説明

洗浄水供給装置

【課題】コンパクトで、施工及びメンテナンスを容易に行なうことができる洗浄水供給装置を提供する。
【解決手段】洗浄水供給装置101は、導水管10と、導水管10を開閉する第1開閉弁V1とを備え、洗浄水を便器本体1の便鉢2に供給する。また、洗浄水供給装置101は、第1開閉弁V1より下流側で導水管10に流入口21が連通し、貯留した洗浄水を流出口22から流出可能であり、流入口21と流出口22とが上面に形成されたタンク20と、タンク20に貯留された洗浄水を便鉢2に送り出す送水手段と、送水手段を制御する制御装置Cとをさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1に従来の洗浄水供給装置が開示されている。この洗浄水供給装置は、水道管と接続される導水管と、導水管を開閉する第1開閉弁と、この第1開閉弁より上流側で導水管から分岐した分岐導水管とを備えている。また、この洗浄水供給装置は、分岐導水管に流入口が接続され、貯留した洗浄水を流出口から流出可能であり、流入口と流出口とが上部に形成された蓄圧タンクと、蓄圧タンクの流出口の下流側に連通された送出管と、この送出管を開閉する第2開閉弁と、第1及び第2開閉弁を制御する制御手段とを備えている。
【0003】
このような構成である従来の洗浄水供給装置は、洗浄水を蓄圧タンクに蓄圧し、その蓄圧水をジェット孔及びリムに供給するため、十分な水量及び水勢を有する洗浄水をジェット孔及びリムに供給することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−70617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の洗浄水供給装置では、蓄圧タンクが第1及び第2開閉弁より上流側に配置されているため、蓄圧タンクには静水時の水道水圧がかかる。このため、蓄圧タンクは静水時の水道水圧に耐え得る耐圧性能を有するものにされなければならない。また、蓄圧タンクの流入口及び流出口と、分岐導水管との接続部分も静水時の水道水圧に耐え得るように強固にしなければならない。また、導水管から直接便器本体の便鉢に洗浄水を供給する供給路とは別に、分岐導水管に設けられた蓄圧タンクを介して便鉢に洗浄水を供給する供給路を有している。このため、この洗浄水供給装置は、小型化が困難であり、施工及びメンテナンスに手間を要する。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、コンパクトで、施工及びメンテナンスを容易に行なうことができる洗浄水供給装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洗浄水供給装置は、導水管と、該導水管を開閉する第1開閉弁とを備え、洗浄水を便器本体の便鉢に供給する洗浄水供給装置において、
前記第1開閉弁より下流側で前記導水管に流入口が連通し、貯留した洗浄水を流出口から流出可能であり、該流入口と該流出口とが上面に形成されたタンクと、
該タンクに貯留された洗浄水を前記便鉢に送り出す送水手段と、
該送水手段を制御する制御手段とをさらに備えていることを特徴とする。
【0008】
このような構成である本発明の洗浄水供給装置では、タンクが導水管を開閉する第1開閉弁より下流側に連通されているため、タンクに静水時の水道水圧がかからない。このため、タンクを耐圧性能の高いものにする必要がない。また、タンクの流入口及び流出口に導水管を接続する際も強固に接続する必要がない。また、タンクの上面に流入口と流出口とが形成されているため、タンク上方から導水管及び送水手段を容易に接続することができる。また、便鉢に洗浄水を供給する供給路は、導水管からタンク及び送水手段を介して供給する供給路のみである。
【0009】
したがって、本発明の洗浄水供給装置は、コンパクトで、施工及びメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0010】
本発明の洗浄水供給装置において、タンクは、流入口と連通する流入室と、流入室と底部で連通された流出室と、流入室に連通する大気口とを有し、
送水手段は、第1開閉弁と、第1開閉弁より下流側で導水管に導入口が接続され、タンクの流入口に接続された導出口から洗浄水を導出することにより、外部に連通する吸気口から空気を吸引するエゼクタと、大気口を開閉する第2開閉弁と、流出口と便鉢とを連通する送出管とを有し、
制御手段は第1開閉弁及び第2開閉弁を制御することが好ましい。
【0011】
