説明

洗浄剤組成物

【課題】 洗浄性能を高めることが容易な洗浄剤組成物、及び保存安定性に優れる洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】洗浄剤組成物は、水又はエタノールを主成分とする溶媒に、非イオン性界面活性剤と(D)アニオン性界面活性剤とが溶解されてなるものである。この洗浄剤組成物には、リモネン及びカチオン性界面活性剤のうち少なくとも1種を含有させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油汚れ、手垢、ヤニ汚れ等の洗浄に使用される洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の洗浄剤組成物としては以下に示すものが知られている。例えば特許文献1では、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤と水とよりなる洗浄剤組成物が開示されている。この洗浄剤組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は10〜50質量%である。
【0003】
また、この他の洗浄剤組成物としては、エタノールを主成分(含有量:98質量%)とするもの、種々の界面活性剤及び電解イオン水を含有するもの、炭酸塩及び有機酸を含有するもの等が市販されている。
【特許文献1】特開2000−143470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは鋭意研究の結果、洗浄性能及び保存安定性がより一層高められた洗浄剤組成物を開発したことにより本発明を完成するに至った。本発明の目的とするところは、洗浄性能を高めることが容易な洗浄剤組成物を提供することにある。その他の目的とするところは、保存安定性に優れた洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の洗浄剤組成物は、水又はエタノールを主成分とする溶媒に、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とが溶解されてなることを要旨とする。
【0006】
この構成にすれば、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との相乗効果により、良好な洗浄性能を有する洗浄剤組成物が得られる。すなわち、被洗浄物の汚れ(汚垢等)が好適に除去される。
【0007】
請求項2に記載の発明の洗浄剤組成物は、請求項1に記載の発明において、前記非イオン性界面活性剤はショ糖脂肪酸エステルであることを要旨とする。
この構成にすれば、ショ糖脂肪酸エステルが優れた洗浄性能を発揮するとともに、洗浄に際しての被洗浄物表面の劣化を好適に抑制する。従って、被洗浄物表面の劣化が抑制されつつ、汚れに対する良好な洗浄性能が確保される。
【0008】
請求項3に記載の発明の洗浄剤組成物は、請求項1又は請求2に記載の発明において、前記アニオン性界面活性剤は脂肪酸ナトリウムであることを要旨とする。
この構成にすれば、脂肪酸ナトリウムが優れた洗浄性能を発揮することから、汚れに対する良好な洗浄性能が十分に確保される。
【0009】
請求項4に記載の発明の洗浄剤組成物は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記溶媒は前記水及び前記エタノールよりなることを要旨とする。
この構成にすれば、極性溶媒同士が併用されることにより、他の成分(例えば難水溶性成分)が溶媒中に分散され易くなる。これに伴って洗浄剤組成物の相分離が好適に抑制され、十分な洗浄性能が発揮される。
【0010】
請求項5に記載の発明の洗浄剤組成物は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、リモネンを含有してなることを要旨とする。
この構成にすれば、リモネンにより洗浄剤組成物に良好な芳香性が付与されるとともに、汚れに対する洗浄性能が一層向上する。
【0011】
請求項6に記載の発明の洗浄剤組成物は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、カチオン性界面活性剤を含有してなることを要旨とする。
この構成にすれば、カチオン性界面活性剤を含有させることにより、溶媒へのリモネンの溶解性が向上する。従って、リモネンの作用効果が好適に発揮され、汚れに対する洗浄性能がより一層向上する。
【0012】
請求項7に記載の発明の洗浄剤組成物は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、電気式ひげ剃り機の洗浄液として用いられることを要旨とする。
この構成にすれば、電気式ひげ剃り機の洗浄に用いられることによって、当該電気式ひげ剃り機を構成する金属部材、ゴム部材、樹脂部材等の表面の劣化を抑制しつつ、これら各部材の汚れを好適に除去することができる。
【0013】
請求項8に記載の発明の洗浄剤組成物は、水、エタノール、リモネン、脂肪酸のアルカリ金属塩、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含有してなることを要旨とする。
【0014】
