説明

治療的使用のための方法

本発明は、Tヘルパー非依存性抗体応答が有益な疾患および障害の治療における治療的使用のための方法に関する。特に、本発明は、前記のこれらの疾患および障害が、免疫不全または自己免疫疾患の動物またはヒトにおいて治療される方法に関する。さらに具体的には、本発明は、免疫不全もしくは自己免疫疾患の動物もしくはヒトまたは炎症反応を特異的に回避する必要がある動物もしくはヒトにおけるアルツハイマー病の治療に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、患者における疾患または障害、特に、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害、あるいはタウまたはタウ様タンパク質に関連する疾患および障害の治療の際に、個体、特に、動物またはヒトにおいてT細胞非依存性免疫応答を誘導するための方法に関する。特に、本発明は、アミロイドタンパク質に関連する障害および異常の一群であるアミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害の治療における治療的使用および診断的使用のための方法に関する。さらに、本発明は、神経原線維変化によって引き起こされる疾患および障害または神経原線維変化に関連する疾患および障害の治療における治療的使用および診断的使用のための方法および組成物に関する。特に、本発明は、アルツハイマー病(AD)を含むタウオパチーの治療における治療的使用および診断的使用のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
抗原は古典的にはT依存性抗原およびT非依存性抗原に分けられる(Alugupulli 2008)。コグネイト相互作用および非コグネイト相互作用を提供することによってB細胞を助ける抗原特異的T細胞をタンパク質およびペプチドが誘導する場合、それらはT依存性抗原と呼ばれる。多くのワクチンはT依存性抗原である。一般的に、T依存性抗原は、抗体応答を発生させるために複数回の追加免疫を必要とする。
【0003】
T細胞の助けなく抗体応答を誘導する抗原はT非依存性抗原と呼ばれる(Bachmann and Zinkernagel 1997)。これらの抗原は、インビボ、例えば、無胸腺ヌード(nu/nu)マウスにおいてはTヘルパー細胞の非存在下で抗体応答を誘導する。T非依存性抗原は、典型的には、MHC-II分子によって処理および提示されないので、T細胞応答を刺激することができない抗原である。LPSおよび細菌多糖が典型的なT細胞非依存性抗原である。さらに、ある特定のウイルスおよび細菌のタンパク質の中には、T細胞の非存在下で抗体応答を刺激できるものもである。これは、BCRを効率的に架橋することができる反復構造が存在することによる可能性が最も高い。T非依存性抗原を用いた場合、T依存性抗原よりも非常に速くB細胞増殖および強力な抗体価が誘導される。
【0004】
一般的に、B細胞は、単なるB細胞表面Igの架橋結合だけでは、増殖し、免疫グロブリン(Ig)を産生するほど十分に活性化されない。最適に抗体を産生するためには、別のシグナル、すなわちTヘルパー細胞によって提供されるシグナルが必要とされる。抗原はB細胞表面上のIgに結合し、内部に取り入れられ、次いで、MHCクラスII分子と関連して抗原特異的Tヘルパー細胞に提示される。また、B細胞はCD40ならびにB7(CD86)を発現し、それぞれ、T細胞上にあるCD40リガンド(CD40L)およびCD28と相互作用し、それによってT細胞によるサイトカイン分泌を誘導し、B細胞応答をさらに調節する。これらのサイトカインは、B細胞の増殖および抗体産生細胞(プラズマ細胞)への分化を誘発する。このIgG、IgA、またはIgEへのアイソタイプスイッチはクラススイッチ組換え(CSR)として知られる。このスイッチが起こると、ある特定のB細胞はもはや他のアイソタイプであるIgMまたはIgDを作ることができない。
【0005】
抗原の大多数はB細胞活性化のためにT細胞の助けを必要とし、従って、T細胞の助けに依存する抗原(TD抗原)と呼ばれるのに対して、少数派の抗原はT細胞の助けに依存しない抗体を誘導することができ、TI抗原と呼ばれる(Mond JJ, Vos Q, Lees A, Snapper CM. T-cell independent antigens. Curr Opin Immunol 1995; 7:349-54.)。先天的無胸腺(nu/nu)マウスおよびX連鎖性免疫B細胞欠損のあるマウス(xidマウス、ブルトン(Burton)型チロシンキナーゼBtkの機能を欠いている)におけるTI抗原の免疫原性に基づいて、TI抗原は古典的にはTI1型抗原(TI-1)およびTI2型(TI-2)抗原にさらに分けられる。TI-1抗原は、nu/nuマウスおよびxidマウスにおいて優れた抗体応答を刺激する。TI-2抗原もnu/nuマウスにおいて優れた抗体応答を刺激するが、xidマウスでは刺激しない。TI-1抗原はポリクローナルB細胞アクチベーターを含有する。ポリクローナルB細胞アクチベーターは典型的にはリポ多糖(LPS)である。対照的に、TI-2抗原は、典型的には、反復生化学的構造からなる抗原、例えば、多量体タンパク質抗原または細菌莢膜多糖である。ほとんどのペプチドワクチンまたはタンパク質ワクチンは、B細胞およびT細胞の両方が活性化され、抗体応答がT細胞依存性であるという原理に基づいている。これは、年齢、免疫抑制、または疾患のためにT細胞不全となっている患者において問題となることがある。
【0006】
老化した免疫系ではT細胞の数および質が著しく変化している。これは、胸腺が退化した直接の結果である。上前胸部、心臓の真上にある中心的なリンパ器官である胸腺は、胸腺リンパ球形成と呼ばれるプロセスにおいて成熟したナイーヴT細胞の発生、選択、および末梢への産生を担っている。老化が進むにつれて、胸腺は退化する。結果として、ナイーヴT細胞の産生は年齢と共に劇的に低下する。胸腺産生の低下と抗原への生涯にわたる曝露によって、老人ではナイーヴT細胞プールは少なくなり、結果として、宿主が新たな抗原に応答する能力は限定される。これは、高齢個体が重症急性呼吸器症候群(SARS)などの新興疾患に罹患した時に特に懸念されることである。重症急性呼吸器症候群(SARS)にかかると50歳以上の感染者の50%が死亡した。さらに、老年期に見られるナイーヴT細胞は末梢に何十年も存在し、酸化ストレスおよび低濃度の生存因子などの一連の要因に曝露されており、これは細胞機能に悪影響を及ぼすことがある。若年マウスに由来する細胞と比較して、高齢動物に由来するナイーヴCD4+T細胞が産生するIL-2は著しく少なく、増殖は十分でなく、発生するエフェクターは少なく、表現型は十分に活性化されておらず、サイトカインを産生する能力は低い。しかしながら、高齢動物において新たに発生したCD4+T細胞はインビボおよびインビトロにおいて抗原に強力に応答し、増殖することができ、IL-2を産生することができ、コグネイトヘルパー機能を示すことができる。従って、抗原刺激に対する年齢に関連した応答欠陥は、少なくとも一部には、CD4+T細胞の暦年齢によるものかもしれない。
【0007】
記憶CD4+T細胞は、体液性応答および細胞性応答の制御において中心的な役割を果たしており、そのために、記憶CD4+T細胞の寿命およびワクチン接種に対する応答は防御免疫の維持にとって重大な意味を持つ。老いたナイーヴT細胞から発生した記憶T細胞はインビボで良好に生存および持続するが、リコール応答(recall response)中の増殖およびサイトカイン分泌に著しい欠陥があるのに対して、若い個体から発生した記憶細胞は、宿主が年をとるにつれて長期間にわたって機能を保持する。動物試験からのこれらのデータは最近、ヒトにおいて確認された。健常な高齢個体は、インフルエンザワクチンの接種を受けた時に、若年個体において観察されたCD4+T細胞応答に匹敵するCD4+T細胞応答を開始することができるが、インフルエンザワクチンに対する長期のCD4+T細胞免疫応答が損なわれている。
【0008】
しかしながら、T細胞の欠陥は、加齢の結果として起こるだけでなく、免疫抑制患者またはある特定の疾患、例えば、HIV、癌、または他の悪性腫瘍に罹患している患者にも見られる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の特定の態様において、MPLAと組み合わされたリポソーム上にパルミトイル化ペプチドが提示されている抗原性組成物が作製されている。このワクチンはT細胞非依存性である。このペプチドはβシート立体配座をとっている。このワクチンは迅速かつ強力な抗体応答を誘導する。このワクチンは別の担体タンパク質に依存せず、ヌードマウスにおける抗体誘導によって証明されたようにT細胞の非存在下で抗体応答を誘導することができる。最後に、このワクチンは、高齢マウスの老年期ではT細胞に欠陥があるのにもかかわらず、高齢マウスにおいて強力かつ効果的な抗体応答を誘導する(Miller R. A. et all, 1996; Adolfsson O, et all, 2001; Linton P.J., et all 1996)。
【0010】
ワクチンの特徴の概要
・特異的な立体配座(βシート)。
・強力な応答(免疫化の7日後で1000000ng/ml)。
・迅速で素速い応答(1回目の免疫化の7日後)。
・T細胞の助けを必要としない。
・担体タンパク質を必要としない。
・高齢マウスの老年期ではT細胞に欠陥があるのにもかかわらず、高齢マウスにおいて有効である。
【0011】
先行技術において公知のAβ抗原性組成物、例えば、Elan lnc社(CA; USA)のAN1792は、通常、Th1を動かす強力なアジュバント(QS21)と共に投与される典型的なT依存性抗原(Aβ1-42)である。アルツハイマー病患者におけるAN1792の初期研究から有望な効力が示されており、ワクチン接種を受けた患者はプラセボ治療患者より認知機能低下速度が遅くなった(Gilman et al. 2005)。しかしながら、治療患者のうち6%が、完全長Aβ1-42に対するT細胞応答によるものと考えられる反応である髄膜脳炎を発症した(Orgogozo et al.2003)。この炎症応答は、ほとんどの患者において可逆的であったが臨床試験の中止につながった。
【0012】
従って、必要とされるものは、T細胞不全患者、特に、CD4 T細胞が枯渇している患者における、疾患および障害、例えば、アミロイドタンパク質に関連する障害および異常の一群であるアミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害、あるいはタウオパチーを含む、タンパク質タウによって引き起こされる疾患および障害またはタンパク質タウに関連する疾患および障害の治療、症状の軽減、発症の遅延、または予防のために、抗Aβ抗原または抗タウ抗原などの抗原を使用して、抗原特異的T細胞、すなわちAβ特異的T細胞またはタウ特異的T細胞の非存在下でB細胞が直接活性化されることによって、抗体応答が誘導される方法である。特に、MPLAと組み合わせてリポソームによって提示されたパルミトイル化Aβペプチドまたはパルミトイル化タウペプチドは、T細胞の助けと、T細胞の助けをもたらす担体タンパク質を必要とすることなくAβ特異的抗体を誘導する。
【0013】
本発明は、改変抗原を含むT細胞非依存性抗原性組成物を患者に投与する工程を含む、疾患および障害の治療、症状の軽減、または予防における治療的使用および診断的使用のための方法であって、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている方法を提供する。特に、前記の疾患および障害は、患者、特に、免疫寛容患者、特に、T細胞不全患者、特に、前記患者の中でのCD4 T細胞の枯渇ならびに/またはCD4 T細胞上のCD14および/もしくはCD40Lの発現低下によって引き起こされるT細胞不全に罹患している患者、例えば、免疫不全患者または自己免疫疾患を有する患者における、アミロイドタンパク質に関連する障害および異常の一群であるアミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害、あるいはタウオパチーを含む、タンパク質タウによって引き起こされる疾患および障害またはタンパク質タウに関連する疾患および障害である。
【0014】
さらに、驚いたことに、T細胞非依存性免疫応答を必要とする患者、特に、免疫寛容患者、特に、T細胞免疫不全疾患に罹患している患者における疾患が、個体、特に、動物またはヒトにおいて回避できることが本発明の範囲内にあることが見出された。ここで、アミロイド関連疾患またはタウタンパク質関連疾患などの疾患が発症する前に個体にワクチン接種してもよく、アミロイドまたはタウタンパク質に関連する疾患または状態に罹患している場合には、本明細書に記載の方法によって個体を治療してもよい。
【0015】
本発明の基礎をなす技術的問題は、患者、特に、T細胞非依存性免疫応答を必要とする患者、例えば、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者における、疾患および障害の治療、症状の軽減、または予防における抗原性組成物の治療的使用および診断的使用のための方法を提供することである。ここで、治療された個体においてT細胞非依存性免疫応答が誘導される。特に、本発明の範囲内で治療される疾患および障害は、例えば、アミロイドタンパク質に関連する障害および異常の一群であるアミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害、あるいはタウオパチーを含む、タンパク質タウによって引き起こされる疾患および障害またはタンパク質タウに関連する疾患および障害である。
【0016】
前記技術的問題は、特許請求の範囲において特徴付けられた態様を提供することによって解決される。
【0017】
従って、本発明は、第1の態様において、患者、特に、動物またはヒト患者、特に、T細胞非依存性応答を必要とする患者、例えば、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者における疾患、状態、または障害の治療の際に、T細胞非依存性免疫応答を誘導するための改変抗原を含む抗原性組成物に関する。ここで、前記抗原はリポソーム表面に提示されている。
【0018】
1つの態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は免疫刺激剤として有効である。
【0019】
本発明の特定の態様において、前記抗原は、リポソーム表面に高度に反復して並んで提示されているペプチド抗原である。さらに特定の態様において、前記抗原はT細胞エピトープを含有しない。
【0020】
本発明の1つの態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、免疫不全患者、特に、自己免疫疾患に罹患している患者、特に、T細胞不全、特に、前記患者の中でのCD4 T細胞枯渇ならびに/またはCD4 T細胞上のCD14および/もしくはCD40Lの発現低下によって引き起こされるT細胞不全に罹患している患者の治療に用いられる。
【0021】
1つの態様において、本発明は、前記のT細胞不全が、例えば、患者の免疫抑制状態につながる免疫抑制化合物および化学療法化合物により治療される炎症性疾患、例えば、慢性関節リウマチ;乾癬、全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythrematosis)、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener's Granulamatosis)などを含む、年齢、免疫抑制、または疾患、特に、HIV、癌、もしくは他の悪性腫瘍からなる群より選択される疾患によって引き起こされる、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物に関する。
【0022】
1つの態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、抗原の全てまたは一部がβシート立体配座をとっている立体配座抗原を含む。特定の態様において、前記抗原性ペプチドは、規定された抗原立体配座、特に、ランダムコイル部分、αヘリックス部分、およびβシート部分の比率の均衡がとれていることを特徴とする立体配座を維持および安定化できるように改変されている。この規定された立体配座は、動物またはヒトに導入された時の、強力かつ高度に特異的な免疫応答、特に、T細胞非依存性免疫応答の誘導につながる。
【0023】
特に、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は立体配座抗原を含んでもよい。ここで、30%超、特に、40%超、特に、50%超、特に、60%超、特に、70%超、特に、80%超、特に、90%超、特に、95%超、および100%までがβシート立体配座をとっている。
【0024】
1つの態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、リポソームの脂質二重層への挿入を容易にする親油性部分または疎水性部分、特に、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、ステロイド、スフィンゴ脂質、糖脂質、またはリン脂質によって改変されているペプチド抗原を含む。
【0025】
特定の態様において、親油性部分または疎水性部分は、脂肪酸、特に、少なくとも10個の炭素原子からなる炭素骨格を有する脂肪酸、特に、パルミチン酸である。
【0026】
本発明の別の特定の態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、2つのパルミチン酸部分、特に、4つのパルミチン酸部分を含むペプチド抗原を含む。
【0027】
本発明のさらに別の特定の態様において、抗原性ペプチドと、該ペプチドが取り付けられるか、組み込まれるか、または再構成される担体/アジュバントの全実効電荷との組み合わせで、親油性部分または疎水性部分の寸法は、抗原性ペプチドが曝露され、安定化され、かつ高度に生物学的活性のある立体配座で提示されて、それによって、その曝露され、安定化され、かつ高度に生物学的活性のある立体配座で抗原性構築物の中に含まれる抗原決定基と、標的生物の免疫系とが自由に反応することが可能になり、それによって強力な免疫応答が起こるような寸法である。
【0028】
1つの態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、リポソーム調製物およびアジュバント、特に、リピドA、特に、解毒されたリピドA、例えば、モノホスホリルリピドAもしくはジホスホリルリピドAまたはミョウバンを含む。
【0029】
1つの態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、抗原性構築物、特に、AβペプチドのN末端に由来する単一のAβペプチド断片または反復したAβペプチド断片を含むAβ抗原性構築物を含む。
【0030】
本発明の特定の態様において、AβペプチドのN末端は、
a)Aβ1-30;
b)Aβ1-20;または
c)Aβ1-16;
を含む。
【0031】
本発明の別の特定の態様において、Aβペプチド断片は、
a)4〜20個のアミノ酸;
b)5〜16個のアミノ酸;
c)6〜12個のアミノ酸;または
d)4〜8個のアミノ酸
を含む。
【0032】
本発明のさらに別の特定の態様において、Aβペプチド断片は、
a)Aβ1-15;
B)Aβ1-16;
c)Aβ1-5
である。
【0033】
1つの態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、タンパク質タウ、特に、ヒトタンパク質タウの主要な病理学的ホスホエピトープを模倣するホスホペプチドである抗原性ペプチドを含む抗原性構築物を含む。
【0034】
本発明の特定の態様において、前記タウタンパク質は、
a)SEQ ID NO:2と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:2の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基18(P-Tyr18)に対応するアミノ酸残基がリン酸化されている(T1);
b)SEQ ID NO:3と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:3の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基212(P-Thr212)および214(P-Ser214)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つがリン酸化されている;
c)SEQ ID NO:4と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:4の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:4のアミノ酸残基202(P-Ser202)および205(P-Thr205)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つがリン酸化されている;
d)SEQ ID NO:5と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:5の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基396(P-Ser396)および404(P-Ser404)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に全てがリン酸化されている;
e)SEQ ID NO:6と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:6の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基404(P-Ser404)および409(P-Ser409)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に全てがリン酸化されている;
f)SEQ ID NO:7と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:7の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:7のアミノ酸残基202(P-Ser202)、205(P-Thr205)、212(P-Thr212)、および214(P-Ser214)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つ、特に少なくとも3つ、特に全てがリン酸化されている。
【0035】
別の特定の態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、
a)SEQ ID NO:2;
b)SEQ ID NO:3;
c)SEQ ID NO:4;
d)SEQ ID NO:5;
e)SEQ ID NO:6;または
f)SEQ ID NO:7
のアミノ酸配列を有するタウタンパク質を含む。
【0036】
