説明

泌尿器官用薬

【課題】優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有し、蓄尿障害、頻尿、尿失禁等の排尿障害の予防、治療等に有用な泌尿器官用薬を提供する。
【解決手段】トケイソウ(Passiflora caerulea)、チャボトケイソウ(Passiflora incarnata)を初めとするトケイソウ属(Passiflora)の植物、カノコソウ(Valeriana fauriei)、セイヨウカノコソウ(Valeriana officinalis)を初めとするカノコソウ属の植物及びカギカズラ(Uncaria rhynchophylla)、トウカギカズラ(Uncaria sinensis)を初めとするカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上を含有してなる泌尿器官用薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泌尿器官用薬に関する。より詳細には、優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有し、蓄尿障害、頻尿、尿失禁等の排尿障害の予防、治療等に有用な泌尿器官用薬に関する。
【背景技術】
【0002】
排尿機構は、蓄尿と排尿の2つの相で構成されている。このうち、蓄尿時においては、膀胱排尿筋が弛緩し尿道括約筋が緊張することで、膀胱に尿を低圧状態で漏らさず蓄えることができる。この排尿機構の障害(排尿障害)のうち、蓄尿の障害(蓄尿障害)は主に下部尿路(膀胱と前立腺を含めた尿道)の器質的あるいは機能的障害に起因し、その原因は多岐に渡るが、その症状としては、頻尿及び尿失禁が主なものとなる。
【0003】
頻尿は、膀胱の過活動収縮による膀胱内圧の頻繁な上昇が原因となって生じるものである。また、尿失禁は、膀胱内圧が尿道閉鎖圧を不随意に超えた状態で起こるものであり、膀胱の収縮による膀胱内圧の上昇がその原因の一つとなる。そのため、頻尿、尿失禁に対する薬物治療においては、膀胱の収縮を抑制し、膀胱内圧の上昇を抑制する薬物が用いられる。具体的には、膀胱排尿筋が主に副交感神経支配であって、副交感神経終末から放出されるアセチルコリンが膀胱排尿筋のムスカリン受容体へ結合することにより収縮が生じることから、抗コリン薬(塩酸オキシブチニン、塩酸プロピベリン、臭化プロパンテリン、酒石酸トルテロジン、コハク酸ソリフェナシンなど)が尿失禁・頻尿治療剤として主に利用されており、これらの薬物がシストメトリー試験においてコリン作動薬の刺激に基づく膀胱内圧上昇を用量依存的に抑制することも報告されている(非特許文献1)。また、抗コリン作用に加えて平滑筋直接弛緩作用も有する平滑筋弛緩薬(フラボキサート塩酸塩など)も利用されている。
【0004】
ところで、トケイソウ(Passiflora caerulea)、チャボトケイソウ(Passiflora incarnata)を初めとするトケイソウ属(Passiflora)の植物は、暖温帯若しくは熱帯アメリカを主な原産地とする植物で、その全草、葉やそれらからの抽出物等に鎮静作用、不安改善作用、鎮痙作用、催眠作用等があることが知られている(例えば、非特許文献2、3)。
また、カノコソウ(Valeriana fauriei)、セイヨウカノコソウ(Valeriana officinalis)を初めとするカノコソウ属(Valeriana)の植物は、北海道から九州、朝鮮、中国などに生育する多年生の草本植物で、鎮静ハーブとして広く利用されている。また、その薬理作用としては、睡眠改善作用等が報告されている(非特許文献4、5)。
さらに、カギカズラ(Uncaria rhynchophylla)、トウカギカズラ(Uncaria sinensis)を初めとするカギカズラ属(Uncaria)の植物は、アジア、アフリカ、南アメリカなどを主な原産地とし、暖温帯の照葉樹林内に生える常緑のつる植物で、鎮静ハーブとして広く利用されている。また、近年、カギカズラ属の植物が種々の薬理作用を有することが明らかとなってきており、具体的には例えば、カギカズラ属の植物を起源植物とする生薬であるチョウトウコウ(釣藤鉤)においては、降圧作用、血管拡張作用、血液レオロジー因子改善作用、血しょう過酸化脂質や総コレステロール低下作用、微小循環改善作用、神経細胞保護作用などの薬理作用が報告されている(非特許文献6)。
【0005】
しかしながら、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物、カギカズラ属の植物やそれらの抽出物が、膀胱内圧上昇抑制作用を有し、蓄尿障害やその症状である頻尿、尿失禁等の排尿障害の予防、治療等に有用な泌尿器官用薬の成分として利用できることについては、これまでに知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A. Ohtake, et al., European Journal of Pharmacology、2004年、第492巻、第243−250頁
【非特許文献2】森山健三、「欧米のハーブ解説 24」、和漢薬、2009年、第669巻、第11頁
【非特許文献3】森温理ら、「各種神経症に対するパシフラミン(Passiflora extract)の臨床評価」、Clinical Evaluation、1993年、第21巻、第383−440頁
【非特許文献4】Leathwood P.D., et al., Pharmacology Biochemistry and Behavior、1982年、第17巻、第65−70頁
【非特許文献5】Donath F., et al., Pharmacopsychiatry、2000年、第33巻、第47−53頁
【非特許文献6】嶋田豊、「釣藤散、釣藤鈎の“新しい”薬理作用」、和漢薬、2003年、第602巻、第2頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新たな泌尿器官用薬、より詳細には、優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有し、蓄尿障害、頻尿、尿失禁等の排尿障害の予防、治療等に有用な泌尿器官用薬を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、驚くべきことに、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上が優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有し、蓄尿障害、頻尿、尿失禁等の排尿障害の予防、治療等に有用な泌尿器官用薬の成分として利用できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、次の[1]〜[12]に関する。
[1]トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上を含有してなる泌尿器官用薬。
[2]泌尿器官用薬が、排尿障害の予防及び/又は治療薬である、前記[1]に記載の泌尿器官用薬。
[3]排尿障害の予防及び/又は治療が、膀胱内圧上昇の抑制作用に基づくものである、前記[2]に記載の泌尿器官用薬。
[4]排尿障害が、蓄尿障害である、前記[2]又は[3]に記載の泌尿器官用薬。
[5]排尿障害が、頻尿である、前記[2]又は[3]に記載の泌尿器官用薬。
[6]排尿障害が、尿失禁である、前記[2]又は[3]に記載の泌尿器官用薬。
[7]泌尿器官用薬が、頻尿及び/又は尿もれの症状の緩和に用いられるものである、前記[1]に記載の泌尿器官用薬。
[8]泌尿器官用薬が、膀胱内圧上昇の抑制薬である、前記[1]に記載の泌尿器官用薬。
[9]トケイソウ属の植物が、Passiflora caerulea(トケイソウ)及びPassiflora incarnata(チャボトケイソウ)よりなる群から選ばれる1種以上の植物である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の泌尿器官用薬。
[10]カノコソウ属の植物が、Valeriana fauriei(カノコソウ)及びValeriana officinalis(セイヨウカノコソウ)よりなる群から選ばれる1種以上の植物である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の泌尿器官用薬。
[11]カギカズラ属の植物が、Uncaria gambir(ガンビールノキ)、Uncaria macrophylla、Uncaria rhynchophylla(カギカズラ)及びUncaria sinensis(トウカギカズラ)よりなる群から選ばれる1種以上の植物である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の泌尿器官用薬。
[12]さらに、フラボキサートを組み合わせてなる、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の泌尿器官用薬。
【0010】
さらに、本発明は、次の[13]〜[24]に関する。
[13]泌尿器官用薬の製造のための、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の使用(use)。
[14]泌尿器官用薬が、排尿障害の予防及び/又は治療薬である、前記[13]に記載の使用。
[15]排尿障害の予防及び/又は治療が、膀胱内圧上昇の抑制作用に基づくものである、前記[14]に記載の使用。
[16]排尿障害が、蓄尿障害である、前記[14]又は[15]に記載の使用。
[17]排尿障害が、頻尿である、前記[14]又は[15]に記載の使用。
[18]排尿障害が、尿失禁である、前記[14]又は[15]に記載の使用。
[19]泌尿器官用薬が、頻尿及び/又は尿もれの症状の緩和に用いられるものである、前記[13]に記載の使用。
[20]泌尿器官用薬が、膀胱内圧上昇の抑制薬である、前記[13]に記載の使用。
[21]トケイソウ属の植物が、Passiflora caerulea(トケイソウ)及びPassiflora incarnata(チャボトケイソウ)よりなる群から選ばれる1種以上の植物である、前記[13]〜[20]のいずれかに記載の使用。
[22]カノコソウ属の植物が、Valeriana fauriei(カノコソウ)及びValeriana officinalis(セイヨウカノコソウ)よりなる群から選ばれる1種以上の植物である、前記[13]〜[20]のいずれかに記載の使用。
[23]カギカズラ属の植物が、Uncaria gambir(ガンビールノキ)、Uncaria macrophylla、Uncaria rhynchophylla(カギカズラ)及びUncaria sinensis(トウカギカズラ)よりなる群から選ばれる1種以上の植物である、前記[13]〜[20]のいずれかに記載の使用。
[24]泌尿器官用薬が、さらにフラボキサートを組み合わせてなるものである、前記[13]〜[23]のいずれかに記載の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明の泌尿器官用薬は、優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有し、排尿障害の予防及び/又は治療薬、特に蓄尿障害の予防及び/又は治療薬、頻尿の予防及び/又は治療薬、尿失禁の予防及び/又は治療薬、並びに頻尿及び/又は尿もれの症状の緩和のための医薬等として好適に利用できる。
