説明

治療薬として有用な一価抗体断片

【課題】分子生物学及び抗体医療分野の、治療薬としての使用のために特徴的性質を有する新規の安定化一価抗体断片を含有してなる組成物及び方法を提供する。
【解決手段】単一抗原結合アーム及びFc領域を含有してなる抗体断片であり、該抗原結合アームを含んでなるFab分子と比較して該抗体断片の安定性が増大しており、該Fc領域が第一及び第二Fcポリペプチドの複合体を含んでなり、Fcポリペプチドの一方だけでなく両方がN末端切断型重鎖である、抗体断片。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一抗原結合アーム及びFc領域を含有してなる抗体断片であり、該抗原結合アームを含んでなるFab分子と比較して該抗体断片の安定性が増大しており、該Fc領域が第一及び第二Fcポリペプチドの複合体を含んでなり、Fcポリペプチドの一方だけでなく両方がN末端切断型重鎖である、抗体断片。
【請求項2】
前記抗体断片がアグリコシル化されている、請求項1に記載の抗体断片。
【請求項3】
前記抗体断片が免疫抑制性質をほとんど持たない、請求項1又は2に記載の抗体断片。
【請求項4】
前記免疫抑制性質がT細胞枯渇に影響する能力を含む、請求項3に記載の抗体断片。
【請求項5】
FcRn結合以外の実質的なエフェクター機能を保持しない、請求項1ないし4の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項6】
前記エフェクター機能が補体溶解である、請求項5に記載の抗体断片。
【請求項7】
前記抗体断片がFcRnに結合する、請求項1ないし6の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項8】
T細胞表面抗原に特異的に結合しない、請求項1ないし7の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項9】
前記T細胞表面抗原がCD3又はCD4である、請求項8に記載の抗体断片。
【請求項10】
前記T細胞表面抗原がCD3である、請求項9に記載の抗体断片。
【請求項11】
腫瘍抗原に特異的に結合する、請求項1ないし10の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項12】
レセプター二量体化により活性化される細胞表面レセプターに特異的に結合する、請求項1ないし11の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項13】
前記抗体断片が軽鎖可変ドメインを含有してなる第一ポリペプチド、重鎖可変ドメイン及び該第一Fcポリペプチドを含有してなる第二ポリペプチド、並びに、該第二Fcポリペプチドを含有してなる第三ポリペプチドを含んでなる、請求項1ないし12の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項14】
前記第一ポリペプチドがヒト軽鎖定常ドメインに融合した非ヒト軽鎖可変ドメインを含んでなる、請求項13に記載の抗体断片。
【請求項15】
前記第一ポリペプチドがヒト化又はヒトフレームワーク配列に融合した非ヒト種由来のCDRを含んでなる、請求項13に記載の抗体断片。
【請求項16】
前記第二ポリペプチドがヒト重鎖定常ドメインに融合した非ヒト重鎖可変ドメインを含んでなる、請求項13に記載の抗体断片。
【請求項17】
前記第二ポリペプチドがヒト化又はヒトフレームワーク配列に融合した非ヒト種由来のCDRを含んでなる、請求項13に記載の抗体断片。
【請求項18】
前記第三ポリペプチドがN末端に少なくとも一のヒンジ配列を含有するN末端切断型重鎖を含んでなる、請求項13に記載の抗体断片。
【請求項19】
前記2つのFcポリペプチドが共有結合している、請求項1ないし18の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項20】
前記2つのFcポリペプチドがヒンジ領域で分子内ジスルフィド結合を介して連結している、請求項1ないし19の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項21】
標的分子に結合する場合に、前記抗体断片が標的分子の多量体化を阻害する、請求項1ないし20の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項22】
標的分子に結合する場合に、前記抗体断片が同系結合パートナーの標的分子への結合を阻害する、請求項1ないし21の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項23】
前記第一Fcポリペプチドと前記第二Fcポリペプチドが作用領域で会合し、該第二Fcポリペプチドの作用領域が第一Fcポリペプチドの作用領域内のキャビティ内に位置しうる隆起を含んでなる、請求項1ないし22の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項24】
前記第二Fcポリペプチドが鋳型/起源ポリペプチドから変更されて前記隆起をコードしているかあるいは、前記第一Fcポリペプチドが鋳型/起源ポリペプチドから変更されて前記キャビティをコードしているか、その両方である、請求項1ないし23の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項25】
前記第二Fcポリペプチドが鋳型/起源ポリペプチドから変更されて前記隆起をコードしており、第一Fcポリペプチドが鋳型/起源ポリペプチドから変更されて前記キャビティをコードしているか、その両方である、請求項1ないし24の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項26】
前記第一Fcポリペプチドと前記第二Fcポリペプチドが作用領域で会合し、該第二Fcポリペプチドの作用領域が第一Fcポリペプチドの作用領域内のキャビティ内に位置しうる隆起を含んでなり、該キャビティ又は該隆起あるいはその両方が該第一Fcポリペプチド及び該第二Fcポリペプチドのそれぞれの作用領域内に取り込まれている、請求項1ないし25の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項27】
前記隆起及び前記キャビティが前記それぞれのFcポリペプチドの作用領域内に取り込まれている、請求項24ないし26の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項28】
前記隆起及び前記キャビティのそれぞれが天然に生じるアミノ酸残基を含んでなる、請求項24ないし27の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項29】
前記隆起を含有してなる前記Fcポリペプチドが、鋳型/起源のポリペプチドの作用領域の元の残基を元の残基より大きい側鎖容量を有する移入残基で置換することによって生成される、請求項24ないし28の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項30】
前記隆起を含有してなる前記Fcポリペプチドが、前記ポリペプチドの作用領域の元の残基をコードする核酸を元の残基より大きい側鎖容量を有する移入残基をコードする核酸で置換する工程を含んでなる方法により生成される、請求項24ないし29の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項31】
前記元の残基がスレオニンである、請求項29又は30の抗体断片。
【請求項32】
前記移入残基がアルギニン(R)である、請求項29ないし31の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項33】
