説明

洗濯乾燥機のヒートポンプユニットの組み付け方法およびヒートポンプユニット

【課題】生産性の低下を招くことなく熱交換部や配管部材の寸法のばらつきを吸収し、コンプレッサの組み付け精度が高められる洗濯乾燥機のヒートポンプユニットの組み付け方法を提供する
【解決手段】熱交換部32に接続している配管部材34の第一管部51の端部および第四管部54の端部は、自由端である。そのため、ケーシング35にコンプレッサ31および熱交換部32を配置するとき、配管部材34はコンプレッサ31の冷媒出口55またはアキュムレータ33の冷媒入口56に嵌め込まれ、溶接される。これにより、コンプレッサ31およびアキュムレータ33に配管部材34を接続する際に配管部材34の位置を調整することにより、熱交換部32や配管部材34の寸法のばらつきが吸収される。その結果、配管部材34からコンプレッサ31およびアキュムレータ33に加わる力が低減され、ケーシング35に対するコンプレッサ31の位置の変化も低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯乾燥機のヒートポンプユニットの組み付け方法およびヒートポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯乾燥機において、ヒートポンプユニットを搭載し、ヒートポンプユニットで乾燥および加熱した空気を衣類の乾燥に利用する洗濯乾燥機が公知である。このようなヒートポンプユニットを構成するコンプレッサは、振動の発生源となるため、高い防音性および防振性が要求される(特許文献1〜3参照)。例えば特許文献1の場合、コンプレッサをシートで覆うことにより、コンプレッサから発生する音に対する防音性の確保を図っている。また、特許文献2および特許文献3の場合、コンプレッサの支持構造を工夫することにより、コンプレッサの防振性の確保を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008− 88919号公報
【特許文献2】特開2008− 260号公報
【特許文献3】特開2001−132674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コンプレッサは、熱交換部とともにケーシングに収容される。そのため、コンプレッサ自身の防音性および防振性を高めても、コンプレッサから生じた振動がケーシングや熱交換部に伝搬する。コンプレッサは、ケーシングなどに取り付けられる以上、この振動の伝搬は回避できない。その結果、このケーシングや熱交換部に伝搬した振動は、ケーシングや熱交換部に接する他の部材に伝搬し、より大きな部材の振動を招く要因となる。これにより、コンプレッサ自身の防振性を確保しても、他の部材の振動によって新たな騒音の発生を招き、全体的な騒音の低下を図ることは困難になる。
【0005】
そこで、振動の伝搬経路に適度な隙間を設けることが考えられている。具体的には、コンプレッサの脚部に設けられた穴と、ケーシングと一体に設けられた凸部とが互いに芯をあわせつつ組み付けることにより、このコンプレッサの脚部とケーシングの凸部との間に隙間を形成している。このようにコンプレッサとケーシングとが組み付けられる部分に隙間を形成することにより、各部材間の直接の接触が低減され、振動の伝搬、および騒音の低減が図られている。しかしながら、コンプレッサとケーシングとが組み付けられる部分における部材間で芯をあわせて適度な隙間を確保するためには、各部材の高い寸法精度および組み付け精度が要求され、生産性の低下を招くという問題がある。特に、コンプレッサと熱交換部との間は、冷媒が流れる金属製の配管部材で接続されている。この熱交換部に対する配管部材の位置の精度、および配管部材で接続されるコンプレッサと熱交換部との位置関係は、工業製品である以上、所定の範囲のばらつきを含んでいる。そのため、コンプレッサの組み付け位置の精度を高めても、配管部材を経由してコンプレッサと熱交換部とを接続することにより、配管部材とコンプレッサとの接続部分には力が加わる。その結果、コンプレッサの位置に変化が生じ、コンプレッサの取付部における芯のずれが発生する。