説明

治療用リボヌクレアーゼ

疾病の治療または予防において有用なリボヌクレアーゼ(RNase)を開示する。これは、アミノ酸修飾、R4C、G38R、R39G、N67R、G89R、S90R、およびV118Cを有するヒトRNase1配列を有するリボヌクレアーゼを含む。リボヌクレアーゼは、治療用調製物として使用するために、組換え産生され得る。リボヌクレアーゼは、宿主細胞に含有される発現ベクター中の核酸配列であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月1日に出願された米国特許仮出願第61/101,905号に対する優先権を主張し、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は疾病の治療または予防におけるリボヌクレアーゼ(RNase)の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
米国人口において、最も一般的な15の癌型に関連する死亡数は、年間100,000人につき死者170人に迫ると推定されている(Martin L Brown,Joseph Lipscomb and Claire Snyder,2001,THE BURDEN OF ILLNESS OF CANCER: Economic Cost and Quality of Life,Ann.Rev.Public Health,22: 91−113)。現在、毎年推定1,437,180件の癌の新規症例および565,650人の死者が存在する(American Cancer Society Cancer Facts and Figures 2008)。癌の経済的負担は、1990年のドルで960億ドルを超えると推定されている(Brown et al,2001)。
【0004】
「化学療法」という用語は、単に化学物質での疾病の治療を意味する。化学療法の父Paul Ehrlichは、「特効薬」のような、宿主を害することなく侵入する生物または細胞を死滅させる、完璧な化学療法剤を想像した。癌細胞を死滅させるか、または抑制する化合物の同定、およびかかる化合物を意図する標的細胞に誘導する方法の同定において、著しい進展が見られたが、当該技術分野は依然として改善された治療用化合物を必要としている。
【0005】
核酸化合物、ポリペプチド化合物、またはそれらの誘導体等の小分子および生物製剤を含む、様々な異なる種類の化学療法剤が利用可能である。一般的に、考慮される必要である化学療法の特性としては、有効性、薬物動態学的特性、および製造の容易さが挙げられる。一般的なタンパク質治療剤は、小分子に代わるものとして特定の利点を提供することができるが、有効なタンパク質薬物は、特異性、細胞傷害性、標的に対する親和性、安全性、溶解度、有効な送達に対する従順さ、安定性、および体内での寿命(除去時間)を含む最適な特性の均衡を有さなければならない。これらの特性のうちのいずれか1つにおいて優位性を有する候補薬は、有効な薬として役立つために最適な、特徴の全体的均衡を持たない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該技術分野において、治療環境で使用するための、特徴を効果的に補完するさらなる抗癌化学療法剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は疾病の治療または予防におけるRNaseの使用に関する。いくつかの実施形態において、RNaseは癌等のヒト疾病の治療または予防のために使用される。いくつかの実施形態において、組換えヒトRNase1の変異体は、ヒト癌の治療または予防のための望ましい特性の最適な均衡を有する。かかる特性には、安定性、病原性細胞への細胞傷害性、ウイルス性RNAを含む任意の起源の病原性RNAの分解の有効性、RNase抑制剤による結合の回避、プロテアーゼによる分解に対する抵抗性、標的細胞への送達、細胞への移入の効率、用量反応特性、薬物動態学的特性、および人体内の寿命が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の治療用組成物および方法は、野生型酵素、R4C、G38R、R39G、N67R、G89R、S90R、およびV118Cと比較してアミノ酸の変化を有するヒトRNase1の変異体を採用する。いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼは以下の配列番号1を含むか、または配列番号1からなる。
【化1】

【0008】
いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、N末端メチオニンを有する配列番号1(配列番号4)を含むか、またはそれからなる。
【化2】

【0009】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼは組換え産生される。いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼは以下の配列番号2を含む核酸分子によってコードされる。
【化3】

【0010】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼをコードする発現ベクターは以下の配列番号3等のリーダー配列をさらに含む。
【化4】

【0011】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼをコードする発現ベクターは、1つ以上の終止コドン(例えば、TAAおよび/またはTGA)をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、RNaseは改善された物性を提供する手段として水溶性成分と共役される。いくつかの実施形態において、水溶性成分は、ポリエチレングリコール(PEG)分子である。いくつかの実施形態において、RNaseは、異常または癌性細胞等の特異的細胞型に対してRNaseを標的にする部分と共役される、もしくは融合される、またはそうでなければ関連(結合)する。
【0013】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、アミノ酸修飾、(例えば、配列番号1を含む、または配列番号1からなる)R4C、G38R、R39G、N67R、G89R、S90R、およびV118Cを含む、ヒトRNase1配列を有するリボヌクレアーゼ(例えば、精製されたリボヌクレアーゼ)を含む組成物(例えば、治療用調製物)を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は(例えば、配列番号2を含む)リボヌクレアーゼ等をコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は発現ベクター等を含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、対象にリボヌクレアーゼを単独でまたは他の薬剤と組み合わせて投与することによって対象(例えば、癌を患っているまたは癌を患っていると思われる被験者)を治療する方法をさらに提供する。投与は、治療的に有効な投与量において1つ以上の時点において行われ得る(例えば、1週間以上1週間につき、1日以上1日につき、または1回以上の治療で治療当たり対象の体重1kgにつき0.01〜100mg/kgで投与される)。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「リボヌクレアーゼの変異体」という用語は、それが由来した非修飾リボヌクレアーゼと関連した、それと同様の酵素活性を保持する(例えば、活性の少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%を保持した)修飾リボヌクレアーゼを指す。酵素活性を測定する試験は、本明細書に記載され、当該技術分野において既知である。変異体は天然酵素の変異体である、または非天然酵素の変異体であり得る。例えば、配列番号1を有する特定の非天然合成リボヌクレアーゼは、配列番号1の変異体を引き起こす1つ以上のアミノ酸の変化を含むように修飾され得る。いくつかの好ましい実施形態において、変異体は、非修飾リボヌクレアーゼと比べて、1つまたは限られた数のアミノ酸置換(例えば、保存的または非保存的置換)、付加、または欠失(例えば、短縮化)を有する。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「RNA分解活性を保持するリボヌクレアーゼの変異体」という用語は、それが由来した非修飾リボヌクレアーゼのRNA分解活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%を有するリボヌクレアーゼの変異体(例えば、配列番号1)を指す。RNA分解活性は、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して分解したRNA試料の可視化および定量化が挙げられるがこれに限定されない、任意の好適なアッセイを使用して測定され得る。いくつかの好ましい実施形態において、変異体は、非修飾リボヌクレアーゼと比べて、1つまたは限られた数のアミノ酸置換(例えば、保存的または非保存的置換)、付加、または欠失(例えば、短縮化)を有する。
【0016】
本明細書に使用される、「実質的に同じ細胞殺滅活性、細胞傷害活性、細胞分裂停止活性、または細胞傷害活性を有するリボヌクレアーゼの変異体」という用語は、それが由来した非修飾リボヌクレアーゼの細胞殺滅活性、細胞傷害活性、細胞分裂停止活性、または細胞傷害活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%を有するリボヌクレアーゼの変異体(例えば、配列番号1)を指す。例えば、いくつかの実施形態において、活性は癌細胞を死滅させるか、またはそうでなければ影響を及ぼす能力である。他の実施形態において、それは動物における腫瘍の大きさを削減する能力である。さらに他の実施形態において、活性は異常な細胞増殖(例えば、癌)に特徴付けられる疾病の症状を削減する能力である。活性は、市販の細胞生存率アッセイ、腫瘍の大きさの測定、および市販の細胞増殖アッセイが挙げられるがこれらに限定されない任意の好適な方法を使用して測定され得る。いくつかの好ましい実施形態において、変異体は、野生型酵素と比べて、1つまたは限られた数のアミノ酸置換(例えば、保存的または非保存的置換)、付加、または欠失(例えば、短縮化)を有する。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「タンパク質の折り畳み特性を保持するリボヌクレアーゼの変異体」は、それが由来した非修飾リボヌクレアーゼと同様のタンパク質の折り畳み特性を示すリボヌクレアーゼの変異体(例えば、配列番号1)を指す。タンパク質の折り畳み特性は、タンパク質の折り畳みの速さ、および適切な構造の折り畳み(それが由来した非修飾リボヌクレアーゼの活性を実質的に保持する折り畳み)を含む。好ましい実施形態において、変異体は、それが由来した非修飾リボヌクレアーゼの速さの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%以上で折り畳まれる。タンパク質の折り畳みのためのアッセイは、当該技術分野で既知であり、分光学的および酵素(例えば、RNA分解)アッセイおよびHPLCが挙げられるがそれに限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、変異体は、野生型酵素と比べて、1つまたは限られた数のアミノ酸置換(例えば、保存的または非保存的置換)、付加、または欠失(例えば、短縮化)を有する。