さらに別の態様において、本発明は、患者、特に、動物またはヒト患者、特に、T細胞非依存性応答を必要とする患者、例えば、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、免疫不全患者、特に、自己免疫疾患に罹患している患者、特に、T細胞不全、特に、前記患者の中でのCD4 T細胞枯渇ならびに/またはCD4 T細胞上のCD14および/もしくはCD40Lの発現低下によって引き起こされるT細胞不全に罹患している患者における疾患、状態、または障害の治療において使用して、前記患者における免疫寛容を克服または低減するための、改変抗原を含む前記の態様のいずれかに記載の抗原性組成物に関する。ここで、前記抗原は、リポソーム表面に高度に反復して並んで提示され、前記患者は、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患もしくは障害、またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患もしくは障害に罹患している。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、患者、特に、動物またはヒト患者、特に、T細胞非依存性応答を必要とする患者、例えば、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、免疫不全患者、特に、自己免疫疾患に罹患している患者、特に、T細胞不全、特に、前記患者の中でのCD4 T細胞枯渇ならびに/またはCD4 T細胞上のCD14および/もしくはCD40Lの発現低下によって引き起こされるT細胞不全に罹患している患者における、疾患、状態、または障害の治療において使用して、前記患者における免疫寛容を克服または低減するための、改変抗原を含む前記態様のいずれかに記載の抗原性組成物に関する。ここで、前記抗原は、リポソーム表面に高度に反復して並んで提示され、前記患者は、タウもしくはタウ様タンパク質によって引き起こされる疾患もしくは障害またはタウもしくはタウ様タンパク質に関連する疾患もしくは障害に罹患している。
【0038】
本発明の特定の態様において、アミロイドに関連する疾患または障害は、個体、特に、動物またはヒトにおける認知記憶能力の喪失を特徴とする。
【0039】
本発明の別の特定の態様において、前記疾患は、神経学的な疾患または障害、特に、アミロイドーシスグループからの疾患または障害、特に、アルツハイマー病(AD)、軽度認知機能障害(MCI)、レヴィー小体認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島のパーキンソン認知症複合;進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis))、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、脳卒中、外傷性脳損傷、黄斑変性、および緑内障からなる群より選択される疾患または障害である疾患または障害である。
【0040】
特定の態様において、前記疾患はアルツハイマー病である。
【0041】
本発明のさらに別の特定の態様において、タウに関連する疾患または障害は、神経変性障害、特に、神経原線維病変の形成によって引き起こされる神経変性疾患もしくは神経変性障害または神経原線維病変の形成に関連する神経変性疾患もしくは神経変性障害である。
【0042】
本発明の特定の態様において、神経変性疾患または神経変性障害は、タウオパチー、特に、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creuzfeld-Jakob disease)、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、封入体筋炎,およびプリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、外傷性脳損傷、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、神経原線維変化を伴う非グアム島人型運動ニューロン疾患、嗜銀性グレイン型認知症(argyrophilic grain dementia)、大脳皮質基底核変性症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン・シュパッツ病(Hallevorden-Spatz disease)、多系統萎縮症、ニーマン・ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングルのみの認知症(Tangle only dementia)、脳炎後パーキンソニズム、筋緊張性ジストロフィーからなる群より選択されるタウオパチーである。
【0043】
本発明の特定の態様において、前記神経変性障害はアルツハイマー病である。
【0044】
本発明の1つの局面において、前記態様のいずれかに記載の抗原性組成物は有害な炎症作用を示さない。
【0045】
1つの態様において、本発明は、患者、特に、動物またはヒト患者、特に、このようなT細胞非依存性応答を必要とする患者における疾患、状態、または障害の治療の際にT細胞非依存性免疫応答を誘導するための医薬を調製するための、前記態様のいずれかに記載の改変抗原を含む抗原性組成物を使用する方法に関する。ここで、前記抗原は、リポソーム表面に、特に、高度に反復して並んで提示されている。本発明の1つの態様において、前記抗原性組成物は免疫刺激剤として有効である。
【0046】
1つの態様において、本発明は、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、動物またはヒト、特に、免疫不全患者、特に、自己免疫疾患に罹患している患者、特に、T細胞不全、特に、前記患者の中でのCD4 T細胞枯渇ならびに/またはCD4 T細胞上のCD14および/もしくはCD40Lの発現低下によって引き起こされるT細胞不全に罹患している患者における免疫寛容を克服もしくは低減するため、または該患者におけるT細胞応答の過剰刺激を回避するために、該患者の治療において使用するための医薬を調製するための、前記態様のいずれかに記載の改変抗原を含む抗原性組成物を使用する方法に関する。ここで、前記抗原はリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている。
【0047】
患者、特に、動物またはヒト患者、特に、このようなT細胞非依存性応答を必要とする患者における疾患、状態、または障害の治療の際に、T細胞非依存性免疫応答を誘導するための方法も本発明に含まれる。ここで、前記抗原は、リポソーム表面に、特に、高度に反復して並んで提示されている。本発明の1つの態様において、前記抗原性組成物は免疫刺激剤として有効である。
【0048】
免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、動物またはヒト患者、特に、免疫不全患者、特に、自己免疫疾患に罹患している患者、特に、T細胞不全、特に、前記患者の中でのCD4 T細胞枯渇ならびに/またはCD4 T細胞上のCD14および/もしくはCD40Lの発現低下によって引き起こされるT細胞不全に罹患している患者における疾患または障害の治療の際に、免疫寛容患者において免疫寛容を克服もしくは低減するための方法、またはT細胞活性化患者においてT細胞応答の過剰刺激を回避するための方法であって、前記態様のいずれかに記載の改変抗原を含む抗原性組成物を前記患者に投与する工程を含み;任意で、IgGおよび/またはIgMの抗体濃度を測定することによって前記個体における免疫応答を確かめるさらなる工程を含む方法も本発明に含まれる。ここで、前記抗原はリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている。
【0049】
さらに、別の態様において、本発明は、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、動物またはヒトであって、T細胞不全、特に、T細胞の枯渇、特に、CD4 T細胞の枯渇によって引き起こされるT細胞不全に罹患している患者、例えば、免疫不全患者または自己免疫疾患を有する患者における、疾患または状態、特に、アミロイドまたはタウタンパク質に関連する疾患または状態の治療、症状の軽減、または予防のための方法であって、前記態様のいずれかに記載の改変抗原を含む抗原性組成物を前記患者に投与する工程を含む方法に関する。ここで、前記抗原は、リポソーム表面に高度に反復して並んで提示され、治療された患者においてT細胞非依存性免疫応答が誘導される。
【0050】
従って、さらに、本発明は、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者においてT細胞非依存性免疫応答を誘導するための方法、特に、このような免疫寛容患者またはT細胞活性化患者における疾患または障害の治療、症状の軽減、発症の遅延、または予防のための方法に関する。前記の疾患または障害は、個体、特に、動物またはヒト、特に、T細胞が枯渇している動物またはヒト、特に、CD4 T細胞が枯渇している動物またはヒト、例えば、免疫不全患者または自己免疫疾患を有する患者における、アミロイドタンパク質に関連する障害および異常の一群であるアミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患もしくは障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患もしくは障害、あるいはタウオパチーを含む、タンパク質タウによって引き起こされる疾患もしくは障害またはタンパク質タウに関連する疾患もしくは障害である。前記方法は、以下の工程(a)抗原性構築物、特に、T非依存性抗原を含む抗原性構築物を前記個体に投与する工程;および(b)前記個体において免疫応答を確かめる工程、特に、IgGの抗体濃度を測定することによって免疫応答を確かめる工程を含む。
【0051】
本発明の特定の態様において、前記個体は、T細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇している高齢ヒト患者、特に、免疫不全患者または自己免疫疾患を有する患者である。
【0052】
本発明の別の態様において、前記個体は、T細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇している免疫抑制ヒト患者である。
【0053】
本発明のさらに別の態様において、前記個体は、T細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇しており、かつ免疫不全疾患、特に、HIVに罹患しているヒト患者である。
【0054】
本発明のさらに別の態様において、前記個体は、癌または別の悪性腫瘍を有し、かつT細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇しているヒト患者である。
【0055】
本発明のさらに別の態様において、前記個体は、T細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇しており、かつ自己免疫疾患に罹患しているヒト患者である。
【0056】
さらに、別の態様において、本発明は、個体、特に、動物またはヒト、特に、T細胞非依存性Aβ免疫応答を必要とする個体、特に、T細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇している免疫寛容の個体または患者、例えば、免疫不全患者または自己免疫疾患を有する患者において、T細胞非依存性免疫応答、特に、Aβ免疫応答またはタウ関連免疫応答を誘導するための方法に関する。前記方法は、以下の工程(a)抗原性構築物、特に、Aβ関連抗原性構築物またはタウ関連抗原性構築物、特に、T非依存性抗原を含むAβ関連抗原性構築物またはタウ関連抗原性構築物を前記個体に投与する工程;および(b)前記個体において免疫応答を確かめる工程、特に、IgGの抗体濃度を測定することによって免疫応答を確かめる工程を含む。
【0057】
別の態様において、本発明は、Aβ関連抗原またはタウ関連抗原がインビボにおいてTヘルパー細胞の非存在下で抗体応答を誘導する、前記態様に記載の方法に関する。
【0058】
本発明の別の態様において、Aβ関連免疫応答またはタウ関連免疫応答がIgG応答である、前記態様のいずれかに記載の方法が提供される。
【0059】
本明細書に記載の1つの態様において、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者、特に、動物もしくはヒト、特に、T細胞が枯渇している動物もしくはヒトまたはCD4 T細胞が枯渇している動物もしくはヒトが有害な炎症作用を示さない、前記態様のいずれかに記載の方法が提供される。
【0060】
本発明の別の態様において、免疫寛容の個体もしくは患者、特に、動物またはヒトが、T細胞不全、特に、CD4 T細胞不全であり、例えば、免疫不全患者または自己免疫疾患を有する患者である、前記態様のいずれかに記載の方法が提供される。
【0061】
さらなる態様において、Aβ抗原性構築物が、AβペプチドのN末端に由来する単一のAβペプチド断片または反復したAβペプチド断片を含む、前記態様のいずれかに記載の方法が提供される。
【0062】
本発明の別の態様において、AβペプチドのN末端がAβ1-30;Aβ1-20;またはAβ1-16を含む、前記態様のいずれかに記載の方法が提供される。
【0063】
さらなる態様において、Aβペプチド断片が4〜20個のアミノ酸;5〜16個のアミノ酸;6〜12個のアミノ酸;または4〜8個のアミノ酸を含む、前記態様のいずれかに記載の方法が提供される。
【0064】
特に、別の態様において、本発明は、Aβペプチド断片がAβ1-15;Aβ1-16;またはAβ1-5である、前記の態様に記載の方法に関する。
【0065】
1つの態様において、本発明は、抗原性組成物が、タンパク質タウ、特に、ヒトタンパク質タウの主要な病理学的ホスホエピトープを模倣するホスホペプチドである抗原性ペプチドを含む抗原性構築物を含む、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0066】
本発明の特定の態様において、前記タウタンパク質は、
a)SEQ ID NO:2と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:2の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基18(P-Tyr18)に対応するアミノ酸残基がリン酸化されている(T1);
b)SEQ ID NO:3と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:3の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基212(P-Thr212)および214(P-Ser214)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つがリン酸化されている;
c)SEQ ID NO:4と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:4の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:4のアミノ酸残基202(P-Ser202)および205(P-Thr205)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つがリン酸化されている;
d)SEQ ID NO:5と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:5の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基396(P-Ser396)および404(P-Ser404)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に全てがリン酸化されている;
e)SEQ ID NO:6と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:6の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基404(P-Ser404)および409(P-Ser409)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に全てがリン酸化されている;
f)SEQ ID NO:7と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:7の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:7のアミノ酸残基202(P-Ser202)、205(P-Thr205)、212(P-Thr212)、および214(P-Ser214)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つ、特に少なくとも3つ、特に全てがリン酸化されている。
【0067】
別の特定の態様において、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は、
a) SEQ ID NO:2;
b) SEQ ID NO:3;
c) SEQ ID NO:4;
d) SEQ ID NO:5;
e) SEQ ID NO:6;または
f) SEQ ID NO:7
のアミノ酸配列を有するタウタンパク質を含む。
【0068】
別の態様において、本発明は、抗原、特に、Aβペプチド抗原またはタウペプチド抗原が、小胞、粒子体、または分子などの担体の中に再構成されて提示されている、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0069】
別の態様において、本発明は、抗原、特に、Aβペプチド抗原またはタウペプチド抗原がリポソームの中に再構成されて提示されている、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0070】
別の態様において、本発明は、抗原、特に、Aβペプチド抗原またはタウペプチド抗原が、リポソーム担体/アジュバントの脂質二重層への挿入を容易にする親油性部分または疎水性部分によって改変されている、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0071】
別の態様において、本発明は、抗原性ペプチドと、該ペプチドが取り付けられるか、組み込まれるか、または再構成される担体/アジュバントの全実効電荷との組み合わせで、親油性部分または疎水性部分の寸法が、抗原性ペプチドが曝露され、安定化され、かつ高度に生物学的活性のある立体配座で提示され、それによって、その曝露され、安定化され、かつ高度に生物学的活性のある立体配座で抗原性構築物の中に含まれる抗原決定基と、標的生物の免疫系とが自由に反応することが可能になり、それによって強力な免疫応答が起こるような寸法である、前記の態様に記載の方法に関する。
【0072】
別の態様において、本発明は、親油性部分または疎水性部分が、脂肪酸、トリグリセリド、またはリン脂質、特に、少なくとも10個の炭素原子からなる炭素骨格を有する脂肪酸、特に、パルミチン酸である、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0073】
別の態様において、本発明は、抗原、特に、Aβペプチド抗原またはタウペプチド抗原が2つのパルミチン酸部分、特に、4つのパルミチン酸部分を含む、前記の態様に記載の方法に関する。
【0074】
別の態様において、本発明は、リポソーム調製物が、アジュバント、特に、リピドA、特に、解毒されたリピドA、例えば、モノホスホリルリピドAもしくはジホスホリルリピドAまたはミョウバンを含有する、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0075】
別の態様において、本発明は、アミロイドに関連する疾患または状態が、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態、例えば、軽度認知機能障害(MCI)を含む神経障害疾患、例えば、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島のパーキンソン認知症複合;ならびにアミロイド様タンパク質に基づく、またはアミロイド様タンパク質に関連する他の疾患、例えば、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、脳卒中、外傷性脳損傷、黄斑変性および緑内障を含む全ての眼疾患およびその他の眼疾患を含むが、これに限定されない疾患からなる群より選択される疾患または状態であるが、特に、アルツハイマー病である、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0076】
別の態様において、本発明は、アミロイド関連状態が、個体、特に、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者、特に、動物またはヒトにおける認知記憶能力の喪失を特徴とする、前記の態様に記載の方法に関する。
【0077】
別の態様において、本発明は、認知記憶能力の喪失を特徴とするアミロイド関連状態に罹患している、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者、特に、動物またはヒトの治療が、認知記憶能力の保持の増大、特に、認知記憶能力の完全な回復につながる、前記の態様に記載の方法に関する。
【0078】
さらに別の特定の態様において、本発明は、タウに関連する疾患または障害が、神経変性障害、特に、神経原線維病変の形成によって引き起こされる、または神経原線維病変に関連する神経変性疾患または神経変性障害、特に、タウオパチー、特に、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー疾患、封入体筋炎、およびプリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、外傷性脳損傷、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、神経原線維変化を伴う非グアム島人型運動ニューロン疾患、嗜銀性グレイン型認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン・シュパッツ病、多系統萎縮症、ニーマン・ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングルのみの認知症、脳炎後パーキンソニズム、筋緊張性ジストロフィーからなる群より選択されるタウオパチーであるが、特に、アルツハイマー病である、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0079】
別の態様において、本発明は、個体、特に、動物またはヒト、特に、T細胞が枯渇している動物またはヒト、特に、CD4 T細胞が枯渇している動物またはヒトにおいて、T細胞非依存性免疫応答、特に、Aβ関連免疫応答またはタウ関連免疫応答を誘導するための、前記態様のいずれかに記載の抗原、特に、Aβペプチド抗原またはタウペプチド抗原の使用に関する。
【0080】
別の態様において、本発明は、個体、特に、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者における、疾患または状態、特に、アミロイドタンパク質またはタウタンパク質に関連した疾患または状態の治療、症状の軽減、または予防のための方法に関する。前記方法は、このような疾患または状態に罹患している、前記個体または患者、特に、動物またはヒト、特に、T細胞が枯渇している動物またはヒト、特に、CD4 T細胞が枯渇している動物またはヒトに、前記態様のいずれか1つにおいてクレームされたような抗原性構築物、特に、Aβ抗原性構築物もしくはタウ抗原性構築物、または前記抗原性構築物を含むT細胞非依存性抗原性組成物を投与する工程を含む。ここで、治療された個体において、T細胞非依存性免疫応答、特に、Aβ免疫応答またはタウ免疫応答が誘導される。