これにより、コンプレッサの脚部とケーシングの凸部とが直接接触するため振動が伝達され、防振性の確保が困難になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、生産性の低下を招くことなく熱交換部や配管部材の寸法のばらつきを吸収し、コンプレッサの組み付け精度が高められる洗濯乾燥機のヒートポンプユニットの組み付け方法およびヒートポンプユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願の洗濯乾燥機のヒートポンプユニットの組み付け方法は、冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサと、前記コンプレッサから吐出された冷媒の熱交換を行う熱交換部と、前記コンプレッサと一体に設けられ前記エバポレータを通過した冷媒に含まれる気体と液体とを分離するアキュムレータと、前記コンプレッサ、前記熱交換部および前記アキュムレータの間を接続して前記冷媒が流れる配管部材と、前記コンプレッサ、前記熱交換部、前記アキュムレータおよび前記配管部材を収容するケーシングと、を備える洗濯乾燥機のヒートポンプユニットの組み付け方法であって、前記ケーシングに前記コンプレッサ、および予め前記配管部材が接続された前記熱交換部を配置する工程と、前記配管部材の前記熱交換部とは反対側の端部を、前記コンプレッサに設けられている冷媒出口、および前記アキュムレータに設けられている冷媒入口にそれぞれ嵌め込んだ後、前記配管部材と前記冷媒出口、および前記配管部材と前記冷媒入口との間を溶接する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の手順により、熱交換部に接続している配管部材の熱交換部とは反対側の端部は、ケーシングにコンプレッサおよび熱交換部を配置した後、コンプレッサの冷媒出口またはアキュムレータの冷媒入口に嵌め込まれ、溶接される。すなわち、配管部材は、ケーシングに対するコンプレッサの位置が決められた後、つまりコンプレッサの位置精度を確保した後、コンプレッサに取り付けられる。そのため、コンプレッサおよびアキュムレータに配管部材を接続する際に比較的柔軟な配管部材の位置を調整することにより、熱交換部や配管部材の寸法のばらつきが吸収される。その結果、配管部材からコンプレッサおよびアキュムレータに加わる力が低減され、ケーシングの取付部分に対するコンプレッサの脚部の中心の位置のずれも低減される。したがって、生産性の低下を招くことなく熱交換部や配管部材の寸法のばらつきを吸収することができ、コンプレッサの組み付け精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態による洗濯乾燥機の構成を示す模式図
【図2】一実施形態による洗濯乾燥機のヒートポンプユニットを示す概略斜視図
【図3】一実施形態による洗濯乾燥機のヒートポンプユニットを示す概略平面図
【図4】一実施形態による洗濯乾燥機においてヒートポンプユニットを搭載したベース部材、カバーおよびケースカバーの構成を示す概略分解斜視図
【図5】一実施形態による洗濯乾燥機においてヒートポンプユニットにおけるコンプレッサの脚部およびケーシングの突出部の近傍を拡大した概略断面図
【図6】一実施形態による洗濯乾燥機においてヒートポンプユニットにおけるコンプレッサの脚部およびケーシングの突出部の近傍を拡大した概略平面図
【図7】図6においてコンプレッサの脚部の中心とケーシングの突出部の中心とがずれた状態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による洗濯乾燥機を図面に基づいて説明する。
まず、一実施形態による洗濯乾燥機の概略構成を説明する。図1に示すように、洗濯乾燥機10は、筐体11、回転槽12、モータ13およびヒートポンプユニット14を備えている。筐体11は、洗濯乾燥機10の外郭を形成している。筐体11は、内部に水槽15を収容している。水槽15は、さらに内部に回転槽12を収容している。水槽15および回転槽12は、いずれも前方が開口した円筒状に形成されている。水槽15の開口側の端部は、筐体11の前端側に形成された洗濯物出し入れ用の開口部16にベローズ17で接続されている。筐体11に形成された洗濯物出し入れ用の開口部16は、扉18によって開閉される。水槽15の内部に収容された回転槽12は、洗濯時において洗濯室となり、乾燥時において乾燥室となる。
【0011】
