説明

波形等化制御方法及び、光ディスク装置、波形等化回路

【課題】
光ディスク装置で適応等化処理を行う際に、誤差収束に要する再生データ量削減や、FIRフィルタ係数の収束を早急に行う光ディスク装置、波形等化回路を提供する。
【解決手段】
本発明における光ディスク装置、波形等化回路は、少なくとも、適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段と、タップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、FIRフィルタ出力と等化目標値との誤差収束を判定する手段と、タップ係数値を一時的に保持する記憶手段と、FIRフィルタに対するタップ係数値の生成手段より光ディスク装置、波形等化回路を構成することで解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクから読み出された再生信号に対し適応等化処理を行う波形等化制御方法及び、光ディスク装置、波形等化回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年DVDの高速記録再生技術や、Blu−rayディスク等の高密度ディスクの開発が進んでおり、高速再生や高密度化(短マークの記録)に伴いディスク再生信号の品質(S/N、振幅)は劣化する傾向にある。このような状況下、光ディスクの再生信頼性を向上させる目的で、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式が光ディスク装置に採用されつつある。PRMLはFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成されるPR等化器と、ブランチメトリック、パスメトリック、パスメモリ更新などの各種演算回路からなるビタビ復号器より構成される(特許文献1参照)。
【0003】
一方でPRML方式に対し更に再生信頼性向上を目的とした適応等化処理が近年の光ディスク装置に採用され始めている。適応等化処理は再生信号に対する補正をFIRフィルタの特性を決定するタップ係数を制御することで行い、その制御アルゴリズムとしてLMS(Least Mean Square)アルゴリズムが一般的に用いられる。その基本式を(1)式に示す。
Ci(n+1)=Ci(n)−μ × e(n) × x(n-i) ・・・・・(1)式
右辺Ci(n)は時刻(n)のFIRフィルタを構成する各タップ係数値で、iはFIRフィルタの各タップ位置を示す。μはタップ係数値の更新速度を示す減衰率、e(n)はFIRフィルタ出力と教師(ターゲット)信号との誤差、x(n-i)は各タップ位置に対するFIRフィルタ入力であり、右辺の演算から時刻(n+1)のタップ係数値Ci(n+1)を求める。この演算に従いタップ係数値を更新することで、誤差e(n)が減衰し、FIRフィルタ出力値がターゲットレベルに近づく。つまり再生信号に応じてFIRフィルタ特性を調整し、再生信頼性を向上させる(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10―326456号公報
【特許文献2】特開2001―189052号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
適応等化処理は、(1)式における減衰率μに従い、誤差収束までに最低限必要な再生データ量が決まるが、通常は減衰率を1/1000〜1/10000程度に設定し、FIRフィルタの係数更新を安定させる。従って、誤差収束、つまり再生信号に対するタップ係数値が適正値に収束するまでは相当の再生データ量を要する。例えば減衰率が1/10000の場合、タップ係数値が1ステップ変化するためには最低でも10000サンプルの再生データをFIRフィルタへ入力する必要があり、更にタップ係数値が適正値に収束するまでにはその数倍から数十倍の再生データの入力、演算が必要となる。適応等化処理を光ディスク装置に適用する場合、ディスク上の再生目標位置からに再生は、収束に要するデータ量分手前にシークする必要がある。よって適応等化処理による再生信号の改善効果を得ながら再生を行うためには、アクセス時間が増加するという課題がある。
【0006】