一般に、リモネンが配合されている洗浄剤は、当該リモネンと他の成分との相溶性が芳しくないという点から、同洗浄剤を長期的に安定に保存するのは困難であり、リモネンと他の成分との相分離を招きやすいものであった。これに対し、本請求項の構成にすれば、脂肪酸のアルカリ金属塩とカチオン性界面活性剤との協働作用により、リモネンが水を主成分とする溶媒に好適に分散され得る。すなわち、リモネンが溶媒中に均一に混じり合う。その結果、リモネンと溶媒との相分離が長期に亘って抑制され、保存安定性に優れた洗浄剤組成物が得られる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1から請求項7に記載の発明の洗浄剤組成物によれば、洗浄性能を高めることができる。また、請求項8に記載の発明の洗浄剤組成物によれば、保存安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の洗浄剤組成物を具体化した第1の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の洗浄剤組成物は、水又はエタノールを主成分とする溶媒に、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とが溶解されてなるものである。なおここで、前記主成分とは、水又はエタノールのうち、含有量の多いものを示す。この洗浄剤組成物は、金属製部品、ゴム製部品、樹脂製部品等の被洗浄物に付着した汚れの洗浄に優れている。これらの中でも、本実施形態の洗浄剤組成物は、主に、金属製部品としての電気式ひげ剃り機の切り刃の洗浄に使用される。ここで、当該切り刃とは、電気式ひげ剃り機の外刃及び内刃を意味する。本実施形態の洗浄剤組成物は、前記切り刃に付着した汚れ(油脂や蛋白等の有機成分)や切断後のひげ等を除去する効果に優れている。また、この洗浄剤組成物は、前記切り刃を支持する支持部材(金属製、ゴム製又は樹脂製の部材)の汚れを除去する効果にも優れている。
【0017】
前記溶媒は、水及びエタノールのうち少なくとも1種であればよいが、本実施形態では、他の成分の分散性をより一層向上するため両者を使用するのが好ましい。溶媒を構成する成分の水は、他の成分を溶解させるものである。水は、他の成分の作用を阻害するのを防止するために不純物をできるだけ含有しないものが好ましい。洗浄剤組成物中の水の含有量は、洗浄剤組成物中の他の成分の含有量に対する残量である。
【0018】
また、同じく溶媒を構成するエタノールは、前記汚れ(油脂等の有機成分)を除去するとともに、他の成分の溶解性を向上するために含有される。洗浄剤組成物中のエタノールの含有量は5〜60容量%が好ましく、10〜30容量%がより好ましい。エタノールの含有量が5容量%未満の場合には、前記汚れを十分に除去することができない可能性が高い。一方、60容量%を超える場合には、効果が頭打ちになり、上記作用効果を十分に発揮することができない可能性が高い。
【0019】
非イオン性界面活性剤は、前記汚れを好適に除去するために含有されるものである。この非イオン性界面活性剤の具体例としては、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル 、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル 、アルキルポリグルコシド、アルキルポリグリセリンエーテル、糖アミンアシル化物、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。本実施形態では、前記汚れに対する良好な洗浄性能を発揮することができるとともに支持部材に対する刺激性が少ないという点から、非イオン性界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
【0020】
なお、前記及び以下の記載においての脂肪酸としては、炭素数が8〜24の高級脂肪酸が好ましい。この高級脂肪酸の具体的としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等の飽和直鎖脂肪酸、ミリストオレイン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エイコセン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、アラキドン酸等の不飽和直鎖脂肪酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシエイコ酸等の飽和ヒドロキシ脂肪酸、リシンオレイン酸等の不飽和ヒドロキシ脂肪酸、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキジン酸等のイソ酸が挙げられる。なお、9−メチルウンデカン酸、11−メチルトリデカン酸、11−メチルペンタデカン酸、15−メチルヘプタデカン酸等に代表されるアンテイソ酸も使用することができるが、ここではイソ酸に分類するものとする。
【0021】
洗浄剤組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は5〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。非イオン性界面活性剤の含有量が5質量%未満の場合には、前記汚れに対する洗浄性能が十分に発揮されない可能性が高い。一方、40質量%を超える場合には、溶媒に対する分散性が低下するとともに、他の成分の配合が困難になる可能性が高い。
【0022】
