説明

注射装置

【課題】針ケースを簡単に取り外せ、単純で効果的に針を覆って使用後における装置の安全性を確保できる。
【解決手段】注射装置は、使用時に注射器又はカートリッジを支持するためのハウジングを有する。注射器又はカートリッジは、注射が完了したときにハウジングの前方端から突出する針を有する。針は、最初は長手方向で取り外し可能なケースによって覆われている。装置は、ハウジングの前方端にはめ込まれるものであり、取り外し可能であるキャップを有する。キャップは、注射を行う前の姿勢にあるときに、ケースの基部よりも後方で、後方端が係合する後方延出部を有する。キャップのハウジング前方端からの取り外しにより、ケースは針から取り外される。キャップは、注射を行った後の姿勢にあるときに、再度前記ハウジングの前方端にはめ込まれて、後方延出部がハウジングの前方に延びて、針を覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間又は動物の体に注射するための治療剤を含む注射器又はカートリッジを収容するハウジングを備えたタイプの注射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、アドレナリンといった治療剤は、長時間の光にさらされることにより、劣化してしまうことがあり、結果として治療効果が低下したり、無くなったりしてしまう。従来、少なくとも劣化に関与する主な波長帯域の光を通過させないハウジング内に、注射器又はカートリッジを収容することにより、上述した問題を回避していた。また、装置は、光を遮ったり、フィルタリングしたりする機能を有する外装容器内に収容されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、治療剤への光を遮ることと、注射を行う前に、治療剤が変色してしまったり、漏れてしまったりしていないかをチェックするために、使用者が注射器内の治療剤の状態を確認できることとは、直接的に相反するものである。注射装置において、第1に、上述したことを実現するのは不可能であり、第2に、上述したことを実現可能とするためには、分離した外装容器を用いなければならず、コストがかかってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、注射装置を提供する。この注射装置は、使用時に注射器又はカートリッジを支持しており、前方端と、後方端と、注射器又はカートリッジの中身を観察するための窓又は観察開口とを有する細長いハウジングと、窓又は観察開口を視認させる露出位置と、窓又は観察開口を覆い隠す閉位置との間で移動可能なシャッタ部材と、シャッタ部材を閉位置に向けて付勢する付勢手段と、を有する。
【0005】
ここで、注射器又はカートリッジの中身は、シャッタ部材を退避させることにより、窓を介して容易に観察することができる。ハウジング上でシャッタ部材を移動させることにより、外装容器を分離させる必要が無く、緊急時に装置をすぐに使用できる。注射装置は、シャッタ部材を閉位置に向けて付勢する付勢手段を有しているため、シャッタ部材を退避位置から解放したときに、付勢手段は、シャッタ部材を閉位置に戻すことができる。
【0006】
シャッタ部材は、ハウジングを概ね囲み、ハウジングに対してスライド可能なスリーブ部を有していることが好ましい。このスライド移動は、回転しながらのスライド移動を含まないものではないが、長手方向の移動であることが好ましい。
【0007】
付勢手段としては、ハウジング内において略同心円状に配置された、例えば、コイルスプリングといったスプリングを好適に用いることができる。
【0008】
シャッタ部材がハウジングに対して長手方向に移動可能な場合において、ハウジングは、付勢手段又はスプリングと隣り合って配置された少なくとも1つの細長いスロットを有することができる。そして、シャッタ部材は、内側に突出しており、スロットを貫通してスプリングと係合する突起部を有することができる。シャッタ部材が2つの突起部を有するときに、ハウジングのそれぞれの側にスロットを設けることができる。
【0009】
装置を容易に組み立てるために、シャッタ部材における内側の突出部を弾性変形させることが好ましい。これにより、組立時にハウジングの外面にシャッタ部材を容易に取り付けることができる。
【0010】
好ましい構成としては、ハウジングに、使用時に注射器又はカートリッジを支持するためのキャリアを設ける。そして、キャリアを、前方位置および後方位置の間において略長手方向に移動可能に取り付け、付勢手段によって、シャッタ部材およびキャリアを付勢するようにする。これにより、同一の付勢手段を用いて、部品点数を減らすことができるとともに、2つの別々のスプリングを用いることにより装置を大型化させる必要がなくなる。
【0011】
キャリアは、細長いスロットと、ハウジングにおいて内側に突出して、スロットとともに長手方向の移動を制限する突出部とを有していることが好ましい。ハウジングにおける細長いスロットは、キャリアにおける細長いスロットや、ハウジングのスロットの一端に配置されたハウジング上の内側に延びる突出部と略一致させることが好ましい。