この場合、第2開閉弁を開閉することにより、洗浄水をタンクへ貯留したり、タンクに貯留された洗浄水を流出させたりすることができる。
【0012】
つまり、洗浄水とともにエゼクタが吸引した空気は、タンクの流入室に流入する。この流入した空気は、第2開閉弁が開弁状態では大気口から排出されるが、閉弁状態では流入室の上部に滞留する。このため、第2開閉弁を開弁状態にすれば、タンクに空気が滞留することなく洗浄水のみが貯留される。一方、第2開閉弁を閉弁状態にすれば、タンク内の洗浄水は、流入室の上部に滞留する空気の増加にともない押し出される。このため、第2開閉弁の開閉タイミングを制御することにより、便鉢への洗浄水の単位時間当たりの供給量を任意のタイミングで増減させることができる。また、第2開閉弁は空気用の開閉弁であるため、水用の開閉弁に比べ、小型にでき、開閉動作を小さな力で行なうことができる。
【0013】
送水手段は、エゼクタの吸気口を開閉させる第3開閉弁をさらに有しても良い。この場合、第3開閉弁を閉弁状態にすれば、エゼクタが空気を吸引しないため、エゼクタが空気を吸引する音をなくすことができる。また、これにより洗浄水中に空気が殆んど含まれないようになるため、洗浄水が便鉢に供給される際に洗浄水中の気泡が破裂して生じる破裂音等の異音の発生を防止することができる。このため、洗浄水供給装置の静粛化を図ることができる。
【0014】
本発明の洗浄水供給装置において、大気口はタンクの上面に形成されていることが好ましい。この場合、タンクの上方から大気口を開閉する開閉弁を容易に接続することができる。
【0015】
本発明の洗浄水供給装置において、タンクは、容器状のタンク本体と、タンク本体を上方から密閉する蓋部材とを有し、蓋部材に流入口、流出口及び大気口が形成されていることが好ましい。この場合、蓋部材が導水管、送出管及び第2開閉弁との接続部材を兼ねることとなる。このため、構造を簡略化でき、省スペース化を図ることができる。また、タンクは、タンク本体に貯留される洗浄水の最高水面より上方において蓋部材により密閉されるため、外部への漏水を防止できる。
【0016】
本発明の洗浄水供給装置において、タンクは、便鉢の後方かつ便鉢の上面より下方に配置されていることが好ましい。この場合、便鉢の後方かつ便鉢の上面より下方の空間を有効に利用することができる。そして、このタンクを含む洗浄水供給装置、ひいては水洗式便器の便器本体以外である便器洗浄装置が便器本体の後方上面において、便鉢の上面より上方に突出する高さを低くすることができる。
【0017】
本発明の洗浄水供給装置を組み込んだ便器洗浄装置において、便器本体の水封部の下流側に連通する便器排水路から空気を吸引する吸気装置を備え、エゼクタの吸気口を吸気装置に連通するようにしても良い。この場合、洗浄水供給装置における送水手段としてのエゼクタと、吸気装置としてのエゼクタとを同一のものにすることができる。このため、便器洗浄装置の部品点数を削減し、構造を簡略化することができる。また、便器排水路から空気を吸引することにより、少ない洗浄水で早期にサイホン作用を発生させることができる。さらに、タンクに貯留した洗浄水を適切なタイミングで便鉢へ供給することにより、確実に汚物を便器排水路へ排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の洗浄水供給装置を洋風水洗式便器に具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1に示すように、この洋風水洗式便器は、便器本体1と、便器洗浄装置100とを備えている。なお、便座及び便蓋の図示は省略する。
【0020】
便器本体1は便鉢2の上部内周にリム3を有している。また、便器本体1には便鉢2の下端から上方に延びる上昇流路が形成され、便鉢2の下方には水封部4が形成されている。便器本体1の上昇流路は接続管と接続されており、接続管内は便器排水路5、滞留部6及び排水口7とされている。また、図7に示すように、便器本体1は、便鉢2の後方に上方が開口して左右及び後方が連続する側壁に囲まれた収納部1Sを有している。
【0021】
また、図1に示すように、便器洗浄装置100は、洗浄水供給装置101と、便器排水路5の吸気装置とを具備している。
【0022】
洗浄水供給装置101は、水道管と接続される導水管10と、導水管10を開閉する第1開閉弁V1とを備えている。
【0023】
導水管10は、便器本体1が据え付けられるトイレルームの床面又は壁面から引き込まれた水道管の止水栓V5に連通している。また、第1開閉弁V1より上流側には、止水弁及びストレーナを内蔵するストレーナ装置11と定流量弁12とが設けられており、下流側にはバキューブブレーカ13が設けられている。
