説明

注出容器

【課題】酸素の影響を回避して内容物の品質を長期間、高位に保てる注出栓を提案する。
【解決手段】容器内の内容物を口部を通して直接排出する容器において、前記口部1bに、酸素吸収剤からなるブロック2を抜け止め配置する。そしてブロック2及び口部1bの内周壁の少なくとも一方に、容器内の内容物を通す1本若しくは複数本の通路5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂からなるスクイズタイプの容器あるいはチューブ等の注出容器に関するもので、容器内の空隙部に存在する酸素や内容物に不可避的に含まれる酸素を効果的に低減して品質のより一層の改善を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に充填された内容物の品質を長期にわたって保持する手法としては、従来、容器の壁部にバリヤ機能や遮光機能をもった樹脂あるいは金属箔の層を適宜付加して外部からの酸素や光の侵入を防止するようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11-198950号公報
【0003】
ところで、上記のような機能を有する容器は、容器の壁部を透過するガス(酸素等)や光に対しては高い効果が期待されていたけれども、とくに、容器内の空隙部に存在する酸素あるいは内容物に不可避的に含まれる酸素をより効果的に低減することに関しては容器を密閉するキャップの裏側に吸収剤を配置する構造が見られる程度であって、未だ改善の余地が残されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、容器内に存在する酸素や内容物に不可避的に含まれている酸素の影響を効果的に低減できる新規な容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器内の内容物を口部を通して直接排出する容器であって、
前記口部に、酸素吸収剤からなるブロックを抜け止め配置し、
該ブロック及び口部の内周壁の少なくとも一方に、容器内の内容物を通す1本若しくは複数本の通路を設けたことを特徴とする注出容器である。
【0006】
上記の構成になる容器において、前記通路はブロックの外周壁及び口部の内周壁の少なくとも一方に設けられた縦溝状の通路とするのが好ましい。
【0007】
また、前記口部については、その内周壁に、ブロックの一方の端面に当接して該ブロックの位置決めを行う凸部と、該ブロックの位置決め状態においてもう一方の端面にアンダーカット係合して抜け止め保持する爪部を設けることができる。
【0008】
また、本発明は、容器の口部に固定保持され、内部通路を通して容器内の内容物をノズル部の先端より排出する注出栓を備えた容器であって、
該注出栓は、両端が開放された内部空間を区画形成するとともにその外周壁を容器の口部に嵌合させて固定保持する基部と、この基部につながるノズル部からなり、
前記基部の内部空間に、酸素吸収剤からなるブロックを抜け止め配置し、
該ブロック及び該基部の少なくとも一方に、容器の内部とノズル部とをつなぎ、該容器内の内容物をノズル部へと送給する1本若しくは複数本の通路を設けたことを特徴とする注出容器である。
【0009】
上記の構成になる容器において、前記通路は、ブロックの外周壁及び基部の内周壁の少なくとも一方に設けられた縦溝状の通路とするのがよい。
【0010】
前記基部は、その内周壁に、ブロックの一方の端面に当接して該ブロックの位置決めを行う凸部と、該ブロックの位置決め状態においてもう一方の端面にアンダーカット係合して抜け止め保持する爪部を設けることができる。
【0011】
上記の各構成になる容器において、前記通路は、ブロックに直接設けられ該ブロックを貫通する貫通孔とすることができる。
【0012】
さらに、本発明は、容器の口部に固定保持され、内部通路を通して容器内の内容物をノズル部の先端より排出する注出栓を備えた容器であって、
前記注出栓は、底壁を有しこの底壁と周壁によって収納空間を形成するとともに容器の口部内にて垂下される筒体と、この筒体につながるノズル部からなり、
前記筒体の収納空間に、酸素吸収剤からなるブロックと、このブロックを覆い該収納空間内に固定するカバーを配置し、
該筒体の周壁に、容器内の内容物をノズル部の内部通路へ送給する少なくとも1つの開口を設けたことを特徴とする注出容器である。
【0013】
前記底壁及びカバーは、容器内に存在する酸素の透過を許容するものが適用される。
【0014】
注出容器としては、具体的に酸素吸収層を備えた積層タイプのチューブが有利に適合する。
【発明の効果】
【0015】
容器の内側に酸素吸収剤そのものを配置することができるので、容器内に存在する酸素や内容物に含まれる酸素を積極的に取り除くことが可能であり、容器の開封後であっても内容物の品質を長期にわたって高位に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明に従う注出容器の実施の形態をチューブに適用した例として示したものであり、図中1はチューブ本体である。チューブ本体1は、胴体部分1aと口部1bとが肩部Kを介して連結されており、ブロー成形により一体に形成されている。
