治療用組成物及びその使用
経口、胃、及び消化器感染の予防及び治療、及び特に人工呼吸器に関連する肺炎の予防のための薬剤の調製における液体製剤の使用、並びに液体経腸及び腸管外栄養供給組成物。これらの栄養供給組成物は、人工呼吸器に関連する肺炎の予防における使用に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口、胃、及び消化器感染の予防及び治療のため、及び特に人工呼吸器に関連する肺炎の予防のための薬剤の調製における液体製剤の使用、並びに液体経腸管栄養供給組成物に関する。これらの栄養供給組成物は、人工呼吸器に関連する肺炎の予防における使用に適している。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素は、胃中の酸と組み合わせた唾液中の亜硝酸塩の反応から胃中に自然に形成される。
【0003】
亜硝酸塩からのNOの生成は、次のメカニズムを通ると考えられている。
【0004】
【化1】
【0005】
胃中の胃酸は、微生物を破壊するのに十分ではない場合があり、従って、その場合には、胃中のNOの生成が、これらの微生物の死滅を補助することがあると考えられている(McKnightら、「ヒトにおける食事の硝酸塩からの胃中の一酸化窒素の化学合成(Chemical Synthesis of Nitric Oxide in the Stomach from Dietary Nitrate in Humans)」、Gut 1997年;40(2):211−4)。
【0006】
近年、一酸化窒素[NO]及び一酸化窒素先駆物質の製薬用途において多大な関心が寄せられている。F.C.Fangによって調査されたように(1997年)(J.Clin.Invest.99(12)2818−2825(1997年))、一酸化窒素は、抗菌特性を有することが証明されている。
【0007】
WO03/032928において、臨床的有効量の一酸化窒素が溶解又は分散されている溶液を配合することが可能であることが発見された。当時は、これらの溶液は、特定の呼吸器疾患の治療のために、霧状にされ、肺中に噴霧される。
【0008】
一酸化窒素の人工的供給を論じている他の文献もいくつかある。
【0009】
WO95/22335(Benjamin & Dougal)は、細菌、ウイルス、又は真菌による疾患の治療のための投薬形態であって、製薬的に許容しうる酸性化剤、亜硝酸塩イオンの製薬的に許容しうる源、若しくは、そのための硝酸塩先駆物質、及び製薬的に許容しうるキャリヤー若しくは希釈剤を含み、この酸性化剤が、使用環境におけるpHをpH4以下に低下させるのに適した形態を開示している。好ましくは、この酸性化剤は、有機酸、例えばサリチル酸又はアスコルビン酸である。亜硝酸塩イオンの先駆物質は、酵素作用によって硝酸塩へ転化することが可能なアルカリ金属又はアルカリ土類金属であってもよい。従って、この発明の特に好ましい形態において、この酸性化剤及び亜硝酸塩イオン源若しくは先駆物質は、使用環境において亜硝酸塩イオンを放出するための混合物のために、前記クリーム又は軟膏中に別々に配置されている。また、酸組成物は、投与のためにタブレット又は液体状で提供されてもよい。
【0010】
US−A−5648101(Tawashi)は、知覚力のある動物、例えばヒトの所望の部位又は体内へNOガスを供給する方法であって、このような部位において、又はこれに隣接して、現場で湿分の存在下に、可溶還元性塩、好ましくは硫酸鉄と、亜硝酸塩、好ましくは亜硝酸ナトリウムとを組み合わせ、これらを反応させる工程を含む方法を開示している。このような供給手段は、組成物、例えば、これら2つの反応体の粒子若しくは顆粒の混合物を含有するタブレット、カプセル、軟膏、クリーム、ローション、及びスプレー、経皮パッチ、及び1又は複数の反応体の溶液を現場で組み合わせるための浸透圧性ポンプを包含する。
【0011】
Winkらの「癌治療における一酸化窒素化学の役割(The Role of Nitric Oxide Chemistry in Cancer Treatment)」、(Biochemistry(モスクワ)802−809;63(7):1998年)は、哺乳動物の腫瘍に対する一酸化窒素の効果を開示している。癌治療の分野における現在の開示は、一酸化窒素の内因生成に言及している。局部的利用可能性を増すための試みは、非直接的介入、例えば一酸化窒素先駆物質(L−アルギニン)での投薬、及び分解経路を一時的に調節することによる、内因一酸化窒素の半減期/バイオアベイラビリティーを増すための操作に限定されてきた。
【0012】
NO先駆物質の使用に関わるほかの臨床方法は、WO−A−99/02148、WO−A−95/09612、及びケミカル・アブストラクツ(Chemical Abstracts):127:130755,B.H.Cuthbetsonら、「英国麻酔ジャーナル(British Journal of Anaesthesia)」、(1977年)、78(6)、714−717に開示されている。
【0013】
気体一酸化窒素及び一酸化窒素先駆物質の抗菌剤としての局所使用もまた、公知である。WO−A−01/53193は、皮膚表面において局所的に一酸化窒素を生成するための酸性化亜硝酸塩の使用を開示している。この処理は、虚血及び関連状態の治療において有用である。
【0014】
不活性キャリヤークリーム又は軟膏中の20%までの濃度における亜硝酸塩の皮膚への局所適用において、亜硝酸塩は、有機酸、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)と混合された時、反応して窒素酸化物を生成し、一酸化窒素の放出を引起こし、有意な炎症をともなわずに、微小循環血管の持続した血管拡張を生じる。
【0015】
治療におけるNOの使用の有用な概観は、次の概説論文に示されている;ケミカル・アブストラクツ:134;216558、W.E.Hurfordら、「一酸化窒素(Nitric Oxide)」、(2000年)、931−945;ケミカル・アブストラクツ:128:21192、M.Andresenら、Revista Medica de Chile、(1997年)、125(8)934−938;ケミカル・アブストラクツ:124:44545、M.Beghettiら、「治験薬に関する専門家の意見(Expert Opinion on Investigational Drugs)」、(1995年)、4(10)985−995。
【0016】
人工呼吸器に関連する肺炎(VAP)は、48時間以上も機械的に人工呼吸させられた患者に発生する院内感染である(Youngら、1999年)。初期発現のVAPは、機械的人工呼吸の開始の48〜72時間後に発生し、気管挿管プロセスの間の吸引の結果として生じると考えられる。この時間を超えて発症するVAPは、遅い発現であると考えられる。VAPの報告されている発生率は、ケース・ミックス及び診断基準に応じて、約10%〜30%超で様々である。VAPは、ヨーロッパの集中治療室において最も蔓延している感染であり、ICUでもたらされるすべての感染のほぼ半分を占める。VAPの発症は、集中治療及び入院期間を長引かせ、コストを増加させる。急性呼吸器疾患症候群(ARDS)の患者において、例えばVAPの発生は、機械的人工呼吸の期間においてほぼ3倍の増加の原因であった(Markowiczら、2000年)。意見が分かれるところではあるが、多くの人は、VAPの発症はまた、死亡率を独立して増加させると信じている(VAPが直接の原因であるとされる死亡率は、約27%と評価されている)。したがって、特に伝統的な抗菌治療への細菌病原体の抵抗性の増加の点から、VAPに関連するかなりの疾病率及び死亡率を減少させるため、並びにコストを減少させるために、新たな介入が至急必要とされる(Bontenら:「医療ICUにおける院内感染の鳥瞰図:ナガヒメダニ、真菌、及び器具の日々(Bird’s Eye View of Nosocominal Infections in Medical ICU:Blue Bugs,Fungi,and Device Days)」、Crit Care Med 1999年、27:853−854;Bonten:「集中治療室における感染の予防。救命救急における現在の意見(Prevention of the Infection in the Intensive Care Unit.Current Opinion in Critical Care)」、2004年、10:364−368;Richards MJ、Edwards JR、Culver DHら:「米国における医療集中治療室における院内感染。国家院内感染監視システム(Nosocominal Infections in Medical Intensive Care Units in the United States.National Nosocominal Infections Surveillance System)」、Crit Care Med 1999年、27:887−892)。
【0017】
遅い発現のVAPの発症は通常、空気消化管から遠位気道中への感染分泌物の吸引の結果である。健康な時、中咽頭は、非病原細菌によってコロニーが形成され、胃は無菌であるが、重症の病気の間は、胃、中咽頭、歯根膜(peridontal)区域、及び副鼻腔は、好気性グラム陰性菌、ブドウ球菌spp.、及びシュードモナスspp.を包含する病原生物でコロニー形成される。その後、中咽頭及び咽頭開口部に溜まっている感染分泌物が、気管チューブ袖から漏出し、遠位に分散される。鼻腔栄養チューブのほぼ恒常的存在が、患者に胃液の逆流を受けやすくさせ、吸引の可能性を増すと考えられる。さらには、気管チューブの内腔が、病原生物を含有する付着物の粘性接着性層(「バイオフィルム」)を急速に発達させる。これらの粒子は、追い出されて、肺の中深くに推進されることもある。他方、汚染された呼吸器又は人工呼吸器回路からの直接接種は、VAPの通常でない原因であると考えられる。機械的に人工呼吸させられている患者の院内肺炎の発症の起こしやすさは、咳障害及び粘膜毛様体クリアランスの減少を包含する防御機構不全によってさらに増加される。気管チューブ袖及び先端のレベルにおける(おそらく、胆汁及び胃液の吸引によって悪化された)粘膜損傷、及び吸引カテーテルによる粘膜への損傷は、基底膜を暴露し、これによって細菌付着及びコロニー化を容易にする。最後に、肺胞損傷及び界面活性剤の損失は、肺防御をさらに損なう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、VAPの発症を防止する新たな方法を発見することができるならば、有利である。
【0019】
本発明の第一態様において、人工呼吸器に関連する肺炎の予防、又は中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つの感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量を含んでいる液体製剤の使用が提供される。
【0020】
好ましくは、人工呼吸器に関連する肺炎の予防のための薬剤の調製における、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量を含んでいる液体製剤の使用が提供される。
【0021】
機械的に人工呼吸させられている患者において、胃の一酸化窒素の生成において大きい減少があることが発見された。理論に結び付けられることを望むわけではないが、本発明者らは、胃の一酸化窒素の生成におけるこの減少が、胃の内容物の細菌のコロニー化の増加を許すと考えている。このことは、特にH2受容体アンタゴニストによる胃分泌物のアルカリ化と組み合わされた時、患者をVAPへ罹りやすくさせる。
【0022】
今や発見されたことは、溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいる液体製剤は、肺への細菌の広がりの防止において有用であるということである。
【0023】
機械的に人工呼吸させられている大部分の患者は、経腸管を用いて栄養供給される。したがって、液体製剤を含有する窒素酸化物を胃の中に供給する適切な方法は、経腸管を介してである。窒素酸化物を胃の中に供給する好ましい方法はしたがって、窒素酸化物を含んでいる液体栄養供給組成物の使用である。