【0024】
また、バキュームブレーカ13より下流側の導水管10にエゼクタ30の導入口31が接続されている。エゼクタ30の導出口32にはタンク20の流入口21が接続され、タンク20は貯留した洗浄水を流出口22から流出可能になっている。タンク20は第1開閉弁V1より下流側に接続されているため、タンク20には静水時の水道圧がかからない。このため、タンク20は耐圧性能の高いものにする必要がない。また、エゼクタ30の導出口32とタンク20の流入口21とを強固に接続する必要がない。
【0025】
タンク20は、便器本体1の収納部1S内であり、かつ便鉢2の上面より下方に配置されている。このため、タンク20を含む洗浄水供給装置101、ひいては便器洗浄装置100が便器本体1の後方上面において、便鉢2の上面より上方に突出する高さを低くすることができている。
【0026】
タンク20は、流入口21に連通する流入室25と、流入室25と底部が連通され、流出口22に連通する流出室26とを有している。流入室25には大気口23が設けられ、ここには第2開閉弁V2が接続されている。流入室25は、エゼクタ30の導出口32に連通するノズル50から洗浄水が吐出され、旋回流が形成される旋回室29を有する。流出口22には、便器本体1のリム3まで延びる送出管40が接続されている。便鉢2へ洗浄水を供給する供給路はこの経路のみである。
【0027】
エゼクタ30は外部に連通する吸気口33を有している。この吸気口33は導出口32から洗浄水を導出することにより空気を吸引する。
【0028】
便器排水路5の吸気装置は、以下の負圧蓄圧タンク70及び吸引タンク80等を有している。
【0029】
エゼクタ30の吸気口33は、逆止弁111が設けられた第1導圧管110を介して負圧を蓄圧する負圧蓄圧タンク70に接続されている。このため、洗浄水供給装置101の送水手段を構成するエゼクタ30が吸気装置にも利用されていることになり、便器洗浄装置100の部品点数が削減され、構造の簡略化が図られている。
【0030】
逆止弁111より負圧蓄圧タンク70よりの第1導圧管110には、途中に第3開閉弁V3が設けられて外部に連通する第2導圧管120が分岐されている。また、途中に第4開閉弁V4が設けられ、便器排水路5から空気を吸引する吸引タンク80に連通する第3導圧管130が分岐されている。
【0031】
吸引タンク80の内部は、設置時の上下方向で移動可能な隔膜83によって第1室81と第2室82とに区画されている。第1室81は第3導圧管130に接続され、第2室82は吸引管90によって便器排水路5に接続されている。
【0032】
図2に示すように、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4は制御装置Cにより開閉タイミング及び開閉時間が制御されている。第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4は、空気用の開閉弁であるため、水用の開閉弁に比べ、小型にされ、開閉動作を小さな力で行なうことができるようになっている。
【0033】
この実施例の特徴的な構成であるタンク20についてより詳細に説明する。このタンク20は、図3及び図4に示すように、容器状のタンク本体27と、タンク本体27を上方からパッキン20pを挟持して密閉する蓋部材28とを有している。
【0034】
蓋部材28に流入口21、流出口22及び大気口23が形成されている。タンク本体27内は、流入口21及び大気口23に連通する流入室25と、流入室25と底部で連通され、流出口22に連通する流出室26とを有している。このため、流入口21にエゼクタ30の導出口32を接続したり、流出口22に後述する送出管40を接続したり、大気口23に第2開閉弁V2を接続したりすることをタンク20の上方から容易に行なうことができ、施工及びメンテナンスを容易に行なうことができる。また、蓋部材28がエゼクタ30、送出管40及び第2開閉弁V2との接続部材を兼ねているため、構造を簡略化でき、省スペース化を図ることができる。また、タンク本体27に貯留される洗浄水の最高水面より上方において蓋部材28により密閉されているため、タンク20の外部へ漏水することがない。
【0035】
