説明

治療薬投与計画の服薬遵守を判定する視覚的マーカーを含む配合薬および方法

【課題】患者をモニターして、薬剤投与計画に従っているかを判定するための視覚的マーカーを含む方法および配合薬を提供する。視覚的マーカーと組み合わせた経口投与用薬剤組成物を提供する。
【解決手段】この配合薬が経口摂取されると、マーカーによって対象の口腔および/または咽頭腔に着色または変色が生じる。対象の口腔および/または咽頭腔を視覚によって観察することで、着色/変色の有無に基づき、薬剤が摂取されたかを判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に治療薬物の摂取をモニターすること、特に患者による薬剤投与計画の服薬遵守を判定するために患者をモニターすることに関する。
【背景技術】
【0002】
用語「服薬遵守」は、医学の実践、特に薬物療法において、「臨床の処方箋と一致する患者の行動の程度」であると定義されている(Lilt, I.F.およびChuskey, W.R.の「Compliance with medical regimens during adolescence」、Pediatric Clin North Am、第27巻:3ページ、1980年)。
【0003】
特定の患者向けに投薬法を選択する際は、投薬法の有効性プロフィール、安全性プロフィール、投与経路、価格、および薬剤摂取における患者の服薬遵守を含む多くの要因が考慮される。1日1回を超えて投薬しなければならない場合、指示どおりに投薬されないと投薬の薬理学的効力によって有害な影響が及ぼされるので、薬物を選択する際、服薬遵守が最も重要な要因となる。処方された投与計画の服薬不遵守の問題は、非常に深刻になってきており、このような問題に応じて、製薬業界は、長時間作用性の形の投薬法を数多く開発している。
【0004】
服薬不遵守に伴う問題は、特にある特定の患者群の中で言明されている。そのような患者群には、(1)小児科の患者、特に、介護者もしくは教師によって投薬が行われる小児ケアセンターまたは学校にいる者、(2)介護者が時折しか付き添わない老人患者、(3)自活しているか、または介護者が時折しか付き添わない精神障害者、および(4)アルコール依存症、薬物依存症、発作、ある特定の精神医学的状態、心血管疾患、高血圧、または他の状態に罹患している患者を含む特別な疾患もしくは障害の群が含まれる。
【0005】
したがって、服薬不遵守は、社会的に広まっている問題である。患者が、医師によって実際に処方された薬剤の半量しか摂取していないことが調査によって示された(Haynes, R.B.、Taylor, D.W.、およびSackett, D.L.の「Compliance in Health Care」、Johns Hopkins University Press、米ボルティモア、1979年)。他の研究は、薬剤投与計画の最高で93%が処方に従っていないことを示している(Greenberg, R.N.、「Overview of patient compliance with predication dosing: A literature review」、Clin Ther、第6巻:592〜599ページ、1984年)。処方された薬剤を摂取しない者の割合は、言語の問題などの社会的および文化的障壁が存在する場合、あるいは記憶喪失など、認知に関する理解の減退が指示を実行する妨げになる場合に最も高い。また服薬遵守は、治療する疾患、症状に随伴する苦痛の度合、投与計画の複雑さ、疾患の存続期間、有害作用の程度によって様々に変化する(Del Boca, F.K.、Kranzler, H.R.、Brown, J.、およびKorner, P.F.の「Assessment of medication compliance in alcoholics through UV light detection of a riboflavin tracer」、Alcohol Clin Exp Res、第20巻(8):1412〜1417ページ、1996年;Babiker, I.E.、Cooke, P.R.、およびGillett, M.G.の「How useful is riboflavin as a tracer of medication compliance?」、J Behav Med、第12巻:25〜38ページ、1989年)。
【0006】
したがって、服薬不遵守は、一般に医学、特にいくつかの疾患において主要な問題である。一例として、精神分裂病に関連する服薬不遵守率は、11〜50%であり、平均33%である(Maarjberg, K.、Aagaard, J.、およびVestergard, P.の「Adherence to lithium prophylaxis: 1. Clinical predictors and patient's reasons for non adherence」、Pharmacopsychiatry第21巻:121〜125ページ、1988年;Kane, J.M.およびBorenstein, M.の「Compliance in long-term treatment of schizophrenia」、Psychopharmacol Bull、第21巻:23〜27ページ、1985年;Van Putten, T.の「Why do schizophrenic patients refuse to take their drugs?」、Arch Gen Psychiatry、第31巻:67〜72ページ、1974年; Babiker, I.E.の「Noncompliance in schizophrenia」、Psychiat Dev、第4巻:329〜337ページ、1986年)。その結果、医学の複数の領域で、服薬遵守に対する広範囲かつ特定の方法論的試験がなされてきた。たとえば、尿のリボフラビン蛍光発光を使用するものが、様々な状態および疾患についての服薬遵守の試験に利用されている。これらには、精神分裂病、臨床薬物治験、アルコール依存症、鉄欠乏症、三環系抗うつ薬療法、高血圧の投薬、青年における経口避妊の使用、抗てんかん薬の使用、および心血管疾患が含まれる(Babiker等の「How useful is riboflavin as a tracer of medication compliance?」