また、排尿障害の予防及び/又は治療薬を初めとする泌尿器官用薬は、一般的に有効性だけでなく、患者がいつでもどこでも安心して服用することができる高い安全性が要求されるものであるところ、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物、カギカズラ属の植物やそれらの抽出物は、緩和な作用を有する鎮静ハーブ等として安全に使用されてきたものである。従って、本発明によれば、安全性の高い排尿障害の予防及び/又は治療薬、特に蓄尿障害の予防及び/又は治療薬、頻尿の予防及び/又は治療薬、尿失禁の予防及び/又は治療薬、並びに頻尿及び/又は尿もれの症状の緩和のための医薬等の泌尿器官用薬を提供できる。
さらに、後述する試験例で示されるように、本発明の泌尿器官用薬は、他の尿失禁・頻尿治療剤等との併用も可能であり、併用によりさらなる症状の緩和を期待することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、トケイソウ属の植物としては、トケイソウ属に属するものであれば具体的な種は特に限定されず、例えば、以下の学名の植物:Passiflora actina、Passiflora alata(ブラジルトケイソウ)、Passiflora amalocarpa、Passiflora amethystina、Passiflora antioquiensis、Passiflora aurantia、Passiflora biflora、Passiflora buonapartea、Passiflora caerulea(トケイソウ)、Passiflora capsularis、Passiflora cearensis、Passiflora coccinea(ベニバナトケイソウ)、Passiflora cochinchinensis、Passiflora edulis(クダモノトケイソウ)、Passiflora filamentosa、Passiflora foetida(クサトケイソウ)、Passiflora helleri、Passiflora herbertiana、Passiflora holosericea 、Passiflora incarnata(チャボトケイソウ)、Passiflora karwinskii 、Passiflora laurifolia(キミトケイソウ)、Passiflora ligularis、Passiflora lingularia、Passiflora lunata、Passiflora lutea、Passiflora maliformis、Passiflora mixta、Passiflora mollissima、Passiflora mucronata、Passiflora murucuja、Passiflora nitida、Passiflora organensis、Passiflora pallida、Passiflora parahybensis、Passiflora pedeta、Passiflora pinnatistipula、Passiflora popenovii、Passiflora quadrangularis(オオミノトケイソウ)、Passiflora racemosa(ホザキトケイソウ)、Passiflora riparia、Passiflora rubra、Passiflora serrata、Passiflora serratifolia、Passiflora tenuifila、Passiflora tiliaefolia、Passiflora tripartita、Passiflora tulae、Passiflora villosa、Passiflora vitifolia、Passiflora warmingii、Passiflora yucatanensisなどが挙げられる。本発明においては、トケイソウ属の植物として、単一の種の植物を用いてもよいし、複数の異なる種の植物を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、Passiflora caerulea(トケイソウ)及びPassiflora incarnata(チャボトケイソウ)よりなる群から選ばれる1種以上のトケイソウ属の植物が好ましく、Passiflora incarnata(チャボトケイソウ)が特に好ましい。なお、本発明において、トケイソウ属の植物の使用部位は特に限定されず、その全草若しくはその一部又はそれらの2種以上の組み合わせを使用できる。
【0013】
本発明において、「トケイソウ属の植物」とは、上記したトケイソウ属の植物の全草若しくはその一部又はそれらの2種以上の組み合わせに係る植物体であり、当該「トケイソウ属の植物」には、当該植物体に切断、粉砕、加熱、乾燥等の加工処理を施したものも包含される。
また、本発明においては、泌尿器官用薬の製造時の取扱の便宜、服用の容易性等の観点から、上記「トケイソウ属の植物」に何らかの抽出処理を施したもの(以下、「トケイソウ属の植物の抽出物」と称する。)を用いることもできる。なお、当該「トケイソウ属の植物の抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含され、例えば抽出物の濃縮物や乾燥エキスなども本発明の「トケイソウ属の植物の抽出物」に包含される。
【0014】
トケイソウ属の植物の抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば第十五改正日本薬局方 製剤総則の「エキス剤」、「浸剤・煎剤」、「チンキ剤」、「流エキス剤」の項の記載など、公知の植物抽出物の製造方法を参考にして製造できる。具体的には例えば、トケイソウ属の植物の全草若しくはその一部又はそれらの2種以上の組み合わせを必要に応じ切断、加熱、乾燥、粉砕等したうえ、適当な抽出溶媒を加え抽出を行うことで、製造することができる。得られた抽出物は、必要に応じさらに濃縮、乾燥等させてもよい。
【0015】
抽出溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等の低級多価アルコール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;酢酸エチルエステル等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のアルカン類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲノアルカン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;水(熱水を含む)等が挙げられる。これらは各々単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、水、エタノール又は水/エタノール混液が好ましい。
抽出操作は特に限定されず、植物からの抽出操作に利用される公知の方法を採用することができ、具体的には例えば、抽出溶媒への浸漬(冷浸、温浸、パーコレーション等)、超臨界流体や亜臨界流体を用いた抽出などが挙げられる。なお、抽出効率を上げるため、撹拌や抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。
抽出温度は特に限定されず、使用する抽出溶媒、抽出操作等により異なるが、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが好ましい。
抽出時間は特に限定されず、使用する抽出溶媒、抽出操作等により異なるが、1時間〜14日間程度とするのが好ましい。
【0016】
本発明において、トケイソウ属の植物及びその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、チャボトケイソウ乾燥エキス(販売元:アスク薬品工業(株))、トケイソウエキス(松浦薬業(株)製)、トケイソウ乾燥エキス−A(日本粉末薬品(株)製)、パッシフロラ(小城製薬(株)製)、パッシフロラエキス(小城製薬(株)製)などが挙げられる。本発明においては、トケイソウ乾燥エキス−A(日本粉末薬品(株)製)が好ましい。
【0017】
本発明において、トケイソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の投与量は特に限定されず、投与方法、剤形、適用すべき疾患・症状の程度、患者の年齢等の種々の条件に応じて適宜選択可能であり、通常の場合、1日当たりトケイソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上を原生薬換算量で10〜3000mg程度、より好適には25〜2500mg程度、特に好適には50〜2000mg程度投与すればよい。
【0018】
本発明において、カノコソウ属の植物としては、カノコソウ属に属するものであれば具体的な種は特に限定されず、例えば、以下の学名の植物:Valeriana edulis、Valeriana fauriei(カノコソウ)、Valeriana flaccidissima(ツルカノコソウ)、Valeriana jatamansi、Valeriana officinalis(セイヨウカノコソウ)、Valeriana procera(メキシコカノコソウ)、Valeriana sitchensis、Valeriana wallichiiなどが挙げられる。本発明においては、カノコソウ属の植物として、単一の種の植物を用いてもよいし、複数の異なる種の植物を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、Valeriana fauriei(カノコソウ)及びValeriana officinalis(セイヨウカノコソウ)よりなる群から選ばれる1種以上のカノコソウ属の植物が好ましく、Valeriana fauriei(カノコソウ)が特に好ましい。なお、本発明において、カノコソウ属の植物の使用部位は特に限定されず、その全草若しくはその一部又はそれらの2種以上の組み合わせを使用でき、本発明においては、膀胱内圧上昇抑制作用の観点から、根及び根茎よりなる群から選ばれる1種以上を使用するのが好ましい。
【0019】
本発明において、「カノコソウ属の植物」とは、上記したカノコソウ属の植物の全草若しくはその一部又はそれらの2種以上の組み合わせに係る植物体であり、当該「カノコソウ属の植物」には、当該植物体に切断、粉砕、加熱、乾燥等の加工処理を施したものも包含される。
本発明において「カノコソウ属の植物」としては、膀胱内圧上昇抑制作用の観点から、生薬「カノコソウ」が好ましく、第十五改正日本薬局方に記載の「カノコソウ」及び「カノコソウ末」よりなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。なお、当該生薬は、全形生薬、切断生薬、粉末生薬のいずれの形態として用いてもよい。