【0012】
また、多くの場合において、注射を完了したときに、付勢手段の力よりも大きな駆動スプリングの力によってキャリアを前方位置に保持させることができる。そして、キャリアを前方位置に位置させることにより、シャッタ部材の開動作を阻止又は禁止することができる。これにより、装置が使用されたことを外部に示すことができる。
【0013】
1つの構成において、使用時にハウジング内に収容された注射器又はカートリッジは、針を有しており、この針は、最初は、長手方向で取り外し可能なケースによって覆われている。そして、注射装置は、ハウジングの前方端にはめ込むための取り外し可能なキャップを有しており、このキャップは後方に延びる延出部を有している。延出部は、この後方端において、取り外し可能なケースにおける基部の後方で係合する。これにより、使用時において、ハウジングの前方端からキャップを取り外したときに、後方に延びる延出部との係合によってケースを針から取り外すことができる。
【0014】
後方に延びる延出部は、略中空の円筒状に形成することができる。そして、この後方端には、ケースの基部の後方において係合するための内側に延びるリブ又は歯を設けることができる。後方に延びる延出部とケースの基部との間における係合は、弾性力を持たせておくことが好ましい。これにより、後方に延びる延出部の後方端は、キャップの移動において、弾性変形した状態で針ケースの基部を通過して、キャップを取り外すときにケースを取り込む位置に移動することができる。
【0015】
キャップは、リバーシブルとすることが好ましい。これにより、装置を使用した後に、リバース構造において、後方に延びる延出部が前方に延びて針を覆った状態で、キャップを再度はめ込むことができる。これにより、装置を使用後に安全に包むことができる。
【0016】
本発明は、他の観点における注射装置を提供する。この注射装置は、前方端および後方端を備え、使用時に注射器又はカートリッジを支持するための細長いハウジングを有している。注射器又はカートリッジは、少なくとも注射処理が完了した後において、組立品の前方端から突出する針を有している。針は、最初は、長手方向で取り外し可能なケースによって保護されている。この装置は、更に、ハウジングの前方端にはめ込むための取り外し可能なキャップを有している。このキャップは、後方に延びる延出部を有しており、延出部は、この後方端で、取り外し可能なケースの基部後方において係合する。これにより、ハウジングの前方端からキャップを取り外すことにより、ケースを針から取り外すことができる。
【0017】
すなわち、本発明の注射装置は、前方端および後方端を備え、使用時に注射器又はカートリッジを支持するための細長いハウジング(10)を有する。この注射器又はカートリッジは、少なくとも注射が完了したときにハウジング(10)の前方端から突出する針(26)を有する。針(26)は、最初は、長手方向で取り外し可能なケース(30)によって覆われている。
注射装置は、さらに、注射を行う前および注射を行った後のいずれの姿勢においても、ハウジング(10)の前方端にはめ込まれるキャップであり、取り外し可能であるキャップ(34)を有している。キャップ(34)は、後方延出部(38)を有しており、後方延出部(38)の後方端は、注射を行う前の姿勢にあるときに、取り外し可能なケース(30)の基部よりも後方で、ケース(30)と係合する。
これにより、キャップ(34)のハウジング(10)前方端からの取り外しにより、ケース(30)は針(26)から取り外される。
またキャップ(34)は、さらに、注射を行った後の姿勢にあるときに、再度ハウジング(10)の前方端にはめ込まれて、キャップ(34)の後方延出部(38)がハウジング(10)の前方に延びて、針(26)を覆うようになる。
また後方延出部(38)は、略中空の円筒形状に形成されており、この後方端には、内側に延びてケース(30)の基部よりも後方で係合するためのリブ又は歯を有する。
後方延出部(38)とケース(30)の基部との間における係合は、後方延出部(38)の後方端が組立時に基部を通過することができるように、弾性変形する。
キャップ(34)は、注射を行った後の姿勢において、ハウジングの前方端を覆うようにはめ込まれる外環(36)を有する。
キャップ(34)は、ハウジング(10)に対し、一方通行のスナップフィット式ではめ込まれる。
【0018】
本発明について上述したが、上述した特徴や、明細書および特許請求の範囲に記載した特徴を組み合わすこともできる。
【0019】
本発明は、様々な方法で実現することができる。一例である本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、注射前であって、シャッタが閉位置にあるときの本発明である注射装置の側面図である。
【図2】図2は、図1の装置の断面図である。
【図3】図3は、シャッタが閉位置に退避した状態における図1の注射装置の側面図である。
【図4】図4は、図3の構成の断面図である。
