洗濯機
【課題】外槽の振動によって筐体に発生する振動を抑制できる洗濯機を提供することを課題とする。
【解決手段】外槽を筐体1aに防振支持する防振装置22が、緩衝機構22cを介して筐体1aおよび外槽と接続される洗濯機とする。緩衝機構22cは、磁性流体が封入される中空部201が形成される防振ゴム200と、発生する磁場内に磁性流体を置くことができる電磁石202と、を含んで構成される緩衝部203を有し、電磁石202が発生する磁場によって磁性流体の粘度を変化させることで粘性を変化可能に構成される。そして、外槽内で回転する回転ドラムの回転速度に応じて緩衝部203の粘性を変化させ、外槽の振動が筐体1aに伝達する伝達率を小さくする。
【解決手段】外槽を筐体1aに防振支持する防振装置22が、緩衝機構22cを介して筐体1aおよび外槽と接続される洗濯機とする。緩衝機構22cは、磁性流体が封入される中空部201が形成される防振ゴム200と、発生する磁場内に磁性流体を置くことができる電磁石202と、を含んで構成される緩衝部203を有し、電磁石202が発生する磁場によって磁性流体の粘度を変化させることで粘性を変化可能に構成される。そして、外槽内で回転する回転ドラムの回転速度に応じて緩衝部203の粘性を変化させ、外槽の振動が筐体1aに伝達する伝達率を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式の洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体に弾性支持される外槽内に、洗濯物を収納する回転ドラムを備えるドラム式の洗濯機は広く知られている。
このような洗濯機の回転ドラムは、シャフトによって駆動モータと接続され、駆動モータによって回転駆動される。そして、回転ドラムの回転によって外槽に振動が発生するため、外槽の振動を吸収する防振装置を介して、外槽は筐体に支持されている。
【0003】
脱水など、高い回転速度で回転ドラムを回転する場合、回転ドラムの回転速度を上昇させる過程において、共振によって筐体に振動が発生し、洗濯機に異常振動や騒音が発生する。したがって、筐体に発生する振動を抑制する構造が好ましい。
例えば、外槽を弾性支持する防振装置には、外槽の上下方向の振動を吸収して筐体に伝達することを防止するものがあるが、このような防振装置では、左右方向および前後方向の振動を吸収することができない場合がある。
【0004】
例えば特許文献1には、外槽の振動の大きさによって減衰力が変化するダンパを備えるドラム式洗濯機が開示されている。特許文献1に開示される技術によると、定常時より大きな振動が外槽に発生すると減衰力が大きくなって振動を吸収できる。
また、例えば特許文献2には、回転速度、振動、騒音に応じて減衰量を可変とする制御型流体ダンパを備える脱水洗濯機が開示されている。特許文献2に開示される技術によると、共振回転付近で減衰力を高めて共振時の振動を低減できる。
また、例えば特許文献3には、液体封入式の緩衝ゴムを介して防振ダンパを固定側に取り付ける技術が開示されている。特許文献3に開示される技術によると、緩衝ゴムに液体を封入することで減衰力を高めてドラムに発生する振動を低減できる。
また、例えば特許文献4には、水槽の振動を抑制する防振ダンパをクッション材を介して本体ケースの台板と水槽支持台に固定するドラム式洗濯機が開示されている。特許文献4に開示されるドラム式洗濯機によると、台板側に備わるクッション材の硬度を水槽支持台側に備わるクッション材の硬度より小さくすることで、水槽から本体ケースに伝達される振動を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−200189号公報
【特許文献2】特開2001−170390号公報
【特許文献3】特開2009−101167号公報
【特許文献4】特開2001−212395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、外槽の振動の大きさ(変位)によってダンパの減衰力が変化するため、共振時であっても減衰力が大きい状態と小さい状態が切り替わり、そのときに衝撃が発生するという問題がある。
また、特許文献2に開示される技術では、ピストンが収納されるシリンダ内に電磁石や磁性流体を組み込むため、制御型流体ダンパの構造が複雑になるという問題がある。
また、特許文献3に開示される技術では、ドラムの回転速度が高い場合であっても緩衝ゴムの減衰力が高い状態であり、回転速度が高いときにドラムに発生する振動が洗濯機本体に伝達されやすいという問題がある。
また、特許文献4に開示される技術では、共振時の振動を低減できる硬度にクッション材の硬度を設定すると、ドラムが定常回転するときに振動が本体ケースに伝達されやすいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、外槽の振動によって筐体に発生する振動を抑制できる洗濯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、外槽を筐体に弾性支持する防振装置を外槽および筐体に接続する緩衝部の剛性と弾性の少なくとも一方が変化可能な洗濯機とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、外槽の振動によって筐体に発生する振動を抑制できる洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ドラム式の洗濯機の内部構造を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る筐体側緩衝機構の構造を示す断面図である。
【図3】洗濯機の機能ブロックを示す図である。
【図4】外槽に発生する平面振動が筐体に伝達するときの伝達率を示すグラフである。
【図5】(a)、(b)は、第1の実施形態に係る緩衝ゴムに形成される中空部の形状の変形例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る筐体側緩衝機構の構造を示す断面図である。
【図7】回転ドラムの回転速度と左右振動の大きさの関係を示すグラフである。
【図8】回転ドラムの回転速度と前後振動の大きさの関係を示すグラフである。
【図9】第2の実施形態に係る筐体側緩衝機構の変形例を示す断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る筐体側緩衝機構の他の変形例を示す断面図である。
【図11】(a)〜(c)は、上方の質点と下方の質点を有する回転体の振動の状態を示す模式図である。
【図12】(a)、(b)はモデル化した洗濯機の振動の状態を示す模式図である。
【図13】第3の実施形態に係る筐体側緩衝機構と外槽側緩衝機構の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る洗濯機1は、洗濯物を洗濯する洗濯工程(洗浄工程やすすぎ工程)、脱水工程及び乾燥工程の各工程を連続的(必要に応じて選択的)に実行して洗濯物を洗浄乾燥する、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機であり、図示しない洗濯パンなどの床部と接する脚部16を有するベース15に支持される筐体1aの前面に、洗濯物を出し入れするためのドア7が備わっている。
なお、洗濯機1はドア7の側を正面(前)とし、正面に対する背面(後)から正面方向を見て左右方向を設定する。また、脚部16が備わる側を下として上下方向を設定する。
【0012】
筐体1aの、例えば、正面側上方には、利用者が洗濯機1を操作するための操作ボタンおよび利用者が洗濯機1の状態を確認するための表示部等を備える操作・表示パネル8が備わっている。
また、例えば背面側上方には、水道などの給水源から水を取り込む取水口9、取水口9を開閉する給水弁9a、および取水口9から取り込まれた水を外槽2まで導水する給水管9bが備わっている。
【0013】
筐体1aの内部には、上下方向に伸縮可能な複数の防振装置22(図1には1つの防振装置22を図示)で下方を支持されるとともに、筐体1aの上方から、弾性支持体となる吊り下げバネ18,19によって弾性支持される外槽2が備わる。
この構成によって、外槽2は筐体1aに弾性支持される。
外槽2は、正面の側が開口した筒状に構成され、内部には、洗濯物が投入される内槽として回転ドラム3が収容される。回転ドラム3は、外槽2の底部に取り付けられる駆動手段(駆動モータ4)とシャフト4aを介して接続され、駆動モータ4の回転駆動によって外槽2内で回転する。そして洗濯機1は、回転ドラム3の回転によって、洗浄工程、すすぎ工程、脱水工程等を実行する。
【0014】
外槽2は、洗濯工程(洗浄工程、すすぎ工程)など、水を使用する工程のときには水が溜まるように構成され、排水弁21を介して排水ホース14が接続されている。そして、排水弁21が開弁すると、外槽2に溜まっている水が排水ホース14を流れて排水される。
【0015】
また、符号6は洗濯機1を制御する制御装置、符号50は駆動モータ4の回転速度を計測する回転速度検出装置、符号51は外槽2に発生する振動を計測する振動センサ、符号52は外槽2に溜まる水の水位を計測する水位センサである。回転速度検出装置50は、例えば、シャフト4aの回転速度を計測する回転速度計であり、振動センサ51は、例えば、外槽2に発生する加速度を計測する加速度センサで構成される。
【0016】
防振装置22は、ダンパ22aとコイルバネ22bを含んで構成され、ダンパ22aの伸縮によって外槽2の振動を減衰している。防振装置22は、例えばダンパ22aの側が外槽側緩衝機構22c2を介して外槽2に接続され、コイルバネ22bの側が筐体側緩衝機構22c1を介して筐体1aの底部に接続される。
【0017】
このように構成される防振装置22は、外槽2に発生する上下方向の振動はダンパ22の伸縮によって吸収可能であるが、左右方向および前後方向の振動を吸収することができない。そこで、防振装置22と筐体1aおよび外槽2を、それぞれ筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2で接続し、外槽2に発生する左右方向および前後方向の振動を筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2で吸収するように構成される。以下、筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2をまとめて、緩衝機構22cと称する場合がある。
【0018】