また、本発明においては、泌尿器官用薬の製造時の取扱の便宜、服用の容易性等の観点から、上記「カノコソウ属の植物」に何らかの抽出処理を施したもの(以下、「カノコソウ属の植物の抽出物」と称する。)を用いることもできる。なお、当該「カノコソウ属の植物の抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含され、例えば抽出物の濃縮物や乾燥エキスなども本発明の「カノコソウ属の植物の抽出物」に包含される。
【0020】
カノコソウ属の植物の抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記したトケイソウ属の植物の抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0021】
本発明において、「カノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上」としては、膀胱内圧上昇抑制作用の観点から、生薬「カノコソウ」及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく、第十五改正日本薬局方に記載の「カノコソウ」及び「カノコソウ末」並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0022】
本発明において、カノコソウ属の植物及びその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、カノコソウ乾燥エキス(アルプス薬品工業(株)製)、カノコソウエキス、カノコソウ軟エキス、カノコソウ軟エキスA(以上、小城製薬(株)製)、カノコソウエキス−T(日本粉末薬品(株)製)、バレリアンエキス0.8(販売元:丸栄トレーディング)、カノコソウ、バレリアナ根、バレリアナ根乾燥エキス(以上、福田龍(株)製)、セイヨウカノコソウ乾燥エキスF(松浦薬業(株)製)などが挙げられる。本発明においては、カノコソウエキス−T(日本粉末薬品(株)製)が好ましい。
【0023】
本発明において、カノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の投与量は特に限定されず、投与方法、剤形、適用すべき疾患・症状の程度、患者の年齢等の種々の条件に応じて適宜選択可能であり、通常の場合、1日当たりカノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上を原生薬換算量で10〜30000mg程度、より好適には25〜25000mg程度、特に好適には50〜20000mg程度投与すればよい。
【0024】
本発明において、カギカズラ属の植物としては、カギカズラ属に属するものであれば具体的な種は特に限定されず、例えば、以下の学名の植物:Uncaria hirsuta、Uncaria laevigata、Uncaria lancifolia、Uncaria gambir(ガンビールノキ)、Uncaria macrophylla、Uncaria rhynchophylla(カギカズラ)、Uncaria scandens、Uncaria sessilifructus、Uncaria sinensis(トウカギカズラ)、Uncaria tomentosa(キャッツクロー)、Uncaria wangiiなどが挙げられる。本発明においては、カギカズラ属の植物として、単一の種の植物を用いてもよいし、複数の異なる種の植物を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、Uncaria gambir(ガンビールノキ)、Uncaria macrophylla、Uncaria rhynchophylla(カギカズラ)及びUncaria sinensis(トウカギカズラ)よりなる群から選ばれる1種以上のカギカズラ属の植物が好ましく、Uncaria macrophylla、Uncaria rhynchophylla(カギカズラ)及びUncaria sinensis(トウカギカズラ)よりなる群から選ばれる1種以上のカギカズラ属の植物が特に好ましい。なお、本発明において、カギカズラ属の植物の使用部位は特に限定されず、その全草若しくはその一部又はそれらの2種以上の組み合わせを使用でき、本発明においては、膀胱内圧上昇抑制作用の観点から、葉、若枝、とげ、及びとげが対生又は単生する茎よりなる群から選ばれる1種以上を使用するのが好ましい。
【0025】
本発明において、「カギカズラ属の植物」とは、上記したカギカズラ属の植物の全草若しくはその一部又はそれらの2種以上の組み合わせに係る植物体であり、当該「カギカズラ属の植物」には、当該植物体に切断、粉砕、加熱、乾燥等の加工処理を施したものも包含される。
本発明において「カギカズラ属の植物」としては、膀胱内圧上昇抑制作用の観点から、チョウトウコウ(釣藤鉤)及びアセンヤク(阿仙薬)よりなる群から選ばれる1種以上の生薬が好ましく、第十五改正日本薬局方に記載のチョウトウコウ(釣藤鉤)、アセンヤク(阿仙薬)及びアセンヤク(阿仙薬)末よりなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。なお、当該生薬は、全形生薬、切断生薬、粉末生薬のいずれの形態として用いてもよい。また、チョウトウコウ(釣藤鉤)、アセンヤク(阿仙薬)などの生薬は、これらを成分の一部とする漢方処方、具体的には例えば、シチモツコウカトウ(七物降下湯)、チョウトウサン(釣藤散)、ヨクカンサン(抑肝散)、ヨクカンサンカシャクヤクオウレン(抑肝散加芍薬黄連)、ヨクカンサンカチンピハンゲ(抑肝散加陳皮半夏)などとして用いてもよい。
【0026】
また、本発明においては、泌尿器官用薬の製造時の取扱の便宜、服用の容易性等の観点から、上記「カギカズラ属の植物」に何らかの抽出処理を施したもの(以下、「カギカズラ属の植物の抽出物」と称する。)を用いることもできる。なお、当該「カギカズラ属の植物の抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含され、例えば抽出物の濃縮物や乾燥エキスなども本発明の「カギカズラ属の植物の抽出物」に包含される。
【0027】
カギカズラ属の植物の抽出物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記したトケイソウ属の植物の抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0028】
本発明において、「カギカズラ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上」としては、膀胱内圧上昇抑制作用の観点から、チョウトウコウ(釣藤鉤)、アセンヤク(阿仙薬)及びそれらを成分の一部とする漢方処方並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく、第十五改正日本薬局方に記載のチョウトウコウ(釣藤鉤)、アセンヤク(阿仙薬)、アセンヤク(阿仙薬)末及びそれらを成分の一部とする漢方処方並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0029】
本発明において、カギカズラ属の植物及びその抽出物としては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、チョウトウコウ乾燥エキス(アルプス薬品工業(株)製)、チョウトウコウ末(松浦薬業(株)製)、チョウトウエキス、チョウトウコウ乾燥エキス(以上、小城製薬(株)製)、チョウトウコウ乾燥エキス(日本粉末薬品(株)製)、キャッツクロー末(丸栄トレーディング)、阿仙薬、釣藤鈎、キャッツクロー、キャッツクロー乾燥エキス(以上、福田龍(株)製)などが挙げられる。本発明においては、チョウトウコウ乾燥エキス(日本粉末薬品(株)製)が好ましい。
【0030】
本発明において、カギカズラ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の投与量は特に限定されず、投与方法、剤形、適用すべき疾患・症状の程度、患者の年齢等の種々の条件に応じて適宜選択可能であり、通常の場合、1日当たりカギカズラ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上を原生薬換算量で1〜10000mg程度、より好適には10〜6000mg程度、さらに好適には20〜5500mg程度、特に好適には45〜5000mg程度投与すればよい。
【0031】
本発明において、「泌尿器官用薬」とは、泌尿器官(特に下部尿路)の疾患の予防及び/又は治療、泌尿器官(特に下部尿路)の症状の緩和及び/又は改善等に用いられる医薬をいい、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物が発揮する膀胱内圧上昇抑制作用から、排尿障害の予防及び/又は治療薬、特に蓄尿障害の予防及び/又は治療薬、頻尿の予防及び/又は治療薬、尿失禁の予防及び/又は治療薬、並びに頻尿及び/又は尿もれの症状の緩和のための医薬等として好適に利用できる。なお、本発明において「薬」や「医薬」は、医薬品のほか医薬部外品をも包含する概念であり、本発明の泌尿器官用薬は、医薬品としてのほか、医薬部外品としても利用できる。
【0032】
本発明においては、膀胱内圧上昇抑制作用の増強の観点から、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上に、さらにフラボキサート(flavoxate、化学名:2-(Piperidin-1-yl)ethyl 3-methyl-4-oxo-2-phenyl-4H-chromene-8-carboxylate)を組み合わせてもよい。後記実施例に具体的に開示されているとおり、フラボキサートを組み合わせて投与すると、膀胱内圧上昇抑制作用が顕著に増強される。
【0033】
本発明において、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとを「組み合わせて」とは、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとを、同時に又は時間を変えて投与することを意味する。従って、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとを組み合わせてなる態様の本発明の泌尿器官用薬は、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する単位投与形態の製剤とフラボキサートを含有する単位投与形態の製剤とをそれぞれ別々に調製したうえで組み合わせ(キット)として提供したり、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートの両者を一緒に含む単位投与形態の製剤(配合剤)として提供し得る。
本発明においては、膀胱内圧上昇抑制作用の増強の観点から、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートを同時に投与するのが好ましく、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートの両者を一緒に含む単位投与形態の製剤(配合剤)として提供されるのがより好ましい。