【0018】
本明細書に使用される、「同様の免疫原性特性を有するリボヌクレアーゼの変異体」という用語は、リボヌクレアーゼの変異体(例えば、配列番号1)を指し、いくつかの実施形態において、それが由来した非修飾リボヌクレアーゼと同じまたはより良い免疫原性特性を実質的に示す。免疫原性特性は、動物における毒性および望ましくない免疫応答(例えば、細胞傷害性免疫応答)を含む。好ましい実施形態において、変異体は、それが由来する非修飾リボヌクレアーゼの毒性または望ましくない免疫応答の100%未満、好ましくは90%未満、より好ましくは80%未満、そしてさらにより好ましくは70%未満を示す。毒性または免疫原性のレベルは、毒性および免疫応答(例えば、サイトカインまたはT細胞応答の方法)に対する市販のアッセイが挙げられるがそれらに限定されない任意の適した方法を使用して測定される。いくつかの好ましい実施形態において、変異体は、野生型酵素と比べて、1つまたは限られた数のアミノ酸置換(例えば、保存的または非保存的置換)、付加、または欠失(例えば、短縮化)を有する。
【0019】
「異種核酸配列」または「異種遺伝子」という用語は、実際は連結されないか、または実際は異なる場所で連結される、核酸配列と連結されるヌクレオチド配列を指すために互換的に使用される。異種DNAは、導入される細胞に対して内在性ではなく、別の細胞から取得される。一般的に、必ずしもではないが、かかる異種DNAは、発現される細胞によって通常産生されないRNAおよびタンパク質をコードする。異種DNAの例には、レポーター遺伝子、転写および翻訳制御配列、選択可能なマーカータンパク質(例えば、薬物抵抗性または治療的利点を与えるタンパク質)等が含まれる。
【0020】
本明細書で使用される「免疫グロブリン」または「抗体」は、特定の抗原と結合するタンパク質を指す。免疫グロブリンは、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、およびヒト化抗体、Fab断片、F(ab’)断片を含むがこれらに限定されず、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEのクラスの免疫グロブリン、および分泌された免疫グロブリン(sIg)を含む。免疫グロブリンは、一般的に2つの同一重鎖および2つの軽鎖を含む。しかし、「抗体」および「免疫グロブリン」は、単鎖抗体および2重鎖抗体も包含する。
【0021】
本明細書で使用する「抗原結合タンパク質」は、特定の抗原と結合するタンパク質を指す。「抗原結合タンパク質」は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、およびヒト化抗体を含む免疫グロブリン;Fab断片、F(ab’)断片、およびFab出現ライブラリー;および単鎖抗体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、特定の免疫グロブリンに接触する抗原の一部を指す。
【0023】
タンパク質またはタンパク質の断片が宿主動物を免疫するために使用される場合、タンパク質の多数の領域が、タンパク質上のある領域または三次元構造と特異的に結合する抗体の産出を誘発することができ、これらの領域または構造は「抗原決定基」と称される。抗原決定基は、抗体と結合するために、無傷抗原(すなわち免疫応答を引き出すために使用される「免疫原」)と競合することができる。
【0024】
「特異結合」または「特異的に結合」という用語は、抗体およびタンパク質またはペプチドの相互作用を指すために使用される場合、相互作用がタンパク質の特定の構造(すなわち、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する、つまり抗体は一般的にタンパク質とではなく、むしろ特定のタンパク質構造を認識して結合する。例えば、抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」および抗体を含有する反応においてエピトープA(または遊離、非標識A)を含有するタンパク質の存在により、抗体と結合した標識されたAの量が削減される。
【0025】
本明細書に使用される「非特異結合」および「バックグラウンド結合」という用語は、抗体およびタンパク質またはペプチドの相互作用を指すために使用される場合、特定の構造の存在に依存しない相互作用を指す(すなわち抗体は、エピトープ等の特定の構造とではなく、一般的にタンパク質と結合する)。
【0026】
本明細書に使用される「対象」は、特定の治療のレシピエントであるヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類等が挙げられるがこれらに限定されない、任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的に、「対象」および「患者」は、ヒト対象に関して本明細書において互換的に使用される。
【0027】
本明細書で使用される「癌を有すると思われる対象」という用語は、癌の兆候である1つ以上の症状(例えば、目立ったしこりまたは癌腫)を示す、または癌の検査をされている(例えば、通常検診中)対象を指す。癌を有すると思われる対象は、1つ以上の危険因子も有し得る。癌を有すると思われる対象は、一般的に癌に関して試験されていない。しかし、「癌を有すると思われる対象」は、予備的診断(例えば、癌腫を示すCTスキャン)を受けたが確認検査(例えば、生検および/または組織学的検査)が行われていない、または癌の段階が知られていない個人を包含する。この用語は、癌を一度有した対象(例えば、寛解中の個人)をさらに含む。「癌を有すると思われる対象」は、場合によっては癌と診断され、場合によっては癌を有さないことが見出される。
【0028】
本明細書に使用される「癌を有すると診断された対象」は、試験されて癌性細胞が見出された対象を指す。癌は、生検、X線、血液検査、および本発明の診断法が挙げられるがこれらに限定されない任意の適した方法を使用して診断され得る。「予備的診断」は、視覚(例えば、CTスキャンまたはしこりの存在)および抗原試験のみを基にしたものである。
【0029】
本明細書で使用される「癌の危険性のある対象」は、特定の癌を開発する1つ以上の危険因子を持つ対象を指す。危険因子は、性別、年齢、遺伝的素因、環境曝露、および癌の以前の発生、既存の非癌疾病、および生活習慣が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される「非ヒト動物」という用語は、げっ歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ類、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類等の脊椎動物が挙げられるがこれに限定されないすべての非ヒト動物を指す。
【0031】
「アミノ酸配列」および「ポリペプチド」または「タンパク質」等の用語は、列挙されたタンパク質分子と関連する完全な天然のアミノ酸配列に、アミノ酸配列を限定するものではない。
【0032】
「試験化合物」および「候補化合物」という用語は、疾病、病気、病的状態、または身体の機能(例えば、癌)の疾患を治療するまたは防ぐために使用される候補である任意の化学的または生物学的実体、医薬物質、薬物等を指す。試験化合物は、既知および可能性のある治療用化合物を含む。試験化合物は、本発明の選別方法を使用して選別することによって医薬物質であることを決定することができる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「試料」という用語は、最も広い意味で使用される。1つの意味としては、任意の源から取得される検体または培養物、ならびに生物学的および環境的試料を含むことを意図する。生物学的試料は、(ヒトを含む)動物から取得されることができ、液体、固形物、組織、およびガスを包含する。生物学的試料は、血漿、血清等の血液製剤を含む。環境的試料は、表面物質、土壌、水、および工業試料等の環境的物質を含む。しかしかかる例は、本発明に適用する試料の種類を限定すると解釈されるべきではない。
【0034】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆物質(例えば、リボヌクレアーゼまたは本発明のリボヌクレアーゼ共役体)の産出のために必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長または断片の所望の活性または機能的な特性(例えば、酵素活性等)が保持される限り、全長コード配列またはコード配列の任意の一部によってコードされ得る。本用語は、構造遺伝子のコーディング領域および遺伝子が全長mRNAの長さと一致するようにどちらか一方の末端から約1kbの距離で、5’および3’末端の両方におけるコーディング領域と隣接して位置する含まれる配列も包含する。コーディング領域の5’に位置する配列およびmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と称される。コーディング領域の3’または下流に位置する配列およびmRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と称される。「遺伝子」という用語は、cDNAおよび遺伝子のゲノム形を包含する。ゲノム形または遺伝子のクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と称された非コード配列で中断されるコーディング領域を含む。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子の区域であり、イントロンはエンハンサー等の調節エレメントを含むことができる。イントロンは、核または一次転写物から削除または「切り出される(スプライシング)」、したがってイントロンは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物において不在である。翻訳の間に、配列または新生ポリペプチドにおけるアミノ酸の順序を指定するために、mRNAは機能する。
【0035】
本明細書で使用される「断片」という用語は、天然タンパク質と比べてアミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列が全長cDNA配列から推定されたアミノ酸配列における対応する位置と同一である場合のポリペプチドを指す。典型的に断片は少なくとも4個のアミノ酸長、好ましくは少なくとも20個のアミノ酸長、大抵は少なくとも50個以上のアミノ酸長であり、様々なリガンドおよび/または基質と組成物の分子間結合に必要なポリペプチドの一部に及ぶ。いくつかの実施形態において、断片は天然タンパク質の活性を持つ。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「精製された」または「精製する」という用語は、試料から不純物および混入物の削除を指す。例えば、抗体は、非免疫グロブリンタンパク質の削除によって精製され、意図した標的分子と結合しない免疫グロブリンの削除によっても精製される。非免疫グロブリンタンパク質の削除および/または意図した標的分子と結合しない免疫グロブリンの削除は、試料における標的反応性免疫グロブリンの割合の増加を引き起こす。別の例において、組換えポリペプチドは宿主細胞において発現され、ポリペプチドは宿主細胞タンパク質の削除によって精製され、組換えポリペプチドの割合は、したがって試料において増加した。
【0037】