図2に示すように、ダンパ22aは図示しないシリンダとロッド22eを含んで構成され、シリンダとロッド22eの摩擦などによって減衰力が得られる。防振装置22のコイルバネ22bは、ダンパ22aのロッド22eの周囲に配置されて、ロッド22eに固定される係止部22gとシリンダとの間でシリンダの上下動に対応して伸縮するように構成される。
そして防振装置22と筐体1aを接続する筐体側緩衝機構22c1は、係止部22gより下方(筐体1aの側)に備わり、例えば、係止部22gより下方に延伸するロッド22e(の延長部)を囲むように取り付けられるリング状の緩衝部材(緩衝ゴム200)が筐体1aを挟持するように構成される。
【0019】
なお、緩衝部材は緩衝ゴム200に限定されるものではなく、好適な粘性を有する素材であればよい。さらに後記するように、緩衝部材には中空部201を設けることから、緩衝部材は加工性に優れた素材であることが好ましい。
【0020】
緩衝ゴム200は、例えば上下方向に分割可能に構成され、上側緩衝ゴム200aが筐体1aの上側(防振装置22側)に組み込まれ、下側緩衝ゴム200bが筐体1aの下側に組み込まれる構成であってもよい。
そして、ロッド22eの先端部に形成されるネジ部22fに上方からワッシャ204、上側緩衝ゴム200aの順にはめ込み、筐体1aの下部に開口した貫通孔にネジ部22fを通し、さらに、筐体1aを貫通したネジ部22fに下側緩衝ゴム200bとワッシャ204をはめる。そしてナット205をネジ部22fに締めこむ。
このように筐体側緩衝機構22c1を組み立てることによって、防振装置22と筐体1aを筐体側緩衝機構22c1を介して接続できる。
【0021】
また、第1の実施形態に係る上側緩衝ゴム200aおよび下側緩衝ゴム200bの内部には、それぞれリング状を呈する外形と同心円状に中空部201,201が形成され、中空部201,201には磁性流体が封入されている。また、上側緩衝ゴム200aおよび下側緩衝ゴム200bの周囲には、外周に沿って電磁石202,202が備わり、磁場を発生して磁性流体を当該磁場内に置くことができるように構成される。
そして、上側緩衝ゴム200a、下側緩衝ゴム200b、2つの電磁石202および磁性流体を含んで緩衝機構22cの緩衝部203を形成する。
【0022】
磁性流体は、磁場内に置かれると粘度が増大するため、電磁石202,202が磁場を発生すると磁性流体の粘度が増大し、磁性流体が封入される緩衝ゴム200を有する緩衝部203の粘性が増大する。
また、磁性流体は磁場の量(磁場量)によって粘度が変化することから、電磁石202,202で発生する磁場量を制御することで、緩衝部203の粘性の大きさを制御できる。
なお、緩衝部203の粘性は、緩衝部203の変形速度に依存した抵抗の大きさを変形速度で除すことで得られる特性値である。
【0023】
防振装置22と外槽2(図1参照)を接続する外槽側緩衝機構22c2(図1参照)は、防振装置22と筐体1aを接続する筐体側緩衝機構22c1と同じ構成とする。そして、上側緩衝ゴム200aと下側緩衝ゴム200bで外槽2を挟持するように構成すればよい。
そして、緩衝機構22c(筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2)が図2に示すように構成されることによって、防振装置22は緩衝機構22cを介して筐体1aおよび外槽2と接続されることになる。
【0024】
以上のように構成される洗濯機1(図1参照)は、制御装置6(図1参照)によって制御される。
制御装置6は、駆動モータ4(図1参照)の回転速度制御、排水弁21(図1参照)の開閉、給水弁9a(図1参照)の開閉等によって洗濯機1を制御する。
【0025】
図3に示すように、制御装置6にはマイクロコンピュータ6aが備わり、図示しないメモリに記憶されたプログラムをマイクロコンピュータ6aが実行して洗濯機1を制御する。
制御装置6には、回転速度検出装置50が計測するシャフト4a(図1参照)の回転速度、振動センサ51が計測する外槽2(図1参照)の振動、水位センサ52が計測する外槽2の水位が入力される。また、制御装置6は、操作・表示パネル8、給水弁9a、排水弁21、駆動モータ4の駆動信号を生成するモータ駆動回路4b、および電磁石202を制御可能に構成される。
【0026】
このように構成される制御装置6は、利用者の操作に応じて洗濯工程を実行する。例えば、洗浄工程やすすぎ工程を実行するとき、制御装置6は給水弁9aを開弁して外槽2(図1参照)内に注水し、水位センサ52が計測する外槽2の水位が所定の基準値に達したときに給水弁9aを閉弁して駆動モータ4を回転駆動させて回転ドラム3(図1参照)を回転させる。制御装置6は、回転速度検出装置50が計測するシャフト4a(図1参照)の回転速度を回転ドラム3の回転速度として取得し、回転ドラム3の回転速度を所定値に維持する。
【0027】
また制御装置6は、脱水工程を実行するとき、排水弁21を開弁して外槽2内の水を排水した後、駆動モータ4を高速で回転駆動させて回転ドラム3(図1参照)を高速で回転させ、図示しない洗濯物を脱水する。
このとき、制御装置6は、振動センサ51が計測する振動を外槽2(図1参照)の振動として取得し、外槽2の振動が基準値を超えるときには脱水工程を中止する。
【0028】
また制御装置6は、乾燥工程を実行するとき、図示しないヒータで加熱した空気を外槽2内に送風して洗濯物を乾燥する。
【0029】
さらに制御装置6は、必要に応じて操作・表示パネル8を制御し、図示しない表示部に必要な情報を表示する。このように制御装置6は、洗濯機1を制御して洗濯工程、脱水工程、乾燥工程を実行する。
【0030】
このうち、脱水工程では回転ドラム3(図1参照)が高速で回転されるが、回転ドラム3の回転速度が上昇する過程で、外槽2(図1参照)が回転ドラム3、駆動モータ4(図1参照)等と一体となって上下方向に振動する上下振動、左右方向に振動する左右振動、前後方向に振動する前後振動、および平面回転状に振動するすりこぎ振動が発生する。これらの上下振動、左右振動、前後振動およびすりこぎ振動は、回転ドラム3の回転速度が、それぞれの振動で共振が発生する特定の回転速度に達したときに発生する。
【0031】
このうち、上下振動は、外槽2(図1参照)の上下動に応じて上下運動するダンパ22a(図1参照)を有する防振装置22(図1参照)で吸収することができる。したがって、外槽2に発生する上下振動が筐体1aに伝達されて筐体1aに振動が発生することを抑えることができる。
【0032】
しかしながら、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動(以下、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動をまとめて平面振動と称する)は、主に防振装置22(図1参照)を傾倒させる振動であってダンパ22a(図1参照)の上下運動に変換できないため、防振装置22では吸収することができずに筐体1a(図1参照)に伝達される。そして、筐体1aに振動が発生し、洗濯機1(図1参照)に異常振動や騒音が発生する。
【0033】
そこで、第1の実施形態に係る洗濯機1は、平面振動を緩衝機構22c(図1参照)の緩衝部203(図2参照)の粘性で吸収するように構成される。
【0034】
図4に示すように、外槽2(図1参照)に発生する平面振動が筐体1a(図1参照)に伝達するときの伝達率は、平面振動の共振周波数のルート2倍の周波数(以下、遷移周波数と称する)で「1」となり、遷移周波数以下の領域で「1」より大きく、遷移周波数以上の領域で「1」より小さくなる。
なお、外槽2に発生する平面振動の周波数は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωに応じて変化することから、図4の横軸は外槽2に共振周波数が発生する回転速度ωn(以下、特定回転速度ωnと称する)に対する回転速度ωの比を示している。
【0035】
また、Case1〜5は、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力の大きさによる違いを示し、減衰力が最も大きい場合がCase5であり、減衰力が小さくなるに従ってCase1に向かうことを示している。
【0036】
例えば、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力が最も大きいCase5の場合、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低い時はCase1〜5のうちで伝達率を最も小さくできるが、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高い時はCase1〜5のうちで伝達率が最も大きくなる。
一方、緩衝機構22cの減衰力が最も小さいCase1の場合、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低い時はCase1〜5のうちで伝達率が最も大きいが、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高い時はCase1〜5のうちで伝達率が最も小さくなる。
【0037】
換言すると、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力が大きい場合、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いときは外槽2(図1参照)から筐体1a(図1参照)に伝達する平面振動を吸収する効果が高くなり、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いときは外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果が低くなる。
一方、緩衝機構22cの減衰力が小さい場合、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いときは外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果が低くなり、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いときは外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果が高くなる。
【0038】
そこで、第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いときは緩衝機構22c(図1参照)の減衰力を大きくし、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いときは緩衝機構22cの減衰力を小さくして、回転ドラム3の回転速度によらずに、外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果を高くする。