、J Behav Med、第12巻:25〜38ページ、1989年;Antonの「New methodologies for pharmacological treatment for alcohol dependence」、Alcohol Clin Exp Res、第20巻(補遺7巻): 3A〜9A、1996年;Cromer等の「Psychosocial determinants of compliance in adolescents with iron deficiency」、Am J Dis Child、第143巻(1):55〜58ページ、1989年; Gilmore等の「A study of drug compliance, including the effect of a treannent card, in elderly patients following discharge home from hospital」、Aging (Milano)、第1巻(2):153〜158ページ、1989年;Perelの「Compliance during tricyclic antidepressant therapy: pharmacokinetic and analytical issues」、Clin Chem、第34巻(5):881〜887ページ、1988年;Sullivan等の「Compliance among heavy alcohol users in clinical drug trials」、J Subst Abuse、第1巻(2):183〜194ページ、1988〜1989ページ;Tinguely等の「Determination of compliance with riboflavin in an antidepressive therapy」、Arzneimittelforschung、第35巻(2):536〜538ページ、1985年;Durant等の「Influence of psychosocial factors on adolescent compliance with oral contraceptives」、J Adolesc Health Care、第5巻(1):1〜6ページ、1984年;Jay等の「Riboflavin, self-report, serumnorethindrone. Comparison of their use as indicators of adolescent compliance with oral contraceptives」、Am J Dis Child、第138巻(1):70〜73ページ、1984年)。
【0007】
薬剤投与計画の服薬遵守を判定する他の方法には、患者の臨床知見および患者の体外排泄物の分析が含まれる。薬剤投与計画の服薬遵守をモニターする一般的な一方法は、個人のカウンセリング、および医師による当人の周到な監督を伴う臨床的監視である。たとえば、医師は、患者の服薬遵守または服薬不遵守を示す生理的兆候および症状を診ればよい。このような兆候および症状には、残存する疾患兆候が含まれるといえる。あるいは、苦痛の軽減の度合に注目しながら患者を問診してもよい。医師が、患者の生理的変化を評価することもあろう。しかし、臨床的監視は、時間がかかり、したがって費用もかかる。その上、臨床的監視は、医師の主観的な見解に左右され、したがって間違いをこうむる可能性もある。
【0008】
服薬遵守情報を得るさらに他の方法には、定性的尿モニタリング法(qualitative urine monitoring methods)が含まれる。その一例は、酵素増幅免疫測定法(EMIT)として知られている実験室の標準手順である。任意の切捨値(cutoff value)を利用すれば、これらの方法によって、患者尿中に親薬物またはその代謝産物が可能性として存在するか、またはしないかの単純な陽性または陰性の指示が臨床医に提示される。尿モニタリング法を使用して、薬剤摂取の定量分析を行ってもよい。しかし、定性にせよ定量にせよ、このような分析方法にはいくつかの欠点が存在する。
【0009】
第一に、これらの分析方法および試験は多大な時間と労力を要し、分析にしばしば複雑な設備の使用が必要であるので、したがって、薬剤投与間の時間が短い場合では特に有用性に欠ける。第二に、一般に、これらの方法では、分析を実施するのに訓練された技術者が必要である。第三に、分析は、しばしばサンプルを得る現場まで遠く離れた場所で行われる。最後に、たとえば尿サンプルを得るサンプル収集自体が、患者の煩わしさの程度を高めるものである。その結果、このような方法は、迅速な、一般に煩わしくない、現場での服薬遵守評価に順応するものでない。上で論じた、従来技術のモニタリング法の問題を若干改良する試みでは、マーカーを使用して、対象の系における薬剤の存在を判定している。しかし、このような方法でも、マーカーの存在を検出するために、対象の尿および便を訓練された専門家の手で調べる必要がある。したがって、これらの試験は、若干の時間および入り組んだ複雑さを削減するが、未だ「自宅」試験として有用でなく、依然としてかなり程度の高い時間、労力、および費用を要し、さらに患者が覚える煩わしさを何も低減しない。
【非特許文献1】Lilt, I.F.およびChuskey, W.R.の「Compliance with medical regimens during adolescence」、Pediatric Clin North Am、第27巻:3ページ、1980年
【非特許文献2】Haynes, R.B.、Taylor, D.W.、およびSackett, D.L.の「Compliance in Health Care」、Johns Hopkins University Press、米ボルティモア、1979年
【非特許文献3】Greenberg, R.N.、「Overview of patient compliance with predication dosing: A literature review」、Clin Ther、第6巻:592〜599ページ、1984年
【非特許文献4】Del Boca, F.K.、Kranzler, H.R.、Brown, J.、およびKorner, P.F.の「Assessment of medication compliance in alcoholics through UV light detection of a riboflavin tracer」、Alcohol Clin Exp Res、第20巻(8):1412〜1417ページ、1996年
【非特許文献5】Babiker, I.E.、Cooke, P.R.、およびGillett, M.G.の「How useful is riboflavin as a tracer of medication compliance?」、J Behav Med、第12巻:25〜38ページ、1989年
