説明

洗口剤

【構成】 唾液タンパクの凝固作用に基づき、有効な口腔内洗浄作用を示し、口臭、種々の歯肉炎の要因を予防し改善し得る新しい洗口剤を開発すること。
【解決手段】 カリン又はその抽出物、更にはこれとスイカズラ又はその抽出物を含有する組成物を洗口剤として使用すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリン又はその抽出物を有効成分とし、これ単独または更にスイカズラ又はその抽出物を含有してなる洗口剤に関するものであり、かつ安全な口腔衛生剤として有用な口臭予防、歯肉炎、口腔内炎症に有効な処置剤として使用される洗口剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
唾液中に含まれるタンパク質は、口腔内のプラーク形成過程において必須の物質であることが知られている。口腔内のプラークは多種多様な細菌がその80%以上を占めており、それらの代謝産物は口臭、歯肉炎、口腔内炎症、う蝕などさまざまな口腔内疾患の原因になる。プラークの形成過程において、唾液タンパク質は、細菌の付着因子や凝集素として機能する。
【0003】
従って、口腔内のタンパクを凝集させ、効率よく除去することができれば、プラークの形成が抑制され、その結果、口臭、歯肉炎、口腔内炎症、う蝕をはじめとする各種口腔内疾患の予防・改善効果が期待できるのである。
【0004】
この様に、口腔内のタンパクを凝集させ、効率的に除去する物質を得ることができれば、これにより、口臭、歯肉病、口腔内炎症やう蝕を予防・改善する効果が期待できる。
【0005】
一方、唾液タンパク質が歯面に触れると、ペクリルと呼ばれる獲得皮膜が形成され、その獲得皮膜に細菌が付着し、さらに細菌が増殖する。その結果、菌叢であるプラークが形成される。
【0006】
従って、歯面への細菌の付着因子や凝集素として機能する唾液タンパク質を除去する物質と、抗菌性のある物質とを併せることによって、さらに相乗的な口臭、歯肉炎、口腔内炎症やう蝕を予防・改善する効果が期待できる。
【0007】
さらに、唾液タンパク質を効率よく除去する物質が、鎮咳作用、鎮痛作用、抗炎症作用を併せ持つ物質であれば、陰頭炎などの喉疾患に対しても有用であり、さらに相乗効果的に口腔内炎症を改善することができる。
【0008】
この様な状態において、歯肉炎、口腔内炎症、口臭およびう蝕予防に関する技術は種々あり、う蝕予防に関する技術については、例えば特許文献1等が、また口臭予防に関する技術では、例えば特許文献2を例示できる。しかしながら、現状では、歯肉炎、口腔内炎症、口臭およびう蝕をはじめとするさまざまな口腔内疾患を予防、改善しきれていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、唾液タンパク質を効果的に凝集させる素材の開発について研究を行い、カリン又はその抽出物(以下単にカリン抽出物と言う)に、唾液タンパクの凝集効果を発見した。
【0010】
さらに、カリン抽出物にスイカズラ又はその抽出物(以下単にスイカズラ抽出物と言う)を加える時は、実に驚くべきことに両者の相乗効果的なタンパク凝集作用が発現することを発見した。尚スイカズラ抽出物単独では、タンパク凝集作用は極めて小さいものである。
【0011】
本発明の目的は、口腔内タンパクを凝集させ、効率よく除去することで、歯肉炎、口腔内炎症、口臭、う蝕などの各種口腔内疾患を予防・改善し、さらには鎮咳作用、鎮痛作用、抗炎症作用によって咽頭炎などの喉の疾患にも有効で、かつ、安全な口腔衛生剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためには、本発明に於いては、バラ科(Rosaceae)のカリンChaenomeles sinensis、更にはスイカズラ科(Caprifoliaceae)のスイカズラLonicera japonicaを有効成分として含有せしめことである。
【0013】
本発明において用いられるバラ科(Rosaceae)のカリンChaenomeles sinensisは、その偽果を生のままでも乾燥したもの、あるいは花、葉を生のままでも乾燥したものでも使用することができる。
【0014】
本発明において用いられるスイカズラ科(Caprifoliaceae)のスイカズラLonicera japonica又はその同属植物の花あるいは、葉を生のままでも乾燥したものでも使用することができ、さらには金銀花、忍冬と称される生薬の溶媒抽出物として用いることが好ましい。
【0015】
本発明において、カリン及び/又はスイカズラの抽出物は常法により得ることができる。例えば水および/または親水性有機溶媒を用いて抽出して抽出液を得る一般公知の方法を用いることができる。さらにこの抽出液から凍結乾燥、噴霧乾燥、減圧留去など一般公知の溶媒除去方法により粉末を得ることができる。親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール、エチルエーテル、メチルエーテルなど単素数2〜4のエーテルやアセトン、メチルエチルケトンなど炭素数2〜4のケトンなどが挙げられる。これらの中で、特にエタノールが好ましい。これらの溶媒は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよく。また、水とこれらの親水性有機溶媒を混合して使用してもよい。水と混合して用いる混合溶媒として好ましい抽出溶媒は、含水アルコールが挙げられ、特に含水エタノールが好ましい。
【0016】