【0039】
緩衝機構22c(図1参照)の減衰力は緩衝部203(図2参照)の粘性に応じて変化するものであり、緩衝部203の粘性が高いと減衰力が大きくなり、粘性が低いと減衰力が小さくなる。
そこで第1の実施形態においては、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いとき、制御装置6(図1参照)は電磁石202,202(図2参照)に電力を供給して磁場を発生させ、緩衝ゴム200の中空部201(図2参照)に封入されている磁性流体の粘度を増大して緩衝部203の粘性を増大し、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の減衰力を増大させる。
一方、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いとき、制御装置6は電磁石202,202への電力の供給を停止して磁場を消滅させ、緩衝ゴム200の中空部201に封入されている磁性流体の粘度を減少して緩衝部203の粘性を減少し、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の減衰力を減少させる。
【0040】
この構成によって、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いとき、平面振動は、例えば図4に示すグラフのCase5で示す伝達率で筐体1aに伝達されることになり、平面振動が筐体1aに伝達される伝達率を低く抑えることができる。また、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いとき、平面振動は、例えば図4に示すグラフのCase1で示す伝達率で筐体1aに伝達されることになり、平面振動が筐体1aに伝達される伝達率を低く抑えることができる。したがって、回転ドラム3の回転速度ωによらずに、平面振動が筐体1aに伝達される伝達率を低く抑えることができ、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0041】
なお、緩衝ゴム200(図2参照)の形状、材質、封入される磁性流体の量や種類、電磁石202が発生する磁場の量など、緩衝機構22c(筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2)の設計値に応じて、緩衝部203(図2参照)の粘性は変化するため、平面振動の伝達を効果的に抑えられる粘性となるように、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2のこれらの設計値を適宜決定すればよい。
【0042】
また、図5の(a)、(b)に示すように、緩衝ゴム200に形成される中空部201が複数のブロックに分割される構成であってもよい。例えば、図5の(a)に示すように、リング状を呈する緩衝ゴム200の外形と同心円状に形成される中空部201を径方向に備わる複数の隔壁201a(図5の(a)には4つの隔壁201aを図示)で分割し、複数のブロックに分割される中空部201を形成してもよい。
前記したように、外槽2(図1参照)等に平面振動が発生した場合、防振装置22(図1参照)が傾倒して複数のブロックに分割された中空部201の1つに荷重がかかる。したがって、分割されたブロックの1つに封入される磁性流体で防振装置22が傾倒したときの荷重を受けることになり、緩衝部203(図2参照)の粘性を増大できる。さらに、隔壁201aで緩衝ゴム200を補強できる。
【0043】
また、図5の(b)に示すように、隔壁201aに貫通孔201bを形成しても良い。防振装置22(図1参照)が傾倒して1つのブロックに荷重がかかった場合、荷重がかかったブロックの磁性流体が貫通孔201bを通過して隣接するブロックに移動する。そして、磁性流体が貫通孔201bを通過するときに発生する流動抵抗によって、緩衝部203(図2参照)の粘性を増大できる。
【0044】
また、防振装置22(図1参照)が傾倒する場合、リング状を呈する緩衝ゴム200(図1参照)の外周側の変形量が内周側の変形量より大きいことから、中空部201(図2参照)を緩衝ゴム200の外周側に形成する構成とすれば、少ない磁性流体で大きな粘性の変化を得ることができる。
【0045】
さらに、磁性流体に替えてER流体(電気粘性流体)を中空部201(図2参照)に封入する構成としてもよい。この場合、中空部201に電極を配置してER流体に電圧を印加可能に構成すれば、ER流体に印加する電圧を制御することによって緩衝部203(図2参照)の粘性を制御できる。
【0046】
なお、第1の実施形態の説明においては、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動を区別することなく平面振動としたが、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動による共振が発生する共振周波数、特定回転速度が異なった特性値として存在し、全ての平面振動の伝達率は、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力の大きさに対応して同等の特性(図4に示す特性)を有する。
したがって、第1の実施形態における平面振動を、例えば、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動のうちで最も大きな振動を筐体1a(図1参照)に発生させる振動とする構成としてもよい。
【0047】
また、複数の防振装置22(図1参照)が備わる場合は、左右振動に対応して緩衝部203(図2参照)の粘性が変化する防振装置22と、前後振動に対応して緩衝部203の粘性が変化する防振装置22と、すりこぎ振動に対応して緩衝部203の粘性が変化する防振装置22と、が備わる構成としてもよい。この場合、制御装置6(図1参照)は、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動による共振が発生する共振周波数および特定回転速度に基づいて、それぞれの防振装置22を制御する。
【0048】
また、電磁石202(図2参照)が発生する磁場の量を制御し、例えば、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動に対応した3段階で緩衝部203の粘性を変化させる構成としてもよい。
【0049】
なお、第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、筐体側緩衝機構22c1(図1参照)と外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の両方の緩衝部203(図2参照)の粘性を変化可能に構成されているが、例えば、筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203のみの粘性を変化可能に構成してもよいし、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203のみの粘性を変化可能に構成してもよい。
【0050】
《第2の実施形態》
第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、防振装置22(図1参照)と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1(図1参照)の緩衝部203(図2参照)、および防振装置22と外槽2(図1参照)を接続する外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203の粘性を変化させて平面振動を吸収し、筐体1aに発生する振動を抑える構成としたが、本発明の第2の実施形態は、緩衝機構22cの緩衝部の剛性を変化させて筐体1aに発生する振動を抑える構成とする。
そのため、図6に示すように、緩衝ゴム200に封入される磁性流体に替えて可変弾性体206を備える緩衝機構22cとする。
【0051】
可変弾性体206は、磁場内に置かれると剛性が低下する性質を有する素材で、例えば図6に示すように、下側緩衝ゴム200bと下方のワッシャ204でリング状を呈する可変弾性体206を挟持し、可変弾性体206の周囲に電磁石202を配置する。
そして、上側緩衝ゴム200a、下側緩衝ゴム200b、電磁石202、および可変弾性体206を含んで緩衝機構22cの緩衝部203aを形成する。
なお、他の構成は図2に示す防振装置22と同一であり、詳細な説明は適宜省略する。
この構成によると、電磁石202による磁場の発生を制御することで可変弾性体206の剛性を変化させることができ、可変弾性体206が備わる緩衝機構22cの緩衝部203aの剛性を変化させることができる。
【0052】
洗濯機1(図1参照)の脱水工程時に回転ドラム3(図1参照)の回転速度が上昇する場合、外槽2(図1参照)、筐体1a(図1参照)が左右方向に共振する回転速度(共振回転速度)に達すると、筐体1aに異常な振動や騒音が発生する。
【0053】
洗濯機1(図1参照)を1つの剛体とみなした場合、共振回転速度ωsは次式1で示される。
【数1】
【0054】
式(1)におけるkは剛性(バネ定数)、mは振動部の質量、ζは減衰比を示す。式(1)で示されるように減衰比ζが一定の場合、共振回転速度ωsは剛性kの平方根に比例する。換言すると、剛性kを変更することによって共振回転速度ωsを変更できる。
【0055】
図7は洗濯機1(図1参照)における回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωと左右振幅の大きさの関係を示すグラフである。例えば、洗濯機1の剛性kがk1のときは、実線で示すように回転ドラム3の回転速度ωがωs1のときに洗濯機1の左右振幅がピークとなる。すなわち、共振回転速度ωsがωs1(第1共振回転速度)になる。また、剛性kがk1より大きいk2のときは、破線で示すように回転ドラム3の回転速度がωs1より高いωs2のときに洗濯機1の左右振幅がピークとなる。すなわち、共振回転速度ωsがωs2(第2共振回転速度)になる。このように、洗濯機1の剛性kを変更することによって共振回転速度ωsを変更できる。
【0056】