筐体11の上方において内側には、給水ケース21が設けられている。給水ケース21は、給水弁22を内蔵している。給水弁22は、ホースを経由して水道の蛇口に接続される。これにより、洗濯時において水槽15には水道水が供給される。回転槽12は、円筒状の胴体部分においてほぼ全体に孔23を有している。この孔23は、通水のための孔として機能するとともに、通風のための孔としても機能する。給水弁22から供給された水は、これらの孔23を経由して回転槽12内に供給される。水槽15は、下端部に排水口24を有している。排水口24は、排水ホースが接続される。排水ホースは、排水口24とは反対側の端部が洗濯乾燥機10の外部に取り出されている。
【0012】
回転槽12は、後端側の中心部に回転軸25が設けられている。回転軸25は、回転槽12の後端からさらに後方へ突出している。突出する回転軸25の端部には、モータ13の図示しないロータが取り付けられている。これにより、モータ13は、回転軸25を中心に回転槽12を回転駆動する。水槽15は、前端側において開口部16よりも上方に温風出口26が設けられている。また、水槽15は、後端側において上方に温風入口27が設けられている。これら温風出口26と温風入口27との間は、通風路28によって接続されている。
【0013】
洗濯乾燥機10は、筐体11の下部にヒートポンプユニット14を備えている。ヒートポンプユニット14は、図2および図3に示すようにコンプレッサ31、熱交換部32、アキュムレータ33、配管部材34およびケーシング35を備えている。コンプレッサ31、熱交換部32、アキュムレータ33および配管部材34は、ケーシング35に収容されている。このケーシング35は、熱交換部32において水槽15との間で空気が循環する空気通路36を形成している。この空気通路36は、図1に示すように通風路28に接続している。この通風路28は、ヒートポンプユニット14と水槽15とを接続している。
【0014】
ヒートポンプユニット14は、図2に示すようにファンユニット37が取り付けられる。ファンユニット37は、送風ファン38を有している。送風ファン38は、図1に示すように通風路28の途中に設けられている。これにより、送風ファン38は、ヒートポンプユニット14と水槽15との間を循環する空気の流れを形成する。ヒートポンプユニット14は、図4に示すようにファンユニット37とともにベース部材40に搭載される。このベース部材40は、図1に示すように筐体11の下面へ取り付けられる。
【0015】
ケーシング35は、樹脂で形成され、図2および図3に示すように熱交換搭載部41およびコンプレッサ搭載部42を一体に有している。熱交換搭載部41は、空気通路36に対応する部分に設けられ、熱交換部32が搭載される。また、コンプレッサ搭載部42は、熱交換搭載部41に隣接して設けられ、一体となっているコンプレッサ31およびアキュムレータ33が搭載される。
【0016】
配管部材34は、コンプレッサ31から熱交換部32およびアキュムレータ33を順に経由してコンプレッサ31へ至る冷媒通路を形成している。コンプレッサ31で圧縮された冷媒は、コンプレッサ31から吐出され、配管部材34を経由して熱交換部32へ供給される。熱交換部32は、コンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45を有している。コンデンサ43およびエバポレータ44は、上述の通りケーシング35の空気通路36に設けられており、空気通路36を流れる空気と熱交換するための多数のフィンを有している。コンプレッサ31で圧縮された冷媒は、熱交換部32においてコンデンサ43、絞り器45およびエバポレータ44の順に流れる。これにより、冷媒は、コンデンサ43において放熱された後、絞り器45において圧力が開放され、エバポレータ44へ供給される。
【0017】
コンプレッサ31は、上述のように冷媒を圧縮して熱交換部32側へ吐出する。コンデンサ43は、コンプレッサ31で圧縮された温度が上昇した冷媒が通過する。冷媒がコンデンサ43を通過することにより、冷媒は放熱されるのに対し、空気通路36においてコンデンサ43を通過する空気は加熱される。絞り器45は、圧縮された冷媒の圧力を開放する。エバポレータ44は、絞り器45で圧力が開放された冷媒が流入する。絞り器45において圧力が開放されて冷媒が気化することにより、エバポレータ44には気化の際の蒸発熱によって温度が低下した冷媒が流入する。その結果、冷媒がエバポレータ44を通過することにより、空気通路36においてエバポレータ44を通過する空気は冷却される。アキュムレータ33は、コンプレッサ31と一体に設けられており、エバポレータ44を通過した冷媒に含まれる気体と液体とを分離する。エバポレータ44を通過した冷媒は、気体と液体とが混合した状態となっている。液体の冷媒がコンプレッサ31へ流入するとコンプレッサ31の能力の低下を招くため、アキュムレータ33はコンプレッサ31の入口側において冷媒に含まれる気体と液体とを分離する。