本明細書に使用される「発現ベクター」は、特定の宿主生物において操作可能に連結したコード配列の発現に対して必要な所望のコード配列および適切な核酸配列を含む組換えDNA分子を指す。大抵、原核生物における発現に必要な核酸配列は、多くの場合、他の配列とともにプロモーター、オペレーター(オプショナル)、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、ならびに終結およびポリアデニル化シグナルを利用することで知られている。
【0038】
本明細書に使用される「宿主細胞」という用語は、インビトロまたはインビボに位置するかどうかに関わらず、任意の真核または原核細胞(例えば、大腸菌、酵母細胞、哺乳動物細胞、トリ細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞等のバクテリア細胞)を指す。例えば、宿主細胞は遺伝子導入動物において位置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、リボヌクレアーゼ組成物および方法を提供する。リボヌクレアーゼは、(例えば、細胞、組織、または生物における生物学的プロセスの調査または特徴を付けるために)医薬物質および研究薬剤としての使用を見出す。例えば、いくつかの実施形態において、配列番号1を含むリボヌクレアーゼは提供される。配列番号1は、アミノ酸修飾、R4C、G38R、R39G、N67R、G89R、S90R、およびV118C(X#Y、Xが天然アミノ酸の場合、#はヒトRNase1に対する認識された番号方式に基づくアミノ酸の位置であり、YはXを交換する修飾アミノ酸である)を含む天然ヒトRNase1である。本発明は、4C、38R、39G、67R、90R、および118Cの配列を維持するが、1つ以上のさらなるアミノ酸変化も含む配列番号1の変異体も提供する。様々な変異体は、以下に詳細を記載する。
【0040】
本発明のリボヌクレアーゼを、有効な治療分子を産生する多くの特性の均衡を基に同定した。検討した特性は、安定性、病原性細胞に対する細胞傷害性、ウイルス性RNAを含む任意の起源の病原性RNAの分解の有効性、RNase抑制剤による結合の回避、プロテアーゼによる分解に対する抵抗性、標的細胞に対する送達、細胞移入の効率、用量反応特性、薬物動態特性、および人体内の寿命を含んだ。例えば、配列番号1のリボヌクレアーゼは、(本明細書にすべてが参照として組み込まれている)米国特許公開第20050261232号に記載されるQBI−119等の以前に記載した治療リボヌクレアーゼよりも優れるように作られた特性の均衡を有する有用な治療分子を提供する。配列番号1のリボヌクレアーゼは、最適な化合物(例えば、酵素活性、リボヌクレアーゼ抑制剤回避等)を選択するために重要と考えられる可能性のある、ある特徴におけるQBI−119および天然ヒトRNase1に劣るが、全体的に優れた治療剤を提供する。例えば、配列番号1は、天然ヒトRNasel(1%未満)のリボヌクレアーゼ活性のわずかのみを有するが、治療に有効である。
【0041】
本発明のリボヌクレアーゼは、幅広い種類の癌型を含む幅広い種類の疾病状態を治療するための使用を見出す。例えば、配列番号1を、非小細胞肺癌細胞(A549細胞株)、膵臓癌細胞(BxPC3細胞株)、および前立腺癌細胞(DU145細胞株)に対して試験し、1日または1週間につき1〜5回投与された15mg/kg〜100mg/kgの範囲の用量で、65%よりも(および94%に及ぶ)大きい抑制腫瘍増殖が見出された。これは、(QBI−119と同等またはそれ以上であった)抑制の割合および非常に効果的である癌細胞型の多様性の両方に関して、より優れたQBI−119であった。
【0042】
本発明のリボヌクレアーゼは、他の治療剤、担体、賦形剤、または他の成分(例えば、標的部分、水溶性分子等)の有無に関わらず任意の所望の形に製剤化され得る。リボヌクレアーゼを、1人以上の患者に対する1回または複数回の用量の剤形への調整を含む、治療または研究薬剤として出荷および/または保存のための包装および適切な容器を含むキットに詰めることができる。
【0043】
本発明は、リボヌクレアーゼの1つ以上または任意の治療関連特性を著しく変更しないアミノ酸変動を含む配列番号1の変異体をさらに提供する。これらの変異体の実施例を、本明細書に詳細を記載する。例えば、ロイシンとイソロイシンまたはバリンとの、アスパラギン酸とグルタミン酸との、スレオニンとセリンとの単離交換、またはアミノ酸と構造的に関係のあるアミノ酸(例えば、保存的突然変異)との同様の交換は、結果として生じる分子の生物学的活性における主な影響を有さないであろうと考えられる。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、保存的交換を含有する本明細書に開示されたリボヌクレアーゼの変異体を提供する。保存的交換は、それらの側鎖に関係のあるアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝子的にコードされたアミノ酸は、4つのファミリーに分類され得る、(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および(4)無電荷極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、場合によっては芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。同様に、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、(3)脂肪族ヒドロキシルとして別々に随意にグループ分けされるセリンおよびスレオニンを含む脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、(5)アミド(アスパラギン、グルタミン)、および(6)(システインおよびメチオニン)を含むイオウ、(例えば、Stryered.,Biochemistry,pg.17−21,2nd ed,WH Freeman and Co.,1981)のようにグループ分けされ得る。ペプチドのアミノ酸配列における変化が機能的なポリペプチドを生じるか否かは、野生型タンパク質と同様に機能するために、変異体ペプチドの能力を評価することによって容易に決定され得る。1つ以上の交換を有するペプチドは、同じ方法で容易に試験され得る。
【0044】
より珍しくは、変異体は「非保存的」変更(例えば、トリプトファンを含むグリシンの交換)を含む。類似性の小さい変化は、アミノ酸欠失または挿入、または両方をも含むことができる。生物学的活性を消さずにどのアミノ酸残基が置換される、挿入される、または除去され得るか決定するためのガイダンスは、コンピュータープログラム(FADE(Mitchell et al.,(2004).Molec.Simul.30,97−106)、MAPS(Ban et al.,Proceedings of the 8th Annual International Conference on Research in Computational Molecular Biology,2004,205−212),SYBYL(Tripos,Inc,St.Louis,MO)、およびPyMOL(sourceforgeのインターネットウェブサイトで入手可能)が挙げられるがこれらに限定されない)を使用して見出すことができる。
【0045】
RNase1の結晶構造は、例えば、Pousら(Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.2001;57,498−505)およびPousら(J Mol Biol.2000;303,49−60)に記載され、変化の選択の基本として役立つ。さらに、結晶構造は、神経毒由来の好酸球(EDN,RNase2;Swaminathan et al,Biochemistry,2002,41,3341−3352、Mosimann et al J. Mol. Biol.,1996,260,540−552.、Iyer et al J Mol Biol,2005,347,637−655)、好酸球カチオンタンパク質(ECP,RNase 3;Mohan et al Biochemistry 2002;41,12100−12106、Boix et al Biochemistry,1999,38,16794−16801.、Mallorqui−Fernandez et al J.Mol.Biol,2000,300,1297−1307)、RNase4(Terzyan et al,1999,285,205−214.)、およびアンジオゲニン(RNase5;Leonidas et al J.Mol.Biol.1999,285,1209−1233、Leonidas et al Protein Sci.,2001,10,1669−1676、Papageorgiou et al EMBO J.,1997,16,5162−5177、Shapiro et al J.Mol.Biol,2000,302,497−519.)を含む他のヒト膵臓リボヌクレアーゼに使用可能である。
【0046】
変異体は、以下に詳細が記載される変異体のコンビナトリアルライブラリーを産生するための指向進化または他の技法等の方法によって産生され得る。本発明のさらに他の実施形態において、本発明のヌクレオチド配列は、クローン化、加工、局在、分泌、および/または遺伝子産物の発現を修飾する変化が挙げられるがこれらに限定されないヒトRNaseコード配列を変更するために操作され得る。例えば、突然変異は、当業者によく知られている技術を使用して導入され得る(例えば、新しい制限酵素部位に挿入するための部位特異的変異誘発、グリコシル化パターンを変化する、またはコドン優先を変更する等)。いくつかの実施形態において、遺伝子が発現される生物へのコドン使用を最適化するために、変更は本発明のポリペプチドをコードする核酸配列において行われる。
【0047】
例示的な変異体は、置換、短縮化、キメラ等が挙げられるがこれらに限定されない以下に記載される。本発明はこれらの特定の変異体に限定されない。活性部位および基質結合領域ならびに活性部位から離れた変異体の両方は、本発明の範囲内と考えられる。例えば、配列番号1の変異体は、正常ヒトRNAse1と比べてR4C、G38R、R39G、N67R、G89R、S90R、およびV118C変更を含むが、1つ以上の活性または酵素の特性に影響するまたは影響しない1つ以上の追加変更も含む。変異体は、例えば実験データ、コンピューターモデリングを基に、および他のリボヌクレアーゼの比較によって合理的設計によって選択され得る。活性は、所望の特性を含む変異体を選択するためにアッセイを使用して試験され得る(例えば、本明細書にすべてが参照として組み込まれるRaines et al.,J.Biol.Chem,273,34134(1998)、Fisher et al.,Biochemistry37:12121(1998)、Guar et al.,J.Biol.Chem.,276:24978(2001)、Bosch,et al.,Biochemistry,43:2167(2004,)、Lin,J.Biol.Chem.,245:6726(1970)、Bal et al,Eur.J.Biochem.,245:465(1997)、Guar et al.,Mol.Cell.Biochem.,275:95(2005)、Benito et al.,Protein Eng.,15:887(2002)、Ribo et al.,Biol.Chem.Hoppe−seyler,375:357(1994)、DiGaetano et al.,Biochem.J.,358:241(2001)、Trautwein et al.,FEBS Lett.,281:277(1991)、Curran et al.,Biochemistry32:2307(1993)、Sorrentino et al.,Biochemistry42:10182(2003)を参照)。