一方で、シーク直後からの再生信号が劣化している場合がある。この場合、収束に必要な再生データ量を考慮したシークを行ったとしても、適応等化処理による再生信号改善が可能になる前に、目標位置に到達し、エラーレートの改善が図れない可能性がある。
【0007】
更に、追記型、書き換え型光ディスクの場合はディスク半径位置により記録品質がばらつく場合がある。例えば内周領域、外周領域それぞれで収束に対するタップ係数値が異なることを意味し、上記と同様の課題が生じる。
【0008】
また、光ディスクにはアクセス単位で特殊な構造をもつディスクも存在する。一例としてDVD-RAM再生単位のセクタは、プリピットで形成され、アドレス情報を含むPID領域と、相変化材料による記録マークを形成し、記録情報の書換えを行うユーザーデータ(UD)領域に大別される。つまり同一のディスク上に組成、再生信号品質が異なる領域が存在し、それぞれに対する適応等化処理を行うための制御が課題となる。
【0009】
本発明の目的は、特に光ディスク装置に対し上記課題を解決する波形等化制御方法及び、光ディスク装置、波形等化回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において上記課題を解決する制御方法は、適応等化処理の開始に呼応して、FIRフィルタのタップ係数値更新を開始し、FIRフィルタ出力と等化目標値との誤差収束や、適応等化処理停止に呼応して、タップ係数値を保持し、再度、処理開始に呼応して、保持したタップ係数値をFIRフィルタへ出力し、その係数値から適応等化処理を再開することで解決される。
【0011】
一方で光ディスク装置、波形等化回路は、少なくとも、適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段と、タップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、FIRフィルタ出力と等化目標値との誤差収束を判定する判定手段と、タップ係数値を一時的に保持する記憶手段と、FIRフィルタに対するタップ係数値の生成手段を備える。
【0012】
一方でアクセス単位が第1、第2の領域で構成される光ディスク再生時の課題を解決する制御方法は、適応等化処理の開始に呼応して、FIRフィルタに対するタップ係数の更新を開始し、第1、第2の領域識別に基づき、第1、第2のタップ係数を保持し、第1、第2の領域識別に基づき、各領域の先頭で、保持した第1、第2のタップ係数値をFIRフィルタへ出力し、更にその係数値から適応等化処理を行うことで解決される。
【0013】
更に第1、第2の領域でアクセス単位を構成する光ディスク再生に対応した光ディスク装置、波形等化回路は、少なくとも、適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段、タップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、FIRフィルタ出力と等化目標値との誤差収束を判定する判定手段と、第1の領域に対するタップ係数を保持する第1の記憶手段と、第2の領域に対するタップ係数を保持する第2の記憶手段と、光ディスク再生信号に対し第1、第2の領域識別を行う識別手段と、FIRフィルタに対するタップ係数値の生成手段を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、FIRフィルタのタップ係数の収束までに必要な再生データ量、アクセス時間の削減が可能となる。また再アクセス直後から、データ復調後のエラーレートを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態につき、以下で具体的に説明する。
【0016】
まず、本発明の第1の実施例について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の波形等化制御方法を光ディスク装置に適用した場合の構成図であり、図4は図1の装置におけるFIRフィルタ回路のタップ係数に対する制御方法を示した状態遷移図である。
【0018】