【0018】
配管部材34は、第一管部51、第二管部52、第三管部53および第四管部54を有している。第一管部51は、コンプレッサ31に設けられている冷媒出口55とコンデンサ43とを接続している。第二管部52は、コンデンサ43と絞り器45とを接続している。第三管部53は、絞り器45とエバポレータ44とを接続している。第四管部54は、エバポレータ44とアキュムレータ33の冷媒入口56とを接続している。配管部材34は、例えば銅管などの金属の管で形成されており、内部に冷媒が流れる冷媒通路を形成している。配管部材34は、図2に示すように冷媒出口55とコンデンサ43との間の第一管部51、および冷媒入口56とエバポレータ44との間の第四管部54に、それぞれ湾曲部57を有している。湾曲部57は、第一管部51の冷媒出口55とコンデンサ43との間、および第四管部54の冷媒入口56とエバポレータ44との間において、配管部材34の寸法的な誤差やコンプレッサ31およびアキュムレータ33と熱交換部32との位置的な誤差などの吸収を目的として設けられている。
【0019】
ファンユニット37の送風ファン38の駆動によって水槽15からヒートポンプユニット14へ供給された空気は、空気通路36においてまずエバポレータ44を通過する。空気通路36を流れる空気は、エバポレータ44を通過する際に冷却される。そのため、ヒートポンプユニット14と水槽15との間を循環する空気に含まれる水蒸気は、エバポレータ44において凝縮する。これにより、ヒートポンプユニット14に供給された空気中の水分が除去され、空気の湿度は低下する。エバポレータ44を通過した空気は、続いてコンデンサ43を通過する。コンデンサ43では、エバポレータ44で水分が除去された空気が加熱される。これらの結果、ヒートポンプユニット14では、エバポレータ44で乾燥された空気がコンデンサ43で加熱される。そして、ヒートポンプユニット14を通過することにより乾燥および加熱された空気は、水槽15へ供給される。水槽15へ供給された空気は、回転槽12内において洗濯物に含まれる水分を吸収した後、再びヒートポンプユニット14へ循環する。これにより、回転槽12に収容されている洗濯物の乾燥が行われる。
【0020】
ケーシング35に収容されているコンプレッサ31は、取付部61においてケーシング35に保持されている。取付部61は、ケーシング35の凸部62と、コンプレッサ31の穴63とから構成されている。凸部62は、ケーシング35と一体に形成され、ケーシング35の底部から上方へ立ち上がっている。穴63は、コンプレッサ31の脚部64に設けられ、この脚部64を天地方向へ貫いている。
【0021】
脚部64は、コンプレッサ31の下方の外周側において周方向へ三箇所に均等に配置されている。凸部62は、図5に示すようにケーシング35の底部から上方へ立ち上がる円柱状に形成されている。この凸部62の外周側には、弾性部材621が設けられている。弾性部材621は、例えばゴムやエラストマーなどの弾性材料で形成されている。弾性部材621は、内側に凸部62が挿入される筒状であって、上下に伸縮可能な蛇腹状に形成されている。凸部62は、上端側にワッシャ622およびねじ部材623が設けられている。ねじ部材623は、ワッシャ622を凸部62に固定している。ワッシャ622は、弾性部材621の上端と接することなく、弾性部材621が凸部62から抜けるのを防止している。また、弾性部材621は、上端側の内径が下端側より大きく設定されている。そのため、弾性部材621は、下端側において内壁が凸部62に接している。これに対し、弾性部材621は、上端側において内壁と凸部62の外壁との間にわずかな隙間が形成されている。弾性部材621を挟んで隙間と反対側にコンプレッサ31の脚部64が位置している。弾性部材621は、溝部624において穴63を形成する脚部64の内壁と嵌合している。これにより、コンプレッサ31の穴63に嵌合する弾性部材621と凸部62との間には、わずかな隙間が形成されている。このわずかな隙間により、コンプレッサ31とケーシング35とを固く結合する場合と比較して、コンプレッサ31からケーシング35への振動の伝達が吸収され、コンプレッサ31の振動にともなうケーシング35の共振が低減される。