【0048】
変異体の産出の際の、修飾に対する例示的なアミノ酸の位置は、以下に提供される。1つ以上の部位は、所望どおり修飾され得る。以下の例示的なリストは、(((例えば、所望の特性(例えば、癌細胞殺滅および/またはリボ核酸分解活)を含む)例えば機能的なリボヌクレアーゼを生じるために)例えば、修飾することへの関心によって代表される)野生型ヒトRNase1のアミノ酸番号付けを基にしたそれぞれのアミノ酸の位置の修飾のための有用性の順位付けを提供する。「関心部位」は、同じものの修飾後、リボヌクレアーゼ内に保持されることが望ましい(例えば、リボヌクレアーゼ変異体を作製するための欠失、置換、他の種類の突然変異のために、および/または水溶性ポリマーと共役するために)、本明細書で記載されるリボヌクレアーゼの特徴を基に(例えば、生物学的活性(例えば、リボ核酸分解活性、癌細胞死滅活性、オリゴマー化能等))「高い関心部位」、「中間関心部位」または「低い関心部位」として特徴付けられ得る。例えば、高い関心部位は、1つ以上の所望の活性またはリボヌクレアーゼの特性、高い関心(1〜3、13〜24、31〜39、48〜50、60、66〜71、75〜78、87〜94、105、112〜115、および127〜128)、中間の関心(4〜11、25、27〜30、42〜47、51〜57、59、61〜64、73〜74、79〜83、85〜86、96〜104、106〜109、111、116〜118、および120〜126)、および低い関心(12、26、40〜41、58、65、72、84、95、110、および119)を著しく妨げないように修飾され得るものである。
【0049】
1つ以上の修飾部位が使用できることが理解されよう。好ましくは、選択された部位は高いまたは中間の関心部位である。しかし、意図する適用に対して所望および適切であるため、1つ以上の追加部位は、変化され得る。いくつかの実施形態において、RNaseは、(例えば、野生型ヒトRNaseの部分ではない)メチオニンが(((例えば、大腸菌内で産生される)例えば組換えヒトリボヌクレアーゼ)例えばタンパク質を産生するために使用される方法を通して)タンパク質の第1のアミノ酸として組み込まれるように産生されることが記述されるべきである。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書において描写されるアミノ酸残基の番号付けは、1の数値によってずれる可能性がある(例えば、メチオニンがタンパク質に組み込まれる場合、本明細書に列挙されたヒトRNaseのアミノ酸残基の番号付けは、1ずれる(すなわち、メチオニンが位置1に組み込まれるため、描写されたアミノ酸の番号付けは1つ不足されるであろう、例えば位置1に組み込まれるメチオニンのため残基番号10が実際は残基番号11である可能性がある))。同様に、描画された位置は、対応する数値位置の他の関係したリボヌクレアーゼに適用されることもできる。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明における修飾(例えば、欠失、突然変異等)のための所望の残基は、三次構造および/またはリボヌクレアーゼの安定性の破壊を回避するために選択される。いくつかの実施形態において、これらの残基は、タンパク質(例えば、一般的に溶媒(例えば、水または緩衝液)にさらされる残基)の表面上に存在する。例えば、いくつかの実施形態において、修飾された残基の種類は、結晶構造において傷害されて出現するアミノ酸、リボヌクレアーゼ抑制剤タンパク質と接触する残基、および三次構造(例えば、アルファへリックスおよびベータシート)に関与しないアミノ酸、構造間のループ領域におけるアミノ酸(例えば、アルファへリックスおよびベータシート)ならびにタンパク質の末端の方のアミノ酸(NおよびC末端)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、追加アミノ酸残基は(例えば、RNase類似体の生成のためおよび/または水溶性ポリマーの共役のため)NまたはC末端のどちらかに追加される。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明はリボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞殺減)を保持する間、循環半減期のインビボを増加するために、リボヌクレアーゼのポリマー共役を提供する。いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼはリボヌクレアーゼ抑制剤(RI)からの回避に関与するタンパク質の領域において水溶性ポリマーと共役される。いくつかの好ましい実施形態において、リボヌクレアーゼは、RI(例えば、リボヌクレアーゼとRIとの結合に影響されない領域)からの回避に関与されないタンパク質の領域における水溶性ポリマーと共役される。RIからの回避に関与しない領域の例は、位置1、49、75、または113におけるアミノ酸残基を含む領域が挙げられるがこれに限定されない。したがって、メカニズムの理解は本発明を実践するために必要ではない、および本発明は活性の任意の特定のメカニズムに限定されないが、いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーと生物学的活性(例えば、癌細胞殺滅)を持つリボヌクレアーゼとの共役は、共役ではあるが、RIの回避からリボヌクレアーゼを補助しない。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明は水溶性ポリマーの共役に対するRNaseにおける一意的な機能的な基の組み込みを利用する。例えば、いくつかの実施形態において、システイン分子は、水溶性ポリマーとの共役のために遊離チオール基を提供するために、(例えば、リボ核酸分解活性または他の所望の機能(例えば、癌細胞殺滅能力)の損失なしに)RNaseへと操作される。遊離チオール基は、Rnaseにおいて他に見つからないため、同種の共役を生成するための能力を提供する。他の実施形態において、組換えDNA技術は、直交性の機能とともに対象のRNase(例えば、リボ核酸分解活性の損失をせずに)へ非天然アミノ酸を組み込むために修飾または新規コドンを提供するために利用される。
【0053】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼは、水溶性ポリマーへ(例えば、アミノ酸の側鎖内のアトムに対して)付着位置を提供するために、例えばリジン、システインおよび/またはアルギニン等の1つ以上のアミノ酸残基を含むために修飾される。アミノ酸残基を付加するための技術は、当業者によく知られている(例えば、March,Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure,4th Ed.(New York:Wiley−Interscience,1992)を参照)。
【0054】
本発明は、本明細書に記載される該リボヌクレアーゼに対しての修飾の種類によって限定されない。いくつかの実施形態において、本発明は、デキストラン、炭水化物、アルブミン、担体タンパク質、および抗体(例えば、リボヌクレアーゼの半減期を伸ばすために使用される非標的抗体)を含む基から選択された1つ以上の部分の付着を介して修飾される。
【0055】
本発明は、本明細書に記載されるヒトリボヌクレアーゼとの共役の為に利用される水溶性ポリマーの種類によって限定されない。実際に、任意の生体適合性の水溶性ポリマーは使用され得る。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは非ペプチド性、無毒性、非天然発生および/または生体適合性である。ポリマーの単独、または生体組織(例えば、患者への投与)と連結する別の物質(例えば、リボヌクレアーゼと共役する)の使用と関連する有益な効果が、臨床医(例えば、医師)によって評価されるように、任意の有害な効果より勝る場合、水溶性ポリマーは、生体適合性と考えられる。インビボのポリマーの目的の用途が望ましくない免疫応答(例えば、抗体の形成)を産生しない場合、または免疫応答が臨床医によって評価されるように臨床的に有意または重要であると見なされないかかる応答が産生される場合、非免疫原性に関して、ポリマーは非免疫原性であると考えられる。したがって、いくつかの好ましい実施形態において、水溶性ポリマーは生体適合性および非免疫原である。
【0056】
本発明の水溶性ポリマーは、ヒトリボヌクレアーゼに付着する場合、ポリマーは生理環境等の水性の環境において沈殿しないように選択される。いくつかの実施形態において、ポリマーはヒトリボヌクレアーゼタンパク質との共役方法を基に選択される。例えば、還元的アルキル化を利用する方法について、選択されたポリマーは、重合度が、制御され得るように、単一反応性アルデヒドを有するべきである。ポリマーは、分岐され得るまたは分岐され得ない。好ましくは、最終産物製剤の治療上の使用について、ポリマーは薬学的に受け入れられるであろう。当業者は、ポリマー/タンパク質共役体が治療に使用されるか否か等の考慮、ならびにその場合、所望の用量、循環時間、タンパク質分解に対する抵抗性、および他の考慮を基に所望のポリマーを選択することができるであろう、例えば、これらは、当業者によく知られている方法を使用してインビトロで共役体のリボ核酸分解活性のためにアッセイをすることによって確かめられ得る。
【0057】
水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールのコポリマーおよびプロピレングリコール等のポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチラートポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリル酸)、ポリ(糖類)、ポリ(.アルファ.ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼ、ポリオキサゾリン、ポリ(Nアクリロイルモルホリン)、および上記の任意の組み合わせを含むがこれらに限られない基から選択され得る。
【0058】
ポリマーは、直線的であるまたは分岐され得る(例えば、アルコキシPEGまたは二機能性PEG)。さらに、ポリマーは、多腕(例えば、分岐したPEGまたはポリオールコアに付着したPEG)、樹状であり、および/または分解性結合を含む。ポリマーの内部構造は、任意の多くの異なるパターン(例えば、ホモポリマー、交代性コポリマー、無作為コポリマー、遮断コポリマー、交代性トリポリマー、無作為トリポリマー、および遮断トリポリマーを含むがこれらに限られないパターン)に組織化され得ると考えられる。
【0059】
さらに、ポリマーはリボヌクレアーゼ内で所望の残基と共役するために適している適切な活性化基と「活性化される」ことができる。「活性化した」ポリマーは、リボヌクレアーゼとの反応に対する反応基を持つポリマーを指す、本発明において、(例えば、水溶性ポリマーとヒトリボヌクレアーゼとを共役するために)有用であると考えられる活性化したポリマーおよびタンパク質との共役方法の例は、当業者に知られており、本明細書において全体がそれぞれ参照として組み込まれているZalipsky,Bioconjugate Chem 6,150−165(1995)、Kinstler et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 54,477−485(2002)、およびRoberts et al,Advanced Drug Delivery Reviews 54,459−476(2002)に詳細が記載される。
