説明

注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシン

【課題】 従来、ミルククーラからマシン本体部(抽出機)にミルクを送るために架け渡していたミルク移送管を排除し、該移送管に残留するミルクが外気温や高温雰囲気にさらされることがないようにした新規なコーヒーマシンの開発を課題とする。
【解決手段】 本発明のコーヒーマシンAは、コーヒー液Lの抽出を担うマシン本体部1と、主にミルククーラ20でミルクMの冷蔵を担うミルク供給部2とを具えて成り、ミルククーラ側に、マシン本体部1で抽出したコーヒー液Lや、冷蔵室50から取り出したミルクMをカップCに注ぐ注出室70を設けるとともに、マシン本体部1とミルククーラ20との間にはコーヒー液移送管32を架け渡し、コーヒー液Lをマシン本体部1から注出室70の注出口74つまりコーヒー液ノズル74Lまで移送するようにし、更には注出室70を冷蔵室50とは断熱壁22で仕切るようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミルクの添加を要するコーヒー飲料が淹れられるようにしたコーヒーマシンに関するものであり、特にコーヒー豆から抽出したコーヒー液や冷蔵室から取り出したミルクをカップに注ぐ注出室(注出口)を、ミルククーラ側に設けるようにした新規なコーヒーマシンに係るものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーマシンのなかには、カフェラテやカプチーノ等のミルクメニュー(コーヒー飲料)を本格的に淹れられるようにしたものがあり、このようなコーヒーマシンは、コーヒー豆からコーヒー液を抽出するマシン本体部に対し、ミルク(生乳)を冷蔵するミルククーラ(ミルク供給部)を併設するのが一般的である。
そして、この種のコーヒーマシンにあっては、コーヒー液を吐出するコーヒー液ノズルと、ミルクを吐出するミルクノズルとを別々にまたは一体で具えた注出口が、マシン本体部の同一の注出部(注出室)に設けられるのが一般的である(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
ここで一般的なコーヒーマシンが、コーヒー液ノズルとミルクノズルとを同じ注出部に設けるのは、カップにコーヒー液を注ぐのも、またミルクを注ぐのも、同じ場所で行う(いちいちカップを移動させない)という考え方に基づくものと思われる。また、注出部がマシン本体部(抽出機)側に設けられるのは、もともとマシン本体部単独での需要(抽出機としての需要)があったためだと考えられる。すなわち、例えばブラックのエスプレッソコーヒーのみを淹れるようにしたコーヒーマシンでは、ミルククーラを併設しておらず、当然、マシン本体部側に注出部が設けられていたためと考えられる。
このようなことからミルクメニューも淹れられるようにしたコーヒーマシンであっても、このような思想(従来仕様)が何の疑いもなく踏襲され、マシン本体部側に注出部が設けられていたものと考えられる(言わば固定観念)。
【0004】
しかし、マシン本体部に注出部を設ける上記構造では、ミルクを冷蔵しているミルククーラ(冷蔵室)からマシン本体部の注出部(ミルクノズル)までミルク移送管を渡す必要があり(いわゆる渡りチューブ)、これには以下のような問題がある。すなわちミルク移送管は、ミルクをミルククーラ側からマシン本体部側に渡らせる移送路(つまり装置間を跨いで送る移送形態)に他ならないため、このミルク移送管が大気中を通過すれば、ミルク移送管内に残留するミルクは、当然、外気温にさらされるため、ここで雑菌が繁殖する虞がある。
【0005】
なお、コーヒーマシンのなかには、マシン本体部内にミルククーラを収めたものも存在し、この場合には、ミルク移送管は露出することはなく、一見、渡りチューブがないように思える。しかし、このような構造では、ミルク移送管が、マシン本体部内を通過して注出部に到達する経路となるため、結局、ミルク移送管は、マシン本体部内の高温雰囲気(例えばコーヒー液を抽出する際の高圧高温湯等による高温雰囲気)にさらされることになり、やはりここで雑菌が繁殖する虞がある。因みに、マシン本体部内を通過する、このようなミルク移送管も、結果的にミルククーラ側から装置内を渡って注出部に至ることに変わりはないので、これも渡りチューブとする。
【0006】
もちろん、これに対する対策(衛生管理上の対応策)として、この種のコーヒーマシンでは、ミルク移送管を含めたミルク供給経路(ミルクライン)を定期的に洗浄することが行われている。しかし、通常、このようなミルクラインは、上述したように装置間を渡るため、経路全長が長くなり、全長にわたって内部を綺麗に洗浄するのは容易ではなかった。また、ミルク移送管をポンプ等の他部材と接続(接合)するには、通常、接続部分に応じた種々の継手が用いられるため、ミルク移送管を装置から取り外すには、このような継手や他部材も取り外して、継手も洗浄(手洗い)することになり、ミルク移送管の洗浄作業はますます困難な作業となり、通常は、メンテナンスの訓練を受けたものでなければミルク移送管を綺麗に洗浄することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−57249号公報
【特許文献2】特開2005−66313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、コーヒー液やミルクをカップに注ぐ注出口をミルククーラ側に設けるようにすることで、従来、ミルククーラからマシン本体部(抽出機)にミルクを送るように架け渡していたミルク移送管を排除し、該移送管に残留するミルクが外気温や高温雰囲気にさらされることがないようにした新規なコーヒーマシンの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず請求項1記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシンは、
主にコーヒー液の抽出を担うマシン本体部と、主にミルクの冷蔵を担うミルク供給部とを具え、ミルクの添加を要するコーヒー飲料が淹れられるようにしたコーヒーマシンにおいて、
前記ミルク供給部は、冷蔵室でミルクを低温貯蔵するミルククーラを具えて成り、このミルククーラ側に、マシン本体部で抽出したコーヒー液や、冷蔵室から取り出したミルクをカップに注ぐ注出室を設けるとともに、
マシン本体部とミルククーラとの間にはコーヒー液移送管を架け渡し、このコーヒー液移送管によってマシン本体部で抽出したコーヒー液を、マシン本体部から注出室の注出口まで移送するようにしたことを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項2記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシンは、前記請求項1記載の要件に加え、