【非特許文献6】Maarjberg, K.、Aagaard, J.、およびVestergard, P.、「Adherence to lithium prophylaxis: 1. Clinical predictors and patient's reasons for non adherence」、Pharmacopsychiatry第21巻:121〜125ページ、1988年
【非特許文献7】Kane, J.M.およびBorenstein, M.の「Compliance in long-term treatment of schizophrenia」、Psychopharmacol Bull、第21巻:23〜27ページ、1985年
【非特許文献8】Van Putten, T.の「Why do schizophrenic patients refuse to take their drugs?」、Arch Gen Psychiatry、第31巻:67〜72ページ、1974年
【非特許文献9】Babiker, I.E.の「Noncompliance in schizophrenia」、Psychiat Dev、第4巻:329〜337ページ、1986年
【非特許文献10】Antonの「New methodologies for pharmacological treatment for alcohol dependence」、Alcohol Clin Exp Res、第20巻(補遺7巻): 3A〜9A、1996年
【非特許文献11】Cromer等の「Psychosocial determinants of compliance in adolescents with iron deficiency」、Am J Dis Child、第143巻(1):55〜58ページ、1989年
【非特許文献12】Gilmore等の「A study of drug compliance, including the effect of a treannent card, in elderly patients following discharge home from hospital」、Aging (Milano)、第1巻(2):153〜158ページ、1989年
【非特許文献13】Perelの「Compliance during tricyclic antidepressant therapy: pharmacokinetic and analytical issues」、Clin Chem、第34巻(5):881〜887ページ、1988年
【非特許文献14】Sullivan等の「Compliance among heavy alcohol users in clinical drug trials」、J Subst Abuse、第1巻(2):183〜194ページ、1988〜1989ページ
【非特許文献15】Tinguely等の「Determination of compliance with riboflavin in an antidepressive therapy」、Arzneimittelforschung、第35巻(2):536〜538ページ、1985年
【非特許文献16】Durant等の「Influence of psychosocial factors on adolescent compliance with oral contraceptives」、J Adolesc Health Care、第5巻(1):1〜6ページ、1984年
【非特許文献17】Jay等の「Riboflavin, self-report, serumnorethindrone. Comparison of their use as indicators of adolescent compliance with oral contraceptives」、Am J Dis Child、第138巻(1):70〜73ページ、1984年
【非特許文献18】Grant等の「Tetratogenicity and embrotoxicity study of carmine of cochineal in the rat」、Food Chem Toxicol、第25巻(12):913〜917ページ、1987年
【非特許文献19】MillerおよびAndersonの「Silent regurgitation in day case gynaecological patients」、Anaesthesia、第43巻(4):321〜323ページ、1988年
【非特許文献20】Read等の「Transit of a meal through the stomach, small intestine, and colon in normal subjects and its role in the pathogenesis of diarrhea」、Gastroenterology、第79巻(6):1276〜1282ページ、1980年
【非特許文献21】Higgs等の「Assessment of simple methods of measuring intestinal transit tunes in children with gastroenteritis」、Gut、第16巻(6):458〜461ページ、1975年
【非特許文献22】Hallagan等の「The safety and regulatory status of food, drug and cosmetics colour additives exempt from certification」、Food Chem Toxicol、第33巻(6):515〜528ページ、1995年
【非特許文献23】Schmidtの「"Tagged" local anesthetic solution for transurethral surgery」、Urology、第34巻(5):305〜306ページ、1989年