これらの抽出溶媒の使用量は特に制限されない。抽出の具体的方法は、例えばエキス剤、チンキ剤などを製する際に用いられる冷浸法、温浸法、パーコレーション法などを適用することができる。得られた抽出液はそのまま、またはさらに濃縮したり、希釈したり、精製したりして用いることもできる。
【0017】
さらに、これらの抽出液を、カラムクロマトグラフィーなどを用いて精製した単一成分を用いることもできる。
【0018】
本発明者の見いだしたところによれば、洗口剤の口腔内タンパク凝集作用は、カリン抽出物を有効成分とするものによって発現する。また、カリン抽出物は他の植物からの抽出液および他の成分と混和し、洗口剤として使用することができる。この場合、カリン抽出物は洗口剤の全組成中に、植物の乾燥固形分(抽出物の場合は抽出に用いた植物の乾燥固形分)に換算して0.001〜20重量%、特に0.01〜10重量%配合するのが好ましい。
【0019】
本発明に於いては、カリン抽出物を有効成分として含有する洗口剤は、スイカズラ抽出物と併用することより相乗効果的に口腔内タンパクを凝集することができる。この場合、スイカズラ抽出物はカリン100重量部に対し、植物の乾燥固形分(抽出物の場合は抽出に用いた植物の乾燥固形分)に換算して0.001〜100重量部、特に0.1〜50重量部配合するのが好ましい。
【0020】
これらの洗口剤は、全組成中に、カリン抽出物を乾燥固形分(抽出物の場合は抽出に用いた植物の乾燥固形分)として0.001〜20重量%、特に0.01〜10重量%配合するのが好ましく、通常の方法に従って製造することができる。その際には、通常の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば油剤、界面活性化剤、保湿剤、薬効成分、アルコール類、防腐剤、増粘剤、色素、香料などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宣組み合わせて配合することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るカリン抽出物は、優れた口腔内タンパク凝集効果を示し、カリン抽出物を含有する洗口剤は、う蝕、歯肉病、口腔内炎症や口臭を予防・改善し得る洗口剤を得るために有用なものである。さらに、カリン抽出物を含有する洗口剤は、鎮咳作用、鎮痛作用、抗炎症作用などを併せ持つことから咽頭炎などの喉の疾患にも有効で、かつ、安全な口腔衛生剤を提供するために有用なものである。
【0022】
本発明に係るスイカズラ抽出物は、カリン抽出物と併用することで、カリン抽出物を含有する洗口剤の口腔内タンパク凝集効果を相乗効果的に高めるものである。
【0023】
本発明に係る洗口剤の使用に際しては、原液のまま、或いは水、ミネラルウォーター、スポーツドリンク等で希釈して使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
カリンエキスおよびスイカズラエキスは日本粉末より購入したものを用いた。
【実施例1】
【0026】
(タンパク凝固作用試験)
唾液タンパク構成成分のひとつであるアルブミンを凝固させる作用を検討した。
1.最小アルブミン凝固濃度の測定
唾液タンパクの代用として、主要な唾液タンパクの一種であるアルブミン溶液、および対照液(水)5.0mLに、被検体液1.0mLを添加、混合し、アルブミンの凝集を肉眼で観察した。さらに、その混合溶液の濁度をラボ用濁度計(2100AN型)で測定し、アルブミンの凝集度を数値化した。アルブミンは最終濃度が0.1%になるように調製し、被検体は最終濃度が0.003125、0.0625、0.125、0.25、0.5、1.0%になるように調製した。さらに、最終濃度を0.015625、0.003125、0.0625、0.125%に調製したカリンエキス溶液に、スイカズラエキスを“カリンエキス:スイカズラエキス=1:1、2:1”の比率で混合した溶液についても同様に濁度を測定し、アルブミンの凝集効果を検討した。濁度は以下の式を用いて算出した。
【0027】
濁度(NTU)={(被検体/0.1% アルブミン溶液)の濁度}−{(被検体/水)の濁度}
その結果、図1から明らかなようにカリンエキスは0.03125〜1.0%の濃度でアルブミンを凝集させ、その様子は肉眼で観察することができた。また、カリンエキスは0.03125〜1.0%の濃度で濃度依存的に濁度値を上昇させた(図2)。スイカズラエキスは弱いアルブミン凝集効果を示したが(図2)、その様子は肉眼で観察することはできない程度であった(図1)。しかし、カリンエキスにスイカズラエキスを混合すると、スイカズラエキスはカリンエキスのアルブミン凝集作用を顕著に増強させた(図3)(図4)。また、その効果はスイカズラエキスの濃度を上げることでさらに増強した(図4)。
【0028】
図1は、 カリンエキスとスイカズラエキスのアルブミン凝集試験結果であり、その(イ)はカリンエキスを、その(ロ)はスイカズラエキスを示す。
【0029】
図2は、 カリンエキスとスイカズラエキスのアルブミン凝集試験結果(グラフ)
図3 は、カリンエキスと、カリンエキスとスイカズラエキスの混合液のアルブミン凝集試験結果
図4 は、カリンエキスと、カリンエキスとスイカズラエキスの混合液のアルブミン凝集試験結果(グラフ)を示す。
【実施例2】
【0030】
(タンパク凝固作用)
2.唾液タンパク凝集試験
次に、実際に洗口剤として使用した場合の効果を5名の被験者で評価した。0.05〜0.3%に調製したカリンエキス溶液を調製し、各溶液20mLで10秒間洗口後、吐き出した溶液中に凝集した唾液タンパクを肉眼で観察した。
【0031】
その結果は表1(唾液タンパク凝集試験)示したごとく、0.1〜0.3%のカリンエキス水溶液に唾液タンパクの凝集作用が認められた。
【0032】
【表1】