そこで、第2の実施形態においては、緩衝機構22cの緩衝部203a(図6参照)の剛性を変えることで洗濯機1の剛性kを変えて共振回転速度ωsを変更し、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが共振回転速度ωsと一致することを回避する。
この構成によると、回転ドラム3が共振回転速度ωsで回転することがなく、洗濯機1(図1参照)が共振しない。したがって、外槽2(図1参照)に左右振幅がピークとなる左右振動が発生することを回避することができ、筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0057】
例えば脱水工程の実行時に回転ドラム3(図1参照)の回転速度が上昇する場合、回転速度ωが低い時は洗濯機1(図1参照)の剛性kを大きくして共振回転速度ωsを高くする。そして、回転ドラム3の回転速度ωが、高くなっている共振回転速度ωsに達する前に剛性kを小さくして共振回転速度ωsを回転ドラム3の回転速度ωより低くする。
【0058】
図7を参照して説明すると、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが第1共振回転速度ωs1より低いときは洗濯機1(図1参照)の剛性kをk2とする。そして、回転ドラム3の回転速度ωが上昇し、第1共振回転速度ωs1を超えた時、すなわち、回転ドラム3の回転速度ωが所定の切替回転速度ωsc(ωs1<ωsc<ωs2)に達したとき、剛性kをk2より小さいk1に変更する。
【0059】
その後、回転ドラム3の回転速度ωが切替回転速度ωscより上昇しても、共振回転速度ωsは第1共振回転速度ωs1に変更されていることから、回転ドラム3の回転速度ωが共振回転速度ωsと一致することがない。
この構成によると、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが共振回転速度ωsと一致することが回避され、洗濯機1(図1参照)における共振の発生を抑えることができる。したがって、筐体1a(図1参照)に発生する振動を抑制できる。
【0060】
そして、第2の実施形態においては、図6に示すように可変弾性体206を備える筐体側緩衝機構22c1とし、電磁石202による磁場の発生を制御して筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203aの剛性を変化させる構成とする。さらに、防振装置22(図1参照)と外槽2(図1参照)を接続する外槽側緩衝機構22c2(図1参照)を、筐体側緩衝機構22c1と同じ構成とする。筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203aの剛性が変化すると、洗濯機1(図1参照)の剛性kが変化することから、電磁石202による磁場の発生を制御することで、洗濯機1の剛性kを制御できる。
【0061】
制御装置6(図1参照)は、脱水工程等で回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωを上昇させるとき、回転速度検出装置50(図1参照)が計測するシャフト4a(図1参照)の回転速度を回転ドラム3の回転速度ωとして取得する。そして、回転ドラム3の回転速度ωが第1共振回転速度ωs1より低いときは、電磁石202(図6参照)への電力の供給を停止して磁場を消滅させる。可変弾性体206の剛性は回復した状態になって筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203a(図6参照)の剛性が増大する。同様に外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203aの剛性を増大させる。
【0062】
制御装置6(図1参照)は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωをさらに上昇させ、回転ドラム3の回転速度ωが、第1共振回転速度ωs1より高い切替回転速度ωscに達したとき、電磁石202(図6参照)に電力を供給して磁場を発生させる。可変弾性体206が磁場内に置かれて剛性が低下し、筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203a(図6参照)の剛性が低下する。制御装置6は、同様に外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203aの剛性を低下させる。
【0063】
回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが第1共振回転速度ωs1より低いとき、筐体側緩衝機構22c1(図1参照)、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203aの剛性が高く、洗濯機1(図1参照)の剛性kがk2になる。このとき共振回転速度ωsは第2共振回転速度ωs2であり、回転ドラム3の回転速度ωは共振回転速度ωsより低い。したがって、洗濯機1は共振せず筐体1a(図1参照)に振動は発生しない。
【0064】
回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが上昇して第1共振回転速度ωs1より高い所定の切替回転速度ωscなると、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203a(図6参照)の剛性が低くなって洗濯機1(図1参照)の剛性kがk1になる。そして共振回転速度ωsが第1共振回転速度ωs1に変更されて、回転ドラム3の回転速度ωが共振回転速度ωsより高くなる。その後、回転ドラム3の回転速度ωが上昇しても、回転ドラム3の回転速度ωは共振回転速度ωsより高く共振回転速度ωsと一致しない。したがって、洗濯機1は共振せず筐体1a(図1参照)に振動は発生しない。
【0065】
第1共振回転速度ωs1、第2共振回転速度ωs2は、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203a(図6参照)の剛性等によって決定される固有値である。
また、緩衝部203aの剛性は、電磁石202(図6参照)が発生する磁場量、可変弾性体206の材質等によって決定される設計値である。
さらに制御装置6(図1参照)が緩衝部203aの剛性を変化させる切替回転速度ωscは、例えば、洗濯機1の剛性kがk1のときにピークから低下する左右振動と、剛性kがk2のときにピークに向かって上昇する左右振動の交点となる回転速度とすれば、洗濯機1の剛性kを変化する前後での左右振動の大きさを好適に抑えることができる。
【0066】
このように、第2の実施形態においては、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが上昇しても共振回転速度ωsと一致することがなく洗濯機1(図1参照)の共振を回避できる。そして、筐体1a(図1参照)に振動が発生することを抑制できる。
【0067】
以上、左右振動に基づいて説明したが、第2の実施形態を前後振動、すりこぎ振動に対して適用することも可能である。例えば、図8に示すように洗濯機1(図1参照)の剛性kがk1のとき、前後振動のピークは回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωがωs3となる点にある。また、洗濯機1の剛性kがk1より大きいk2のとき、前後振動のピークは回転ドラム3の回転速度ωがωs3より高いωs4となる点にある。そして、一般的に前後振動は左右振動よりも高い回転速度で発生することから、洗濯機1の剛性kがk1のときに前後振動がピークとなる回転速度ωs3は第2共振回転速度ωs2より高い。
【0068】
この場合、制御装置6(図1参照)は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが第2共振回転速度ωs2を超えたときに電磁石202(図6参照)への電力の供給を停止して、洗濯機1(図1参照)の剛性kをk2にする。そして回転ドラム3の回転速度ωが上昇してωs3を超えたときに制御装置6は電磁石202へ電力を供給する。洗濯機1の剛性kがk1になって前後振動がピークとなる回転速度がωs3になる。その後、回転ドラム3の回転速度ωが上昇しても、前後振動がピークとなる回転速度と一致することがない。したがって、回転ドラム3の回転速度ωは、外槽2(図1参照)等の前後振動がピークとなる回転速度と一致することがなく、外槽2等の前後振動によって筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0069】
また、すりこぎ振動は、前後振動よりさらに高い回転速度でピークとなり、洗濯機1(図1参照)の剛性kによって、すりこぎ振動がピークとなる回転速度が変化することから、左右振動、前後振動と同様に、外槽2(図1参照)等のすりこぎ振動によって筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0070】
以上のように、第2の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、図6に示す可変弾性体206の剛性を変化させることで、外槽2(図1参照)に発生する左右振動、前後振動、すりこぎ振動によって筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0071】
なお、筐体側緩衝機構22c1の変形例として、例えば図9に示すように、リング状を呈する可変弾性体206を下側緩衝ゴム200bの周囲に配置する構成としても良い。
前記したように、防振装置22が傾倒するとき、緩衝ゴム200の周囲の変形量が大きいことから、リング状の可変弾性体206を例えば下側緩衝ゴム200bの周囲に配置する構成としても図6に示す構成と同等の効果を得ることができる。また、可変弾性体206の使用量を削減することができコストを削減できる。
さらに、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)を図9に示す構成としてもよい。
【0072】
また、例えば、図10に示すように、コイルバネ22bを係止する係止部22gと、ロッド22eに備わる台座部22hの間に、電磁石202で周囲を囲まれた可変弾性体206を備え、係止部22gを可変弾性体206で支持する構成とすれば、防振装置22の上下方向の剛性を変化させることができ、上下振動が筐体1a(図1参照)に伝達されることを抑制できる。
【0073】