【0081】
本発明の特定の態様において、前記個体は、T細胞が枯渇している高齢ヒト患者、特に、CD4 T細胞が枯渇している高齢ヒト患者である。
【0082】
本発明の別の態様において、前記個体は、T細胞が枯渇している免疫抑制ヒト患者、特に、CD4 T細胞が枯渇している免疫抑制ヒト患者である。
【0083】
本発明のさらに別の態様において、前記個体は、T細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇しており、かつ免疫不全疾患、特に、HIVに罹患しているヒト患者である。
【0084】
本発明のさらに別の態様において、前記個体は、癌または別の悪性腫瘍を有し、かつT細胞、特に、CD4 T細胞が枯渇しているヒト患者である。
【0085】
本発明のさらに別の態様において、前記個体は、T細胞活性化を示し、T細胞応答をさらに刺激することによって医学的リスクが引き起こされるヒト患者である。
【0086】
別の態様において、本発明は、有害な炎症作用が誘導されない、前記の態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0087】
別の態様において、本発明は、抗原、特に、Aβ抗原性構築物またはタウ抗原性構築物の投与によって、主に、非炎症性サブタイプ、特に、非炎症性Th2サブタイプ、特に、アイソタイプIgG1およびIgG2bの抗体が発生する、前記の態様に記載の方法に関する。
【0088】
別の態様において、本発明は、Aβ抗原性構築物の投与によって、主に、T細胞非依存性IgGサブクラス、特に、IgG3アイソタイプの抗体が発生する、前記の態様に記載の方法に関する。
【0089】
別の態様において、本発明は、脳にある炎症マーカー、特に、IL-1β、IL-6、IFN-γ、およびTNFαからなる群より選択されるマーカーの著しい増加につながらない、前記態様に記載の方法に関する。
【0090】
別の態様において、本発明は、Aβ抗原性構築物の投与によって、脳にある不溶性の、斑に関連するAβ1-40およびAβ1-42が著しく減少する、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0091】
別の態様において、本発明は、Aβ抗原性構築物の投与によって、脳にある可溶性Aβ1-42のレベルが著しく低下する態様(49)の方法に関する。
【0092】
別の態様において、本発明は、アミロイドに関連した疾患または状態が、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態、例えば、軽度認知機能障害(MCI)を含む神経障害、例えば、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島のパーキンソン認知症複合;ならびにアミロイド様タンパク質に基づく他の疾患、またはアミロイド様タンパク質に関連する他の疾患、例えば、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、脳卒中、外傷性脳損傷、黄斑変性および緑内障を含む全ての眼疾患およびその他の眼疾患を含むが、これに限定されない疾患からなる群より選択される疾患または状態であるが、特に、アルツハイマー病である、前記態様のいずれかに記載の方法に関する。
【0093】
別の態様において、本発明は、前記態様のいずれかによる、個体、特に、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者における、疾患または状態、特に、タウタンパク質に関連する疾患または状態の治療、症状の軽減、または予防のための方法に関する。ここで、タウに関連する疾患または障害は、神経変性障害、特に、神経原線維病変の形成によって引き起こされる、または神経原線維病変の形成に関連する神経変性疾患または神経変性障害、特に、タウオパチー、特に、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー疾患、封入体筋炎、およびプリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、外傷性脳損傷、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、神経原線維変化を伴う非グアム島人型運動ニューロン疾患、嗜銀性グレイン型認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン・シュパッツ病、多系統萎縮症、ニーマン・ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングルのみの認知症、脳炎後パーキンソニズム、筋緊張性ジストロフィーからなる群より選択されるタウオパチー、特に、アルツハイマー病である。
【0094】
さらなる方法、候補、化合物、および詳細は、PCT/EP2006/011861(WO2007/068411の下で公開)および2009年4月3日に出願されたEP特許出願第09157303.0号に開示される。これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【発明を実施するための形態】
【0096】
発明の説明
本発明はまた、特定の態様において、個体、特に、動物またはヒトにおけるT細胞免疫不全疾患を回避できることを想定する。このような個体には疾患の発症前にワクチン接種してもよく、疾患または状態に罹患している場合には、本明細書に記載の方法によって個体を治療してもよい。
【0097】
1つの態様において、疾患はアミロイド関連疾患である。別の態様において、疾患はタウタンパク質関連疾患である。このような疾患は、特に、ディジョージ症候群、ウィスコット・オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、または慢性粘膜皮膚カンジダ症でもよい。
【0098】
本発明の超分子抗原性構築物またはこのような抗原性構築物を含む抗原性組成物は、個体、特に、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者、特に、動物もしくはヒト、特に、T細胞が枯渇している動物またはヒト、特に、CD4 T細胞が枯渇している動物またはヒトにおいてT細胞非依存性免疫応答を誘導するためのワクチン組成物を調製するために使用することができる。1つの態様において、超分子抗原性構築物は、個体、特に、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者、特に、動物もしくはヒト、特に、T細胞が枯渇している動物もしくはヒト、特に、CD4 T細胞が枯渇している動物もしくはヒトにおいて、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態、例えば、軽度認知機能障害(MCI)を含む神経障害、例えば、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島のパーキンソン認知症複合;ならびにアミロイド様タンパク質に基づく他の疾患またはアミロイド様タンパク質に関連する他の疾患、例えば、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、脳卒中、外傷性脳損傷、黄斑変性および緑内障を含む全ての眼疾患およびその他の眼疾患を含むが、これに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢性アミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成に関連した疾患および障害の一群であるアミロイドーシスであるが、特に、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態、例えば、軽度認知機能障害(MCI)を予防するための、治療するための、またはその影響を軽減するための方法において用いられる。前記方法は、本発明の超分子抗原性構築物を前記個体に投与する工程を含むが、特に、このような本発明の超分子抗原性構築物を含むワクチン組成物を、このような障害に罹患し、従って、このような治療を必要とする動物、特に、哺乳動物またはヒトに投与する工程を含む。
【0099】
本発明のなおさらなる態様において、個体、特に、免疫寛容の個体もしくは患者またはT細胞活性化患者、特に、動物またはヒト、特に、T細胞が枯渇している動物またはヒト、特に、CD4 T細胞が枯渇している動物またはヒトにおいて、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態、例えば、軽度認知機能障害(MCI)を含む神経障害、例えば、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島のパーキンソン認知症複合;ならびにアミロイド様タンパク質に基づく他の疾患、またはアミロイド様タンパク質に関連する他の疾患、例えば、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、脳卒中、外傷性脳損傷、黄斑変性および緑内障を含む全ての眼疾患およびその他の眼疾患を含むが、これに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢性アミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成に関連した疾患および障害の一群であるアミロイドーシスであるが、特に、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態、例えば、軽度認知機能障害(MCI)を予防するための、治療するための、またはその影響を軽減するための医薬を調製するための方法が提供される。前記方法は、本発明の抗体を薬学的に許容される形に処方する工程を含む。
【0100】
特定の態様において、本発明は、好ましい抗原立体配座の安定化および曝露の向上をもたらす抗原提示を利用する。好ましい抗原立体配座の安定化および曝露の向上により、最終的には、高度に特異的な免疫応答が生じ、独特の特性を有する抗体が発生する。
【0101】
タウ
本発明は、T細胞不全を有する免疫寛容患者、特に、CD4 T細胞が枯渇している患者における、疾患または障害、特に、アミロイドタンパク質に関連する障害および異常の一群であるアミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害、あるいはタウタウオパチーを含む、タンパク質タウによって引き起こされる疾患および障害またはタンパク質タウに関連する疾患および障害の治療、症状の軽減、発症の遅延、または予防のための、抗原性ペプチドを使用する超分子構築物を含むT細胞非依存性免疫原性組成物および前記免疫原性組成物を含む治療用ワクチン組成物を提供する。このような抗原性ペプチドは、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質、例えば、プリオンタンパク質、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ハンチンチンなどを含んでもよいが、これに限定されない。1つの態様において、本発明は、超分子抗原性構築物、特に、アミロイドタンパク質またはアミロイド様タンパク質、例えば、プリオンタンパク質、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ハンチンチンなどに由来するペプチド抗原、特に、β-アミロイドペプチドのN末端部分を代表する、本明細書において前記で説明した本発明のβ-アミロイドペプチド抗原またはタウペプチド抗原を含む抗原性構築物を含む免疫原性組成物を提供する。この抗原性ペプチドは、規定された抗原立体配座、特に、ランダムコイル部分、αヘリックス部分、およびβシート部分の比率の均衡がとれていることを特徴とする立体配座を維持および安定化できるように改変されている。この規定された立体配座は、動物またはヒトに導入された時の、強力かつ高度に特異的な免疫応答、特に、T細胞非依存性免疫応答の誘導につながる。
【0102】
特に、本明細書に記載の本発明の抗原性組成物は立体配座抗原を含んでもよい。ここで、30%超、特に、40%超、特に、50%超、特に、60%超、特に、70%超、特に、80%超、特に、90%超、特に、95%超、および100%までがβシート立体配座をとっている。
【0103】
抗原性ペプチドの望ましい立体配座の形成および安定化を達成するやり方の1つは、担体、例えば、小胞、粒子体、もしくは分子、または抗原性ペプチドの担体/アジュバントとして適切に役立つことができる他の任意の手段に部分的または完全に取り付けられた、組み込まれた、または再構成された抗原性ペプチドを提示することによるものである。本発明の特定の態様において、抗原性ペプチドは特定の立体配座をとって提示されるように、弱い相互作用、例えば、ファンデルワールス相互作用、疎水相互作用、もしくは静電相互作用を介して、またはこれらの相互作用の2つ以上の組み合わせを介して担体の中に取り付けられる、組み込まれる、または再構成される。この特定の立体配座は、立体配座変化が阻止されるか、または厳しく制限されるように抗原性ペプチドの三次元運動自由度を制限することによって維持および安定化される。
【0104】
本発明の特定の態様において、抗原性ペプチドは、担体分子の表面に高度に反復して並んで提示され、特に、反復配列は、少なくとも10個の反復抗原単位/担体分子、特に少なくとも50個の反復抗原単位/担体分子、特に少なくとも100個の反復抗原単位/担体分子、特に少なくとも200個の反復抗原単位/担体分子、特に少なくとも300個の反復抗原単位/担体分子;特に少なくとも400個の反復抗原単位/担体分子、特に少なくとも500個の反復抗原単位/担体分子を含む。
【0105】
担体/アジュバントとして小胞、粒子、または粒子体、例えば、リポソームが用いられる場合、抗原性ペプチドの組成物は、その全実効電荷が、ペプチドが取り付けられる担体/アジュバント表面の全実効電荷と同一になるように選択されてもよい。電荷が等しい担体/アジュバント表面と抗原性ペプチドとの間で、特に、電荷が等しい担体表面と、抗原性ペプチドを構成するアミノ酸残基との間で、さらに具体的には、電荷が等しい担体表面と、抗原性ペプチドに含まれる電荷が等しいアミノ酸残基との間の静電反発力が有効であると、抗原性ペプチドは、高い生物学的活性を保証する、規定された、高度に特異的であり、かつ安定化された立体配座をとることができる。結果として、抗原性ペプチドは、高度に生物学的に活性な立体配座をとって曝露および提示されるので、標的生物の免疫系は、生物学的に活性な立体配座をとって抗原性構築物に含まれる抗原決定基と自由に相互作用することが可能になり、強力かつ立体配座特異的な免疫応答が生じて、例えば、標的生物において高い抗体価が得られる。片側にある抗原性ペプチドの全実効電荷と、反対側にあるペプチドが取り付けられる、組み込まれる、または再構成される担体の全実効電荷を注意深く調整することによって、抗原性ペプチドは、電荷が等しい担体表面と抗原性ペプチドとの間で有効であるが、特に、電荷が等しい担体表面と、抗原性ペプチドを構成するアミノ酸残基との間で、さらに具体的には、電荷が等しい担体表面と、抗原性ペプチドに含まれる電荷が等しいアミノ酸残基との間で有効な静電反発力によって誘導および安定化された立体配座をとって、担体表面に、または担体表面の近くに曝露されて提示される。これにより、標的生物の免疫防御機構に自由に接近することができる、従って、動物またはヒトに投与された時に強力かつ高度に特異的な免疫原応答を誘導することができる抗原性構築物が提示される。免疫原応答は、担体としてリポソームを使用することによってさらに増大することができる。このリポソームは、本発明の治療用ワクチンによって治療される標的動物またはヒトの中での免疫応答を増大または刺激するアジュバントとして機能することができる。任意で、リポソームは、さらなるアジュバント、例えば、リピドA、ミョウバン、リン酸カルシウム、インターロイキン1、ならびに/または多糖およびタンパク質のマイクロカプセルをさらに含有してもよいが、特に、解毒されたリピドA、例えば、モノホスホリルリピドAもしくはジホスホリルリピドAまたはミョウバンを含有してもよい。
【0106】
本発明の特定の態様において、本明細書において前記で説明した本発明の抗原性ペプチド、特に、全実効電荷がマイナスの抗原性ペプチドが、リポソーム、特に、リポソームの頭部基の全実効電荷がマイナスになるようにリポソーム構成要素が選択されているリポソームの中で再構成されて用いられる。特に、リポソームは、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPEA)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、およびコレステロールからなる群より選択される構成要素からなり、任意で、本発明の範囲内で適切に使用することができるモノホスホリルリピドAまたは他の任意のアジュバント、例えば、ミョウバン、リン酸カルシウム、インターロイキン1、ならびに/または多糖およびタンパク質のマイクロカプセルをさらに含有する。
【0107】
本発明の別の特定の態様では、本明細書において前記で説明したように静電力が有効になるように、担体/アジュバントの中に入り、それによって、ペプチドを担体/アジュバントに固定し、担体/アジュバント分子の表面に、または担体/アジュバント分子の表面近くで提示することができるアンカー型分子に共有結合している、本明細書において前記で説明した本発明の改変ペプチド抗原が提供される。
【0108】
リポソームが担体/アジュバントとして用いられる場合、一般的に、抗原性ペプチド構築物は形成に伴ってリポソーム膜の中に入る疎水性尾部を有する。さらに、抗原性ペプチドはリポソームに挿入できるように疎水性尾部を含有するように改変することができる。
【0109】
本発明の超分子抗原性構築物は、一般的に、抗原作用を増強するように改変されたペプチドを含む。このようなペプチドは、ペグ化(ポリエチレングリコールまたは改変ポリエチレングリコールを使用する)を介して改変されてもよく、他の方法を介して、例えば、本明細書において前記で説明したパルミチン酸、ポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン、ポリヒスチジン)、多糖(例えば、ポリガラクツロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコリド、キチン、キトサン)、合成ポリマー(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル)、またはコポリマー(例えば、ポリ(メタクリル酸)およびN-(2-ヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド)などによって改変されてもよい。
【0110】
本発明の特定の態様において、本明細書において前記で説明した本発明の抗原性ペプチドであって、抗原性ペプチドがリポソームの中に入るように疎水性尾部を含有するように改変されている抗原性ペプチドが提供される。特に、担体/アジュバントの脂質二重層への挿入を容易にする親油性部分または疎水性部分によって、β-アミロイドペプチドが改変されてもよい。本発明の親油性部分または疎水性部分は、脂肪酸、トリグリセリド、およびリン脂質、特に、脂肪酸炭素骨格が少なくとも10個の炭素原子を有する、特に、親油性部分が、少なくとも約14個の炭素原子および約24個までの炭素原子からなる炭素骨格を有する脂肪酸を有し、さらに具体的には、疎水性部分が、少なくとも14個の炭素原子からなる炭素骨格を有する、脂肪酸、トリグリセリド、およびリン脂質でもよい。疎水性部分の例には、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびコレステロールまたはDSPEが含まれるが、これに限定されない。本発明の特定の態様において、疎水性部分はパルミチン酸である。
【0111】
パルミトイル化は、リポソーム二重層内にペプチド用アンカーを提供すると同時に、C16:0脂肪酸部分が比較的短いために、ペプチドをリポソーム表面に、またはリポソーム表面の近くに曝露した状態で提示させる。従って、抗原をプロセシングする細胞は、ペプチドと一緒にリポソーム全体を取り込まなければならないだろう。
【0112】
本発明の別の態様において、PEGが超分子構築物の調製において用いられる。ここで、遊離のPEG末端がホスファチジルエタノールアミン分子と共有結合している(脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などでもよく、その組み合わせでもよい)。この超分子構造は、様々なモル比のリン脂質およびコレステロール(ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、コレステロール)からなるリポソームの中で再構成されてもよい。他のリン脂質を使用することができる。リピドAは約40μg/pmoleのリン脂質濃度で用いられる。
【0113】
ある特定の態様において、本発明の超分子抗原性構築物は、ペグ化リジンの各末端に少なくとも1つ、特に、各末端に1つまたは2つに、本明細書において前記で説明した抗原性ペプチド配列が共有結合により取り付けられている。PEG(ポリエチレングリコール(polyethylenglycol))鎖の長さは、n=8〜n=150,000以上、特に、n=10〜n=80,000、さらに具体的には、n=10〜n=10,000でもよい。本発明の特定の態様において、PEG鎖の長さは、n=45以下、特に、n=5〜n=40、さらに具体的には、n=10〜n=30、さらに具体的には、n=10である。
【0114】
本発明の組成物において使用することができるリポソームには、当業者に公知のリポソームが含まれる。リポソームを作製するのに有用な任意の標準的な脂質を使用することができる。標準的な二重層リポソームおよび多層リポソームを用いて、本発明の組成物を作ることができる。当業者に公知のリポソームを作る任意の方法を使用することができるが、最も好ましいリポソームは、参照により本明細書に組み入れられる、Alving et al., Infect Immun. 60:2438-2444, 1992の方法に従って作られる。リポソームは、任意で、アジュバントもしくは免疫調節剤またはその両方を含有してもよい。好ましい免疫調節剤は、リピドA、特に、解毒されたリピドA、例えば、モノホスホリルリピドAまたはジホスホリルリピドAである。
【0115】
リポソームは、本明細書において前記で説明した超分子構築物を含む担体として使用することができると同時に、本発明の治療用ワクチンによって治療される標的動物またはヒトの中での免疫応答を増大または刺激するアジュバントとして機能することができる点で二重機能を有してもよい。任意で、リポソームは、リピドA、ミョウバン、リン酸カルシウム、インターロイキン1、および/または多糖およびタンパク質のマイクロカプセルなどがあるが、特に、リピドA、さらに具体的には、解毒されたリピドA、例えば、モノホスホリルリピドAもしくはジホスホリルリピドA、またはミョウバンである、さらなるアジュバントおよび/もしくは免疫調節剤またはその両方をさらに含有してもよい。
【0116】