【0034】
本発明において、「フラボキサート」には、フラボキサートそのもののほか、その製薬上許容される塩(塩酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩など)も含まれる。本発明においては、フラボキサート塩酸塩(flavoxate hydrochloride、化学名:2-(Piperidin-1-yl)ethyl 3-methyl-4-oxo-2-phenyl-4H-chromene-8-carboxylate monohydrochloride)が好ましい。
【0035】
本発明において、フラボキサートとしては、市販品を用いることができ、具体的な市販品としては例えば、フラボキサート塩酸塩(和光純薬工業(株)製)などが挙げられる。なお、フラボキサートを単独で含む製剤を用いて本発明の泌尿器官用薬を提供する場合には、市販のフラボキサートの製剤をそのまま用いてもよい。市販のフラボキサートの製剤としては、具体的には例えば、ハルニンコーワ錠200mg(興和(株)製)などが挙げられる。
【0036】
本発明において、フラボキサートの投与量は特に限定されず、投与方法、剤形、適用すべき疾患・症状の程度、患者の年齢等の種々の条件に応じて適宜選択可能である。通常の場合、1日当たりフラボキサートをフリー体として20〜3000mg程度、より好適には40〜2500mg程度、特に好適には60〜1500mg程度投与すればよい。例えば、フラボキサートを塩酸塩として投与する場合には、1日当たりフラボキサートを塩酸塩として25〜2500mg程度、より好適には50〜2000mg程度、特に好適には75〜1200mg程度投与すればよい。
【0037】
本発明において、トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上と、フラボキサートとの組み合わせ比率は特に限定されず、投与方法、剤形、適用すべき疾患・症状の程度、患者の年齢等の種々の条件に応じて適宜選択可能である。
具体的には例えば、トケイソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとの組み合わせ比率については、膀胱内圧上昇抑制作用の増強の観点から、トケイソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の1質量部(原生薬換算量)に対して、フラボキサートをフリー体として0.006〜300質量部程度の範囲、より好ましくは0.016〜100質量部程度の範囲、特に好ましくは0.03〜40質量部程度の範囲で用いることが好ましい。特に、フラボキサートを塩酸塩として投与する場合には、トケイソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の1質量部(原生薬換算量)に対して、フラボキサートを塩酸塩として0.008〜250質量部程度の範囲、より好ましくは0.016〜80質量部程度の範囲、特に好ましくは0.0375〜24質量部程度の範囲で用いることが好ましい。
また、カノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとの組み合わせ比率については、膀胱内圧上昇抑制作用の増強の観点から、カノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の1質量部(原生薬換算量)に対して、フラボキサートをフリー体として0.0006〜300質量部程度の範囲、より好ましくは0.0016〜100質量部程度の範囲、特に好ましくは0.003〜30質量部程度の範囲で用いることが好ましい。特に、フラボキサートを塩酸塩として投与する場合には、カノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の1質量部(原生薬換算量)に対して、フラボキサートを塩酸塩として0.0008〜250質量部程度の範囲、より好ましくは0.002〜80質量部程度の範囲、特に好ましくは0.003〜24質量部程度の範囲で用いることが好ましい。
また、カギカズラ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとの組み合わせ比率については、膀胱内圧上昇抑制作用の増強の観点から、カギカズラ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の1質量部(原生薬換算量)に対して、フラボキサートをフリー体として0.001〜1000質量部程度の範囲、より好ましくは0.003〜300質量部程度の範囲、さらに好ましくは0.007〜125質量部程度の範囲、特に好ましくは0.012〜35質量部程度の範囲で用いることが好ましい。特に、フラボキサートを塩酸塩として投与する場合には、カギカズラ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上の1質量部(原生薬換算量)に対して、フラボキサートを塩酸塩として0.001〜1000質量部程度の範囲、より好ましくは0.004〜250質量部程度の範囲、さらに好ましくは0.009〜100質量部程度の範囲、特に好ましくは0.015〜30質量部程度の範囲で用いることが好ましい。
【0038】
本発明の泌尿器官用薬には、上記以外の成分を、必要に応じて適宜配合することができる。このような成分としては、抗コリン薬、α作動薬、β作動薬、三環系抗うつ薬、エストロゲン類、アミノ酸類、生薬類、漢方処方、その他の成分等が挙げられる。
【0039】
抗コリン薬としては、塩酸オキシブチニン、塩酸プロピベリン、コハク酸ソリフェナシン、臭化プロパンテリン、酒石酸トルテロジンなどが挙げられる。
α作動薬としては、塩酸エフェドリンなどが挙げられる。
β作動薬としては、塩酸クレンブテロールなどが挙げられる。
三環系抗うつ薬としては、塩酸アミトリプチリン、塩酸イミプラミン、塩酸クロミプラミンなどが挙げられる。
エストロゲン類としては、エストリオール、エストロゲンなどが挙げられる。
アミノ酸類としては、アミノ酢酸、L−アラニン、L−グルタミン酸などが挙げられる。
【0040】
生薬類としては、アキョウ(阿膠)、ウワウルシ、オウゴン(黄岑)、オウギ(黄耆)、オウバク(黄柏)、オウレン(黄連)、オオウメガサソウ(大梅笠草)、カゴソウ(夏枯草)、カッセキ(滑石)、カンゾウ(甘草)、カンキョウ(乾薑)、キクカ(菊花)、クコシ(枸杞子)、ケイヒ(桂皮)、ゴシツ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴミシ(五味子)、サイコ(柴胡)、サイシン(細辛)、サンシシ(山梔子)、サンシュユ(山茱萸)、サンヤク(山薬)、ジオウ(地黄)、ジコッピ(地骨皮)、シャクヤク(芍薬)、シャゼンシ(車前子)、ショウキョウ(生姜)、ショウマ(升麻)、ジンコウ(沈香)、スギナ(杉菜)、セイヨウオキナグサ(西洋翁草)、センキュウ(川▲弓▼)、ソウジュツ(蒼朮)、タイソウ(大棗)、タクシャ(沢瀉)、チモ(知母)、チョレイ(猪苓)、チンピ(陳皮)、トウキ(当帰)、ニクジュヨウ(肉従蓉)、ニンジン(人参)、バクモンドウ(麦門冬)、ハコヤナギ(箱柳)、ハッカ(薄荷)、ハッカヨウ(薄荷葉)、ブクリョウ(茯苓)、ブシ(附子)、ボウフウ(防風)、ホウブシ(炮附子)、ボタンピ(牡丹皮)、モクツウ(木通)、リュウタン(竜胆)、レンギョウ(連翹)、レンニク(蓮肉)などの生薬及びこれらの抽出物(エキス、チンキ、乾燥エキス等)などが挙げられる。
【0041】
漢方処方としては、コキクジオウガン(杞菊地黄丸)、ゴシャジンキガン(牛車腎気丸)、ゴリンサン(五淋散)、シモツトウ(四物湯)、ショウケンチュウトウ(小建中湯)、セイシンレンシイン(清心蓮子飲)、チバクジオウガン(知柏地黄丸)、チョレイトウ(猪苓湯)、トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ(当帰四逆加呉茱萸生姜湯)、ハチミジオウガン(八味地黄丸)、ホチュウエッキトウ(補中益気湯)、リュウタンシャカントウ(竜胆瀉肝湯)、ロクミガン(六味丸)などが挙げられる。
【0042】
その他の成分としては、セルニチンポーレンエキス、コムギ胚芽油、ブタ前立腺抽出物などが挙げられる。
【0043】
本発明の泌尿器官用薬の剤形は特に限定されず、固形製剤・半固形製剤・液状製剤などの医薬品、医薬部外品に通常使用される剤形とすることができ、具体的には例えば、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、経皮吸収型製剤、懸濁剤・乳剤、散剤、錠剤、シロップ剤、浸剤・煎剤、注射剤、貼付剤、チンキ剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤等の第十五改正日本薬局方 製剤総則に記載の剤形が挙げられる。本発明においては、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、錠剤、液剤、シロップ剤、ゼリー剤等の経口投与用の製剤が好ましく、固形製剤がより好ましい。なお、固形製剤は公知の方法により、糖衣やフィルムコーティング等により被覆されていてもよい。
【0044】
本発明の泌尿器官用薬は、上記の剤形に応じて、第十五改正日本薬局方 製剤総則の記載等の公知の方法により適宜調製できる。この場合において、必要に応じて、当業界で通常用いられる製剤用添加物を1種以上用いてもよい。製剤用添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の泌尿器官用薬の投与方法は経口投与、非経口投与のいずれでもよいが、経口投与が好ましい。
【0046】
トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物は、後記実施例にて具体的に開示されているとおり、コリン作動薬の刺激に基づく膀胱内圧上昇を用量依存的に抑制する作用を有している。係る膀胱内圧上昇抑制作用により、膀胱内圧の上昇による不随意な排尿等の排尿の障害が改善されるため、排尿障害の予防及び/又は治療薬、好適には蓄尿障害の予防及び/又は治療薬、より好適には頻尿(器質的障害(膀胱炎、前立腺炎、膀胱結石、前立腺肥大症、膀胱腫瘍、神経因性膀胱など)に基づく頻尿;尿量の増大(内服利尿薬の服用によるものなど)による頻尿;加齢による頻尿;神経性頻尿など)の予防及び/又は治療薬、尿失禁(切迫性尿失禁;腹圧性尿失禁;溢流性尿失禁;機能性尿失禁;反射性尿失禁など)の予防及び/又は治療薬の有効成分等として利用できる。また、頻尿(排尿の回数が多い)及び/又は尿もれ(軽い尿もれを含む)の症状の緩和に用いられる医薬の有効成分等としても利用できる。
【実施例】
【0047】
以下に、試験例、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例や実施例に限定されるものではない。
【0048】
試験例1−1:シストメトリー試験(トケイソウ属の植物の抽出物単独での膀胱内圧上昇抑制作用の評価)
コリン作動薬(アセチルコリン)刺激に基づく膀胱内圧上昇に対するトケイソウ属の植物の抽出物の抑制作用を、非特許文献1を参考に以下の方法により評価した。