また、図5に示すように、タンク本体27は平面視が横長楕円形状の容器である。タンク本体27の内底面には、上方に突出する係合凸部27aが形成されている。タンク本体27内には流入室25及び流出室26が形成されている。流入室25内には、設置時に上下方向に延び、係合凸部27aと嵌合する円筒体29tによって旋回室29が構成されている。また、流出室26は、設置時に上下方向に延び、係合凸部27aと嵌合する小円筒体26tによって構成されている。旋回室29の上方端部には、図3に示すように、中央部に開口60aを有する椀状の遮蔽板60が係止されている。遮蔽板60の開口60aは、遮蔽板60の上方に位置する洗浄水を下方に導くとともに、旋回室29内で洗浄水から分離される空気を遮蔽板60の上方に導く役割を果たす。
【0036】
旋回室29の内部には、図4に示すように、ノズル50が設けられている。ノズル50は、エゼクタ30の導出口32に連通し、旋回室29内で洗浄水を旋回させるように円筒体29tの内面に沿って開口している。
【0037】
また、図6に示すように、円筒体29tの下端と小円筒体26tの下端とは連通しており、タンク本体27の底部で旋回室29から流出室26に延びる連通路29rを構成している。連通路29rは、旋回室29内に生じた旋回流の勢いを利用して洗浄水が流出室26に流入するように、円筒体29tの接線方向に延びている。円筒体29tの下端には流入室25と連通する開口29aが形成されている。このため、流入室25内の洗浄水は、この開口29aから旋回室29内に流入し、旋回室29内で旋回する洗浄水とともに流出室26に流入する。
【0038】
以上の洋風水洗式便器では、洗浄水供給装置101は、導水管10、ストレーナ装置11、定流量弁12、第1開閉弁V1、バキューブブレーカ13、送水手段、タンク20及び制御装置Cによって構成されている。このうち、タンク20に貯留された洗浄水を便鉢2に送り出す送水手段は、導水管10、第1開閉弁V1、エゼクタ30、ノズル50、第2開閉弁V2、送出管40、第1導圧管110、第2導圧管120及び第3開閉弁V3によって構成されている。便器排水路5の吸気装置は、エゼクタ30、第1導圧管110、逆止弁111、負圧蓄圧タンク70、第2導圧管120、第3開閉弁V3、第3導圧管130、第4開閉弁V4、吸引タンク80、吸引管90及び制御装置Cによって構成されている。
【0039】
したがって、実施例の洗浄水供給装置101は、コンパクトで、施工及びメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0040】
次に、本発明の洗浄水供給装置101を組み込んだ便器洗浄装置100の作動について説明する。
【0041】
[非洗浄時(図1)]
図14において、t1時点によりも前の非洗浄時には、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4は閉弁している。この状態では、タンク20内には洗浄水が貯留されている。吸引タンク80内の隔膜83は吸引タンク80内の下内壁面に当接している。
【0042】
[便鉢洗浄行程・負圧蓄圧行程(図8)]
用便後、図14のt1時点において、制御装置Cに便器洗浄の開始信号を送信する洗浄スイッチを使用者が操作することにより、制御装置Cによって第1開閉弁V1が開弁する。
【0043】
これにより、導水管10内を流れる洗浄水はエゼクタ30を通って旋回室29内に流入する。エゼクタ30内を洗浄水が流れることにより、エゼクタ30が負圧蓄圧タンク70内の空気を第1導圧管110及び逆止弁111を介して吸引し、吸引された空気は洗浄水とともに旋回室29内に流入する。旋回室29内では洗浄水が旋回するため、洗浄水中の空気は、良好に分離され、流入室25の上部に蓄積される。これにより、負圧蓄圧タンク70内に負圧が徐々に蓄積されるとともに、負圧蓄圧タンク70から吸引した空気の分だけ流入室25の水面が徐々に下がる。
【0044】
また、導水管10から供給された洗浄水と、タンク20内に貯留され、負圧蓄圧タンク70から吸引した空気に応じた量の洗浄水とが送出管40を介してリム3に供給される。リム3に供給された洗浄水は便鉢2の内面に沿って旋回しながら流れ落ち、便鉢2内に旋回流が形成される。この旋回流により、汚物は便鉢2の中央に集められる。なお、この旋回流により、ペーパーは、ほぐれて洗浄水となじみ、洗浄水中に分散する。
【0045】
[吸気行程(図9)]
図14のt2時点において、制御装置Cによって第4開閉弁V4が開弁される。これにより、負圧蓄圧タンク70内の負圧が第1導圧管110、第3導圧管130及び第4開閉弁V4を介して吸引タンク80の第1室81に伝達され、第1室81内が負圧になる。また、エゼクタ30内には引き続き洗浄水が供給されているため、エゼクタ30によっても第1室81内の空気が吸引される。これにより、吸引タンク80内の隔膜83は、第4開閉弁V4が開弁された当初は負圧蓄圧タンク70内の負圧により急激に引き上げられ、その後、エゼクタ30により吸引タンク80の上内壁面に当接するまで緩やかに引き上げられる。