また、第2の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、筐体側緩衝機構22c1(図6参照)と外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の両方の緩衝部203a(図6参照)の剛性を変化可能に構成されているが、例えば、筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203aのみの剛性を変化可能に構成してもよいし、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203aのみの剛性を変化可能に構成してもよい。
【0074】
《第3の実施形態》
第1の実施形態では防振装置22(図1参照)を筐体1a(図1参照)および外槽2(図1参照)に接続する筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203(図2参照)の粘性を変更して筐体1aに発生する振動を抑制し、第2の実施形態では筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203a(図6参照)の剛性を変更して筐体1aに発生する振動を抑制している。
これに対し、第3の実施形態は、防振装置22を筐体1aに接続する筐体側緩衝機構22c1と防振装置22を外槽2に接続する外槽側緩衝機構22c2を、同じ材質の素材で減衰力(粘性係数)の異なる部材で構成し、かつ、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2の減衰力より大きく設定する。
【0075】
図11に示すように、上方の質点Wt1と下方の質点Wt2を有する回転体が回転する場合、回転速度が低いときに上方の質点Wt1と下方の質点Wt2が同位相で共振する1次モードが発生し(図11の(a))、さらに回転速度が上昇すると上方の質点Wt1と下方の質点Wt2が逆位相で共振する2次モードが発生する(図11の(b))。2次モードの共振が発生した状態からさらに回転速度が上昇すると、徐々に振動が低下して定常状態になる(図11の(c))。定常状態では振動の大きさが小さく、1次モードと2次モードの振動が合成された振動が発生している。つまり、下部の質点Wt2は傾斜し、上部の質点Wt1は傾斜しない状態となる。
【0076】
図12の(a)、(b)に示すように、外槽2の重心位置(振動部重心位置)を上方の質点Wt1、外槽2の下部位置を下方の質点Wt2として洗濯機1をモデル化し、2つの防振装置22で外槽2を支持する構成とすると、図12の(a)に示すように、共振時(1次モード)は外槽2が傾斜した状態になり、図12の(b)に示すように、定常時では外槽2が傾斜しない状態となる。
外槽2が傾斜しない状態では、2つの外槽側緩衝機構22c2の高さが等しく、外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1の変形量は等しくなる。
一方、外槽2が傾斜した状態では、外槽側緩衝機構22c2より筐体側緩衝機構22c1が大きく変形する。
【0077】
したがって、外槽2が傾斜しない定常時には外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1の減衰エネルギがほぼ等しくなり、外槽2から筐体1a(図1参照)に伝達される力に与える影響は外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1とでほぼ等しい。
一方、外槽2が傾斜する共振時は、筐体側緩衝機構22c1の変形が大きく、減衰エネルギが外槽側緩衝機構22c2より大きくなる。
【0078】
そこで、緩衝機構22cの減衰力を高めて外槽2から筐体1a(図1参照)に伝達される振動を抑制する場合、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2より大きくすることが好ましい。
そこで、第3の実施形態においては、同じ素材の緩衝ゴム200で筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2を形成するとともに、筐体側緩衝機構22c1と外槽側緩衝機構22c2の形状を変えて、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2より大きくする。例えば、防振装置22が接続される緩衝ゴム200の面の面積を、外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1とで変えることで、外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1の減衰力を変更できる。
具体的に、図13に示すように、防振装置22が接続される筐体側緩衝機構22c1(緩衝ゴム200)の面の面積S1を、防振装置22が接続される外槽側緩衝機構22c2(緩衝ゴム200)の面の面積S2より大きくすることで、筐体側緩衝機構22c1の粘性係数が外槽側緩衝機構22c2の粘性係数より大きくなって、筐体側緩衝機構22c1の減衰力が外槽側緩衝機構22c2の減衰力より大きくなる。
【0079】
このように、筐体側緩衝機構22c1(緩衝ゴム200)の粘性係数を外槽側緩衝機構22c2(緩衝ゴム200)の粘性係数より大きくして、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2より大きくすることによって、洗濯機1に発生する1次モードの共振を筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2で吸収することができ、筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0080】
以上のように、第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、外槽2(図1参照)を支持する防振装置22(図1参照)と外槽2を接続する外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203(図2参照)の粘性と、防振装置22と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203の粘性を、回転ドラム3(図1参照)の回転速度に応じて変化させて、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0081】
また、第2の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、外槽2(図1参照)を支持する防振装置22(図1参照)と外槽2を接続する外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203a(図6参照)の剛性と、防振装置22と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203aの剛性を、回転ドラム3(図1参照)の回転速度に応じて変化させて、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0082】
また、第3の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、防振装置22(図1参照)と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1の減衰力(粘性係数)を防振装置22と外槽2を接続する外槽側緩衝機構22c2の減衰力(粘性係数)より大きくすることで、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0083】
なお、第1の実施形態〜第3の実施形態は、図1に示すドラム式の洗濯機1に限定されず、例えば外槽と内槽が上方に開口するように備わる縦型の洗濯機にも適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 洗濯機
2 外槽
3 回転ドラム(内槽)
6 制御装置
22 防振装置
22c 緩衝機構
22c1 筐体側緩衝機構
22c2 外槽側緩衝機構
200 緩衝ゴム(緩衝部材)
203,203a 緩衝部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式の洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体に弾性支持される外槽内に、洗濯物を収納する回転ドラムを備えるドラム式の洗濯機は広く知られている。
このような洗濯機の回転ドラムは、シャフトによって駆動モータと接続され、駆動モータによって回転駆動される。そして、回転ドラムの回転によって外槽に振動が発生するため、外槽の振動を吸収する防振装置を介して、外槽は筐体に支持されている。
【0003】
脱水など、高い回転速度で回転ドラムを回転する場合、回転ドラムの回転速度を上昇させる過程において、共振によって筐体に振動が発生し、洗濯機に異常振動や騒音が発生する。したがって、筐体に発生する振動を抑制する構造が好ましい。
例えば、外槽を弾性支持する防振装置には、外槽の上下方向の振動を吸収して筐体に伝達することを防止するものがあるが、このような防振装置では、左右方向および前後方向の振動を吸収することができない場合がある。
【0004】
例えば特許文献1には、外槽の振動の大きさによって減衰力が変化するダンパを備えるドラム式洗濯機が開示されている。特許文献1に開示される技術によると、定常時より大きな振動が外槽に発生すると減衰力が大きくなって振動を吸収できる。
また、例えば特許文献2には、回転速度、振動、騒音に応じて減衰量を可変とする制御型流体ダンパを備える脱水洗濯機が開示されている。特許文献2に開示される技術によると、共振回転付近で減衰力を高めて共振時の振動を低減できる。
また、例えば特許文献3には、液体封入式の緩衝ゴムを介して防振ダンパを固定側に取り付ける技術が開示されている。特許文献3に開示される技術によると、緩衝ゴムに液体を封入することで減衰力を高めてドラムに発生する振動を低減できる。
また、例えば特許文献4には、水槽の振動を抑制する防振ダンパをクッション材を介して本体ケースの台板と水槽支持台に固定するドラム式洗濯機が開示されている。特許文献4に開示されるドラム式洗濯機によると、台板側に備わるクッション材の硬度を水槽支持台側に備わるクッション材の硬度より小さくすることで、水槽から本体ケースに伝達される振動を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−200189号公報