アニオン性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤と同様、前記汚れを好適に除去するために含有されるものである。このアニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、ヤシ油脂肪酸塩、ステアリン酸塩等の(高級)脂肪酸塩、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、セチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オレイル硫酸塩等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸塩等のポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩等のN−アシル−N−アルキルタウリン塩等の他、さらにアルファオレフィン硫酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンモノ又はジアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ又はジアルケニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンモノ又はジフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミドエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルアミドエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0023】
ここで、塩としては、ナトリウム、マグネシウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、低級アルキルアミン塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩、リジン塩等が挙げられる。本実施形態では、前記汚れに対する良好な洗浄性能を発揮することができる点から、アニオン性界面活性剤として脂肪酸のアルカリ金属塩、特に脂肪酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0024】
洗浄剤組成物中のアニオン性界面活性剤の含有量は0.5〜5質量%が好ましく、0.6〜2質量%がより好ましい。アニオン性界面活性剤の含有量が0.5質量%未満の場合には、前記汚れに対する洗浄性能が十分に発揮されない可能性が高い。一方、5質量%を超える場合には、溶媒に対する分散性が低下する可能性が高い。
【0025】
洗浄剤組成物には、リモネン及びカチオン性界面活性剤のうち少なくとも1種を含有させてもよい。本実施形態では、溶媒へのリモネンの溶解性を高めるべく両者を含有させるのが好ましい。
【0026】
リモネンは、前記汚れを好適に除去するとともに、芳香性の高い香りを洗浄剤組成物に付与するために含有される。またリモネンは、洗浄後においても被洗浄物表面に僅かに残存することにより潤滑剤として作用する。このため、例えば電気式ひげ剃り機の使用時には、外刃と内刃との摺動が滑らかなものとなり、剃り心地の向上が図られる。リモネンとしては、合成リモネン(d−リモネン及びl−リモネン)、天然リモネン等の他、さらにリモネンを主成分とする天然精油(オレンジオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、マンダリンオイル、タンジェリンオイル等)等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。すなわち、合成リモネン又は天然リモネンと、天然精油とを組合せて使用してもよい。これらのうち本実施形態では、上記作用効果に特に優れているd−リモネンを用いるのが好ましい。
【0027】
洗浄剤組成物中のリモネンの含有量は0.2〜20容量%が好ましく、0.3〜2容量%がより好ましく、0.3〜1容量%がさらに好ましい。リモネンの含有量が0.2容量%未満の場合には、前記汚れに対する洗浄性能が十分に発揮されない可能性が高い。一方、20容量%を超える場合には、溶媒に対する溶解性が著しく低下し、その結果、相分離が生じて洗浄性能が低下する可能性が高い。
【0028】
カチオン性界面活性剤は、前記リモネンの乳化分散及び可溶化を促進するために含有される。このカチオン性界面活性剤の具体例としては、塩化ベンザルコニウム(GEM)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、及びこれらに相当するプロミド等の他、さらにジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。本実施形態では、支持部材に対する刺激性が少ないという点から、カチオン性界面活性剤としてGEMを用いるのが好ましい。
【0029】
洗浄剤組成物中のカチオン性界面活性剤の含有量は、0.2〜3質量%が好ましく、0.3〜1質量%がより好ましい。カチオン性界面活性剤の含有量が0.2質量%未満の場合には、リモネンの乳化分散及び可溶化が十分に促進されない可能性が高い。一方、3質量%を超える場合には、アニオン性界面活性剤との反応により強固な複合物が析出してしまい、これに伴って前記汚れに対する洗浄性能が低下する可能性が高い。さらに、支持部材に対する刺激性が過剰に強くなり、同支持部材の表面の劣化を招く可能性がある。
【0030】
ここで、本実施形態の洗浄剤組成物にカチオン性界面活性剤を含有した場合には、以下に示す金属キレート剤を併用するのが好ましい。これは、当該金属キレート剤により、洗浄剤組成物の乳化分散系を安定化させるためである。この金属キレート剤は、金属イオンをキレートする能力を有するものであれば特に制限されない。その具体例としては、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ホスホン酸類、トリポリリン酸、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)テトラ酢酸、クエン酸、マレイン酸、ポリアクリル酸、イソアミレン−マレイン酸共重合体、ケイ酸、グルコン酸、ヒドロキシベンジルイミジノ酢酸、イミジノ酢酸及びこれらの塩が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0031】