【図5】図5は、明確にするために注射器を省略した状態において、図1の構成におけるシャッタ部材および注射器キャリアを切断したときの詳細な斜視図である。
【図6】図6は、注射後に針が露出した状態における図1の注射装置の断面図である。
【図7】図7は、注射後にキャップを再度はめ込んだ状態における注射装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面に示す注射装置は、例えば、急性アレルギー反応によるショック症状のときのアドレナリンといった治療剤を投与するための使い捨て装置である。注射装置は、前方部10、中央部10、後方部10および後方環10からなる略円筒のハウジング10を有している。シャッタ部材12は、中央部10の外周上において、スライド可能に装着されており、図1および図2に示す前方の閉位置と、図3および図4に示す後方の露出位置との間で移動可能となっている。露出位置では、中央部10に設けられた窓14が露出され、窓14を介して注射器24の中身を観察することができる。
【0022】
図2,4,5および6において、注射器キャリア16は、ハウジングの中央部10においてスライド可能に取り付けられており、図2および図4に示す後方位置と図6に示す前方位置との間で移動可能となっている。図5において、注射器キャリア16は、略円筒状に形成されており、径方向で対向する2つのスロット18を有している。これらのスロット18には、中央部10において径方向内側に突出した2つの当接部20がはまり込んでおり、注射器キャリア16の長手方向の移動を制限している。注射器キャリア16は、圧縮コイルスプリング22によって後方に付勢されており、圧縮コイルスプリング22は、この前方端において、中央部10の一部を形成する後方に面した肩部23に当接している。注射器キャリアは、ガラス又は他の透明なカプセルで構成された注射器24を支持しており、前方端に設けられた針26と、注射器内の物質を吐出させるためにスライド可能な栓28とを有している。針26は、最初は針ケース30によって覆われており、針ケース30は、針の差し込み部32において押し込まれて、はめ込まれている。
【0023】
針キャップ34は、外環36と、後方に延びて開口端を有する円筒部38とを有しており、円筒部38は、この後方端において、内側に延びるリブ40を有している。リブ40は、針ケース30の後方端と注射器24における前方の肩部との間の隙間に位置している。リブ40における後方側の面は傾斜しており、組立時において、針ケース30上に押し込んで、キャップおよび注射器の肩部の間における隙間にはめ込むことができるようになっている。
【0024】
注射装置の後方端には、スプリングで付勢されたプランジャ42が設けられており、プランジャ42は、注射器の筒内にフィットする大きさを有し、栓28と接触する前方端44と、使用時に、注射器24の後方端と接触して、栓28に作用する前方への移動を制限する前方フランジ46とを有している。圧縮駆動スプリング48は、プランジャの後方フランジ50と後方のハウジング環10の内面との間で作用している。プランジャは、公知の構成の二叉くさび部50を有しており、二叉くさび部50は、後方のハウジング環10の保持面52と係脱可能となっている。安全ボタン54は、二叉くさび部50のスロットにはめ込まれており、不注意で発射するのを防止している。安全キャップ54を取り外すと、発射ボタン56が露出する。発射ボタン56は、押し込まれたときに、二叉くさび部を押し込んで、二叉くさび部における係合を解除する。
【0025】
シャッタ部材12には、内側に延びる2つの弾性突起部56が設けられており、弾性突起部56は、ハウジングの中央部10に設けられたスロット58を貫通して突出することにより、シャッタ部材12の長手方向の移動を制限している。突起部56は、圧縮スプリング22の前方端と係合しており、圧縮スプリング22は注射器キャリア16を後方に付勢する。突起部56は、U字状に形成された2つの切り欠き部57が環12に形成されることにより、弾性を有している。中央部10の前方端は60に示すように面取りされており、突起部56が面取り部60によって外側に一次的に変位してから、スロット58の前方端にはまり込んでスプリング22と係合するように、シャッタ12をハウジングの前方端上でスライドさせることにより組み立てることができる。使用前であって、注射する前に、圧縮スプリング22の付勢力に抗してシャッタ部材12を引っ張ることにより、注射器の中身を点検するために窓14を露出させることができる。
【0026】