【実施例3】
【0033】
スイカズラエキス単独にて実施例2の被験者に対し唾液タンパク凝集試験を行なったが、下記表2に示す通りいずれの濃度にても唾液タンパク凝集試験作用は認められなかった。
【0034】
【表2】

【実施例4】
【0035】
実施例2及び3に於いて唾液タンパクの凝集を示さなかった濃度のカリンエキス及びスイカズラエキスを併用したところ、下記表3に示す如く唾液タンパクの凝集作用が認められた。
【0036】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は カリンエキスとスイカズラエキスのアルブミン凝集試験結果 (写真)である。
【図2】図2は カリンエキスとスイカズラエキスのアルブミン凝集試験結果(グラフ)である。
【図3】図3 はカリンエキスと、カリンエキスとスイカズラエキスの混合液のアルブミン凝集試験結果(写真)を示す。
【図4】図4 はカリンエキスと、カリンエキスとスイカズラエキスの混合液のアルブミン凝集試験結果(グラフ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリン又はその抽出物を有効成分として含んでなる洗口剤。
【請求項2】
カリン又はその抽出物を0.001〜20重量%含んでなる請求項1の洗口剤
【請求項3】
スイカズラ又はその抽出物を更に含んでなる請求項1に記載の洗口剤。
【請求項4】
スイカズラ又その抽出物の含有量が、カリン又はその抽出物100重量部に対し0.001〜100重量部である請求項3の洗口剤





























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−256259(P2009−256259A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108472(P2008−108472)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(391034879)日成興産株式会社 (2)
【出願人】(500254837)株式会社ウイルコ (20)
【出願人】(598001065)
【Fターム(参考)】