6〜10週齢のWistar系雄性ラット(日本エスエルシー(株)より購入)をウレタン(1.25g/kg 腹腔内投与)麻酔下、背位に固定した。気道確保及び薬物の静脈内投与のため、それぞれ気管及び大腿静脈にカニューレを挿入後、下腹部を切開し、尿管を結紮した。露出させた膀胱の頂部にポリエチレンチューブを挿入し、三方活栓を介してチューブにそれぞれインフュージョンポンプ及び圧トランスデューサーを接続した。試験終了まで持続的にインフュージョンポンプにより生理食塩水を3ml/hの量で注入し、圧トランスデューサーにより膀胱内圧を測定した。
上記手術後に排尿間隔等が安定した後、被験薬物又はコントロールとしての生理食塩水を静脈内投与し、その直後にアセチルコリンを30μg/kgの用量で静脈内投与した。アセチルコリン刺激による膀胱内圧上昇を、アセチルコリン投与に伴って生じる膀胱内圧の最大ピーク値(「最大膀胱内圧」)で評価した。さらに、コントロール群(生理食塩水投与群)、各被験薬物投与群における最大膀胱内圧の平均値から、以下に示す式に従い、各被験薬物の投与による膀胱内圧の低下の割合(「膀胱内圧低下率」)を算出した。
【0049】
膀胱内圧低下率(%)=[(Pc−Pt)/Pc]×100
(式中、Pcは、コントロール群の最大膀胱内圧の平均値を示し、
Ptは、各被験薬物投与群の最大膀胱内圧の平均値を示す。)