前記注出口を具える注出室は、ミルクを冷蔵する冷蔵室とは断熱壁で仕切られていることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項3記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシンは、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記注出室は、当該室内にミルク加熱室とミルク泡立室とを具え、これらにはマシン本体部で生成された蒸気が各々独立して供給されるものであり、
また、前記冷蔵室から取り出されたミルクは、前記ミルク加熱室を経由し、ミルク泡立室からカップに注がれるものであり、このミルク加熱室が冷蔵室と注出室とを仕切る断熱壁に設けられることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項4記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシンは、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、
前記冷蔵状態のミルクを定量取り出しカップ側に移送するにあたってはチュービングポンプが適用されるものであり、このチュービングポンプはミルクを冷蔵する冷蔵室と同じ空間内に設けられることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項5記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシンは、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、
前記冷蔵状態のミルクをカップ側に移送するミルクラインは、洗浄ボトルから当該ラインに送り込まれる洗浄剤によって洗浄されるものであり、
前記ミルククーラには、この洗浄ボトルを常時収容するための洗浄ボトル貯留部が形成されることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0014】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、注出室(注出口)がミルククーラ側に設けられるため、ミルククーラからマシン本体部にミルクを移送するミルク移送管(渡りチューブ)が必要なく、従ってミルク移送管内に残る残留ミルクが外気温や高温雰囲気にさらされることもなく、ミルクラインにおける雑菌の繁殖の虞がほとんどない。
またミルクラインは装置間(ミルククーラとマシン本体部との間)を渡ることがないため、経路の全長が短く形成でき、加熱したミルクの温度低下を防止でき、更には経路長が短い分、ミルクラインを装置から取り外し、各部の接続を切り離して手洗いする際にも洗浄し易く(ミルクカスが落ち易く)、衛生管理の点でも効果を奏する。
因みに、本コーヒーマシンは、コンビニエンスストアへの設置を主に想定しており、特にコンビニエンスストアでは、店員がアルバイトであることが多く、また勤務期間も比較的短期間であること等から、全ての店員にコーヒーマシンの衛生管理やメンテナンスの訓練(教育)を徹底することが難しい環境にある。このためコンビニエンスストアではコーヒー専門店とは異なり、可能な限り省人オペレーションを図ることと、設備やメンテナンスコストを小さくすることが求められており、衛生管理、特にミルクラインの衛生管理が容易に且つ確実に行える本発明は、このような実情に充分、即したものと言える。
もちろん、本発明においてはミルク移送管(渡りチューブ)を要しない分、マシン本体部からミルククーラ側の注出室までコーヒー液を渡らせるコーヒー液移送管は必要となり、ここに残留するコーヒー液がいくらか冷めることは否めない。しかし、ミルクは加熱してもそれほど温度が上げられず、またミルクメニューではカップに注ぐ飲料全体の半分以上をミルクが占めるため、ミルククーラ側に注出室(注出口)を設ける本発明は、コーヒー液移送管内に残留するコーヒー液の温度が多少下がっても、加熱後のミルクの温度低下がほとんどない利点(有益性)の方が大きく、最終的にカップに注がれるコーヒー飲料としての温度低下が抑制され、このことも大きな効果を奏するものである。
【0015】
また請求項2記載の発明によれば、ミルククーラ側に設けられる注出室は、ミルクを冷蔵する冷蔵室とは断熱壁で仕切られるため、高温となる注出室の熱の影響を冷蔵室に及ぼすことがなく、冷蔵中のミルクに悪影響を及ぼさない。すなわち注出室は、通常、高温状態のコーヒー液(飲料液)をカップに注ぐ部位であり、またミルクを適宜の状態に仕立てるための蒸気が供給される部位であるため、注出室内が高温となるが、本発明では、この注出室が冷蔵室とは断熱壁で仕切られるため、注出室内が高温になっても、その熱が冷蔵室に伝わらないものである。
【0016】
また請求項3記載の発明によれば、ミルク加熱室とミルク泡立室とが連続して設けられ、またここには別々に蒸気が供給され得る構成であるため、両室は、供給される蒸気によって熱くなることが考えられる。しかし、前段のミルク加熱室が冷蔵室と注出室とを仕切る断熱壁に設けられるため、蒸気によって冷蔵室が暖められてしまうことはないものである。
また通常のコーヒーマシンでは、外気温や高温雰囲気にさらされることが多いミルクラインの一部、具体的にはポンプ部からミルク加熱室(注出室)に至る経路部分を冷蔵空間に収める構造が採り易く、極めて衛生的である。
【0017】
また請求項4記載の発明によれば、まずチュービングポンプでミルクの移送を行うため、ポンピング作用を生起する部材がミルクに接触することがなく極めて衛生的にミルクの移送が行える。またチュービングポンプを冷蔵室と同じ空間内に設けるため、ミルクラインの全て、具体的には冷蔵状態のミルク〜チュービングポンプのポンピングチューブ〜注出室(ミルク加熱室)に至る部分を冷蔵室と同じ空間内に収め易く、極めて高いレベルでミルクラインの衛生管理が行える。もちろん、チュービングポンプを冷蔵室と同じ空間内に収めることはミルクラインのシンプル化や短縮化にも直結し、洗浄作業や接続部分の着脱も容易に行え、ミルクカスも除去し易いものである。
【0018】
また請求項5記載の発明によれば、ミルククーラには冷蔵室と注出室の他に洗浄ボトル貯留部も形成されるため、ミルクラインの洗浄中でもミルクをそのままミルククーラ(冷蔵室)で保存でき、ミルクの衛生管理が正しく行える。