また、本実施形態の洗浄剤組成物には、必要に応じて周知の両性界面活性剤を含有させてもよい。この両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルジメチルベタイン、ラウロイルアミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルベタイン、イミダゾリニウムベタインとして、ラウリルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルアミドヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−ラウリルスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、ラウリルアミドアルキレンジメチルアミノスルホベタイン等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0032】
さらに、本実施形態の洗浄剤組成物に、良好な殺菌作用を付与するため殺菌剤を含有させてもよい。この殺菌剤の具体例としては、例えば、ドデシルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンゼトニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルイソノニルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、ポリリジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0033】
さて、電気式ひげ剃り機の切り刃に付着した汚れを除去する際には、上記洗浄剤組成物が充填された洗浄容器内に切り刃を浸漬する。そして、その状態を一定時間維持する、或いは、切り刃を浸漬した状態で電気式ひげ剃り機を作動させてその内刃と外刃とを擦り合わせる。この結果、洗浄剤組成物により前記汚れが好適に除去される。なお、本実施形態の洗浄剤組成物の使用方法は、特に限定されるものではない。つまり、上記洗浄剤組成物が含浸された不織布等を用いて、切り刃等の金属製部品の表面に付着した汚れを拭き取ってもよい。さらに、エアゾ−ルとしてスプレ−缶から吐出させてもよい。この場合、スプレ−缶の内圧を高めるため、当該洗浄剤組成物は不溶解性圧縮ガスとともにスプレ−缶内に充填される。
【0034】
前記の実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
・ 本実施形態の洗浄剤組成物は、水又はエタノールを主成分とする溶媒に、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とが溶解されてなるものである。本実施形態では、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤として、それぞれ被洗浄物に付着した汚れに対する洗浄性能に特に優れるとともに、被洗浄物表面に対する刺激性の少ない脂肪酸系の界面活性剤が選択されている。このため、当該洗浄剤組成物によれば、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との相乗的洗浄作用により、極めて良好な洗浄性能を発揮することができる。また、被洗浄物表面の劣化を好適に抑制することもできる。
【0035】
・ 本実施形態の洗浄剤組成物は、リモネンとの相溶性に特に優れるエタノールが溶媒として用いられている。このため、リモネンの作用効果を十分に発揮することができる。加えて、相分離が好適に抑制されるため、商品価値(洗浄性能)が低下することがない。
【0036】
・ 本実施形態の洗浄剤組成物には、殺菌作用を有するカチオン性界面活性剤が含有されている。このため、当該洗浄剤組成物は、良好な洗浄作用に加えて殺菌作用も発揮することができる。
【0037】
・ 本実施形態の洗浄剤組成物の最良の形態は、食品添加物としても認められているショ糖脂肪酸エステル(非イオン性界面活性剤)、化粧品原料として使用される脂肪酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)、天然香料であるリモネン、手洗い消毒用としても利用されるGEM(カチオン性界面活性剤)を含有させたものである。すなわち、当該洗浄剤組成物は、衛生面及び環境保全性に優れた成分のみを含有するものであり、環境保護等に有効である。
(第2の実施形態)
以下、本発明の洗浄剤組成物を具体化した第2の実施形態について詳細に説明する。なお、第2の実施形態については、各成分の含有目的や含有量等に関し、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0038】