また、コントロール群の最大膀胱内圧の平均値を1とした場合の各被験薬物投与群の最大膀胱内圧の平均値を相対指数として表示した。
【0050】
被験薬物は、それぞれ以下の群構成に従い投与した。
1:トケイソウ属の植物の抽出物単独投与群
トケイソウ乾燥エキス−A(日本粉末薬品(株)製)を3mg/kg(原生薬換算量:21mg/kg)及び30mg/kg(原生薬換算量:210mg/kg)の用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
2:フラボキサート単独投与群
フラボキサート塩酸塩(和光純薬工業(株)製)を1mg/kgの用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
なお、被験薬物投与群、コントロール群それぞれ各群につき、8〜13匹のラットを使用した。

結果を表1に示す。なお、最大膀胱内圧は、平均値±標準誤差で表示した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示される試験結果より、アセチルコリン刺激による膀胱内圧上昇に対し、トケイソウ属の植物の抽出物が用量依存的に抑制作用を有することが明らかとなった。また、その低下率は、トケイソウ属の植物の抽出物21mg/kgで38.4%、210mg/kgで52.5%と大きく、頻尿・尿失禁治療剤として使用されているフラボキサート塩酸塩1mg/kg(23.2%)と比較しても遜色ないものであった。
以上の試験結果から、トケイソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上は、優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有することが明らかとなった。
【0053】
試験例1−2:シストメトリー試験(トケイソウ属の植物の抽出物とフラボキサートとの併用による膀胱内圧上昇抑制作用の増強の評価)