【0024】
本発明の第二態様において、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量及び少なくとも1つの栄養物の両方を含んでいる液体経腸管栄養供給組成物が提供される。
【0025】
この栄養供給組成物によって、窒素酸化物が、胃の中に直接供給されることが可能になる。これに加えて、この栄養供給組成物はまた、経腸管の内部への微生物(細菌、真菌、原生動物、及びウイルス)の形成を防止しうる。このようなコロニー形成は、液体栄養物供給が、このような細菌が成長するのに特に良好な環境を提供するので、容易に発生しうる。
【0026】
栄養物含有溶液は好ましくは、可変カロリー内容物、タンパク質、グルコース、脂肪、水、電解質、微量成分、及びビタミンを含有するが、臨床的指示にしたがって様々に変えられてもよい。経腸栄養供給は、次の3つのカテゴリーに分類することができる。すなわち、化学的に規定された食事、特異的に配合された食事、及び標準的ポリマー食である。化学的に規定される食事、又は基本食は、消化をほとんど又はまったく必要としない栄養物を含有し、したがって容易に吸収される。特異的に配合された食事は、消化における特異的問題、例えばラクトース不寛容を克服するように設計された食事である。標準的ポリマー食は、窒素源としてアミノ酸よりもむしろ全タンパク質を有し、正常であるか、又はほぼ正常な胃腸機能がある場合に適切である。管栄養供給に適した調製物は通常、次の3つの型の1つである。すなわち、ブレンダーに通され、篩われた通常食品、水又はミルクの添加を必要とする再構成粉末調製物、及びインスタント栄養供給製品である。この栄養供給物は、商業的に入手しうる液体経腸栄養供給組成物、例えば商品名オスモライト(Osmolite)(登録商標)として販売されているものであることが、特に好ましい。
【0027】
本発明の液体製剤、及び特に栄養供給組成物は、これに加えてほかの構成要素を含んでいてもよい。これらの構成要素の添加によって、これらの液体製剤の接着、接触時間、及びこれの所望の生物作用の程度が高められることがある。好ましい追加の構成要素は、現場で排出系の浮動を減少させるための発泡剤(例えば石鹸及び洗浄剤)を包含する。ほかの好ましい追加の構成要素は、ゲル化剤(粘度を増すため)、増粘剤(小滴サイズを増すため)、スプレッダー(標的表面の均一なコーティングを向上させるため)、安定剤及び緩衝剤(この系の一体性を維持するため、及び添加剤との効果的組み合わせを向上させるため)、及び界面活性剤(標的表面の湿潤性を増すため)を包含する。
【0028】
本発明のさらなる態様において、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量及び少なくとも1つの栄養物を含んでいる液体腸管外栄養供給組成物が提供されている。
【0029】
腸管外栄養供給組成物は通常、デキストロース、アミノ酸、及び水を含んでいる。典型的な溶液は、25〜35%デキストロース、及び2.75〜6%アミノ酸を、無機質、ビタミン、及び微量成分、及び脂肪エマルジョン(20%)とともに含有する。通常これは、一日目に30ml/時、二日目に60ml/時で供給される。この組成物は、適切なタンパク質を供給するが、通常は不適切なエネルギーを供給し、これはIV脂質で補足されなければならない。IV脂肪は、デキストロースの過剰な投与を防ぐために、大きいエネルギー要件を有する患者においてますます多く用いられている。
【0030】
本発明のさらなる態様において、中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つの感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量を含んでいる液体製剤の使用が提供される。
【0031】
この液体製剤は、VAPの予防のためのみならず、中咽頭、胃系、又は消化器系における感染の予防のためにも有用である。さらにはこの液体製剤はまた、中咽頭、胃系、又は消化器系の感染を治療するためにも用いることができる。
【0032】
窒素酸化物は、本発明による液体製剤中に、真溶液で、及び/又は分散液若しくは縣濁液(例えばコロイド縣濁液において)の形態で存在してもよい。このような製剤型のすべては、本明細書において「溶液」と呼ばれる。
【0033】
存在する窒素酸化物は、一酸化窒素を含む。しかしながらほかの窒素酸化物も、この混合物中に存在してもよい。ある範囲の窒素酸化物が通常存在する。
【0034】
このような液体製剤において、有効な組成物は一般に、10〜40,000重量ppb(10億分の1)、好ましくは100〜10,000ppb、より好ましくは1,000〜10,000ppbの範囲で分散及び/又は溶解されたNOの濃度を含有するであろう。
【0035】
本発明にしたがって使用される液体製剤は、薬理学的に許容しうる亜硝酸塩イオン又は亜硝酸塩先駆物質源とともに、薬理学的に許容しうる酸性化剤の使用によって調製されてもよい。気体NOを液体に通すことによって、又は現場で液体中にNOを発生させることによって、一酸化窒素が液体中に溶解又は縣濁されることが好ましい。
【0036】
NOは、少なくとも1つの亜硝酸塩と少なくとも1つの酸との反応によって、現場で液体中に発生させられることが好ましい。例えばNOは、0.5モル亜硝酸塩と0.5モルクエン酸との反応によって水溶液において生成されうる。この結果として、ガス放出後に、1,500ppb(1.5ppm)程度の、液体製剤中に分散又は溶解されたNOの濃度を生じる。これに加えて、その結果生じた液体製剤は、人工呼吸器に関連する肺炎を予防するための使用に必要とされるタイム・スパン内で安定のままである(例えば1時間以上の期間)。
【0037】
NO発生の好ましい方法は、NaNO2及びKNO2とアスコルビン酸との反応である。等モル量のNaNO2及びKNO2が用いられるのが特に好ましい。1つの有利な実施形態において、NOは、ある容量の1M NaNO2及び等容量の1M KNO2とこの容量の2倍の1Mアスコルビン酸との反応によって発生させられる。
【0038】
その結果生じた液体製剤のpHは、製薬的に許容しうる製剤を生じるための標準的技術を用いて、酸性化剤の滴定及び/又はその後の化学的緩衝によって操作されてもよい。
【0039】
酸性化剤は、いずれかの適切な有機酸、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、又はこれの塩若しくは誘導体を、一般に20%w/vまで、好ましくは0.25〜10w/v、より好ましくは4〜6w/vの濃度で含んでいてもよい。特に好ましい濃度は、4%又は5%w/vである。ほかの酸性化剤は、アンモニウム若しくはアルミニウム塩、フェノール、及び安息香酸を包含するが、これらに限定されるわけではない。無機酸、例えば塩酸が、十分に希釈及び/又は適切に緩衝されているならば用いられてもよい。酸性化剤は、溶解塩として、又は液体形態で存在してもよい。
【0040】
薬理学的に許容しうる亜硝酸塩源は、アルカリ金属亜硝酸塩若しくはアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えばLiNO2、NaNO2、KNO2、RbNO2、CsNO2、FrNO2、Be(NO2)2、Mg(NO2)2、Ca(NO2)2、Sr(NO2)2、Ba(NO2)2、又はRa(NO2)2であってもよい。あるいはまた、亜硝酸塩先駆物質が、この組成物中の亜硝酸塩イオン源として用いられてもよい。例えば硝酸の希釈溶液である。ほかの亜硝酸塩イオン源は、亜硝酸塩への酵素転化可能なアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩に由来する硝酸塩イオンである。例えば、LiNO3、NaNO3、KNO3、RbNO3、CsNO3、FrNO3、Be(NO3)2、Mg(NO3)2、Ca(NO3)2、Sr(NO3)2、Ba(NO3)2、又はRa(NO3)2である。酸性化に先立つ硝酸塩イオン源の濃度は、20%w/vまで、適切には0.25〜10%、好ましくは4〜6%であってもよい。特に好ましい濃度は、4%又は5%w/vである。
【0041】
本発明にしたがって使用される液体製剤は好ましくは、溶液における一酸化窒素で飽和されている。
【0042】
本発明の1つの態様に関連して記載されている特徴はまた、本発明のほかの態様と関連して用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の好ましい実施形態を、ここでさらに図面を参照して説明する。
【0044】
実施例
殺菌における窒素酸化物を含有する溶液の効率をテストするために、いくつかの実施例が設定された。
【0045】
実施例1〜4
予め混合された「窒素酸化物」発生溶液が、アスコルビン酸での亜硝酸ナトリウム(NaNO2)及び亜硝酸カリウム(KNO2)の酸性化によって調製された。亜硝酸ナトリウムの1M溶液が、6.9gのNaNO2を100mlの蒸留水中に溶解することによって調製された。亜硝酸カリウムの1M溶液が、8.51gのKNO2を100mlの蒸留水中に希釈することによって調製された。17.612gのアスコルビン酸が、100mlの蒸留水中に希釈され、1M溶液が形成された。これら3つの保存溶液は、実験の数分前に調製された。
【0046】
ある容量のNaNO2及び等容量のKNO2が、この容量の2倍のアスコルビン酸と、滅菌容器において混合され、「窒素酸化物」含有溶液が生成された。亜硝酸塩とこの酸との反応は、直ちに発生した。生成されたガスが放出され、2mlの予め混合された液体(0.25M)が、20mlの蒸留水へ添加されて、1.25mMの溶液の最終濃度を生じた。
【0047】
NaNO2、KNO2、及びアスコルビン酸の別々のサンプルもまた、上記のように調製された。
【0048】
A)アスコルビン酸単独、
B)予め混合された「窒素酸化物」発生溶液、
C)別々に添加されたNaNO2とアスコルビン酸との組み合わせ、及び
D)別々に添加されたKNO2とアスコルビン酸との組み合わせ
の抗菌効果は、
実施例1 − メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌(MRSA)
実施例2 − カンジダ・アルビカンス(CA)
実施例3 − 緑膿菌(PS)、及び
実施例4 − コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)
に対するテストによって測定された。
【0049】
細菌の一晩培養が、20mlのLB(ルリア−ベルタニ(Luria−Bertani)、1リットルあたり10gバクト(Bacto)−トリプトン、+5gバクト−酵母抽出物、+10g塩化ナトリウム、pH7.5)ブロスに2〜3コロニーを接種し、37℃で一晩インキュベートすることによって調製された。約109生物を含有するブロス培養物が生成された。細菌は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて1:1,000希釈され、100μlの希釈ブロス培養物が、ブレイン−ハート(Brain−Heart)寒天プレート上に播種された。寒天プレートの表面上へ細菌を播種する前に、これらのプレートの中心から1つの寒天片(直径約70mm)が取り出された。
【0050】
A)において、0.25Mアスコルビン酸の殺菌効力をテストするために、50mlの保存溶液(1M)がさらに希釈された。280μlの0.25Mアスコルビン酸が、細菌が播種された寒天プレートの中空円へ添加された。
【0051】
B)において、280μlの「窒素酸化物」発生溶液(最終濃度0.25M)が、寒天プレート上の中空円へ添加された。
【0052】
C)及びD)において、NOガスの抗菌効果は、これらの溶液を予め混合するのではなく、別々に化学物質を添加することによってテストされた。C)において、140μl(0.5M)のNaNO2が寒天プレートへ添加され、ついで140μl(0.5M)のアスコルビン酸が添加された。反応が発生し、寒天プレートは、直ちにフタで覆われた。同じ手順が、D)においてKNO2及びアスコルビン酸を用いて繰り返された。
