又は狭窄部を通過するときに医療機器の誘導を大いにサポートしている。
【0026】
更に、センサが直列に接続されていることは、このガイドワイヤの全区画(例えばワイヤ先端の10-20cmの部分)の位置と形状との推測を可能にする。これは、複雑な血管樹中を誘導するのを支援することが出来る。形状の情報は(例えばガイドラインのような)手術前のイメージの作成を改善するためにも用いることが出来る。更に複数の6DOFセンサは、ガイドワイヤの機械的な状態(例えば歪分布図)を推測することを可能にする。
【0027】
ここで図4を参照し、短射程の相対追跡システムの構成は、カテーテルの末端部にコイル130,及び追跡すべき区画(例えば先端部)にμ-メタル144を含んでいるガイドワイヤ142を備えたカテーテル140を含む。ガイドワイヤ142の先端のこのμ−メタル144は信号に寄与し、相対位置が特定出来る。図4の構成は、もしもカテーテル140が周囲の組織に対して固定されている場合は動作補償された相対追跡のための方法を自動的に提供し、高い相対精度が必須な誘導に対する手段を提供する。典型的な例は、慢性的全閉塞部、又は非常に狭い狭窄部のガイドワイヤを伴った横断である。
【0028】
要約すると本発明は,医療用の治療器具、特に複雑な血管樹中を誘導するときの治療手段で用いられる例えばガイドワイヤ、及び/又はカテーテルと共に実施することが出来る。一つ又は幾つかの磁気μ−メタルを磁気コアとして用いた1個のコイルのみを6DOFセンサは基にしていて、当該センサはこの治療器具の一部である。本発明の機能的な適用は、コイルの巻き角度に依存したセンサ信号を発生する1個のコイルを持つ6DOF測定を可能にする。
【0029】
開示されたシステム、装置、及び方法は、医療用治療器具システムのユーザ、特に治療行為中にガイドワイヤ及び/又はカテーテルを誘導する医師に顕著なメリットを提供する。実に、開示されたシステム、装置、及び方法は、難しい血管樹中での,又は狭窄部を通過するときの器具の誘導をサポートする小径の装置と組み合わされた実用性のある大きさのセンサを提供する。特に、開示されたシステム、装置、及び方法は、用いられたセンサの数に関係無く、ただ1個のDC電気回路を用いた6DOFの磁気追跡を提供し、すべての当該センサは1本のケーブルで指定が出来る。この態様にて、複数のセンサの直列配置がガイドワイヤの全区画の形状、位置、及び機械的な状態の推測を可能にする。
【0030】
本発明のシステム、装置、及び方法は、これまで典型的な実施例を引用して説明されてきたが、本発明は斯様な典型的な実施例に限定されるものではない。それよりむしろ、ここで開示されたシステム、装置、及び方法はここでの意図、又は範囲から逸脱することなく多様な修正、強化、及び/又は変更を受け入れる余地が在る。従って本発明は、添付されている請求項の範囲内で斯様な修正、強化、及び/又は変更を具現化し、包含する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】患者の体内に置かれたカテーテルに接続されている磁気追跡システムのセンサの概観的な図を示す。
【図2】本発明の例示的な実施例において,コイル中に置かれた三つの斜めに置かれた軟磁性ワイヤを持つコイル巻回を含んだ6DOFセンサの概観的な図を例示する。
【図3】本発明の代替の例示的な実施例において,各々がコイルに斜めに置かれた軟磁性ワイヤを持つ,直列に同一線上に接続されたコイルを含んでいる一連のミニセンサを含んだ6DOFセンサの概観的な図を例示する。
【図4】カテーテルに対してガイドワイヤ先端の相対的な追跡を行うためにコイル,及びμ‐メタル部分の在るガイドワイヤを備えたカテーテルを例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐コイルと,
‐前記コイル内に非対称に配置された磁気コアと,
‐前記コイルを規定している両端部に接続され,前記コイルにDC電流を流すDC電気回路とを有する,遠隔オブジェクトの位置を特定するための磁気追跡センサであって,
DC電流の付与は,外部のAC磁場中に置かれた前記コイルの応答信号での前記磁気コアの持つ影響を調整し, 6自由度の磁気追跡を提供する磁気追跡センサ。
【請求項2】
前記磁気コアは軟磁性のワイヤであり,当該ワイヤは前記コイル内に同一軸上ではなく配置された,請求項1に記載の磁気追跡センサ。
【請求項3】
前記軟磁性のワイヤは,前記コイルの内側を規定している対向し合う側に各端部を置いて規定される,請求項2に記載の磁気追跡センサ。
【請求項4】
前記磁気コアは,実質的にお互いに平行で,前記コイル内で同一軸上ではなく配置された複数の軟磁性のワイヤを含む,請求項2に記載の磁気追跡センサ。
【請求項5】
前記DC電気回路はDC電流を単一の電気回路を介して一つのコイル,又は動作的に互いに接続された複数のコイルに供給する,請求項1に記載の磁気追跡センサ。