被験薬物をそれぞれ以下の群構成に従い投与したほかは試験例1−1と同様に試験を行い、トケイソウ属の植物の抽出物とフラボキサートとの併用による膀胱内圧上昇抑制作用の増強について評価した。

1:トケイソウ属の植物の抽出物単独投与群
トケイソウ乾燥エキス−Aを3mg/kg(原生薬換算量:21mg/kg)の用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
2:フラボキサート単独投与群
フラボキサート塩酸塩を1mg/kgの用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
3:トケイソウ属の植物の抽出物とフラボキサートの併用投与群
トケイソウ乾燥エキス−Aを3mg/kg(原生薬換算量:21mg/kg)の用量で、フラボキサート塩酸塩を1mg/kgの用量で、それぞれ生理食塩水に溶解させて同時に投与した。
なお、被験薬物投与群、コントロール群それぞれ各群につき、8〜13匹のラットを使用した。

結果を表2に示す。なお、最大膀胱内圧は、平均値±標準誤差で表示した。
【0054】
【表2】

【0055】
表2中の*は、p<0.05 vs コントロール(Studentのt検定)であることを示す。
また、バルジの方法による相乗効果の判定を行った結果、0.39(トケイソウ属の植物の抽出物21mg/kg(原生薬換算量)+フラボキサート塩酸塩1mg/kg)<0.62(トケイソウ属の植物の抽出物21mg/kg(原生薬換算量))×0.77(フラボキサート塩酸塩1mg/kg)、即ち0.39<0.62×0.77=0.48であり相乗効果が認められた。
【0056】
表2に示される試験結果より、トケイソウ属の植物の抽出物とフラボキサートとを併用投与した群においては、膀胱内圧低下率の顕著な増大が見られた。コントロールに対する最大膀胱内圧の低下の割合(相対指数)は、トケイソウ属の植物の抽出物単独投与群において0.62、フラボキサート単独投与群において0.77であり、その積(0.48)は両薬物の併用投与群の相対指数0.39よりも大きく、バルジの判定方法により明確な相乗効果が確認された。
以上の試験結果から、トケイソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとを併用することにより、膀胱内圧上昇抑制作用が相乗的に増強されることが明らかとなった。
【0057】
試験例2−1:シストメトリー試験(カノコソウ属の植物の抽出物単独での膀胱内圧上昇抑制作用の評価)

アセチルコリンの投与量を30μg/kg又は100μg/kgとし、被験薬物をそれぞれ以下の群構成に従い投与したほかは試験例1−1と同様に試験を行い、カノコソウ属の植物の抽出物単独での膀胱内圧上昇抑制作用について評価した。

1:カノコソウ属の植物の抽出物単独投与群
カノコソウエキス−T(日本粉末薬品(株)製)を10mg/kg(原生薬換算量:50mg/kg)の用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
2:フラボキサート単独投与群
フラボキサート塩酸塩を1mg/kgの用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
なお、被験薬物投与群、コントロール群それぞれ各群につき、5〜13匹のラットを使用した。

アセチルコリンの投与量が30μg/kgの場合の結果を表3に、アセチルコリンの投与量が100μg/kgの場合の結果を表4に示す。なお、最大膀胱内圧は、各群の平均値±標準誤差で表示した。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
表3及び表4に示される試験結果より、アセチルコリン刺激による膀胱内圧上昇に対し、カノコソウ属の植物の抽出物が抑制作用を有することが明らかとなった。特に、アセチルコリンの投与量が100μg/kgの場合においては、頻尿・尿失禁治療剤として使用されているフラボキサート塩酸塩1mg/kg(3.4%)と比較して優れた膀胱内圧低下率を示した。
以上の試験結果から、カノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上は、優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有することが明らかとなった。
【0061】
試験例2−2:シストメトリー試験(カノコソウ属の植物の抽出物とフラボキサートとの併用による膀胱内圧上昇抑制作用の増強の評価)
被験薬物をそれぞれ以下の群構成に従い投与したほかは試験例2−1と同様に試験を行い、カノコソウ属の植物の抽出物とフラボキサートとの併用による膀胱内圧上昇抑制作用の増強について評価した。

1:カノコソウ属の植物の抽出物単独投与群
カノコソウエキス−Tを10mg/kg(原生薬換算量:50mg/kg)の用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
2:フラボキサート単独投与群
フラボキサート塩酸塩を1mg/kgの用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
3:カノコソウ属の植物の抽出物とフラボキサートの併用投与群
カノコソウエキス−Tを10mg/kg(原生薬換算量:50mg/kg)の用量で、フラボキサート塩酸塩を1mg/kgの用量で、それぞれ生理食塩水に溶解させて同時に投与した。
なお、被験薬物投与群、コントロール群それぞれ各群につき、5〜13匹のラットを使用した。

アセチルコリンの投与量が30μg/kgの場合の結果を表5に、アセチルコリンの投与量が100μg/kgの場合の結果を表6に示す。なお、最大膀胱内圧は、各群の平均値±標準誤差で表示した。
【0062】
【表5】

【0063】
表5中の*は、p<0.05 vs コントロール(Studentのt検定)であることを示す。
バルジの方法による相乗効果の判定を行った結果、0.37(カノコソウ属の植物の抽出物50mg/kg(原生薬換算量)+フラボキサート塩酸塩1mg/kg)<0.89(カノコソウ属の植物の抽出物50mg/kg(原生薬換算量))×0.77(フラボキサート塩酸塩1mg/kg)、即ち0.37<0.89×0.77=0.69であり相乗効果が認められた。
【0064】
【表6】