【非特許文献24】Reece等の「Transabdominal needle embryofetoscopy: a new technique paving the way for early fetal therapy」、Obstet Gynecol、第84巻(4):305〜306ページ、1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の臨床モニタリング法は、患者の状態および治療服薬遵守に関する有用な情報をもたらすが、服薬遵守の判定におけるその有用性を制限する別個の欠点を有する。したがって、迅速、簡単、かつ割安なモニタリング法があることが望ましいであろう。さらに、このような試験を、素人に自宅でも使用し易くすることが望ましいであろう。さらにまた、このような試験の患者への煩わしさを最小にすることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上の発明の背景の項で論じた従来技術の方法および組成物の問題および欠点に対処するものである。患者の口腔および/または咽頭腔の少なくとも一部分を着色するための形態および十分な量で存在する少なくとも1種の視覚的マーカーと組み合わせた経口投与用組成物を提供することによって対処する。マーカーは、視覚によって認めることができ、また、患者が組成物およびマーカーを摂取した後の着色を起こすに十分な量および明瞭な形態で、組成物と組み合わされて存在する。たとえば、一実施形態では、マーカーによって頬側膜の一部が染色されればよい。マーカーは、丸剤、カプセル剤、チュアブル錠、または液体の形で組成物と混ぜ合わせるなど、多くの形態の配合薬に含まれていてよい。代替形態では、組成物をマーカーと共に成形して丸剤、カプセル剤、または錠剤とし、その後組成物の外側をコーティングしてもよい。
【0012】
使用の際は、本発明の配合薬を摂取した後間もなく、マーカーが特徴として引き起こす経口および/または咽頭腔の着色または変色を視覚的に観察することによって検査することになる。摂取後、時間が経過すると、視覚的に明かな着色または変色は次第に消失し、口腔および/または咽頭腔の一部分の着色をほとんど残さない。この方法では、前の服用分に由来する着色なしに、複数回投与をモニターすることができ、次に続く服用分の妨げにもならない。
【0013】
様々な視覚検査法が使用されよう。たとえば、自然光のもと肉眼で着色を検出することもある。あるいは、蛍光光線(fluorescent light)を使用すれば、口腔および/もしく咽頭腔、またはその部分の蛍光を検出できよう。光線は、最適な波長に選択されていれば、使用した特定のマーカーに対して視覚によってわかる特徴的な色の蛍光発光を誘起するはずである。蛍光は、マーカーの自然な着色よりも長い期間検出可能なままとなるので、自然光の条件下ではマーカーの着色が肉眼でほとんど見えなくなった後で検査することもできる。検出の目的には肉眼で十分なはずであるが、本発明は、光学機器または他の検出機器の使用を除外しない。
【0014】
本発明の一態様によれば、配合薬の形で利用する組成物は、患者にとって所望の医学的効果を実際にもたらす治療薬などの投薬組成物でよい。あるいは、患者に有害な作用を及ぼすことなく服薬遵守を試験できるよう、組成物を偽薬組成物とすることもあろう。たとえば、実際に投薬する前に、偽薬組成物を利用して対象患者を試験して、処方された薬剤投与計画を維持できるかを判定すればよい。
【0015】
本発明の別の態様によれば、配合薬中に多数のマーカーを利用するが、この多数のマーカーは、更なる服薬遵守指示を提示するために種々の着色性を備えている。本発明の一実施形態では、多数のマーカーの一つが、別のマーカーよりも長時間口腔および/または咽頭腔の一部分を着色する。すなわち、一つのマーカーによって引き起こされた着色の期間が、別のマーカーに由来する着色よりも長いので、自然光または蛍光光線のもとでより長く視覚によって検出されるのである。この方法では、特定の着色の有無を判定して、配合薬が摂取された時間枠を決定することができる。本発明の別の実施形態では、一つのマーカーが別のマーカーと異なる着色を呈する。異なる色のマーカーは、その持続期間も異なり、一つの着色が別の着色よりも強く検出されれば、最後の投与の薬剤組成物を摂取してからの時間を示すことが可能であり、最後の投与の時間枠を定めるのに役立つ。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、マーカーの一つが自然光で検出可能に腔を着色し、別のマーカーが、蛍光をもたらす光線で検出可能な着色を呈してもよい。上で論じたように、最後の投与からのおおよその時間が決定できるように異なるマーカーの持続期間を調整してもよい。本発明の別の実施形態では、多数のマーカーがすべて、異なる蛍光着色を伴う蛍光を呈して、一つの着色が別の着色より優性に検出できるようであれば、服薬遵守の時間枠および最近の投与に関する更なる情報が得られる。
【0017】
本発明の実施形態では、上で言及した実施形態の1種または複数と組み合わせて接着物質を利用する。接着物質は、マーカーと共に様々な影響を及ぼす。一態様では、接着物質によって、染料や蛍光などのマーカーが粘膜に接着する持続時間が延長される。別の態様では、接着物質によって、全体からみたマーカーの濃さまたは明るさが増す。したがって、このような様々な側面によって検出性が向上する。
【0018】
経口摂取された視覚的マーカーを使用すると、患者の薬剤投与計画の服薬遵守が質的に判定できる。迅速に、視覚的に、かつ患者の私生活に支障なくこの判定を行うべく、本発明は、従来技術のいくつかの欠点を軽減し、除去する。マーカーは、薬剤が経口投与された後すぐに視覚によって直接に検出でき、口腔および/または咽頭腔中でマーカーに蛍光を発光させること(fluorescing)によって、しばらく後で検出してもよい。
【0019】
マーカーは、主な介護者、保護者、または家族に、最近の期間に薬剤が経口摂取されたかを示すものである。マーカーが呈した口腔および/または咽頭腔の着色の存在は、薬剤が実際に経口摂取されたことを介護者に知らせる特別な情報となる。また、本発明に随伴する薬剤送達を服薬遵守について調べるという身体活動が、薬剤送達を改善するであろう。
【0020】
たとえば、本発明では、服薬遵守をモニターすることを患者に通知することによって、服薬不遵守行動が改まる。あくまでも服薬不遵守のままであれば、この情報によって、介護者は投薬方法を変えられる。たとえば、再発性感染用の抗生物質を日中に服用する必要のある学童または幼稚園児に、マーカー含有抗生物質を与えることができよう。次に、予定された摂取の直後、または必要ならば、予定された摂取のしばらく後に児童の摂取遵守を調べることができる。投与直後に自然光のもとで口腔および/または咽頭腔を視覚検査することによって、または数時間後に蛍光を発光させる光線で検査することによって確認できよう。
【0021】