図1において1は光ディスク、2は光ディスク1上の記録マーク、ピットの読み取りを行う光ヘッド、3は光ディスクからの戻り光に対し信号の増幅を行い、再生信号として出力するプリアンプ、4はプリアンプ3からの再生信号に対し、1T(Tは自然数で記録マーク、ピットの長さに対する最小単位を示すチャネルビット)単位でサンプリングを行い、サンプル値に対するデジタル値への変換を行うADC、5はAD変換後の再生信号と発振クロックの位相誤差が最小となるようにクロック周波数の制御を行うDPLL回路、6はタップ係数の任意設定が可能で、設定係数に従いフィルタ周波数特性を可変可能なFIRフィルタ回路、7はビタビ復号アルゴリズムを実現するビタビ復号回路、8はビタビ復号出力のNRZI信号(non-return to zero inverted)に含まれて伝送される同期信号の検出、復調処理を行うことで元の再生情報を得るデータ復調回路、9はNRZI信号に対し、PR(Partial Response)符号を復号し、復号したPR符号に対する等化目標値を選択出力するターゲット選択回路である。等化目標値は、PR符号(NRZIのビット列)が「0000」、「0001/1000」、「0011/1100」、「0111/1110」、「1111」、「0110」、「1001」の7値それぞれに対する目標値であり、10はNRZIに対する等化目標値とFIRフィルタ回路6の出力から目標誤算を演算する誤差演算回路で、目標誤差は、例えばKサンプル(Kは2以上の正の整数)の平均値である。
11は目標誤差と閾値との比較で誤差収束を判定する収束判定回路、12はFIRフィルタ回路6に対するタップ係数値を一時的に保持する係数保持回路、13は目標誤差とFIRフィルタ回路入力、減衰率μの演算結果とFIRフィルタ回路6に対するタップ係数から、LMSアルゴリズム(1)式に準じた演算を行い、新たにタップ係数を生成する係数制御回路である。
【0019】
図1の光ディスク装置における適応等化処理の制御について、図4の状態遷移図を用いて説明する。図4において、光ヘッド2を光ディスク1上の再生目標位置にアクセスする(S41)。プリアンプ3、ADC5を介した再生信号に対し、DPLL回路5において入力信号と発振クロックの位相誤差が最小となるようにクロック周波数制御を行う。周波数制御による位相誤差の収束でDPLLロック信号を生成する。係数制御回路13はDPLLロック検出に呼応してLMSアルゴリズムに準じた適応等化処理によるFIRフィルタ回路6のタップ係数更新を開始する。更にFIRフィルタ回路出力はビタビ復号、データ復調処理が行われる(S42)。適応等化処理により、FIRフィルタ回路出力が各等化目標値に近づき、収束判定回路11で(目標誤差値)≦(収束閾値)、誤差収束を検出すると、係数制御回路13を介して係数保持回路12に対しタップ係数保持を制御する(S43)。係数保持回路12には誤差収束時、つまりFIRフィルタ回路入力に対し最適なタップ係数が保持される。その後も適応等化制御は継続し、誤差収束検出(S43)の度に新たなタップ係数値が係数保持回路12に保持される。一方S42で、DPLL回路5における位相誤差が徐々に大きくなった結果発生するDPLLロックアウトや、光ディスク1上の傷などが原因で、再生信号が突発的に劣化した場合(図1の制御停止要因検出)に、係数制御回路13はタップ係数の更新を停止する(S44)。DPLL回路における位相誤差が大きくなるということは、再生信号が徐々に劣化していることに相当する。その後、再度DPLLロックイン検出やディスク上の傷を通過した際(制御停止要因の解除)、新たに光ディスクへのアクセスを行う場合に、係数制御回路13は係数保持回路12で保持のタップ係数をリロードし(S45)、FIRフィルタ回路6に対し出力すると共に、リロードした係数値から適応等化処理を開始する(S42)。
【0020】
以上説明した第1の実施例においては、DPLL回路におけるDPLLロック検出後で適応等化制御による誤差収束時のタップ係数を保持し、DPLLロックアウトや、異常再生信号からの復帰時、新たなアクセス時に、保持したタップ係数値をFIRフィルタ係数として出力すると共に、その係数値から適応等化処理を再開することで、誤差収束までに必要な再生データ量、時間の削減が可能となる。更に復帰直後から良好なFIRフィルタ出力を得られることでビタビ出力を使用するターゲット選択回路9におけるターゲットレベルの選択が適切に行われることで適応等化処理も安定して行われる。また、データ復調処理後のエラーレートも復帰直後から低減可能である。
【0021】
なお収束判定回路11は、目標誤差と閾値の比較による収束判定に留まらず、一定時間ごとにタップ係数の保持を随時行うことも考えられる。この場合ディスク上の傷などによる突発的な再生信号劣化の場合に限定して効果がある。再生信号の突発的な劣化の直前において再生信号は正常だからである。この場合係数保持回路12を利用せずに、単に係数制御回路13におけるタップ係数更新を異常期間だけホールドしてもよいことになる。