【0053】
これらの結果は、図1〜4に示されている。実施例1〜4の各々について、A)においてアスコルビン酸のみが用いられている場合、多量の細菌が存在することが分かる。しかしながら、B、C、及びDにおいて、細菌コロニーの大部分が破壊されている。
【0054】
実施例5
メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌(MRSA)培養物が、実施例1〜4と同じ方法で生成された。寒天プレートがポリスチレンボックスに入れられた。気体NOは、10mlの1Mアスコルビン酸と、5mlの1M NaNO2及び5mlの1M KNO2とをこのボックスにおいて反応させることによって生成され、ボックスのフタが直ちに取り替えられ、ついでこの培養物の一晩のインキュベーションが行なわれた。
【0055】
これらの結果は図5に示されている。図に見られるように、可視残留細菌培養物は存在しない。
【0056】
実施例6〜10
窒素酸化物発生溶液の殺菌効果が、胃を模した条件下にテストされた。図6は、窒素酸化物発生溶液への1時間暴露が、テストされた5つの異なる細菌、すなわち緑膿菌;コアグラーゼ陰性ブドウ球菌;カンジダ・アルビカンス;大腸菌;及びブドウ球菌において、平均97%の死滅を結果として生じたことを示している。この実験の設計は、実施例1〜4に記載されたものと同一であった。
【0057】
実施例11〜15
実施例1〜4において用いられた窒素酸化物発生溶液が、ICUにおいて患者の栄養摂取に用いられる、商業的に入手しうる経腸栄養供給オスモライト(登録商標)中のその抗菌活性をテストするために用いられた。混合物の効果が、緑膿菌(PS)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS);大腸菌(E.Coli)、カンジダ・アルビカンス(CA)、及びメチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌に対してテストされた。
【0058】
細菌の一晩培養物が、20mlのLB(ルリア−ベルタニ、1リットルあたり10gバクト−トリプトン、+5gバクト−酵母抽出物、+10g塩化ナトリウム、pH7.5)ブロスに2〜3コロニーを接種し、37℃で一晩インキュベートすることによって調製された。約109生物を含有するブロス培養物が生成された。細菌は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に1:1,000希釈され、100μlの希釈ブロス培養物が、ICUにおいて患者の栄養摂取に用いられる、20mlの商業的に入手しうる経腸栄養供給オスモライト(登録商標)中に入れられた。
【0059】
2mlの予め混合された窒素酸化物発生溶液が、20mlの細菌含有オスモライト(登録商標)へ添加され、1.25mMの溶液の最終濃度を生じた。同じ容量の滅菌水が、対照として用いられた。2mlの窒素酸化物発生混合物又は滅菌水を含有する20mlの汚染された供給物のインキュベーションが、1時間37℃で実施された。1時間のインキュベーション後、供給物(100μl)のサンプルが、血液寒天プレートに載せられ、滅菌スプレッダーを用いて広げられた。プレートは、20時間37℃でインキュベートされた。コロニーの数が計数され、データは、死滅パーセンテージとして、又は治療群及び対照群における可視コロニーの数の単なる比較として表示された。
【0060】
これらの結果は、図7〜11に示されている。図7は、緑膿菌への効果を示し、図8は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)への効果を示し、図9は、カンジダ・アルビカンスへの効果を示し、図10は、大腸菌(E.Coli)への効果を示し、図11は、メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌(MRSA)の効果を示している。
【0061】
これらの結果は明らかに、窒素酸化物含有混合物が、細菌コロニーの大部分を破壊することを証明している。
【0062】
これらの結果は、窒素酸化物含有溶液が、患者の口腔咽頭衛生のために安全に用いることができることを示している。
【0063】
同様に、亜硝酸塩及び酸が予め混合されない場合、亜硝酸塩が、この供給物と反応して、沈殿物を生成しうることも発見された。例えば亜硝酸塩、ついでアスコルビン酸の添加は、結果としてタンパク質の有意な沈殿を生じ、これは、供給物の粘度を増す。この理由により、これらの構成要素は、窒素酸化物発生溶液を生成するために、予め混合されなければならない。供給物の粘度の増加は、カテーテル遮断の公知リスクを実質的に増加させるであろう。
【0064】
したがって、化学物質を別々に添加することによる酸性化亜硝酸塩の生成は、可能性のある治療の開発及び予防に関して、最適な配合ではない。さらには、予め混合されたNO/NOx発生溶液が用いられないならば、機械的人工呼吸器を着けている、既に病気になりやすい(vulnerable)患者は、通常、H2阻害剤を受けており、胃潰瘍を発症するリスクの増加に晒されるであろう。
【0065】
予め混合された窒素酸化物発生溶液の別の利点は、抗菌効果が、より広い範囲のpHレベルで、すなわち5.0以下だけではないレベルで示されるということである。したがってこの溶液は、患者の口腔咽頭衛生のために安全に用いることができる。
【0066】
さらには、酸性化亜硝酸塩反応の残留構成要素、特にアスコルビン酸(ビタミンC)は、個別の栄養的及び保護的役割を有する。ビタミンCは、低密度リポタンパク質を酸化から保護し、胃中の有害なオキシダント(例えばペルオキシ亜硝酸塩フリーラジカル)を減少させる強力な水溶性酸化防止剤であり、鉄吸収を促進する。
【0067】
実施例16及び17
pH変化は、L−アスコルビン酸が、漸進的に、及び単一添加として亜硝酸ナトリウムへ添加される時に測定された。
【0068】
英国シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの分析グレード(>99%純度)亜硝酸ナトリウム(NaNO2)及びL−アスコルビン酸(C6H8O6)が用いられた。英国バクスター・ヘルスケア(Baxter Healthcare−UK)からの生理食塩水(0.9%wvのNaCl)も、用いられた。
【0069】
正常食塩水が、亜硝酸ナトリウム及びアスコルビン酸の溶液の調製における溶媒として用いられた。すべての溶液は、25ml又は50mlのロット中で室温(22〜25℃)で調製され、10〜20日以内に用いられた。保存溶液は、光を避けて気密容器に保持された。
【0070】
これらの溶液のすべてのpH測定は、ヴィッセンシャフトリッヒ−テヒニッシェ・ヴェルクシュテーテン(Wissenschaftlich−Technische Werkstatten(WTW)pHメーター、モデルpH340iを、サーモカップルを組み込んでいるSenTix20pH組み合わせ電極とともに用いて実施された。電極は、新たに調製された緩衝較正溶液(pH7.00及び4.00±0.002)で較正された。較正溶液は、アルドリッチTri−チェック緩衝カプセル(米国アルドリッチ)から調製された。
【0071】
これらの溶液のpHは、60rpmで操作される標準的磁気撹拌棒を加えて測定された。確実に電極が完全に浸漬されるように、少なくとも12mlの溶液が用いられた。亜硝酸ナトリウム及びアスコルビン酸の1M溶液が、正常食塩水を溶媒として用いて調製された。実施例16において、1mlの酸が10分毎にこの亜硝酸塩へ添加された。実施例17において、5mlの1Mアスコルビン酸が、12mlの1M亜硝酸ナトリウム溶液へ添加された。
【0072】
これらの結果は、図12及び13において見ることができる。
【0073】
実施例16において、亜硝酸ナトリウム溶液の当初pHは、約7.35であると測定された。pHは、4.2〜4.7の間のレベルへ急に降下し、ついで各添加後、約6のより安定な値へ急速に(4〜5分以内)回復する。いくつかの例において、pH回復があまりに急激なので、これは安定値へ降下する前に行過ぎを生じる。
【0074】
実施例17において、5分間試薬を混合した後に得られる安定pHレベルは、経口−胃−消化器供給についての生理学的に許容しうる5.0のレベル(生理食塩水のpH)よりも十分に高い。
【0075】
実施例18
ラマン分光測定が、6mlの1Mアスコルビン酸と12mlの1M亜硝酸ナトリウムとの反応について行なわれた。これらの試薬及び溶液は、実施例16及び17についてと同じであった。
【0076】
反応性混合物及び最終生成物は、ニコレット・アルメガ(Nicolet Almega)XR:マクロスコープとミクロスコープの両方の入口を備えた分散ラマン分光計を用いて測定された。スペクトルは、外部安定の近赤外線(NIR785nm)レーザーダイオードで励起された。測定は、スリット幅25μmで行なわれ、スペクトル解像は、4cm−1である。ソフトウエアシステム(Omnic,ver.7.2a)が、データを表示し、収集するために用いられた。分析されることになる液体又は結晶質サンプルは、サンプルホールダーに嵌め込まれた小さい石英管に入れられ、レーザービームと整合された。
【0077】
酸が亜硝酸塩溶液へ添加され、一方、混合物は、60rpmの一定率で撹拌された。この混合物の少量(約0.07ml)が、様々な時間間隔で、分光分析のために採取される。
【0078】
スペクトルは、反応体が混合された時間から10、30、60、90、及び135分の時点で、並びに反応がすべて完了した後で取られた。図14は、亜硝酸ナトリウム溶液のスペクトルを、6mlの酸と12mlの亜硝酸塩溶液との反応の間に得られたスペクトルとともに示している。低い方のトレースは、亜硝酸ナトリウムのみの溶液に属す。
【0079】
2250−2050cm−1領域においてピークがまったく存在しないことは、混合物中に、危険なイオンシアン化物(例えばNaCN)、シアナート(OCN)、又はフルミナート(CNO)化合物が存在しないことを示している。例えば伸縮(CN)振動は、2250−2050cm−1領域に位置する鋭いバンドを生成する。
【0080】
1325cm−1における強い対称伸縮振動の測定(亜硝酸ナトリウムのVs(NO2))は、この亜硝酸塩の半分が、10分未満で酸によって還元されることを明らかにする。混合物中の亜硝酸塩の量は、次の2時間の観察の間に、さらなる8%減少を示すことが観察された。反応が完了した時、亜硝酸塩の当初量のわずか約31%が混合物中に残された。
【0081】
このことは、反応の後で、過剰亜硝酸塩対酸比を有する溶液は、内部環境が、低いpHを保持するとすれば、生体内でさらなるNO/NOx発生反応を可能にするのに十分な亜硝酸塩を保持することを証明している。このような反応は、NO−NOx反応生成物の局部的利用可能性を増加させ、これらの組織の局部的生体内デアクティフィケーション(deactification)を補助するであろう。
【0082】
酸性化亜硝酸塩溶液のラマンバンドが、表1に示されている。表2は、示された時点で記録された酸性化亜硝酸塩溶液のラマンバンドのピーク面積を示している。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
2時間超の観察の後、混合物から発生するかなり多量の気泡が依然として存在した。撹拌が停止され、混合物が一晩保持された。24時間後、もはや気泡は観察されず、残された溶液(最終生成物)のラマンスペクトルは、亜硝酸塩の濃度が10分の時点でのその濃度の2/3(又は反応前のその当初濃度の1/3)まで減少したことが明らかになった。
【0086】
実施例19
M.tuberculosisの標準的研究所菌株が、NO/NOx−媒介死滅を受けやすいかどうかを決定するために、単純な生存可能性アッセイが用いられた。
【0087】
M.tuberculosisは、10mlの標準培地(ミドルブルック(Middlebrook)7H9、0.05%ツイーン80、10%v/vOADC補足)中に培養された。NO/NOx暴露のために、1mlの培養物が、10mlのミドルブルック溶液プラス0.5M NaNO2と0.25Mアスコルビン酸との混合物0.1ml中に接種された。亜硝酸塩/アスコルビン酸溶液を含まない対照が設定された。
