説明

泡生成装置、定着装置及び画像形成装置

【課題】大径の泡の割合が少なく、且つ、均一性の高い泡状液を生成できる、従来よりも小型の泡生成装置を提供する。
【解決手段】気液混合部内の液体中に気体流路を介して気体吐出口から気体を吐出する気体吐出口が設けられる部材の表面が泡状液に対する親液性を有する。これにより、気体吐出口から気体を吐出すると定着液中に気泡が生成し始め、気泡が成長していき気泡の下部にくびれ部分が生成されるが気体吐出口が設けられる部材の表面が泡状液に対する親液性を有することで気泡の表面と気体吐出口が設けられる部材の表面との接触角が小さくなる。このため、気泡のくびれ部分が伸びず、気泡が大きく成長する前にくびれ部分がきれてしまい、泡径の小さい泡状液を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡生成装置、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。特に、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置においては、記録媒体上のトナーを加熱して溶融させ、溶融したトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式は、高い定着速度及び高い定着画像品質等を提供することができるため、好適に用いられている。
【0003】
しかし、このような電子写真方式の画像形成装置における消費電力の約半分以上は、熱定着方式においてトナーを加熱することに消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の定着装置が望まれている。即ち、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させること、又はトナーを加熱することを必要としない定着方法が望まれている。特に、トナーを全く加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方法が低消費電力の点で理想的である。
【0004】
このような非加熱定着方法としては、例えばトナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶な有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着剤を、未定着のトナーが所定位置に配設された被定着物の表面から噴霧または滴下する。そして、トナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させるトナーの湿式定着方法がある。
【0005】
この湿式定着方法の一例として特許文献1には、定着液が塗られた塗布ローラを未定着トナーが乗った記録媒体に接触させる方法が提案されている。しかし、特許文献1の方法では、定着液を記録媒体に微量付与するために塗布ローラ上の定着液層の厚みが未定着トナー層よりも薄い場合がある。この場合、塗布ローラが記録媒体から分離する位置で、塗布ローラ表面の定着液の液膜によって生じる表面張力で未定着トナー粒子が引っ張られてしまう。そのため、塗布ローラの表面にトナー粒子がオフセットし、記録媒体上の画像が大幅に乱れてしまう。
【0006】
逆に、塗布ローラ上の定着液層の厚みを未定着トナー層よりも十分厚くする。この場合、塗布ローラが記録媒体から分離する位置で、液量が多いため塗布ローラの表面の液膜による表面張力が直接トナー粒子に作用しにくくなりローラ側にトナーがオフセットしなくなる。しかし、紙面に多量の定着液が塗布されるため、トナー粒子が過剰な定着液により記録媒体上で流され画質劣化を生じたり、乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりしてしまう。また、紙に著しい残液感(紙を手で触れたときの湿った感触)が発生する。更に、定着液が水を含有する場合、紙等のセルロースを含有する媒体への塗布量が多い場合、紙等の媒体が著しくカールし、画像形成装置などにおける装置内の紙等の媒体搬送時に紙ジャム発生の恐れがある。よって、このような定着液でローラ塗布を行う構成では、定着応答性向上や残液感低減やカール防止ための紙上のトナー層への定着液微量塗布と定着ローラへのトナーオフセット防止を両立することが極めて難しい。
【0007】
定着液の微量塗布とトナーオフセットの抑制とを両立することができる定着方式が特許文献2及び特許文献3に提案されている。これらの特許文献には液状定着液の液中に気泡が分散した泡状定着液を生成し、この泡状定着液を定着液付与対象である記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。液状定着液を泡状とすることにより定着液の密度(定着液の重量をその体積で割った値、以下嵩密度と称す)を下げることができるため、従来よりも少量の定着液で塗布部材表面上の定着液の膜厚を厚くすることができる。よって、微量塗布であっても、塗布部材表面上の定着液による表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、定着液の嵩密度を低くすることで、所望の膜厚を形成するために要する定着液を少量とすることができるため、定着後の記録媒体上の残液感を抑制することができる。さらに、泡状定着液は液状定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。
【0008】
上記特許文献2及び上記特許文献3に記載の定着装置のように、泡状定着液をトナー画像に塗布する構成で良好な定着性を得るためには、泡状定着液の気泡の径がある程度小径であることが求められる。微小な気泡を含んだ泡状定着液を定着液付与対象上のトナー像に塗布することで、良好な定着性を得ることができる。しかし、通常の液状定着液から微小な気泡を含んだ泡状定着液を生成する場合、気泡の小径化が困難であり、通常の液状定着液を起泡させて発泡させる気泡工程で、最初から微小な気泡を生成するためには時間がかかる。このため、上記特許文献2に記載の定着装置のように、液状定着液にせん断を付与して、あるいは攪拌して、生成された泡状定着液をそのまま塗布ローラに供給して定着に用いている。このような構成では定着に適した微小な気泡を含んだ泡状定着液を生成するために時間がかかるという問題があった。
【0009】