使用時には、針キャップ34を前方に引っ張ることにより取り外す。このとき、リブ40は、針ケース30を引っ張ることにより針から取り外す。使用者は、目的とする注射部位に対してハウジングの前方端を位置させ、安全キャップ54を取り外し、発射ボタン56を押し込む。これにより、くさび部50が押し込まれ、プランジャを解除する。これにより、プランジャは、最初は駆動スプリング48によって前方に駆動され、栓28および注射器のカプセルの間における摩擦や、カプセルの液体内容物の非圧縮性により、注射器キャリア16とともに注射器を前方に移動させる。この前方への移動は、スロット18の後端がハウジングの内側に延びるピン20と当接するまで行われ、この後、プランジャは栓28を前方に駆動することにより、フランジ46が注射器の後方端と係合するまで投薬量を吐出させる。そして、使用者は、針が突出している図6に示す状態で注射装置を注射部位から外す。使用者は、針キャップ34を逆にすることにより、円筒部38が針を覆った状態で外環をハウジングの前方端にはめ込む。この動作は、ワンウェイ式のスナップフィットである。
【0027】
キャップをリバーシブルとすることによる特徴により、複数の機能が得られる。使用する前において、ハウジングを閉じて密閉状態としたり、注射器の前方端を横方向に変位させることなく位置させたりできる。また、針ケースを簡単に取り外せ、単純で効果的に針を覆って使用後における装置の安全性を確保できる。
【0028】
図6に示す状態の注射装置において、注射の後では、駆動スプリングの力が圧縮スプリング22の力よりも強くなっているため、注射キャリアは、この前方において移動が制限された状態で保持されている。このため、注射器キャリアの前方位置は、シャッタ部材12の強制移動を阻止し、これにより、装置が使用されていることを外部に示すことができる。
【符号の説明】
【0029】
10 ハウジング、12 シャッタ部材、14 窓、16 注射器キャリア、18 スロット、20 当接部、22 圧縮コイルスプリング、23 肩部、24 注射器、26 針、28 栓、30 針ケース、32 針の差し込み部、34 針キャップ、36 外環、38 円筒部、40 リブ、42 プランジャ、44 前方端、46 前方フランジ、48 圧縮駆動スプリング、50 後方フランジ、50 二叉くさび部、52 保持面、54 安全ボタン、56 発射ボタン、56 弾性突起部、57 切り欠き部、58 スロット、60 面取り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射装置であって、
前方端および後方端を備え、使用時に注射器又はカートリッジを支持するための細長いハウジングを有しており、
前記注射器又は前記カートリッジは、少なくとも注射が完了したときに前記ハウジングの前方端から突出する針を有しており、
前記針は、最初は、長手方向で取り外し可能なケースによって覆われており、
前記装置は、さらに、
注射を行う前および注射を行った後のいずれの姿勢においても、前記ハウジングの前方端にはめ込まれるものであり、取り外し可能であるキャップを有しており、
前記キャップは、注射を行う前の姿勢にあるときに、前記取り外し可能なケースの基部よりも後方で、後方端が係合する後方延出部を有しており、
これにより、前記キャップの前記ハウジング前方端からの取り外しにより、前記ケースは前記針から取り外され、
前記キャップは、さらに、注射を行った後の姿勢にあるときに、再度前記ハウジングの前方端にはめ込まれて、前記キャップの前記後方延出部が前記ハウジングの前方に延びて、前記針を覆うようになる
注射装置。
【請求項2】
前記後方延出部は、略中空の円筒形状に形成されており、この後方端には、内側に延びて前記ケースの基部よりも後方で係合するためのリブ又は歯を有することを特徴とする請求項1に記載の注射装置。
【請求項3】
前記後方延出部と前記ケースの基部との間における係合は、前記後方延出部の後方端が組立時に前記基部を通過することができるように、弾性変形することを特徴とする請求項1又は2に記載の注射装置。
【請求項4】
前記キャップは、前記注射を行った後の姿勢において、前記ハウジングの前方端の周りを覆うようにはめ込まれる外環を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項5】
前記キャップは、前記ハウジングに対し、一方通行のスナップフィット式ではめ込まれる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の注射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176295(P2012−176295A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138288(P2012−138288)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【分割の表示】特願2009−508493(P2009−508493)の分割
【原出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(505333414)オーウェン マンフォード リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】OWEN MUMFORD LIMITED
【住所又は居所原語表記】Brook Hill, Woodstock, Oxfordshire OX20 1TU (GB).
【Fターム(参考)】