【特許文献2】特開2001−170390号公報
【特許文献3】特開2009−101167号公報
【特許文献4】特開2001−212395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、外槽の振動の大きさ(変位)によってダンパの減衰力が変化するため、共振時であっても減衰力が大きい状態と小さい状態が切り替わり、そのときに衝撃が発生するという問題がある。
また、特許文献2に開示される技術では、ピストンが収納されるシリンダ内に電磁石や磁性流体を組み込むため、制御型流体ダンパの構造が複雑になるという問題がある。
また、特許文献3に開示される技術では、ドラムの回転速度が高い場合であっても緩衝ゴムの減衰力が高い状態であり、回転速度が高いときにドラムに発生する振動が洗濯機本体に伝達されやすいという問題がある。
また、特許文献4に開示される技術では、共振時の振動を低減できる硬度にクッション材の硬度を設定すると、ドラムが定常回転するときに振動が本体ケースに伝達されやすいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、外槽の振動によって筐体に発生する振動を抑制できる洗濯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、外槽を筐体に弾性支持する防振装置を外槽および筐体に接続する緩衝部の剛性と弾性の少なくとも一方が変化可能な洗濯機とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、外槽の振動によって筐体に発生する振動を抑制できる洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ドラム式の洗濯機の内部構造を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る筐体側緩衝機構の構造を示す断面図である。
【図3】洗濯機の機能ブロックを示す図である。
【図4】外槽に発生する平面振動が筐体に伝達するときの伝達率を示すグラフである。
【図5】(a)、(b)は、第1の実施形態に係る緩衝ゴムに形成される中空部の形状の変形例を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る筐体側緩衝機構の構造を示す断面図である。
【図7】回転ドラムの回転速度と左右振動の大きさの関係を示すグラフである。
【図8】回転ドラムの回転速度と前後振動の大きさの関係を示すグラフである。
【図9】第2の実施形態に係る筐体側緩衝機構の変形例を示す断面図である。
【図10】第2の実施形態に係る筐体側緩衝機構の他の変形例を示す断面図である。
【図11】(a)〜(c)は、上方の質点と下方の質点を有する回転体の振動の状態を示す模式図である。
【図12】(a)、(b)はモデル化した洗濯機の振動の状態を示す模式図である。
【図13】第3の実施形態に係る筐体側緩衝機構と外槽側緩衝機構の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る洗濯機1は、洗濯物を洗濯する洗濯工程(洗浄工程やすすぎ工程)、脱水工程及び乾燥工程の各工程を連続的(必要に応じて選択的)に実行して洗濯物を洗浄乾燥する、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機であり、図示しない洗濯パンなどの床部と接する脚部16を有するベース15に支持される筐体1aの前面に、洗濯物を出し入れするためのドア7が備わっている。
なお、洗濯機1はドア7の側を正面(前)とし、正面に対する背面(後)から正面方向を見て左右方向を設定する。また、脚部16が備わる側を下として上下方向を設定する。
【0012】
筐体1aの、例えば、正面側上方には、利用者が洗濯機1を操作するための操作ボタンおよび利用者が洗濯機1の状態を確認するための表示部等を備える操作・表示パネル8が備わっている。
また、例えば背面側上方には、水道などの給水源から水を取り込む取水口9、取水口9を開閉する給水弁9a、および取水口9から取り込まれた水を外槽2まで導水する給水管9bが備わっている。
【0013】
筐体1aの内部には、上下方向に伸縮可能な複数の防振装置22(図1には1つの防振装置22を図示)で下方を支持されるとともに、筐体1aの上方から、弾性支持体となる吊り下げバネ18,19によって弾性支持される外槽2が備わる。
この構成によって、外槽2は筐体1aに弾性支持される。
外槽2は、正面の側が開口した筒状に構成され、内部には、洗濯物が投入される内槽として回転ドラム3が収容される。回転ドラム3は、外槽2の底部に取り付けられる駆動手段(駆動モータ4)とシャフト4aを介して接続され、駆動モータ4の回転駆動によって外槽2内で回転する。そして洗濯機1は、回転ドラム3の回転によって、洗浄工程、すすぎ工程、脱水工程等を実行する。
【0014】
外槽2は、洗濯工程(洗浄工程、すすぎ工程)など、水を使用する工程のときには水が溜まるように構成され、排水弁21を介して排水ホース14が接続されている。そして、排水弁21が開弁すると、外槽2に溜まっている水が排水ホース14を流れて排水される。
【0015】
また、符号6は洗濯機1を制御する制御装置、符号50は駆動モータ4の回転速度を計測する回転速度検出装置、符号51は外槽2に発生する振動を計測する振動センサ、符号52は外槽2に溜まる水の水位を計測する水位センサである。回転速度検出装置50は、例えば、シャフト4aの回転速度を計測する回転速度計であり、振動センサ51は、例えば、外槽2に発生する加速度を計測する加速度センサで構成される。
【0016】
防振装置22は、ダンパ22aとコイルバネ22bを含んで構成され、ダンパ22aの伸縮によって外槽2の振動を減衰している。防振装置22は、例えばダンパ22aの側が外槽側緩衝機構22c2を介して外槽2に接続され、コイルバネ22bの側が筐体側緩衝機構22c1を介して筐体1aの底部に接続される。
【0017】
このように構成される防振装置22は、外槽2に発生する上下方向の振動はダンパ22の伸縮によって吸収可能であるが、左右方向および前後方向の振動を吸収することができない。そこで、防振装置22と筐体1aおよび外槽2を、それぞれ筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2で接続し、外槽2に発生する左右方向および前後方向の振動を筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2で吸収するように構成される。以下、筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2をまとめて、緩衝機構22cと称する場合がある。
【0018】
図2に示すように、ダンパ22aは図示しないシリンダとロッド22eを含んで構成され、シリンダとロッド22eの摩擦などによって減衰力が得られる。防振装置22のコイルバネ22bは、ダンパ22aのロッド22eの周囲に配置されて、ロッド22eに固定される係止部22gとシリンダとの間でシリンダの上下動に対応して伸縮するように構成される。
そして防振装置22と筐体1aを接続する筐体側緩衝機構22c1は、係止部22gより下方(筐体1aの側)に備わり、例えば、係止部22gより下方に延伸するロッド22e(の延長部)を囲むように取り付けられるリング状の緩衝部材(緩衝ゴム200)が筐体1aを挟持するように構成される。
【0019】
なお、緩衝部材は緩衝ゴム200に限定されるものではなく、好適な粘性を有する素材であればよい。さらに後記するように、緩衝部材には中空部201を設けることから、緩衝部材は加工性に優れた素材であることが好ましい。
【0020】
緩衝ゴム200は、例えば上下方向に分割可能に構成され、上側緩衝ゴム200aが筐体1aの上側(防振装置22側)に組み込まれ、下側緩衝ゴム200bが筐体1aの下側に組み込まれる構成であってもよい。
そして、ロッド22eの先端部に形成されるネジ部22fに上方からワッシャ204、上側緩衝ゴム200aの順にはめ込み、筐体1aの下部に開口した貫通孔にネジ部22fを通し、さらに、筐体1aを貫通したネジ部22fに下側緩衝ゴム200bとワッシャ204をはめる。そしてナット205をネジ部22fに締めこむ。
このように筐体側緩衝機構22c1を組み立てることによって、防振装置22と筐体1aを筐体側緩衝機構22c1を介して接続できる。
【0021】
また、第1の実施形態に係る上側緩衝ゴム200aおよび下側緩衝ゴム200bの内部には、それぞれリング状を呈する外形と同心円状に中空部201,201が形成され、中空部201,201には磁性流体が封入されている。また、上側緩衝ゴム200aおよび下側緩衝ゴム200bの周囲には、外周に沿って電磁石202,202が備わり、磁場を発生して磁性流体を当該磁場内に置くことができるように構成される。
そして、上側緩衝ゴム200a、下側緩衝ゴム200b、2つの電磁石202および磁性流体を含んで緩衝機構22cの緩衝部203を形成する。
【0022】
磁性流体は、磁場内に置かれると粘度が増大するため、電磁石202,202が磁場を発生すると磁性流体の粘度が増大し、磁性流体が封入される緩衝ゴム200を有する緩衝部203の粘性が増大する。
また、磁性流体は磁場の量(磁場量)によって粘度が変化することから、電磁石202,202で発生する磁場量を制御することで、緩衝部203の粘性の大きさを制御できる。
なお、緩衝部203の粘性は、緩衝部203の変形速度に依存した抵抗の大きさを変形速度で除すことで得られる特性値である。
【0023】
防振装置22と外槽2(図1参照)を接続する外槽側緩衝機構22c2(図1参照)は、防振装置22と筐体1aを接続する筐体側緩衝機構22c1と同じ構成とする。そして、上側緩衝ゴム200aと下側緩衝ゴム200bで外槽2を挟持するように構成すればよい。
そして、緩衝機構22c(筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2)が図2に示すように構成されることによって、防振装置22は緩衝機構22cを介して筐体1aおよび外槽2と接続されることになる。
【0024】
以上のように構成される洗濯機1(図1参照)は、制御装置6(図1参照)によって制御される。
制御装置6は、駆動モータ4(図1参照)の回転速度制御、排水弁21(図1参照)の開閉、給水弁9a(図1参照)の開閉等によって洗濯機1を制御する。
【0025】
図3に示すように、制御装置6にはマイクロコンピュータ6aが備わり、図示しないメモリに記憶されたプログラムをマイクロコンピュータ6aが実行して洗濯機1を制御する。