このような問題に対して、上記特許文献3に記載の定着装置が備える定着液泡状化装置は、大きな泡径の泡状定着液を生成する大径泡生成部と、大径泡生成部で生成された泡状定着液を分泡して微小な泡径の泡状定着液を生成する小径泡生成部とを有する。この定着液泡状化装置では、大径泡生成部で通常の液状定着液と空気とを微小孔シートを通過させることで、液状定着液を発泡させ、所望の泡径よりも大きい泡径の泡状定着液を生成する。その後、大径泡生成部で生成された大きい泡径の泡状定着液を小径泡生成部に搬送する。小径泡生成部は内部に軸回動可能な二重構造の各回転体を備える装置である。そして、この小径泡生成部では、軸回動する内側円筒の外面と外側円筒の内面との隙間で形成される流路に大きな泡径の泡状定着液を通過させて大きな泡径の泡状定着液にせん断力を付与することで泡の小径化を行う。このように、大きな気泡を含む泡状定着液を生成した後に、この泡状定着液にせん断力を加えることで大きな泡を分泡して微小な泡径の泡状定着液を得る。これにより、通常の液状定着液から起泡させていきなり微小な気泡を含有する泡状定着液を生成する方法に比べ、素早く所望の大きさの微小な気泡を含有した泡状定着液を生成できる。
【0010】
しかし、上記特許文献3の定着装置が備える定着液泡状化装置では、装置が大型になるという問題があった。つまり、上記特許文献3の定着液泡状化装置は、大径化を行う大径泡生成部と小径化を行う小径泡生成部とを別々に設けており、大径泡生成部から小径泡生成部まで大きな泡径の泡状定着液をチューブを通して搬送する。このとき、泡状定着液は通常の液体と比べて流体抵抗が大きく、ポンプで圧力を掛けて泡状定着液を圧送しようとすると大きな圧力が必要となる。そして、泡状定着液を搬送する搬送経路を形成する配管が長くなるほど泡状定着液を圧送するときに要する圧力が大きくなる。このため、定着液泡状化装置内で定着液を搬送するために出力の大きなポンプが必要となり、ポンプは出力が大きいものほど大型化する傾向があるため、出力の大きなポンプを要する定着液泡状化装置は大型になる。また、上記特許文献3の定着装置が備える定着液泡状化装置では、大きな泡径の泡状定着液に回転体によってせん断力を付与して小径化を行う。このため、回転体を備える機構と回転体に駆動を伝達する駆動源とが必要となり、装置の大型に繋がる。そして、定着液泡状化装置が大型になると、それを備える定着装置や画像形成装置の大型化に繋がるため、泡状定着装置としては、所望の小径な泡を生成でき、小型であることが望まれる。
【0011】
本出願人は、特願2010−9689号(以下先願という)において、一般的に二種類の液体の混合や反応に使用されるマイクロミキサ(あるいはマイクロリアクタとも呼ぶ)と同様の構成を備えた装置を、液状定着液を泡状とする泡生成装置として用いる定着装置を提案している。このマイクロミキサは、液体の混合や反応というプロセスを数百ミクロン以下の微細な流路や空間で行うことにより、その効率を向上させるものである。このようなマイクロミキサは、一般に二種類の液体をそれぞれ供給する流路を備え、それぞれの流路に二種類の液体を供給して混合や反応を行い、結果物を排出口から得る構成である。上記先願に記載の泡生成装置では、定着液供給ポンプにより供給された液状定着液を流す複数の微細な液体流路と、エアポンプにより供給された空気を流す複数の微細な気体流路と、供給された液状定着液と空気とを混合して泡状定着液を生成する気液混合部とを備えている。気液混合部は長尺な微細なスリット状であり、そのスリット状の一端には複数の微細な液体流路に連通する複数の液体吐出口と、複数の微細な気体流路に連通する複数の気体吐出口とが配置されている。また、スリット状の他端には開口の排出口が設けられ、その排出口から、生成された泡状定着液が外部に吐出される。
【0012】
上記先願に記載の泡生成装置で生成された泡状定着液は、上記特許文献3に記載の小径泡生成部で得られる泡状定着液よりも泡径が十分に小さい泡状定着液である。この泡状定着液では、泡状定着液をトナー画像に塗布する構成で良好な定着性を得ることができる程度に微小な気泡を含んだ泡状定着液であることが確認された。また、上記先願に記載の泡生成装置では、上記特許文献3の定着装置が備える定着液泡状化装置と同等以上に素早く微小な気泡を含有した泡状定着液を生成できることが確認された。更に、上記先願に記載の泡生成装置で用いるエアポンプや定着液供給ポンプとして用いたポンプの出力は、上記特許文献3に記載の定着液泡状化装置が備えるポンプの出力よりも十分に小さいものであることが確認された。そして、出力の小さいポンプを用いることができるため、ポンプの小型化を図ることができる。更には、回転体によって泡状定着液にせん断力を付与して小径化を行う装置が不要であるため、せん断力を付与する回転体を備える機構や回転体に駆動を伝達する駆動源も不要となる。このように、大径化を行う大径泡生成部と小径化を行う小径泡生成部とをそれぞれ設ける必要がなく、従来よりもポンプの小型化を図ることができる。また、せん断力を付与する回転体を備える機構や回転体に駆動を伝達する駆動源も不要となるため、従来の定着装置が備える泡生成装置よりも小型化を図ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記先願に記載の泡生成装置で生成される泡状液の泡径が広い分布となっていたという問題があった。これは以下の理由による。上記先願に記載の泡生成装置は、エアポンプにより供給された空気を流す複数の微細な気体流路にエアポンプにより気体を供給し、気液混合部に対して並んで配置された複数の気体吐出口より吐出するものである。このような構成では、各気体流路の加工精度のバラツキにより各気体流路の形状や寸法を同じにすることが難しいことから、エアポンプによって各気体流路に供給され各気体吐出口から吐出する各気体吐出量は互いに異なってしまう。このため、気体吐出口毎に形成される泡の大きさが不均一となり、生成される泡状液が広い泡径分布を有するものとなってしまう。特に、生成された泡の中に泡径の大きな泡があると、未定着トナー画像に塗布する時に破泡して定着液を均一に供給することができず、画像抜けなどが発生して定着画像品質が低下するという問題がある。流路の加工精度には限界があるため、簡単な構成で泡状液の小径化ができ泡状液中に含まれる大径の泡の割合が少なく均一性の高い泡状液を生成することが望まれる。