【0017】
このチューブは、予め押出し成形やシートの端面の貼り合わせによって形成された胴体部分1aに、口部1bを結合させてチューブ本体1を構成する方法や、ブロー成形により胴体部分1aと口部1bを一体成形する方法等により形成することが可能で、種々の方法を採用することができる。
【0018】
また、2は酸素吸収剤からなるブロックである。この酸素吸収剤からなるブロック2はチューブ本体1の口部1bに配置されており、その外表面には内容物との直接的な接触を回避するため酸素の透過を許容する例えばポリエチレン樹脂からなる皮膜(あるいはラップの如き薄い膜で包んでもよい)を備えることができる。3は口部1bの内周壁の複数箇所に一体的に設けられ、ブロック2の上端面に当接してその位置決めを行う凸部、4は口部1bの内周壁の複数箇所に一体的に設けられ、ブロック2の位置決め状態においてブロック2の下端面にアンダーカット係合して抜け止め保持する爪部、5は口部1bの内周壁に設けられ、チューブ本体1内の内容物を外界へ排出する通路(縦溝)であって、この通路5はその要部外観を図2に示す如く口部1bの内周壁の周りに間隔を開けて複数本設けることができる。
【0019】
上記のような構成になる注出容器においては、酸素吸収剤からなるブロック2がチューブ本体1の内側に常に存在しているため、チューブ本体1内の内容物の酸素による影響を極力小さくすることが可能となる。
【0020】
図3は本発明にしたがう注出容器の他の実施の形態を示したものである。図3において6は容器の口部1bに配置される注出栓である。この注出栓6は両端(図示の例では上下端)が開放された内部空間を区画形成する基部6aと、この基部6aに一体的につながるノズル部6bからなっており、注出栓6は基部6aの外周壁をチューブ本体1の口部1bに嵌合させることによって固定保持される。
【0021】
また、7は上掲図1に示した酸素吸収剤からなるブロック2と同様のブロックである。このブロック7は注出栓6の基部6aの内部空間に配置される。8は基部6aの内周壁の複数箇所に一体的に設けられ、ブロック7の上端面に当接してその位置決めを行う凸部、9は基部6aの複数箇所に一体的に設けられ、ブロック7の位置決め状態においてブロック7の下端面にアンダーカット係合して抜け止め保持する爪部、10は基部6aの内周壁に設けられ、チューブ本体1の内部とノズル部6bをつないでチューブ本体1内の内容物をノズル部6bへと送給する通路(縦溝)であって、この通路10は通路5と同様に基部6aの内周壁の周りに間隔を開けて複数本設けることができる。
【0022】
上記のような構成になる注出栓6を備えた容器においても、酸素吸収剤がチューブ本体1の内側に常に存在しているため、チューブ本体1内の内容物の酸素による影響を極力小さくすることが可能となる。
【0023】
通路5、10については、図4に示すようにブロック2、7の外周壁に溝を設けることで形成してもよいし、また、図5に示すようにブロック2、7に貫通孔hを設けることで形成してもよく、何れにおいても、内容物の直接的な接触を回避するためその外表面にはポリエチレン樹脂等の皮膜を設けておくのが好ましい。
【0024】
皮膜は、ポリエチレン樹脂を用いることができるが、必要とされる酸素透過性に応じた樹脂を適宜選択して適用することができる。さらに、内容物として粉体を充填したものにおいて、とくに湿気を嫌うものにあっては、酸素吸収剤に換えて乾燥剤のブロックを配置することも可能である。
【0025】
酸素吸収剤としては、鉄粉等を主成分とするもの、複数種の化合物を配合したもの等、酸素吸収機能を発揮するものであればよく、内容物との関係(相性)、目的に応じて適宜選択される。
【0026】
また、ブロックは、酸素吸収剤の粉末を押し固めたものが好適であり、樹脂に前記化合物を添加し射出成形等によって成形されたものを使用してもよい。
【0027】
図6は本発明に従う注出容器のさらに他の実施の形態を示したものである。この例は注出栓6を、底壁6cを有しこの底壁6cと、周壁6dによって収納空間を形成するとともにチューブ本体1の口部1bにて垂下される筒体6eと、この筒体6eにつながるノズル部6fにて構成し、筒体6eの収納空間に酸素吸収剤からなるブロック7(この場合、粉状のものでも適用できる)を配置し、このブロック7の上にカバー11を被せて該ブロック7を密封配置した構造のものである。この注出栓6はノズル部6fの下端外壁に下向に開放された溝部mを形成する環状体6gが設けられていて、チューブ本体1の口部1bの先端を溝部mに差し込み、アンダーカット係合により固定される(ねじ等の他の係合手段を用いて固定してもよい)。
【0028】
かかる構成の容器においても上掲図1、図3の容器と同様にチューブ本体1内の酸素、内容物に含まれる酸素を効果的に低減することが可能となる。この場合、底壁6c、周壁6d及びカバー11は酸素の透過が可能でしかも適切な厚さになる樹脂にて構成することが肝要であり、周壁6dの周りの複数箇所には開口12を設けてそこを通して容器1内の内容物を注出する。