【請求項6】
前記コイルは,1個のコイルのみを用いて6自由度の磁気追跡を提供する,請求項1に記載の磁気追跡センサ。
【請求項7】
前記コイルは同一直線上にある一連のコイルを含み,各コイルは同―軸上ではなく配置された軟磁性ワイヤを磁気コアとして持っており,当該同一直線上にある一連のコイルは,前記DC電気回路に動作的に接続されている,請求項1に記載の磁気追跡センサ。
【請求項8】
前記磁気コアは,前記コイル内でお互いに実質的に平行な,同一軸上ではなく配置された3本の軟磁性ワイヤを含んでいる,請求項1に記載の磁気追跡センサ。
【請求項9】
前記DC電気回路はDC電力源及び信号応答の入手手段を含む,請求項1に記載の磁気追跡センサ。
【請求項10】
前記6自由度の磁気追跡システムは,少なくとも一つのカテーテル及びガイドワイヤに置かれた前記コイルの位置と方位とを提供する,請求項1に記載の磁気追跡センサ。
【請求項11】
−コイルと,
−前記コイル内に非対称に配置された磁気コアと,
−前記コイルを規定している両端部に接続され,前記コイルにDC電流を流すDC電気回路と,
−前記コイルからの応答信号を入力するデータ入手システムと,
−前記データ入手システムと動作的に結合されたモニタとを有する遠隔オブジェクトの位置を特定するシステムであって,
DC電流の付与は,外部のAC磁場中に置かれた前記コイルの応答信号での前記磁気コアの影響を調整し,モニタ上で可視可能な前記コイルの 6自由度の磁気追跡を提供する,遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項12】
前記磁気コアは軟磁性のワイヤであり,当該ワイヤは前記コイル内で同一軸上ではなく配置された,請求項11に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項13】
前記軟磁性のワイヤは,前記コイルの内側を規定している対向し合う側に各端部を置いて規定される,請求項12に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項14】
前記磁気コアは,実質的にお互いに平行で,前記コイル内で同一軸上ではなく配置された複数の軟磁性のワイヤである,請求項11に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項15】
前記DC電気回路はDC電流を単一の電気回路を介して一つのコイル,又は動作的に互いに接続された複数のコイルに供給する,請求項11に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項16】
前記コイルは,1個のコイルのみを用いて6自由度の磁気追跡を提供する,請求項11に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項17】
前記コイルは同一直線上にある一連のコイルを含み,各コイルは同―軸上ではなく配置された軟磁性ワイヤを磁気コアとして持っており,当該同一直線上にある一連のコイルは,前記DC電気回路に動作的に接続されている,請求項11に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項18】
前記磁気コアは,前記コイル内でお互いに実質的に平行な,同一軸上ではなく配置された3本の軟磁性ワイヤを含んでいる,請求項11に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項19】
前記6自由度の磁気追跡システムは,少なくとも一つのカテーテル及びガイドワイヤに置かれた前記コイルの位置と方位とを提供する,請求項11に記載の遠隔オブジェクトの位置を特定するシステム。
【請求項20】
−磁気コアをコイル内に非対称に配置することと,
−DC電流を前記コイルに流すDC電気回路を,前記コイルを規定している両端部に接続することと,
−前記コイルを外部のAC磁場中に配置することと,
−前記コイルの6自由度の磁気追跡を提供するために,前記磁気コアの磁気飽和レベルを調整し,外部のAC磁場中に置かれた前記コイルからの応答信号に影響を及ぼすようにDC電流を印加することとを含む,遠隔オブジェクトの位置と方位とを特定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502396(P2009−502396A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524629(P2008−524629)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052373
【国際公開番号】WO2007/015180
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】