本実施形態の洗浄剤組成物は、水とエタノールとよりなる溶媒に、リモネン、脂肪酸のアルカリ金属塩、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含有してなるものである。この洗浄剤組成物では、脂肪酸のアルカリ金属塩とカチオン性界面活性剤との協働作用により、難水溶性のリモネンが水を主成分とする溶媒(水系溶媒)に好適に分散されるようになっている。従って、当該洗浄剤組成物は、長期に亘って保存される場合でも溶媒とリモネンとが相分離することがなく、保存安定性に優れている。なおここで、前記保存安定性は、洗浄剤組成物が長期に亘って常温保存されても、脂肪酸のアルカリ金属塩やカチオン性界面活性剤が沈殿又は懸濁したりせず、また溶媒とリモネンとが相分離することなく、均一な透明性を維持する性質をいう。
【0039】
本実施形態の洗浄剤組成物は、例えば、台所廻り(台所用品)、窓ガラス等のガラス製品、リビングの床、家具等に付着した油汚れ(手垢、ヤニ汚れ等)の洗浄、及び浴室内の浴槽、洗面器等に付着した皮脂汚れ、石鹸カス汚れ等の洗浄に用いられる。また、同洗浄剤組成物を台所用品(食器、まな板、包丁、魚焼きグリル、スポンジ等)の洗浄に用いた際には、肉、魚介、野菜等に起因する食材臭を伴う汚れの洗浄にも優れている。すなわち、当該洗浄剤組成物は、油汚れ等の有機成分の洗浄に優れているうえ、その食材臭を除去する又は軽減する消臭性能にも優れている。
【0040】
本実施形態の溶媒を構成する水は、他の成分を溶解させるものであり、当該溶媒の主成分として用いられる。ここで、前記溶媒の主成分とは、溶媒中の含有量が50容量%を超えるものをいう。水は、他の成分の作用を阻害するのを防止するために不純物をできるだけ含有しないものが好ましい。洗浄剤組成物中の水の含有量は、洗浄剤組成物中の他の成分の含有量に対する残量である。
【0041】
また、同じく溶媒を構成するエタノールは、他の成分(特に、難水溶性であるリモネン)の分散性を向上するために含有される。洗浄剤組成物中のエタノールの含有量は10〜40容量%が好ましく、20〜30容量%がより好ましい。エタノールの含有量が10容量%未満の場合には、水を主成分とする溶媒に対してリモネンを十分に分散させることができない可能性が高い。つまり、溶媒とリモネンとの相分離が生じやすく、保存安定性が低下する可能性が高い。一方、40容量%を超える場合には、効果が頭打ちになり、上記作用効果を十分に発揮することができない可能性が高い。
【0042】
リモネンの配合容量は、前記エタノールの配合容量に対して5%以下であることが好ましい。さらに、洗浄剤組成物中のリモネンの含有量は0.1〜3容量%が好ましく、0.3〜1容量%がより好ましい。リモネンの含有量が0.1容量%未満の場合には、前記油汚れ(皮脂汚れ)等の有機成分を十分に除去することができない可能性が高い。一方、リモネンの配合容量がエタノールの配合容量に対して5%を超える場合、又は洗浄剤組成物中のリモネンの含有量が3容量%を超える場合には、水を主成分とする溶媒に対するリモネンの分散性が著しく低下する可能性が高い。すなわち、長期保存時に際しては、溶媒とリモネンとの相分離が生じやすく、保存安定性が著しく低下する可能性が高い。
【0043】
脂肪酸のアルカリ金属塩は、カチオン性界面活性剤との協働作用により、溶媒に対するリモネンの分散性を向上するために含有される。また、この脂肪酸のアルカリ金属塩は、前記油汚れ(皮脂汚れ)等の有機成分を除去するために含有され、通常、脂肪酸石鹸と称されるものである。本実施形態でのアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらのうち本実施形態では、カチオン性界面活性剤との協働作用に特に優れる脂肪酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0044】
洗浄剤組成物中の脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量は0.5〜5質量%が好ましく、0.6〜2質量%がより好ましい。脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量が0.5質量%未満の場合には、水を主成分とする溶媒にリモネンを均一に分散させることが困難である。すなわち、溶媒とリモネンとの相分離が生じやすく、保存安定性が低下する可能性が高い。一方、5質量%を超える場合には、溶媒に対する脂肪酸のアルカリ金属塩の溶解性が低下し、その結果、長期保存時に脂肪酸のアルカリ金属塩の沈殿が生じやすくなる。加えて、前記油汚れ(皮脂汚れ)等の有機成分を十分に除去することができない可能性も高い。
【0045】
洗浄剤組成物中のカチオン性界面活性剤の含有量は、0.2〜5質量%が好ましく、0.3〜1質量%がより好ましい。カチオン性界面活性剤の含有量が0.2質量%未満の場合には、水を主成分とする溶媒にリモネンを均一に分散させることが困難である。すなわち、溶媒とリモネンとの相分離が生じやすく、保存安定性が低下する可能性が高い。一方、5質量%を超える場合には、溶媒に対するカチオン性界面活性剤の溶解性が低下する可能性が高い。すなわち、長期保存時にはカチオン性界面活性剤の沈殿が生じやすく、保存安定性及び洗浄性能が低下するおそれがある。加えて、前記油汚れ(皮脂汚れ)等の有機成分を十分に除去することができない可能性も高い。
【0046】
洗浄剤組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は0.1〜40質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。非イオン性界面活性剤の含有量が0.1質量%未満の場合には、前記油汚れ(皮脂汚れ)等の有機成分を十分に除去することができない可能性が高い。一方、40質量%を超える場合には、溶媒に対する分散性が低下するとともに、他の成分の配合が困難になる可能性が高い。
【0047】