【0088】
培養物が、37℃でインキュベートされ、24時間放置された。一連の希釈液が固体培地(ミドルブルック7H10、10%v/vOADC)上に培養され、CFUが3週間後に記録された。
【0089】
培地のpHは、亜硝酸塩/アスコルビン酸溶液の添加によって有意には低下されなかった。
【0090】
対照培養物からのコロニー形成単位(CFU)数は、1mlあたり1.5×107であった。培養された最低希釈においてNO−処理された培養物からの生存可能な細菌は、存在しなかった(検出限度10CFU/ml)。
【0091】
NO発生亜硝酸塩/アスコルビン酸溶液は、24時間後、>6logのM.tuberculosisの死滅において有効であった。
【0092】
実施例20
いくつかの異なる細菌のNO/NOx−媒介死滅の受けやすさを決定するために、1つのアッセイが用いられた。
【0093】
実験は、96マイクロウエルプレートにおいて実施された。いくつかのマイクロウエルは、60μlの亜硝酸ナトリウムで満たされ、最終濃度0、0.2、0.5、1、2、10、15、及び30mMを生じた。塩酸で酸性化されて最終pH値2.0、3.0、4.0、4.5、5.0、6.0、及び7.0を生じた60μlの細菌縣濁液(1mlあたり2×107コロニー形成単位の密度)、及び120μlのブレイン・ハート・インフュージョン・ブロス(英国ベージングストークのオキソイド(Oxoid,Basingstoke))もまた添加された。
【0094】
これらのプレートは密封され、37℃で一晩インキュベートされた。細菌成長に対する酸性化亜硝酸塩の阻害効果は、マイクロウエルプレートリーダー(オーストリア国ザルツブルグ、アントス(Anthos)ht III)を用いた、これらのウエルの光学密度(540nm)の測定によって決定された。
【0095】
すべての実験は、まったく同じように3回実施された。
【0096】
酸性化亜硝酸塩への暴露後の殺菌活性を決定するために、60μlの細菌縣濁液が、180μlの回収培地(ブレイン・ハート・インフュージョン・ブロス;pH7.0)へ移し替えられた。細菌成長の評価は、上記のように光学密度を測定するためにマイクロウエルプレートリーダーで決定された。
【0097】
この混合物の効果は、患者から以前に単離された微生物に対してテストされた。これらの結果は、図15a−nに示されている。
【0098】
酸性化亜硝酸塩溶液は、様々な細菌単離物に対する静菌効果並びに殺菌効果を有することが分かった。
【0099】
この溶液は、様々な状態の治療のために用いることができるが、その理由は、これが、抗生物質抵抗性生物に対して活性であり、抵抗性菌株の出現を助長せず、広いpH範囲にわたって有効であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理されたメチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌を含有する寒天プレートを示している。
【図2】図2は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理されたカンジダ・アルビカンスを含有する寒天プレートを示している。
【図3】図3は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理された緑膿菌を含有する寒天プレートを示している。
【図4】図4は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を含有する寒天プレートを示している。
【図5】図5は、一酸化窒素ガスで処理されたメチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌を含有する寒天プレートを示している。
【図6】図6は、いくつかの異なる細菌株に対する、窒素酸化物含有混合物の効果を示している。
【図7】図7は、緑膿菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図8】図8は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図9】図9は、カンジダ・アルビカンスに対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図10】図10は、大腸菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図11】図11は、メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図12】図12は、亜硝酸塩への酸の漸進的添加のpHに対する効果を示している。
【図13】図13は、亜硝酸塩への酸のバルク添加のpHに対する効果を示している。
【図14】図14は、亜硝酸塩への酸の添加後の一連のラマンスペクトルを示している。
【図15A】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15B】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15C】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15D】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15E】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15F】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15G】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15H】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15I】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15J】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15K】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15L】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15M】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15N】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口、胃、及び消化器感染の予防及び治療のため、及び特に人工呼吸器に関連する肺炎の予防のための薬剤の調製における液体製剤の使用、並びに液体経腸管栄養供給組成物に関する。これらの栄養供給組成物は、人工呼吸器に関連する肺炎の予防における使用に適している。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素は、胃中の酸と組み合わせた唾液中の亜硝酸塩の反応から胃中に自然に形成される。
【0003】
亜硝酸塩からのNOの生成は、次のメカニズムを通ると考えられている。
【0004】
【化1】
【0005】
胃中の胃酸は、微生物を破壊するのに十分ではない場合があり、従って、その場合には、胃中のNOの生成が、これらの微生物の死滅を補助することがあると考えられている(McKnightら、「ヒトにおける食事の硝酸塩からの胃中の一酸化窒素の化学合成(Chemical Synthesis of Nitric Oxide in the Stomach from Dietary Nitrate in Humans)」、Gut 1997年;40(2):211−4)。
【0006】
近年、一酸化窒素[NO]及び一酸化窒素先駆物質の製薬用途において多大な関心が寄せられている。F.C.Fangによって調査されたように(1997年)(J.Clin.Invest.99(12)2818−2825(1997年))、一酸化窒素は、抗菌特性を有することが証明されている。
【0007】
WO03/032928において、臨床的有効量の一酸化窒素が溶解又は分散されている溶液を配合することが可能であることが発見された。当時は、これらの溶液は、特定の呼吸器疾患の治療のために、霧状にされ、肺中に噴霧される。
【0008】
一酸化窒素の人工的供給を論じている他の文献もいくつかある。
【0009】
WO95/22335(Benjamin & Dougal)は、細菌、ウイルス、又は真菌による疾患の治療のための投薬形態であって、製薬的に許容しうる酸性化剤、亜硝酸塩イオンの製薬的に許容しうる源、若しくは、そのための硝酸塩先駆物質、及び製薬的に許容しうるキャリヤー若しくは希釈剤を含み、この酸性化剤が、使用環境におけるpHをpH4以下に低下させるのに適した形態を開示している。好ましくは、この酸性化剤は、有機酸、例えばサリチル酸又はアスコルビン酸である。亜硝酸塩イオンの先駆物質は、酵素作用によって硝酸塩へ転化することが可能なアルカリ金属又はアルカリ土類金属であってもよい。従って、この発明の特に好ましい形態において、この酸性化剤及び亜硝酸塩イオン源若しくは先駆物質は、使用環境において亜硝酸塩イオンを放出するための混合物のために、前記クリーム又は軟膏中に別々に配置されている。また、酸組成物は、投与のためにタブレット又は液体状で提供されてもよい。
【0010】
US−A−5648101(Tawashi)は、知覚力のある動物、例えばヒトの所望の部位又は体内へNOガスを供給する方法であって、このような部位において、又はこれに隣接して、現場で湿分の存在下に、可溶還元性塩、好ましくは硫酸鉄と、亜硝酸塩、好ましくは亜硝酸ナトリウムとを組み合わせ、これらを反応させる工程を含む方法を開示している。このような供給手段は、組成物、例えば、これら2つの反応体の粒子若しくは顆粒の混合物を含有するタブレット、カプセル、軟膏、クリーム、ローション、及びスプレー、経皮パッチ、及び1又は複数の反応体の溶液を現場で組み合わせるための浸透圧性ポンプを包含する。
【0011】
Winkらの「癌治療における一酸化窒素化学の役割(The Role of Nitric Oxide Chemistry in Cancer Treatment)」、(Biochemistry(モスクワ)802−809;63(7):1998年)は、哺乳動物の腫瘍に対する一酸化窒素の効果を開示している。癌治療の分野における現在の開示は、一酸化窒素の内因生成に言及している。局部的利用可能性を増すための試みは、非直接的介入、例えば一酸化窒素先駆物質(L−アルギニン)での投薬、及び分解経路を一時的に調節することによる、内因一酸化窒素の半減期/バイオアベイラビリティーを増すための操作に限定されてきた。
【0012】
NO先駆物質の使用に関わるほかの臨床方法は、WO−A−99/02148、WO−A−95/09612、及びケミカル・アブストラクツ(Chemical Abstracts):127:130755,B.H.Cuthbetsonら、「英国麻酔ジャーナル(British Journal of Anaesthesia)」、(1977年)、78(6)、714−717に開示されている。
【0013】
気体一酸化窒素及び一酸化窒素先駆物質の抗菌剤としての局所使用もまた、公知である。WO−A−01/53193は、皮膚表面において局所的に一酸化窒素を生成するための酸性化亜硝酸塩の使用を開示している。この処理は、虚血及び関連状態の治療において有用である。
【0014】
不活性キャリヤークリーム又は軟膏中の20%までの濃度における亜硝酸塩の皮膚への局所適用において、亜硝酸塩は、有機酸、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)と混合された時、反応して窒素酸化物を生成し、一酸化窒素の放出を引起こし、有意な炎症をともなわずに、微小循環血管の持続した血管拡張を生じる。
【0015】