【0014】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、簡単な構成で泡の小径化を行うことができ、大径の泡の割合を少なくして均一性の高い泡状液を生成できる、泡生成装置、定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、液体と気体とを混合して泡状液を生成する気液混合部と、液体供給手段により供給される液体を前記気液混合部に流す液体流路と、気体供給手段により供給される気体を流す気体流路と、前記気体混合部に設けられ前記液体流路を介した液体を前記気体混合部内に供給する液体供給口と、前記気体混合部に設けられ前記気体流路を介した気体を前記気体混合部内の液体に供給する前記気体吐出口と、を備えた泡生成装置において、前記気体吐出口が設けられる部材における前記気液混合部側の表面が、泡状液に対する親液性を有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1記載の泡生成装置において、前記液体は少なくとも樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する液状定着液であることを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、該定着液泡状化手段に前記泡状定着液を供給する定着液供給手段と、前記定着液泡状化手段に気体を供給する気体供給手段と、前記樹脂微粒子を担持する定着液付与対象の表面に前記泡状定着液を付与する定着液付与手段と、を有し、前記泡状定着液を付与することで軟化した前記樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、前記定着液泡状化手段として、請求項1又は2に記載の泡生成装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面を定着液付与対象の表面として定着液を付与し、記録媒体上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置において、前記定着手段として、請求項3に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
【0016】
本発明においては、気液混合部には液体流路を介して液体供給口から液体が供給される。気液混合部内の液体中に気体流路を介して気体吐出口から気体を吐出して泡状液を生成する。そして、この気体吐出口が設けられる部材における気液混合部側の表面が泡状液に対する親液性を有している。これにより、気体吐出口から気体を吐出すると定着液中に気泡が生成し始め、気泡が成長していき気泡の下部にくびれ部分が生成される。気体吐出口が設けられる部材における気液混合部側の表面が泡状液に対する親液性を有することで、この気泡の表面と気体吐出口が設けられる部材の気液混合部側の表面との接触角が小さくなる。このため、気体吐出口が設けられる部材の表面に、気泡の表面が引きつけられ、気泡のくびれ部分が伸びずに気泡が大きく成長することができない。そして、気泡が大きく成長する前にくびれ部分がきれてしまい、泡径の小さい泡状液が生成される。よって、簡単な構成で泡状液の径を小さくすることができ、大きな径の泡状液を減らし、均一性の高い泡状液を生成できる。
【発明の効果】
【0017】
以上本発明によれば、簡単な構成で泡の小径化を行うことができ、均一性の高い泡状液を生成できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。
【図3】泡生成手段の構成を示す概略構成図である。
【図4】泡生成可視化装置の構成を示す透視斜視図である。
【図5】流路形成部材の気液混合部側の表面に撥液性加工を施したときの泡生成の様子を示す概略図である。
【図6】流路形成部材の気液混合部側の表面に撥液性加工を施したときの泡生成の様子を示す概略図である。
【図7】流路形成部材の気液混合部側の表面に親液性加工を施したときの泡生成の様子を示す概略図である。
【図8】流路形成部材の気液混合部側の表面に親液性加工を施したときの泡生成の様子を示す概略図である。
【図9】各接触角と平均泡径との関係を示す特性図である。
【図10】各接触角と定着性能(ID値)との関係を示す特性図である。
【図11】平均泡径と定着性能(ID値)との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態について説明する。
図1は本実施形態の定着装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略構成図である。同図に示す画像形成装置は複写機又はプリンタ、それらの機能の複合機であってもよい。図1の(a)はカラー電子写真のタンデム方式の画像形成装置全体の概略構成図であり、図1の(b)は図1の(a)の本実施形態の定着装置を備えた画像形成装置の1つの画像形成ユニットの構成を示す概略構成図である。図1の(a),(b)に示す画像形成装置100はトナー像担持体として中間転写ベルト101を有する。この中間転写ベルト101は、3つの支持ローラ102〜104に張架されており、図中の矢印Aの方向に回転する。この中間転写ベルト101に対しては、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像形成ユニット105〜108が配列されている。これら画像形成ユニットの上方には、図示していない露光装置が配置されている。例えば、画像形成装置が複写機である場合には、スキャナで原稿の画像情報を読み込み、この画像情報に応じて、各感光体ドラム上に静電潜像を書き込むための各露光L1〜L4が露光装置により照射される。中間転写ベルト101を挟んで中間転写ベルト101の支持ローラ104に対向する位置には、二次転写装置109が設けられている。二次転写装置109は、2つの支持ローラ110,111の間に張架された二次転写ベルト112で構成されている。なお、二次転写装置109としては、転写ベルト以外に転写ローラを用いてもよい。また、中間転写ベルト101を挟んで中間転写ベルト101の支持ローラ102に対向する位置には、ベルトクリーニング装置113が配置されている。ベルトクリーニング装置113は、中間転写ベルト101上に残留するトナーを除去するために配置されている。
【0020】
また、図1の(b)に示す画像形成ユニットについて説明すると、画像形成ユニット105〜108には、感光体ドラム116の周辺に、帯電装置117、露光装置(図示せず)から照射された画像信号に応じたレーザ光L1〜L4、現像装置118、クリーニング装置119及び除電装置120が配置されている。また、中間転写ベルト101を介して、感光体ドラム116に対向する位置に、一次転写装置121が設けられている。また、帯電装置117は、帯電ローラを採用した接触帯電方式の帯電装置である。帯電装置117は、帯電ローラを感光体ドラム116に接触させて、感光体ドラム116に電圧を印加することにより、感光体ドラム116の表面を一様に帯電する。この帯電装置117としては、非接触のスコロトロン等を採用した非接触帯電方式の帯電装置を採用することもできる。また、現像装置118は、現像剤中のトナーを感光体ドラム116上の静電潜像に付着させ、静電潜像を可視化させる。ここで、各色に対応するトナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなり、これらの樹脂材料は本実施形態における泡状定着液により溶解又は膨潤する材料である。