【0060】
ポリマーは任意の分子量からなることができる。例えば、ポリエチレングリコールについて、好ましい分子量は約2kDa〜約150kDaの間である(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製の際、いくつかの分子は規定された分子量よりも重く、一部は低いことを示している)。所望の治療プロファイル次第で、他の大きさは使用され得る(例えば、所望の持続放出間、生物学的活性における効果がある場合の効果、取り扱いやすさ、抗原性の度合いまたは欠乏および本発明の治療用組成物(例えば、RNaseタンパク質または類似体を含む)に対するポリエチレングリコールの他の既知の効果)。
【0061】
ポリエチレングリコール(PEG)が水溶性ポリマーとして利用された場合、PEGは不活性基でキャッピングされた末端のうちの1つを有することができる。例えば、PEG分子は、EGの形態であるmPEGとも称されるメトキシPEGであり、ポリマーの1末端は、メトキシ(例えば、−OCH)基であるが、他の末端は科学的に修飾され得るおよび標的タンパク質(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)上の反応基との共役に使用される機能的な基(例えば、ヒドロキシル)である。いくつかの実施形態において、本明細書にすべてが参照として組み込まれている、米国特許出願公開第20040235734号に記載されるPEGポリマーは使用される。
【0062】
いくつかの実施形態において、PEGポリマーは1つ以上の弱いまたは分解性結合を含むことができる。例えば、PEGポリマーは、((例えば、患者に存在する場合)例えば、時間とともに加水分解をすることができる)エステル結合を含むことができる。いくつかの実施形態において、分解性結合を含むPEGポリマーの加水分解は、2つ以上の(例えば、親分子よりも低分子量の)断片を産生する。
【0063】
本発明は分解性結合の種類によって限定されない。実際は、PEGポリマーは、炭酸結合、イミン結合、リン酸エステル結合、ヒドラゾン結合、アセタール結合、オルトエステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ペプチド結合、およびオリゴヌクレオチド結合が挙げられるがこれらに限定されない様々な分解性結合の1つ以上を含むことができる。
【0064】
ポリマー自身内の1つ以上の分解性結合の包含が、本発明の共役体の薬物動態特徴を制御するために追加したメカニズムを提供することが考えられる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のRNase−PEG共役体が、患者に投与されることができ、共役体は、投与された場合、皆無かそれに近い酵素活性を持つが、結合分解(例えば、加水分解)等の状態に曝された場合、酵素のリボ核酸分解活性は活性化される。したがって、いくつかの実施形態において、PEG分子内の分解性結合は共役体の特異性および有効性を増加するために使用され得る。
【0065】
本発明の共役体は、ポリマー(例えば、PEG)とヒトリボヌクレアーゼタンパク質との間の結合を含むことができると考えられる。いくつかの実施形態において、結合は安定結合である(例えば、アミド結合、カルバミン酸結合、アミン結合、チオエーテル/硫化結合、またはカルバミド結合)。いくつかの実施形態において、結合は、加水分解的に分解される(例えば、RNaseの放出を(例えば、RNase上に残ったポリマー(例えば、PEG)の一部なしに)許す)。本発明は利用される分解性結合の種類に限られない。実際は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドが挙げられるがこれらに限定されない様々な結合が本明細書において考えられる。これらの結合は、RNaseタンパク質(例えば、C末端カルボキシル基、またはアミノ酸側鎖において)および/またはポリマー(例えば、当業者が知っている方法を使用)のヒドロキシル基のどちらかの修飾によって調製され得る。
【0066】
水溶性ポリマー(例えば、PEG)とリボヌクレアーゼタンパク質分子の比率は、反応混合物におけるそれらの濃度も同様に、変動する可能性がある。一般的に、(例えば、皆無かそれに近い、未反応タンパク質またはポリマーが存在する場合の、(例えば、ポリマーと1、2、3、4以上の部位と共役するための)反応の効率に関する)最適比は、(例えば、選択されたポリマー(例えば、PEG)の分子量、利用される共役化学、多くの標的関心部位等を使用して)測定され得る。例えば、いくつかの実施形態において、非特異性共役反応(例えば、PEG化反応)は、実行されることができ、続いて(例えば、ポリマー(例えば、PEG)の数とそれぞれのRNaseと共役することを基にRNaseを分離するため)後の精製を実施する。
【0067】
いくつかの実施形態において、共役体は組成物内に存在する。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は複数の共役体を含み、それぞれのタンパク質は、1〜3個のタンパク質と共有結合される水溶性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、組成物は複数の共役体を含み、それぞれのタンパク質は、タンパク質に付着した1、2、3、4、5、6個以上のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、組成物は共役体の集団を含み、共役体の(例えば、65%を超える、70%を超える、75%を超える、80%を超える、85%を超える、90%を超える、95%を超える、97%を超える、98%を超える、99%を超える)大部分は、同じ数の(例えば、1、2、3個以上)のポリマー(例えば、PEG分子)と共有結合される。いくつかの実施形態において、1、2、3個以上のポリマーは、オリゴマー形成されたリボヌクレアーゼと共役される。本発明は、オリゴマー内に存在するリボヌクレアーゼ分子の数によって限定されない。実際に、様々なオリゴマーは、2、3、4、5、6以上のリボヌクレアーゼのオリゴマーが挙げられるがこれらに限定されない1つ以上の水溶性ポリマーと共役され得る。いくつかの実施形態において、本発明は、単一の(例えば、モノPEG化である)水溶性ポリマーを含む複数のRNaseを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、複数のRNaseは、モノマー(一量体)、二量体、三量体、および/またはRNaseの高次複合体(すなわちオリゴマー)を含む。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマーRNase共役体)は、酵素(例えば、リボ核酸分解)活性のかなりの部分を保持する。いくつかの実施形態において、共役体は、未修飾(例えば、非共役された)リボヌクレアーゼの酵素活性の約1%〜約95%を持つ。いくつかの実施形態において、共役体は、未修飾リボヌクレアーゼよりも多くの活性を持つ。いくつかの実施形態において、修飾ヒトリボヌクレアーゼは、(例えば、当業者によく知られているインビトロアッセイで測定されたとおり)リボ核酸分解活性を持つ未修飾親リボヌクレアーゼと比較して、約1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、100%以上を持つ。
【0069】
他の好ましい実施形態において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマーRNase共役体)は、別の所望の特性(例えば、リボ核酸分解活性(例えば、癌細胞殺滅能力)以外)のかなりの部分を保持する。本発明を実施するためにメカニズムの理解は必要ない、および本発明は作用の任意の特定のメカニズムに限定されないが、いくつかの実施形態において、修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマーRNase共役体)は、(例えば、ヒトリボヌクレアーゼタンパク質の他の特徴によって)リボ核酸分解活性が不在の際に(例えば、70%未満、60%未満、50未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満の非修飾リボヌクレアーゼ)、標的細胞(例えば、癌細胞または微生物(例えば、ウイルス)に感染した細胞)を殺滅することができる。
【0070】
本発明は、水溶性ポリマーと本発明のヒトリボヌクレアーゼとの共役の為に利用される方法によって限定されない。複数の種類の化学が当業者に知られており、本発明の組成物の生成の際の用途を見つけられ得る。これらの方法は、(例えば、Zalipsky,Bioconjugate Chem 6,150−165(1995)、Kinstler et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 54,477−485(2002)、およびRoberts et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 54,459−476(2002)を参照)に詳細が記載される。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の活性化したポリマーとヒトリボヌクレアーゼとを共役するために使用される共役化学を利用する。
【0071】
例えば、N末端共役したRNase(例えば、N末端PEG化したRNase)の取得に対して、還元的アルキル化が使用され得る。ポリマー(例えば、PEG)間の結合基なしで付着するための方法およびタンパク質部分は、FrancisらのIn:Stability of protein pharmaceuticals:in vivo pathways of degradation and strategies for protein stabilization(Eds.Ahern.,T.and Manning,M.C.)Plenum,N.Y.,1991)に記載される。いくつかの実施形態において、カルボキシメチルmPEGのNヒドロキシサクシニミジルエステルの使用に関わる方法が使用される(例えば、本明細書に全体が参照として組み込まれる1998年10月20日に発行された米国特許第5,824,784号を参照)。
【0072】
いくつかの実施形態において、PEGリボヌクレアーゼ共役体は、共役後、精製される。本発明は、利用される精製プロセスの種類に限定されない。実際は、様々なプロセスが利用され、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および当業者によく知られる他の方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