【0022】
ケーシング35に収容され、ベース部材40に搭載されたコンプレッサ31およびアキュムレータ33は、防音部材65に覆われるとともに、図4に示すようにカバー66によって覆われる。この防音部材65は、例えばゴムや発泡性の柔軟な樹脂で形成され、コンプレッサ31およびアキュムレータ33の外側を覆っている。また、カバー66は、コンプレッサ31およびアキュムレータ33を内側に収容する。これにより、カバー66は、防音部材65とともに、コンプレッサ31およびアキュムレータ33からの騒音、特にコンプレッサ31で発生する音を遮蔽し、外部への音の漏れを低減している。さらに、ケースカバー67は、カバー66によって覆われるコンプレッサ31およびアキュムレータ33に加え、熱交換部32を上方から覆っている。これにより、ヒートポンプユニット14は、図4に示すように全体がケーシング35とケースカバー67との間に収容される。ケースカバー67も、カバー66と同様にコンプレッサ31をはじめとするヒートポンプユニット14を覆うことにより、外部への音の漏れを低減している。
【0023】
次に、上記の構成による洗濯乾燥機10のヒートポンプユニット14の組み付け方法について説明する。
ヒートポンプユニット14は、ケーシング35への組み付けに先立って熱交換部32に配管部材34が取り付けられる。すなわち、配管部材34は、熱交換部32を構成するコンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45に取り付けられる。具体的には、コンデンサ43は、コンプレッサ31から冷媒が流入する入口側に、コンプレッサ31に接続される第一管部51が取り付けられる。このとき、コンプレッサ31とコンデンサ43とを接続する第一管部51は、コンデンサ43と反対側がコンプレッサ31に接続されておらず、自由端となっている。また、コンデンサ43は、冷媒通路が複数回折り返されて形成されている。そのため、配管部材34は、折り返される冷媒通路に対応する部分がコンデンサ43から露出している。そこで、このコンデンサ43から露出する配管部材34も、コンデンサ43に取り付けられる。これらコンデンサ43と配管部材34とは、例えば溶接やろう付けによって接続される。
【0024】
同様に、第二管部52はコンデンサ43と絞り器45との間に取り付けられ、第三管部53は絞り器45とエバポレータ44との間に取り付けられる。また、エバポレータ44は、アキュムレータ33へ冷媒が流出する出口側に、アキュムレータ33に接続される第四管部54が取り付けられる。このとき、エバポレータ44とアキュムレータ33とを接続する第四管部54は、エバポレータ44とは反対側の端部がアキュムレータ33に接続されておらず、自由端となっている。また、エバポレータ44は、コンデンサ43と同様に冷媒通路が複数回折り返されて形成されている。そのため、配管部材34は、折り返される冷媒通路に対応する部分がエバポレータ44から露出している。そこで、このエバポレータ44から露出する配管部材34も、エバポレータ44に取り付けられる。これらエバポレータ44と配管部材34、および絞り器45と配管部材34とは、例えば溶接やろう付けによって接続される。
【0025】
このように、コンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45に配管部材34を接続する場合、熱交換部32を構成するコンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45は、図示しない治具に搭載された状態で配管部材34が取り付けられる。この治具は、ケーシング35の熱交換搭載部41の形状に対応している。すなわち、治具は、ケーシング35の熱交換部32が搭載される熱交換搭載部41の形状を模して形成されている。これにより、熱交換部32を構成するコンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45は、ケーシング35の熱交換搭載部41の形状に対応する治具に搭載された状態で配管部材34が取り付けられる。その結果、コンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45の位置は、ケーシング35に搭載しなくても、ケーシング35に対応して正確に決定されつつ、適切な位置に配管部材34が接続される。
【0026】