すなわち、従来の洗浄作業では、まず洗浄前に残ったミルクを別の冷蔵庫等に保管する。その後、ミルクラインを形成するチューブや継手を取り外し、これらを手洗いした後、全て元通りに再装着・再接続するものである。次いで、洗浄ボトルに液体洗剤を薄めた洗浄剤を準備し、ポンプを使って再装着したミルクラインに洗浄剤を送り込み、自動洗浄するものである。またこの洗浄剤での洗浄後、1.5リットル程のすすぎ水を同じくボトルに準備してポンプでミルクラインに送り込み、ラインに付着残留した洗浄剤を洗い流すのが一般的である。しかし、これら一連の洗浄作業は、洗浄前に残っているミルクの安全な移動と洗浄剤及びすすぎ液の都合2回のボトル液の準備作業が付きまとい、結果として作業間違いや異物混入を生じる可能性があった。また別置きした残留ミルクの保管が正しく行われない場合もあって安全衛生上の確実さに疑問が残ることがあった。この点、本発明は、ミルクラインの洗浄中もミルクの衛生管理が正しく行えるものであり、特にコンビニエンスストア等において好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のコーヒーマシンに適用されるチュービングポンプを示す斜視図、並びに本発明のコーヒーマシンを示す正面図である。
【図2】コーヒーマシンを示す平面図である。
【図3】チュービングポンプを斜め上方から示す斜視図(a)、並びに斜め下方から示す斜視図(b)である。
【図4】ポンピングチューブのセッティング作業の様子を段階的に示す骨格的側面図である。
【図5】ポンピングチューブのセッティング作業の様子を段階的に示す骨格的正面図であって、図4の(a)〜(c)にほぼ対応する図である。
【図6】コーヒーマシンを構成するミルククーラの一例を示す投影部(三面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお、説明にあたっては、コーヒーマシンAについて説明しながら併せて注出口をミルククーラ側に設けた本発明の優位性(利点)について説明する。
【実施例】
【0021】
本発明のコーヒーマシンAは、もともとコーヒーが嗜好品であることに因み、ユーザが購入する都度、マシン内でコーヒーが淹れられるフレッシュブル型のものであり、コーヒーは一杯分ずつコーヒー豆から挽いて高圧高温水で抽出されるものである(いわゆるエスプレッソタイプ)。特にここでは、ミルクの添加を要するミルクメニューのコーヒー、具体的にはカフェラテやカプチーノ等を主に想定しており、これらミルクメニューのコーヒーを本格的に味わえるようにしたコーヒーマシンAである。
このためミルクMも粉ミルクではなく、低温貯蔵したミルク(生乳)を、その都度、冷蔵室50から取り出し、メニューに応じた状態(例えば高温泡立ちミルク)に仕立ててカップCに注ぐものである。
ここでコーヒー豆から抽出した直後のものをコーヒー液Lとし(言わばミルクMがまだ添加されていないもの)、コーヒー液LにミルクMが添加されたものをコーヒー飲料LMとする(言わば最終的にカップCに注出されたもの)。但し、最初からミルクMの添加を要しないメニュー(例えばブラックのエスプレッソコーヒー等)が選択されることも考慮して、上記コーヒー飲料LMには、ミルクMの添加を要しないメニューも含むものとする。
【0022】
以下、コーヒーマシンAについて更に詳細に説明する。コーヒーマシンAは、一例として図1・2に示すように、主にコーヒー液Lの抽出(ドリップ)に大きく関与するマシン本体部1と、ミルクMの保存や移送に大きく関与するミルク供給部2とに大別される。
このうちマシン本体部1は、コーヒー豆からコーヒー液Lを抽出するコーヒー液生成部3と、主にコーヒー液Lに添加するミルクMを加熱または泡立てるための蒸気を生成する蒸気生成部4とを具えて成るものである(図6参照)。
一方、ミルク供給部2は、図6に示すようにミルククーラ20を主な構成要素とするものであり、ここにミルクMを低温貯蔵する冷蔵部5と、この冷蔵部5からミルクMをカップCに向けて定量供給するためのポンプ部6と、コーヒー液LやミルクMをカップCに注ぎ出す(注ぎ込む)注出部7と、ミルク供給経路(ミルクラインML)の洗浄剤を生成・貯留するボトルを収容するための洗浄ボトル貯留部8とを具えて成るものである。
なお、図1に示すコーヒーマシンAは、マシン本体部1と、ミルク供給部2(ミルククーラ20)とが別々に形成され、これらを同じベースフレームF上で隣合うように載置した設置形態を採るものである。
以下、マシン本体部1とミルク供給部2とについて更に説明する。
【0023】
まずマシン本体部1の一構成部であるコーヒー液生成部3について説明する。コーヒー液生成部3は、実質、コーヒー液Lの抽出機であり、いわゆるエスプレッソ式の淹れ方を自動化した構造を採る。具体的には、適宜焙煎したコーヒー豆をホッパー31から一定量(一杯分)取り出し、これを一定の粒度に挽いたコーヒー粉を抽出シリンダに投入し、上下フィルタ付きピストンによる圧縮後、ここに高圧高温湯を供給し、コーヒー液Lを抽出するものである。
なお、マシン本体部1で生成される湯(または水)は、後述するミルクラインMLを洗浄する際にも用いられるものである。
【0024】
コーヒー液生成部3で抽出されたコーヒー液Lは、コーヒー液移送管32を通して、ミルククーラ20側の注出室70まで移送され、この室内上部に設けられた注出口74(コーヒー液ノズル74L)からカップCに注ぎ込まれる。また、コーヒー液移送管32はシリコン製のチューブ等で形成されるのが一般的である(いわゆる渡りチューブ)。
なお、上記注出室70やコーヒー液ノズル74L等は、本来、後述する注出部7の構成要素であるが、抽出したコーヒー液Lの移送や注出に関連する部位について以下説明する。
【0025】
注出室70は、注出部7の主な構成要素であり、本発明では、図1・6に示すように、この注出室70をミルククーラ20側に設けることが大きな特徴の一つである。すなわち、通常、注出室70は抽出機となるマシン本体部1側に設けられるが、これではミルククーラ20から取り出したミルクMをマシン本体部1側の注出室まで移送する渡りチューブ(ミルク移送管)が必要となり、ここに残るミルクMが外気温やマシン本体部1内の高温にさらされることとなり、雑菌の繁殖が懸念され、衛生管理上好ましくない。このため本発明ではミルククーラ20側に注出室70を設けることで、ミルクMの渡りチューブを無くし、残留ミルクが外気温やマシン本体部1内の高温にさらされることが無いようにしたものである。
【0026】
なお、本実施例のようにマシン本体部1とミルククーラ20とを別々の筐体(ケース)に収めた場合に渡りチューブが目視でき、その存在が明確化するが、マシン本体部1の中にミルククーラ20が設けられた場合や、マシン本体部1とミルククーラ20とが同じ筐体内に収められた場合等には渡りチューブが目視できず、一見ないように思える。しかし、現実にはこのような場合であっても、マシン本体部1側に注出室が形成されれば、ミルククーラ20からマシン本体部1の注出室にミルクMを移送する渡りチューブ(ミルク移送管)がマシン本体部1内や筐体内に存在し、残留ミルクが外気温やマシン本体部1内の高温にさらされるものである。