例えば、いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーRNase共役体は、共役体(例えば、単一のポリマーと共役結合された共役体)の1つ以上の異なる種類を取得するために精製され得る。いくつかの実施形態において、共役反応の産物は、ヒトリボヌクレアーゼ当たり(例えば、平均)1、2、3、4個以上のポリマー(例えば、PEG)のどこからでも取得するために、精製される。いくつかの実施形態において、ゲルろ過クロマトグラフィーは、異なる数のポリマーに共役結合するリボヌクレアーゼを分離する/分割するため、または非共役タンパク質からまたは非共役ポリマーからの共役体を分離するために使用される。ゲルろ過カラムは、当業者によく知られており、複数の源から入手可能である(例えば、Amersham Biosciences、Piscataway、NJのSUPERDEXおよびSEPHADEXカラム)。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明は、水溶性ポリマーヒトリボヌクレアーゼ共役体を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は癌を治療するために患者に投与される。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、水溶性ポリマーヒトリボヌクレアーゼ共役体を含む組成物を投与することを含む癌治療方法を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明の治療組成物は抗体およびリボヌクレアーゼを含む。抗体は、細胞または組織特異的標的、および/または追加治療利点を提供することができる。以下の表は、リンパ腫および白血病に対する有毒な負荷量を保有する、3つの抗体共役体を含むいくつかの癌治療抗体のメカニズムを記載する。(Drug Discovery Today,Vol.8,No.11June2003)。共役体のうちの2つ、ZEVALINおよびBEXXARは、毒素として放射性ヨードを保有し、3つ目のMYLOTARGは、細胞傷害抗腫瘍抗生物質、細菌発酵から単離されたカリチアマイシンを保有する。Mylotarg抗体は、80%を超える急性骨髄性白血病(AML)患者において見られる、白血病性芽球の表面上に発現されるCD33抗原と特異的に結合する。この共役体における抗体は、ヒト起源由来のアミノ酸配列の約98.3%を有する。
【表1】




【0076】
これらの製品において使用された標的抗体または製剤のうちのいずれかは、本発明の組成物および方法によって採用され得る。
【0077】
一般的に、毒素を標的とする最も特異的な方法は、腫瘍細胞に特異的な表面抗原を認識するために設計されるモノクローナル抗体および抗体断片の使用である。正常細胞は表面抗原が欠乏するため、それらは毒素共役体によって標的とされない、および殺減されない。全抗体は2つのドメイン、抗体に親和性および結合特異性を与える可変ドメイン、および宿主生物において免疫応答を刺激するために免疫システムの他の部分と相互作用する定常ドメインを有する。可変ドメインは抗体の標的と結合する相補性決定領域(CDR)からなり、CDRと抗体の他の部分とを固定するフレームワーク領域であり、CDRの形を維持することに役立つ。それぞれの抗体における6つのCDRは、異なる抗体間の長さおよび配列が異なり、それらの標的マーカーに対する抗体の特異性(認識)および親和性(結合)の主な原因である。
【0078】
抗体送達ベクターに加えて、毒性分子は、ペプチド、ポリマー、デンドリマー、リポソーム、ポリマーナノ粒子、および遮断コポリマーミセルを含むいくつかの他の特異的および非特異的ベクターを使用して癌細胞に送達され得る。例えば、黄体ホルモン‐放出ホルモンを結合するペプチドは、卵巣癌細胞に対して小分子毒素、カンプトテシンを標的とするために使用されている(Journal of Controlled Release,2003,91,61−73.)。
【0079】
リボヌクレアーゼは、ヒト細胞において、特に癌細胞に対して有効な毒素である。本明細書にすべてが参照として組み込まれている以下の参考文献は、いくつかのリボヌクレアーゼの化学共役体と(タンパク質および抗体を含む)標的タンパク質を記載する。Newton et al.(2001),Blood97(2):528−35、Hursey et al.(2002)Leuk Lymphoma 43(5):953−9、Rybak et al.,(1991)Journal of Biological Chemistry 266(31):21202−7、Newton et al.(1992)Journal of Biological Chemistry 267(27):19572−8、Jinno and Ueda(1996)Cancer Chemother Pharmacol 38:303−308、Yamamura et al.(2002)Eur J Surg 168:49−54、Jinno et al.(1996)Life Sci 58:1901−1908、Suzuki et al.(1999)Nature Biotechnology 17(3):265−70、Rybak et al.(1992),Cell Biophys 21(1−3):121−38、Jinno et al.(2002)Anticancer Res.22:4141−4146。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載される1つ以上のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む組換えコンストラクトを提供する。本発明のいくつかの実施形態において、コンストラクトは、配列番号2の配列、または正配向もしくは逆配向で関係した配列が挿入されている、プラスミドもしくはウイルス性ベクター等のベクターを含む。さらに他の実施形態において、異種構造配列は翻訳開始および終結配列で適切な層において構築される。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態において、適切なDNA配列は、任意の様々な手順を使用してベクターへ挿入される。一般的には、DNA配列は、当業者に知られている手順によって適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。適切なベクターの多くは、当業者に知られており、市販されている。かかるベクターは、以下のベクターが挙げられるがこれらに限定されない。1)細菌−−pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)、pET22b、pET26b、pET30b(Novagen brand、EMD Chemicals)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pBSKS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene);ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);および2)真核−−pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、PXTl、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。他のどのプラスミドまたはベクターは、宿主において複製可能および生存可能である限り使用され得る。本発明のいくつかの実施形態において、哺乳動物発現ベクターは、複製の起源、適切なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、および5’隣接非転写配列を含む。他の実施形態において、SV40スプライス由来のDNA配列、およびポリアデニル化部位は、必要とされる非転写遺伝因子を提供するために使用され得る。
【0082】
本発明のある実施形態において、発現ベクターにおけるDNA配列は、mRNA合成を指令するために、動作可能なように適切な発現制御配列(プロモーター)と結合される。本発明において有用なプロモーターは、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lacまたはtrp、ファージラムダPLおよびPR、T3およびT7プロモーター、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)最初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、ならびにマウスメタロチオネインIプロモーターおよび原核または真核細胞またはそれらのウイルスにおいて、遺伝子の発現を制御することで知られる他のプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の他の実施形態において、組換え発現ベクターは、複製の起源および宿主細胞の形質転換(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素もしくは真核細胞培養に対するネオマイシン抵抗性、または大腸菌におけるテトラサイクリン、カナマイシン、またはアンピシリン抵抗性)を許す選択可能なマーカーを含む。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態において、高等真核生物による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって増加される。エンハンサーは、DNAのシス作用性要素であり、転写を増加するために、大抵はプロモーター上で作用する約10〜300bpである。本発明において有用なエンハンサーは、複製起点bp100〜270の後半側におけるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起源の後半側におけるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0084】
他の実施形態において、発現ベクターは、翻訳開始および転写終結に対するリボソーム結合部位も含有する。本発明のさらに他の実施形態において、ベクターは発現を増幅するために適切な配列も含むことができる。
【0085】
さらなる実施形態において、本発明は、上記のコンストラクトを含有する宿主細胞を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、宿主細胞は高等真核細胞である(例えば、哺乳動物または昆虫細胞)。本発明の他の実施形態において、宿主細胞は下等真核細胞である(例えば、酵母細胞)。本発明のさらに他の実施形態において、宿主細胞は原核細胞であり得る(例えば、細菌細胞)。宿主細胞の特定の例は、エシェリキア・コリ、ネズミチフス菌、枯草菌、ならびにシュードモナス、ストレプトマイセス、およびスタフィロコッカス属内の様々な種、ならびに出芽酵母、分裂酵母、ショウジョウバエS2細胞、スポドプテラSf9細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞、サル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、(Gluzman、Cell 23:175[1981])、C127、3T3、293、293T、HeLa、およびBHK細胞株が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
宿主細胞におけるコンストラクトは、組換え配列によってコードされた遺伝子産物を産生するために従来の方法で使用され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞へのコンストラクトの導入は、カルシウムリン酸形質移入、DEAEデキストラン媒介形質移入、形質転換、または電気穿孔によって成し遂げられ得る。あるいは、本発明のいくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは従来のペプチドシンセサイザーによって合成的に産生され得る。
【0087】