【0021】
更に、現像装置118は、図示しない攪拌部及び現像部を有し、現像に使用されなかった現像剤は、攪拌部に戻され、再利用される。攪拌部におけるトナーの濃度は、トナー濃度センサによって検出され、トナーの濃度が、一定であるように制御されている。更に、一次転写装置121は、感光体ドラム116上で可視化されたトナーを中間転写ベルト101に転写する。ここでは、一次転写装置121としては、転写ローラを採用しており、転写ローラを、中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム116に押し当てている。一次転写装置121としては、導電性ブラシ、非接触のコロナチャージャー等を採用することもできる。また、クリーニング装置119は、感光体ドラム116上の不要なトナーを除去する。クリーニング装置119としては、感光体ドラム116に押し当てられる先端を備えたブレードを用いることができる。ここで、クリーニング装置119によって回収されたトナーは、図示しない回収スクリュー及びトナーリサイクル装置によって、現像装置118に回収され、再利用される。更に、除電装置120は、ランプで構成されており、光を照射して感光体ドラム116の表面電位を初期化する。
【0022】
そして、記録媒体としての記録紙114は、一対の給紙ローラ115で二次転写部へ導かれ、トナー像が記録紙114に転写される。その際に、二次転写ベルト112を中間転写ベルト101に押し当てることによって、トナー像の転写を行う。トナー像が転写された記録紙114は、二次転写ベルト112によって本実施形態における定着装置1に搬送される。本実施形態の定着装置1において、記録紙114に転写された未定着のトナー像は、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる軟化剤を含有した液状定着液から生成された泡状定着液によって記録紙104に定着される。
【0023】
図2は本実施形態に係る定着装置の構成を示す概略構成図である。同図に示す本実施形態の定着装置1は、主に、泡状定着液生成装置10と、泡状定着液塗布装置20とを含んで構成されている。そして、泡状定着液生成装置10は、樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで樹脂を含有する微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を収納する液状定着液容器11と、液状定着液を後述する泡生成手段に液圧送用チューブ12を介して圧送するためのポンプ等の液供給手段13と、フィルタ14を通した空気を取り込んで気体圧送用チューブ15を介して圧送するためのポンプ等の気体供給手段16と、圧送されて来た液体定着液を、気体供給手段16によって圧送されてくる空気と混合して泡状定着液を生成する泡生成手段17とを含んで構成されている。また、泡状定着液塗布装置20は、所定の膜厚の泡状定着液を後述する加圧ローラ22とのニップ部領域において記録媒体上の未定着トナーに塗布する塗布ローラ21と、搬送されてくる記録媒体を挟持して塗布ローラ21と対向して設置され、塗布ローラ21と共に記録媒体を加圧する加圧ローラ22とを含んで構成されている。
【0024】
図3は泡を生成する泡生成手段の構成を示す分解斜視図である。同図において、泡生成手段である泡生成デバイス30は、一般にはマイクロミキサとも呼称され、主として、ベース部材31、流路板32及び吐出部材33の3つの部材を含んで構成されている。ベース部材31の底面には液室31−1に定着液を供給する定着液供給口31−2と、気室31−3に空気を供給する空気供給口31−4とが形成されている。また、ベース部材31の上面には、流路板32側に定着液を供給する定着液吐出口31−5と、流路板32側に空気を供給する空気吐出口31−6とが形成されている。流路板32には、一定の幅を持つ流路32−1が流路形成部材32−2に一定のピッチで形成されており、流路板32の中央上部に配置される吐出部材33に形成されたスリット内部において、定着液と空気が混合されて発泡する。このスリット33−1を通して生成された泡が吐出され、図示しない塗布ローラに塗布される。このように塗布ローラに塗布する直前で泡を生成するので、泡の圧送距離を短くでき、大容量のポンプが必要なくなる。また、極めてわずかな容積での泡の生成が可能になるので、一度生成したのち経時劣化した泡を系外排出する際にも廃棄する泡の量はわずかで済む。塗布ローラに塗布された泡状定着液は、記録媒体上の未定着トナーに加圧ローラのニップ部分で接触し、加圧ローラで加えられた圧力により泡状の定着液がトナー層に浸透していく。浸透した定着液はトナーの少なくとも一部を溶解又は膨潤させて記録媒体とトナーを定着させる。
【0025】
次に、スリット内部における泡生成の様子について概説する。スリット内部における泡生成の様子を観察するために、図4に示す泡生成可視化装置を準備した。泡生成可視化装置40は図3に示す泡生成デバイス30と同様の構成であるが、吐出部材41だけが図3の吐出部材33と一部異なり、図4の矢印の方向からスリット内部を観察できるように部材の一部がガラスになっている。スリット内部の様子を顕微鏡を通して高速度カメラで記録することによって、泡生成の様子を観察できる。SUS製の流路が形成される流路形成部材の表面にはフッ素コーティング剤を塗布した。この撥液性の流路と、光触媒を利用したコーティング剤を流路形成部材の表面に塗布した親液性の流路とを準備し、泡生成の様子を比較した。模式的な観察の様子を図5〜図8に示す。
【0026】