治療におけるNOの使用の有用な概観は、次の概説論文に示されている;ケミカル・アブストラクツ:134;216558、W.E.Hurfordら、「一酸化窒素(Nitric Oxide)」、(2000年)、931−945;ケミカル・アブストラクツ:128:21192、M.Andresenら、Revista Medica de Chile、(1997年)、125(8)934−938;ケミカル・アブストラクツ:124:44545、M.Beghettiら、「治験薬に関する専門家の意見(Expert Opinion on Investigational Drugs)」、(1995年)、4(10)985−995。
【0016】
人工呼吸器に関連する肺炎(VAP)は、48時間以上も機械的に人工呼吸させられた患者に発生する院内感染である(Youngら、1999年)。初期発現のVAPは、機械的人工呼吸の開始の48〜72時間後に発生し、気管挿管プロセスの間の吸引の結果として生じると考えられる。この時間を超えて発症するVAPは、遅い発現であると考えられる。VAPの報告されている発生率は、ケース・ミックス及び診断基準に応じて、約10%〜30%超で様々である。VAPは、ヨーロッパの集中治療室において最も蔓延している感染であり、ICUでもたらされるすべての感染のほぼ半分を占める。VAPの発症は、集中治療及び入院期間を長引かせ、コストを増加させる。急性呼吸器疾患症候群(ARDS)の患者において、例えばVAPの発生は、機械的人工呼吸の期間においてほぼ3倍の増加の原因であった(Markowiczら、2000年)。意見が分かれるところではあるが、多くの人は、VAPの発症はまた、死亡率を独立して増加させると信じている(VAPが直接の原因であるとされる死亡率は、約27%と評価されている)。したがって、特に伝統的な抗菌治療への細菌病原体の抵抗性の増加の点から、VAPに関連するかなりの疾病率及び死亡率を減少させるため、並びにコストを減少させるために、新たな介入が至急必要とされる(Bontenら:「医療ICUにおける院内感染の鳥瞰図:ナガヒメダニ、真菌、及び器具の日々(Bird’s Eye View of Nosocominal Infections in Medical ICU:Blue Bugs,Fungi,and Device Days)」、Crit Care Med 1999年、27:853−854;Bonten:「集中治療室における感染の予防。救命救急における現在の意見(Prevention of the Infection in the Intensive Care Unit.Current Opinion in Critical Care)」、2004年、10:364−368;Richards MJ、Edwards JR、Culver DHら:「米国における医療集中治療室における院内感染。国家院内感染監視システム(Nosocominal Infections in Medical Intensive Care Units in the United States.National Nosocominal Infections Surveillance System)」、Crit Care Med 1999年、27:887−892)。
【0017】
遅い発現のVAPの発症は通常、空気消化管から遠位気道中への感染分泌物の吸引の結果である。健康な時、中咽頭は、非病原細菌によってコロニーが形成され、胃は無菌であるが、重症の病気の間は、胃、中咽頭、歯根膜(peridontal)区域、及び副鼻腔は、好気性グラム陰性菌、ブドウ球菌spp.、及びシュードモナスspp.を包含する病原生物でコロニー形成される。その後、中咽頭及び咽頭開口部に溜まっている感染分泌物が、気管チューブ袖から漏出し、遠位に分散される。鼻腔栄養チューブのほぼ恒常的存在が、患者に胃液の逆流を受けやすくさせ、吸引の可能性を増すと考えられる。さらには、気管チューブの内腔が、病原生物を含有する付着物の粘性接着性層(「バイオフィルム」)を急速に発達させる。これらの粒子は、追い出されて、肺の中深くに推進されることもある。他方、汚染された呼吸器又は人工呼吸器回路からの直接接種は、VAPの通常でない原因であると考えられる。機械的に人工呼吸させられている患者の院内肺炎の発症の起こしやすさは、咳障害及び粘膜毛様体クリアランスの減少を包含する防御機構不全によってさらに増加される。気管チューブ袖及び先端のレベルにおける(おそらく、胆汁及び胃液の吸引によって悪化された)粘膜損傷、及び吸引カテーテルによる粘膜への損傷は、基底膜を暴露し、これによって細菌付着及びコロニー化を容易にする。最後に、肺胞損傷及び界面活性剤の損失は、肺防御をさらに損なう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、VAPの発症を防止する新たな方法を発見することができるならば、有利である。
【0019】
本発明の第一態様において、人工呼吸器に関連する肺炎の予防、又は中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つの感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量を含んでいる液体製剤の使用が提供される。
【0020】
好ましくは、人工呼吸器に関連する肺炎の予防のための薬剤の調製における、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量を含んでいる液体製剤の使用が提供される。
【0021】
機械的に人工呼吸させられている患者において、胃の一酸化窒素の生成において大きい減少があることが発見された。理論に結び付けられることを望むわけではないが、本発明者らは、胃の一酸化窒素の生成におけるこの減少が、胃の内容物の細菌のコロニー化の増加を許すと考えている。このことは、特にH2受容体アンタゴニストによる胃分泌物のアルカリ化と組み合わされた時、患者をVAPへ罹りやすくさせる。
【0022】
今や発見されたことは、溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいる液体製剤は、肺への細菌の広がりの防止において有用であるということである。
【0023】
機械的に人工呼吸させられている大部分の患者は、経腸管を用いて栄養供給される。したがって、液体製剤を含有する窒素酸化物を胃の中に供給する適切な方法は、経腸管を介してである。窒素酸化物を胃の中に供給する好ましい方法はしたがって、窒素酸化物を含んでいる液体栄養供給組成物の使用である。
【0024】
本発明の第二態様において、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量及び少なくとも1つの栄養物の両方を含んでいる液体経腸管栄養供給組成物が提供される。
【0025】
この栄養供給組成物によって、窒素酸化物が、胃の中に直接供給されることが可能になる。これに加えて、この栄養供給組成物はまた、経腸管の内部への微生物(細菌、真菌、原生動物、及びウイルス)の形成を防止しうる。このようなコロニー形成は、液体栄養物供給が、このような細菌が成長するのに特に良好な環境を提供するので、容易に発生しうる。
【0026】
栄養物含有溶液は好ましくは、可変カロリー内容物、タンパク質、グルコース、脂肪、水、電解質、微量成分、及びビタミンを含有するが、臨床的指示にしたがって様々に変えられてもよい。経腸栄養供給は、次の3つのカテゴリーに分類することができる。すなわち、化学的に規定された食事、特異的に配合された食事、及び標準的ポリマー食である。化学的に規定される食事、又は基本食は、消化をほとんど又はまったく必要としない栄養物を含有し、したがって容易に吸収される。特異的に配合された食事は、消化における特異的問題、例えばラクトース不寛容を克服するように設計された食事である。標準的ポリマー食は、窒素源としてアミノ酸よりもむしろ全タンパク質を有し、正常であるか、又はほぼ正常な胃腸機能がある場合に適切である。管栄養供給に適した調製物は通常、次の3つの型の1つである。すなわち、ブレンダーに通され、篩われた通常食品、水又はミルクの添加を必要とする再構成粉末調製物、及びインスタント栄養供給製品である。この栄養供給物は、商業的に入手しうる液体経腸栄養供給組成物、例えば商品名オスモライト(Osmolite)(登録商標)として販売されているものであることが、特に好ましい。
【0027】
本発明の液体製剤、及び特に栄養供給組成物は、これに加えてほかの構成要素を含んでいてもよい。これらの構成要素の添加によって、これらの液体製剤の接着、接触時間、及びこれの所望の生物作用の程度が高められることがある。好ましい追加の構成要素は、現場で排出系の浮動を減少させるための発泡剤(例えば石鹸及び洗浄剤)を包含する。ほかの好ましい追加の構成要素は、ゲル化剤(粘度を増すため)、増粘剤(小滴サイズを増すため)、スプレッダー(標的表面の均一なコーティングを向上させるため)、安定剤及び緩衝剤(この系の一体性を維持するため、及び添加剤との効果的組み合わせを向上させるため)、及び界面活性剤(標的表面の湿潤性を増すため)を包含する。
【0028】
本発明のさらなる態様において、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量及び少なくとも1つの栄養物を含んでいる液体腸管外栄養供給組成物が提供されている。
【0029】
腸管外栄養供給組成物は通常、デキストロース、アミノ酸、及び水を含んでいる。典型的な溶液は、25〜35%デキストロース、及び2.75〜6%アミノ酸を、無機質、ビタミン、及び微量成分、及び脂肪エマルジョン(20%)とともに含有する。通常これは、一日目に30ml/時、二日目に60ml/時で供給される。この組成物は、適切なタンパク質を供給するが、通常は不適切なエネルギーを供給し、これはIV脂質で補足されなければならない。IV脂肪は、デキストロースの過剰な投与を防ぐために、大きいエネルギー要件を有する患者においてますます多く用いられている。
【0030】
本発明のさらなる態様において、中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つの感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における、溶解及び/又は分散された窒素酸化物の臨床的有効量を含んでいる液体製剤の使用が提供される。
【0031】
この液体製剤は、VAPの予防のためのみならず、中咽頭、胃系、又は消化器系における感染の予防のためにも有用である。さらにはこの液体製剤はまた、中咽頭、胃系、又は消化器系の感染を治療するためにも用いることができる。
【0032】
窒素酸化物は、本発明による液体製剤中に、真溶液で、及び/又は分散液若しくは縣濁液(例えばコロイド縣濁液において)の形態で存在してもよい。このような製剤型のすべては、本明細書において「溶液」と呼ばれる。
【0033】
存在する窒素酸化物は、一酸化窒素を含む。しかしながらほかの窒素酸化物も、この混合物中に存在してもよい。ある範囲の窒素酸化物が通常存在する。
【0034】
このような液体製剤において、有効な組成物は一般に、10〜40,000重量ppb(10億分の1)、好ましくは100〜10,000ppb、より好ましくは1,000〜10,000ppbの範囲で分散及び/又は溶解されたNOの濃度を含有するであろう。
【0035】
本発明にしたがって使用される液体製剤は、薬理学的に許容しうる亜硝酸塩イオン又は亜硝酸塩先駆物質源とともに、薬理学的に許容しうる酸性化剤の使用によって調製されてもよい。気体NOを液体に通すことによって、又は現場で液体中にNOを発生させることによって、一酸化窒素が液体中に溶解又は縣濁されることが好ましい。
【0036】
NOは、少なくとも1つの亜硝酸塩と少なくとも1つの酸との反応によって、現場で液体中に発生させられることが好ましい。例えばNOは、0.5モル亜硝酸塩と0.5モルクエン酸との反応によって水溶液において生成されうる。この結果として、ガス放出後に、1,500ppb(1.5ppm)程度の、液体製剤中に分散又は溶解されたNOの濃度を生じる。これに加えて、その結果生じた液体製剤は、人工呼吸器に関連する肺炎を予防するための使用に必要とされるタイム・スパン内で安定のままである(例えば1時間以上の期間)。
【0037】