【0046】
吸引タンク80により便器排水路5内の空気を第2室82に吸引する際には、便鉢2内の水位はリム3から供給された洗浄水によって十分に高くなっており、水封部4の最高位部4aとの間の水頭差が十分に大きなものとなっている。このため、便鉢2内の洗浄水は、この水頭差と便器排水路5内の空気の吸引とにより、早期に便器排水路5内が洗浄水で満水状態になって強力なサイホン作用が発生し、少ない洗浄水で早期に排出流が形成される。
【0047】
この際、便鉢2内に形成された旋回流により便鉢2の中央に集められた汚物は、サイホン作用により便器排水路5へ排水される洗浄水に伴って、便器排水路5へ確実に排出される。
【0048】
また、便器排水路5は、滞留部6によって下流側と封鎖され、便器排水路5は水封部4と滞留部6との間に存在する閉空間にされている。このため、確実に便器排水路5から一定量の空気を吸引することができるため、サイホン作用を安定して発生させることができる。
【0049】
また、吸引タンク80内が隔膜83によって第1室81と第2室82とに区画され、第2室82のみが便器排水路5と連通しているため、汚物を含んだ洗浄水や臭気を含んだ空気等が負圧蓄圧タンク70やエゼクタ30側へ入り込むことを確実に防止している。
【0050】
[洗浄水増加行程(図10)」
図14のt3時点において、便鉢2の水位は便鉢2後部の最低位部2aの高さ近傍にまで低下しており、この瞬間、制御装置Cによって第3開閉弁V3を開弁し、第4開閉弁V4を閉弁する。
【0051】
この際、いまだエゼクタ30内に洗浄水が供給されているため、外部の大量の空気が第3開閉弁V3、第2導圧管120及び第1導圧管110を介して旋回室29内に流入する。このため、流入室25内の洗浄水は、流入した大量の空気により流出室26及び送出管40を介してリム3に押し出される。これにより、流入室25内の水位は急激に大きく低下する。
【0052】
便鉢2内の水位が便鉢2後部の最低位部2aより低くなり、便器排水路5に便鉢2から空気が流入してサイホン作用が終了する前において、こうしてリム3に供給される洗浄水が増加する。つまり、リム3から供給される洗浄水は、導水管10から供給される洗浄水とタンク20に貯留されていた洗浄水とを加えたものであるため、便鉢2への単位時間当たりの洗浄水の供給水量は多くなっている。このため、水封部4は破封せず、便鉢2内の洗浄水は旋回を継続し、サイホン作用も継続する。また、便鉢2内の旋回流も強力になる。さらに、洗浄水の水勢も増加する。このため、便鉢2内に残留する汚物は、便器排水路5内へ押し出されるようにより確実に排出される。
【0053】
[隔膜の戻し行程(図11)]
図14のt4時点において、制御装置Cによって第1開閉弁V1を閉弁し、第4開閉弁V4を開弁する。これにより、吸引タンク80の第1室81が第4開閉弁V4、第3導圧管130、第1導圧管110、第2導圧管120及び第3開閉弁V3を介して外部と連通するため、第1室81内が大気圧になり、隔膜83が下降する。このため、便器排水路5内に第2室82から空気が徐々に押し込まれ、便器排水路5内において徐々に空気が増加する。このため、便器排水路5を洗浄水で満水にする状態が維持できず、サイホン作用が終了する。
【0054】
[覆水行程(図12)]
図14のt5時点において、制御装置Cによって第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開弁し、第4開閉弁V4を閉弁する。これにより、エゼクタ30が外部から空気を吸引しながら旋回室29に洗浄水が流入する。洗浄水中の空気は、旋回室29内で良好に分離され、大気口23、第2開閉弁V2を介して外部に放出される。このため、タンク20内の洗浄水は洗浄開始前の所定の水位まで蓄積される。また、流出室26から送出管40を介して洗浄水がリム3に供給され、便鉢2内に洗浄水が溜まり覆水する。
【0055】
[大気開放行程(図13)]
図14のt6時点において、制御装置Cによって第1開閉弁V1が閉弁し、第4開閉弁V4が開弁する。これにより、再度、吸引タンク80の第1室81が第4開閉弁V4、第3導圧管130、第1導圧管110、第2導圧管120及び第3開閉弁V3を介して外部と連通し、隔膜83が吸引タンク80の下内壁面に当接するまで下降する。この結果、隔膜83が洗浄前の所定の位置に戻され、次回の洗浄を安定して行なうことができる。その後、図14のt7時点において、制御装置Cによって第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第4開閉弁V4が閉弁される。