前述の長所によって、薬剤投与計画に従う際の患者の服薬遵守をモニターするための方法および配合組成物が提供されると同時に、従来技術のモニタリング法に随伴する問題が軽減および/または除去される。本発明は、従来技術のモニタリング法の時間、労力、複雑さ、費用、および煩わしさを軽減する。これらとその他の本発明の目的および利点は、後続の発明の詳細な説明から明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、経口投与用組成物と少なくとも1種の視覚的マーカーの組合せを含む。 発明の概要で述べたように、配合薬のマーカーは、自然光で直接に、または蛍光として視覚によって観察でき、マーカーと薬剤との配合薬または偽薬組成物を摂取した後の患者の口腔および/または咽頭腔の少なくとも一部分の着色または変色/染色をもたらすのに十分な量および形態で配合薬中に存在する。たとえば、頬側の膜を標識してもよく、かつ/または歯ぐきもしくは舌表面を標識してもよい。口腔および/または咽頭腔内の他の表面を標識または染色することもある。
【0023】
本発明は、発明性のある配合薬および方法の種々の実施形態を数多く企図する。本発明の一態様によれば、配合薬は、患者に所望の医学的もしくは同様の効果をもたらす薬剤組成物を利用するものである。たとえば、薬剤組成物は、疾患または症状を治療するための所望の医学的性質を備えていてよい。本発明の別の態様によれば、医学的効果をほとんどまたはまったくもたない、本発明の配合薬の偽薬組成物を利用して、服薬遵守計画を決定してもよい。この方法では、患者が薬剤を摂取する前に、特定の投与計画を決定し、患者による投与計画の服薬遵守を判定できる。たとえば、患者が医師に処方された投与計画に従うこと、または応じることをあてにできない限り、患者に特定の薬剤組成物を摂取させることが望ましいとはいえない。
【0024】
本発明の一実施形態では、薬剤組成物または偽薬組成物と組み合わせて、単一マーカーを利用してもよく、または多数のマーカーを利用してもよいであろう。少なくとも1種のマーカーを利用すれば、自然光、または蛍光を発光させる所望の波長を有する、最適な励起光のもとで、マーカーを視覚によって検出できる。このため、マーカーによって、口腔および/または咽頭腔の一部分の着色または変色/染色がもたらされる。この出願では、用語「着色」を利用して視覚的マーカーの効果を述べる。しかし、用語「着色」は、その定義を限定しているのではないと理解すべきであり、口腔および/または咽頭腔の自然な着色に実際にある程度まで見合うといえる着色に加え、観察した腔の一部分の変色または染色も含まれることになる。たとえば、マーカーはその蛍光によって検出できるが、観察した腔が、別段視覚的に変色または染色されていなくてもよい。別の例では、非常に顕著な染色がもたらされることもある。本明細書では、このように用語「着色」を広く用いた。
【0025】
自然光、および蛍光を発光させる励起光の両方を使用して検出できるマーカーは、介護者の視覚による観察、およびマーカーがもたらした着色の有無の判定に関して、柔軟性をもたらす。たとえば、マーカーは、組成物が摂取された後間もなく検出可能であるが、一定の時間が経過した後の検出には蛍光が必要になるかもしれない着色を呈する。
【0026】
本発明の一態様によれば、マーカーの持続期間およびその効果は、別の服用分を与えることができ、またはそうすべきであることを介護者に示す目的で、次の投与が行われる前にその検出可能な実在が大体なくなり、または少なくともほとんど減るようにすべきである。そうしないと、マーカーが次の投薬分の有効時間に実質的に存在することによって、介護者に次の服用分を与えるべきかがわかりにくくなるといえる。たとえば、約6時間毎に新しく投与する必要のある、半減期を有する薬剤(たとえば、アンピシリン)は、摂取時、および一般に、ほぼ6時間を超えない摂取後のかなりの期間において検出可能なマーカーを備えるべきである。上で論じたように、マーカーは、一定の期間は自然光のもとで検出可能であり、次いで残りの検出時間に蛍光を要してもよい。一般に、検出可能なマーカーの持続期間は、次の薬剤投与時間の付近または前に終わるべきであるが、持続期間は、検出可能な実在がほとんど減っていようと、その投与時間を超えて延びることもある。したがって、本発明は、任意の特定の持続期間を有するマーカーに限定されないものであり、マーカーは、ある特定の使用に合わせて作製すべきである。たとえば、服薬遵守の判定において訓練された介護者ならば、マーカーがまだ検出可能であっても、次の投与時間を決定できるかもしれない。たとえば、経験に基づき、検出レベルによって、別の投与が行われることになるかなり前の時間に最後の投与が行われたことが示される。
【0027】
本発明の一態様によれば、マーカーの持続期間およびその検出の持続は、様々な手段によって実現される。たとえば、摂取された組成物中のマーカーの濃度を十分に高くして、所望の持続期間および検出の持続を確実にしてもよい。さらに、飲み込む時間を長引かせることによって、摂取した組成物を口中に保つように患者を促すことも、マーカーの持続期間およびその有効検出時間に影響を及ぼすといえる。たとえば、味がよい、または甘い薬剤によって、子供だけでなく大人でさえも、組成物を口中により長い時間保つ気になるかもしれない。本発明の別の態様では、以下で論じるように、各マーカーの持続期間が異なる多数のマーカーを使用してもよい。この方法では、視覚検査によって、優位に検出される特定のマーカーに基づき、介護者に最後の投与からの時間が示される。上で論じた様々な特徴は、単一マーカーを利用する状況にも多数のマーカーを利用する状況にも適用できる。以下でさらに論じるように、多数のマーカーを利用して、検出機構および服薬遵守判定により高い柔軟性をもたせてもよい。
【0028】
本発明の別の実施形態では、化学接着物質を様々なマーカーと組み合わせて利用してもよい。接着物質は、マーカーと共に様々な影響を及ぼす。一態様では、接着物質は、染料や蛍光などのマーカーが粘膜に接着する時間が長引くように働く。したがって、接着物質によって、着色の有無を視覚または別な方法によって検出できる時間が有効に延長される。別の態様では、接着物質は、マーカーが呈した着色の全体からみた濃さおよび明るさを向上させる。すなわち、接着物質は、マーカーの担体として働き、粘膜でその濃さまたは明るさを様々に変える(たとえば、より濃くする)といえる。したがって、マーカーと組み合わせた接着物のこのような様々な態様は、検出性を高める。本発明によれば、このような目的に相応する様々な接着物質を利用してもよい。たとえば、ポリビニルピロリドンまたはPVPを使用すればよい。別の適切な接着物質は、ヒアルロン酸である。当然、このような接着物質例は、本発明に制限を加えることを意味しない。
【0029】