流路形成部材の気液混合部側の表面に撥液性加工を施したときの泡生成の様子を示す図5及び図6からわかるように、定着液が複数の定着液用流路を介して吐出部材内の気液混合部に供給される。気液混合部の内部が定着液で満たされ、空気用流路を介して空気が気液混合部に供給されると気泡が発生する。気泡内に空気が更に供給され気泡は徐々に大きくなる。ここで、流路付近のくびれが接触角θに相当する。撥水性の流路ではくびれ部分が伸び、気泡が大きく成長してからくびれ部分が切れる。このため、泡径が大きい泡状定着液が生成されることになる。一方、流路形成部材の気液混合部側の表面に親液性加工を施したときの泡生成の様子を示す図7及び図8からわかるように、定着液が複数の定着液用流路を介して吐出部材内の気液混合部に供給される。気液混合部の内部が定着液で満たされ、空気用流路を介して空気が気液混合部に供給されると気泡が発生する。気泡内に空気が更に供給され気泡は徐々に大きくなる。流路付近のくびれが接触角θに相当するが、この接触角θは上記接触角θより小さい。撥水性の流路ではくびれ部分が伸びず、気泡が大きく成長する前にくびれ部分がきれてしまう。結果として泡が小さくなることがわかった。泡を小径化するには親水性の流路が有効であることがわかった。なお、本実施形態では、流路形成部材の表面に撥水性を出すために樹脂層を後付け塗装したものであり、またはフッ素樹脂コーティング等であってもよく、それらの組み合わせでもよい。
【0027】
ここで、流路表面と定着液とのなす接触角が異なる流路形成部材を備える流路板を5種類用意して、それぞれの流路板で泡を生成し、そのときの平均泡径を測定した。各接触角と平均泡径との関係を図9に示す。同図からわかるように、接触角が小さくなると平均泡径は小さくなる。また、接触角が異なる流路形成部材を備える流路板で生成した泡を用いて画像を定着し、その品質を評価した。接触角と定着性能(ID値)との関係を図10に、平均泡径と定着性能(ID値)との関係を図11に、それぞれ示す。図10からわかるように、接触角が小さくなると定着性能(ID値)が向上する。また、平均泡径が小さくなると定着性能(ID値)も向上する。このように、定着性能は図11に示すように平均泡径に依存する。つまり、図11において平均泡径が100[μm]以下になると十分な定着性能が得られることがわかる。これは、泡径が大きいとニップ内で破泡しやすくなり、定着液がトナー層に均等に供給されなくなるためだと考えられる。トナー層/紙界面での結合、あるいはトナー同士の結合が不十分のため、画像がオフセットし、定着性能が劣化すると推測される。
【0028】
次に、本実施形態の定着装置で用いられる定着液組成について説明する。本実施形態の定着装置では、少なくとも軟化剤と起泡剤とを含有する液状定着液を、液状から液中に気泡を分散させて泡を多く含んだ泡状定着液を用いて上述のように定着を行っている。
【0029】
先ず、軟化剤について説明する。
軟化剤は、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる機能を有する。
軟化剤としては、エステル化合物であることが好ましい。エステル化合物は、トナー等の樹脂微粒子に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させる溶解性または膨潤性に優れている。上記エステル化合物の中でも、脂肪族エステル、炭酸エステルが、樹脂の軟化能力が優れている点で特に好ましい。また、後述する起泡剤としてのアニオン系界面活性剤による起泡性を阻害しない点からも好ましい。
【0030】
また、記録媒体に対する樹脂微粒子としてのトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
【0031】
オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数〔10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率)〕を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
【0032】
上記脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。上記脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1[秒]以内で溶解または膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解または膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0033】
よって、定着液としては、上記飽和脂肪族エステルがR1COOR2の一般式で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基を示しており、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。定着液としては、上記飽和脂肪族エステルがR1COOR2の一般式で表される化合物を含むものを用いることにより、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、上記一般式R1COOR2で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0034】
上記化合物を含む上記飽和脂肪族エステルである脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えばラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、などが挙げられる。上記化合物を含むこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについて、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解またはマイクロエマルジョンの形態とする。
【0035】
また、定着液としては、上記脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含むものを用いることが望ましい。上記脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解または膨潤させることができる。例えば、60[ppm]程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1[秒]以内であることが好ましい。上記脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1[秒]以内にすることが可能となる。更に、より少量の軟化剤を添加することによって、トナーに含まれる樹脂を溶解または膨潤させることができるため、定着液に含まれる軟化剤の含有量を低減することができる。
【0036】
