説明

洗濯乾燥機

【課題】乾燥させた衣類のアレルゲンを少なくするとともに、フィルタにより捕集したアレルゲンを不活化する。
【解決手段】送風手段8により送風される空気を加熱する加熱手段9と、風路10に設けたアレルゲンを捕集するフィルタ11とを備え、前記フィルタ11は、捕集したアレルゲンを不活化する不活化材を備えるとともに、前記送風手段8により内槽3内に供給した空気に含まれるアレルゲンを捕集して前記内槽3へと循環するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類等の洗濯と乾燥を同一槽内で行える洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、花粉の飛散時期に洗濯物を屋外に干すと、多量の花粉が洗濯物に付着することから、乾燥させた洗濯物から花粉等のアレルゲンを除去するために衣類乾燥機を用いることが考えられており、密閉空間の中でドラムの回転によるたたき、ほぐし効果やファンを用いた送風で衣類に付着したアレルゲンを除去することが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−289794号公報
【特許文献2】特開2000−167299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、ダニや花粉のアレルゲン物質を除去はできるが、除去されたアレルゲン物質が排気フィルタに捕集されたまま残留し、清掃交換しなければアレルゲン再放出が発生することがあった。またフィルタ交換時には、フィルタより離脱したアレルゲンが使用者に触れる虞があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記従来の課題を解決するために、本発明の乾燥洗濯機は、送風手段により送風される空気を加熱する加熱手段と、前記送風手段の上流側もしくは下流側の風路に設けたアレルゲンを捕集するフィルタとを備え、前記フィルタは、捕集したアレルゲンを不活化する不活化材を備えるとともに、前記送風手段により前記内槽内に供給した空気に含まれるアレルゲンを捕集して前記内槽へと循環するように構成したものである。
【0005】
これにより、乾燥させた衣類に付着しているアレルゲンをフィルタで捕集することができるとともに、フィルタに捕集したアレルゲンを不活化することができ、フィルタの掃除や交換時にフィルタより離散したアレルゲンによる影響を減少させることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗濯乾燥機は、衣類に含まれるアレルゲンを除去することができるとともに、捕集したアレルゲンを不活化することができ、フィルタより離散したアレルゲンによる影響を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の発明は、筐体内に弾性的に吊支した外槽と、前記外槽内に回転自在に支持した内槽と、前記内槽を駆動する駆動手段と、前記内槽に空気を供給する送風手段と、前記送風手段により前記内槽に供給した乾燥用空気を前記外槽より導出し除湿して前記内槽へと循環させる風路と、前記送風手段により送風される空気を加熱する加熱手段と、前記送風手段の上流側もしくは下流側の風路に設けたアレルゲンを捕集するフィルタとを備え、前記フィルタは、捕集したアレルゲンを不活化する不活化材を備えるとともに、前記送風手段により前記内槽内に供給した空気に含まれるアレルゲンを捕集して前記内槽へと循環するように構成したことにより、送風手段により内槽から排出した空気をフィルタに供給し循環させることにより、循環空気に含まれるアレルゲンを捕集し、衣類に残るアレルゲンを減少することができるとともに、捕集したアレルゲンを不活化でき、フィルタの掃除や交換時にフィルタより離散したアレルゲンによる影響を減少させることができる。また、加熱手段により加熱した循環空気がフィルタを通過することで、不活化材の活性を高めてアレルゲンの不活化反応を加速させることができ効果的である。
【0008】
第2の発明は、フィルタは、不活化材にフェノール性OH基を有する物質を用いたことにより、効率的にアレルゲンの不活化を行うことができる。
【0009】
第3の発明は、フィルタは、不活化材にポリビニルフェノールを用いたことにより、安定的にアレルゲン物質の不活化を行うことができる。
【0010】
第4の発明は、フィルタは、通気性基体の表面に不活化材の層を形成したことにより、不活化材を備えたフィルタが容易に実現できるとともに、形成した不活化材の特性を損なうことなく、捕集したアレルゲンを簡単に吸引除去することができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯乾燥機の断面図を示したものである。図1において、1は筐体で、外槽2が弾性的に吊支されている。3は回転中心軸を鉛直方向に有し前記外槽2内に回転自在に支持した内槽で、周壁面に多数の孔(図示せず)を設けている。4は内槽3の内底に設置した回転翼で、駆動手段5により内槽3と回転翼4が駆動可能である。6は外槽2の上部に設けた開口部7を開閉する内蓋である。
【0013】
8は乾燥用空気を内槽3に供給する送風手段で、ヒータ等の加熱手段9により加熱された空気が供給できるように構成している。10は内槽3に供給された乾燥用空気を外槽2の下部から導出し、内槽3へと循環させる風路で、この風路10内を乾燥用空気が循環するように送風手段8と接続されている。風路10の一部は外気と触れるように筐体1から突出または露出している。
【0014】
11は風路10に設けた花粉等のアレルゲンを除去するフィルタで、送風手段8の上流側もしくは下流側の少なくとも一方に設けている。このフィルタ11は捕集したアレルゲンを不活化する不活化材を有し、通気性基体の表面に塗布して不活化材の層を形成している。不活化材は、例えばフェノール性OH基を有する物質、ポリビニルフェノール、酵素等を用いている。