本発明の別の実施形態では、多数のマーカーを利用してもよいであろう。多数のマーカーのそれぞれは、服薬遵守の判定に、より高い柔軟性をもたせる目的で、その着色特性または持続期間特性が異なる。より具体的には、たとえば、マーカーの一つが別のマーカーよりも長い時間口腔および/または咽頭腔の一部分を着色する多数のマーカーを利用すればよい。そうすると、介護者は、多数のマーカーの1種または複数が呈した着色の有無を判定して、薬剤または偽薬組成物が摂取された時間枠を決定できる。たとえば、一種のマーカーの持続期間が、推奨された投与間隔の約半分の時間であり、他のマーカーの持続期間が投与間隔の終わりまで、またはその付近まで続いてもよい。検査された腔において、両方のマーカーが視覚によって観察されることで、組成物が比較的最近摂取されたことが介護者にわかる。持続期間の長いマーカーだけが検出されれば、組成物が摂取されてから少なくとも一定の時間が経っていることが介護者にわかる。この方法では、組成物が摂取されてからの特定の時間枠を突き止めることができるはずである。これまでの例では、2種のマーカーの使用を論じてきた。しかし、マーカーをより多数またはより長いシリーズで利用して、服薬遵守を判定し、薬剤組成物が摂取されてからの時間枠および新たな服用分のために想定される時間をより正確に特定してもよいであろう。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、着色特性が異なり、したがって口腔および/または咽頭腔の問題の部分に異なる着色を呈する多数のマーカーを利用してもよいであろう。異なる着色を利用すると、服薬遵守をより正確に判定するだけでなく、摂取と服用分の間の時間枠を決定することもできる。たとえば、持続期間の異なるマーカーは、その着色も異なるといえる。したがって、異なるマーカーの視覚による検出では、介護者は、観察されている、異なるマーカー持続期間を指示として得ることになる。摂取直後に一つの着色が優位に観察され、一定期間の後に別の着色が優勢になればよい。
【0031】
本発明の別の実施形態では、マーカーの1種または複数が自然光で検出可能に口腔および/または咽頭腔を着色する一方で、別のマーカーが蛍光を発光させる光線でのみ検出可能な着色を呈してもよい。重ねて述べるが、服薬遵守判定および服用時間枠決定の柔軟性を高めるべく、マーカーに異なる質を備えさせてもよい。たとえば、自然光で検出可能な着色を呈するマーカーの持続期間はずっと短くする一方で、蛍光として検出可能なマーカーの持続期間をより長くしてよい。この方法では、マーカーを検出する手段に基づいて、組成物が摂取された時間枠および次の服用分が必要となる時間枠が決定されるはずである。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態では、その蛍光色が異なるが、多数のマーカーがすべて蛍光を呈してもよいであろう。すなわち、マーカーの検出に蛍光が必要であるといえる。しかし、優位を占める蛍光の特定の色によって、優位に検出されているマーカーが示されてよい。このようなマーカーの持続期間を様々に変えることによって、組成物摂取の時間枠および服薬遵守投与計画における次に必要な服用の時間枠に関して、視覚による観察を通して更なる情報を突き止めてもよい。
【0033】
本発明の態様によれば、異なる種類の入手可能なマーカーを使用してよい。本発明の一実施形態では、経口投与用組成物と組み合わせたカルミンレッド染料をマーカーとして使用する。カルミンレッド染料は、口腔および/または咽頭腔の一部分を染色するので、配合薬が経口投与されたかを判定するのに用いる。この判定は、予定された摂取の後間もなく、または予定された摂取の後かなりの時間が経過してからの視覚検査によって下す。カルミンレッドマーカーが呈した変色または染色は、自然白色光のもとで直接に肉眼で、または観察された腔に残ったカルミンレッドに蛍光を発光させることによって調べられる。
【0034】
カルミンレッド染料は、米国食品医薬品局によって、ヒトの食品中に無制限で使用する着色添加物として、局所用薬物中に使用する着色添加剤として、さらに化粧品中に使用する着色添加剤類の中に認可されているので、マーカーの1種類として望ましい。したがって、カルミンレッド染料は、本発明による1つの適切なマーカーである。カルミンレッド染料は、コチニール甲虫の外皮を砕いたものから得た赤色または紫がかった赤色の染料である。市販のカルミンは、自然光のもとで見えるだけでなく、436ナノメートル付近の励起光波長で、さらに約450〜490ナノメートルの励起光波長範囲内で強い赤橙色の蛍光を呈する。
【0035】
さらに、発明者等は、動物の研究におけるカルミンの胎児毒性作用の報告を知らない(Grant等の「Tetratogenicity and embrotoxicity study of carmine of cochineal in the rat」、Food Chem Toxicol、第25巻(12):913〜917ページ、1987年)。カルミンは、最も不活性で安全な知られている食品添加物の1つと考えられ、いくつかの刊行物で言及されているように医学的手順に使用されている (MillerおよびAndersonの「Silent regurgitation in day case gynaecological patients」、Anaesthesia、第43巻(4):321〜323ページ、1988年;Read等の「Transit of a meal through the stomach, small intestine, and colon in normal subjects and its role in the pathogenesis of diarrhea」、Gastroenterology、第79巻(6):1276〜1282ページ、1980年; Higgs等の「Assessment of simple methods of measuring intestinal transit tunes in children with gastroenteritis」、Gut、第16巻(6):458〜461ページ、1975年;Hallagan等の「The safety and regulatory status of food, drug and cosmetics colour additives exempt from certification」、Food Chem Toxicol、第33巻(6):515〜528ページ、1995年; Schmidtの「"Tagged" local anesthetic solution for transurethral surgery」、Urology、第34巻(5):305〜306ページ、1989年;Reece等の「Transabdominal needle embryofetoscopy: a new technique