本明細書において前記で説明した本発明の超分子抗原性構築物を含む本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、例えば、本発明の組成物を利用するためのキットと関連して、下記で説明するように、液体溶液、注射用懸濁液、または他に注射前に可溶化するのに適した固体の形で調製されてもよい。
【0117】
超分子抗原性構築物を含む本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、ヒトまたは動物、特に、アミロイド関連疾患またはタウ関連疾患に罹患しているヒトもしくは動物において免疫応答を誘導して、疾患に関連した症状を軽減するするために、または疾患に罹患していない健常個体において見られる状態を回復するために前記のヒトまたは動物に投与される。
【0118】
本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、任意の適切な標準的な投与経路によってヒトまたは動物に投与される。一般的に、組成物は、局所経路、経口経路、直腸経路、鼻経路、または非経口経路(例えば、静脈内経路、皮下経路、もしくは筋肉内経路)によって投与されてもよい。さらに、組成物は、徐放性マトリックス、例えば、生分解性ポリマーの中に組み込まれてもよく、このポリマーは、送達が所望される場所の近くに、例えば、腫瘍部位に移植される。前記方法は、単回投与、所定の時間間隔での反復投与、および所定の期間にわたる持続的な投与を含む。
【0119】
特に、本発明の抗原性ペプチド組成物は、非経口注射、特に、腹腔内注射、静脈内(intraveneous)注射、皮下注射、および筋肉内注射によって投与される。
【0120】
組成物の投与量は、治療されている状態、使用される特定の組成物、および他の臨床要因、例えば、患者の体重、大きさ、および状態、体表面積、投与しようとする特定の化合物または組成物、同時に投与されている他の薬物、ならびに投与経路に左右されるだろう。
【0121】
本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、疾患を治療するための他の生物学的に活性な物質および手順と組み合わせて投与することができる。他の生物学的に活性な物質は、混合物の形をとって、本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンを既に含んでいる同じ組成物の一部でもよい。この場合、治療用ワクチンおよび他の生物学的に活性な物質は、同じ薬学的に許容される溶媒および/もしくは担体中で、または同じ薬学的に許容される溶媒および/もしくは担体と共に混合される。または、これらは、別々の組成物の要素として別々に提供されてもよく、別々の組成物は、要素からなるキットの形をとって別々にまたは一緒に提供されてもよい。
【0122】
本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、他の生物学的に活性な物質と同時に投与されてもよく、断続的に投与されてもよく、連続して投与されてもよい。例えば、本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、第1のさらなる生物学的に活性な物質と同時に投与されてもよく、前記組成物の投与後または投与前に連続して投与されてもよい。複数の種類のさらなる生物学的に活性な物質が、本発明の少なくとも1つの免疫原性組成物および/または治療用ワクチンと共に投与される適用法が選択された場合、この化合物または物質は同時に投与されてもよく、様々な組み合わせで部分的に連続して投与されてもよい。
【0123】
本発明の別の目的は、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、T細胞不全患者、特に、CD4 T細胞が枯渇している患者における、本明細書において前記で開示した、続発性アミロイドーシス(amyloidoses)および加齢性アミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成に関連した疾患および障害の一群であるアミロイドーシス、あるいは神経原線維病変の形成によって引き起こされるタウに関連する神経変性疾患もしくは神経変性障害または神経原線維病変の形成に関連するタウに関連する神経変性疾患もしくは神経変性障害であるタウオパチーの予防的処置および/もしくは治療的処置ならびに/またはその影響の軽減のために、本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンと任意で1種類または複数の種類のさらなる生物学的に活性な物質からなる混合物、ならびにこのような本発明の組成物またはその混合物を使用する方法を提供することである。
【0124】
本発明の混合物は、本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンに加えて、生物学的に活性な物質、例えば、アミロイド形成ペプチド抗原に対して産生された抗体、特に、超分子抗原性構築物の形で提示されたアミロイド形成抗原に対して産生された抗体、さらに具体的には、本明細書において開示された本発明の抗体を含む、アミロイドまたはアミロイド様タンパク質、例えば、アルツハイマー病に関与するAβタンパク質に関連した疾患および障害の一群であるアミロイドーシスの薬物療法において用いられる公知の化合物を含んでもよい。
【0125】
本発明の別の態様において、他の生物学的に活性な物質または化合物は、アミロイドβによって引き起こされるアミロイドーシスを含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害、あるいはタウオパチーを含むタウに関連する神経変性疾患もしくは神経変性障害の治療において使用することができる治療剤でもよく、他の神経障害の薬物療法において使用することができる治療剤でもよい。他の生物学的に活性な物質または化合物は、本発明の免疫原性組成物および/もしくは治療用ワクチンと同じ機構もしくは類似の機構によって、または無関係の作用機序によって、または多数の関係する作用機構および/または無関係の作用機構によって生物学的作用を発揮してもよい。
【0126】
一般的に、他の生物学的に活性な化合物は、ニューロン伝達(neutron-transmission)エンハンサー、精神治療薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、生体アミン、ベンゾジアゼピン精神安定薬、アセチルコリン合成、貯蔵、または放出のエンハンサー、アセチルコリンシナプス後受容体アゴニスト、モノアミンオキシダーゼ-Aまたは-B阻害剤、N-メチル-D-アスパラギン酸グルタミン酸受容体アンタゴニスト、非ステロイド抗炎症薬、抗酸化物質、およびセロトニン受容体アンタゴニストを含んでもよい。特に、本発明の混合物は、本発明の治療用ワクチンと共に、酸化ストレスに抵抗する化合物、抗アポトーシス化合物、金属キレート剤、DNA修復阻害剤、例えば、ピレンゼピンおよび代謝産物、3-アミノ-1-プロパンスルホン酸(3APS)、1,3-プロパンジスルホネート(1,3PDS)、セクレターゼアクチベーター、β-セクレターゼおよびγ-セクレターゼ阻害剤、タウタンパク質、神経伝達物質、βシート破壊剤、抗炎症分子、もしくはコリンエステラーゼ阻害剤(ChEIs)、例えば、タクリン、リバスチグミン、ドネペジル、および/またはガランタミン、ならびに他の薬物および栄養補助剤からなる群より選択される少なくとも1つの他の生物学的に活性な化合物を含んでもよく、任意で、薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。
【0127】
さらなる態様において、本発明の混合物は、本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンと共にナイアシンまたはメマンチンを含んでもよく、任意で、薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。
【0128】
本発明のさらに別の態様において、免疫寛容患者またはT細胞活性化患者、特に、T細胞不全患者、特に、CD4 T細胞が枯渇している患者における、アミロイドタンパク質に関連する障害および異常の一群であるアミロイドーシス、例えば、アルツハイマー病を含む、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患および障害、あるいはタウタンパク質によって引き起こされる疾患および障害またはタウタンパク質に関連する疾患および障害、例えば、タウオパチーを含む、神経原線維病変の形成によって引き起こされる、もしくは神経原線維病変の形成に関連するタウに関連する神経変性疾患または神経変性障害の治療、症状の軽減、または予防のための、本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチン、任意で、薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/または賦形剤と共に、幻覚、妄想、思考障害(顕著な思考散乱、脱線、脱線思考によって現われる)、および奇妙なまたは秩序を乱す挙動、ならびに快感消失、平坦な情動、無関心、および社会的引きこもりを含む陽性および陰性の精神病症状の治療のための「非定型抗精神病薬」、例えば、、クロザピン、ジプラシドン、リスペリドン、アリピプラゾール、またはオランザピンを含む混合物が提供される。
【0129】
本発明の特定の態様において、本明細書において前記で説明した本発明の組成物および混合物は、本発明の免疫原性組成物および生物学的に活性な物質をそれぞれ治療的または予防的に有効な量で含む。
【0130】
本発明の免疫原性組成物および/または治療用ワクチンと組み合わせて混合物において適切に使用することができる他の化合物は、例えば、WO2004/058258(特に、16頁および17頁を参照されたい)に記載されており、治療薬標的(36〜39頁)、アルカンスルホン酸およびアルカノール硫酸 (39〜51頁)、コリンエステラーゼ阻害剤(51〜56頁)、NMDA受容体アンタゴニスト(56〜58頁)、エストロゲン(58〜59頁)、非ステロイド抗炎症薬(60〜61頁)、抗酸化物質(61〜62頁)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニスト(63〜67頁)、コレステロール降下剤(68〜75頁);アミロイド阻害剤(75〜77頁)、アミロイド形成阻害剤(77〜78頁)、金属キレート剤(78〜79頁)、抗精神病薬および抗うつ薬(80〜82頁)、栄養サプリメント(83〜89頁)、ならびに脳における生物学的に活性な物質の利用能を高める化合物(89〜93頁を参照されたい)およびプロドラッグ(93頁および94頁)を含み、この文書は参照により本明細書に組み入れられるが、特に、化合物は、前記の頁において言及された化合物である。
【0131】
動物またはヒト宿主に正常な宿主タンパク質をワクチン接種すると、宿主タンパク質に対する自己抗体が発生して、自己免疫障害と総称される障害が起こる場合があることが長い間知られている。このような正常タンパク質がAβおよびそのAPP前駆体タンパク質である。従って、これらの宿主タンパク質をワクチン接種において使用すると、望ましくない副作用が生じる可能性がある。Aβが、補体系の過剰活性化によって部分的に引き起こされ得る神経炎症応答を活性化する可能性があるという証拠が文献にある。補体系は、アルツハイマー病または他の神経変性疾患に罹患している患者において既に高度に活性化している。
【0132】
βシート立体配座をとっているヒトAβは、ヒト補体系の強力な活性化因子である。ヒトAβは、ヒト補体C1qのコラーゲン尾部に強く結合する。補体系が過剰活性化されることによって宿主の自然防御系は方向転換し、ニューロンを含む細胞および組織ならびにこれらのプロセスが自己破壊される。例えば、宿主の自然防御系の一部であり、侵入してくる細菌およびウイルスの中に自身を入れることによって宿主を細菌およびウイルスから守る膜侵襲複合体(MAC)は、過剰活性化されると宿主細胞の中に自身を入れ、自己破壊を引き起こすことができる。さらに、過剰活性化は、酸素-フリーラジカルなどの毒性化合物および有害なプロテアーゼを産生するようにミクログリアを刺激する場合がある。
【0133】
従って、本発明のさらなる目的は、自己免疫疾患に罹患している動物またはヒトに、既に過剰活性化している補体系をさらに刺激する可能性のある自己抗原をワクチン接種することによって引き起こされる潜在的な副作用、例えば、神経合併症を阻止することである。これは、補体阻害剤と組み合わせて、Aβペプチド抗原、特に、パルミトイル化Aβペプチド抗原、さらに具体的には、パルミトイル化Aβ1-15ペプチド抗原、特に、パルミトイル化Aβ1-15ペプチド抗原(ACI-24、Aβ1-15)を投与することによって本発明の範囲内で実現することができる。
【0134】
従って、本発明の別の態様は、Aβペプチド抗原、特に、本明細書において前記で説明した本発明のAβペプチド抗原に加えて補体系阻害剤を含むワクチン組成物を提供することである。
【0135】
補体阻害剤は、可溶性ヒト補体受容体1、抗ヒト補体タンパク質C5、例えば、ヒト化抗C5モノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体の単鎖断片、C1-エステラーゼ阻害剤-N、および天然ヒトC1阻害剤からなる群より選択される化合物でもよい。
【0136】
改変アミロイドペプチド抗原、例えば、アミロイドβ1-15ペプチドは、Nicolau et. al. (2002) Proc Natl. Acad. Sci USA 99, 2332-2337において報告された方法に従って合成することができる。Nicolau et alにおいて報告されたこのアプローチは、最初に、抗原性ペプチドを合成することによって改変されてもよい。次いで、抗原性ペプチドは、予め形成されたペプチドの末端アミノ酸残基に親油性部分または疎水性部分を樹脂上グラフティング(on-resin grafting)によって改変される。特に、保護アミノ酸、特に、Fmoc保護アミノ酸を、公知のカップリング化学を用いて樹脂に取り付ける。保護基は除去され、次の保護アミノ酸残基がカップリングされる。次いで、公知の保護化学、特に、Fmoc/tBu化学、および標準的な側鎖保護基を用いた標準的な自動ペプチド合成を用いて、Aβ抗原性ペプチド、特に、Aβ1-15抗原性ペプチドを、アミロイドタンパク質Aβ1-42のアミノ酸1〜15をカップリングすることによって合成して、所定の配列を有するペプチド断片を生成する。最終段階では、成長中のペプチド断片に2つのさらなる保護アミノ酸がカップリングされる。次いで、Mtt基を選択的に切断し、パルミチン酸にカップリングすることができる。樹脂の洗浄後、保護基は除去されると同時に、樹脂が切断され、その後に、標準的な方法を用いて側鎖脱保護が行われる。次いで、高い純度で最終生成物を得ることができ、その同一性を当技術分野において公知の方法、例えば、エレクトロスプレー質量分析によって確かめることができる。
【0137】
本発明による親油性部分または疎水性部分は、脂肪酸、トリグリセリド、またはリン脂質でもよく、脂肪酸炭素骨格は少なくとも10個の炭素原子を有する。特に、親油性部分または疎水性部分は、少なくとも約14個の炭素原子および約24個までの炭素原子からなる炭素骨格を有する脂肪酸であり、この範囲内にある炭素原子の個々の各番号も本発明の一部である。さらに具体的には、親油性部分または疎水性部分は、少なくとも14個の炭素原子、特に、16個の炭素原子からなる炭素骨格を有する。疎水性部分の例には、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸が含まれるが、これに限定されない。本発明の特定の態様において、親油性部分または疎水性部分はパルミチン酸である。
【0138】
次いで、本発明のリポソーム抗原は、Nicolau et al., 2002に記載のように調製することができる。改変アミロイドAβ抗原性ペプチド、特に、改変Aβ1-15抗原性ペプチドは、リポソーム、特に、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPEA)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、およびコレステロールで作られ、任意で、モノホスホリルリピドAを含有するリポソームからなる構築物の中で再構成されてもよい。
【0139】
本発明の特定の態様において、抗アミロイドワクチンを調製するために、リピドAを含むリポソームがアジュバントとして用いられる。ジミリストイルホスファチジル-コリン、ジミリストイルホスファチジル-グリセロール、およびコレステロールが、特に、0.9:1.0:0.7のモル比で混合される。次いで、適切な濃度で、特に、リン脂質1mmolにつき特に30〜50mg、さらに具体的には40mgの濃度で強力な免疫調節剤が添加される。次いで、改変抗原性Aβペプチドが、1:30〜1:200のペプチド:リン脂質モル比、特に、1:50〜1:120のモル比、さらに具体的には、1:100のモル比で添加される。溶媒は、例えば、蒸発によって除去され、結果として生じた薄膜は、滅菌緩衝溶液、例えば、PBSで水和される。
【0140】
リポソームはまた、例えば、Wagner et al(2002) Journal of Liposome Research Vol 12(3), pp 259-270に記載のようにクロスフロー注入法によって調製することもできる。脂質溶液を水性緩衝系に注入している間に、脂質は、「沈殿物」を形成した後に、小胞内で自己整列する傾向がある。得られる小胞サイズは、脂質濃度、攪拌速度、注入速度、および脂質の選択などの要因に左右される。調製システムは、クロスフロー注入モジュール、極性相(例えば、PBS緩衝溶液)用の容器、エタノール/脂質溶液の容器、および加圧装置、特に、窒素加圧装置からなってよい。クロスフロー注入モジュールに通して水溶液または極性溶液がポンプでくみ上げられると同時に、様々な圧力が加えられて極性相にエタノール/脂質溶液が注入される。
【0141】
改変Aβ抗原性構築物の免疫原性(immuogenicity)を確かめるために、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、トリなどからなる群より選択される適切な動物、特に、マウス、特に、C57BL/6マウスが抗原性ペプチドによって免疫化される。抗原性構築物の免疫原性は、免疫化後に適切な時間間隔をあけて血清試料を、イムノアッセイ、例えば、ELISAアッセイを用いてプローブすることによって確かめられる。
【0142】
続発性アミロイドーシスおよび加齢性アミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成に関連した疾患および障害の一群であるアミロイドーシスもしくは他の任意のアミロイド関連疾患に関連した症状に罹患している、またはタウタンパク質によって引き起こされる、もしくはタウタンパク質に関連する、ならびに神経原線維病変の形成によって引き起こされる、もしくは神経原線維病変の形成に関連する疾患および障害の一群であるタウオパチーに関連した症状に罹患している、免疫寛容動物もしくはヒト患者またはT細胞活性化患者を免疫化するために、改変抗原性構築物、特に、パルミトイル化抗原性構築物、さらに具体的には、パルミトイル化Aβ1-15構築物、またはパルミトイル化タウ5-20[pY18]が用いられる。ここで、前記動物、特に、前記哺乳動物またはヒトはT細胞不全、特に、CD4 T細胞不全を有する。
【0143】
本発明の超分子抗原性構築物、特に、このような本発明の超分子抗原性構築物を含む免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、任意の適切な標準的な投与経路によって動物、特に、哺乳動物またはヒトに投与される。一般的に、組成物は、局所経路、経口経路、直腸経路、鼻経路、または非経口経路(例えば、静脈内経路、皮下経路、もしくは筋肉内経路)によって投与されてもよく、ここで、前記動物、特に、前記哺乳動物またはヒトはT細胞不全、特に、CD4 T細胞不全を有する。さらに、組成物は、徐放性マトリックス、例えば、生分解性ポリマーの中に組み込まれてもよく、このポリマーは、送達が所望される場所の近くに、例えば、腫瘍部位に移植される。前記方法は、単回投与、所定の時間間隔での反復投与、および所定の期間にわたる持続的な投与を含む。
【0144】
本発明の特定の態様において、薬学的に許容される形をした本発明の抗原性構築物、特に、前記抗原性構築物を含む免疫原性組成物および/または治療用ワクチンは、反復投与、特に、1〜15回の投与、さらに具体的には、2〜10回の投与、さらに具体的には、3〜7回の投与、なおさらに具体的には、4〜6回の投与で、1〜10週間の時間間隔をあけて、特に、1〜6週間の時間間隔をあけて、さらに具体的には、1〜4週間の時間間隔をあけて、なおさらに具体的には、2〜3週間の時間間隔をあけて投与される。免疫応答は、追加免疫後、適切な時間で、特に、追加免疫の3〜10日後に、さらに具体的には、追加免疫の4〜8日後に、さらに具体的には、追加免疫の5〜6日後に血清試料を採取し、公知の方法、特に、一般的に用いられるイムノアッセイの1つ、例えば、ELISAアッセイを用いて抗原性構築物の免疫原性を確かめることによってモニタリングされる。
【0145】
薬学的に許容される形をした本発明の抗原性構築物、特に、本発明の抗原性構築物を含む免疫原性組成物および/または治療用ワクチンによって免疫化すると、治療された動物またはヒトにおいて、大きくかつ高度に特異的なT細胞非依存性免疫応答が生じる。
【0146】
本発明の超分子抗原性構築物組成物は、抗原性作用物質、例えば、感染性生物、または他の病理学的状態、例えば、β-アミロイド凝集(アルツハイマー病)もしくは癌などの過剰増殖障害の抗原的な側面に対して免疫を誘導するために、免疫寛容のヒトもしくは動物患者またはT細胞活性化患者、特に、T細胞、特に、CD4 T細胞が実質的に枯渇しているヒトまたは動物に投与される。免疫されたヒトまたは動物は感染性生物に対する循環抗体を発生し、それによって、感染性生物が疾患を刺激する能力が低減または不活化される。
【0147】
本発明の組成物は、任意の適切な手段によって、好ましくは、注射によってヒトまたは動物に投与される。例えば、リポソームの中で再構成された改変抗原性ペプチドが皮下注射によって投与される。循環抗体は内部で産生されても、外部供給源から供給されても、抗原に結合し、抗原が疾患を刺激する能力を低減または不活化する。
【0148】
ある態様では、超分子抗原性構築物は、β-アミロイドのアミノ酸配列を有するペプチドを含む。このペプチドはまた、アミロイドβペプチド全体およびその活性断片を含んでもよく、これらと一致してもよい。さらに、本発明に有用なペプチドはAβを含む。
【0149】
定義
本明細書で使用する「個体、特に、動物またはヒトがT細胞不全である」、「T細胞不全の」、「実質的にT細胞不全の」、または「T細胞不全」という用語は、機能的なT細胞を実質的に欠いている個体を指す。
【0150】
本明細書で使用する「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は同義であり、ペプチド結合によって結合したアミノ酸からなる生体分子を意味することが定義される。
【0151】