制御装置6には、回転速度検出装置50が計測するシャフト4a(図1参照)の回転速度、振動センサ51が計測する外槽2(図1参照)の振動、水位センサ52が計測する外槽2の水位が入力される。また、制御装置6は、操作・表示パネル8、給水弁9a、排水弁21、駆動モータ4の駆動信号を生成するモータ駆動回路4b、および電磁石202を制御可能に構成される。
【0026】
このように構成される制御装置6は、利用者の操作に応じて洗濯工程を実行する。例えば、洗浄工程やすすぎ工程を実行するとき、制御装置6は給水弁9aを開弁して外槽2(図1参照)内に注水し、水位センサ52が計測する外槽2の水位が所定の基準値に達したときに給水弁9aを閉弁して駆動モータ4を回転駆動させて回転ドラム3(図1参照)を回転させる。制御装置6は、回転速度検出装置50が計測するシャフト4a(図1参照)の回転速度を回転ドラム3の回転速度として取得し、回転ドラム3の回転速度を所定値に維持する。
【0027】
また制御装置6は、脱水工程を実行するとき、排水弁21を開弁して外槽2内の水を排水した後、駆動モータ4を高速で回転駆動させて回転ドラム3(図1参照)を高速で回転させ、図示しない洗濯物を脱水する。
このとき、制御装置6は、振動センサ51が計測する振動を外槽2(図1参照)の振動として取得し、外槽2の振動が基準値を超えるときには脱水工程を中止する。
【0028】
また制御装置6は、乾燥工程を実行するとき、図示しないヒータで加熱した空気を外槽2内に送風して洗濯物を乾燥する。
【0029】
さらに制御装置6は、必要に応じて操作・表示パネル8を制御し、図示しない表示部に必要な情報を表示する。このように制御装置6は、洗濯機1を制御して洗濯工程、脱水工程、乾燥工程を実行する。
【0030】
このうち、脱水工程では回転ドラム3(図1参照)が高速で回転されるが、回転ドラム3の回転速度が上昇する過程で、外槽2(図1参照)が回転ドラム3、駆動モータ4(図1参照)等と一体となって上下方向に振動する上下振動、左右方向に振動する左右振動、前後方向に振動する前後振動、および平面回転状に振動するすりこぎ振動が発生する。これらの上下振動、左右振動、前後振動およびすりこぎ振動は、回転ドラム3の回転速度が、それぞれの振動で共振が発生する特定の回転速度に達したときに発生する。
【0031】
このうち、上下振動は、外槽2(図1参照)の上下動に応じて上下運動するダンパ22a(図1参照)を有する防振装置22(図1参照)で吸収することができる。したがって、外槽2に発生する上下振動が筐体1aに伝達されて筐体1aに振動が発生することを抑えることができる。
【0032】
しかしながら、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動(以下、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動をまとめて平面振動と称する)は、主に防振装置22(図1参照)を傾倒させる振動であってダンパ22a(図1参照)の上下運動に変換できないため、防振装置22では吸収することができずに筐体1a(図1参照)に伝達される。そして、筐体1aに振動が発生し、洗濯機1(図1参照)に異常振動や騒音が発生する。
【0033】
そこで、第1の実施形態に係る洗濯機1は、平面振動を緩衝機構22c(図1参照)の緩衝部203(図2参照)の粘性で吸収するように構成される。
【0034】
図4に示すように、外槽2(図1参照)に発生する平面振動が筐体1a(図1参照)に伝達するときの伝達率は、平面振動の共振周波数のルート2倍の周波数(以下、遷移周波数と称する)で「1」となり、遷移周波数以下の領域で「1」より大きく、遷移周波数以上の領域で「1」より小さくなる。
なお、外槽2に発生する平面振動の周波数は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωに応じて変化することから、図4の横軸は外槽2に共振周波数が発生する回転速度ωn(以下、特定回転速度ωnと称する)に対する回転速度ωの比を示している。
【0035】
また、Case1〜5は、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力の大きさによる違いを示し、減衰力が最も大きい場合がCase5であり、減衰力が小さくなるに従ってCase1に向かうことを示している。
【0036】
例えば、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力が最も大きいCase5の場合、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低い時はCase1〜5のうちで伝達率を最も小さくできるが、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高い時はCase1〜5のうちで伝達率が最も大きくなる。
一方、緩衝機構22cの減衰力が最も小さいCase1の場合、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低い時はCase1〜5のうちで伝達率が最も大きいが、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高い時はCase1〜5のうちで伝達率が最も小さくなる。
【0037】
換言すると、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力が大きい場合、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いときは外槽2(図1参照)から筐体1a(図1参照)に伝達する平面振動を吸収する効果が高くなり、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いときは外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果が低くなる。
一方、緩衝機構22cの減衰力が小さい場合、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いときは外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果が低くなり、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いときは外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果が高くなる。
【0038】
そこで、第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いときは緩衝機構22c(図1参照)の減衰力を大きくし、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いときは緩衝機構22cの減衰力を小さくして、回転ドラム3の回転速度によらずに、外槽2から筐体1aに伝達する平面振動を吸収する効果を高くする。
【0039】
緩衝機構22c(図1参照)の減衰力は緩衝部203(図2参照)の粘性に応じて変化するものであり、緩衝部203の粘性が高いと減衰力が大きくなり、粘性が低いと減衰力が小さくなる。
そこで第1の実施形態においては、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いとき、制御装置6(図1参照)は電磁石202,202(図2参照)に電力を供給して磁場を発生させ、緩衝ゴム200の中空部201(図2参照)に封入されている磁性流体の粘度を増大して緩衝部203の粘性を増大し、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の減衰力を増大させる。
一方、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いとき、制御装置6は電磁石202,202への電力の供給を停止して磁場を消滅させ、緩衝ゴム200の中空部201に封入されている磁性流体の粘度を減少して緩衝部203の粘性を減少し、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の減衰力を減少させる。
【0040】
この構成によって、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より低いとき、平面振動は、例えば図4に示すグラフのCase5で示す伝達率で筐体1aに伝達されることになり、平面振動が筐体1aに伝達される伝達率を低く抑えることができる。また、回転ドラム3の回転速度ωが特定回転速度ωnのルート2倍より高いとき、平面振動は、例えば図4に示すグラフのCase1で示す伝達率で筐体1aに伝達されることになり、平面振動が筐体1aに伝達される伝達率を低く抑えることができる。したがって、回転ドラム3の回転速度ωによらずに、平面振動が筐体1aに伝達される伝達率を低く抑えることができ、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0041】
なお、緩衝ゴム200(図2参照)の形状、材質、封入される磁性流体の量や種類、電磁石202が発生する磁場の量など、緩衝機構22c(筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2)の設計値に応じて、緩衝部203(図2参照)の粘性は変化するため、平面振動の伝達を効果的に抑えられる粘性となるように、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2のこれらの設計値を適宜決定すればよい。
【0042】
また、図5の(a)、(b)に示すように、緩衝ゴム200に形成される中空部201が複数のブロックに分割される構成であってもよい。例えば、図5の(a)に示すように、リング状を呈する緩衝ゴム200の外形と同心円状に形成される中空部201を径方向に備わる複数の隔壁201a(図5の(a)には4つの隔壁201aを図示)で分割し、複数のブロックに分割される中空部201を形成してもよい。
前記したように、外槽2(図1参照)等に平面振動が発生した場合、防振装置22(図1参照)が傾倒して複数のブロックに分割された中空部201の1つに荷重がかかる。したがって、分割されたブロックの1つに封入される磁性流体で防振装置22が傾倒したときの荷重を受けることになり、緩衝部203(図2参照)の粘性を増大できる。さらに、隔壁201aで緩衝ゴム200を補強できる。
【0043】
