説明

注射器付属品デバイス

本発明は、所定の部分注射器投薬量の調節のための注射器付属品デバイスを提供し、この注射器付属品デバイスは、注射器本体(14)を受容するための凹部(10)を備える。さらに、単一部分(12)内に、スロット(16)が位置する。スロット(16)内に、注射器フランジ(18)またはフィンガーグリップが保持され得る。所定の投薬量の液体を注射器本体(14)のチャンバ内に得るために、プランジャーヘッド(44)が止め手段(24)と接触することによりこの止め手段が単一部分(12)の止め表面(24)によって実施されるまで、プランジャー(26)が矢印(38)の方向にチャンバ(14)内で押される。本発明は、この注射器付属品デバイスを備えるキット、および規定された液体投薬量を注射器内で調節するためのこの注射器付属品の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の部分注射器投薬量の調節のための注射器付属品デバイス、この注射器付属品デバイスを備えるキット、および規定された液体投薬量を注射器内で調節するためのこの注射器付属品デバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
注射器の注射器本体に、所定の量の液体を満たすためには、第一の工程において、必要とされる投薬量よりも多い量の液体が、この注射器本体内に取り込まれるかまたは吸引される。その後、望ましい投薬量がこの注射器本体内に残るまで、この注射器本体から液体が排出される。従って、この注射器本体には、特定の投薬量を規定する線が印し付けられる。注射器本体を望ましい投薬量で満たすこの方法は、非常に複雑であり、そして時間を浪費する。さらに、正確な望ましい量の液体が注射器本体内に存在することは、保証されない。この種の計量は、常に不正確であり、そして特に、使用者の誤りによる影響を受けやすい。
【0003】
特定の必要のために投薬量を適合させるために、予め満たされた注射器が部分的に空にされる場合(例えば、小児用の「半用量」が提供されなければならないワクチン接種のための注射器)、類似の問題が生じる。
【0004】
注射器付属品デバイスは、特許文献1に記載されている。このデバイスは、注射器本体のための凹部、および注射器フランジを保持するためのスロットを有する。さらに、このスロットとこの注射器フランジまたはフィンガーグリップとの間の距離を規定するために使用される止め部材が、ねじ切りされたシャンクを用いて、このデバイスに調節可能に接続される。この止め部材を移動させるために、このねじ切りされたシャンクは、このシャンクに合うようにねじ切りされたホイールと接続される。このデバイスは、個人用の使用のため、特に、上記様式で正確な投薬量で満たすことに問題を有する高齢な人のために、作製される。特許文献1に記載されるような注射器付属品デバイスは、例えば、インスリンなどを注射するために使用される。このためには、注射器本体には、針を通して液体を吸引することにより、液体が満たされる。さらに、この注射器は、注射器付属品デバイス内に配置され、これによって、この注射器本体は、凹部内に配置され、そして注射器フランジまたはフィンガーグリップは、スロット内に配置される。その後、止め部材を移動させることによって、止め部材が望ましい投薬量に調節される。次いで、この止め部材は旋回され、その結果、注射器フランジの上方に位置する。その後、プランジャーヘッドが止め部材によって止められるまで、この注射器のプランジャーがシリンジ本体内にさらに移動される。これによって、液体は、針から周囲の空気中へと排出される。この針は、この針が人体(例えば、静脈)内に挿入され得るように、この注射器付属品デバイスから延びる。その後、止め部材が旋回され、その結果、プランジャーヘッドが解放され、そしてプランジャーは、注射器本体内に押し込まれて、液体を静脈内に排出し得る。
【0005】
特許文献1に記載されるような注射器付属品デバイスは、比較的複雑である。止め部材を正確な望ましい投薬量に調節することが、特に必要である。このことは、注射器本体上の印を単に見ることと同じ誤計量をもたらし得る。
【特許文献1】米国特許第4,357,971号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、所定の部分注射器投薬量の調節のための注射器付属品デバイスを提供し、注射器の取り扱いおよび投薬量の調節をより容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的および他の目的は、本発明の注射器付属品デバイスにより達成される。従って、本発明は、
(1)所定の部分注射器投薬量の調節のための注射器付属品デバイスであって、
注射器本体(14)のための凹部(10)、
注射器フランジ(18)を保持するためのスロット(16)、および
注射器プランジャー(26)の移動を止めるための止め手段(24)であって、この止め手段は、所定の投薬量が注射器本体(14)の内部に残るように、スロット(16)に対して所定の距離に位置する、止め手段、