前記移入残基がフェニルアラニン(F)である、請求項29ないし31の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項34】
前記移入残基がチロシン(Y)である、請求項29ないし31の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項35】
前記移入残基がトリプトファン(W)である、請求項29ないし31の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項36】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドは、鋳型/元のポリペプチドの作用領域内の元の残基を元の残基より小さな側鎖容量を有する移入残基に置換することによって生成される、請求項23ないし28の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項37】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドは、該ポリペプチドの作用領域の元の残基をコードする核酸を元の残基より小さな側鎖容量を有する移入残基をコードする核酸に置換する工程を含む方法によって生成される、請求項23ないし28及び36の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項38】
元の残基がスレオニンである、請求項36又は37に記載の抗体断片。
【請求項39】
元の残基がロイシンである、請求項36又は37に記載の抗体断片。
【請求項40】
元の残基がチロシンである、請求項36又は37に記載の抗体断片。
【請求項41】
移入残基がシステイン(C)でない、請求項36ないし40の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項42】
移入残基がアラニン(A)である、請求項36ないし40の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項43】
移入残基がセリン(S)である、請求項36ないし40の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項44】
移入残基がスレオニン(T)である、請求項36ないし40の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項45】
移入残基がバリン(V)である、請求項36ないし40の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項46】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドが、スレオニン、ロイシン及びチロシンからなる群から選択される2以上の元のアミノ酸の置換を具備する、請求項36ないし45の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項47】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドが、アラニン、セリン、スレオニン及びバリンからなる群から選択される2以上の移入残基を具備する、請求項36ないし46の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項48】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドがスレオニン、ロイシン及びチロシンからなる群から選択される2以上の元のアミノ酸の置換を具備し、該元のアミノ酸がアラニン、セリン、スレオニン及びバリンからなる群から選択される移入残基で置換される、請求項36ないし47の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項49】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドが、カバットのEU番号付けスキームに従ったアミノ酸番号366位のスレオニンからセリンへの置換を具備する、請求項23ないし48の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項50】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドが、カバットのEU番号付けスキームに従ったアミノ酸番号368位のロイシンからアラニンへの置換を具備する、請求項23ないし48の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項51】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドが、チロシンのバリンへの置換を具備する、請求項23ないし50の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項52】
キャビティを具備する前記Fcポリペプチドが、T366S, L368A及びY407Vからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を具備する、請求項23ないし51の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項53】
隆起を具備する前記Fcポリペプチドが、カバットのEU番号付けスキームに従ったアミノ酸番号366位のスレオニンからトリプトファンへの置換を具備する、請求項23ないし52の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項54】
第一Fcポリペプチド及び第二Fcポリペプチドのそれぞれが抗体定常ドメインを具備する、請求項1ないし53の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項55】
前記抗体定常ドメインがCH2及び/又はCH3ドメインである、請求項54に記載の抗体断片。
【請求項56】
前記抗体定常ドメインがIgG由来である、請求項54又は55に記載の抗体断片。
【請求項57】
前記IgGがヒトIgGである、請求項56に記載の抗体断片。
【請求項58】
単一特異性である、請求項1ないし57の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項59】
単一特異性イムノアドへシンである、請求項1ないし58の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項60】
抗体-イムノアドへシンキメラである、請求項1ないし59の何れか一に記載の抗体断片。
【請求項61】
イムノグロブリンの少なくとも75%が請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片であるイムノグロブリンの集合を含んでなる組成物。
【請求項62】
(a)抗体断片をコードする核酸を含有してなる宿主細胞を培養し;
(b)宿主細胞培養物から抗体断片を回収する
ことを含んでなる、請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片の調整方法。
【請求項63】
抗体断片を含有してなるポリペプチドが、イムノグロブリンの少なくとも50%が請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片であるイムノグロブリンの集合となる割合で発現される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