また、ミルククーラ20側に設けられる注出室70(注出口74)には、コーヒー液吐出用のノズル(コーヒー液ノズル74L)の他、ミルク吐出用のノズル(ミルクノズル74M)が別々に設けられ、各々がコーヒー飲料LMの性状等に応じて別個にカップCに注がれる。なお、このような注出口74は、注出室70内において昇降動自在に構成されることが好ましい。
【0027】
また注出室70は、カップCにコーヒー液Lを注ぎ込む閉塞空間であるが、前面には、カップCを出し入れする(取り出す)ための専用の開閉扉71が形成される。この開閉扉71は、図2・6に示すように、ミルククーラ20の開閉扉21の一部に別途形成され、ミルククーラ20の開閉扉21とは独立して開放・閉鎖できるように形成される。もちろん、注出室70の開閉扉71は、コーヒー液LやミルクMをカップCに注ぎ込む際には、周囲への飛散を考慮して閉鎖されるものである。なお注出室70の開閉扉71は、このような注出状況等が外部から目視できるように、半透明ないしは透明の素材で形成されるのが一般的である。
また注出室70のカップ載置台75には、ドレン管Dが接続され、注出時にこぼれたコーヒー液L等の液体を排出できるように形成される。
【0028】
次に、マシン本体部1のもう一つの構成部である蒸気生成部4について説明する。蒸気生成部4は、選択されたミルクメニュー(コーヒー飲料LM)に応じて、ミルクを適宜の状態に仕立てる蒸気を生成する部位である。すなわち、ミルクMはミルククーラ20内で常時、冷蔵(低温貯蔵)されるため、例えばカフェラテやカプチーノに適した状態に仕立てるには、低温ミルクMに蒸気を接触させることで、キメの細かい高温泡立ちミルクに仕立てるものである。
なお、マシン本体部1(蒸気生成部4)で生成される蒸気は、低温状態のミルクMを加熱するための加熱用蒸気S1と、加熱したミルクMを泡立てるための泡立用蒸気S2とであり、これらが一例として図6に示すように、各々独立した経路から、ミルククーラ20側の注出室70に供給されるものである。つまり本実施例では、移送中のミルクMに対し、加熱用蒸気S1と泡立用蒸気S2とを二段階で当てられるように蒸気経路が形成されている。ここで、二つの蒸気経路を区別する場合には、主にミルクMの加熱を担う経路をミルク加熱ライン41、主にミルクMの泡立てを担う経路をミルク泡立ライン42とする。なお、泡立用蒸気S2には、ミルクMを効果的に泡立てるために、空気(エア)を混入させることが好ましい。
【0029】
以下、注出室70において加熱用蒸気S1や泡立用蒸気S2が送り込まれる部位について併せて説明する。
加熱用蒸気S1は、注出室70内のミルク加熱室72に供給され、ここでミルクMと接触する。また、泡立用蒸気S2は、ミルク加熱室72のすぐ後段に連続して設けられるミルク泡立室73に供給され、ここで例えば加熱後のミルクMと接触する。
なおミルク泡立室73は、泡立用蒸気S2の流速を加速できるようにベンチュリ状またはノズル状に形成されることが好ましく、これは泡立用蒸気S2の流速によってミルクMを霧化しながら双方の混合を図るためである。更に、このミルク泡立室73は、例えば室内が下窄まりの略円錐状に形成され、泡立用蒸気S2と混合されたミルクMを室内の下方出口(ここがミルクノズル74Mとなる)に向かって旋回させながら撹拌する、いわゆるボルテックスミキサーの形態を採り、より一層ミルクMをキメ細かく泡立て得ることが好ましい。
【0030】
以上のような構成、すなわち低温状態のミルクMを加熱用蒸気S1によって温めてから更に泡立用蒸気S2と接触させ得るようにしたこと、またこの泡立用蒸気S2には適宜空気を混入できるようにしたこと、更にミルク泡立室73では、ベンチュリ効果によりミルクMを霧化させるように泡立用蒸気S2をミルクMに接触させるようにしたこと、またミルクMを旋回させながら攪拌するようにしたこと等により、極めてキメの細かいフォームドミルクが生成できるものである。もちろん、加熱用蒸気S1と泡立用蒸気S2とは独立して供給できるため、例えば加熱用蒸気S1のみを供給することで、ミルクMは泡立ちの少ないホットミルク状態でカップCに注ぐことができる等、バリエーション豊富なミルクMの仕立てが可能となる。
【0031】
次に、上記マシン本体部1と対を成して設けられるミルク供給部2の各構成部について説明する。ミルク供給部2は、上述したようにミルククーラ20を主な構成要素とし、冷蔵部5と、ポンプ部6と、注出部7と、洗浄ボトル貯留部8とを具えて成るものであり、まず冷蔵部5から説明する(図6参照)。
冷蔵部5は、冷蔵室50を主な構成要素とするものであり、冷蔵室50は、例えば図6に示すように、前記ミルククーラ20の開閉扉21や断熱壁22によって閉塞状態に形成され、ここでミルクMが冷蔵される。
なおミルクMは、一例として市販のゲーブルトップ型の1リットルミルクパックMP入りのものが適用され、このパック状態のまま冷蔵されるものであり、冷蔵室50には適宜の数(ここでは二本)のミルクパックMPがストックされ得るものである。そして本実施例では、このミルクパックMPにミルク汲み上げ管51を差し込み、ここからポンプ部6の作用によってミルクMを定量取り出すものである(ポンプ部6については後述する)。
【0032】
ミルク汲み上げ管51は、金属製または合成樹脂製等の剛性を有する素材で形成されることが好ましい。また、本実施例では、二本のミルクパックMPからミルクMを取り出すことから、各ミルクパックMPに差し込んだミルク汲み上げ管51を、ポンピングチューブ64(吸い込み側)と接続するには、二股管52と継手53を用いて接続するものである。すなわちミルク汲み上げ管51と二股管52との接続に継手53を用い、この二股管52(他端側)とポンピングチューブ64(吸い込み側)との接続に継手53を用いるものである。
【0033】
なおミルクMは必ずしも市販のミルクパックMPの状態で貯留される必要はなく、例えばミルクMを一旦、大容量のタンクやピッチャー等に移し替えて貯留し、ここからカップCに供給する形態も採り得る。しかし、市販のミルクパックMPは製造段階で極めて高い衛生管理の下で充填や密閉等の作業が行われるため、この商品形態を活かして、そのままパック状態で使用するのが、本コーヒーマシンAの衛生管理上、最も現実的で且つ有効な手法と考えられる。
因みに本コーヒーマシンAは、コンビニエンスストアへの設置を主に想定しており、特にコンビニエンスストアでは、店員がアルバイトであることが多く、また勤務期間も比較的短期間であること等から、全ての店員にメンテナンスの訓練(教育)を徹底することが難しい環境にある。従って、市販のミルクパックMPの状態でミルクMを冷蔵する上記形態は、店員の作業負担を極力減らし、手間の掛からない衛生管理手法であり、極めて実情に即した形態である。
【0034】
次にポンプ部6について説明する。ポンプ部6は、ミルクパックMPからミルクMを定量取り出し、カップC側に移送するものであり、本実施例では、直接ミルクMに接触することなく、ミルクMの定量供給が行えるチュービングポンプ60を適用する。