よって、定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸エステルがR3(COOR4)の一般式で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基を示しており、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基を示している。R3及びR4の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸エステルがR3(COOR4)の一般式で表される化合物を含むものを用いることにより、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、上記一般式R3(COOR4)で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0037】
上記化合物を含む上記脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えばコハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記化合物を含むこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解またはマイクロエマルジョンの形態とする。また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
【0038】
更に、本実施形態における定着液において、上記脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含むことが望ましい。上記脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0039】
定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルがR5(COOR6−O−R7)の一般式で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基を示しており、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基を示し、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を示している。R5、R6及びR7の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。定着液としては、上記脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルがR5(COOR6−O−R7)の一般式で表される化合物を含むものを用いることにより、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性または膨潤性を向上させることができる。また、上記一般式R5(COOR6−O−R7)で表される化合物の臭気指数は、10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0040】
ところで、泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、媒体は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても、本発明は適用できる。
【0041】
上記の樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本実施形態の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。媒体のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、例えば20[℃]の室温における水に対する溶解度が、0.1重量%以下である性質を意味する。
【0042】
また、泡状となった定着液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20[mN/m]程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30[mN/m]であると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30[mN/m]であることが好ましい。
【0043】
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30[mN/m]とすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0044】
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。なお、定着中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。いずれにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
【0045】
また、トナーの定着装置は、本実施形態における定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を有してもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0046】
次に、起泡剤について説明する。
上述のように定着液は軟化剤を含有するが、一般的に軟化剤は消泡作用が強い。このため、本実施形態の定着装置のように、液状の定着液を泡状定着液として用いる場合、定着液中の軟化剤の濃度が高いほど、定着液の起泡性及び泡沫安定性が悪くなり、起泡し難くなったり、泡状定着液が破泡し易くなったりするおそれがある。起泡し難いと嵩密度の低いの泡状定着液を得ることができず、所望の嵩密度の泡状定着液を得たとしても、泡状定着液が破泡し易いと定着ニップで完全に破泡してしまい液状定着液を塗布する構成と同様の問題が生じる。
【0047】
また、起泡剤としては、アニオン系界面活性剤が優れた起泡性と泡沫安定性とを実現することができ、起泡剤として優れている。アニオン系界面活性剤のなかでも、脂肪酸塩は、最も泡沫安定性に優れ、定着液の起泡剤として最も適する。ここで、泡沫安定性とは、泡状となった定着液が液状となり難い性質をいう。本実施形態の定着装置で未定着トナーに付与する泡状定着液としては、泡の状態で1分間放置しても消泡せず、泡の状態を保てる程度の泡沫安定性を有することが望ましい。
【0048】