【0022】
以下、本発明の第2の実施例について図面を用いて説明する。
【0023】
図2は本発明の波形等化制御方法を光ディスク装置に適用した場合の第2の構成図であり、1はプリピット領域と記録領域でアクセスブロック単位を構成する光ディスクであり、一例としてDVD-RAMが挙げられる。14は記録領域に対するタップ係数を保持するUD部係数保持回路、15はプリピット領域に対するタップ係数を保持するPID部係数保持回路であり、その他の符号については図1と同様であり説明を省略する。
【0024】
図2における適応等化制御の対象となる光ディスク1の構造と、必要となる制御信号について図5を用いて説明する。図5(A)はプリピット領域と記録領域でアクセスブロック単位を構成する光ディスクの一例としてDVD-RAMのデータ構造を示している。同図において、ブロック構造は光ディスク上の目標位置にアクセスするために必要なアドレス情報を含む領域(PID1〜4)と、DPLLによるクロック引き込みのためのVFO1、2領域からなるプリピット部と、ユーザーデータ(UD)領域と、クロック引込みのためのVFO3、ユーザーデータ領域を保護するGuard/Buffer領域からなる記録部からなる。
【0025】
図5(B)は、DPLL回路5に対し位相比較の開始、停止を制御するための制御タイミングであり、DPLL回路は各区間で位相比較を開始、DPLLロック検出を検出する。制御タイミングについては図5(A)のプリピット部先頭からPID2の領域と、PID2以降のVFO1からMIRRまでの領域、相変化記録部のVFO3からGuard2までの領域をカバーする。DPLL回路6はこのタイミング信号の各区間に対し最適なPLLゲインを切り替えてクロック引き込みを制御しDPLLロックイン検出を係数制御回路13に出力する。従って係数制御回路13におけるタップ係数の更新、停止はPID部、UD部それぞれの区間で検出したDPLLロックに従い制御されることになる。図5(C)はPID部、UD部の切り替えタイミングであり、係数制御回路13はPID区間に対してPID部の保持係数を選択、UD区間に対してUD部の保持係数を選択する。
【0026】
図5(D)−1、(D)−2は係数制御回路13内部で行われるPID部、UD部各タップ係数出力、ラッチ切り替えタイミングを示している。(D)−1は(C)の切り替えタイミングに対しPID区間の終端を示し、PID区間に対する適応等化処理の最終タップ係数をPID部係数保持回路15にラッチするように制御、一方でUD部係数保持回路15よりUD区間に対するタップ係数をリロード、FIRフィルタ回路6へ出力すると共に、DPLLロック検出後、リロード係数値からUD区間の適応等化処理を開始する。UD部からPID部の境界においても同様(D)−2において、UD区間の終端を検出し、UD区間の最終タップ係数をUD部係数保持回路14にラッチ、一方でPID部係数保持回路15よりPID区間に対するタップ係数をリロード、FIRフィルタ回路6へ出力すると共に、DPLLロック検出後、リロード係数値からPID区間の適応等化処理を開始する。
【0027】
以上で説明した第2の実施例においは、アクセス単位で領域が分離された構造の光ディスクに対し適応等化処理を行う際に、各領域の先端で領域別に保持した各タップ係数値から適応等化制御を再開することで各領域に応じた適応等化処理を適切に行うことが可能となる。
【0028】
なお、第2の実施例において、誤差収束時のタップ係数保持については記載していないが、図1で説明した収束判定回路を設け、図5(C)のPID/UD切り替えタイミングに従い、収束検出した領域(PID/UD区間)を識別し、UD部、PID部係数保持回路14、15へのラッチを制御することも考えられる。
【0029】
また図5(B)の制御タイミングを係数制御回路13へ入力しても同様の動作、効果を得ることになる。この場合係数制御回路は、制御タイミングの各区間でDPLLロックを検出し、適応等化処理の開始、停止を制御する。
【0030】
また図2の構成に対し、係数制御回路をPID部、UD部と2系統設け、図5(C)の切り替えタイミングに従いFIRフィルタ回路6へのタップ係数出力を切り替えると共に、各係数制御回路においてはPID部、UD部区間でのDPLLロック検出でそれぞれタップ係数の更新を制御することで同等の機能を実現することも考えられる。