本実施形態の洗浄剤組成物では、脂肪酸のアルカリ金属塩とカチオン性界面活性剤との反応によって形成された複合塩により溶媒の浸透圧が高くなる。その結果、難水溶性のリモネンが水を主成分とする溶媒中に好適に分散されるものと推測される。当該洗浄剤組成物は、リモネンの作用効果が好適に発揮されることから、良好な芳香性及び洗浄性能を有する。
【0048】
さて、本実施形態の洗浄剤組成物を用いて、台所用品に付着した油汚れ(有機成分)を除去する際には、同洗浄剤組成物が含浸された不織布等を用いて油汚れを拭き取る。ここで、当該油汚れが食材臭(アンモニア等アミン系化合物、酢酸、酪酸等の低級脂肪酸化合物、硫化水素等のイオウ化合物等)を伴うものである場合は、その油汚れが好適に除去されるうえ、リモネンの芳香が付与されて前記食材臭も除去又は軽減され得る。なお、本実施形態の洗浄剤組成物の使用方法は、特に限定されるものではない。つまり、合成樹脂等よりなる噴霧容器から噴霧させてもよい。また、エアゾ−ルとしてスプレ−缶から吐出させてもよい。この場合、スプレ−缶の内圧を高めるため、洗浄剤組成物は不溶解性圧縮ガスとともにスプレ−缶内に充填される。
【0049】
第2の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の洗浄剤組成物は、水とエタノールとよりなる溶媒、リモネン、脂肪酸のアルカリ金属塩、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含有してなるものである。この場合、リモネンは、浸透圧が高められている溶媒中に容易且つ均一に分散され得る。すなわち、水を主成分とする溶媒にリモネンが好適に分散される。その結果、リモネンと溶媒との相分離が抑制されることから、透明性が損なわれることがない。よって、良好な保存安定性を得ることができる。また、当該洗浄剤組成物では、各種成分が溶媒中に均一に分散又は溶解されていることから、これら各種成分の作用効果を十分に発揮することができる。従って、高度な商品価値(例えば洗浄性能)を長期的に確保することもできる。
【0050】
・ 本実施形態の洗浄剤組成物では、エタノールに容易且つ十分に分散することのできる適量のリモネンが含有されている。すなわち、リモネンと溶媒との相分離が確実に抑制され、極めて良好な保存安定性を長期的に確保することができる。
【0051】
・ 本実施形態の洗浄剤組成物は、リモネンとの相溶性に特に優れるエタノールが溶媒として用いられている。このため、リモネンの作用効果が十分に発揮され、好適な洗浄性能を得ることができる。
【0052】
・ 本実施形態の洗浄剤組成物には、殺菌作用を有するカチオン性界面活性剤が含有されている。このため、当該洗浄剤組成物は、好適な洗浄性能に加えて殺菌作用も発揮することができる。
【実施例1】
【0053】
ここでは、被洗浄物に対する洗浄剤組成物の洗浄評価の予備試験として、当該洗浄剤組成物の保存安定性の評価を行った。
表1に示す含有量のエタノールと、リモネン(1%)と、その他表中に示される成分を含有する組成物を調製した。なお、表中のエタノール及びリモネンの含有量を示す数値の単位は容量%であり、その他は質量%である。また、各組成物中の水の含有量は、組成物中の他の成分の含有量に対する残量である。各例の組成物を用いて、以下に示す評価を行った。これらの結果を表1に示す。
(保存安定性の評価)
各例の組成物を調製し、これを3日間放置した後、目視によりそれぞれの組成物の保存安定性を以下の基準に従い評価した。
【0054】
○:良好な透明性を維持する、△:僅かな相分離及び懸濁を生じ、やや良好な透明性を維持する、×:顕著な相分離及び懸濁を生じ、不透明である。
【0055】
【表1】

<GEM(カチオン性界面活性剤)>塩化ベンザルコニウムの50%水溶液
<石鹸(脂肪酸のアルカリ金属塩)>脂肪酸ナトリウム
<非イオン性界面活性剤>ポリオキシエチレンノニルフェニールエーテル
<両性界面活性剤>ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン
表1に示すように、カチオン性界面活性剤としてのGEMと、脂肪酸のアルカリ金属塩としての石鹸とがともに含有されている洗浄剤組成物の保存安定性はいずれも△又は○となっており、他の組成物に比べて優れた評価が得られた。また、GEMと石鹸とに加え、非イオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物に関しても良好な保存安定性が得られた。さらに、GEMと石鹸とがともに含有されている洗浄剤組成物は、水で3倍に希釈した場合でも、良好な透明性が維持されており、保存安定性に優れるという結果が得られた。
【0056】
なお、エタノールのみを溶媒として用いた組成物、つまりエタノール99容量%とリモネン1容量%とよりなる組成物においては、リモネンがエタノール中に好適に分散され、保存安定性に優れるという結果となった。また、表1において、リモネンを含有しない組成物では、他の成分(GEM、石鹸等)は全て溶媒に溶解される。
【実施例2】
【0057】
水67容量%、エタノール30容量%及びリモネン1質量%と、その他の成分として表2に示す組み合わせよりなる各種界面活性剤(石鹸、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤)とを含有する組成物について、それぞれの保存安定性を実施例1と同様の基準に従い評価した。すなわち、選択する界面活性剤の種類が組成物の保存安定性に与える影響を確認した。その結果を表2に示す。なお、表2中のカチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び石鹸は、実施例1と同様のものを用いた。
【0058】
【表2】