チュービングポンプ60は、一般にロータ周りにセットされたチューブを、外周側から円弧状に押さえるとともに、ロータに取り付けたローラによってチューブを内側から押圧し、ロータを回転させることで、この押圧変形位置を順次供給側へと変位させ(つまりチューブをしごき)、チューブ内の液体を供給側に移送するものである。
以下、チュービングポンプ60について更に詳細に説明する。
【0035】
本実施例のチュービングポンプ60は、一例として図3・4に示すように、ポンプの基部となるベース本体61と、このベース本体61に対し回転自在に支持されるロータ62と、このロータ62の外縁付近において回転自在に取り付けられる複数のローラ63と、ロータ62の周りに例えば半周程度巻き付け状態にセットされる弾性を有するチューブ(これをポンピングチューブ64とする)と、円弧状の規制リブ67によってロータ周りにセットされたポンピングチューブ64の外周側を押さえるカバー65とを具えて成るものである。
【0036】
なおカバー65は、ベース本体61に対し二節のヒンジ(二段のヒンジ)66によって回動自在に取り付けられるものであり、これらを区別する場合には、ベース本体側のヒンジを第一ヒンジ66Aとし、カバー側のヒンジを第二ヒンジ66Bとして区別する。また第一ヒンジ66Aと第二ヒンジ66Bとをリンク状に接続する部材をヒンジ連結体66Mとするものである。このため二節ヒンジ66について換言すれば、第一ヒンジ66Aと第二ヒンジ66Bとがジョイント部となって、ベース本体61とヒンジ連結体66Mとカバー65とをリンク状に接続して成るとも言える。
因みに図6中の符号mは、ロータ62を回転させるためのモータである。
【0037】
またポンピングチューブ64は、上述したようにローラ63による押圧変形が繰り返し加えられるものであり、ローラ63が通過した後には元の形状(円形断面)に復帰する弾性を有するものであり、通常はシリコン製のものが適用される。
またロータ62(ローラ63)とカバー65(規制リブ67)とによってポンピングチューブ64の内周側と外周側とを規制した状態では、複数のローラ63のうちの少なくとも一つ以上が、ポンピングチューブ64に押圧変形を付与するものである。
更にポンピングチューブ64は、ロータ62の周りに円弧状にセットされるものであるため、該チューブをロータ周りに容易に且つ綺麗にセットするには、チューブ自身が当初からU字状に形成されていることが好ましい。すなわち、ポンピングチューブ64は、取り付け前の初期状態から中央部がほぼ半円状を成し、その両端部分がほぼ直線状を成すU字状であることが好ましく、これにより該チューブをロータ周りに巻き付けるセット作業が極めて容易となり、また誰が行ってもほぼ同じ状態にセットできるものである。
【0038】
また図5(c)に示すように、ローラ63がポンピングチューブ64に押圧変形を与える範囲を接触領域ARとすると、カバー65の二節ヒンジ66は、図5(a)に示すようにチュービングポンプ60(ロータ62)を正面から視て、この接触領域ARのほぼ中央線上に設けられることが好ましい。すなわちポンピングチューブ64は、中央部がロータ62の周りに約半周程度巻き付けられ、この区間でローラ63がポンピングチューブ64を押圧するため、上記接触領域ARとは、ロータ62のほぼ半円程度となり、角度で言えば約180度となる。そして、前記二節ヒンジ66は、図5(a)に示すように、この半円のセンターライン上に設けられるものである。
【0039】
また、カバー65の回動自由端側(左右両側)には、凸部69Aが形成される一方、ベース本体61には、カバー閉鎖時にこの凸部69Aを受け入れる嵌合溝69Bが形成される。すなわち、カバー65はベース本体61に対し、凸部69Aと嵌合溝69Bとの係止構造69(いわゆるクリックストップ機構)により、強固に閉鎖される(留められる)ものである。
またカバー65は、ベース本体61に係止させた閉鎖状態で、ロータ周りのポンピングチューブ64の外周側を全体的に押さえるだけでなく、ロータ62の正面側も全て覆い、ポンピング作動時に回転するロータ62を露出させないものである。このため回転するロータ62への異物の挟み込みが防止され、作動の安定性がより達成されるものである。
【0040】
また、ベース本体61とカバー65には、ポンピングチューブ64の両端部分を受け入れ、これを保持するためのチューブ受入溝68が形成される(図3・5参照)。このチューブ受入溝68は、ロータ周りにU字状にセットされたポンピングチューブ64の両端直線状部分を保持するものであり、カバー65をベース本体61に合わせた閉鎖状態で、チューブ外側とほぼ同じ円柱状(受入孔)を成すように、一方ずつが半割り状に形成されるものである。
【0041】
そして、カバー65を二節ヒンジ66によってベース本体61に回動自在に取り付けたことにより、カバー65の回動自由度が増し、以下のような作動が可能となる。すなわち、まず図4・5の(a)→(b)に示すように、前記接触領域ARのほぼ中央線上外周側(ここでは半円状の接触領域ARの頂部)のみにおいて規制リブ67がポンピングチューブ64に当接し、該チューブをロータ62の中心側(ローラ63側)に圧接するように、カバー65を回動させるものである。また、これに続く更なる回動によって図4・5の(b)→(c)に示すように、前記頂部付近での圧接を更に増強させつつ、頂部付近の圧接をポンピングチューブ64の外周全域へと波及させるように、円弧状のポンピングチューブ64を全体的に押さえて行くものである。
【0042】
また、カバー65を完全に閉鎖しベース本体61に留めた際には、二節ヒンジ66と係止構造69によってカバー65の位置が強固に維持されるため、ポンピングチューブ64を内周側及び外周側から規制するロータ62と規制リブ67の間隔(位置)が正確に決定されることとなり、ポンピングチューブ64のセッティング作業そのものが容易となる(難易度が下がる)。言い換えれば誰がセッティング作業を行っても(メンテナンスの訓練を行ったものでなくても)常に同じ状態にポンピングチューブ64をセッティングすることができるものである。
またベース本体61に対しヒンジ接続されたカバー65は、ロータ62の正面側に突出する回動のみが許容され、ロータ62の径方向にはもともと移動しない構造であるため、ロータ62の回転によって、ローラ63による径方向の押圧力がチューブを介してカバー65に加わっても、カバー65は径方向にガタツキにくい構造もしくはガタツキようのない構造となっている。
【0043】
また本実施例ではポンピングチューブ64の吐き出し側は、図6に示すように、そのままミルク加熱室72に接続するが(適宜、継手53を用いることが可能)、この区間が長い場合等には、別途チューブ(ミルク移送管)を介在させても構わない。その場合には、ポンピングチューブ64(吐き出し側)とチューブ(ミルク移送管)との接続部分や、チューブ(ミルク移送管)とミルク加熱室72との接続部分に適宜、継手53を設けるものである。