を備え、この注射器付属品デバイスは、スロット(16)および止め手段(24)が、一定の距離(a)を有し、そして1つの単一部分(12)内に提供されることを特徴とする、注射器付属品デバイスを提供する。
【0008】
この注射器付属品デバイスは、あらゆる固定用量の用途のために使用され得、そして特に、小児のための「半用量」ワクチンを調製するために有用である。
【0009】
本発明は、さらに、
(2)上記(1)に規定されたような少なくとも1つの注射器付属品デバイス、およびこの少なくとも1つの注射器付属品デバイスのために適合された注射器を備える、キット;
(3)上記(1)に規定されたような付属品デバイスを利用して、注射器内の液体投薬量を調節するための方法;
(4)規定された液体投薬量の医薬を調製するための、上記(1)に規定されたような注射器付属品デバイスの使用;ならびに
(5)規定された液体投薬量を注射器によって患者に投与するための方法であって、注射器付属品デバイスを利用することによって、この注射器の内容量を調節する工程を包含する、方法、
を提供する。
【0010】
この注射器付属品デバイスは、注射器本体のための凹部、および注射器フランジまたはフィンガーグリップを保持するためのスロットを有する。さらに、この注射器付属品デバイスは、注射器本体内での注射器プランジャーの移動を止めるための止め手段を備える。この注射器プランジャーの移動を止めるために、プランジャーヘッドなどは、この止め手段に接触し得る。この止め手段は、注射器プランジャーの位置および移動が止められるように、スロットに対するある距離に位置し、そしてプランジャーフット(すなわち、注射器本体内に位置するプランジャーの端部)は、シリンジ本体またはチャンバの底部に対してある距離に位置し、その結果、チャンバのこの部分の内部に所定の投薬量の液体が格納される。これによって、プランジャーフットから注射器チャンバの底部までの距離は、スロットと止め手段との間の距離に関連する。本発明によれば、スロットと止め手段とは、一定の距離を有する。このことは、スロットおよび止め手段を1つの単一部分内に(すなわち、一部品のユニットとして)提供することによって、特に実現される。スロットと止め手段との間の一定の距離は、誤調節が起こり得ないという利点を有する。このような誤調節の理由は、付属品デバイスが様々な投薬量のために使用されることであり得る。このことは、本発明によるデバイスを用いては、不可能である。さらに、本発明による付属品デバイスの取り扱いは、かなり容易である。さらに、本発明の付属品デバイスは、複数の使用者の場合でさえも、一定の標準的な容量を保証する。本発明の付属品デバイスは、例えば、臨床治験設定において使用され得る。
【0011】
好ましくは、付属品デバイスの単一部分の外側表面は、止め表面として使用され、その結果、この表面が、止め手段を形成する。従って、このデバイスの機能は、使用者によって明白に見られ得、そしてこのデバイスは取り扱いが容易である。従って、誤整列または誤判断に起因して誤った量の液体を注射する危険性が、最小にされる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、付属品デバイス、および特に、単一部分は、針凹部を有する。この針凹部の内部には、計量の間、注射器の針が受容される。従って、この針は、少なくとも部分的に、この針を囲む凹部によって保護される。特に、針の先端は、針凹部の内部に位置し、その結果、押すことなどから保護される。
【0013】
さらに、好ましい実施形態において、本発明による注射器付属品デバイスは、液体受容手段を備える。この液体受容手段は、クッションなどのような液体吸収手段を備え得、計量の間に注射器から排出された液体を受容するために使用される。従って、この液体は、空気中に排出されず、その結果、健康の問題などを全く引き起こし得ない。
【0014】
さらに、本発明による注射器付属品デバイスは、スタンド部分を備え、その結果、この注射器付属品デバイスは、直立位置に位置し得る。この位置において、このデバイスを保存すること、および液体を計量することが容易である。このスタンド部分は、好ましくは、単一部分の一部であり、その結果、好ましい実施形態において、注射器付属品デバイス全体が、1つの部品を形成する。
【0015】
本発明による注射器付属品デバイスの好ましい実施形態は、取り外し手段を備える。この取り外し手段は、計量が実施された後に、単一部分の凹部内に位置する注射器を取り外すために使用される。好ましくは、この取り外し手段は、インジェクタ手段を備え、このインジェクタ手段は、好ましくは、単一部分内に移動可能に保持される。特に、このインジェクタ手段は、単一部分の内部に位置する、可動の、部分的にスライド可能に保持されたプランジャーなどを備え、これによって、このインジェクタ手段は、好ましくは注射器本体において、注射器と接触する。この取り外し手段を用いると、注射器を付属品デバイスから(特に、単一部分に形成された本体凹部から)取り外すことがずっと容易である。
【0016】