図示しない治具において熱交換部32を構成するコンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45と配管部材34とが組み付けられると、配管部材34が組み付けられた熱交換部32はケーシング35の熱交換搭載部41に取り付けられる。このとき、ケーシング35のコンプレッサ搭載部42には、アキュムレータ33が一体に組み付けられたコンプレッサ31も取り付けられる。この場合、熱交換部32の搭載に先立ってコンプレッサ31およびアキュムレータ33をコンプレッサ搭載部42に搭載することが望ましい。アキュムレータ33が一体に組み付けられたコンプレッサ31は、脚部64の穴63に、予め弾性部材621が取り付けられているケーシング35の凸部62が挿入される。穴63を形成する脚部64は、弾性部材621の外周側に形成されている溝部624に嵌合する。このとき、凸部62と穴63とは、三箇所の脚部64において、互いの中心が一致するように、すなわち芯をあわせつつ組み付けられる。このように、コンプレッサ31の穴63へ凸部62を挿入することにより、凸部62の下方側における凸部62と弾性部材621とが接触する。この凸部62と弾性部材621との接触によって、コンプレッサ31とケーシング35との位置関係は、図6に示すように凸部62と穴63の中心が一致するように決定される。
【0027】
熱交換部32は、コンプレッサ搭載部42にコンプレッサ31およびアキュムレータ33を搭載した状態で上方から熱交換搭載部41に取り付けられる。これにより、上方から熱交換部32をケーシング35に搭載するとき、自由端となっている配管部材34の端部はコンプレッサ31の冷媒出口55およびアキュムレータ33の冷媒入口56に上方から挿入される。具体的には、コンデンサ43に接続されている第一管部51の自由端は、コンプレッサ31の冷媒出口55に挿入される。また、エバポレータ44に接続されている第四管部54の自由端は、アキュムレータ33の冷媒入口56に挿入される。
【0028】
配管部材34は、第一管部51においてコンデンサ43と冷媒出口55との間、および第四管部54においてエバポレータ44と冷媒入口56との間にそれぞれ湾曲部57を有している。配管部材34は、湾曲部57において比較的自由に形状を変化させることができる。熱交換部32をケーシング35に搭載するとき、コンプレッサ31およびアキュムレータ33は予めケーシング35に取り付けられている。このとき、コンプレッサ31は、脚部64の穴63に弾性部材621を介してケーシング35の凸部62を挿入することにより、ケーシング35との間の位置関係が決定されている。このようにコンプレッサ31とケーシング35との間で位置が決められている状態で形状的に余裕のない配管部材34を接続すると、配管部材34に無理な力が加わり、コンプレッサ31は配管部材34から受ける力によって位置の変化が生じるおそれがある。そこで、本実施形態のように配管部材34の途中に形状の変化を吸収する湾曲部57を設けることにより、配管部材34をコンプレッサ31およびアキュムレータ33に接続するとき、配管部材34は湾曲部57を利用して容易に変形する。そのため、配管部材34に無理な力が加わることがなく、この配管部材34に接続されるコンプレッサ31やアキュムレータ33にも無理な力が加わらない。その結果、脚部64の穴63への凸部62の挿入によって正確に決定されたコンプレッサ31とケーシング35との位置関係は、配管部材34の接続によって変化することがない。
【0029】
従来は、治具を利用して予めコンプレッサ31およびアキュムレータ33と熱交換部32とを配管部材34で接続した後、これらコンプレッサ31、アキュムレータ33および熱交換部32をケーシング35に搭載していた。このような従来の手順の場合、配管部材34の寸法精度、または配管部材34と各部との接続すなわち溶接時における加工精度に幅があるため、個体ごとに形状に誤差が生じる。また、ケーシング35についても個体ごとに寸法や形状の誤差が生じる。そのため、治具においてコンプレッサ31およびアキュムレータ33と熱交換部32とを精度を確保しつつ配管部材34で接続しても、ケーシング35に搭載する際に各個体差を原因とする変形を招く。その結果、弾性部材621の変形を招き、図7に示すようにコンプレッサ31の脚部64とケーシング35の凸部62との間の隙間が不均一となる。これにより、凸部62と脚部64とが弾性部材621を介して接触し、コンプレッサ31からケーシング35への振動の伝達の原因となる。なお、図6および図7では、ワッシャ622およびねじ部材623の図示は省略している。