本発明者らは、定着液中の軟化剤濃度を高めたときの起泡性及び泡沫安定性の劣化問題を解決するため、アニオン系界面活性剤の種類や濃度を因子として多種の試作を行った。また、非特許文献1にも記載されている「スーパーファット」と呼称される技術、つまり固形洗浄剤(石鹸)に含有されている遊離脂肪酸に着目して試作を行った。ここで、スーパーファットと呼称される技術について概説すると、酸化されにくい遊離脂肪酸を少量加え、過剰油脂分を増やす方法であり、ケン化されない油脂を少量分残すことによって、例えば保湿作用を高めるなどの効果があるとされている。上記非特許文献1には、石鹸水溶系に極少量の脂肪酸を添加すると、起泡性能が向上する上、泡質が一層クリーミィになることが知られており、スーパーファットソープと呼ばれていると記載されている。このスーパーファットと同様に軟化剤を有する定着液に極少量の脂肪酸を添加して泡化しようとしたが起泡性及び泡沫安定性のいずれも悪かった。
【0049】
これに対して、本発明者らは、起泡剤として炭素数12から18の脂肪酸塩を用い、更に炭素数12から18の脂肪酸を定着液中に含有することにより、軟化剤の濃度が高くなっても、定着液の起泡性が劣化しない泡状定着液を提供できることを見出した。軟化剤を含有した定着液において、単に水を起泡する場合に比較して、脂肪酸塩の炭素数としては、12から18が起泡性に優れている。具体的には、ラウリン酸塩(炭素数12)、ミリスチン酸塩(炭素数14)、パルミチン酸塩(炭素数16、)、ステアリン酸塩(炭素数18)が適する。また、ペンタデシル酸(炭素数15)、マルガリン酸(炭素数17)なども適する。
【0050】
ここで、脂肪酸と軟化剤との作用について説明すると、軟化剤はエステル基を化学構造中に有しており、脂肪酸はカルボニル基を化学構造中に有している。この点から、軟化剤のエステル基と脂肪酸のカルボニル基が定着液の系内で、電気的な作用を示し、またそれが分子間の結合作用を生じさせ、定着液の特性として起泡性及び泡沫安定性を向上させている。
【0051】
また、炭素数12から18の範囲においても、炭素数が少ないほうが起泡性に優れているが泡沫安定性が悪く、炭素数が多いほうが起泡性にあまりよくないが泡沫安定性に極めて優れている。このため、定着液中には、単独の脂肪酸塩を含有させても良いが、炭素数12から18の脂肪酸塩を混合して含有させる方がさらに優れている。混合比率としては、ミリスチン酸塩(炭素数14)を最も多く含み、ラウリン酸塩(炭素数12)、ステアリン酸塩の割合を低くすることが望ましい。より具体的な脂肪酸塩の比率としては、ラウリン酸塩:ミリスチン酸塩:パルミチン酸塩:ステアリン酸塩の重量比で、0:6:3:1、1:5:3:1、1:4:4:1などが適する。
【0052】
ところで、定着液中に起泡剤である脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有することで軟化剤の濃度が高くなっても起泡性及び泡沫安定性を維持することができる。軟化剤の濃度として、10[wt%]未満では、脂肪酸を含有しなくても起泡性は問題ない。しかし、軟化剤の濃度が10[wt%]以上、特に軟化剤の濃度が30[wt%]以上になると、脂肪酸塩だけでは、ほとんど起泡しなくなり起泡性が悪くなる。このような軟化剤の濃度が30[wt%]となる定着液において、脂肪酸塩と同じ炭素数の脂肪酸を含有させると、起泡性を維持できる。
【0053】
但し、脂肪酸の含有量が多くなりすぎると、起泡剤である脂肪酸塩の比率が下がり、起泡性が再び悪くなる。そこで、脂肪酸塩のモル数を、脂肪酸のモル数と同じに、またはは大きくするほうがよい。あるいは、脂肪酸と脂肪酸塩の比率を、5:5から1:9の範囲とした場合起泡性が優れている。
【0054】
なお、同じ炭素数の脂肪酸と脂肪酸塩の組合せだけでなく、例えば、脂肪酸塩がミリスチン酸アミンで、脂肪酸がステアリン酸の組合せや脂肪酸塩がパルミチン酸カリウムで脂肪酸がステアリン酸のような炭素数が12から18の範囲で異なる組合せであってもよい。要は、炭素数12から18の範囲の脂肪酸を定着液に含有することで、高濃度の軟化剤を含有しても、起泡性が悪くならず、泡沫安定性に優れ、嵩密度の極めて低い泡化を可能とする。
【0055】
また、他のアニオン系界面活性剤、例えばアルキルエーテル硫酸塩(AES)を起泡剤として、炭素数12から18の脂肪酸を含有した定着液であっても、軟化剤濃度増加による起泡性が悪くなるのを防止する効果があることがわかった。但し、最も組合せとして優れているのは脂肪酸塩との組合せである。
【0056】
更に、脂肪酸塩としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アミンが適している。更に、最も適している脂肪酸アミンは、具体的には、水を加熱し、脂肪酸を添加し、その後トリエタノールアミンを添加して、一定時間撹拌しながら加熱してケン化反応させることで作製することができる。このとき、脂肪酸とトリエタノールアミンとのモル比を、1:0.5から1:0.9の範囲と脂肪酸比率を高くすることで、ケン化後、未反応の脂肪酸が残留し、定着液中に脂肪酸と脂肪酸アミンを混合させることができる。同じことは、ナトリウム塩やカリウム塩でも可能である。
【0057】
ところで、定着液中の軟化剤濃度が高くなると希釈溶媒である水に軟化剤が溶解しにくくなる。そこで、検討した結果、多価のアルコール類、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、グリセリンなどを定着液中に含有させることで、軟化剤が高濃度でも溶解し、かつ脂肪酸塩による起泡性を劣化させず、むしろ起泡性が向上することがわかった。また、多価のアルコール類の含有量は、1[wt%]から30[wt%]の範囲が適当である。30[wt%]より多い含有量では、起泡性がむしろ劣化するため適さない。
【0058】
次に、定着液の具体的な処方の例を以下に示す。
希釈溶媒:イオン交換水 53wt%
軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES)
10wt%
炭酸プロピレン 20wt%
増粘剤:プロピレングリコール 10wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM)
0.5wt%
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン(花王 レオドールTW−S120V)
1wt%
ポリエチレングリコールモノステアレート(花王 エマノーン3199)
1wt%