「ペプチド」という用語は、あるアミノ酸のα炭素のカルボキシル基と別のアミノ酸のα炭素のアミノ基との縮合反応によって形成されたペプチド結合によってα炭素が結合しているアミノ酸(典型的にはL-アミノ酸)の鎖である。鎖の一端(すなわち、アミノ末端)にある末端アミノ酸は遊離アミノ基を有するのに対して、鎖の他方の端(すなわち、カルボキシ末端)にある末端アミノ酸は遊離カルボキシル基を有する。従って、「アミノ末端」(N末端と略す)という用語は、ペプチドのアミノ末端にあるアミノ酸の遊離α-アミノ基、またはペプチド内の他の任意の位置にあるアミノ酸のα-アミノ基(ペプチド結合に関与する時にはイミノ基)を指している。同様に、「カルボキシ末端」(C末端と略す)という用語は、ペプチドのカルボキシ末端にあるアミノ酸の遊離カルボキシル基、またはペプチド内の他の任意の位置にあるアミノ酸のカルボキシル基を指している。
【0152】
典型的に、ペプチドを構成するアミノ酸の番号は、ペプチドのアミノ末端から始めて、カルボキシ末端に向かって増える順序で付けられる。従って、あるアミノ酸が別のアミノ酸に続くと言われる時には、このアミノ酸は、前のアミノ酸よりペプチドカルボキシ末端に近い位置にある。
【0153】
「残基」という用語は、アミド結合によってペプチドに組み込まれるアミノ酸を指すために本明細書において用いられる。従って、アミノ酸は天然アミノ酸でもよく、特に限定されない限り、天然アミノ酸と同様に機能する公知の天然アミノ酸類似体(すなわち、アミノ酸ミメティック)を含んでもよい。さらに、アミド結合ミメティックは、当業者に周知のペプチド骨格改変を含む。
【0154】
「から本質的になる」という句は、この句が指しているペプチドの必須の特性を実質的に変える全ての要素を排除するために本明細書において用いられる。従って、「から本質的になる」ペプチドの説明は、そのペプチドの生物学的活性を実質的に変えるアミノ酸置換も付加も欠失も排除する。
【0155】
さらに、当業者であれば、前述したように、コード配列において1個のアミノ酸またはわずかなパーセントのアミノ酸(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)を変える、付加する、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加は、変化によってアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸に置換される保存的に改変されたバリエーションであることを認識しているだろう。以下の6つのグループはそれぞれ、互いの保存的置換であるアミノ酸を含んでいる。
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0156】
「単離された」または「生物学的に純粋な」という句は、自然状態で見出されるように、通常、材料に付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。従って、本明細書に記載のペプチドは、インサイチュー環境に通常、関連する材料を含有しない。典型的には、単離された本明細書に記載の免疫原性ペプチドの純度は、銀染色ゲル上でのバンド強度によって測定された時に、少なくとも約80%、通常少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%である。
【0157】
タンパク質の純度または均一性は、当技術分野において周知の多くの方法、例えば、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後に、染色によって視覚化することによって示すことができる。ある特定の目的では、高分解能が必要とされ、HPLCまたは類似の精製手段が利用される。免疫原性ペプチドの長さが比較的短い場合(すなわち、約50アミノ酸未満)、標準的な化学ペプチド合成法を用いて合成されることが多い。
【0158】
配列のC末端アミノ酸が不溶性支持体に取り付けられた後に、配列内の残りのアミノ酸が連続して付加される固相合成が、本明細書に記載の免疫原性ペプチドの好ましい化学合成法である。固相合成のための技法は当業者に公知である。
【0159】
または、本明細書に記載の免疫原性ペプチドは組換え核酸法を用いて合成される。一般的に、これは、ペプチドをコードする核酸配列を作り出す工程、核酸を特定のプロモーターの制御下に置いて発現カセットに入れる工程、宿主においてペプチドを発現させる工程、発現したペプチドまたはポリペプチドを単離する工程、必要に応じて、ペプチドを再生する工程を含む。当業者をこのような手順に導くのに十分な技法が文献に見出される。
【0160】
組換えペプチドが発現すると、硫安沈殿、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む標準的な手順に従って精製することができる。治療剤として使用するには、約50%〜95%均一性の実質的に純粋な組成物が好ましく、80%〜95%以上の均一性の実質的に純粋な組成物が最も好ましい。当業者であれば、化学合成、生物学的発現、または精製の後に、免疫原性ペプチドは、構成ペプチドの天然立体配座とは実質的に異なる立体配座を有し得ることを認識しているだろう。この場合、抗増殖性ペプチドを再生および還元し、次いで、ペプチドを好ましい立体配座にリフォールディングすることが必要なことが多い。タンパク質を還元および再生する方法ならびにリフォールディングを誘導する方法は当業者に周知である。
【0161】
精製タンパク質の抗原性は、例えば、免疫血清との反応またはタンパク質それ自体に対して産生された抗血清との反応を証明することによって確かめることができる。
【0162】
本明細書で使用する「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、文脈が不適当でない限り「1つまたは複数の」を意味し、複数を含むと定義される。
【0163】
本明細書で使用する「検出する」または「検出された」という用語は、生物分子を検出するための公知の技法、例えば、免疫化学的方法または組織学的方法を使用することを意味し、調べられている生体分子の存在または濃度を定性的または定量的に確かめることを指す。
【0164】
「単離された」とは、生物分子と一緒に天然に生じる成分の少なくとも一部を含まない生物分子を意味する。
【0165】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、当技術分野において認められた用語であり、公知の抗原に結合する分子または分子の活性断片、特に、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する結合部位を含有する分子を指すと理解されている。本発明の免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子のどのタイプ(IgG、IgM、IgD、IgE、IgA、およびIgY)のものでもよく、どのクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のものでもよく、どのサブクラスのものでもよい。
【0166】
「抗体」は、本発明の範囲内では、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、サル化抗体、ヒト抗体およびヒト化抗体、ならびにその活性断片を含むことが意図される。公知の抗原に結合する分子の活性断片の例には、Fab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物ならびに前述の抗体および断片のいずれかのエピトープ結合断片を含む、FabおよびF(ab') 2断片が含まれる。
【0167】
これらの活性断片は、多くの技法によって本発明の抗体から得ることができる。例えば、精製されたモノクローナル抗体をペプシンなどの酵素によって切断し、HPLCゲル濾過に供することができる。次いで、Fab断片を含有する適切な画分を膜濾過などによって収集および濃縮することができる。抗体の活性断片を単離するための一般的な技法のさらなる説明については、例えば、Khaw, B. A. et al. J. Nucl. Med. 23:1011-1019 (1982); Rousseaux et al. Methods Enzymology, 121:663-69, Academic Press, 1986を参照されたい。
【0168】
「ヒト化抗体」は、CDRが非ヒトドナー免疫グロブリンに由来し、その分子の残りの免疫グロブリン由来部分が1種類(またはそれより多い)ヒト免疫グロブリンに由来する操作された抗体の一種を指す。さらに、結合親和性を保存するために、フレームワーク支持残基が変えられることもある。「ヒト化抗体」を得る方法は当業者に周知である(例えば、Queen et al., Proc. Natl Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989), Hodgson et al., Bio/Technoloy, 9:421(1991)を参照されたい)。
【0169】
「ヒト化抗体」はまた、大動物、例えば、ウサギにおける親和性成熟ヒト様ポリクローナル抗体の産生を可能にする新規の遺伝子工学アプローチによって得ることもできる(http://www.rctech.com/bioventures/therapeutic.php)。
【0170】
「モノクローナル抗体」という用語もまた当技術分野においてよく認識されており、実験室においてシングルクローンから産生された塊であり、1種類の抗原しか認識しない抗体を指す。モノクローナル抗体は、典型的には、正常な短命の抗体産生B細胞と、癌細胞(時として「不死」細胞と呼ばれる)などの急速に増速する細胞とを融合することによって作られる。結果として生じたハイブリッド細胞すなわちハイブリドーマは急速に増えて、大量の抗体を産生するクローンを作り出す。
【0171】
「機能的に等価な抗体」は、本発明の範囲内では、以下:β-アミロイドタンパク質、特に、Aβ1-42タンパク質、さらに具体的には、Aβ1-42タンパク質の4〜16エピトープ領域との結合特異性、インビトロでの免疫反応性、高分子多量体原線維へのAβ1-42単量体の凝集の阻害、および/もしくは予め形成されたAβ1-42多量体原線維の脱凝集、ならびに/またはβシート破壊特性、予防的または治療的に投与された時の、認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患または状態、例えば、軽度認知機能障害(MCI)を含む神経障害、例えば、アルツハイマー病(AD)、レヴィー小体認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島のパーキンソン認知症複合;ならびにアミロイド様タンパク質に基づく他の疾患またはアミロイド様タンパク質に関連する他の疾患、例えば、進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、脳卒中、外傷性脳損傷、黄斑変性および緑内障を含む全ての眼疾患ならびにその他の眼疾患を含むが、これに限定されない、続発性アミロイドーシスおよび加齢性アミロイドーシスを含む、アミロイド斑形成に関連した疾患および障害の一群であるアミロイドーシスに関連した障害の影響の軽減を含む、少なくとも1つの主な機能特性を、前述のおよび本明細書に記載の抗体と実質的に共有する抗体を指すことが理解される。抗体は、IgG、IgM、またはIgAなどのどのクラスでもよく、IgG1、IgG2aなどのどのサブクラスでもよく、本明細書において前述された、または当技術分野において公知の他のサブクラスでもよい。さらに、抗体は、ファージディスプレイなどのどの方法によって産生されてもよく、細菌、昆虫、哺乳動物、またはヒト化抗体などの望ましい特徴を有する抗体を産生する他のタイプの細胞もしくは細胞株を含む、どの生物または細胞株において産生されてもよい。抗体はまた、異なる種に由来するFab部分とFc領域を組み合わせることによって形成することもできる。
【0172】
「抗原」という用語は、生物、特に、動物、さらに具体的には、ヒトを含む哺乳動物において免疫応答を誘導することができる実体またはその断片を指す。この用語は、免疫原および抗原性または抗原決定基を担う領域を含む。
【0173】
本明細書で使用する「可溶性の」という用語は、水溶液に部分的または完全に溶解することを意味する。
【0174】
「免疫原性の」という用語も本明細書において用いられ、免疫原性作用物質に対する抗体、T細胞、および他の反応性免疫細胞の産生を誘発または増強し、ヒトまたは動物における免疫応答に寄与する物質を指す。
【0175】
個体が、投与された本発明の免疫原性組成物に対して十分な抗体、T細胞、および他の反応性免疫細胞を産生して、治療しようとする障害を緩和または軽減した時に、免疫応答は起こっている。
【0176】
「ハイブリドーマ」という用語は当技術分野において認められており、抗体産生細胞と不死細胞、例えば、多発性骨髄腫細胞が融合することによって作製された細胞を指すと当業者に理解されている。このハイブリッド細胞は、抗体を持続的に供給することができる。融合法のさらに詳細な説明については、前記の「モノクローナル抗体」の定義および下記の実施例を参照されたい。
【0177】
本明細書で使用する「担体」という用語は、抗原性ペプチドもしくは超分子構築物を組み込むか、または抗原性ペプチドもしくは超分子構築物と結合して、抗原性ペプチドまたはそのペプチドの一部をヒトまたは動物の免疫系に提示または曝露することができる構造を意味する。動物療法またはヒト療法において適切に使用することができる任意の粒子、例えば、小胞、粒子、または粒子体を、本発明の文脈の中の担体として使用することができる。
【0178】
さらに、「担体」という用語は、抗原性ペプチドを含む超分子抗原性構築物組成物を送達機構によって望ましい部位に輸送することができる送達方法を含む。このような送達系の一例では、コロイド金などのコロイド金属が利用される。
【0179】
本発明の超分子抗原性構築物組成物において使用することができる担体タンパク質には、マルトース結合タンパク質「MBP」;ウシ血清アルブミン「BSA」;キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole lympet hemocyanin)「KLH」;オボアルブミン;フラジェリン;チログロブリン;任意の種の血清アルブミン;任意の種のガンマグロブリン;同系細胞;Ia抗原を有する同系細胞;ならびにD-アミノ酸および/またはL-アミノ酸のポリマーが含まれるが、これに限定されない。
【0180】
本発明の超分子抗原性構築物において、リポソームは、本明細書において前記で説明した超分子構築物を含む担体として使用することができると同時に、本発明の治療用ワクチンによって治療される標的動物またはヒトの中での免疫応答を増大または刺激するアジュバントとして機能することができる点で二重機能を有してもよい。さらに、本発明の超分子抗原性構築物組成物は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)および他のアジュバント、例えば、リピドA、ミョウバン、リン酸カルシウム、インターロイキン1、ならびに/または多糖およびタンパク質のマイクロカプセルを含むが、これに限定されないさらなるアジュバントを含有してもよいが、特に、解毒されたリピドA、例えば、モノホスホリルリピドAもしくはジホスホリルリピドAまたはミョウバン、さらなる防腐剤、希釈剤、乳化剤、安定剤、および先行技術のワクチンにおいて公知であり、使用されている他の成分を含有してもよい。さらに、当技術分野において公知の任意のアジュバント系を本発明の組成物において使用することができる。このようなアジュバントには、フロイント不完全アジュバント、フロイント完全アジュバント、多分散β-(1,4)結合アセチル化マンナン(「Acemannan」)、TITERMAX(登録商標)(CytRx Corporationのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーアジュバント)、Chiron Corporationの改変脂質アジュバント、Cambridge Biotechのサポニン誘導体アジュバント、不活化百日咳菌、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)、大きなポリマーアニオン、例えば、デキストラン硫酸、および無機ゲル、例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、またはリン酸アルミニウムが含まれるが、これに限定されない。
【0181】
さらに、「有効量」という用語は、ヒトまたは動物に投与された時に免疫応答を誘発する抗原性組成物/免疫原性組成物の量を指す。有効量は、下記の日常的な手順に従って当業者によって容易に求めることができる。
【0182】
本明細書で使用する「免疫寛容患者」は、抗原、特に、非自己抗原に応答する能力が限られている、特に、新しい抗原、例えば、新興疾患に存在する新しい抗原に応答する能力が限られている動物またはヒト患者を指す。この制限は、少なくとも一部には、CD4+T細胞の暦年齢によるものかもしれない。さらに、「免疫寛容患者」は、リコール応答中の記憶T細胞の増殖およびサイトカイン分泌に欠陥があるために、長期のCD4+T細胞免疫応答が損なわれていることがある。
【0183】
本明細書で使用する「T細胞活性化患者」は、T細胞活性化を示し、T細胞応答をさらに刺激することによって医学的リスクが引き起こされる動物またはヒト患者を指す。
【0184】
本明細書で使用する「免疫不全患者」は、免疫系が、年齢、疾患、例えば、HIVもしくは癌によって、または治療、例えば、慢性関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症などを含むが、これに限定されない炎症性疾患に対する治療によって損なわれている動物またはヒト患者を指す。
【0185】
本発明の範囲内では、本発明の抗原性組成物に対する抗体誘導応答は主としてT細胞非依存性であることが証明された。これに関して、ヌードマウスモデルを使用し、ヌードマウスにワクチン接種し、本発明の抗原性組成物によって誘導されたAβ特異的抗体応答を評価するために、免疫化ヌードマウスにおいて抗体応答を測定した。ヌードマウスはFoxn1nu変異を有し、結果として、適切な胸腺が無いためにT細胞機能が低下している。
【0186】
以下の実施例において示したように、本発明の抗原性組成物は、マウスモデルにおいて強くかつ持続的な抗Aβ IgG応答を誘導した。抗体応答の持続性は野生型マウスおよびヌードマウスにおいて似ていた。このことは、作用機序が主としてT細胞非依存性であることをはっきりと示している。具体的には、ヌードマウスへのワクチン接種によって、野生型マウスと比較して、よく似た抗体産生キネティクスが誘導されたが、抗体価は高く、IgGプロファイルは似ていた。抗体応答の持続性およびIgGアイソタイプ分布はWtマウスおよびヌードマウスにおいて似ていた。このことも、ACI-24ワクチン接種と関連して、これらのパラメータがT細胞非依存性であることを示している。
【0187】
本発明の抗原性組成物による治療に応答したAβ抗体産生の作用機序がT細胞非依存性であることを示しているヌードマウス研究からの結果は、CD4枯渇マウスおよび非枯渇マウスにおけるAβ特異的抗体応答を調べることによってさらに裏付けられた。本発明の抗原性組成物を、CD4+T細胞(Tヘルパー細胞)に依存することが知られているワクチン、例えば、オボアルブミンおよび水酸化アルミニウム(OVA/ミョウバン)と比較することができる。このような比較において、本発明の抗原性組成物は、CD4非枯渇マウスにおいて見られたものと同様の強力な抗Aβ抗体価を誘導し、従って、Aβに対してT細胞非依存性抗体応答を誘導すると証明することができた。
【0188】
前記から、当然、本発明の抗原性組成物は、T細胞、具体的にはTヘルパー細胞の非存在下で強い抗Aβ抗体価を誘導することができ、従って、いわゆるTI非依存性抗原/ワクチンとして分類されるということになる。
【0189】
T細胞非依存性作用機序は、不適切なT細胞活性化および脳炎などの関連する不要な炎症応答のリスクの低下の点で好ましい。
【0190】
さらに、T細胞非依存性作用機序は臨床安全性リスクが低く、従って、このために、本発明の抗原性組成物は治療的使用に特に適している。
【0191】
本発明のさらなる局面において、本発明の抗原性組成物は、ヒトAD患者における免疫寛容を克服するのに使用することができる。本発明のこの局面は、以下の実施例によって裏付けられている。以下の実施例では、本発明の抗原性組成物はカニクイザルにおいて抗Aβ IgG応答を誘導することがサルモデルにおいて証明された。抗Aβ IgG応答を誘導した最小用量は、50μg〜150μg、特に、65μg〜120 65μg、特に、70μg〜100μg、特に、75μg〜80μgの改変抗原性ペプチドの範囲にあった。
【0192】
従って、さらなる態様において、本発明は、ヒトAD患者、特に、T細胞不全、特に、CD4 T細胞不全のあるヒトAD患者において免疫寛容を克服するための方法であって、治療的有効用量の本発明の抗原性組成物、特に、50μg〜150μg、特に、65μg〜120 65μg、特に、70μg〜100μg、特に、75μg〜80μgの改変抗原性ペプチド、特に、パルミトイル化抗原性ペプチド、特に、パルミトイル化Aβ1-15抗原性ペプチドを含む抗原性組成物を前記患者に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0193】
配列表:
SEQ ID NO:1 対照配列T5:タウ379-408[pS396、pS404]
SEQ ID NO:2 配列1(T1):タウ5-20[pY18]
SEQ ID NO:3 配列8(T8):タウ206-221[pT212、pS214]
SEQ ID NO:4 配列9(T9):タウ196-211[pS202、pT205
SEQ ID NO:5 配列3(T3):タウ393-408[pS396、pS404]
SEQ ID NO:6 配列4(T4):タウ401-418[pS404、pS409]
SEQ ID NO:7 配列2(T2):タウ200-216[pS202+pT205&pT212+pS214]
SEQ ID NO:8 抗原性ペプチドAβ1-15
SEQ ID NO:9 抗原性ペプチドAβ1-16
SEQ ID NO:10 抗原性ペプチドAβ1-16(?14)
SEQ ID NO:11 抗原性ペプチドAβ4-11
SEQ ID NO:12 抗原性ペプチドAβ22-35
SEQ ID NO:13 抗原性ペプチドAβ29-40
SEQ ID NO:14 抗原性ペプチドAβ1-5
【実施例】
【0194】
実施例1:雌ヌードマウスにおける抗体応答
本研究の目的は、雌ヌードマウスにおいてACI-24バッチによって誘導されたアミロイドβ(Aβ)特異的抗体応答を評価することにあった。このヌードマウスはFoxn1nu変異を有し、正しく機能する胸腺が無いためにT細胞機能が低下している。従って、本研究の目標は、ACI-24によって誘導される抗体応答がT細胞非依存性であるかどうか分析することにあった。
【0195】
11週齢または13週齢のC57BL/6バックグラウンドを有するヌードマウスおよび対応する同腹仔に皮下(s.c.)注射した。マウスを3回、2週間の間隔をあけて免疫化し、それぞれの免疫化の1週間後に採血した。全抗Aβ IgG応答をELISAによって測定した。さらに、抗Aβ IgGのアイソタイプパターンを分析した。
【0196】
ヌードマウスにTヘルパー細胞が無いことを確認するために、CD3+CD4+細胞のパーセントを蛍光活性化セルソーター(FACS)によって評価した。
【0197】
1.1 方法
ワクチンACI-24の調製