【0015】
次に、本発明の洗濯乾燥機の動作および作用について説明する。花粉の飛散時期に洗濯物を屋外に干して乾燥させると多量の花粉が付着する。このような外干しした衣類に付着した花粉等のアレルゲンを除去するときは、衣類を内槽3内に入れて内蓋6を閉じた後、回転翼4と送風手段8を動作させる。衣類は回転翼4の正逆回転動作により攪拌され、花粉等のアレルゲンが振い落とされる。また、衣類から離散したアレルゲンは、送風手段8による送風により内槽3に設けた多数の孔を通って外槽3へと送られ、風路10を通ってフィルタ11に到達する。
【0016】
ここで、空気に含まれるアレルゲンはフィルタ11で捕集され、加熱手段9により加熱された空気が内槽3へ供給される。この空気の循環動作を所定時間行うことで内槽3内のアレルゲンを迅速に補集され、衣類からアレルゲンが除去されて、衣類に残るアレルゲンを減少することができる。フィルタ11に捕集されたアレルゲンは不活化材により不活化され、フィルタ11に捕集されたリントやアレルゲンを取り除くために、フィルタ11を掃除するときや、交換時にフィルタ11より離散したアレルゲンによる影響を減少させることができる。
【0017】
また、フィルタ11を通過する循環空気は、加熱手段9により加熱されているため、高温の空気でフィルタ11に設けている不活化材の温度が上昇し、ポリビニルフェノールのOH基と、抗原決定基(図示せず)との反応が加速されるので、より多くのアレルゲンを不活化することができて効果的である。
【0018】
次に、アレルゲン物質の不活化について説明する。フィルタ11の表面にアレルゲンの花粉が存在すると、ポリビニルフェノールのOH基と、抗原決定基(図示せず)とが反応する。互いに結合反応した物質は、抗体とは反応することはないので、抗原抗体反応は起きない(これを不活化という)。
【0019】
フィルタ11に塗布するアレルゲン不活化材にはフェノール性OH基を有するポリビニルフェノールを用いたが、他にタンニン酸、ヒドロキシ安息香酸などのポリフェノール類も使用可能である。ポリビニルフェノールは工業的に安定した量産が可能な物質で、ロット間のばらつきも小さい。したがって、安定的にアレルゲン不活化を行うことが可能となる。また耐水性もあるので、洗濯機のように水を使用する装置には適している。
【0020】
また、フィルタ11の形態は任意のものを使用することができる。しかし、圧損条件の制約を考えると、不織布のように低圧損で捕集効率の高い基材が望ましい。使用後のメンテナンスも掃除機等の吸引で可能であり簡便となる。不織布への不活化材の固定には、スプレー法、ディップ法、印刷法等が可能である。
【0021】
なお、花粉等のアレルゲンの除去のほか、通常の洗濯乾燥機として洗濯から乾燥まで一貫して使用できることは言うまでもなく、この場合は一般的な手順により行われ、内槽3に衣類を入れて運転を開始し、設定したコースに基づいて所定量の給水を行い、洗濯、濯ぎ、脱水を行った後、乾燥を行う。乾燥時は回転翼4を動作させるとともに送風手段8を駆動し、衣類を攪拌しながら加熱手段9で加熱された温風を内槽3に供給する。内槽3内で衣類から奪った水分を含んで湿った空気は、外槽2の下部から風路10に入り、冷却されることで除湿される。このとき、風路10の冷却に外気のほか、冷却水を流すことで、風路内のアレルゲンを洗い流すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明の洗濯乾燥機は、衣類に含まれるアレルゲンを除去することができるとともに、捕集したアレルゲンを不活化することができ、フィルタより離散したアレルゲンによる影響を減少させることができるので、洗濯乾燥機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯乾燥機の断面図
【符号の説明】
【0024】
1 筐体
2 外槽
3 内槽
4 回転翼
5 駆動手段
8 送風手段
9 加熱手段
10 風路
11 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に弾性的に吊支した外槽と、前記外槽内に回転自在に支持した内槽と、前記内槽を駆動する駆動手段と、前記内槽に空気を供給する送風手段と、前記送風手段により前記内槽に供給した乾燥用空気を前記外槽より導出し除湿して前記内槽へと循環させる風路と、前記送風手段により送風される空気を加熱する加熱手段と、前記送風手段の上流側もしくは下流側の風路に設けたアレルゲンを捕集するフィルタとを備え、前記フィルタは、捕集したアレルゲンを不活化する不活化材を備えるとともに、前記送風手段により前記内槽内に供給した空気に含まれるアレルゲンを捕集して前記内槽へと循環するように構成した洗濯乾燥機。
【請求項2】
フィルタは、不活化材にフェノール性OH基を有する物質を用いた請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
フィルタは、不活化材にポリビニルフェノールを用いた請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
フィルタは、通気性基体の表面に不活化材の層を形成した請求項項1〜3のいずれか1項に記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【公開番号】特開2006−171(P2006−171A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176809(P2004−176809)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】