説明

注出器

【課題】構造が簡素化され、不正注出を一目で見極めることができる一回使い切りタイプの注出器を提案する。
【解決手段】内容物の充填空間Mを形成し、筒体1と、ピストン2と、押圧部材4とを備えた注出器において、前記押圧部材4を、前記ピストン2の背面部に連係する先端部4aを有し、前記筒体1に係止突起tを複数配列したロッド4bと、このロッド4bを先端部4aを残して取り囲むとともに後端部に押し込みヘッド4eを形成したスリーブ4cと、弾性支持部材4dにて構成する。該スリーブ4cの押し込み時に前記ロッド4bの係止突起tに連係して前記ロッド4bを前記ピストン2とともに前記注出口へ向けて押圧するが、該スリーブ4cの復帰に際しては弾性変形により前記ロッド4bの係止突起tに非連係となる爪部5を設け、前記筒体1の末端部に凹所を有し、弱化部を介して引きちぎり可能に一体連結するカバーキャップ7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を一回で使い切る際に使用して好適な注出器に関するものであり、構造の簡素化を図りつつも、内容物の誤った注出あるいは不正な注出を確実に防止しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
比較的粘度が高く流動性のないものを内容物とする化粧品等において使用される一回で使い切るカートリッジタイプの容器が数多く存在しており、この種の容器としては、内容物を充填する容器体内に押圧板を配置し、この押圧板を押し釦により押し込むことで内容物を注出する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来の注出器にあっては、容器を構成する部材が比較的多く、構造の複雑化が避けられないばかりか効率的な組み立てが行えない不具合があるとともに、とくに不正な開封が行われたとしても押し釦がばね部材によって自動的に初期姿勢に復帰するものにあっては容器体が透明あるいは半透明体にて構成されていない限りその確認ができないところに改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−114355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、構造の簡素化が可能であり、かつ、不正な開封が行われたかどうか目視でもって確認できるバージンタイプの注出器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容物の充填空間を形成しその先端部に注出口を有する筒体と、前記充填空間内にスライド可能に配置されたピストンと、前記ピストンを押圧して前記充填空間内の内容物を前記注出口を通して排出する押圧部材とを備えた注出器であって、
前記押圧部材が、前記ピストンの背面部に当接する先端部を有し前記筒体の軸心に沿う向きに係止突起を複数配列したロッドと、このロッドを先端部を残して取り囲むとともに後端部に押し込みヘッドを形成したスリーブと、前記筒体内に配され前記スリーブを前記筒体の末端側へ付勢する弾性支持部材とを備え、
前記スリーブの先端に、該スリーブの押し込み時に前記ロッドの係止突起に連係して前記ロッドを前記ピストンとともに前記注出口へ向けて押圧するが、該スリーブの初期姿勢への復帰に際しては弾性変形により前記ロッドの係止突起とは非連係となる爪部を設け、
前記筒体の末端部に、前記スリーブの押し込みヘッドを内側に納める凹所を有し、弱化部を介して引きちぎり可能に一体連結するカバーキャップを設けたことを特徴とする注出器である。
【0007】
スリーブの先端部には、弾性変形により先端開口の拡大を可能とする少なくとも一本のスリット、それも、スリーブの軸心に沿う向きに切り込まれたスリットを形成しておくか、あるいは薄肉部を形成しておくのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
カバーキャップを引きちぎってスリーブの押し込みヘッドを露出させなければ内容物を排出することができないので、カバーキャップが取り外されていない限り不正な開封が行われていないことがわかる。
【0009】
構成部材は、大きく分けて、注出器の本体部分をなす筒体と、注出口を形成するノズルチップと、内容物を押し出すためのピストンと、ピストンを押し込むための押圧部材と、ノズルチップの開孔を閉塞する蓋体の5部材ですむため構造の簡素化が可能となる。
【0010】
内容物の排出を途中でやめると、ヘッドは弾性支持部材の付勢力によって初期姿勢へと復帰することになるが、ロッド及びピストンは、そのままの位置におかれるため、小出し注出が可能であり、内容物の出しすぎを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にしたがう注出器の実施の形態を示した図である。