<アニオン性界面活性剤>ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム
表2より、石鹸とカチオン性界面活性剤との組み合わせにより得られた洗浄剤組成物のみが保存安定性に優れることが確認された。それ以外の組み合わせにより得られる組成物では、上述した様な複合塩が形成されず、その結果、溶媒へのリモネンの十分な分散性が得られなかったものと推測される。
【実施例3】
【0059】
上記実施例1により、水とエタノールとよりなる溶媒に、リモネン、脂肪酸のアルカリ金属塩(アニオン性界面活性剤)、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含有してなる洗浄剤組成物の良好な保存安定性が確認された。これを考慮し、以下に試験例及び比較例を挙げて上記第1の実施形態をさらに具体的に説明する。
(試験例1〜15、比較例1〜4)
表3に示す各成分を混合することにより、洗浄剤組成物を調製した。なお、表中の各成分の含有量を示す数値の単位は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤が質量%であり、その他が容量%である。各例の洗浄剤組成物を用いて、以下に示す各評価を行った。これらの結果を表3に示す。
<溶解性の評価>
各例の洗浄剤組成物を調製した後、目視によりそれぞれの溶解性について、良好(○)、不良(×)の2段階で評価した。ここでは、調製後の洗浄剤組成物が、2日経過後でも透明性を維持している場合を良好(○)、2日経過後白濁している場合を不良(×)とした。
<洗浄性能の評価(洗浄評価)>
(i)人工汚垢の洗浄評価
JIS K 3370に準じて試験を行った。すなわち、牛脂と大豆油との混合油脂(含有比1:1)20g、モノオレイン0.25g及びオイルレッド0.1gをクロロホルム60mlに溶解し、汚垢液を調製した。次いで、この汚垢液をアルミニウム板(25×50mm)に塗布した後に乾燥させ、1〜3ヶ月間自然酸化させることにより、汚垢がこびりついた試験片を作製した。そして、この試験片を各例で示す洗浄剤組成物(濃度:100%)中に常温下で15分間浸漬した後、汚垢の洗浄率の評価を行った。この垢汚の洗浄率について、以下の基準に従い評価した。なお、前記洗浄率とは、洗浄前の試験片の汚垢量に対する洗浄後の汚垢量の百分率を目視により評価したものである。
【0060】
◎:洗浄が良好(洗浄率95〜100%)、○:洗浄がやや良好(洗浄率50〜95%)、△:洗浄がやや不良(洗浄率25〜50%)、×:洗浄が不良(洗浄率0〜25%)。
【0061】
(ii)電気式ひげ剃り機の切り刃の洗浄評価
各例で示す洗浄剤組成物(濃度:100%)中に、長期間使用した電気式ひげ剃り機の切り刃を常温下で15分間浸漬し、当該切り刃に付着した汚れの洗浄を行った。この汚れ等の洗浄率について、上記(i)と同様の基準に従い評価した。この場合も、洗浄前及び洗浄後の切り刃の汚れについては、目視によりその量の確認を行った。
<材質評価>
以下に示す試験1〜3に従って、各例の洗浄剤組成物が電気式ひげ剃り機を構成する各種部材に対してどの様な影響を及ぼすのかを調べた。なお、ここでは新品の電気式ひげ剃り機を用いた。そして、その切り刃を支持する支持部材(金属部材、ゴム部材及び樹脂部材)において、劣化(重量変化、色落ち等)が生じたか否かを以下の基準に従い評価した。なお、金属部材、ゴム部材及び樹脂部材の重量変化とは、洗浄前及び洗浄後の各部材の重量差をいう。
【0062】
○:いずれの試験においても劣化が確認されない(重量変化が5%未満且つ色落ちなし)、×:いずれかの試験において劣化が確認された(重量変化が5%以上又は色落ちあり)。
【0063】
(試験1)
各例で示す洗浄剤組成物(濃度:100%)中に、電気式ひげ剃り機の切り刃を60℃で100時間浸漬した後、その支持部材(金属部材、ゴム部材及び樹脂部材)の材質評価を目視により行った。
【0064】
(試験2)
各例で示す洗浄剤組成物(濃度:100%)を脱脂綿に湿らせた後、この脱脂綿を電気式ひげ剃り機の切り刃(支持部材)に押し当て、60℃で100時間この状態を維持した。その後、支持部材の材質評価を目視により行った。
【0065】
(試験3)
各例で示す洗浄剤組成物(濃度:100%)中に電気式ひげ剃り機の切り刃を15分間浸漬した後、60℃の空気中に100時間さらした。その後、支持部材の材質評価を目視により行った。
【0066】
【表3】

<非イオン性界面活性剤>A1:ショ糖脂肪酸エステル、A2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、A3:ソルビタン
<アニオン性界面活性剤>B1:脂肪酸ナトリウム、B2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム
<リモネン>d−リモネン
<カチオン性界面活性剤>塩化ベンザルコニウム
<その他(溶剤)>S1:2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、S2:ブチセノール20