paving the way for early fetal therapy」、Obstet Gynecol、第84巻(4):305〜306ページ、1994年)。カルミンレッドは、最高で4,500mg/日の用量で利用されている。本発明は、このような用量を必要とせず、本発明の適用においては、約100mg/日以下の範囲のレベルで十分であるといえる。
【0036】
本発明の一実施形態ではカルミンレッド染料をマーカーとして使用するが、本発明の代替実施形態では、他の染料をマーカーとして使用してよい。このような染料には、限定するものでないが、インジゴカルミン、メチレンブルー、タルトラジン、ラッカイン酸、β-カロテン、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cブルー5、FD&Cグリーン3、FD&Cレッド3、FD&Cレッド40、FD&Cイエロー6、およびリボフラビンが含まれる。染料は、医学的に安全であり、または認可されているべきであり、かつ上述のように、自然光のもとで、または蛍光として、口腔および/または咽頭腔に視覚によって検出できる着色または変色を呈するべきである。さらに、マーカーは、口腔および/または咽頭腔に検出可能な着色または変色を呈する量および形態で、薬剤と組み合わされて存在すべきである。利用する染料は、たとえば水溶性の形態でもよく、または染料のレーキでもよい。
【0037】
本発明の実施形態に相応するといえる追加の染料は、21 CFR Part 73 subpart BおよびPart 74 subpart Bに列挙されている染料など、薬物中での使用向けであると示されている染料である。
【0038】
薬剤もしくは偽約組成物と本発明の視覚的マーカーの配合薬は、丸剤製造の分野で知られている方法によって、摂取可能な錠剤または丸剤に成形すればよい。錠剤は、組成物とマーカーを直接に圧縮する、または配合薬成分を粒状化してから圧縮することによって成形すればよい。丸剤は、配合薬の成分を粉末または顆粒にしたものを圧縮して直径の小さい錠剤にすることによって生成すればよい。あるいは、配合薬を液体の形態で提供してもよい。この実施形態では、組成物およびマーカーの両方を、薬剤または偽約と共にマーカーを分散させる液体媒質に可溶性にするが、完成錠剤、丸剤、または液体においては、口腔および/または咽頭腔に触れて、着色または変色を引き起こすような形態でなければならない。たとえば、錠剤または丸剤の形態に、舌、頬側膜、喉、および口腔および/または咽頭腔の他の区域が直接接触するように、マーカーが、錠剤または丸剤の外側の表面に露出していてもよい。あるいは、観察された腔のより広い区域をマーカーに触れさせる目的で、錠剤または丸剤を咀嚼用にしてもよい。一般に、液体形態では、所望の腔が容易にマーカーに曝されることになる。内部に配合薬を含むカプセル剤は、大抵これが溶解する前に容易に見える腔区域を通過するといえる。したがって、このような形態のものは特に望ましくはない。しかし、外側のカプセルが口腔および/または咽頭腔に染料を溶解させ、または放出させるならば適切であるといえる。
【0039】
本発明の代替実施形態では、最初に、丸剤製造の分野で知られている方法によって薬剤組成物だけを摂取可能なカプセル剤、錠剤、または丸剤に成形し、次いでマーカーを含有するコーティングを外側にかけてもよい。カプセル剤は、旧来の自動充填装置を使用して、薬剤組成物をカプセルに充填することによって生成すればよい。錠剤は、薬剤組成物を直接に圧縮することによって、または組成物を粒状化してから圧縮することによって成形すればよい。丸剤は、上述のように、薬剤組成物を粉末または顆粒にしたものを圧縮して直径の小さい錠剤にすることによって生成すればよい。薬剤組成物をカプセル剤、錠剤、または丸剤にしてから、次いでその外側の表面にマーカーをコーティングして、摂取時にそれが口腔および/または咽頭腔に触れるようにする。
【0040】
たとえば、本発明の一実施形態では、薬剤組成物をカプセル剤の形態で提供するが、カプセル剤は、マーカーを含有するコーティングで包まれている。より具体的には、マーカーのコーティングは、ラッカーまたはコーティングとして、任意の旧来の技術によってカプセル剤表面に複数の外被をかけて、カプセル剤の外側の表面に添えられる。カプセル剤の表面に塗られたマーカーは、カプセル剤を摂取する患者の口腔および/または咽頭腔に着色を呈するのに十分な量で適用される。マーカーは、薬剤が水などの液体と共に摂取されても粘膜から洗い流されないような形のものにすべきである。
【0041】
上で言及したように、口腔および/または咽頭腔の着色が服薬遵守を判定するために必要である限り、マーカーの持続期間が薬剤の服用間隔より長く続かないことが重要である。そうしないと、薬剤が指定された投与計画に従って摂取されなかった場合に着色が存在してしまう恐れがある。このような偽陽性の結果は、服薬遵守試験の精度に有害な影響を及ぼすことになる。したがって、本発明の一態様によれば、薬剤組成物の薬理学的効力よりも長い時間マーカーが目に見えるままでないことを確実にする目的で、ヒトの系におけるマーカーの持続期間がヒトの系における薬剤組成物の半減期と共同関係にあるマーカーを選択すればよい。たとえば、マーカーの持続期間が、薬剤の半減期と大体同等であればよい。あるいは、上で論じたように、異なる目的を考えて、持続期間が様々に異なる多数のマーカーをその上に使用してもよい。
【0042】
本発明は、薬剤投与計画に従う際の患者の服薬遵守をモニターする方法も提供する。この方法では、患者に、経口投与用組成物と少なくとも1種のマーカーの配合薬を提供する。上述のように、マーカーは、配合薬中に、患者の口腔および/または咽頭腔の少なくとも一部分を着色するのに十分な量で存在する。予定された投与の後、患者の口腔および/または咽頭腔を視覚によって観察する。次いで、介護者などの観察者が、口腔および/または咽頭腔の着色の有無を判定する。
【0043】
より具体的には、本発明の方法の一例では、配合薬中に存在するマーカーがカルミンレッド染料である。また、観察する口腔および/または咽頭腔の特定の部分が、口腔粘膜または頬側膜である。本発明の方針に従って患者が組成物とマーカーの配合薬を実際に摂取していた場合、粘膜は、カルミンレッド染料を示す色で染まることになる。決定された投与計画に従い、口腔および/または咽頭腔の粘膜をこの着色について周期的に観察することによって、患者が薬剤投与計画に従っているかを判定できる。したがって、口腔および/または咽頭腔を観察しても着色がはっきりと見えなければ、介護者は、患者が薬剤の適正な投与に従うことを強制でき、またはあくまでも拒絶されれば、介護者が薬物送達の方法を変えてよい。
【0044】