タンパク質は、適切なプロモーターの制御下で哺乳動物細胞、酵母、細菌、または他の細胞において発現され得る。細胞を含まない翻訳システムは、本発明のDNAコンストラクトに由来するRNAを使用して、かかるタンパク質を産生するためにも採用され得る。適切なクローン化ならびに原核および真核宿主と使用するための発現ベクターは、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989)に記載される。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態において、適切な宿主株の形質転換および適切な細胞密度への宿主株の増殖後、選択されたプロモーターは、適切な手段によって誘発され(例えば、温度変化または化学作用による誘発)、細胞は追加の期間培養される。本発明の他の実施形態において、細胞は典型的に遠心分離によって収集され、物理的または化学的手法によって破砕され、さらなる精製のために生じた粗エキスを保持される。本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質の発現において採用された微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の簡便な方法によって破砕され得る。
【0089】
適切な組換え産生方法の例は、アンピシリン(例えば、pET22b)またはカナマイシン(例えば、pET−26b、pET−30b)等の薬物抵抗性を与えるおよびリボヌクレアーゼタンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミドの使用を含む。遺伝子を内部に持つプラスミドは、大腸菌細胞株に形質転換される。使用され得る細胞は、大腸菌BまたはK株およびHB101、JM109、DHa5、BL−21AI、およびBL21DE3等の関係する変異体株が挙げられるがこれらに限定されない。リボヌクレアーゼタンパク質の発現は、アラビノースまたはラクトースまたはイソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を含む他の類似体等の炭水化物の添加による発酵の間に誘発され得る。リボヌクレアーゼタンパク質は、可溶製品としてまたは封入体において産生され得る。可溶性の産生について、タンパク質は、カラムクロマトグラフィーを使用して以下のように、単離され、精製される。封入体産生について、細胞は機械的に、酵素的に、または/および化学的に溶解される。封入体を含有する細胞ペレットは、ダイアフィルトレーションまたは遠心分離を含む複数の方法によって、可溶性物質から分離される。封入体は、尿素または塩酸グアニジン等の変性剤で可溶化される。低分子量のチオール(例えば、ジチオスレイトール)またはトリス(2カルボキシエチル)ホスフィン等の薬剤の削減は、追加され得る。酸の添加は、ろ過および/または遠心分離によって溶液から削除され得る沈殿物の形成を生じる。
【0090】
タンパク質は、タンパク質の折り畳みの補助をするために様々な薬剤を含むことができる緩衝液に変更することによって折り畳まれる。かかる試薬の例は、アルギニン、ポリエチレングリコール、スルホベタイン、界面活性剤、有機酸塩および/またはカオトロープを含む。緩衝液は、第1のカラムクロマトグラフィーステップとの適合性のために再度変更され、沈殿はろ過または遠心分離によって取り出され得る。カラムステップは、陰イオン交換、陽イオン交換、および疎水性の相互作用を含む。陰イオン交換樹脂の例は、Q Sepharose XL、UNO Q−1、Poros50HQ、Toyopearl QAE550c、Separon HemaBio1000Q、Q−Cellthru Bigbeads Plus、Q Sepharose HP、Toyopearl SuperQ650s、Macro−Prep25Q、TSK−Gel Q−5PW−HR、Poros QE/M、Q Sepharose FF、Q HyperD20、Q Zirconia、Source30Q、Fractogel EMD TMAE650s、およびExpress−Ion Qが挙げられるがこれらに限定されない。陽イオン交換樹脂の例は、SP Sepharose XL、Poros50HS、Toyopearl SP550c、SP Sepharose BB、Source30S、TSKGel SP−5PW−HR20、Toyopearl SP650c、Heparin Sepharose FF、SP Sepharose FF、CM Sepharose FF、Heparin Toyopearl650m、SP Toyopearl650m、CM Toyopearl650m、Ceramic Heparin HyperD M、Ceramic S HyperD20、およびCeramic CM HyperD Fが挙げられるがこれらに限定されない。疎水性の相互作用樹脂の例は、TSK−gel Phenyl−5PW、TSK−gel Ether−5PW、TSK−gel Butyl−NPR、Toyopearl Butyl−650S、Toyopearl Ether−650S、Toyopearl Phenyl−650S、Toyopearl Butyl−650M、Toyopearl Ether−650M、Toyopearl Phenyl−650M、Butyl− Sepharose4FF、Octyl−Sepharose4FF、Octyl−Sepharose CL−4B、およびPhenyl−Sepharose6FF(高または低置換)が挙げられるがこれらに限定されない。最終製品は、長期保存のために中性緩衝液に交換される。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、対象生物(例えば、ヒトおよび獣医学動物が挙げられるがこれらに限定されない哺乳動物対象)またはインビトロおよび/またはエックスビボ細胞、組織、および臓器における異常細胞、組織、臓器、または病態および/もしくは病状を治療するために使用される。その際、様々な疾病および病理学は、本方法および組成物を使用して治療または予防法を受け入れられる。これらの疾病および状態の限定されない例示的な一覧は、乳癌、前立腺癌、リンパ腫、皮膚癌、膵臓癌、結腸癌、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣癌、脳癌、原発性脳癌腫、頭頸部癌、神経膠腫、神経膠芽腫、肝癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌腫、乳癌腫、卵巣癌腫、肺癌腫、小細胞肺癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌腫、精巣癌腫、膀胱癌腫、膵臓癌腫、胃癌腫、直腸癌腫、前立腺癌腫、尿生殖器癌腫、甲状腺癌腫、食道癌腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌腫、腎臓細胞癌腫、子宮内膜癌腫、腎皮質癌腫、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド癌腫、絨毛癌、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頸部過形成、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球白血病、ヘアリー細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性多血症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部肉腫、骨肉腫、原発性マクログロブリン血症、および網膜芽細胞腫等、TおよびB細胞媒介自己免疫疾病;炎症性疾病;感染症;過剰増殖疾病;AIDS;変性状態、血管病等が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、治療されている癌細胞は転移性である。他の実施形態において、本発明のRnaseは癌幹細胞を標的にする。
【0092】
癌を有する危険性があると確定された対象において、本発明の組成物は、好ましくは、発生する場合には、血管新生、増殖を減少するためおよび/または癌細胞の死滅を誘発する(例えば、アポトーシス)ために有効な状態下で対象に投与される。
【0093】
本発明は、医薬組成物をさらに提供する(例えば、上記の細胞殺滅組成物を含む)。本発明の医薬組成物は、局所的または全身的治療が望ましいか否か、および治療される範囲によっていくつかの方法で投与され得る。投与は、(眼から腟および直腸送達を含む粘膜までを含む)局所的、(例えば、噴霧器を含む粉末またはエアロゾルの吸入または吹送法、気管内、鼻腔内、上皮および経皮による)肺、経口または非経口的であることができる。非経口的投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射もしくは注入、または頭蓋内、例えばくも膜下腔内もしくは脳室内投与を含む。
【0094】
局所的投与のための医薬組成物および製剤は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、点滴、坐薬、スプレー、液体、および粉末を含むことができる。従来の医薬用担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等は、必要である、または望ましくあり得る。
【0095】
経口投与のための組成物および製剤は、粉末または顆粒、水または非水性培地における懸濁液または溶液、カプセル、サシェ剤または錠剤を含む。増粘剤、調味料、希釈液、乳化剤、分散助剤または結合剤は、望ましくあり得る。
【0096】
非経口的、くも膜下腔内、または脳室内投与のための組成物および製剤は、浸透エンハンサー、担体化合物、および他の薬学的に許容される担体または賦形剤等に限定されないが緩衝液、希釈液、および他の適切な添加物を含有することもできる無菌水溶液を含むことができる。
【0097】
本発明の医薬組成物は、溶液、乳濁液、およびリポソーム含有製剤が挙げられるがこれらに限定されない。これらの組成物は、予め形成された液体、自己乳化型固形物および自己乳化型半固形物を含むがこれらに限定されない様々な成分から生成され得る。
【0098】
便利に単位用量剤形で提示され得る本発明の医薬製剤は、医薬業界においてよく知られている従来の技術によって調製され得る。かかる技術は、医薬用担体または賦形剤と活性成分とを関連させるステップを含む。一般的に、製剤は、一律におよび本質的に活性成分と液体担体または細かく分割された固体担体またはその両方と関連させることによって、調製され、必要であれば製品を形づくる。
【0099】
本発明の組成物は、錠剤、カプセル、液体シロップ、ソフトジェル、坐薬、および浣腸等に限定されないが任意の多くの可能な剤形に製剤化され得る。本発明の組成物は、水性、非水性または混合した培地において懸濁液としても製剤化され得る。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/またはデキストランを含む懸濁液の粘性を増加する物質をさらに含有することができる。懸濁液は、安定剤も含有することができる。
【0100】
本発明の一実施形態において、医薬組成物は、製剤化され得、フォーム剤として使用される。医薬フォーム剤は、限定されないが乳濁液、マイクロ乳濁液、クリーム、ゼリー、およびリポソーム等の製剤を含む。基本的に似た性質ではあるが、これらの製剤は最終製品の成分および硬さによって変化する。
【0101】
投与の好ましい方法は、静脈内またはIP注射による。治療するために、代わりに腫瘍に注射を使用することができる。いくつかの実施形態において、投与は、追加期間(例えば、数日から数ヶ月)の間、アジュバント治療として継続される。