モル比9:1:7のジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC, Lipoid, Switzerland)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG, Lipoid, Switzerland)、およびコレステロール(Solvay, Netherlands)をEtOHに40〜60℃で可溶化することによって、リポソームを調製した。パルミトイル化Aβ1-15(Pal1-15、Aβのヒト配列)を、1%オクチル-β-D-グルコピラノシド(β-OG, Pentapharm)を含むPBS pH11.5に60℃で溶解した。脂質/エタノール溶液を濾過滅菌し、β-OG/PBS溶液に注入し、直ぐにPBSで希釈した。決められた脂質濃度に達するように、作製したリポソームをウルトラダイアフィルトレーションによって濾過滅菌および濃縮した。モノホスホリルリピドA(MPLA, Avanti Polar Lipids, Inc. AL, USA)をリン脂質と同時に添加した。
【0198】
1.1.2 免疫化
JSW Life Sciencesにおいて、C57BL/6バックグラウンドを有するヌードマウス(B6.Cg-Foxn1nu/J)および対応する同腹仔(11匹のマウス/群)にACI-24またはPBSを、表1に従って3回、各投与(0日目、14日目、28日目)の間に2週間の間隔をあけてs.c.注射した。1回目の注射の7日前、1回目の注射の7日後、21日後、35日後、56日後、70日後、84日後、および98日後に、下顎叢から血漿試料を収集した。Aβ1-42特異的なIgG抗体価およびIgM抗体価ならびにIgGアイソタイプパターンをELISAによって確かめた。CD3+/CD4+細胞のパーセントを求めるFACS分析のために、1回目の免疫化後77日目および63日目にも血液試料を収集した。
【0199】
Aβ特異的抗体の定量
Aβ1-42特異的IgG抗体をELISAによって確かめた。プレートを10μg/mlのAβ1-42(Bachem, Bubendorf)によって4℃で一晩コーティングした。0.05%Tween20を含むPBSによって洗浄し、1%BSAによってSwitzerlandブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、アルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch West Grove, PA, USA)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化抗マウスIgMもしくはIgGアイソタイプ特異的抗体(IgG1-AP, IgG2a-ビオチン、IgG3-ビオチン(全てPharmingen BD, San Diego, CA, USAから購入)、またはIgG2b-HRP(Zymed Laboratories, San Francisco, CA)と37℃で2時間インキュベートした。IgG2a抗体およびIgG3抗体については、室温で45分間、ストレプトアビジン-HRPとさらなるインキュベーションを行った。最終洗浄後に、プレートをAP基質(pNPP)またはHRP基質(ABTS)とインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。結果は、市販抗体(6E10, Covance, Emeryville, CA, USA)の段階希釈液を参照することによって、または光学密度(O.D)として表した。
【0200】
1.1.3 CD3+/CD4+細胞の定量
マウス血液試料を塩化アンモニウムによって透明になるまで溶解し、次いで、400 x gで7分間、遠心分離し、ペレットをEDTA含有PBSに再懸濁した。次いで、細胞をCD16/CD32ブロッキング試薬でブロッキングし、CD4(PE結合体)抗体およびCD3(PE-Cy5)抗体によって4℃で30分間、染色した。試料をPBSで洗浄し、固定液(DB CellfixをBD FACSFlowで1:40に希釈した)に再懸濁し、BD FACS Caliburサイトメーターによって取得した。CD3+陽性およびCD4+陽性であったゲーティング細胞(Tヘルパー細胞)のパーセントを評価した。
【0201】
以下の表1は異なる群へのマウスの割り当てを示す。
【0202】
(表1)異なる群へのマウスの割り当て

a.:理論体積
b.:s.c.:皮下
c.:分析後に求められた測定量
d.:理論量
e.:該当なし
【0203】
1.2 結果
どの動物も早死にせず、治療による副作用を報告する必要はなかった。全てのB6.Cg-Foxn1nu/J動物について、典型的なヌード表現型が存在したのに対して、Wt(野生型)同腹仔の毛皮は正常であった。
【0204】
CD3+/CD4+細胞の定量
CD3+/CD4+染色の後に、FACS分析を行うことによって、Wt動物と比較して、ヌードマウスにおけるTヘルパー細胞カウント(CD3+/CD4+細胞)は有意に少ないことが明らかになった(図1)。
【0205】
PBSまたはACI-24を与えたヌードマウスおよびACI-24を与えたWtマウスの、CD3陽性およびCD4陽性であったゲーティング細胞のパーセント。それぞれのカラムは、11匹のマウスからなる群の平均およびSDを示す。右パネル:ヌード群およびWt群の2匹のマウスにおけるFACS分析の模式図。
【0206】
免疫応答分析
ACI-24によって誘導された応答がT細胞機能に依存しないかどうか確認するために、wtおよびヌードマウスの力価を分析した。Wtマウスおよびヌードマウスの両方において、ACI-24ワクチン(バッチGMP-like#4)は、PBSと比較して強い抗Aβ IgG応答を誘導した(図2;二元配置ANOVA免疫化:P<0.0001、採血P<0.015および免疫化*採血、P<0.015)。1回目の免疫化後に、ヌードマウスの力価はWtマウスの力価と似ていた。他の全ての採血日において、ヌードマウスの力価はWtマウスの力価より有意に高かった(二元配置ANOVA)。しかしながら、一元配置ANOVAによって分析した時には、ヌードマウス力価は35日目のみ有意に高かった。
【0207】
追加免疫効果を確認するために、各注射後(すなわち、7日目、21日目、および35日目)の力価を分析した。ACI-24によって治療されたヌードマウスにおいて、これらの採血日間で有意差は無かった。このことは追加免疫効果が無かったことを示している。ACI-24によって治療されたWtマウス群の中には、2回目の注射後に追加免疫効果があった(一元配置ANOVA 21日目対7日目)。
【0208】
免疫応答の持続性を確認するために、最後の注射後の力価を分析した(35日目、56日目、70日目、84日目、および98日目)。ACI-24によって治療されたヌードマウスおよびWtマウスの両方において、力価は、最後の免疫化の3ヶ月後でも高いままであった(一元配置ANOVA:どちらの群についても7日目対98日目で有意差無し)。ACI-24によって治療されたWtマウスにおいて、98日目の力価は、35日目の力価と比較してわずかであったが有意に減少したのに対して、ヌードマウスについては有意な減少は観察されなかった。まとめると、これらの結果から、ACI-24は、ヌードマウスおよびWtマウスの両方において強くかつ持続的な抗体応答を誘導することが分かる。
【0209】
1回目の免疫化の7日後、21日後、35日後、56日後、70日後、84日後、および98日後のACI-24ワクチンを与えたヌードマウスおよびWtマウスの血漿中にある抗Aβ IgG抗体の分析。結果は、11匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差として表した。
【0210】
ACI-24ワクチンによって、ヌードマウスおよびWtマウスの両方において7日目および35日目にPBSとは有意に異なる抗Aβ IgM抗体応答が誘導された(図3)。両群において、IgM力価は1回目の免疫化後7日目で高く、35日目に有意に減少した。ACI-24によって治療されたヌードマウスおよびWtマウスにおいて、同じ採血日のIgM抗体応答は似ていた。
【0211】
1回目の免疫化の7日後および35日後のACI-24ワクチンを与えたヌードマウスおよびWtマウスの血漿中にある抗Aβ IgM抗体の分析。結果は、11匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差として表した。ヌード群およびWt群の両方において、ACI-24ワクチンによって、IgG1、IgG2aおよびIgG2b、ならびにIgG3アイソタイプの抗Aβ抗体が誘導され、IgG2bが主要なサブクラスであった(図4)。
【0212】
IgGサブクラスのプロファイルはWtマウスおよびヌードマウスにおいて似ていた。
【0213】
1回目の免疫化の7日後および35日後のACI-24ワクチンを与えたヌードマウスおよびWtマウスの血漿中の抗Aβ IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3抗体の分析。結果は、1/200(IgG1)、1/1600(IgG2a)、および1/6400(IgG2b)、ならびに1/1600(IgG3)に希釈した時のO.D.として表し、11匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差を示す。
【0214】
同じ希釈度でのIgG2a力価およびIgG2b力価を比較すると、IgG2b抗体はWtマウスおよびヌードマウスの両方において優位を占めていた(図5)。IgG力価によれば、7日目および35日目のヌードマウスにおけるIgG2b力価はWtマウスより有意に高かった。
【0215】
1回目の免疫化の7日後および35日後にACI-24ワクチンを与えたヌードマウスおよびWtマウスの血漿中の抗Aβ IgG2aおよびIgG2b抗体の分析。結果は、1/3200に希釈した時のO.D.として表し、11匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差を示す。
【0216】
ヌードマウスにおいてCD3+細胞およびCD4+細胞のパーセントは少ないのにもかかわらず、ACI-24ワクチンによって、強い抗Aβ IgG応答が誘導された。抗体応答の持続性およびIgGアイソタイプ分布はwtおよびヌードマウスにおいて似ていた。このことは、ACI-24ワクチン接種と関連して、これらのパラメータがT細胞非依存性であることを示唆している。免疫能力のあるマウスと比較して、T細胞不全マウスにおいて、ACI-24免疫化によって、同一の抗体キネティック、高い抗体価と類似のIgGプロファイルが誘導された。これから、ヌードマウスおよびwtマウスの両方において、ACI-24によってT細胞非依存性抗体応答が誘導されたことが分かる。
【0217】
実施例2:CD4枯渇マウスにおけるACI-24の効力-免疫化前に枯渇が1回行われる
本研究の目的は、CD4枯渇C57BL/6マウスおよび非枯渇C57BL/6マウスにおいてACI-24によって誘導されたアミロイドβ(Aβ)特異的抗体応答を評価することにあった。このワクチンを、CD4+T細胞(Tヘルパー細胞)に依存することが知られているワクチンであるオボアルブミン(OVA)および水酸化アルミニウム(ミョウバン)と比較した。C57BL/6マウスに抗CD4モノクローナル抗体を腹腔内(i.p.)注射し、3日後に、ACI-24またはOVA/ミョウバンを皮下(s.c.)免疫化した。免疫化後4日目、7日目、14日目、および21日目に血液試料を収集した。CD4枯渇を確かめるために、蛍光活性化セルソーター(FACS)を免疫化後21日目に行った。それぞれの採血について、全抗Aβ IgG応答をELISAによって測定した。
【0218】
2.1 方法
2.1.1 ACI-24ワクチンの調製
実施例1.1に記載のようにリポソームを調製した。
【0219】
2.1.2 OVA/ミョウバンワクチンの調製
OVAワクチンは、10mgのOVA(Sigma)を1mlの滅菌水で希釈することによって調製し、さらに濃度が1mg/mlとなるようにPBSで希釈した。0.5mg/ml OVA:5mg/mlミョウバン (Alhydrogel 2%; Brenntag Biosector, Frederikssund, Denmark)の最終溶液は、0.9% NaClに溶解して調製した。
【0220】
2.1.3 CD4枯渇
CD4+細胞の枯渇は、免疫化の3日前(-3日目)にPBS(100μg/投与/マウス)で希釈した抗CD4抗体(クローンYTS191.1; AbD Serotec, Oxford, UK)をi.p.注射(200μl)することによって達成した。FACS分析は免疫化後21日目に全ての動物において行った。
【0221】
2.1.4 免疫化
表2に従って、0日目(CD4枯渇の3日後)に、C57BL/6成体マウス(5匹の雌/群)に200μl/マウスのACI-24またはOVA/ミョウバンをs.c.注射した。採血は、4日目、7日目、および14日目、ならびに屠殺日(21日目)に行った。全採血から血漿を調製し、抗Aβ1-42特異的IgGおよび抗OVA特異的IgGをELISAによって確かめた。
【0222】
2.1.5 FACS分析
CD4枯渇を確かめるFACS分析のために、免疫化後21日目に全ての動物から血液を収集した。血液調製物をACK Lysing Buffer(Invitrogen, Paisley, UK)と4℃で10分間インキュベートすることによって、赤血球溶解を行った。残っている細胞を冷PBSで洗浄し、APC標識抗CD3(クローンKT3; AbD Serotec)およびFITC標識抗CD4(クローンRM4-5; AbD Serotec)と4℃、暗所で30分間インキュベートした。次いで、細胞を冷PBSで洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含むPBSに再懸濁し、CyAn ADPフローサイトメーター分析器(Beckman Coulter GMBH, Lausanne, Switzerland)によって取得した。CD3+/CD4+陽性であったゲーティング細胞のパーセントを処理し、Summit V4.3.01ソフトウェア(Beckman Coulter GMBH)を用いて求めた。
【0223】
表2は、異なる群へのマウスの割り当てを示す。
【0224】
(表2)異なる群へのマウスの割り当て

a;i.p.:腹腔内
b:s.c:皮下
c:分析後に求められた測定量
d:MPLA同類物A+Bの合計
【0225】
2.1.6 Aβ特異的抗体の定量
Aβ1-42特異的IgG応答をELISAによって確かめた。プレートを、10μg/mlのAβ1-42(Bachem, Bubendorf)によって4℃で一晩コーティングした。PBS-OSwitzerland.05%Tween20で洗浄し、1%BSAでブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、アルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch West Grove, PA, USA)と37℃で2時間インキュベートした。最終洗浄後に、プレートをAP基質(pNPP)とインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。結果は、市販抗体(6E10, Covance, Emeryville, CA, USA)の段階希釈液を参照することによって表した。
【0226】
2.1.7 OVA特異的抗体の定量
OVA特異的IgG抗体をELISAによって確かめた。プレートを、30μg/mlのOVA(Sigma, A5503)によって4℃で一晩コーティングし、PBS-0.05%Tween20で洗浄し、1%BSAでブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、AP結合体化抗マウスIgG全抗体(Jackson Immunoresearch, PA, USA)と37℃で2時間インキュベートした。最終洗浄後に、プレートをpNPPとインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。結果は光学密度(O.D.)として表した。
【0227】
2.2 結果
どの動物も早死にせず、CD4枯渇、ACI-24、またはOVA/ミョウバン免疫化による副作用は観察されなかった。群間の体重も同様であったが、21日目に、枯渇ACI-24免疫化マウスと非枯渇ACI-24免疫化マウスとの間で有意な変化が観察された(二元配置ANOVA、P<0.05)。群間で他の有意な変化が観察されたが、これらは、比較可能な治療間のものではなく、従って、関連がないと考えられた。
【0228】
CD4枯渇および非枯渇のACI-24免疫化マウスおよびOVA/ミョウバン免疫化マウスの体重の分析。結果は平均+標準偏差として表した。各群についてn=5。
【0229】
2.2.1 CD3+/CD4+細胞の定量
CD3+/CD4+染色の後に、FACS分析を行うことによって、CD4枯渇群の動物におけるCD3+/CD4+(Tヘルパー細胞)カウントは少ないことが明らかになった(図6)。CD4枯渇OVA/ミョウバン免疫化マウスと非枯渇OVA/ミョウバン免疫化マウスとの間で有意差が見出された(図6、一元配置ANOVA P<0.05)。
【0230】
2.2.2 ACI-24免疫化後の免疫応答
ACI-24によって誘導された応答がCD3+/CD4+ (Tヘルパー細胞)に依存しないかどうか確かめるために、CD4枯渇マウスおよび非枯渇マウスにおける抗Aβ力価を分析した。ACI-24ワクチンによって、7日目から21日目まで強い抗Aβ IgG応答が誘導された。全体的に見て、CD4枯渇マウスは、7日目から最後の採血日(21日目)まで有意でないが高い抗Aβ力価を記録した(図7)。
【0231】
ACI-24免疫化後4日目、7日目、14日目、および21日目におけるC57BL/6マウス血漿中の抗Aβ IgG抗体価。結果は、5匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差として表した。
【0232】
2.2.3 OVA/ミョウバン免疫化後の免疫応答
OVAに対する高いIgG力価はCD3+/CD4+細胞(Tヘルパー細胞)に依存するので、CD4枯渇が達成されたかどうか確認するために抗OVA IgG力価を分析した。4日目および7日目に、CD4枯渇動物および非枯渇動物においてごくわずかな力価が観察された。この時、O.D.は1/100または1/800で記録された。14日目に、CD4枯渇マウスの抗OVA IgG力価は非枯渇マウスと比較して有意に低かった(図8、二元配置ANOVA P<0.001)。この知見は、O.D.が1/800で記録された時に確かめられた(図9、二元配置ANOVA P<0.05)。21日目の抗OVA IgG力価はCD4枯渇マウスおよび非枯渇マウスにおいて同一であった。このことは、この時間枠(-3日目〜21日目)の間にCD4 T細胞集団が回復したことを示唆している。
【0233】
OVA/ミョウバン免疫化後4日目、7日目、14日目、および21日目におけるC57BL/6マウス血漿中の抗OVA IgG抗体価。結果は、1/100で読み取った時の、5匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差のODとして表した。
【0234】
OVA/ミョウバン免疫化後4日目、7日目、14日目、および21日目におけるC57BL/6マウス血漿中の抗OVA IgG力価。結果は、1/800で読み取った時の、5匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差のODとして表した。
【0235】
CD4枯渇マウスにおいてCD3+/CD4+細胞のパーセントが少ないのにもかかわらず、ACI-24ワクチンによって、非枯渇マウスと類似の強力な抗Aβ力価が誘導された。予想したとおり、免疫化の14日後、CD4枯渇マウスにおけるOVAに対するIgG力価は、非枯渇マウスにおいて観察されたIgG力価より有意に低かった。このことは、CD4枯渇が古典的なT依存性抗体応答に直接影響を及ぼしたことを裏付けている。要するに、結果から、CD4枯渇は成功し、C57BL/6マウスにおいてACI-24はAβに対するT細胞非依存性抗体応答を誘導することが分かる。
【0236】
実施例3:CD4枯渇マウスにおけるACI-24の効力-免疫化前に毎週、枯渇が行われる
本研究の目的は、CD4枯渇C57BL/6マウスおよび非枯渇C57BL/6マウスにおいてACI-24によって誘導されたアミロイドβ(Aβ)特異的抗体応答を評価することにあった。このワクチンを、CD4+T細胞(Tヘルパー細胞)に依存することが知られているワクチンであるオボアルブミン(OVA)および水酸化アルミニウム(ミョウバン)と比較した。C57BL/6マウスに抗CD4モノクローナル抗体を腹腔内(i.p.)経路を介して毎週注射し、1回目の抗CD4注射の3日後にACI-24またはOVA/ミョウバンを皮下(s.c.)免疫化した。免疫化後7日目、14日目、および21日目に血液試料を収集した。CD4枯渇を確かめるために、蛍光活性化セルソーター(FACS)を各採血日に行った。それぞれの採血について、全抗Aβ IgG応答および抗OVA応答をELISAによって測定した。
【0237】
3.1 方法
3.1.1 ACI-24ワクチンの調製
実施例1.1に記載のようにリポソームを調製した。
【0238】
3.1.2 OVA/ミョウバンワクチンの調製
OVAワクチンは、10mgのOVA(Sigma)を1mlの滅菌水で希釈することによって調製し、さらに濃度が1mg/mlとなるようにPBSで希釈した。0.5mg/ml OVA:5mg/mlミョウバン(Alhydrogel 2%; Brenntag Biosector, Frederikssund, Denmark)の最終溶液は、0.9%NaClに溶解して調製した。
【0239】
3.1.3 CD4枯渇
A群およびC群におけるCD4+細胞の枯渇は、免疫化の3日前(-3日目)およびその後、毎週(4日目、11日目、および18日目)、PBS(100μg/投与/マウス)で希釈した抗CD4抗体(クローンYTS191.1; AbD Serotec, Oxford, UK)をi.p.注射(200μl)することによって達成した。B群およびD群にはPBSを注射した。FACS分析は全ての採血日(7日目、14日目、および21日目)に全ての動物において行った。
【0240】
3.1.4 免疫化
表3に従って1回目のCD4枯渇の3日後に(0日目)、C57BL/6成体マウス(8匹の雌/群)に200μl/マウスのACI-24またはOVA/ミョウバンをs.c.注射した。採血は、7日目、14日目、および21日目に行った。全ての採血から血漿を調製し、抗Aβ1-42特異的IgGおよび抗OVA特異的IgGをELISAによって確かめた。
【0241】
CD4枯渇を確かめるFACS分析のために、免疫化後7日目、14日目、および21日目に全ての動物からの血液を収集した。血液調製物をACK Lysing Buffer(Invitrogen, Paisley, UK)と4℃で10分間インキュベートすることによって、赤血球溶解を行った。残っている細胞を冷PBSで洗浄し、APC標識抗CD3(クローンKT3; AbD Serotec)およびFITC標識抗CD4(クローンRM4-5; AbD Serotec)と4℃、暗所で30分間インキュベートした。次いで、細胞を冷PBSで洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含むPBSに再懸濁し、CyAn ADPフローサイトメーター分析器(Beckman Coulter GMBH, Lausanne, Switzerland)によって取得した。CD3+/CD4+陽性であったゲーティング細胞のパーセントを処理し、Summit V4.3.01ソフトウェア(Beckman Coulter GMBH)を用いて求めた。
【0242】
表3は異なる群へのマウスの割り当てを示す。
【0243】
(表3)異なる群へのマウスの割り当て.