【0030】
これに対し、上述の本実施形態の場合、コンプレッサ31およびアキュムレータ33をケーシング35に対し位置を決定しつつ取り付けた後、配管部材34がコンプレッサ31およびアキュムレータ33に取り付けられる。そして、この配管部材34には変形を吸収する湾曲部57が設けられている。これにより、図6に示すように一旦位置が決定されたコンプレッサ31は、配管部材34の接続によってその位置に変化が生じない。その結果、コンプレッサ31の脚部64とケーシング35の凸部62との間には隙間が確保される。
【0031】
コンプレッサ31の冷媒出口55に第一管部51が挿入され、アキュムレータ33の冷媒入口56に第四管部54が挿入されると、その接続部分すなわち冷媒出口55および冷媒入口56の端部は溶接またはろう付けによって固定される。これにより、配管部材34とコンプレッサ31およびアキュムレータ33との接続は完了する。このように配管部材34とコンプレッサ31およびアキュムレータ33とを溶接またはろう付けする際に、配管部材34は加熱によって軟化する。そのため、熱交換部32とコンプレッサ31およびアキュムレータ33とを配管部材34で接続した際に配管部材34に残留している変形力も解消される。その結果、配管部材34自身の位置も安定し、熱交換部32とコンプレッサ31およびアキュムレータ33とを配管部材34で接続する場合でも、コンプレッサ31はケーシング35に対し正しい取り付け位置が確保される。
【0032】
ケーシング35にコンプレッサ31、アキュムレータ33および熱交換部32の搭載が完了すると、これらコンプレッサ31などが搭載されたケーシング35は、ベース部材40に取り付けられる。このとき、図4に示すようにカバー66およびケースカバー67も取り付けられる。ケーシング35とベース部材40との間は、図4に示すように例えばねじなどの締結部材70によって保持される。このとき、ケーシング35とベース部材40との間は、コンプレッサ31とケーシング35との間と同様に、例えば隙間などのように振動の伝達を回避する部分を確保しつつ接続される。その結果、コンプレッサ31からケーシング35への振動の伝達、およびケーシング35からベース部材40の振動の伝達は、いずれも低減される。
【0033】
以上説明した一実施形態では、熱交換部32に接続している配管部材34の第一管部51の端部および第四管部54の端部は、ケーシング35にコンプレッサ31および熱交換部32を配置するとき、コンプレッサ31の冷媒出口55またはアキュムレータ33の冷媒入口56に嵌め込まれ、溶接される。すなわち、配管部材34は、ケーシング35に対するコンプレッサ31およびアキュムレータ33の位置が決められた後、つまりコンプレッサ31の位置精度を確保した後、コンプレッサ31に取り付けられる。そのため、コンプレッサ31およびアキュムレータ33に配管部材34を接続する際に比較的柔軟な配管部材34の位置を調整することにより、熱交換部32や配管部材34の寸法のばらつきが吸収される。さらには、接続した配管部材34も、溶接またはろう付けの際に加熱されることにより、残留する変形応力が解消され、配管部材34自身の位置も安定する。その結果、配管部材34からコンプレッサ31およびアキュムレータ33に加わる力が大幅に低減され、ケーシング35に対するコンプレッサ31の位置の変化が低減される。したがって、生産性の低下を招くことなく熱交換部32や配管部材34の寸法のばらつきを吸収することができ、コンプレッサ31の組み付け精度を高めることができる。
【0034】
また、一実施形態では、ケーシング35にコンプレッサ31および熱交換部32を配置する前に、ケーシング35の熱交換搭載部41の形状に対応した治具で熱交換部32と配管部材34とが接続される。そのため、配管部材34は、熱交換部32を構成するコンデンサ43、エバポレータ44および絞り器45の相互間の位置を決定しつつ接続される。これにより、熱交換部32を構成する各部の形状精度が向上する。一方、このとき、配管部材34の端部、すなわち第一管部51のコンプレッサ31および第四管部54のアキュムレータ33側の端部は、自由端となっている。そのため、熱交換部32の形状精度を維持しつつ、コンプレッサ31およびアキュムレータ33との位置を調整可能である。したがって、生産性の低下を招くことなく、熱交換部32の位置や形状精度を高めることができる。