【0056】
上記実施例は本発明の一例であり、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【0057】
例えば、図14のt5時点において、制御装置Cによって第3開閉弁V3を閉弁してもよい。この場合、洗浄水がエゼクタ30を通過する際に空気を吸引しないため、エゼクタ30が空気を吸引する音をなくすことができる。また、洗浄水中に空気が殆んど含まれないようになるため、覆水のため便鉢2に供給される洗浄水中の気泡が破裂して生じる破裂音等の異音の発生を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例の洗浄水供給装置を備えた洋風水洗式便器の模式図である。
【図2】実施例の洗浄水供給装置の制御装置を示す模式図である。
【図3】実施例の洗浄水供給装置のタンクを示す断面図である。
【図4】実施例の洗浄水供給装置のタンクの要部を示す断面図である。
【図5】図3のA−A矢視断面図である。
【図6】図3のB−B矢視断面図である。
【図7】便器本体に実施例の洗浄水供給装置のタンクを組み込んだ状態を示す概略図である。
【図8】実施例の洋風水洗式便器が便鉢洗浄・負圧蓄圧行程にあるときの作動状態を示す模式図である。
【図9】実施例の洋風水洗式便器が吸気行程にあるときの作動状態を示す模式図である。
【図10】実施例の洋風水洗式便器が洗浄水増加行程にあるときの作動状態を示す模式図である。
【図11】実施例の洋風水洗式便器が隔膜の戻し行程にあるときの作動状態を示す模式図である。
【図12】実施例の洋風水洗式便器が覆水行程にあるときの作動状態を示す模式図である。
【図13】実施例の洋風水洗式便器が大気開放行程にあるときの作動状態を示す模式図である。
【図14】実施例の洋風水洗式便器の作動を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1…便器本体
2…便鉢
10…導水管
20…タンク
21…流入口
22…流出口
23…大気口
25…流入室
26…流出室
27…タンク本体
28…蓋部材
31…導入口
33…吸気口
V1…第1開閉弁
30、40、50、V2、110、120、V3…送水手段(30…エゼクタ、40…送出管、50…ノズル、V2…第2開閉弁、110…第1導圧管、120…第2導圧管、V3…第3開閉弁)
C…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導水管と、該導水管を開閉する第1開閉弁とを備え、洗浄水を便器本体の便鉢に供給する洗浄水供給装置において、
前記第1開閉弁より下流側で前記導水管に流入口が連通し、貯留した洗浄水を流出口から流出可能であり、該流入口と該流出口とが上面に形成されたタンクと、
該タンクに貯留された洗浄水を前記便鉢に送り出す送水手段と、
該送水手段を制御する制御手段とをさらに備えていることを特徴とする洗浄水供給装置。
【請求項2】
前記タンクは、前記流入口と連通する流入室と、該流入室と底部で連通された流出室と、該流入室に連通する大気口とを有し、
前記送水手段は、前記第1開閉弁と、該第1開閉弁より下流側で前記導水管に導入口が接続され、該タンクの該流入口に接続された導出口から洗浄水を導出することにより、外部に連通する吸気口から空気を吸引するエゼクタと、該大気口を開閉する第2開閉弁と、該流出口と前記便鉢とを連通する送出管とを有し、
前記制御手段は該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御する請求項1記載の洗浄水供給装置。
【請求項3】
前記大気口は前記タンクの上面に形成されている請求項2記載の洗浄水供給装置。
【請求項4】
前記タンクは、容器状のタンク本体と、該タンク本体を上方から密閉する蓋部材とを有し、該蓋部材に前記流入口、前記流出口及び前記大気口が形成されている請求項3記載の洗浄水供給装置。
【請求項5】
前記タンクは、前記便鉢の後方かつ該便鉢の上面より下方に配置されている請求項1乃至4いずれか1項記載の洗浄水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−223356(P2008−223356A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64007(P2007−64007)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】