表3に示すように、試験例1〜15では、洗浄評価(i)及び(ii)がいずれも△以上、且つどちらか一方が○となっており、比較例1〜4に比べて優れた洗浄性能が得られた。各試験例と各比較例とを比べると、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との相乗作用により、特に優れた洗浄性能が発揮されることが確認された。これに対し、比較例1及び4では非イオン性界面活性剤が、比較例2及び3ではアニオン性界面活性剤が含有されていないため、十分な洗浄性能を得ることができなかった。また、試験例1〜15の結果から、非イオン性界面活性剤の中では、ショ糖脂肪酸エステル(A1)を含有する洗浄剤組成物の洗浄性能が高い傾向がみられた。非イオン性界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(A1)を用いた場合には、その含有量を6.6〜20質量%とすることが好ましいことが確認された。試験例1〜2及び14〜15より、アニオン性界面活性剤として脂肪酸ナトリウム(B1)を含有する洗浄剤組成物が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(B2)を含有するものよりも良好な洗浄性能を有することが確認された。
【0067】
一方、試験例1〜10より、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(A2)を用いた洗浄剤組成物の場合には、金属部材、ゴム部材及び樹脂部材に劣化が生じる結果となり、使用性に関しては好ましいものではなかった。
【0068】
なお、両実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 第1の実施形態の洗浄剤組成物を、手動式の剃刀の洗浄に用いてもよい。また、第1の実施形態の洗浄剤組成物を、窓ガラス等のガラス製品、リビングの床、家具、台所廻り等に付着した油汚れ(手垢、ヤニ汚れ等)の洗浄、及び浴室内の浴槽、洗面器等のプラスチック製品に付着した石鹸カス汚れ、皮脂汚れ等の洗浄に用いてもよい。
【0069】
・ 両実施形態の洗浄剤組成物に、周知のpH調整剤(炭酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、ホウ酸塩、燐酸塩等)、水溶性高分子物質(増粘剤)、乳化剤、増泡剤、酵素、酵素安定化剤、抗菌剤、軟水化剤、溶解性向上剤等を含有させてもよい。
【0070】
・ 両実施形態の洗浄剤組成物を、シャンプー、ボディソープ等の身体用洗浄剤として使用してもよい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0071】
・ 水とエタノールとよりなる溶媒に、リモネン、脂肪酸のアルカリ金属塩及びカチオン性界面活性剤が分散又は溶解されてなり、前記溶媒は前記水を主成分とすることを特徴とする洗浄剤組成物。この場合、水を主成分とする溶媒にリモネンが好適に分散された洗浄剤組成物を得ることができる。
【0072】
・ 前記リモネンの配合容量は、前記エタノールの配合容量に対して5%以下であることを特徴とする請求項8に記載の洗浄剤組成物。この構成にすれば、好適な芳香性を備えつつも、溶媒に均一且つ十分に分散させることのできる適量のリモネンが配合される。従って、当該洗浄剤組成物を長期に亘って保存する場合でも、リモネンが経時的に溶媒と分離することがほとんどなく、その結果、良好な透明性が維持される。
【0073】
なお、本発明を応用した技術として、第2の実施形態の洗浄剤組成物において、非イオン性界面活性剤を省略してもよい。すなわち、この洗浄剤組成物は、水、エタノール、リモネン、脂肪酸のアルカリ金属塩及びカチオン性界面活性剤を含有してなるものである。この構成にすれば、脂肪酸のアルカリ金属塩とカチオン性界面活性剤との協働作用により、リモネンが水を主成分とする溶媒に好適に分散され得る。すなわち、リモネンが溶媒中に均一に混じり合う。その結果、リモネンと溶媒との相分離が長期に亘って抑制され、保存安定性に優れた洗浄剤組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又はエタノールを主成分とする溶媒に、非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とが溶解されてなることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤はショ糖脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤は脂肪酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記溶媒は前記水及び前記エタノールよりなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
リモネンを含有してなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
カチオン性界面活性剤を溶解してなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
電気式ひげ剃り機の洗浄液として用いられることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
水、エタノール、リモネン、脂肪酸のアルカリ金属塩、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含有してなることを特徴とする洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−45289(P2006−45289A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225756(P2004−225756)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000195111)ショーワ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】