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、図6に示すように、気液混合部内の液体中に気体流路を介して気体吐出口から気体を吐出する気体吐出口が設けられる部材の表面が泡状液に対する親液性を有する。これにより、気体吐出口から気体を吐出すると定着液中に気泡が生成し始め、気泡が成長していき気泡の下部にくびれ部分が生成される。気体吐出口が設けられる部材の表面が泡状液に対する親液性を有することで、この気泡の表面と気体吐出口が設けられる部材の表面との接触角θが小さくなる。このため、気泡のくびれ部分が伸びず、気泡が大きく成長する前にくびれ部分がきれてしまい、泡径の小さい泡状液を生成することができる。
【0060】
また、実施形態によれば、図3に示すように、少なくとも樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する液状定着液と空気とを混合して、小径の泡状定着液を安定して生成することができる。
【0061】
更に、実施形態によれば、図2に示すように、樹脂微粒子からなるトナーの樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡化手段である定着液泡状化装置10と、定着液泡状化装置10に液状定着液を供給する液供給手段13と、定着液泡状化装置10に空気を供給する気体供給手段16と、未定着トナー像を担持する定着液付与対象である記録媒体の表面に泡状定着液を付与する定着液付与手段としての塗布ローラ21を有する。そして、泡状定着液を付与することで軟化した未定着トナー像を形成するトナー層を記録媒体に定着する。この定着装置1が備える定着液泡状化装置10は、キメ細やかな小さな泡径の泡状定着液を生成し、且つ、従来よりも小型化することができる泡生成装置である。このため、定着装置1は、未定着トナー像に対して定着液の適正な微量塗布の実現と、装置の小型化を図ることができる。さらに、実施形態の定着液泡状化装置10は、大径泡の少ない、均一な泡状定着液を安定的に生成することができるため、実施形態の定着装置1は、経時での性能低下が生じにくく、安定した定着性能を維持することができる。
【0062】
また、実施形態によれば、図1に示すように、画像形成装置100は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段である作像ユニット105〜108と、記録媒体上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、定着手段として、本発明の特徴部を備えた泡生成装置である定着液泡状化装置を有する定着装置1を用いる。定着装置1が、泡状定着液を用いることで、トナー層への接触付与時の接触付与手段である塗布ローラへのトナーのオフセット防止や、微量付与化を安定して実現でき、かつ、非加熱にて従来に比べ極めて低電力定着を可能とする。また、小型の定着液泡状化装置10を用いることで、それを備えた定着装置1及び画像形成装置100の小型化を図ることができる。さらに、泡状となった定着液が通過する管状の搬送路の距離を短くすることができ、ポンプに要する出力を抑制することができる。さらに、長期放置後に破棄する泡状定着液の量を少なくすることができ、定着液の無駄を抑制することができる。また、安定した定着性能を維持することができるため、安定した品質の画像形成を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 定着装置
17 泡生成手段
30 泡生成デバイス
31 ベース部材
31−1 液室
31−2 定着液供給口
31−3 気室
31−4 空気供給口
31−5 定着液吐出口
31−6 空気吐出口
32 流路板
32−1 流路
32−2 流路形成部材
33 吐出部材
33−1 スリット
40 泡生成可視化装置
41 吐出部材
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2006−078573号公報
【特許文献2】特開2007−219105号公報
【特許文献3】特開2008−197188号公報報
【非特許文献】
【0065】
【非特許文献1】石井淑夫著,「泡のエンジニアリング」初版,株式会社テクノシステム,2005年3月25日発行,P.489

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体とを混合して泡状液を生成する気液混合部と、液体供給手段により供給される液体を前記気液混合部に流す液体流路と、気体供給手段により供給される気体を流す気体流路と、前記気体混合部に設けられ前記液体流路を介した液体を前記気体混合部内に供給する液体供給口と、前記気体混合部に設けられ前記気体流路を介した気体を前記気体混合部内の液体に供給する前記気体吐出口と、を備えた泡生成装置において、
前記気体吐出口が設けられる部材における前記気液混合部側の表面が、泡状液に対する親液性を有することを特徴とする泡生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の泡生成装置において、
前記液体は少なくとも樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する液状定着液であることを特徴とする泡生成装置。
【請求項3】
樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、該定着液泡状化手段に前記泡状定着液を供給する定着液供給手段と、前記定着液泡状化手段に気体を供給する気体供給手段と、前記樹脂微粒子を担持する定着液付与対象の表面に前記泡状定着液を付与する定着液付与手段と、を有し、前記泡状定着液を付与することで軟化した前記樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、
前記定着液泡状化手段として、請求項1又は2に記載の泡生成装置を用いることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面を定着液付与対象の表面として定着液を付与し、記録媒体上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置において、
前記定着手段として、請求項3に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−150256(P2012−150256A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8501(P2011−8501)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】