【0035】
さらに、一実施形態では、配管部材34は、途中に湾曲部57を有している。具体的には、配管部材34は、コンデンサ43とコンプレッサ31の冷媒出口55との間の第一管部51、およびエバポレータ44とアキュムレータ33の冷媒入口56との間の第四管部54にそれぞれ湾曲部57を有している。配管部材34の途中に形状の変化が可能な湾曲部57を設けることにより、配管部材34をコンプレッサ31およびアキュムレータ33に接続するとき、配管部材34は湾曲部57を利用して変形する。そのため、配管部材34に無理な力が加わることがなく、この配管部材34に接続されるコンプレッサ31やアキュムレータ33にも無理な力が加わらない。その結果、脚部64の穴63への凸部62の挿入によって正確に決定されたコンプレッサ31とケーシング35との位置関係は、配管部材34の接続によって変化することがない。したがって、コンプレッサ31とケーシング35との位置関係を安定して維持することができ、コンプレッサ31からの振動の伝搬、および振動にともなう騒音の発生を低減することができる。
【0036】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
例えば、上述の一実施形態では、第一管部51の冷媒出口55とコンデンサ43との間、および第四管部54の冷媒入口56とエバポレータ44との間の双方に湾曲部57を設ける例について説明した。しかし、湾曲部57は、第一管部51および第四管部54の双方に設けることなく、第一管部51または第四管部54のいずれか一方に設けてもよい。この場合でも、湾曲部57を有する側の配管部材34によって位置のずれや形状の誤差などを吸収することにより、コンプレッサ31の位置の変化を低減することができる。
【符号の説明】
【0037】
図面中、10は洗濯乾燥機、14はヒートポンプユニット、31はコンプレッサ、32は熱交換部、33はアキュムレータ、34は配管部材、35はケーシング、55は冷媒出口、56は冷媒入口、57は湾曲部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサと、前記コンプレッサから吐出された冷媒の熱交換を行う熱交換部と、前記コンプレッサと一体に設けられ前記エバポレータを通過した冷媒に含まれる気体と液体とを分離するアキュムレータと、前記コンプレッサ、前記熱交換部および前記アキュムレータの間を接続して前記冷媒が流れる配管部材と、前記コンプレッサ、前記熱交換部、前記アキュムレータおよび前記配管部材を収容するケーシングと、を備える洗濯乾燥機のヒートポンプユニットの組み付け方法であって、
前記ケーシングに前記コンプレッサ、および予め前記配管部材が接続された前記熱交換部を配置する工程と、
前記配管部材の前記熱交換部とは反対側の端部を、前記コンプレッサに設けられている冷媒出口、および前記アキュムレータに設けられている冷媒入口にそれぞれ嵌め込んだ後、前記配管部材と前記冷媒出口、および前記配管部材と前記冷媒入口との間を溶接する工程と、
を含むことを特徴とするヒートポンプユニットの組み付け方法。
【請求項2】
前記ケーシングに前記コンプレッサおよび前記熱交換部を配置する工程の前に、
前記熱交換部を予め用意した前記ケーシングに対応する形状の治具に固定した状態で前記配管部材を前記熱交換部に接続する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプユニットの組み付け方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の組み付け方法で組み付けられるヒートポンプユニットであって、
前記配管部材は、前記熱交換部と前記冷媒出口との間、または前記熱交換部と前記冷媒入口との間の少なくともいずれか一方に、それぞれ変形することにより前記熱交換部と前記コンプレッサとの間、および前記熱交換部と前記アキュムレータとの間の位置ずれを吸収する湾曲部を有することを特徴とするヒートポンプユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−92331(P2011−92331A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247706(P2009−247706)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】