さらに好ましい実施形態において、注射器付属品デバイスは、成人のためのワクチンより低い用量を必要とする、小児用ワクチン(例えば、インフルエンザワクチン)を調製するために使用されるために適切である。インフルエンザの場合、不活性化インフルエンザワクチンのために推奨されているのは、3歳以上の小児については、1回のワクチン投与あたり15μgの各HA含有量であり、そして3歳未満の小児については、1回のワクチン投与あたり7.5μgの各HAである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による注射器付属品デバイスは、図面を参照しながらより詳細に記載されるが、図面は、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0018】
所定の部分注射器投薬量の調節のための注射器付属品デバイスは、単一部分12の内部に凹部10を備え、図示される実施形態において、この注射器付属品デバイス全体は、1つの部品である。凹部10の内部に、注射器本体14(図3)が配置される。凹部10に隣接して、スロット16が、この一部品のデバイス内に配置される。スロット16は、注射器の注射器フランジ18またはフィンガーグリップを保持するために使用される。
【0019】
凹部10と並んで、凹部20が、本体内に位置し、開口部22が、表面24に配置される。凹部20の内部に、注射器のプランジャー26(図3)が配置される。
【0020】
別の凹部28もまた、本体凹部10と並んで、プランジャー凹部20の反対側に位置する。凹部28の内部に、針32を保持する突出部30が位置する。
【0021】
針32は、針凹部34内に延びる。針凹部34の底部に、クッションなどである液体受容手段36が位置し、液体受容手段36は、液体吸収材料を備えるか、または液体吸収材料から作製される。
【0022】
本発明によれば、止め手段は、外側止め表面24によって構築される。表面24は、平坦であり、そしてスロット16に対して平行である。注射器本体14のチャンバ内に収容される液体の計量のために、スロット16と止め表面24との間の距離「a」は、一定にされる。従って、プランジャー26を矢印38(図3)の方向に押すことによって、プランジャーフット40は、注射器本体14のチャンバの内部を下向きに移動し、その結果、液体が、針先端42から排出される。この排出される液体は、液体受容手段36によって受容される。
【0023】
プランジャー26の移動は、プランジャー26のプランジャーヘッド44が止め表面24と接触すると、止まる。この状態において、注射器本体14のチャンバ内の液体の量は、所定の投薬量である。
【0024】
単一部分12から注射器を取り外すために、取り外し手段46(図2)が、単一部分12内に配置される。この実施形態において図示されるように、この取り外し手段は、互いに接続される2つのエジェクタ手段48を有する。エジェクタ手段48は、単一部分12の開口部50の内部に、スライド可能に保持さえる。開口部50は、本体凹部10の高さに位置し、その結果、エジェクタ手段またはプランジャー48は、矢印52の方向で注射器本体14に押し付けられる。従って、注射器を注射器付属品デバイスから取り外すことは、容易である。
【0025】
さらに、注射器付属品デバイスは、スタンド部分54を有し、スタンド部分54は、平坦であり、そして止め表面24に対して平行である。スタンド部分54は、止め表面24の反対側に位置する。
【0026】
注射器付属品デバイスは、注射器を充填するための手段(例えば、液体を容器から取り込むための手段)を有し得る。
【0027】
本発明の実施形態のキット(2)は、本明細書中で上に記載されたような少なくとも1つの注射器付属品デバイス、およびこのデバイスのために適合された注射器を備える。異なる投薬量(例えば、成人および小児)が企図される好ましい実施形態において、このキットは、これらの異なる投薬量のために適合された、2つ以上の注射器付属品デバイスを備える。
【0028】
このキットの注射器は、満たされていても空であってもよい。後者の場合、このキットは、これらの注射器を満たすための液体医薬を含む容器を、さらに備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、注射器なしでの、注射器付属品デバイスの正面図を示す。
【図2】図2は、図1の線II−IIに沿った断面図を示す。
【図3】図3は、注射器付属品デバイス内に位置決めされた注射器と一緒になった、注射器付属品デバイスの正面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部分注射器投薬量の調節のための注射器付属品デバイスであって、
注射器本体(14)のための凹部(10)、
注射器フランジ(18)を保持するためのスロット(16)、および
注射器プランジャー(26)の移動を止めるための止め手段(24)であって、該止め手段は、該所定の投薬量が該注射器本体(14)内に残るように、該スロット(16)に対して所定の距離に位置する、止め手段、