a:i.p.:腹腔内
b:s.c:皮下
c:分析後に求められた測定量
d:MPLA同類物A+Bの合計
【0244】
3.1.5 Aβ特異的抗体の定量
Aβ1-42特異的IgG応答をELISAによって確かめた。プレートを10μg/mlのAβ1-42(Bachem, Bubendorf)によって4℃で一晩コーティングした。PBS-0.05%Tween20で洗浄し、1%BSAでSwitzerlandブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートをアルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch West Grove, PA, USA)と37℃で2時間インキュベートした。最終洗浄後に、プレートをAP基質(pNPP)とインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。結果は、市販抗体(6E10, Covance, Emeryville, CA, USA)の段階希釈液を参照することによって表した。
【0245】
3.1.6 OVA特異的抗体の定量
OVA特異的IgG抗体をELISAによって確かめた。4℃で一晩、プレートを30μg/mlのOVA(Sigma, A5503)によってコーティングした。PBS-0.05%Tween20で洗浄し、1%BSAでブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、AP結合体化抗マウスIgG全抗体(Jackson Immunoresearch, PA, USA)と37℃で2時間インキュベートした。最終洗浄後に、プレートをpNPPとインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。結果は光学密度(O.D.)として表した。
【0246】
3.2 結果
1匹の動物が治療/免疫化とは関係のない理由で犠牲になったが(C群の#3)、動物は早死にせず、CD4枯渇、ACI-24、またはOVA/ミョウバン免疫化による副作用は観察されなかった。群間の体重も様々な治療の影響を受けなかった。
【0247】
3.2.1 CD3+/CD4+細胞の定量
CD3+/CD4+染色の後に、FACS分析を行うことによって、全ての採血日について、CD4枯渇群の動物におけるCD3+/CD4+(Tヘルパー細胞)カウントは有意に少ないことが明らかになった(P<0.001、二元配置ANOVA)(図10)。
【0248】
7日目、14日目、および21日目におけるACI-24免疫化群およびOVA/ミョウバン免疫化群におけるCD3陽性およびCD4陽性であったゲーティング細胞のパーセント。結果は、10匹のマウスからなる群において得られたCD3+/CD4+の%の平均+標準偏差として表した。
【0249】
3.2.2 ACI-24免疫化後の免疫応答
ACI-24によって誘導された応答がCD3+/CD4+ (Tヘルパー細胞)に依存しないことを確認するために、CD4枯渇マウスおよび非枯渇マウスにおける抗Aβ力価を分析した。ACI-24ワクチンは7日目から21日目まで強い抗Aβ IgG応答を誘導した。CD4枯渇マウスと非枯渇マウスとを比較した時に、抗Aβ力価に有意差は観察されなかった(図11)。
【0250】
ACI-24免疫化後7日目、14日目、および21日目におけるC57BL/6マウスの血漿中の抗Aβ IgG抗体価。結果は、10匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差として表した。
【0251】
3.2.3 OVA/ミョウバン免疫化後の免疫応答
OVAに対する高いIgG力価はCD3+/CD4+細胞(Tヘルパー細胞)に依存するので、CD4枯渇を確かめるために抗OVA IgG力価を分析した。7日目に、CD4枯渇動物および非枯渇動物においてごくわずかな力価が観察された。この時、O.D.は1/100または1/800で記録された。14日目に、CD4枯渇マウスの抗OVA IgG力価は、非枯渇マウスと比較して有意に低かった(図12、二元配置ANOVA P<0.001)。この知見は、14日目および21日目にO.D.が1/800で記録された時に確かめられた(図13、それぞれ二元配置ANOVA P<0.001およびP<0.01)。
【0252】
OVA/ミョウバン免疫化後7日目、14日目、および21日目におけるC57BL/6マウスの血漿中の抗OVA IgG 抗体価。結果は、1/100で読み取った時の、10匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差のODとして表した。
【0253】
OVA/ミョウバン免疫化後7日目、14日目、および21日目におけるC57BL/6マウス血漿中の抗OVA IgG力価。結果は、1/800で読み取った時の、10匹のマウスからなる群において得られた平均+標準偏差のODとして表した。
【0254】
CD4枯渇マウスにおいてCD3+/CD4+細胞のパーセントが少ないのにもかかわらず、ACI-24ワクチンによって、非枯渇マウスと類似の強力な抗Aβ力価が誘導された。予想したとおり、免疫化の14日後(1/100 O. D.)および21日後(1/100および1/800 O.D.)、CD4枯渇マウスにおけるOVAに対するIgG力価は、非枯渇マウスにおいて観察されたIgG力価と比較して有意に低かった。このことは、CD4枯渇が古典的なT依存性抗体応答に直接影響を及ぼしたことを裏付けている。要するに、結果から、CD4枯渇は成功し、C57BL/6マウスにおいて、ACI-24はAβに対するCD4+T細胞非依存性抗体応答を誘導することが分かる。
【0255】
実施例4:カニクイザルにおけるACI-24の免疫原性
本研究の目的は、カニクイザル(Macaca fascicularis)におけるACI-24の免疫原性を評価することにあった。サルとヒトとを比較した時にアミロイドペプチドのアミノ酸配列が完全に相同であるので、本研究のためにカニクイザルを選択した。このサルは自己タンパク質としてβ-アミロイド(Aβ)を発現し、従って、このペプチドに対してある程度の免疫寛容を有する。本発明者らは、これらのサルにおいて、ヒトAβ1-15のパルミトイル化ペプチド(Pal1-15) を含有するACI-24による免疫化が免疫寛容を壊すことができるかどうかという分析について説明する。
【0256】
ACI-24の免疫原性を確かめるために、サルにACI-24を6回、4週間の間隔をあけて皮下(s.c.)に与えた。抗体応答は、ワクチン接種後、異なる時点で、免疫化サルの血清中の抗Aβ IgM抗体価およびIgG抗体価をELISAによって測定することによって分析した。
【0257】
4.1 方法
4.1.1 ACI-24ワクチンの調製
モル比9:1:7のジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC, Lipoid, Switzerland)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG, Lipoid, Switzerland)、およびコレステロール(Solvay, Netherlands)をEtOHに40〜60℃で可溶化することによって、リポソームを調製した。パルミトイル化Aβ1-15(Pal1-15、Aβ1-15のヒト配列)を、2%オクチル-β-D-グルコピラノシド(β-OG, Fluka)を含むPBSに溶解した。脂質/エタノール溶液をβ-OG/PBS溶液に注入し、直ぐにPBSで希釈した。決められた脂質濃度に達するように、作製したリポソームをウルトラダイアフィルトレーションによって濃縮した。モノホスホリルリピドA(MPLA, Avanti Polar Lipids, Inc. AL, USA)をリン脂質と同時に添加した。異なるワクチン調製物ACI-24-125(R/ACI/PAL1-15/プール/140607+180607)、ACI-24-30(希釈/R/ACI/PAL1-15/プール/140607+180607)およびACI-空(R/ACI/Pal1-15/110607/E)がPolymun Scientific GmbH(Austria)によって調製され、Maccine Ltd.(Singapore)に発送された。Pal1-15、MPLA、コレステロール、およびDMPCの理論量および分析量を付録(表2)に示した。
【0258】
4.1.2 免疫化
18匹のナイーヴサルを、表4に従って5つの異なる群の1つに割り当てた。群1にはPBSを与えた。群2には、空のリポソーム、すなわち、MPLAを含むが、Pal1-15を含まないリポソーム(「ACI-24-空」と名前を付けた)を与えた。4つの群に、異なる用量のPal1-15を含有するACI-24、すなわち、ACI-24-30、ACI-24-125、ACI-24-500およびACI-24-1000を与えた。サルを6回、4週間毎にすなわち、0日目、28日目、56日目、84日目、112日目、および140日目に皮下(s.c.)免疫化した。
【0259】
表4は異なる群へのサルの割り当てを示す。
【0260】
(表4)異なる群へのサルの割り当て

a:理論用量をμgで表し、ワクチン名の中にACI-24の後ろに示した。
b:理論体積
c:分析後に求められた測定量
【0261】
4.1.3 血液サンプリング
血液試料(合計8ml)を収集し、血液血清および白血球を-1週目から開始して24週目まで週単位で単離した。
【0262】
約 4 mlの全血試料を大腿静脈から採取してプレーンチューブ(plain tube)に入れ、室温で1時間まで凝固させた。次いで、血清を遠心分離によって4000rpmで10分間、分離した。血清を1mlアリコートに分け、試料の半分をMaccineにおいて-80℃で保管した。治療開始後、6週目、10週目、14週目、18週目、20週目、および24週目に、残りのアリコートを凍結した状態でAC Immuneに発送した。
【0263】
約4mlの全血試料を大腿静脈から採取してEDTAチューブ(2x2ml)に入れた。血液試料を採取した直後に、血球溶解物をNeubauerチャンバーおよびトリパンブルー排出によって収集した。2007年8月から研究期間の終わりまでに収集した試料を直ぐに評価した時に20%を超える溶解血球は認められなかった。収集後に、チューブを血液ローラー(blood roller)に入れた。2mlの全血が入っているチューブ1本を2x1mlのアリコートに分け、AC Immuneに発送するまで-80℃で凍結した。Histopaque勾配法を用いて、白血球をもう一方の2mlから単離した。15ml遠心管に入っている2mlのHistopaque-1077(Sigma)の上に、2mlの血液を層状に積み重ねた。次いで、ブレーキを無効にして、勾配を400gで30分間、回転させた。Histopaque/血漿の界面に見られる白血球を収集し、等張性リン酸緩衝食塩水によって洗浄し、400gで5分間、遠心分離した。2回の洗浄後、遠心分離された細胞を、2mlの冷却した凍結用培地(70%RPMI;20%FBS;10%DMSO)に再懸濁した。次いで、細胞を、予め冷却したNalgene細胞凍結用容器に入れ、約24時間、-80℃に保った。この後に、分析のために両バイアルをドライアイスに入れてAC Immuneに発送するまで、液体窒素の中に入れた。
【0264】
4.1.4 Aβ特異的抗体の定量
Aβ1-42特異的IgG抗体およびIgM抗体をELISAによって確かめた。プレートを、10)または10μg/mlの1-42(Bachem, Bubendorf, Switzerland)、μg/mlのヒトAβ Aβ1-15(NeoMPS, France)によって4℃で一晩コーティングした。PBS-0.05%Tween20で洗浄し、1%BSAでブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化抗サルIgG抗体またはIgM抗体(KPL Inc, Gaithersburg, Maryland, USA)と37℃で2時間インキュベートした。最終洗浄後に、プレートをHRP基質(ABTS)とインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。
【0265】
4.1.5 MPLA特異的抗体の定量
MPLA特異的IgG抗体をELISAによって確かめた。プレートを10μg/mlのMPLA(Avanti Polar Lipids, Inc. AL, USA)によって4℃で一晩コーティングした。PBS-0.05%Tween20で洗浄し、1%BSAでブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化抗サルIgG抗体(KPL Inc, Gaithersburg, Maryland, USA)と37℃で2時間インキュベートした。最終洗浄後に、プレートをHRP基質(ABTS)とインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。
【0266】
4.1.6 ワクチンレスポンダーの定義
1回目の免疫化前の同じサルにおいて得られたO.D.の2倍のO.D.を示したサルに由来する血清をワクチンレスポンダーとみなした。
【0267】
4.2 結果
カニクイザルにおけるACI-24によって誘導された抗体応答の評価。
【0268】
s.c.注射されたACI-24ワクチンは、9匹のサルにおいて強いAβ特異的IgGを誘導した(図14)。応答したサルは、ACI-24-30(1匹のサル、番号2066)、ACI-24-125(2匹のサル、番号6178および033B)、ACI-24-500(3匹全てのサル、7815、4C73、194A)、またはACI-24-1000(3匹全てのサル、740B、5951、および4B2E)によるワクチン接種を受けていた。予想したとおり、PBSまたは空のリポソームによるワクチン接種を受けたサルは、検出可能な抗Aβ IgG抗体を示さなかった(図14)。
【0269】
ACI-24は、3匹のサルにおいて、ACI-24-30(1匹のサル、番号2066)、ACI-24-125(1匹のサル、番号033B)、またはACI-24-500(1匹のサル、番号7815;図15)によるワクチン接種後に抗Aβ IgM力価を誘導した。
【0270】
ACI-24はまた、2匹のサルにおいて、ACI-24-30(1匹のサル、番号2066)またはACI-24-500(1匹のサル、番号7815)によるワクチン接種後に抗MPLA IgG応答も誘導した(図16)。
【0271】
1回目の免疫化後の異なる日におけるカニクイザル血清中の抗Aβ IgG抗体の分析。1日目、28日目、56日目、84日目、112日目、および140日目に、サルを、PBS、空のリポソーム、または様々な用量のACI-24によってs.c.免疫化した。結果は対照のx倍として表した(それぞれの日のO.D.を、免疫化前に得られたO.D.で割った)。それぞれのグラフは1投与群に相当する。数字は動物の番号を指している。
【0272】
1回目の免疫化後の異なる日におけるカニクイザル血清中の抗Aβ IgM抗体の分析。1日目、28日目、56日目、84日目、112日目、および140日目に、サルを、PBS、空のリポソーム、または様々な用量のACI-24によってs.c.免疫化した。結果は対照のx倍として表した(それぞれの日のO.D.を、免疫化前に得られたO.D.で割った)。数字は動物の番号を指している。
【0273】
1回目の免疫化後の様々な日におけるカニクイザル血清中の抗MPLA IgG抗体の分析。1日目、28日目、56日目、84日目、112日目、および140日目に、サルを、PBS、空のリポソーム、または様々な用量のACI-24によってs.c.免疫化した。結果は対照のx倍として表した(それぞれの日のO.D.を、免疫化前に得られたO.D.で割った)。数字は動物の番号を指している。
【0274】
従って、ACI-24はカニクイザルにおいて抗Aβ IgG応答を誘導する。78μgのPal1-15を含有するACI-24-125ワクチンは、抗Aβ IgG応答を誘導する最小用量であった。従って、ACI-24は、サルにおいて有能であり、このことは、ACI-24がヒトAD患者における免疫寛容も克服するであろうことを示唆している。
【0275】
実施例5:ヌードマウスおよびCD40L、CD14、またはTLR4が欠損しているマウスにおいてACI-24によって誘導された抗体応答の評価
本研究の目的は、ヌードマウスならびにCD40L、CD14およびTLR4が欠損しているマウスにおいて、ACI-24によって誘導されたアミロイドβ(Aβ)特異的抗体応答を評価することにあった。
【0276】
ヌードマウスはFoxn1nu変異を有し、正しく機能する胸腺が無いためにT細胞機能が低下している。従って、本研究の目標の1つは、ACI-24によって誘導される抗体応答がT細胞非依存性であるかどうか分析することにあった。
【0277】
CD40Lノックアウトマウスは、T依存性抗原に対する一次抗体応答および二次抗体応答の不全を示すが、通常、T非依存性抗原に応答する(Renshaw, J Exp Med, 1994, 180, 1889; Borrow, J. Exp. Med., 1996, 183, 2129; Xu, Immunity, 1994, 1, 423)。CD4 T細胞におけるCD40L発現はB細胞によるアイソタイプスイッチにも重要である。ACI-24によって誘導される抗体応答にCD40L/CD40が必要であるかどうか確かめるために、CD40L欠損マウスを分析した。
【0278】
CD14およびTLR4は、リポ多糖(LPS)に対する応答に関与する分子である。TLR4はCD14およびミエロイド系分化タンパク質-2と一緒になって、LPSに対する自然免疫応答を開始するパターン認識受容体を形成する。モノホスホリルリピドA(MPLA)はLPSの低毒性誘導体であり、ACI-24ワクチン中のアジュバントとして用いられる。ACI-24によって誘導される抗体応答のために、CD14およびTLR4がMPLAを認識することが必要とされるかどうか、CD14欠損マウスまたはTLR4欠損マウスにおいて確かめた。
【0279】
全てのマウスにACI-24を皮下(s.c.)注射した。マウスを、3回、2週間の間隔をあけて免疫化し、様々な時間間隔で採血した。全抗Aβ IgG応答をELISAによって測定した。
【0280】
5.1 方法
5.1.1 マウス
TLR4欠損マウス(TLR4ノックアウト(KO))、CD14欠損マウス(CD14 KO)、またはCD40L欠損マウス(CD40L KO)、およびヌードマウス(全てC57BI/6バックグラウンド)は、Jackson Laboratories(Bar Harbor, ME, USA)から購入した。
【0281】
5.1.1.1 TLR4ノックアウト-B6.B10ScN-Tlr4lps-del/JthJ(Jackson Stock Number.007227)
この自然突然変異はTlr4遺伝子における7kb欠失である。この欠失によりmRNAおよびタンパク質が両方とも無くなり、従って、LPS刺激に対して応答不全を示す。C3H/HeJマウスにおいて見出された、機能が類似するTlr4Lps-d変異は、アミノ酸置換を引き起こす点変異である。正常LPS応答のための対立遺伝子であるTlr4lps-nは、他のほとんどのC3HおよびC57BL/10亜系ならびにほとんどのマウス系統にある。この系統は、グラム陰性細菌感染に対するTollシグナル伝達経路および感受性を研究するのに使用することができる。
【0282】
5.1.1.2 CD14ノックアウト-B6.129S-Cd14tm1Frm/J(Jackson Stock Number.003726)
CD14ホモ接合性ヌルマウスには生存能力および生殖能力がある。チオグリコレートによって誘発された腹膜(T-EP)マクロファージにおいて、CD14タンパク質産物はウエスタンブロット分析によって検出されない。野生型T-EPマクロファージとは異なり、これらの動物に由来するT-EPマクロファージは、リポ多糖(LPS)に応答してTNF-αおよびIL-6を分泌しない。このような応答は、CD14ヌルT-EPマクロファージが(大腸菌(E.coli)生体粒子の形をした)細菌全体に曝露された時に、明らかにCD14非依存性機構によって観察される。
【0283】
5.1.1.3 ヌードマウス-B6.Cg-Foxn1nu/J(Jackson Stock Number:000819)
ヌード自然突然変異(Foxn1nu、以前はHfh11nu)ホモ接合性マウスの2つの主な欠陥は発毛異常および胸腺上皮発達の欠陥である。このマウスは無毛のように見えるが、機能するが毛包の成長が不完全なマウスが生まれる。発毛周期およびパターンは、特に、着色したマウスにおいて明らかであるが、毛包が不完全なために毛は適切に生えない。ホモ接合性の仔は、頬髭が無いために、または十分に発達していない縮れた頬髭ために24時間と若い段階で特定することができる。ヌードマウスは無胸腺でもあり、これは「胸腺原基」の発達不全によって引き起こされる。結果として、ホモ接合性ヌードマウスはT細胞を欠き、細胞性免疫が無い。しかしながら、T細胞前駆体に欠陥はなく、正常な条件下では、特に、成体マウスにおいて、いくらかの機能的成熟T細胞を見つけることができる。ヘルパーT細胞活性に欠陥があるために、胸腺依存性抗原に対する応答が検出可能な時には主にIgMに限定される。ホモ接合性ヌードマウスはB細胞発達に部分的な欠陥があり、これは、恐らく、機能的T細胞が存在しないためである。
【0284】
5.1.1.4 CD40Lノックアウトマウス-B6.129S2-Cd40Igtm1lmx/J(Jackson Stock Number:002770)
標的変異ホモ接合性マウスには生存能力および生殖能力がある。ホモ接合性変異マウスは明らかな表現型異常を示さない。B細胞亜集団およびT細胞亜集団のパーセントは正常である。ホモ接合体は、選択的な体液性免疫不全(低い基礎血清アイソタイプレベルおよび検出不可能なIgE)ならびに胸腺依存性抗原による免疫化に対する二次的な抗原特異的応答の異常を示す。このマウスの表現型はヒトX連鎖性高IgM症候群に似ている。
【0285】
5.1.2 ワクチンACI-24の調製
実施例1.1に記載のようにリポソームを調製した。
【0286】
ワクチン調製物であるACI-24(バッチ:ACI24-0709-A)は、Polymun Scientific GmbH(Austria)によって調製され、チューリヒ大学(Switzerland)に発送された。
【0287】
5.1.3 免疫化
表5に従って3回、各投与(0日目、14日目、28日目)の間に2週間の間隔をあけて、C57BL/6マウス、ヌードマウス、CD40L KOマウス、CD14 KOマウス、およびTLR4 KOマウス(6匹のマウス/群)にACI-24をs.c.注射した。1つのC57BL/6マウス群に負の対照としてPBSを与えた。もう1つの対照群にはAβ1-15ペプチドを与えた。0日目、1回目の注射の7日後、14日後、28日後、および56日後に、血漿試料を収集した。Aβ1-42特異的IgG抗体価をELISAによって確かめた。
【0288】
5.1.4 Aβ特異的抗体の定量
Aβ1-42特異的IgG抗体をELISAによって確かめた。プレートを10μg/mlのAβ1-42(Bachem, Bubendorf)によって4℃で一晩コーティングした。0.05%Tween20を含むPBSで洗浄し、1%BSAによってSwitzerlandブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、アルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch West Grove, PA, USA)とインキュベートした。最終洗浄後、プレートをAP基質(pNPP)またはHRP基質(ABTS)とインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。結果は、市販抗体(6E10, Covance, Emeryville, CA, USA)の段階希釈液を参照することによって表した。
【0289】
(表5)異なる群へのマウスの割り当て

a:理論体積
b:s.c.:皮下
c;分析後に求められた測定量
d:該当なし
【0290】
5.2 結果
5.2.1 抗体応答分析
ACI-24によって誘導された応答がT細胞および/またはCD14、CD40L、もしくはTLR4に依存するかどうか確認するために、Wtマウス、ヌードマウス、およびCD14 KOマウス、CD40L KOマウス、またはTLR4 KOマウスの抗Aβ IgG力価を分析した。
【0291】
Wtマウスにおいて、ACI-24ワクチンは、PBSと比較して強い抗Aβ IgG応答を誘導した(図17;7日目、28日目、および56日目について二元配置ANOVA P<0.05)。CD40L KOマウスにおいて、ACI-24ワクチンは、PBSと比較して強い抗Aβ IgG応答を誘導し(図17;7日目、28日目、および56日目について二元配置ANOVA P<0.05)、力価は、Wtマウスにおいて誘導された抗Aβ IgG力価より有意に低くなかった(全ての時点についてP<0.05)。
【0292】
1回目の免疫化後(7日目および14日目)、ヌードマウスの力価はWtマウスの力価と似ていた。他の採血日において、ヌードマウスの力価はWtマウスの力価より有意に高かった(28日目および56日目について二元配置ANOVA P<0.001)。予想したとおり、Aβ1-15ペプチドは抗Aβ IgG力価を誘導しなかった。
【0293】
CD14 KOマウスにおける力価も、分析した全ての日においてWtマウスにおいて観察された力価と似ていた(図18、P>0.05)。
【0294】
対照的に、TLR4 KOマウスにおいて1回または2回のACI-24免疫化後に抗Aβ IgG力価は誘導されず、7日目、14日目、および28日目における力価は、Wtマウスにおいて観察された力価より有意に低かった(7日目、14日目、および28日目において二元配置ANOVA P<0.001)。
【0295】
まとめると、これらの結果から、ACI-24は、T細胞、CD40L、およびCD14に依存しないが、TLR4に依存する強い抗体応答を誘導することが分かる。
【0296】
5.3 結論
ACI-24ワクチンは、Wtマウスおよびヌードマウスにおいて強い抗Aβ IgG応答を誘導した。このことは、ACI-24ワクチン接種と関連して抗体応答がT細胞に依存しないことを証明している。抗体応答はCD40Lにも依存しなかった。このことはT細胞の非依存性をさらに裏付けている。CD14 KOマウスにおける抗体応答はWtマウスと似ていた。このことから、CD14は、抗体応答を誘導するためにACI-24のアジュバントであるMPLAの受容体として必要とされないことが分かる。最後に、ACI-24によって誘導される抗体応答にTLR4が必要なことは、TLR4 KOマウスにおいて抗体応答が完全に存在しないことによってはっきりと証明された。
【0297】
実施例6:雌ヌードマウスにおける抗pタウ抗体応答
本研究の目的は、雌ヌードマウスにおけるACI-33(タウ5-20[pY18])ワクチン注射によって誘導された抗pタウ抗体応答を評価することにあった。このヌードマウスはFoxn1nu変異を有し、正しく機能する胸腺が無いためにT細胞機能が低下している。従って、本研究の目標は、ACI-33によって誘導される抗体応答がT細胞非依存性であるかどうか分析することにあった。
【0298】
11週齢または13週齢のC57BL/6バックグラウンドを有するヌードマウスおよび対応する同腹仔に皮下(s.c.)注射した。マウスを、3回、2週間の間隔をあけて免疫化し、それぞれの免疫化の1週間後に採血した。全抗pタウ(タウ5-20[pY18])ペプチドIgG応答をELISAによって測定した。さらに、IgGの様々なサブクラスならびにIgMの分布を評価するために、3回の免疫化後に、抗体応答のアイソタイプパターンを分析した。対応する非pタウ(タウ5-20)、完全長(441aa)タウタンパク質、およびリン酸化完全長(441aa)タウタンパク質に対する抗体価も分析した。
【0299】
ヌードマウスにTヘルパー細胞が無いことを確認するために、CD3+/CD4+細胞のパーセントを蛍光活性化セルソーター(FACS)によって評価した。