該ポリペプチドがほぼ等モル量で発現される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ポリペプチドをコードする核酸がほぼ等しい強さの翻訳開始領域(TIRs)に作用可能に結合される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記宿主細胞が原核生物である、請求項62ないし65の何れか一に記載の方法。
【請求項67】
宿主細胞が大腸菌である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
大腸菌が内在性プロテアーゼ活性欠陥株のものである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記宿主細胞が真核生物のものである、請求項62ないし65の何れか一に記載の方法。
【請求項70】
前記宿主細胞がCHOである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記抗体断片が培養液から回収される、請求項62ないし70の何れか一に記載の方法。
【請求項72】
前記抗体断片が細胞溶解物から回収される、請求項62ないし70の何れか一に記載の方法。
【請求項73】
(a)第二Fcポリペプチドの作用領域をコードする核酸が隆起をコードするように第二Fcポリペプチドの元の作用領域をコードする核酸から変更されているか、あるいは第一Fcポリペプチドの作用領域をコードする核酸がキャビティをコードするように第一Fcポリペプチドの元の作用領域をコードする核酸から変更されているか、あるいはその両方である抗体断片をコードする核酸を含有してなる宿主細胞宿主細胞を培養し、
(b)前記宿主細胞培養物から抗体断片を回収する
工程を含んでなる、請求項23ないし60の何れか一に記載の抗体断片の調整方法。
【請求項74】
第二Fcポリペプチドをコードする核酸が隆起をコードするように元の核酸から変更されており、第一ポリペプチドをコードする核酸がキャビティをコードするように元の核酸から変更されている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
第二Fcポリペプチドの作用領域の元のアミノ酸残基をコードする核酸が、元のアミノ酸残基より大きな側鎖容量を有する移入アミノ酸残基をコードする核酸で置換される工程が工程(a)に先行するものであり、大きな側鎖容量を有する移入残基が隆起を含有してなる、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
第一Fcポリペプチドの作用領域の元のアミノ酸残基をコードする核酸が、キャビティを形成するように元のアミノ酸残基より小さい側鎖容量を有する移入アミノ酸残基をコードする核酸で置換される工程が工程(a)に先行するものである、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
第一Fcポリペプチド及び第二Fcポリペプチドをコードする核酸が宿主細胞に導入される工程が工程(a)に先行するものである、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
(a)抗体断片を形成するポリペプチドを調製し;
(b)ヘテロ多量体化を起こす;
工程を含んでなり、これによって抗体断片が形成される、請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片の調整方法。
【請求項79】
形成されたイムノグロブリンポリペプチド複合体の少なくとも50%が請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片である、請求項62ないし78の何れか一に記載の方法。
【請求項80】
形成されたイムノグロブリンポリペプチド複合体の少なくとも50%がヘテロ三量体である、請求項62ないし78の何れか一に記載の方法。
【請求項81】
工程(b)が第一Fcポリペプチドと第二Fcポリペプチドのインビトロでの結合を含んでなる、請求項62ないし78の何れか一に記載の方法。
【請求項82】
元の作用領域のアミノ酸配列が遺伝子操作した作用領域内に隆起及びキャビティを生成するように変更されている、請求項62ないし78の何れか一に記載の方法。
【請求項83】
請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片をコードする単離した核酸。
【請求項84】
請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片を集合的にコードする二以上の組み換え核酸を含有してなる組成物。
【請求項85】
請求項83又は84に記載の核酸を含有してなる宿主細胞。
【請求項86】
抗原結合アームをコードする核酸が単一ベクター内に存在する、請求項85に記載の宿主細胞。
【請求項87】
抗原結合アームをコードする核酸が別々のベクター内に存在する、請求項85に記載の宿主細胞。
【請求項88】
抗原結合アーム及びN末端切断型重鎖をコードする核酸が単一ベクター内に存在する、請求項85に記載の宿主細胞。
【請求項89】
ポリペプチドが発現するように請求項83又は請求項84に記載の核酸を含有する宿主細胞を培養して、該細胞培養物から抗体断片を回収することを含んでなる、請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片の作製方法。
【請求項90】
前記抗体断片が細胞溶解物から回収される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記抗体断片が細胞培養液から回収される、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記宿主細胞が原核生物細胞である、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記宿主細胞が大腸菌である、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記宿主細胞が哺乳類のものである、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
請求項1ないし60の何れか一に記載の抗体断片と担体を含有してなる組成物。
【請求項96】
単一抗原結合アームを含有してなるFab分子と比較して抗体断片の安定性を向上させる単一抗原結合アーム及びFc領域を含有してなる抗体断片の生成方法であり、抗原結合アームの形成と該Fc領域が形成されるための第一Fcポリペプチドと第二Fcポリペプチドの二量体化とが起こる条件下にて抗原結合アームと第一及び第二のFcポリペプチドをコードする好適な宿主細胞核内で発現させることを含んでなり、該Fcポリペプチドの両方ではなく他方がN末端切断型重鎖である方法。
【請求項97】
前記方法がイムノグロブリンの異種性集団を生成し、イムノグロブリンの少なくとも50%が単一抗原結合アームを含有してなるFab分子と比較して抗体断片の安定性を向上させるFc領域及び単一抗原結合アームを含有してなる、請求項96に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−172585(P2011−172585A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−93365(P2011−93365)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【分割の表示】特願2006−545515(P2006−545515)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】