ここで、本明細書では、ミルクMの供給に関わる経路、つまりミルク汲み上げ管51からミルク泡立室73のミルクノズル74MまでをミルクラインMLとするものである。
【0044】
また本実施例においては、図6に示すように、チュービングポンプ60やミルク加熱室72に至るまでのミルクラインMLを、ミルクMを低温貯蔵する冷蔵室50と同じ空間内に設置するものである。これは、ミルク汲み上げ管51からポンピングチューブ64を経てミルク加熱室72に至る区間には、ミルクMが残留するため、ここに残留するミルクMも冷蔵状態で保存し、ミルクMの衛生管理を徹底するためである。
またチュービングポンプ60は、上述したように、移送作用を生じさせるロータ62(ローラ63)が、直接ミルクMと接触しないため、非常に衛生的である。また一回ごとのミルク供給が終わった状態では、ポンピングチューブ64がローラ63によって押し潰された状態となるため、チューブ内に残留するミルクMは、ミルクパックMP内に戻されることがなく、また残留量も少量に抑えられるため、この点においても極めて衛生的である。
【0045】
次に注出部7について説明する。注出部7は、注出室70を主な構成要素として成り、この注出室70はミルククーラ20の開閉扉21とは別個に開閉できる開閉扉71によって開閉自在に形成され、ここからカップCの出し入れ(取り出し)が行われる。これは、ミルククーラ20の開閉扉21を閉鎖し、冷蔵室50の低温状態を維持したまま、注出室70へのカップCの出し入れが行えるようにするためである。
また注出室70には、室内上部にミルク加熱室72とミルク泡立室73とが上下方向に連続して設けられ、上側のミルク加熱室72が冷蔵室50と注出室70とを仕切る断熱壁22に設けられている。すなわち、注出室70は、ミルク加熱室72が取り付けられた断熱壁22によって冷蔵室50と仕切られており、これはミルク加熱室72やミルク泡立室73(ミルクノズル74M)に蒸気が供給され注出室70内が高温となるためである。もちろん、注出室70内には、コーヒー液ノズル74Lも設けられており、ここから高温状態のコーヒー液Lが注出されることからも注出室70内は高温となるものである。
また注出室70には、コーヒー飲料注入用のカップCを載せるカップ載置台75が設けられるものであり、ここにはドレン管Dが接続され、注出時にこぼれたコーヒー液L等の液体を排出できるように構成されている。
【0046】
このように本発明では、注出室70(注出口74)をミルククーラ20側に設けたことが大きな特徴の一つである。これによりミルククーラ20からマシン本体部1にミルクMを移送する渡りチューブ(ミルク移送管)が必要なくなり、従って渡りチューブ内に残る残留ミルクが外気温や高温雰囲気にさらされることもないものである。もちろん、本発明においても、ミルク加熱室72やミルク泡立室73には、いくらかはミルクMが付着し、これが外気温にさらされることは考えられるが、この部分には蒸気が供給され、言わば蒸気殺菌が行われるため、雑菌が繁殖する心配はほとんどないものである。少なくともマシン本体部側に注出口を設け、ミルクMを渡りチューブでマシン本体部に移送していた従来のコーヒーマシンと比べれば、はるかに雑菌が繁殖する虞はなくなり、極めて衛生的である。
なお本発明では、コーヒー液移送管32内にコーヒー液Lが残留するが、コーヒー自体は極めて腐敗しにくいものであるため、ここに残留するコーヒー液Lによって雑菌が繁殖する虞は全くないものである。
【0047】
更に、ミルクMの渡りチューブが不要の本発明では、ミルクラインMLの経路長が短く、蒸気接触後、直ぐにミルクMをカップCに注ぎ入れる構造であるため、加熱したミルクMの温度低下がほとんど起こらず、これが結果的にコーヒー飲料LMの温度低下を防ぐという大きなメリットになるため、以下これについて説明する。
まずユーザは、ミルクMとコーヒー液Lとを合わせたコーヒー飲料LMの温度で80℃程度を要求する。これは、この程度の高温でないとコーヒー飲料LMをテイクアウトした際に、すぐにゴクゴク飲めるような、ぬるい温度になってしまうためである。この点、嗜好品であるコーヒーをユーザが好むのは、落ちついた雰囲気でゆったりとくつろぎながら飲むことが大きな比重を占め、これを考慮するとガブ飲みできてしまうぬるい温度では物足りず、やはり80℃程度の高温が求められる。
またコーヒー液Lの抽出温度は約97℃程度であるのに対し、ミルクMは蒸気で加熱しても約70℃程度までしか上げられないものである(ミルクMは加熱し過ぎるとタンパク質が固まり分離してしまい、これは牛乳を加熱した場合に膜が形成されるのと同じ現象)。
【0048】
もちろん本発明ではミルクMの渡りチューブが不要となる一方で、コーヒー液移送管32(渡りチューブ)は設けることになり、その分、この管内に残るコーヒー液Lの温度が多少低下することは否めない。しかし、本コーヒーマシンAで例えばミルクメニューの一種であるカフェラテを150cc程度淹れる場合には、ミルクMの分量は約100cc、コーヒー液Lの分量は約50cc必要であり、ミルクMが飲料全体の約2/3を占めるものである。
このようにミルクMは加熱した状態でもそれほど温度が上げられず、またミルクメニューではミルクMが飲料の半分以上を占めるものであり、このためミルククーラ20側に注出室70(注出口74)を設けた本発明は、コーヒー液移送管32内に残留するコーヒー液Lの温度としては多少下がっても、加熱後のミルクMの温度低下がほとんどない利点(有益性)の方が大きく、最終的にカップCに注がれるコーヒー飲料LMとしての温度低下が抑制され、これが多大な効果を奏するものである。
もちろんミルクラインMLの全長(経路長)が短いことは、ミルクラインMLを装置から取り外し、各部の接続を切り離して手洗いする際にも洗浄し易く(ミルクカスが落ち易く)、衛生管理の点でも大きな効果を奏する。
【0049】
次に洗浄ボトル貯留部8について説明する。まず洗浄ボトル貯留部8の「洗浄」とは、定期的に行われるミルクラインMLの洗浄を意味しており、また洗浄ボトル貯留部8とは、その洗浄剤を充填するボトルBを収容する空間である。
そして本実施例では、この洗浄ボトル貯留部8がミルククーラ20に形成され、洗浄ボトルBを常時、ミルククーラ20に収容しておく形態となる。これによりミルクラインMLの洗浄時でもミルクMをミルククーラ20内で冷蔵保存でき、洗浄時におけるミルクMの衛生管理がより容易に、より確実に行えるものである。因みに、従来は、ミルクラインMLの洗浄中、ミルクMをミルククーラ20から別の冷蔵庫に移して保管するのが一般的であった。
【0050】
洗浄ボトル貯留部8について具体的に説明すると、この部位は図6に示すように、ミルクMを低温貯蔵する冷蔵室50の下方に設けられ、冷蔵室50とは断熱壁22によって仕切られるものである。