【0300】
6.1 方法
6.1.1 ワクチンACI-33の調製
脂質ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、コレステロール、ならびにアジュバントモノホスホリルリピドA(MPLA)(全てAvanti Polar Lipid Inc. AL, USA)、ならびにタウ由来テトラパルミトイル化リンペプチドタウ5-20[pY18](Y18にリン酸基を有するヒトタウ5-20;5.2mg)を秤量して、250mlのガラス丸底フラスコに入れた(それぞれ、モル比9:1:7:0.2:0.1)。次いで、クロロホルム(30ml)を添加し、RTで穏やかに攪拌した後に、溶液を40℃、減圧下で蒸発させ、次いで、高真空下で1時間蒸発させた。結果として生じた薄膜を、PBS(60ml)を添加することによって再水和し、RTで18時間、穏やかに攪拌した。次いで、リポソーム懸濁液(バッチACI-33-090818-A)を分注した後に、2〜8℃で保管した。最終的なペプチド/リン脂質モル比は1:100であった。ワクチンをJSW Life Sciences GmbH(Austria)に発送した。
【0301】
6.1.2 免疫化
JSW Life Sciencesにおいて、C57BL/6バックグラウンドを有するGmbHヌードマウス(B6.Cg-Foxn1nu/J)および対応する野生型同腹仔(6匹の雄マウス/群)に、表6に従って3回、各投与(0日目、14日目、28日目)の間に2週間の間隔をあけてACI-33をs.c.注射した。1回目の注射の7日前、1回目の注射の2日後、4日後、7日後、21日後、35日後、および56日後に、顔面静脈/動脈から血漿試料を収集した。タウ5-20[pY18]特異的なIgG抗体価およびIgM抗体価ならびにIgGアイソタイプパターンをELISAによって確かめた。非pタウ5-20、完全長(441aa)タウタンパク質、およびリン酸化完全長(441aa)タウタンパク質に対する特異的IgG抗体価もELISAによって確かめた。CD3+/CD4+細胞のパーセントを確かめるFACS分析のために、7日目に血液試料も収集した。
【0302】
6.1.3 タウペプチド特異的抗体の定量
5種類の血清採血試料(d2、d7、d21、d35、およびd56)におけるタウ5-20[pY18]に対する特異的IgG抗体をELISAによって測定した。タウ5-20、完全長(441aa)タウタンパク質、およびリン酸化完全長(441aa)タウタンパク質に特異的なIgGが、d35からの血清において確かめられた。タウ5-20[pY18]に特異的なIgMおよびIgGアイソタイプ抗体が、d35血清採血試料においてELISAによって確かめられた。プレートを、10ug/mlの対応するタウペプチドおよび1ug/mlの対応するタウタンパク質によって4℃で一晩コーティングした。各ウェルをPBS-0.05%Tween20で洗浄し、1%BSAを含むPBS-0.05%Tween20でブロッキングした後に、血清の段階希釈液をプレートに添加し、37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、Pharmingen BD San Diego, CA, USAから購入したアルカリホスファターゼ(AP)結合体化抗マウスIgG全抗体(Jackson Laboratories, Baltimore, PA, USA)またはアイソタイプ特異的抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化抗マウスIgM、AP結合体化抗マウスIgG1、ビオチン結合体化抗マウスIgG3;Invitrogen CA, USAから購入したビオチン結合体化抗マウスIgG2a、およびZymed Laboratories, San Francisco, CAから購入したHRP結合体化抗マウスIgG2bと37℃で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、APのホスファターゼ基質であるpNPP(パラ-ニトロ-フェニル-ホスフェート)またはHRP基質であるABTS(2,2'-アジノ-bis(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(sulphonic acid)))とインキュベートし、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで読み取った。ビオチン結合体化抗体については、プレートをストレプトアビジン-HRP(R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)中で45分間インキュベートした後に、ABTSを用いて検出する追加工程を行った。結果は、IgG、IgGアイソタイプ、およびIgMの非飽和O.D.におけるO.D.(光学密度)として表した。
【0303】
6.1.4 CD3+/CD4+細胞の定量
マウス血液試料を塩化アンモニウムによって透明になるまで溶解し、次いで、400 x gで7分間、遠心分離し、ペレットをEDTA含有PBSに再懸濁した。次いで、細胞をCD16/CD32ブロッキング試薬でブロッキングし、CD4(PE結合体)抗体およびCD3(PE-Cy5)抗体によって4℃で30分間、染色した。試料をPBSで洗浄し、固定液(DB CellfixをBD FACS Flowで1:40に希釈した)に再懸濁し、BD FACS Caliburサイトメーターによって取得した。CD3+陽性およびCD4+陽性であったゲーティング細胞(Tヘルパー細胞)のパーセントを評価した。
【0304】
(表6)マウス免疫化

a:理論体積
b:s.c:皮下
c:分析後に求められた測定量
【0305】
6.2 結果
6.2.1 全身観察
どの動物も早死にせず、治療による副作用を報告する必要はなかった。全てのB6.Cg-Foxn1nu/J動物について、典型的なヌード表現型が存在したのに対して、野生型(wt)同腹仔の毛皮は正常であった。
【0306】
6.2.2 CD3+/CD4+細胞の定量
CD3+/CD4+染色の後に、FACS分析を行うことによって、wt動物と比較して、ヌードマウスにおけるTヘルパー細胞カウント(CD3+/CD4+細胞)は有意に少ないことが明らかになった(図19)。
【0307】
6.2.3 免疫応答分析
wtマウスおよびヌードマウスにおけるワクチンの免疫原性を研究するために、ACI-33ワクチン接種によって生じた抗タウ5-20[pY18]IgG力価を分析した。ACI-33によって誘導された応答がT細胞機能に依存しないかどうか研究するために、ヌードの抗タウ5-20[pY18]IgG力価を分析した。ワクチンによって、ヌードマウスにおいて抗タウ5-20[pY18]IgG応答が誘導され、試験した全ての時点で、wtマウスまたはヌードマウスにおいてACI-33によって誘導された抗体応答の間に有意差は無かった(図20;ヌードマウスとwtマウスとの間の全ての採血について、二元配置ANOVA P<0.05)。
【0308】
ACI-33ワクチンによって、両マウスタイプにおいて、s.c.注射後に抗タウ5-20[pY18]IgG応答が誘導され、2回の免疫化後(d27)にピークに達した(図20)。
【0309】
ワクチンによる3回のs.c.免疫化後に2つのマウスタイプ間で有意差が無かった時に、ACI-33ワクチン接種によって、ヌードマウスとwtマウスとの間で様々なIgGサブクラスおよびIgMについて同じプロファイルの抗体価が誘導された(図21、一元配置ANOVA P>0.05 IgG1ヌード対IgG1 wt、IgG2a/2bヌード対IgG2a/2b wt、IgG3ヌード対IgG3 wt、IgMヌード対IgM wt)。両マウスタイプにおいて、IgG1レベルはIgG2bおよびIgMと比較して有意に低かった(図21、一元配置ANOVA、ヌードマウス:P<0.01 IgG1対IgG2bまたはIgM;Wtマウス:P<0.05 IgG1対IgG2bまたはIgM)。さらにヌードマウスは、IgG3と比較して有意に低いIgG1レベル(図21、一元配置ANOVA、ヌードマウス:P<0.05 IgG1対IgG3)を示し、IgG2aレベルもIgG2b、IgG3、およびIgMと比較して低かった(図21、一元配置ANOVA、ヌードマウス:P<0.05 IgG2a対IgG2b、IgG3、またはIgM)。
【0310】
様々なタウペプチド(抗タウ5-20[pY18]および抗タウ5-20)ならびにタンパク質(抗リン酸化完全長(441aa)タウタンパク質=抗pタウタンパク質および抗完全長(441aa)タウタンパク質=抗タウタンパク質)について、ACI-33を3回、s.c.注射した後に誘導されたIgG力価も分析した(図22)。様々なペプチドおよびタンパク質について、wtマウスとヌードマウスとの間で力価に差は無かった。ヌードマウス群において、抗タウ5-20[pY18]は抗タウ5-20力価より大きく、有意差があった(図22、一元配置ANOVA、P<0.05 抗タウ5-20[pY18]力価対抗タウ5-20力価)。
【0311】
6.3 結論
ヌードマウスにおいてCD3+細胞およびCD4+細胞のパーセントは少ないのにもかかわらず、ACI-33ワクチンによって、強い抗タウ5-20[pY18]IgG応答が誘導された。抗体応答およびIgGアイソタイプ分布の持続性はwtマウスおよびヌードマウスにおいて似ていた。このことは、ACI-33ワクチン接種と関連して、これらのパラメータがT細胞非依存性であることを示唆している。免疫能力のあるマウスと比較して、T細胞不全マウスにおいて、ACI-33免疫化によって、同一の抗体価およびキネティックと類似のIgGプロファイルが誘導された。さらに、様々なタウペプチドおよびタンパク質についての抗体価は、免疫能力のあるマウスとT細胞不全マウスとの間で似ていた。これらのデータから、ヌードマウスおよびwtマウスの両方において、ACI-33によってT細胞非依存性抗体応答が誘導されたことが分かった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞非依存性免疫応答を必要とする患者における疾患、状態、または障害の治療の際に、このようなT細胞非依存性免疫応答を誘導するための改変抗原を含む抗原性組成物であって、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている、抗原性組成物。
【請求項2】
動物またはヒトにおいて使用するための、請求項1記載の抗原性組成物。
【請求項3】
免疫刺激剤として有効である、請求項1または2記載の抗原性組成物。
【請求項4】
患者が免疫寛容患者である、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項5】
患者が免疫不全患者である、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項6】
患者の免疫系が、年齢によって、HIVもしくは癌などの疾患によって、または例えば慢性関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症などを含むがこれらに限定されない炎症性疾患に対する治療などの治療によって損なわれている、請求項5記載の抗原性組成物。
【請求項7】
患者が自己免疫疾患に罹患している、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項8】
患者がT細胞活性化患者である、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項9】
患者がT細胞不全に罹患している、前記請求項のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項10】
患者のCD4 T細胞が枯渇している、請求項9記載の抗原性組成物。
【請求項11】
患者が、CD4 T細胞上でのCD14および/またはCD40Lの発現低下を示す、請求項10記載の抗原性組成物。
【請求項12】
T細胞不全が年齢、免疫抑制、または疾患によって引き起こされる、請求項9〜11のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項13】
疾患が、HIV、癌、または他の悪性腫瘍である、請求項12記載の抗原性組成物。
【請求項14】
抗原がT細胞エピトープを含有しない、前記請求項のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項15】
抗原が、該抗原の全てまたは一部がβシート立体配座を含む立体配座抗原である、前記請求項のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項16】
抗原が、リポソーム担体/アジュバントの脂質二重層への挿入を容易にする親油性部分または疎水性部分によって改変されているペプチド抗原である、前記請求項のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項17】
抗原性ペプチドの全実効電荷と、該ペプチドが取り付けられるか、組み込まれるか、または再構成される担体/アジュバントの全実効電荷との組み合わせで、親油性部分または疎水性部分の寸法が、該抗原性ペプチドが曝露され、安定化され、かつ高度に生物学的活性のある立体配座で提示され、それによって、曝露され、安定化され、かつ高度に生物学的活性のある立体配座で抗原性構築物の中に含まれる抗原決定基と、標的生物の免疫系とが自由に相互作用することが可能になり、それによって強力な免疫応答が起こるような寸法である、請求項16記載の抗原性組成物。
【請求項18】
親油性部分または疎水性部分が、脂肪酸、トリグリセリド、ジグリセリド、ステロイド、スフィンゴ脂質、糖脂質、またはリン脂質である、請求項16〜17のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項19】
親油性部分または疎水性部分が、脂肪酸、特に、少なくとも10個の炭素原子からなる炭素骨格を有する脂肪酸である、請求項18記載の抗原性組成物。
【請求項20】
疎水性部分がパルミチン酸である、請求項19記載の抗原性組成物。
【請求項21】
ペプチド抗原が2個のパルミチン酸部分を含む、請求項20記載の抗原性組成物。
【請求項22】
ペプチド抗原が4個のパルミチン酸部分を含む、請求項20記載の抗原性組成物。
【請求項23】
リポソーム調製物が、アジュバント、特に、リピドA、特に、解毒されたリピドA、例えば、モノホスホリルリピドAもしくはジホスホリルリピドAまたはミョウバンを含有する、前記請求項のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項24】
抗原性ペプチドが、アミロイドタンパク質またはアミロイド様タンパク質、例えば、プリオンタンパク質、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ハンチンチンに由来するペプチドである、請求項14〜24のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項25】
抗原性構築物が、AβペプチドのN末端に由来する反復Aβペプチド断片を含むAβ抗原性構築物である、請求項24記載の抗原性組成物。
【請求項26】
AβペプチドのN末端が
a.Aβ1-30;
b.Aβ1-20;
c.Aβ1-16;
を含む、請求項25記載の抗原性組成物。
【請求項27】
Aβペプチド断片が、
a.4〜20個のアミノ酸;
b.5〜16個のアミノ酸;
c.6〜12個のアミノ酸;
d.4〜8個のアミノ酸
を含む、請求項25記載の抗原性組成物。
【請求項28】
Aβペプチド断片が
a.Aβ1-15;
b.Aβ1-16;
c.Aβ1-5
である、請求項25記載の抗原性組成物。
【請求項29】
抗原性構築物が、タンパク質タウの主要な病理学的ホスホエピトープを模倣するホスホペプチドである抗原性ペプチドを含む、前記請求項のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項30】
タウタンパク質がヒトタンパク質である、請求項29記載の抗原性組成物。
【請求項31】
タウタンパク質が、SEQ ID NO:2と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:2の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基18(P-Tyr18)に対応するアミノ酸残基がリン酸化されている(T1)、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項32】
タウタンパク質が、SEQ ID NO:3と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:3の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基212(P-Thr212)および214(P-Ser214)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つがリン酸化されている、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項33】
タウタンパク質が、SEQ ID NO:4と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:4の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:4のアミノ酸残基202(P-Ser202)および205(P-Thr205)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つがリン酸化されている、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項34】
タウタンパク質が、SEQ ID NO:5と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:5の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基396(P-Ser396)および404(P-Ser404)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に全てがリン酸化されている、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項35】
タウタンパク質が、SEQ ID NO:6と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:6の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:6のアミノ酸残基404(P-Ser404)および409(P-Ser409)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に全てがリン酸化されている、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項36】
タウタンパク質が、SEQ ID NO:7と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、SEQ ID NO:7の抗原性ペプチドと実質的に同じ免疫原活性を有し、SEQ ID NO:7のアミノ酸残基202(P-Ser202)、205(P-Thr205)、212(P-Thr212)、および214(P-Ser214)に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つ、特に少なくとも2つ、特に少なくとも3つ、特に全てがリン酸化されている、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項37】
タウタンパク質がSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項38】
タウタンパク質がSEQ ID NO:3のアミノ酸配列を有する、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項39】
タウタンパク質がSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有する、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項40】
タウタンパク質がSEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有する、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項41】
タウタンパク質がSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を有する、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項42】
タウタンパク質がSEQ ID NO:7のアミノ酸配列を有する、請求項30記載の抗原性組成物。
【請求項43】
患者が、アミロイドもしくはアミロイド様タンパク質によって引き起こされる疾患もしくは障害またはアミロイドもしくはアミロイド様タンパク質に関連する疾患もしくは障害に罹患している、請求項24〜28のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項44】
患者が、タウもしくはタウ様タンパク質によって引き起こされる疾患もしくは障害またはタウもしくはタウ様タンパク質に関連する疾患もしくは障害に罹患している、請求項29〜42のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項45】
アミロイドに関連する疾患または障害が、個体、特に、動物またはヒトにおける認知記憶能力の喪失を特徴とする、請求項43記載の抗原性組成物。
【請求項46】
疾患がアミロイドーシスグループを構成する疾患または障害である、請求項45記載の抗原性組成物。
【請求項47】
疾患が神経障害である、請求項46記載の抗原性組成物。
【請求項48】
疾患が、アルツハイマー病(AD)、軽度認知機能障害(MCI)、レヴィー小体認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型);グアム島のパーキンソン認知症複合;進行性核上性麻痺、多発性硬化症;クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、成人発症型糖尿病;老人性心アミロイドーシス;内分泌腫瘍、脳卒中、外傷性脳損傷、黄斑変性、および緑内障からなる群より選択される疾患または障害である、請求項47記載の抗原性組成物。
【請求項49】
疾患がアルツハイマー病である、請求項48記載の抗原性組成物。
【請求項50】
タウに関連する疾患または障害が神経変性障害である、請求項44記載の抗原性組成物。
【請求項51】
神経変性疾患または神経変性障害が神経原線維病変の形成によって引き起こされるか、または神経原線維病変の形成に関連する、請求項50記載の抗原性組成物。
【請求項52】
神経変性疾患または神経変性障害がタウオパチーである、請求項51記載の抗原性組成物。
【請求項53】
神経変性疾患または神経変性障害が、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病、拳闘家認知症、ダウン症候群、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、封入体筋炎、およびプリオンタンパク質脳アミロイドアンギオパチー、外傷性脳損傷、グアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、神経原線維変化を伴う非グアム島人型運動ニューロン疾患、嗜銀性グレイン型認知症、大脳皮質基底核変性症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、ハラーフォルデン・シュパッツ病、多系統萎縮症、ニーマン・ピック病C型、ピック病、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、タングルのみの認知症(Tangle only dementia)、脳炎後パーキンソニズム、筋緊張性ジストロフィーからなる群より選択されるものである、請求項52記載の抗原性組成物。
【請求項54】
神経変性障害がアルツハイマー病である、請求項53記載の抗原性組成物。
【請求項55】
個体、特に、動物またはヒトが有害な炎症作用を示さない、前記請求項のいずれか一項記載の抗原性組成物。
【請求項56】
免疫寛容の患者、特に、動物またはヒトにおける免疫寛容を克服または低減することを目的として、該患者の疾患、状態、または障害の治療において使用するための医薬を調製するために、前記請求項のいずれか一項記載の改変抗原を含む抗原性組成物を使用する方法であって、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている、方法。
【請求項57】
T細胞活性化患者、特に、動物またはヒトにおけるT細胞応答の過剰刺激を避けることを目的として、該患者の疾患、状態、または障害の治療において使用するための医薬を調製するために、前記請求項のいずれか一項記載の改変抗原を含む抗原性組成物を使用する方法であって、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている、方法。
【請求項58】
患者における疾患、状態、または障害の治療の際に該患者における免疫寛容を克服または低減するための方法であって、前記請求項のいずれか一項記載の改変抗原を含む抗原性組成物を該患者に投与する工程を含み、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている、方法。
【請求項59】
患者における疾患、状態、または障害の治療の際に該患者におけるT細胞応答の過剰刺激を回避するための方法であって、前記請求項のいずれか一項記載の改変抗原を含む抗原性組成物を該患者に投与する工程を含み、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている、方法。
【請求項60】
IgGおよび/またはIgMの抗体濃度を測定することによって、個体における免疫応答を確かめる工程をさらに含む、請求項58または59記載の方法。
【請求項61】
T細胞不全に罹患している免疫寛容患者における疾患、状態、または障害の治療の際に該患者においてT細胞非依存性免疫応答を誘導するための方法であって、前記請求項のいずれか一項記載の改変抗原を含む抗原性組成物を該患者に投与する工程を含み、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている、方法。
【請求項62】
T細胞活性化患者における疾患、状態、または障害の治療の際に該患者においてT細胞非依存性免疫応答を誘導するための方法であって、前記請求項のいずれか一項記載の改変抗原を含む抗原性組成物を該患者に投与する工程を含み、該抗原がリポソーム表面に高度に反復して並んで提示されている、方法。

【公表番号】特表2012−520852(P2012−520852A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500251(P2012−500251)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053519
【国際公開番号】WO2010/106127
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(506027491)エーシー イミューン ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】