【0031】
以下、本発明の第3の実施例について図面を用いて説明する。
図3は本発明の波形等化制御方法を光ディスク装置に適用した場合の第3の構成図であり、17は第1の係数保持回路、18は第2の係数保持回路、19はOR回路,20はシステムコントローラであり、その他の符号については図1と同様であり説明を省略する。図3において係数制御回路13は、システムコントローラからの係数選択指示に従い、タップ係数ラッチ時や、リロード時に、第1の係数保持回路17、第2の係数保持回路18の選択を行う。一方係数ラッチ指示については、収束判定回路11での収束検出によるものと、システムコントローラ20からの指示とのORとなっている。第3の実施例は、光ディスク上に存在する一連の記録トラックの連続再生を行う際に、再生不能が発生したブロックに対するリトライ処理において適応等化処理による再生波形の補正効果を利用することを前提に説明する。
【0032】
図3の装置におけるタップ係数の保持、リロード制御について図6の状態遷移図を用いて説明する。図6においてS61、S62は図4のS41、S42と同様であり説明を省略する。S62でタップ係数更新が開始され、誤差収束の検出や、システムコントローラ20で光ディスク1に対する再生停止を検出すると、係数ラッチ指示により、例えば第1の係数保持回路17に対して第1のタップ係数保持を行う(S63)。係数選択指示は、システムコントローラ20によってあらかじめ係数制御回路13に対し指示される。第1の係数保持回路17への係数保持後、第2の係数保持回路18に係数選択指示を切り替える。更に一旦誤差収束を検出した後、再度誤差収束を検出した場合や、再生を再開したトラックに対する再生が終了すると、係数選択回路16は第2の係数保持回路18に対して第2のタップ係数保持を行う(S64)。
【0033】
更に再生を継続し、データ復調処理降に続く誤り訂正処理等で、再生不能と判断された場合、装置はシステムコントローラ20の制御により再生不能となったブロックに対し、再度再生を試みるリトライ処理に遷移する(S65)。最初のリトライ1の際、例えば第2の係数保持回路18に保持のタップ係数をリロード(S66)することで第2のタップ係数値から適応等化処理を再開する(S62)。リトライ1による再生で、更に再生不能と判断された場合(S65)、リトライ2に遷移し、第1の係数保持回路17に保持のタップ係数をリロード(S67)することで第1のタップ係数値から適応等化処理を再開する(S62)。その後リトライ回数を超えた場合は訂正不能として処理を終了する。
【0034】
以上説明した第3の実施例においては、連続した記録トラックに対する再生時で誤差収束を検出した際や、一時的に再生停止した際のタップ係数を複数保持し、更に再生を再開後でリトライ処理が発生した場合、リトライ処理が繰り返されるたびに保持した複数のタップ系数をリロード、適応等化処理を再開することで、誤差収束までに必要な再生データ量を減らしながら、再生不能となったブロックに対する再生を、適応等化処理による再生波形の補正効果を利用して行うことが可能となる。
【0035】
また第3の実施例でも、第2実施例と同様、第1の係数制御回路、第2の係数制御回路個別に設け、システムコントローラ20によりFIRフィルタ回路6へのタップ係数出力を切り替えることで同等の機能を実現することも考えられる。
【0036】
またシステムコントローラ20は適応等化処理中の目標誤差を随時監視し、閾値との比較で再生異常を検出することも考えられる。これは適応等化処理によるFIRフィルタ回路出力が等化目標値に対し大きくかけ離れていることを示し、再生信号の異常或いは、適応等化処理の暴走による異常と判定される。この場合についてもリトライ処理(S65)に遷移し、誤差収束時に保持したタップ係数をリロード、適応等化処理により再生を再開することも考えられる。
【0037】
以下、本発明の第4の実施例について図面を用いて説明する。
図7は図3の光ディスク装置の構成を利用してタップ係数保持、リロード制御を説明する別の状態遷移図である。図7における状態S71、S72は図6のS61、S62と同様であり説明を省略する。第3の実施例は、光ディスク上の半径方向を例えば、内周側と外周側に仮想的に分割し、各領域のアクセスの際に適応等化処理による再生波形の補正効果を利用することを前提に説明する。光ディスク上の領域分割はシステムコントローラ20において行われ、再生目標位置に対する領域の判定もシステムコントローラ20で行われる。