【0029】
上掲図6に示した注出栓6はカバー11、底壁6c、周壁6dによって取り囲まれることになるので、その外表面には内容物との直接的な接触を回避する皮膜を設ける必要がない利点がある。
【0030】
本発明にしたがう注出容器はチューブに適用したものとして例示したが、胴体部分を押圧して内容物を排出するスクイズタイプの容器に適用することも可能であり、酸素吸収機能に主眼をおいた構造の容器ならばその種類については限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
容器内の空隙部に存在する酸素や内容物に不可避的に含まれる酸素を効果的に低減して内容物の品質を長期にわたって維持できる注出栓が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従う注出容器の実施の形態を示した図である。
【図2】図1に示した注出容器の要部を示した図である。
【図3】本発明に従う注出容器の他の実施の形態を示した図である。
【図4】酸素吸収剤からなるブロックの外観を示した図である。
【図5】酸素吸収剤からなるブロックの外観を示した図である。
【図6】本発明にしたがう注出容器のさらに他の実施の形態を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 チューブ本体
1a 胴体部分
1b 口部
2 酸素吸収剤からなるブロック
3 凸部
4 爪部
5 通路
6 注出栓
6a 基部
6b ノズル部
7 酸素吸収剤からなるブロック
8 凸部
9 爪部
10 通路
11 カバー
12 開口
K 肩部
h 貫通孔
m 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の内容物を口部を通して直接排出する容器であって、
前記口部に、酸素吸収剤からなるブロックを抜け止め配置し、
該ブロック及び口部の内周壁の少なくとも一方に、容器内の内容物を通す1本若しくは複数本の通路を設けたことを特徴とする注出容器。
【請求項2】
前記通路は、ブロックの外周壁及び口部の内周壁の少なくとも一方に設けられた縦溝状の通路である、請求項1に記載の注出容器。
【請求項3】
前記口部は、その内周壁に、ブロックの一方の端面に当接して該ブロックの位置決めを行う凸部と、該ブロックの位置決め状態においてもう一方の端面にアンダーカット係合して抜け止め保持する爪部を有する、請求項1又は2に記載の注出容器。
【請求項4】
容器の口部に固定保持され、内部通路を通して容器内の内容物をノズル部の先端より排出する注出栓を備えた容器であって、
該注出栓は、両端が開放された内部空間を区画形成するとともにその外周壁を容器の口部に嵌合させて固定保持する基部と、この基部につながるノズル部からなり、
前記基部の内部空間に、酸素吸収剤からなるブロックを抜け止め配置し、
該ブロック及び該基部の少なくとも一方に、容器の内部とノズル部とをつなぎ、該容器内の内容物をノズル部へと送給する1本若しくは複数本の通路を設けたことを特徴とする注出容器。
【請求項5】
前記通路は、ブロックの外周壁及び基部の内周壁の少なくとも一方に設けられた縦溝状の通路である、請求項4に記載の注出容器。
【請求項6】
前記基部は、その内周壁に、ブロックの一方の端面に当接して該ブロックの位置決めを行う凸部と、該ブロックの位置決め状態においてもう一方の端面にアンダーカット係合して抜け止め保持する爪部を有する請求項4又5に記載の注出容器。
【請求項7】
前記通路は、ブロックに直接設けられ該ブロックを貫通する貫通孔である請求項1〜6の何れか1項に記載の注出容器。
【請求項8】
容器の口部に固定保持され、内部通路を通して容器内の内容物をノズル部の先端より排出する注出栓を備えた容器であって、
前記注出栓は、底壁を有しこの底壁と周壁によって収納空間を形成するとともに容器の口部内にて垂下される筒体と、この筒体につながるノズル部からなり、
前記筒体の収納空間に、酸素吸収剤からなるブロックと、このブロックを覆い該収納空間内に固定するカバーを配置し、
該筒体の周壁に、容器内の内容物をノズル部の内部通路へ送給する少なくとも1つの開口を設けたことを特徴とする注出容器。
【請求項9】
前記底壁及びカバーは、容器内に存在する酸素の透過を許容するものからなる、請求項8に記載の注出容器。
【請求項10】
前記容器は、酸素吸収層を備えた積層タイプのチューブである、請求項1〜9の何れか1項に記載の注出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−162630(P2008−162630A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353135(P2006−353135)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】