NO発生の好ましい方法は、NaNO2及びKNO2とアスコルビン酸との反応である。等モル量のNaNO2及びKNO2が用いられるのが特に好ましい。1つの有利な実施形態において、NOは、ある容量の1M NaNO2及び等容量の1M KNO2とこの容量の2倍の1Mアスコルビン酸との反応によって発生させられる。
【0038】
その結果生じた液体製剤のpHは、製薬的に許容しうる製剤を生じるための標準的技術を用いて、酸性化剤の滴定及び/又はその後の化学的緩衝によって操作されてもよい。
【0039】
酸性化剤は、いずれかの適切な有機酸、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、又はこれの塩若しくは誘導体を、一般に20%w/vまで、好ましくは0.25〜10w/v、より好ましくは4〜6w/vの濃度で含んでいてもよい。特に好ましい濃度は、4%又は5%w/vである。ほかの酸性化剤は、アンモニウム若しくはアルミニウム塩、フェノール、及び安息香酸を包含するが、これらに限定されるわけではない。無機酸、例えば塩酸が、十分に希釈及び/又は適切に緩衝されているならば用いられてもよい。酸性化剤は、溶解塩として、又は液体形態で存在してもよい。
【0040】
薬理学的に許容しうる亜硝酸塩源は、アルカリ金属亜硝酸塩若しくはアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えばLiNO2、NaNO2、KNO2、RbNO2、CsNO2、FrNO2、Be(NO2)2、Mg(NO2)2、Ca(NO2)2、Sr(NO2)2、Ba(NO2)2、又はRa(NO2)2であってもよい。あるいはまた、亜硝酸塩先駆物質が、この組成物中の亜硝酸塩イオン源として用いられてもよい。例えば硝酸の希釈溶液である。ほかの亜硝酸塩イオン源は、亜硝酸塩への酵素転化可能なアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩に由来する硝酸塩イオンである。例えば、LiNO3、NaNO3、KNO3、RbNO3、CsNO3、FrNO3、Be(NO3)2、Mg(NO3)2、Ca(NO3)2、Sr(NO3)2、Ba(NO3)2、又はRa(NO3)2である。酸性化に先立つ硝酸塩イオン源の濃度は、20%w/vまで、適切には0.25〜10%、好ましくは4〜6%であってもよい。特に好ましい濃度は、4%又は5%w/vである。
【0041】
本発明にしたがって使用される液体製剤は好ましくは、溶液における一酸化窒素で飽和されている。
【0042】
本発明の1つの態様に関連して記載されている特徴はまた、本発明のほかの態様と関連して用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の好ましい実施形態を、ここでさらに図面を参照して説明する。
【0044】
実施例
殺菌における窒素酸化物を含有する溶液の効率をテストするために、いくつかの実施例が設定された。
【0045】
実施例1〜4
予め混合された「窒素酸化物」発生溶液が、アスコルビン酸での亜硝酸ナトリウム(NaNO2)及び亜硝酸カリウム(KNO2)の酸性化によって調製された。亜硝酸ナトリウムの1M溶液が、6.9gのNaNO2を100mlの蒸留水中に溶解することによって調製された。亜硝酸カリウムの1M溶液が、8.51gのKNO2を100mlの蒸留水中に希釈することによって調製された。17.612gのアスコルビン酸が、100mlの蒸留水中に希釈され、1M溶液が形成された。これら3つの保存溶液は、実験の数分前に調製された。
【0046】
ある容量のNaNO2及び等容量のKNO2が、この容量の2倍のアスコルビン酸と、滅菌容器において混合され、「窒素酸化物」含有溶液が生成された。亜硝酸塩とこの酸との反応は、直ちに発生した。生成されたガスが放出され、2mlの予め混合された液体(0.25M)が、20mlの蒸留水へ添加されて、1.25mMの溶液の最終濃度を生じた。
【0047】
NaNO2、KNO2、及びアスコルビン酸の別々のサンプルもまた、上記のように調製された。
【0048】
A)アスコルビン酸単独、
B)予め混合された「窒素酸化物」発生溶液、
C)別々に添加されたNaNO2とアスコルビン酸との組み合わせ、及び
D)別々に添加されたKNO2とアスコルビン酸との組み合わせ
の抗菌効果は、
実施例1 − メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌(MRSA)
実施例2 − カンジダ・アルビカンス(CA)
実施例3 − 緑膿菌(PS)、及び
実施例4 − コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)
に対するテストによって測定された。
【0049】
細菌の一晩培養が、20mlのLB(ルリア−ベルタニ(Luria−Bertani)、1リットルあたり10gバクト(Bacto)−トリプトン、+5gバクト−酵母抽出物、+10g塩化ナトリウム、pH7.5)ブロスに2〜3コロニーを接種し、37℃で一晩インキュベートすることによって調製された。約109生物を含有するブロス培養物が生成された。細菌は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて1:1,000希釈され、100μlの希釈ブロス培養物が、ブレイン−ハート(Brain−Heart)寒天プレート上に播種された。寒天プレートの表面上へ細菌を播種する前に、これらのプレートの中心から1つの寒天片(直径約70mm)が取り出された。
【0050】
A)において、0.25Mアスコルビン酸の殺菌効力をテストするために、50mlの保存溶液(1M)がさらに希釈された。280μlの0.25Mアスコルビン酸が、細菌が播種された寒天プレートの中空円へ添加された。
【0051】
B)において、280μlの「窒素酸化物」発生溶液(最終濃度0.25M)が、寒天プレート上の中空円へ添加された。
【0052】
C)及びD)において、NOガスの抗菌効果は、これらの溶液を予め混合するのではなく、別々に化学物質を添加することによってテストされた。C)において、140μl(0.5M)のNaNO2が寒天プレートへ添加され、ついで140μl(0.5M)のアスコルビン酸が添加された。反応が発生し、寒天プレートは、直ちにフタで覆われた。同じ手順が、D)においてKNO2及びアスコルビン酸を用いて繰り返された。
【0053】
これらの結果は、図1〜4に示されている。実施例1〜4の各々について、A)においてアスコルビン酸のみが用いられている場合、多量の細菌が存在することが分かる。しかしながら、B、C、及びDにおいて、細菌コロニーの大部分が破壊されている。
【0054】
実施例5
メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌(MRSA)培養物が、実施例1〜4と同じ方法で生成された。寒天プレートがポリスチレンボックスに入れられた。気体NOは、10mlの1Mアスコルビン酸と、5mlの1M NaNO2及び5mlの1M KNO2とをこのボックスにおいて反応させることによって生成され、ボックスのフタが直ちに取り替えられ、ついでこの培養物の一晩のインキュベーションが行なわれた。
【0055】
これらの結果は図5に示されている。図に見られるように、可視残留細菌培養物は存在しない。
【0056】
実施例6〜10
窒素酸化物発生溶液の殺菌効果が、胃を模した条件下にテストされた。図6は、窒素酸化物発生溶液への1時間暴露が、テストされた5つの異なる細菌、すなわち緑膿菌;コアグラーゼ陰性ブドウ球菌;カンジダ・アルビカンス;大腸菌;及びブドウ球菌において、平均97%の死滅を結果として生じたことを示している。この実験の設計は、実施例1〜4に記載されたものと同一であった。
【0057】
実施例11〜15
実施例1〜4において用いられた窒素酸化物発生溶液が、ICUにおいて患者の栄養摂取に用いられる、商業的に入手しうる経腸栄養供給オスモライト(登録商標)中のその抗菌活性をテストするために用いられた。混合物の効果が、緑膿菌(PS)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS);大腸菌(E.Coli)、カンジダ・アルビカンス(CA)、及びメチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌に対してテストされた。
【0058】
細菌の一晩培養物が、20mlのLB(ルリア−ベルタニ、1リットルあたり10gバクト−トリプトン、+5gバクト−酵母抽出物、+10g塩化ナトリウム、pH7.5)ブロスに2〜3コロニーを接種し、37℃で一晩インキュベートすることによって調製された。約109生物を含有するブロス培養物が生成された。細菌は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に1:1,000希釈され、100μlの希釈ブロス培養物が、ICUにおいて患者の栄養摂取に用いられる、20mlの商業的に入手しうる経腸栄養供給オスモライト(登録商標)中に入れられた。
【0059】
2mlの予め混合された窒素酸化物発生溶液が、20mlの細菌含有オスモライト(登録商標)へ添加され、1.25mMの溶液の最終濃度を生じた。同じ容量の滅菌水が、対照として用いられた。2mlの窒素酸化物発生混合物又は滅菌水を含有する20mlの汚染された供給物のインキュベーションが、1時間37℃で実施された。1時間のインキュベーション後、供給物(100μl)のサンプルが、血液寒天プレートに載せられ、滅菌スプレッダーを用いて広げられた。プレートは、20時間37℃でインキュベートされた。コロニーの数が計数され、データは、死滅パーセンテージとして、又は治療群及び対照群における可視コロニーの数の単なる比較として表示された。
【0060】
これらの結果は、図7〜11に示されている。図7は、緑膿菌への効果を示し、図8は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)への効果を示し、図9は、カンジダ・アルビカンスへの効果を示し、図10は、大腸菌(E.Coli)への効果を示し、図11は、メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌(MRSA)の効果を示している。
【0061】
これらの結果は明らかに、窒素酸化物含有混合物が、細菌コロニーの大部分を破壊することを証明している。
【0062】
これらの結果は、窒素酸化物含有溶液が、患者の口腔咽頭衛生のために安全に用いることができることを示している。
【0063】
同様に、亜硝酸塩及び酸が予め混合されない場合、亜硝酸塩が、この供給物と反応して、沈殿物を生成しうることも発見された。例えば亜硝酸塩、ついでアスコルビン酸の添加は、結果としてタンパク質の有意な沈殿を生じ、これは、供給物の粘度を増す。この理由により、これらの構成要素は、窒素酸化物発生溶液を生成するために、予め混合されなければならない。供給物の粘度の増加は、カテーテル遮断の公知リスクを実質的に増加させるであろう。
【0064】
したがって、化学物質を別々に添加することによる酸性化亜硝酸塩の生成は、可能性のある治療の開発及び予防に関して、最適な配合ではない。さらには、予め混合されたNO/NOx発生溶液が用いられないならば、機械的人工呼吸器を着けている、既に病気になりやすい(vulnerable)患者は、通常、H2阻害剤を受けており、胃潰瘍を発症するリスクの増加に晒されるであろう。
【0065】
予め混合された窒素酸化物発生溶液の別の利点は、抗菌効果が、より広い範囲のpHレベルで、すなわち5.0以下だけではないレベルで示されるということである。したがってこの溶液は、患者の口腔咽頭衛生のために安全に用いることができる。
【0066】
さらには、酸性化亜硝酸塩反応の残留構成要素、特にアスコルビン酸(ビタミンC)は、個別の栄養的及び保護的役割を有する。ビタミンCは、低密度リポタンパク質を酸化から保護し、胃中の有害なオキシダント(例えばペルオキシ亜硝酸塩フリーラジカル)を減少させる強力な水溶性酸化防止剤であり、鉄吸収を促進する。
【0067】
実施例16及び17
pH変化は、L−アスコルビン酸が、漸進的に、及び単一添加として亜硝酸ナトリウムへ添加される時に測定された。