【0038】
S72においてタップ係数更新が開始され、誤差収束の検出や、システムコントローラ20で光ディスク1に対する再生停止を検出すると、システムコントローラ20は光ディスク1へのアクセス位置に従い、タップ係数の保持を制御する。例えば内周領域にアクセスの際には第1の係数保持回路17に内周側のタップ係数を保持する(S73)、外周領域の場合は第2の係数保持回路18に外周側のタップ係数を保持する(S74)。内周側、外周側或いは両方の領域に対するタップ係数保持終了後、再度光ディスク1に対するアクセスが発生すると(S75)、システムコントローラ20は再アクセス先の領域に従い、係数制御回路13へリロードするタップ係数の選択を行う。再アクセス先が内周側の場合は、第1の係数保持回路17から内周側のタップ係数をリロード(S76)、外周側の場合は、第2の係数保持回路18から外周側のタップ係数をリロードする(S77)。係数のリロード後、適応等化処理を行いタップ係数の更新を行うと共に、データ復調処理による再生を行う(S72)。S72で収束検出した場合や、再生終了時には、アクセスしている領域に応じ、タップ係数の保持を行う(S73、S74)。
【0039】
以上説明した第4の実施例においては、複数の係数保持回路を利用し、光ディスク上の異なる領域に対し適応等化処理を行った際のタップ係数を保持し、再アクセス時のアクセス先領域に従い、保持したタップ係数を選択、FIRフィルタ回路6のタップ係数とすることで、領域に応じた適切な係数値から適応等化処理を開始できると共に、適応等化処理の誤差収束に必要な再生データ量を削減することが可能となる。
【0040】
なお、第4の実施例においての内周側、外周側のタップ係数保持は図3の第1,第2の係数保持回路にて保持されることに限定されず、誤差収束時や再生終了時に係数制御回路13より読み出し、システムコントローラ20に備えたメモリ上で管理することも考えられる。
【0041】
第4の実施例と同様の構成、制御の応用として、光ディスクの再生線速度別にタップ係数を保持することも考えられる。例えばCAV(constant angular velocity)再生を行う際に、光ディスク半径方向を複数の線速度領域に分け、各領域に対するタップ係数を記憶、各領域再生時に利用する。
【0042】
図1、図2、図3において、光ディスク装置を構成する各回路は同一の半導体チップにレイアウトされ、適応等化処理を行いながら、タップ係数保持、リロード制御を行う。
【0043】
また、第1から第4の全ての実施例において、ターゲット選択回路9において選択される等化目標値が、FIRフィルタ回路6の各PR出力レベルに応じて追従する場合には、誤差収束判定、タップ係数の収束時や、再生終了時において、その各等化目標値についても保持を行うことで、適応等化処理の再開からの誤差収束を早めることが可能となる。各等化目標値別に保持回路を設けたり、DPLLロック外れ検出から再度ロック検出までの期間や、制御停止要因発生期間で前値保持することで実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】光ディスク装置に適用した本発明の第1の構成を示すブロック図。
【図2】DVD-RAMの再生に対応した本発明の第2の構成を示すブロック図。
【図3】光ディスク装置に適用した本発明の第3の構成を示すブロック図。
【図4】第1の構成におけるタップ係数制御を説明する状態遷移図。
【図5】DVD-RAMのブロック構成と第2の構成で必要な制御タイミングの説明図。
【図6】第3の構成におけるタップ係数制御を説明する状態遷移図。
【図7】第3の構成におけるもう一方のタップ係数制御を説明する状態遷移図。
【符号の説明】
【0045】
1…光ディスク、2…光ヘッド、3…プリアンプ、4…ADコンバータ、5…DPLL回路、6…FIRフィルタ回路、7…ビタビ復号回路、8…データ復調回路、9…ターゲット選択回路、10…誤差演算回路、11…収束判定回路、12…係数保持回路、13…係数制御回路、14…UD部係数保持回路、15…PID部係数保持回路、17…第1の係数保持回路、18…第2の係数保持回路、19…OR回路、20…システムコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記録した光ディスクに光ヘッドからレーザ光を照射することでアクセスし、該光ディスクから得られた信号に適応等化処理を行い再生信号を得る光ディスク装置であって、