また、上述のように、口腔および/または咽頭腔は、自然光または適正な励起波長で蛍光を発光させる光線のもとで観察すればよい。より詳細には、本発明の方法では、予定された摂取時間の後すぐに、着色マーカーが特徴的にもたらした色について患者の口腔および/または咽頭腔を視覚的に観察することによって検査すればよい。この観察は、自然光のもと肉眼で行えばよい。たとえば、カルミン染料を使用する本発明の別の実施形態では、患者の口腔および/または咽頭腔の粘膜に赤みを帯びた着色が表われるはずである。摂取する予定の時間と実際に観察した時間に開きが生じた場合、マーカーが呈した目に見える色が消失して、口腔および/または咽頭腔の明らかな着色がほとんどまたはまったく残っていないかもしれない。しかし、薬剤組成物およびマーカーの摂取の判定は、まだ口腔粘膜の蛍光として得られるかもしれない。本発明の方法のこの実施形態では、蛍光光線を使用して、視覚によってわかるマーカーに特有な発色を引き出せばよい。カルミンレッド染料を使用して、カルミンレッド染料が残した赤橙色の残物を観察してもよい。着色が見られなくても、部分的な投与 (処方された投与量の一部だけの摂取)が自然光の使用で検出されていなかった場合には、まだ蛍光が観察できるかもしれない。カルミンレッドマーカーの残物を蛍光によって観察するため、患者の口腔および/または咽頭腔に最適な励起光を向ける。本発明の一実施形態では、カルミンレッド染料の残物を蛍光発光させるための光が、波長約436ナノメートルの青紫色の光線であるが、または約450 nm〜約490 nmの範囲の波長を有する青色光線を使用してもよいであろう。さらに、マーカーが消失していくにつれて、着色または変色が最大限に検出されるよう光を所望の波長に調整することになろう。したがって、約430 nm〜490 nmの青紫色から青色の範囲の最適な励起光を使用すればよい。当然、マーカーの特性に応じて、相応する種々の波長の光線も使用してよい。
【0045】
本発明をその様々な実施形態を述べることによって例示し、そうした実施形態をかなり詳細に述べてきたが、添付の特許請求の範囲をそのように細かく狭め、またはともかく限定することは出願人の意図するところではない。追加の利点および変更は、当分野の技術者に容易に明らかになろう。したがって、本発明は、より広い見方では、表示および記載した特定の細目、典型的な配合薬および方法、実例に限定されない。よって、出願人の総体的な発明構想の精神または範囲から外れない限り、このような細目から逸脱してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与用組成物と少なくとも1種のマーカーの配合薬において、前記マーカーが、患者が前記配合薬を摂取した後に前記患者の口腔および/または咽頭腔の少なくとも一部分を着色するための形態及び十分な量で前記配合薬中に存在し、
患者が薬剤投与計画に従って前記配合薬を摂取したかを判定するために、前記患者の口腔および/または咽頭腔の前記接触着色が視覚によって観察できる配合薬。
【請求項2】
前記組成物の外側の表面に前記の少なくとも1種のマーカーを付着させてある、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記の少なくとも1種のマーカーが前記組成物の全体に散剤する、請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
前記組成物の形態が、チュアブル錠、丸剤、カプセル剤、および液体からなる群から選択されている、請求項17に記載の配合物。
【請求項5】
前記の口腔および/または咽頭腔の粘膜を着色するように前記マーカーを作用させ得る、請求項1に記載の配合物。
【請求項6】
ヒトの器官系における前記の少なくとも1種のマーカーの半減期が、ヒトの器官系における前記組成物の半減期に匹敵する、請求項1に記載の配合物。
【請求項7】
前記の少なくとも1種のマーカーがカルミンレッド染料である、請求項1に記載の配合薬。
【請求項8】
前記の少なくとも1種のマーカーが、インジゴカルミン、メチレンブルー、タルトラジン、ラッカイン酸、β-カロテン、FD&Cブルー1、FD&Cブルー2、FD&Cブルー5、FD&Cグリーン3、FD&Cレッド3、FD&Cレッド40、FD&Cイエロー6、リボフラビン、および21 CFR Part 73 subpart BもしくはPart 74 subpart Bにおいて薬物使用が認可されている染料からなる群から選択される、請求項1に記載の配合薬。
【請求項9】
多数のマーカーをさらに含む請求項1に記載の配合物。
【請求項10】
多数のマーカーが呈した着色の有無を視覚によって観察して、配合薬が摂取された時間枠を決定できるように、前記多数のマーカーの一つが別のマーカーよりも長い時間口腔および/または咽頭腔を着色する、請求項9に記載の配合薬。
【請求項11】
前記多数のマーカーの一つが、口腔および/または咽頭腔に前記の別のマーカーと異なる着色を呈する、請求項9に記載の配合薬。
【請求項12】
前記多数のマーカーの一つが口腔および/または咽頭腔に自然光で検出可能な着色を呈し、前記のうち別のマーカーが蛍光を発光させる光で検出可能な着色を呈する、請求項9に記載の配合薬。
【請求項13】
多数のマーカーが蛍光を発色させる光で検出可能であり、前記マーカーの一つが、口腔および/または咽頭腔に他のマーカーが呈した蛍光着色と異なる蛍光着色を呈する、請求項9に記載の配合物。
【請求項14】
経口投与用組成物および少なくとも1種のマーカーと組み合わせた接着物質であって、着色を観察できる時間を延ばすために作用しる接着物質をさらに含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項15】
経口投与用組成物および少なくとも1種のマーカーと組み合わせて接着物質をさらに含み、前記接着物質が、マーカーによる着色の濃さが様々に変わるように作用させうる、請求項1に記載の配合物。

【公開番号】特開2009−42237(P2009−42237A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238569(P2008−238569)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【分割の表示】特願2002−557426(P2002−557426)の分割
【原出願日】平成14年1月17日(2002.1.17)
【出願人】(504118025)ペディアミド・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】