なお洗浄ボトルBには、洗浄剤吸い上げ管81が常に挿入されており、洗浄剤はこの洗浄剤吸い上げ管81からミルクラインMLに送られるものである。また洗浄ボトルBには、ミルククーラ20の開閉扉21側に洗浄剤投入口82が形成され、その反対の後ろ側には投入された洗浄剤を希釈する湯(または水)を注ぎ込むための供給口83が形成され、更にボトル上面には洗浄剤吸い上げ管81を挿入するための差込口84が形成される。またボトル上面には、洗浄ボトルBへの給湯(給水)がオーバーフローした場合に、これを排水するドレンチューブDTを差し込むためのドレン口85が形成される。
【0051】
なお、洗浄剤吸い上げ管81は、金属製または合成樹脂製等の剛性を有した素材で形成されることが好ましい。また、通常ミルクラインMLの洗浄は自動で行われるため、供給口83は、電磁弁等により自動的に開閉されることが好ましい。更にドレン口85に差し込まれたドレンチューブDTは、注出室70のカップ載置面75のドレン管Dに接続されることが好ましい。
また洗浄ボトルBに差し込まれる洗浄剤吸い上げ管81は、上部が断熱壁22を貫通するように形成され、吸い上げ端部81AがミルクMを低温貯蔵する冷蔵室50内に出現するように設けられる。またこの吸い上げ端部81Aは、ミルク汲み上げ管51の汲み上げ端部(ここでは二股管52とポンピングチューブ64を接続する継手53に相当)とほぼ同じ高さに設定され、これはポンピングチューブ64をミルク汲み上げ管51側から洗浄剤吸い上げ管81に嵌め替える作業を行い易くするためである。
【0052】
本発明のコーヒーマシンAは、以上のような基本構造を有するものであり、以下このマシンに適用されるチュービングポンプ60においてポンピングチューブ64を交換する態様(セッティング態様)について説明する。
なお説明にあたっては、チュービンプポンプ60から既にポンピングチューブ64(弾性が低下しヘタリを生じたもの)を取り外した状態から、新たなポンピングチューブ64を取り付けるセッティング態様について説明するものである。因みにポンピングチューブ64を取り外す態様は、セッティングの逆の順序で行うものであり、このようなチューブの着脱が「交換」となるものである。
またセッティングの初期状態は、当然、ポンピング作動時にロータ62の正面に位置していたカバー65が大きく開放された状態、すなわちカバー65の回動自由端側がベース本体61から大きく離開した状態である(図4(a)参照)。
なお、図4は、セッティングの様子を段階的に示した骨格的な側面図であり、本図(a)、(b)、(c)にほぼ対応する様子が図5の正面図(a)、(b)、(c)である。
【0053】
ポンピングチューブ64をセッティングするには、図4(a)・図5(a)に示すように、まず該チューブの中央部分をロータ62の周りに巻き付けるようにしながら、該チューブの左右両端部分をベース本体61に形成されたチューブ受入溝68に収めるようにセットするものである。
この際、ポンピングチューブ64は、上記図5(a)に示すように、ロータ62の外周に沿って(つまりローラ63に外接するように)綺麗な円弧状に取り付けることが望ましいため、ポンピングチューブ64自身が当初から(セッティング前の状態から)中央部が半円状を成し、その両端部分が直線状を成すU字状に形成されていることが好ましい。もちろんポンピングチューブ64が当初からU字状に形成されていれば、該チューブをロータ62周りにセットする作業が極めて行い易くなり、セッティングのバラツキがより一層、抑制できるものである。
【0054】
その後、ベース本体61に対し二節のヒンジ66で接続されたカバー65を徐々に回動させて行くが、これにはまず図4(a)→(b)に示すように、主に接触領域ARのほぼ中央(ここでは半円状のほぼ頂部)のみで規制リブ67がポンピングチューブ64に圧接するように回動させる。また、これに続く更なる回動によって図4(b)→(c)に示すように、上記頂部付近での圧接を更に進行させつつ、この圧接をポンピングチューブ64の頂部から円弧状の全域へと波及させるように、ポンピングチューブ64を全体的に押さえて行くものである。
このようにカバー65の回動によって、ポンピングチューブ64の外周側から加えられる規制リブ67の圧接は、当初は頂部付近から始まり、その後の回動により、この頂部付近での押さえ込みを更に増強させながら、この圧接を円弧状全域に波及させるものである。このため実際には頂部付近の圧接と、この圧接を円弧状に波及させる作動とは同時に進行するものであり、頂部付近の圧接が完了するのは、圧接を円弧状に波及させる作動が完了するのとほぼ同時である。
【0055】
また頂部付近から始まった圧接が円弧状に全体に波及して行く作動は、図5(b)→(c)に示すように、規制リブ67がポンピングチューブ64の外周側を押さえて行く作動であるため、該チューブはこのような作動中、長手方向に幾らか伸長したり移動したりすることが考えられる。この点、カバー65を図5(c)に示す状態に閉鎖するまでは、該チューブの両端部は、ベース本体61に形成された半割り状のチューブ受入溝68によって保持されるため(全周保持ではないため)、また全体に波及する圧接が頂部付近から両端部に徐々に、且つ左右均等に伝わって行くため、該チューブはこのような微妙な伸長や移動が阻害されず、セッティングがスムーズに行えるものである。
【0056】
そしてカバー65の回動は、図4・5(c)に示すように、係止構造69による閉鎖状態で終了する。この状態では、カバー65に形成されている凸部69Aが、ベース本体61に形成されている嵌合溝69Bに嵌まり、カバー65は、ベース本体61に対して強固に位置決めされる(固定される)。このため、この閉鎖状態では、ポンピングチューブ64を内周・外周から規制するロータ62と規制リブ67の間隔(位置)、言い換えれば規制リブ67によるポンピングチューブ64の圧接がいつでも一義的に決定されるものである。従って、このような構造を採るチュービングポンプ60は、ポンピングチューブ64のセッティング作業そのものが容易となり、また誰がセッティング作業を行っても(メンテナンスの訓練を行ったものでなくても)常にほぼ同じ状態にポンピングチューブ64をセッティングすることができるものである。
【0057】
次にミルクラインMLの洗浄態様について説明する。なお、ここではこの種のコーヒーマシンで多く採用される自動洗浄について説明する。また以下の説明では、基本的にポンピングチューブ64も洗浄し再使用するものであるが、ミルクラインMLの洗浄に併せてポンピングチューブ64を新たなものに交換する場合には今まで使用していたポンピングチューブ64を必ずしも洗浄する必要はない。
【0058】
ミルクラインMLを洗浄するには、まず接続状態にあるミルク汲み上げ管51、二股管52、ポンピングチューブ64、ミルク加熱室72等を継手53も含めて全て取り外す。またミルク汲み上げ管51についてはミルクパックMPから引き抜き、またポンピングチューブ64についてはチュービングポンプ60から取り外すものである。