【0102】
本発明の組成物は、医薬組成物において従来法で見られる他の補助成分をさらに含有することができる。したがって、例えば組成物、例えば、鎮痒薬、収斂薬、局所的麻酔薬または抗炎症剤等の追加、適合的、医薬活性物質を含むことができ、色素、調味料、保存料、抗酸化物質、乳白剤、増粘剤、および安定剤等の本発明の組成物の物理的に製剤化する様々な剤形に有用的な追加物質を含むことができる。しかし、かかる物質は、添加された際に、本発明の組成物の成分の生物学的活性を過度に妨げるべきではない。製剤は、無菌化され得、望む場合、有害に製剤の活性医薬物質と相互作用しない、助剤、例えば潤滑剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝液、着色剤、調味料、および/または芳香物質等と混合される。
【0103】
いくつかの好ましい実施形態において、リボヌクレアーゼは、同時にまたは経時的に、他の医療行為とともに同時投与される。例えば、癌治療のために、癌治療において日常的に使用される任意の腫瘍溶解剤は、本発明の組成物および方法で同時投与され得る。例えば、米国食品医薬品局は、米国での使用が許可された腫瘍溶解剤の処方集を維持する。U.S.F.D.A.に対応する国際機関は、同様の処方集を維持する。表2は、米国での使用を許可した例示的な抗悪性腫瘍薬の一覧を提供する。当業者は、すべての米国で許可された化学療法において必要な「製品標識」が、例示的な薬剤に対する許可された表示、服用情報、毒性データ等を記載することを理解するであろう。一部の例では、本発明の組成物との同時投与は、かかる化合物の低投与量を許容し、その結果毒性を削減することが考えられる。
【表2】








【0104】
いくつかの実施形態において、本発明のRNaseまたはその変異体は、相補性を利用して標的細胞に送達される。例えば、いくつかの実施形態において、RNaseの2つ以上の断片は細胞へ別々に送達される。断片は機能的な酵素を形成するために再連結する。いくつかの実施形態において、2つのタンパク質断片は送達される。他の実施形態において、RNaseの断片をコードする核酸を含むベクターは、細胞または生物に別々に導入される。
【0105】
相補性による送達のための適切な断片は、活性について、断片をスクリーニングすることによって(例えば、細胞培養アッセイにおいて)測定され得る。好ましい断片は、機能的な酵素を形成するために急速に再連結するものである。酵素活性は、本明細書に開示されるものが挙げられるがこれらに限定されない、任意の適した方法を使用して測定される。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明は、SペプチドおよびSタンパク質を産生するためにRNaseの消化を利用する(例えば、Hamachi et al.,Bioorg Med Chem Lett 9,1215−1218(1999)、Goldberg and Baldwin,Proc Natl Acad Sci,96,2019−2024(1999)、Asai et al.,J Immun Meth,299,63−76(2005)、Backer et al.,J Cont Release,89,499−511(2003)、Backer et al.,Bioconj Chem,15,1021−1029(2004)を参照)。例えば、スブチリシンによるウシRNaseAの消化は、アラニン20とセリン21との間の切断によって主に2つの断片において生じる。短い断片(アミノ酸1〜20)は、Sペプチドとして称されるが、長い断片(アミノ酸20〜124)はSタンパク質として称される。2つの断片は中性pHにおいて堅く結合し、場合によってはRNaseまたはRNase’として称される。RNaseは活性リボヌクレアーゼである。Sペプチド−Sタンパク質の相互作用は、親和性精製に対して、ならびに造影剤または薬を標的にするために、三次ドッキングシステムにおいて使用されている。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、ヒトリボヌクレアーゼに対してSペプチド−Sタンパク質を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明のRNaseまたはその変異体は、RNaseをコードする核酸として提供される。細胞への遺伝子情報を保有する分子の導入は、ネイキッドDNAコンストラクトの直接注射、該コンストラクトを有する金粒子による衝突、および例えばリポソーム、バイオポリマー等を使用して遺伝子導入を媒介した高分子が挙げられるがこれらに限定されない任意の様々な方法によって達成される。好ましい方法は、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが挙げられるがこれらに限定されないウイルスに由来する遺伝子送達媒体を使用する。レトロウイルスと比較して高効率のため、アデノウイルス由来のベクターは、インビボで宿主細胞へ核酸分子を移動するための好ましい遺伝子送達媒体である。アデノウイルス性ベクターは、動物モデルにおける様々な固形腫瘍におよび免疫欠乏マウスにおけるヒトの固形腫瘍の異種移植に、非常に効率の良いインビボ遺伝子導入を提供することが示されている。アデノウイルス性ベクターの例および遺伝子導入の方法は、それぞれが本明細書にすべてが参照として組み込まれている、PCT文献国際公開第00/12738号および国際公開第00/09675号および米国特許出願第6,033,908号、第6,019,978号、第6,001,557号、第5,994,132号、第5,994,128号、第5,994,106号、第5,981,225号、第5,885,808号、第5,872,154号、第5,830,730号、および第5,824,544号に記載される。
【0108】
ベクターは、様々な方法で対象に投与され得る。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、ベクターは直接注射を使用して腫瘍または腫瘍に関連する組織に投与される。他の実施形態において、投与は血液またはリンパの循環を通して行われる(例えば、本明細書にすべてが参照として組み込まれているPCT文献第99/02685号を参照)。アデノウイルスベクターの例示的な投与レベルは、好ましくは10〜1011の灌流液に添加されたベクター粒子である。
【0109】
投薬は、数日から数ヶ月続く治療の経過とともに、または治癒が達成されるまで、または病状の減少が達成されるまで、重症度および治療される病状の応答性に依存する。最適な投薬スケジュールは、患者の体内における薬物の蓄積の測定結果から計算され得る。投与する医師は、最適な用量、投薬手順、および繰り返し率を容易に決定することができる。最適用量は、個々の医薬組成物の相対力によって異なることができ、一般的にインビトロおよびインビボ動物モデルにおいてまたは本明細書に記載される例を基に、有効であることが分かったEC50sを基に推測される。一般的に、用量は1〜240分間の期間(例えば、2〜60分間および好ましくは15〜45分間)、体重1kgにつき0.01μg〜100g、例えば体重1kgにつき0.1〜1000mg間、好ましくは体重1kgにつき0.1〜500mg間、およびさらにより好ましくは体重1kgにつき0.1〜200mg間(例えば、体重1kgにつき1〜100mg)である。用量は、所望の効果(例えば、腫瘍の大きさまたは癌性細胞の数の減少)を得るために、必要な度に、例えば1日1回以上から週または月に1回以上、投与され得る。いくつかの実施形態において、組成物は、5〜60分間(例えば、30分)の期間、0.1〜10mg間(例えば、1mg)の用量において毎週投与される。治療する医師は、測定された滞留時間および体液または組織における薬物の濃度を基に投薬の繰り返し率を推測することができる。成功的な治療後、毎日1回から20年に1回、病状の再発を防ぐために、対象が維持療法を受けることが望ましくあり得る。いくつかの好ましい実施形態において、所望の治療効果を達成するために、用量は毎日、毎週、または毎月0.25〜1000mg/kgである。いくつかの好ましい実施形態において、所望の治療効果を達成するために、用量は毎日、毎週、または毎月、50mcg/m〜400mcg/mである。薬物は、場合によっては、薬物の量(重量)とは対照的に、用量につき活性の単位でも投薬される。
【0110】
全文献、特許、特許出願、および上記の明細書に記載された受け入れ番号によって同定される配列は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、特許請求される本発明が、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。本明細書に記載される組成物および方法の機能的な特徴を著しく変更しない、記載される本発明の組成物および方法の修正および変形は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸修飾R4C、G38R、R39G、N67R、G89R、S90R、およびV118Cを有するヒトRNase1配列を有するリボヌクレアーゼを含む組成物。
【請求項2】
前記リボヌクレアーゼは配列番号1を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リボヌクレアーゼは配列番号1からなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記リボヌクレアーゼは組換え産生される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記リボヌクレアーゼは配列番号2を含む核酸分子によってコードされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載されるリボヌクレアーゼを含む、治療用調製物。
【請求項7】
請求項1に記載されるリボヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項8】
請求項7に記載の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象の治療方法。
【請求項10】
前記リボヌクレアーゼは、1週間以上にわたり、1週間当たり前記対象の体重1kgにつき0.01〜100mgで投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リボヌクレアーゼは、1日以上にわたり、1日当たり前記対象の体重1kgにつき0.01〜100mgで投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記リボヌクレアーゼは、1回以上の治療で、治療当たり前記対象の体重1kgにつき0.01〜100mgで投与される、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2012−504423(P2012−504423A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530249(P2011−530249)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059268
【国際公開番号】WO2010/039985
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510098940)クインテッセンス バイオサイエンシズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】