を備え、該注射器付属品デバイスは、該スロット(16)および該止め手段(24)が、一定の距離(a)を有し、そして1つの単一部分(12)内に提供されることを特徴とする、注射器付属品デバイス。
【請求項2】
前記止め手段が、前記単一部分(12)の外側止め表面(24)であることを特徴とする、請求項1に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項3】
前記止め表面(24)が、前記スロット(16)に対して平行であることを特徴とする、請求項2に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項4】
計量の間に前記注射器の針(32)を受容するための針凹部(34)を特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項5】
前記針(32)の先端(42)が、前記針凹部(34)の内部に位置することを特徴とする、請求項4に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項6】
計量の間に前記注射器本体(14)から出た液体を受容するための液体受容手段(36)を特徴とする、請求項4または5に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項7】
前記液体受容手段が、液体吸収手段(36)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項8】
前記液体受容手段(36)が、前記針先端(42)に対向して位置することを特徴とする、請求項6または7に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項9】
前記注射器付属品デバイスを直立位置で位置決めするためのスタンド部分(54)を特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項10】
前記スタンド部分(54)が、前記単一部分(12)の一部であることを特徴とする、請求項9に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項11】
前記スタンド部分が、前記止め表面(24)と対向するスタンド表面(54)を有することを特徴とする、請求項9または10に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項12】
前記注射器を前記注射器付属品デバイスから取り外すための取り外し手段(46)を特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項13】
前記取り外し手段(46)がエジェクタ手段(48)を備えることを特徴とする、請求項12に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項14】
前記エジェクタ手段(48)が、前記単一部分(12)の開口部(50)内に移動可能に保持されることを特徴とする、請求項13に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項15】
成人用ワクチンより低い用量を必要とする小児用ワクチンを調製するために適している、請求項1〜14のいずれか1項に記載の注射器付属品デバイス。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1つの注射器付属品デバイス、および該少なくとも1つの注射器付属品デバイスのために適合された注射器を備える、キット。
【請求項17】
注射器内の液体投薬量を調節するための方法であって、該方法は、該注射器を、請求項1〜15のいずれか1項に記載の注射器付属品デバイスに適用することによって、該注射器の内容量を減少させる工程を包含する、方法。
【請求項18】
規定された液体投薬量の医薬を調製するための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の注射器付属品デバイスの使用。
【請求項19】
注射器によって患者に規定された液体投薬量を投与するための方法であって、該方法は、請求項1〜15のいずれか1項に記載の注射器付属品デバイスを利用することによって、該注射器の内容量を調節する工程を包含する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−532665(P2008−532665A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501305(P2008−501305)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060759
【国際公開番号】WO2006/097492
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(301072524)カイロン ベーリング ゲーエムベーハー アンド カンパニー (5)
【Fターム(参考)】