適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段と、
適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、
該FIRフィルタの出力と等化目標値との誤差収束を判定する判定手段と、
前記タップ係数値を一時的に保持する記憶手段と、
前記FIRフィルタに対するタップ係数値を制御するタップ係数値制御手段を備え、
前記タップ係数値制御手段は、
適応等化処理の開始後にFIRフィルタに対するタップ係数値の更新を開始し、
誤差収束または停止制御に呼応して、前記記憶手段にタップ係数値の保持を制御し、
開始制御に呼応して保持したタップ係数値を前記FIRフィルタへ出力し、そのタップ係数値を用いて適応等化処理を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
第1の領域と第2の領域でアクセス単位が構成されるデータを記録した光ディスクに光ヘッドからレーザ光を照射することでアクセスし、該光ディスクから得られた信号に適応等化処理を行い再生信号を得る光ディスク装置であって、
適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段と、
適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、
第1の領域に対するタップ係数値を保持する第1の記憶手段と、
第2の領域に対するタップ係数値を保持する第2の記憶手段と、
前記光ディスクからの再生信号に対し、第1、第2の領域識別を行う識別手段と、
前記FIRフィルタに対するタップ係数値を制御するタップ係数値制御手段を備え、
前記タップ係数値制御手段は、
適応等化処理の開始後にFIRフィルタに対するタップ係数値の更新を開始し、
識別手段による領域識別に基づき、前記第1の記憶手段に第1のタップ係数値を保持し、前記第2の記憶手段に第2のタップ係数値を保持し、
前記識別手段による領域識別に基づき、第1の領域の先頭では前記第1の記憶手段に保持した第1のタップ系数値を前記FIRフィルタへ出力し第1の領域に対する適応等化処理を行い、第2の領域の先頭では前記第2の記憶手段に保持した第2のタップ系数値を前記FIRフィルタへ出力し第2の領域に対する適応等化処理を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
データを記録した光ディスクに光ヘッドからレーザ光を照射することでアクセスし、該光ディスクから得られた信号に適応等化処理を行い再生信号を得る光ディスク装置であって、
適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段と、
適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、
前記タップ係数値を一時的に保持する第1から第N(Nは正の整数)までの記憶手段と、
前記FIRフィルタに対するタップ係数値を制御するタップ係数値制御手段を備え、
前記タップ系数値制御手段は、
適応等化処理の開始後にFIRフィルタに対するタップ係数値の更新を開始し、
誤差収束または停止制御に呼応して、タップ係数値の第1から第Nの記憶手段への順次保持を制御し、
前記制御手段は、
適応等化処理の開始に呼応して、第1から第Nまでのタップ係数値をFIRフィルタへ選択出力し、そのタップ係数値を用いて適応等化処理を再開することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
アドレス情報と記録データで構成されるブロック単位でデータを記録した光ディスクにアクセスし、該光ディスクから得られた信号に適応等化処理を行い再生信号を得る波形等化制御方法であって、
適応等化処理の開始に呼応して、適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタのタップ係数値の更新を開始し、
前記FIRフィルタ出力と等化目標値との誤差収束、または、適応等化処理の停止に呼応して、タップ係数値を保持し、