【図2】(a)(b)は図1に示した注出器の要部の外観斜視図であり、(a)は弾性変形前の状態を示した図であり、(b)は弾性変形している状態を示した図である。
【図3】図1に示した注出器の使用状態を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう注出器の実施の形態を示した図である。
【0013】
図における符号1は、前後にそれぞれ開放端を有し、その内側に内容物の充填空間Mを形成する筒体である。この筒体1は、その本体部分をなす大径筒部1aと、この大径筒部1aの先端に一体的に設けられた小径筒部1bからなり、大径筒部1aの後端部域には指掛け部を形成するためのフィンあるいはフランジを設けることができる。また、2は筒体1の充填空間M内にてスライド可能に配置されたピストンである。ピストン2は、筒体1の内周壁部1aにおいて摺動可能に当接するシール部が形成されたピストン本体2aと、このピストン本体2aの背面に一体連結してその内側に凹所を形成する周壁2bから構成されている。
【0014】
また、3は、筒体1の小径筒部1の開口端に嵌合保持され、ピストン2によって押圧された内容物を排出するノズルチップである。このノズルチップ3によって内容物を注出する注出口を形成している。4は、ピストン2を押圧して充填空間M内の内容物をノズルチップ3の開孔を通して排出する押圧部材である。
【0015】
押圧部材4は、ピストン2の背面部で周壁2bによって形成された凹所に抜け出し不能に入り込で連係するディスク状の先端部4aを有し、筒体1の軸心Lに沿う向きに鋸刃状の係止突起tが複数配列されたロッド4bと、このロッド4bを先端部4aを残して取り囲む図2(a)(b)に示すような先端先すぼまり状のスリーブ4cと、このスリーブ4cを筒体1内でその末端部に向けて付勢するスプリングの如き弾性支持部材4dとから構成されており、該スリーブ4cの後端部には、該後端部に一体連結し筒体1の末端部から突出する押し込みヘッド4eが形成されている。ここに、鋸刃状の係止突起tは、先端部4a側において傾斜面を有し、後端部側においてはロッド4bの軸心L1(筒体1の軸心Lと同じ。)に直交する垂直面を有する断面三角形状ものが適用され、弾性支持部材4dとしては、弾性支持部材本体(合成樹脂製のスプリング等)4d1の上端にスリーブ4cの外表面に嵌合するリング4d2が設けられており、下端に筒体1の内側壁部に嵌合するリング4d3が設けられたものが適用される。係止突起tは、ロッド4bの周りに間隔をおいて複数設けてもよいし、環状体として設けてもよい。
【0016】
5は、スリーブ4cの先端開口(先端開口の径はスリーブ4cの径よりも若干小さく設定されている。)に形成された爪部である。この爪部5は、図2(a)(b)に示すように係止突起tの傾斜面と同等の傾斜面5aと、係止突起tの垂直面と同等の垂直面5bを有している。6は、スリーブ4cの先端部寄りの周壁の対向位置に設けられた一対のスリットである。このスリット6は、ロッド4bの軸心L1に沿って成形され、スリーブ4cの先端開口で開放される切込み端6aを有しており、爪部5が係止突起tの傾斜面5aに沿って滑動する際に図2(b)に示すように、該スリット6の行き止まり端6bを起点にしてスリーブ4cの先端部域の周壁を弾性変形させて該先端開口を拡大することができるようになっている。スリット6の代わりに薄肉部を設けて周壁を弾性変形させてもよい。
【0017】
さらに、7は、筒体1の末端部に設けられたカバーキャップである。このカバーキャップ7は、天板7aと、この天板7aの縁部に一体連結して下向きに開放された凹所を形成する周壁7bと、この周壁7bの外側下端部において一体的に設けられ、筒体1の末端に当接する位置決め用のフランジ部7cからなっており、該周壁7bの下端部が筒体1の末端部の内側壁部でアンダーカット如き係合手段にて嵌合保持されている。8は、フランジ部7cとカバーキャップ7の周壁7bとを複数個所において切り離し可能に連結する連結片である。フランジ部7cと周壁7bとの間には環状溝部を設けてその部位の肉厚を薄くして該フランジ部7cと周壁7bとの切り離しを可能とする弱化部を形成してもよい。9は、筒体1の小径筒部1bに嵌合保持され、ノズルチップ3の開孔を閉塞するキャップ、10、11は、スリーブ4cの上部外表面に間隔をおいて設けられたディスクである。ディスク10は、その先端縁部10aが筒体1の内側壁部に近接しており、ディスク11はその先端縁部11aがカバーキャップ7の周壁7aの下端部における内側壁部に近接しており、これらディスク10、11は、該スリーブ4cの筒体1内での起立姿勢を維持するガイドとして機能する。
【0018】
上記の構成からなる注出器において、使用前(開封前)は、図1に示すように筒体1の末端部には、カバーキャップ7が取り付けられた状態にあるので、不正な開封がなされていないことが一目で分かる。
【0019】