その後、コーヒーマシンA(ミルククーラ20)から取り外したこれらの部品を、湯または水で手洗いするものであり、更にはその後にアルコール消毒することが好ましい。なお、ミルク加熱室72やミルク泡立室73(ミルクノズル74M)等がミルククーラ20から取り外せる場合には、この段階で併せて取り外し、上記と同様に洗浄することが好ましい(取り外せない場合には、湯または水で別途洗浄したり、清拭したりした後、アルコール消毒を行うことが望ましい)。
その後、これらを装置に再度装着し、また接続するものであるが、ポンピングチューブ64(吸い込み側)は、二股管52と接続しないものである。
【0059】
その後、洗浄ボトルBの洗浄剤投入口82から例えば約30ccの液体洗剤(洗剤原液)を入れ、次にポンピングチューブ64の吸い込み側を、洗浄ボトルBから立ち上がっている洗浄剤吸い上げ管81(吸い上げ端部81A)に接続した後、ミルククーラ20の開閉扉21を閉めて、洗浄スタートボタンを押すことで自動洗浄を開始する。開始後、スタートONで電磁弁が開放され、マシン本体部1から約300ccの湯または水が供給口83を経て、洗浄ボトルB内に自動供給される(規定量供給で電磁弁閉鎖)。この時点で洗浄ボトルBには、上述したように既に液体洗剤が入っており、タイマーアップでチュービングポンプ60が回りミルクラインMLの洗浄を開始する。更にタイムアップ後、すすぎ用の湯または水が同じく電磁弁により、洗浄ボトルBにおよそ1500cc供給され、タイムアップ後、ミルクラインMLのすすぎが行われる。
【0060】
そして、これら一連の自動洗浄が終わった段階で、作業者に完了を知らせ、作業者が洗浄剤吸い上げ管81(吸い上げ端部81A)に接続されていたポンピングチューブ64(吸い込み側)を取り外し、ミルクパックMPに差し込まれているミルク汲み上げ管51に接続して(ここでは二股管52への接続となる)、全ての作業が終了する。
このように本実施例ではミルクラインMLを洗浄する際、洗浄前に残っていたミルクM(ミルクパックMP)は、そのまま冷蔵室50で保存する態様となり、このため洗浄時におけるミルクMの保管(衛生管理)がより容易に、より確実に行えるものである。
また本実施例では、以上のような構成により、生乳を適用するエスプレッソコーヒーマシンに関し、ミルク供給における安全衛生と日常のサニテーションを高いレベルで達成することができるものである。
【符号の説明】
【0061】
A コーヒーマシン
1 マシン本体部
2 ミルク供給部

1 マシン本体部
3 コーヒー液生成部
4 蒸気生成部

2 ミルク供給部
5 冷蔵部
6 ポンプ部
7 注出部
8 洗浄ボトル貯留部

2 ミルク供給部
20 ミルククーラ
21 開閉扉
22 断熱壁

3 コーヒー液生成部
31 ホッパー
32 コーヒー液移送管

4 蒸気生成部
41 ミルク加熱ライン
42 ミルク泡立ライン

5 冷蔵部
50 冷蔵室
51 ミルク汲み上げ管
52 二股管
53 継手

6 ポンプ部
60 チュービングポンプ
61 ベース本体
62 ロータ
63 ローラ
64 ポンピングチューブ
65 カバー
66 二節のヒンジ(ヒンジ)
66A 第一ヒンジ
66B 第二ヒンジ
66M ヒンジ連結体
67 規制リブ
68 チューブ受入溝
69 係止構造
69A 凸部
69B 嵌合溝

7 注出部
70 注出室
71 開閉扉
72 ミルク加熱室
73 ミルク泡立室
74 注出口
74L コーヒー液ノズル
74M ミルクノズル
75 カップ載置台


8 洗浄ボトル貯留部
81 洗浄剤吸い上げ管
81A 吸い上げ端部
82 洗浄剤投入口
83 供給口
84 差込口
85 ドレン口

A コーヒーマシン
AR 接触領域
B 洗浄ボトル(ボトル)
C カップ
D ドレン管
DT ドレンチューブ
F ベースフレーム
L コーヒー液
LM コーヒー飲料
m モータ
M ミルク
MP ミルクパック
ML ミルク供給ライン
S1 加熱用蒸気
S2 泡立用蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主にコーヒー液の抽出を担うマシン本体部と、主にミルクの冷蔵を担うミルク供給部とを具え、ミルクの添加を要するコーヒー飲料が淹れられるようにしたコーヒーマシンにおいて、
前記ミルク供給部は、冷蔵室でミルクを低温貯蔵するミルククーラを具えて成り、このミルククーラ側に、マシン本体部で抽出したコーヒー液や、冷蔵室から取り出したミルクをカップに注ぐ注出室を設けるとともに、
マシン本体部とミルククーラとの間にはコーヒー液移送管を架け渡し、このコーヒー液移送管によってマシン本体部で抽出したコーヒー液を、マシン本体部から注出室の注出口まで移送するようにしたことを特徴とする、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシン。
【請求項2】
前記注出口を具える注出室は、ミルクを冷蔵する冷蔵室とは断熱壁で仕切られていることを特徴とする請求項1記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシン。
【請求項3】
前記注出室は、当該室内にミルク加熱室とミルク泡立室とを具え、これらにはマシン本体部で生成された蒸気が各々独立して供給されるものであり、
また、前記冷蔵室から取り出されたミルクは、前記ミルク加熱室を経由し、ミルク泡立室からカップに注がれるものであり、このミルク加熱室が冷蔵室と注出室とを仕切る断熱壁に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシン。
【請求項4】
前記冷蔵状態のミルクを定量取り出しカップ側に移送するにあたってはチュービングポンプが適用されるものであり、このチュービングポンプはミルクを冷蔵する冷蔵室と同じ空間内に設けられることを特徴とする請求項1、2または3記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシン。
【請求項5】
前記冷蔵状態のミルクをカップ側に移送するミルクラインは、洗浄ボトルから当該ラインに送り込まれる洗浄剤によって洗浄されるものであり、
前記ミルククーラには、この洗浄ボトルを常時収容するための洗浄ボトル貯留部が形成されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の、注出口をミルククーラ側に設けたコーヒーマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−157505(P2012−157505A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18796(P2011−18796)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(511027493)
【Fターム(参考)】