適応等化処理の開始に呼応して、保持したタップ係数値を前記FIRフィルタへ出力し、そのタップ係数値を用いて適応等化処理を再開することを特徴とする波形等化制御方法。
【請求項5】
第1の領域と第2の領域でアクセス単位が構成されるデータを記録した光ディスクに光ヘッドからレーザ光を照射することでアクセスし、該光ディスクから得られた信号に適応等化処理を行い再生信号を得る波形等化制御方法であって、
適応等化処理の開始に呼応して、適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタのタップ係数値の更新を開始し、
領域識別に基づき、第1、第2のタップ係数値を保持し、
領域識別に基づき、第1の領域の先頭では保持した第1のタップ系数値を前記FIRフィルタへ出力し第1の領域に対する適応等化処理を行い、第2の領域の先頭では保持した第2のタップ系数値を前記FIRフィルタへ出力し第2の領域に対する適応等化処理を行うことを特徴とする波形等化制御方法。
【請求項6】
光ディスク再生信号に対する波形等化制御方法であって、
適応等化処理の開始に呼応して、適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタに対するタップ係数値の更新を開始し、
FIRフィルタ出力と等化目標値との誤差収束や、再生停止の度に、第1から第N(Nは正の整数)のタップ係数値として順次保持し、
再生リトライにおいて、保持した第1から第Nまでのタップ係数値を前記FIRフィルタへ選択出力し、そのタップ係数値を用いて適応等化処理を再開することを特徴とする波形等化制御方法。
【請求項7】
光ディスク再生信号に対する波形等化制御方法であって、
適応等化処理の開始に呼応して、適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタに対するタップ係数値の更新を開始し、
光ディスク半径方向をM個(Mは正の整数)の領域に分割し、誤差収束や再生停止に呼応して再生位置に対応する領域のタップ係数値として保持し、
再生の際、再生位置に対応する領域のタップ係数値を前記FIRフィルタへ出力し、そのタップ係数値を用いて適応等化処理を再開することを特徴とする波形等化制御方法。
【請求項8】
光ディスク再生信号に適応等化処理を行う波形等化回路であって、
適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段と、
適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、
該FIRフィルタ出力と等化目標値との誤差収束を判定する判定手段と、
前記タップ係数値を一時的に保持する記憶手段と、
前記FIRフィルタに対するタップ係数値の生成手段を備え、
前記生成手段は、
適応等化処理の開始からFIRフィルタに対するタップ係数値の更新を開始し、
誤差収束や停止制御に呼応して、記憶手段に対しタップ係数値の保持を制御し、
開始制御に呼応して保持したタップ係数値をFIRフィルタへ出力し、そのタップ係数値を用いて適応等化処理を行うことを特徴とする波形等化回路。
【請求項9】
第1の領域と第2の領域でアクセス単位が構成されるデータを記録した光ディスクの再生信号に対し適応等化処理を行う波形等化回路であって、
適応等化処理の開始、停止を制御する制御手段と、
適応等化処理を行うフィルタであり適応等化処理に用いるタップ係数値の変更が可能なFIRフィルタと、
第1の領域に対するタップ係数値を保持する第1の記憶手段と、
第2の領域に対するタップ係数値を保持する第2の記憶手段と、
光ディスク再生信号に対し、第1、第2の領域識別を行う識別手段と、
FIRフィルタに対するタップ係数値の生成手段を備え、
前記生成手段は、
適応等化処理開始からFIRフィルタに対するタップ係数値の更新を開始し、
識別手段による領域識別に基づき、第1、第2の記憶手段に対しタップ係数値を保持し、
一方で、領域識別に基づき、各領域先頭で、保持した第1、第2のタップ係数値をFIRフィルタへ出力し、そのタップ係数値を用いて各領域に対し適応等化処理を行うことを特徴とする波形等化回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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