かかる注出器において、充填空間M内の内容物を排出するには、まず、カバーキャップ7を弱化部を形成する環状溝部8から引きちぎって押し込みヘッド4eを露出させるとともにキャップ9を取り外し、フィン1cに指を掛けて図3に示すように押し込みヘッド4eをノズルチップ3に向けて押し込めばよい。そうすると、これによりピストン2が押圧され充填空間M内の内容物がノズルチップ3の開孔を通して排出される。
【0020】
例えば、内容物の排出途中で押し込みヘッド4eの押し込みを一旦停止すべく押し込みにかかる力を取除くと、スリーブ4cは弾性支持部材4dにて筒体1の末端部に向けて付勢されているため、初期姿勢へと復帰することになる。このとき爪部5は係止突起tの傾斜面に沿って滑動して容易に該係止突起tを乗り越える(スリット6が設けられたスリーブ4cの先端部域の周壁が図2(b)に示した如く行き止まり端6bを基点にして弾性変形して先端開口が拡大される。)ことになり(この状態を非連係という。)、ピストン2及びロッド4bはその部位に置き去りにされたままになる。押し込みヘッド4eに再度押し込み力を付加すると、爪部5は、その垂直面5bが係止突起tの垂直面に突き当り(この状態を連係という。)、ピストン2はロッド4bによって再度押圧され充填空間M内に残存した内容物が引き続き排出される。
【0021】
本発明にしたがう注出器は、基本的には、一回の押し込みでもって内容物を排出する一回使い切りタイプのものであるが、押し込みヘッド4eの押し込みを複数回に分けて繰り返すことにより内容物の出しすぎを防止することが可能であり、とくに内容物を適性量排出するのに有用となる。
【0022】
注出器の構成部材は、全て合成樹脂にて構成することができる。
【0023】
スリット6はスリーブ4cの周壁対向位置に二本設けた場合について示したが、該スリット6の本数はとくに限定されない。
【0024】
弾性支持部材4dを構成するリング4d2、4d3の設置位置(スリーブ4cの外表面、筒体1の内側壁部)には、その位置ずれ防止のための段差部C1、C2を設けておくのがよい。
【0025】
キャップ9に関しては、天板9aとこれに一体連結する内外二重の筒体9b、9cからなるものとしてその内側の筒体9bにて筒体1の小径筒部1bにアンダーカット係合させる例を示したが、該キャップ9はねじによって係合させてもよく、この点についても限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
不正な開封がなされたかどうか一目で見極めることが可能であり、かつ構造の簡素化された一回使い切りタイプの注出器が提供できる。
【符号の説明】
【0027】
1 筒体
1a 大径筒部
1b 小径筒部
1c フィン
2 ピストン
2a ピストン本体
2b 周壁
3 ノズルチップ
4 押圧部材
4a 先端部
4b ロッド
4c スリーブ
4d 弾性支持部材
4e 押し込みヘッド
5 爪部
5a 傾斜面
5b 垂直面
6 スリット
6a 切り込み端
6b 行き止まり端
7 カバーキャップ
7a 天板
7b 周壁
7c フランジ部
8 環状溝部
9 キャップ
9a 天板
9b 筒体
9c 筒体
10 ディスク
10a 先端縁部
11 ディスク
11a 先端縁部
M 充填空間
t 係止突起
L 軸心
軸心
段差部
段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の充填空間を形成し、その先端部に注出口を有する筒体と、前記充填空間内にスライド可能に配置されたピストンと、前記ピストンを押圧して前記充填空間内の内容物を前記注出口を通して排出する押圧部材とを備えた注出器であって、
前記押圧部材が、前記ピストンの背面部に連係する先端部を有し前記筒体の軸心に向きに係止突起を複数配列したロッドと、このロッドを先端部を残して取り囲むとともに後端部に押し込みヘッドを形成したスリーブと、前記筒体内に配され前記スリーブを前記筒体の末端側へ付勢する弾性支持部材とを備え、
前記スリーブの先端に、該スリーブの押し込み時に前記ロッドの係止突起に連係して前記ロッドを前記ピストンとともに前記注出口へ向けて押圧するが、該スリーブの初期姿勢への復帰に際しては弾性変形により前記ロッドの係止突起とは非連係となる爪部を設け、
前記筒体の末端部に、前記スリーブの押し込みヘッドを内側に納める凹所を有し、弱化部を介して引きちぎり可能に一体連結するカバーキャップを設けたことを特徴とする注出器。
【請求項2】
前記スリーブは、その先端部に、弾性変形により先端開口を拡大する少なくとも一本のスリットまたは薄肉部を有する、請求項1記載の注出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30869(P2012−30869A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172878(P2010−172878)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】