【0068】
英国シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの分析グレード(>99%純度)亜硝酸ナトリウム(NaNO2)及びL−アスコルビン酸(C6H8O6)が用いられた。英国バクスター・ヘルスケア(Baxter Healthcare−UK)からの生理食塩水(0.9%wvのNaCl)も、用いられた。
【0069】
正常食塩水が、亜硝酸ナトリウム及びアスコルビン酸の溶液の調製における溶媒として用いられた。すべての溶液は、25ml又は50mlのロット中で室温(22〜25℃)で調製され、10〜20日以内に用いられた。保存溶液は、光を避けて気密容器に保持された。
【0070】
これらの溶液のすべてのpH測定は、ヴィッセンシャフトリッヒ−テヒニッシェ・ヴェルクシュテーテン(Wissenschaftlich−Technische Werkstatten(WTW)pHメーター、モデルpH340iを、サーモカップルを組み込んでいるSenTix20pH組み合わせ電極とともに用いて実施された。電極は、新たに調製された緩衝較正溶液(pH7.00及び4.00±0.002)で較正された。較正溶液は、アルドリッチTri−チェック緩衝カプセル(米国アルドリッチ)から調製された。
【0071】
これらの溶液のpHは、60rpmで操作される標準的磁気撹拌棒を加えて測定された。確実に電極が完全に浸漬されるように、少なくとも12mlの溶液が用いられた。亜硝酸ナトリウム及びアスコルビン酸の1M溶液が、正常食塩水を溶媒として用いて調製された。実施例16において、1mlの酸が10分毎にこの亜硝酸塩へ添加された。実施例17において、5mlの1Mアスコルビン酸が、12mlの1M亜硝酸ナトリウム溶液へ添加された。
【0072】
これらの結果は、図12及び13において見ることができる。
【0073】
実施例16において、亜硝酸ナトリウム溶液の当初pHは、約7.35であると測定された。pHは、4.2〜4.7の間のレベルへ急に降下し、ついで各添加後、約6のより安定な値へ急速に(4〜5分以内)回復する。いくつかの例において、pH回復があまりに急激なので、これは安定値へ降下する前に行過ぎを生じる。
【0074】
実施例17において、5分間試薬を混合した後に得られる安定pHレベルは、経口−胃−消化器供給についての生理学的に許容しうる5.0のレベル(生理食塩水のpH)よりも十分に高い。
【0075】
実施例18
ラマン分光測定が、6mlの1Mアスコルビン酸と12mlの1M亜硝酸ナトリウムとの反応について行なわれた。これらの試薬及び溶液は、実施例16及び17についてと同じであった。
【0076】
反応性混合物及び最終生成物は、ニコレット・アルメガ(Nicolet Almega)XR:マクロスコープとミクロスコープの両方の入口を備えた分散ラマン分光計を用いて測定された。スペクトルは、外部安定の近赤外線(NIR785nm)レーザーダイオードで励起された。測定は、スリット幅25μmで行なわれ、スペクトル解像は、4cm−1である。ソフトウエアシステム(Omnic,ver.7.2a)が、データを表示し、収集するために用いられた。分析されることになる液体又は結晶質サンプルは、サンプルホールダーに嵌め込まれた小さい石英管に入れられ、レーザービームと整合された。
【0077】
酸が亜硝酸塩溶液へ添加され、一方、混合物は、60rpmの一定率で撹拌された。この混合物の少量(約0.07ml)が、様々な時間間隔で、分光分析のために採取される。
【0078】
スペクトルは、反応体が混合された時間から10、30、60、90、及び135分の時点で、並びに反応がすべて完了した後で取られた。図14は、亜硝酸ナトリウム溶液のスペクトルを、6mlの酸と12mlの亜硝酸塩溶液との反応の間に得られたスペクトルとともに示している。低い方のトレースは、亜硝酸ナトリウムのみの溶液に属す。
【0079】
2250−2050cm−1領域においてピークがまったく存在しないことは、混合物中に、危険なイオンシアン化物(例えばNaCN)、シアナート(OCN)、又はフルミナート(CNO)化合物が存在しないことを示している。例えば伸縮(CN)振動は、2250−2050cm−1領域に位置する鋭いバンドを生成する。
【0080】
1325cm−1における強い対称伸縮振動の測定(亜硝酸ナトリウムのVs(NO2))は、この亜硝酸塩の半分が、10分未満で酸によって還元されることを明らかにする。混合物中の亜硝酸塩の量は、次の2時間の観察の間に、さらなる8%減少を示すことが観察された。反応が完了した時、亜硝酸塩の当初量のわずか約31%が混合物中に残された。
【0081】
このことは、反応の後で、過剰亜硝酸塩対酸比を有する溶液は、内部環境が、低いpHを保持するとすれば、生体内でさらなるNO/NOx発生反応を可能にするのに十分な亜硝酸塩を保持することを証明している。このような反応は、NO−NOx反応生成物の局部的利用可能性を増加させ、これらの組織の局部的生体内デアクティフィケーション(deactification)を補助するであろう。
【0082】
酸性化亜硝酸塩溶液のラマンバンドが、表1に示されている。表2は、示された時点で記録された酸性化亜硝酸塩溶液のラマンバンドのピーク面積を示している。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
2時間超の観察の後、混合物から発生するかなり多量の気泡が依然として存在した。撹拌が停止され、混合物が一晩保持された。24時間後、もはや気泡は観察されず、残された溶液(最終生成物)のラマンスペクトルは、亜硝酸塩の濃度が10分の時点でのその濃度の2/3(又は反応前のその当初濃度の1/3)まで減少したことが明らかになった。
【0086】
実施例19
M.tuberculosisの標準的研究所菌株が、NO/NOx−媒介死滅を受けやすいかどうかを決定するために、単純な生存可能性アッセイが用いられた。
【0087】
M.tuberculosisは、10mlの標準培地(ミドルブルック(Middlebrook)7H9、0.05%ツイーン80、10%v/vOADC補足)中に培養された。NO/NOx暴露のために、1mlの培養物が、10mlのミドルブルック溶液プラス0.5M NaNO2と0.25Mアスコルビン酸との混合物0.1ml中に接種された。亜硝酸塩/アスコルビン酸溶液を含まない対照が設定された。
【0088】
培養物が、37℃でインキュベートされ、24時間放置された。一連の希釈液が固体培地(ミドルブルック7H10、10%v/vOADC)上に培養され、CFUが3週間後に記録された。
【0089】
培地のpHは、亜硝酸塩/アスコルビン酸溶液の添加によって有意には低下されなかった。
【0090】
対照培養物からのコロニー形成単位(CFU)数は、1mlあたり1.5×107であった。培養された最低希釈においてNO−処理された培養物からの生存可能な細菌は、存在しなかった(検出限度10CFU/ml)。
【0091】
NO発生亜硝酸塩/アスコルビン酸溶液は、24時間後、>6logのM.tuberculosisの死滅において有効であった。
【0092】
実施例20
いくつかの異なる細菌のNO/NOx−媒介死滅の受けやすさを決定するために、1つのアッセイが用いられた。
【0093】
実験は、96マイクロウエルプレートにおいて実施された。いくつかのマイクロウエルは、60μlの亜硝酸ナトリウムで満たされ、最終濃度0、0.2、0.5、1、2、10、15、及び30mMを生じた。塩酸で酸性化されて最終pH値2.0、3.0、4.0、4.5、5.0、6.0、及び7.0を生じた60μlの細菌縣濁液(1mlあたり2×107コロニー形成単位の密度)、及び120μlのブレイン・ハート・インフュージョン・ブロス(英国ベージングストークのオキソイド(Oxoid,Basingstoke))もまた添加された。
【0094】
これらのプレートは密封され、37℃で一晩インキュベートされた。細菌成長に対する酸性化亜硝酸塩の阻害効果は、マイクロウエルプレートリーダー(オーストリア国ザルツブルグ、アントス(Anthos)ht III)を用いた、これらのウエルの光学密度(540nm)の測定によって決定された。
【0095】
すべての実験は、まったく同じように3回実施された。
【0096】
酸性化亜硝酸塩への暴露後の殺菌活性を決定するために、60μlの細菌縣濁液が、180μlの回収培地(ブレイン・ハート・インフュージョン・ブロス;pH7.0)へ移し替えられた。細菌成長の評価は、上記のように光学密度を測定するためにマイクロウエルプレートリーダーで決定された。
【0097】
この混合物の効果は、患者から以前に単離された微生物に対してテストされた。これらの結果は、図15a−nに示されている。
【0098】
酸性化亜硝酸塩溶液は、様々な細菌単離物に対する静菌効果並びに殺菌効果を有することが分かった。
【0099】
この溶液は、様々な状態の治療のために用いることができるが、その理由は、これが、抗生物質抵抗性生物に対して活性であり、抵抗性菌株の出現を助長せず、広いpH範囲にわたって有効であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理されたメチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌を含有する寒天プレートを示している。
【図2】図2は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理されたカンジダ・アルビカンスを含有する寒天プレートを示している。
【図3】図3は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理された緑膿菌を含有する寒天プレートを示している。
【図4】図4は、 A − アスコルビン酸 B − 予め混合されたアスコルビン酸、NaNO2、及びKNO2 C − NaNO2ついでアスコルビン酸、及び D − KNO2ついでアスコルビン酸で処理されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を含有する寒天プレートを示している。
【図5】図5は、一酸化窒素ガスで処理されたメチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌を含有する寒天プレートを示している。
【図6】図6は、いくつかの異なる細菌株に対する、窒素酸化物含有混合物の効果を示している。
【図7】図7は、緑膿菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図8】図8は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図9】図9は、カンジダ・アルビカンスに対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図10】図10は、大腸菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図11】図11は、メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌に対する、オスモライト(登録商標)中の窒素酸化物の混合物の効果を示している。
【図12】図12は、亜硝酸塩への酸の漸進的添加のpHに対する効果を示している。
【図13】図13は、亜硝酸塩への酸のバルク添加のpHに対する効果を示している。
【図14】図14は、亜硝酸塩への酸の添加後の一連のラマンスペクトルを示している。