【0065】
表6中の*は、p<0.05 vs コントロール(Studentのt検定)であることを示し、#は、
p<0.05 vs フラボキサート単独投与群(Studentのt検定)であることを示す。
バルジの方法による相乗効果の判定を行った結果、0.52(カノコソウ属の植物の抽出物50mg/kg(原生薬換算量)+フラボキサート塩酸塩1mg/kg)<0.84(カノコソウ属の植物の抽出物50mg/kg(原生薬換算量))×0.97(フラボキサート塩酸塩1mg/kg)、即ち0.52<0.84×0.97=0.81であり相乗効果が認められた。
【0066】
表5及び表6に示される試験結果より、カノコソウ属の植物の抽出物とフラボキサートとを併用投与した群においては、膀胱内圧低下率の顕著な増大が見られた。コントロールに対する最大膀胱内圧の低下の割合(相対指数)は、アセチルコリンの投与量が30μg/kgの場合、カノコソウ属の植物の抽出物単独投与群において0.89、フラボキサート単独投与群において0.77であり、その積(0.69)は両薬物の併用投与群の相対指数0.37よりも大きく、バルジの判定方法により明確な相乗効果が確認された。また、アセチルコリンの投与量が100μg/kgの場合、カノコソウ属の植物の抽出物単独投与群において0.84、フラボキサート単独投与群において0.97であり、その積(0.81)は両薬物の併用投与群の相対指数0.52よりも大きく、バルジの判定方法により明確な相乗効果が確認された。
以上の試験結果から、カノコソウ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上とフラボキサートとを併用することにより、膀胱内圧上昇抑制作用が相乗的に増強されることが明らかとなった。
【0067】
試験例3:シストメトリー試験(カギカズラ属の植物の抽出物の膀胱内圧上昇抑制作用の評価)

被験薬物をそれぞれ以下の群構成に従い投与したほかは試験例1−1と同様に試験を行い、カギカズラ属の植物の抽出物の膀胱内圧上昇抑制作用について評価した。

1:カギカズラ属の植物の抽出物投与群
チョウトウコウ乾燥エキス(日本粉末薬品(株)製)を10mg/kg(原生薬換算量:100mg/kg)及び30mg/kg(原生薬換算量:300mg/kg)の用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
2:フラボキサート単独投与群
フラボキサート塩酸塩を1mg/kgの用量で、生理食塩水に溶解させて投与した。
なお、被験薬物投与群、コントロール群それぞれ各群につき、4〜13匹のラットを使用した。

結果を表7に示す。なお、最大膀胱内圧は、各群の平均値±標準誤差で表示した。
【0068】
【表7】

【0069】
表7に示される試験結果より、アセチルコリン刺激による膀胱内圧上昇に対し、カギカズラ属の植物の抽出物が用量依存的に抑制作用を有することが明らかとなった。また、その低下率は、カギカズラ属の植物の抽出物100mg/kgで31.3%、300mg/kgで58.5%と大きく、頻尿・尿失禁治療剤として使用されているフラボキサート塩酸塩1mg/kg(23.2%)と比較しても遜色ないものであった。
以上の試験結果から、カギカズラ属の植物及びその抽出物よりなる群から選ばれる1種以上は、優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有することが明らかとなった。
【製造例1】
【0070】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
トケイソウ乾燥エキス−A(日本粉末薬品(株)製) 100mg(原生薬換算量700mg)
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
トウモロコシデンプン 180mg
結晶セルロース 503mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例2】
【0071】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
パッシフロラエキス(小城製薬(株)製) 100mg(原生薬換算量400mg)
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
トウモロコシデンプン 180mg
結晶セルロース 503mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例3】
【0072】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
トケイソウ乾燥エキス−A(日本粉末薬品(株)製) 100mg(原生薬換算量700mg)
フラボキサート塩酸塩(和光純薬工業(株)製) 600mg
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
結晶セルロース 83mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例4】
【0073】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
カノコソウエキス−T(日本粉末薬品(株)製) 240mg(原生薬換算量1200mg)
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
トウモロコシデンプン 190mg
結晶セルロース 503mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例5】
【0074】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
カノコソウエキス(小城製薬(株)製) 98mg(原生薬換算量700mg)
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 20mg
トウモロコシデンプン 180mg
結晶セルロース 503mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例6】
【0075】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
カノコソウエキス−T(日本粉末薬品(株)製) 240mg(原生薬換算量1200mg)
フラボキサート塩酸塩(和光純薬工業(株)製) 600mg
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
結晶セルロース 93mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例7】
【0076】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
チョウトウコウ乾燥エキス(日本粉末薬品(株)製) 45mg(原生薬換算量450mg)
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
トウモロコシデンプン 205mg
結晶セルロース 503mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例8】
【0077】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
チョウトウコウ乾燥エキス(小城製薬(株)製) 40mg(原生薬換算量500mg)
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
トウモロコシデンプン 180mg
結晶セルロース 503mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【製造例9】
【0078】
3錠(1日量)中に以下の成分を含有する経口投与用の錠剤を、常法により製造した。
チョウトウコウ乾燥エキス(日本粉末薬品(株)製) 45mg(原生薬換算量450mg)
フラボキサート塩酸塩(和光純薬工業(株)製) 600mg
カルボキシメチルセルロース 90mg
ヒドロキシメチルセルロース 18mg
結晶セルロース 78mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、優れた膀胱内圧上昇抑制作用を有し、排尿障害の予防及び/又は治療薬、特に蓄尿障害の予防及び/又は治療薬、頻尿の予防及び/又は治療薬、尿失禁の予防及び/又は治療薬として、さらには、頻尿(排尿の回数が多い)及び/又は尿もれ(軽い尿もれを含む)の症状の緩和のための医薬として用いられる泌尿器官用薬を提供でき、医薬品産業等において利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トケイソウ属の植物、カノコソウ属の植物及びカギカズラ属の植物並びにそれらの抽出物よりなる群から選ばれる1種以上を含有してなる泌尿器官用薬。
【請求項2】
泌尿器官用薬が、排尿障害の予防及び/又は治療薬である、請求項1に記載の泌尿器官用薬。
【請求項3】
排尿障害が、頻尿及び/又は尿失禁である、請求項2に記載の泌尿器官用薬。
【請求項4】
泌尿器官用薬が、頻尿及び/又は尿もれの症状の緩和に用いられるものである、請求項1又は3に記載の泌尿器官用薬。