【図15A】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15B】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15C】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15D】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15E】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15F】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15G】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15H】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15I】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15J】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15K】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15L】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15M】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図15N】様々な細菌に対する窒素酸化物の混合物の静菌特性及び殺菌特性を示している。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工呼吸器に関連する肺炎の予防、又は、中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つの感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における液体製剤の使用であって、前記液体製剤は、臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいることを特徴とする液体製剤の使用。
【請求項2】
人工呼吸器に関連する肺炎の予防のための薬剤の調製における液体製剤の使用であって、前記液体製剤は、臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいることを特徴とする液体製剤の使用。
【請求項3】
前記液体製剤が、10〜40,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記液体製剤が、100〜10,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記液体製剤が、水性製剤である、請求項1から4のいずれか1つに記載の使用。
【請求項6】
前記液体製剤が、少なくとも1つの酸と、少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩及び/又は少なくとも1つのアルカリ土類金属亜硝酸塩との反応生成物を含む、請求項1から5のいずれか1つに記載の使用。
【請求項7】
前記液体製剤が、少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩とアスコルビン酸との反応生成物を含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記液体製剤が、少なくとも1つの栄養物をさらに含む、請求項1から7のいずれか1つに記載の使用。
【請求項9】
臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物、及び、少なくとも1つの栄養物を含む、経腸管栄養供給用液体組成物。
【請求項10】
臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物、及び、少なくとも1つの栄養物を含む、腸管外栄養供給用液体組成物。
【請求項11】
10〜40,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
100〜10,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
水性組成物である、請求項9から12のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの酸と、少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩及び/又は少なくとも1つのアルカリ土類金属亜硝酸塩との反応生成物を含む、請求項9から13のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩とアスコルビン酸との反応生成物を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つにおける感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における液体製剤の使用であって、前記液体製剤は、臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいることを特徴とする液体製剤の使用。
【請求項17】
中咽頭の感染の予防及び/又は治療のための、請求項16に記載の液体製剤の使用。
【請求項18】
胃系の感染の予防及び/又は治療のための、請求項16又は17に記載の液体製剤の使用。
【請求項19】
消化器系の感染の予防及び/又は治療のための、請求項16から18のいずれか1つに記載の液体製剤の使用。
【請求項20】
図面を参照して明細書に記載され、又は図面に示されたものと実質的に同一の、経腸管栄養供給用液体組成物。
【請求項1】
人工呼吸器に関連する肺炎の予防、又は、中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つの感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における液体製剤の使用であって、前記液体製剤は、臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいることを特徴とする液体製剤の使用。
【請求項2】
人工呼吸器に関連する肺炎の予防のための薬剤の調製における液体製剤の使用であって、前記液体製剤は、臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいることを特徴とする液体製剤の使用。
【請求項3】
前記液体製剤が、10〜40,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記液体製剤が、100〜10,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記液体製剤が、水性製剤である、請求項1から4のいずれか1つに記載の使用。
【請求項6】
前記液体製剤が、少なくとも1つの酸と、少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩及び/又は少なくとも1つのアルカリ土類金属亜硝酸塩との反応生成物を含む、請求項1から5のいずれか1つに記載の使用。
【請求項7】
前記液体製剤が、少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩とアスコルビン酸との反応生成物を含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記液体製剤が、少なくとも1つの栄養物をさらに含む、請求項1から7のいずれか1つに記載の使用。
【請求項9】
臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物、及び、少なくとも1つの栄養物を含む、経腸管栄養供給用液体組成物。
【請求項10】
臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物、及び、少なくとも1つの栄養物を含む、腸管外栄養供給用液体組成物。
【請求項11】
10〜40,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
100〜10,000ppbの窒素酸化物を含有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
水性組成物である、請求項9から12のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの酸と、少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩及び/又は少なくとも1つのアルカリ土類金属亜硝酸塩との反応生成物を含む、請求項9から13のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1つのアルカリ金属亜硝酸塩とアスコルビン酸との反応生成物を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
中咽頭、胃系、及び消化器系のうちの少なくとも1つにおける感染の予防及び/又は治療のための薬剤の調製における液体製剤の使用であって、前記液体製剤は、臨床的有効量の溶解及び/又は分散された窒素酸化物を含んでいることを特徴とする液体製剤の使用。
【請求項17】
中咽頭の感染の予防及び/又は治療のための、請求項16に記載の液体製剤の使用。
【請求項18】
胃系の感染の予防及び/又は治療のための、請求項16又は17に記載の液体製剤の使用。
【請求項19】
消化器系の感染の予防及び/又は治療のための、請求項16から18のいずれか1つに記載の液体製剤の使用。
【請求項20】
図面を参照して明細書に記載され、又は図面に示されたものと実質的に同一の、経腸管栄養供給用液体組成物。
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図15H】
【図15I】
【図15J】
【図15K】
【図15L】
【図15M】
【図15N】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図15H】
【図15I】
【図15J】
【図15K】
【図15L】
【図15M】
【図15N】
【公表番号】特表2009−533396(P2009−533396A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504758(P2009−504758)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053591
【国際公開番号】WO2007/116102
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(503166517)
【氏名又は名称原語表記】BARTS AND THE LONDON NHS TRUST
【住所又は居所原語表記】R & D Office, 4th Floor, Alexandra House, The Royal London Hosipital, Whitechapel, London E1 1BB, Great Britain
【出願人】(504152306)クイーン メリー アンド ウェストフィールド カレッジ,ユニヴァーシティー オブ ロンドン (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053591
【国際公開番号】WO2007/116102
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(503166517)
【氏名又は名称原語表記】BARTS AND THE LONDON NHS TRUST
【住所又は居所原語表記】R & D Office, 4th Floor, Alexandra House, The Royal London Hosipital, Whitechapel, London E1 1BB, Great Britain
【出願人】(504152306)クイーン メリー アンド ウェストフィールド カレッジ,ユニヴァーシティー オブ ロンドン (1)
【Fターム(参考)】
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