また、図5の(b)に示すように、隔壁201aに貫通孔201bを形成しても良い。防振装置22(図1参照)が傾倒して1つのブロックに荷重がかかった場合、荷重がかかったブロックの磁性流体が貫通孔201bを通過して隣接するブロックに移動する。そして、磁性流体が貫通孔201bを通過するときに発生する流動抵抗によって、緩衝部203(図2参照)の粘性を増大できる。
【0044】
また、防振装置22(図1参照)が傾倒する場合、リング状を呈する緩衝ゴム200(図1参照)の外周側の変形量が内周側の変形量より大きいことから、中空部201(図2参照)を緩衝ゴム200の外周側に形成する構成とすれば、少ない磁性流体で大きな粘性の変化を得ることができる。
【0045】
さらに、磁性流体に替えてER流体(電気粘性流体)を中空部201(図2参照)に封入する構成としてもよい。この場合、中空部201に電極を配置してER流体に電圧を印加可能に構成すれば、ER流体に印加する電圧を制御することによって緩衝部203(図2参照)の粘性を制御できる。
【0046】
なお、第1の実施形態の説明においては、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動を区別することなく平面振動としたが、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動による共振が発生する共振周波数、特定回転速度が異なった特性値として存在し、全ての平面振動の伝達率は、緩衝機構22c(図1参照)の減衰力の大きさに対応して同等の特性(図4に示す特性)を有する。
したがって、第1の実施形態における平面振動を、例えば、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動のうちで最も大きな振動を筐体1a(図1参照)に発生させる振動とする構成としてもよい。
【0047】
また、複数の防振装置22(図1参照)が備わる場合は、左右振動に対応して緩衝部203(図2参照)の粘性が変化する防振装置22と、前後振動に対応して緩衝部203の粘性が変化する防振装置22と、すりこぎ振動に対応して緩衝部203の粘性が変化する防振装置22と、が備わる構成としてもよい。この場合、制御装置6(図1参照)は、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動による共振が発生する共振周波数および特定回転速度に基づいて、それぞれの防振装置22を制御する。
【0048】
また、電磁石202(図2参照)が発生する磁場の量を制御し、例えば、左右振動、前後振動、およびすりこぎ振動に対応した3段階で緩衝部203の粘性を変化させる構成としてもよい。
【0049】
なお、第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、筐体側緩衝機構22c1(図1参照)と外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の両方の緩衝部203(図2参照)の粘性を変化可能に構成されているが、例えば、筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203のみの粘性を変化可能に構成してもよいし、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203のみの粘性を変化可能に構成してもよい。
【0050】
《第2の実施形態》
第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、防振装置22(図1参照)と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1(図1参照)の緩衝部203(図2参照)、および防振装置22と外槽2(図1参照)を接続する外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203の粘性を変化させて平面振動を吸収し、筐体1aに発生する振動を抑える構成としたが、本発明の第2の実施形態は、緩衝機構22cの緩衝部の剛性を変化させて筐体1aに発生する振動を抑える構成とする。
そのため、図6に示すように、緩衝ゴム200に封入される磁性流体に替えて可変弾性体206を備える緩衝機構22cとする。
【0051】
可変弾性体206は、磁場内に置かれると剛性が低下する性質を有する素材で、例えば図6に示すように、下側緩衝ゴム200bと下方のワッシャ204でリング状を呈する可変弾性体206を挟持し、可変弾性体206の周囲に電磁石202を配置する。
そして、上側緩衝ゴム200a、下側緩衝ゴム200b、電磁石202、および可変弾性体206を含んで緩衝機構22cの緩衝部203aを形成する。
なお、他の構成は図2に示す防振装置22と同一であり、詳細な説明は適宜省略する。
この構成によると、電磁石202による磁場の発生を制御することで可変弾性体206の剛性を変化させることができ、可変弾性体206が備わる緩衝機構22cの緩衝部203aの剛性を変化させることができる。
【0052】
洗濯機1(図1参照)の脱水工程時に回転ドラム3(図1参照)の回転速度が上昇する場合、外槽2(図1参照)、筐体1a(図1参照)が左右方向に共振する回転速度(共振回転速度)に達すると、筐体1aに異常な振動や騒音が発生する。
【0053】
洗濯機1(図1参照)を1つの剛体とみなした場合、共振回転速度ωsは次式1で示される。
【数1】
【0054】
式(1)におけるkは剛性(バネ定数)、mは振動部の質量、ζは減衰比を示す。式(1)で示されるように減衰比ζが一定の場合、共振回転速度ωsは剛性kの平方根に比例する。換言すると、剛性kを変更することによって共振回転速度ωsを変更できる。
【0055】
図7は洗濯機1(図1参照)における回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωと左右振幅の大きさの関係を示すグラフである。例えば、洗濯機1の剛性kがk1のときは、実線で示すように回転ドラム3の回転速度ωがωs1のときに洗濯機1の左右振幅がピークとなる。すなわち、共振回転速度ωsがωs1(第1共振回転速度)になる。また、剛性kがk1より大きいk2のときは、破線で示すように回転ドラム3の回転速度がωs1より高いωs2のときに洗濯機1の左右振幅がピークとなる。すなわち、共振回転速度ωsがωs2(第2共振回転速度)になる。このように、洗濯機1の剛性kを変更することによって共振回転速度ωsを変更できる。
【0056】
そこで、第2の実施形態においては、緩衝機構22cの緩衝部203a(図6参照)の剛性を変えることで洗濯機1の剛性kを変えて共振回転速度ωsを変更し、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが共振回転速度ωsと一致することを回避する。
この構成によると、回転ドラム3が共振回転速度ωsで回転することがなく、洗濯機1(図1参照)が共振しない。したがって、外槽2(図1参照)に左右振幅がピークとなる左右振動が発生することを回避することができ、筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0057】
例えば脱水工程の実行時に回転ドラム3(図1参照)の回転速度が上昇する場合、回転速度ωが低い時は洗濯機1(図1参照)の剛性kを大きくして共振回転速度ωsを高くする。そして、回転ドラム3の回転速度ωが、高くなっている共振回転速度ωsに達する前に剛性kを小さくして共振回転速度ωsを回転ドラム3の回転速度ωより低くする。
【0058】
図7を参照して説明すると、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが第1共振回転速度ωs1より低いときは洗濯機1(図1参照)の剛性kをk2とする。そして、回転ドラム3の回転速度ωが上昇し、第1共振回転速度ωs1を超えた時、すなわち、回転ドラム3の回転速度ωが所定の切替回転速度ωsc(ωs1<ωsc<ωs2)に達したとき、剛性kをk2より小さいk1に変更する。
【0059】
その後、回転ドラム3の回転速度ωが切替回転速度ωscより上昇しても、共振回転速度ωsは第1共振回転速度ωs1に変更されていることから、回転ドラム3の回転速度ωが共振回転速度ωsと一致することがない。
この構成によると、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが共振回転速度ωsと一致することが回避され、洗濯機1(図1参照)における共振の発生を抑えることができる。したがって、筐体1a(図1参照)に発生する振動を抑制できる。
【0060】
そして、第2の実施形態においては、図6に示すように可変弾性体206を備える筐体側緩衝機構22c1とし、電磁石202による磁場の発生を制御して筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203aの剛性を変化させる構成とする。さらに、防振装置22(図1参照)と外槽2(図1参照)を接続する外槽側緩衝機構22c2(図1参照)を、筐体側緩衝機構22c1と同じ構成とする。筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203aの剛性が変化すると、洗濯機1(図1参照)の剛性kが変化することから、電磁石202による磁場の発生を制御することで、洗濯機1の剛性kを制御できる。
【0061】
制御装置6(図1参照)は、脱水工程等で回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωを上昇させるとき、回転速度検出装置50(図1参照)が計測するシャフト4a(図1参照)の回転速度を回転ドラム3の回転速度ωとして取得する。そして、回転ドラム3の回転速度ωが第1共振回転速度ωs1より低いときは、電磁石202(図6参照)への電力の供給を停止して磁場を消滅させる。可変弾性体206の剛性は回復した状態になって筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203a(図6参照)の剛性が増大する。同様に外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203aの剛性を増大させる。
【0062】
制御装置6(図1参照)は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωをさらに上昇させ、回転ドラム3の回転速度ωが、第1共振回転速度ωs1より高い切替回転速度ωscに達したとき、電磁石202(図6参照)に電力を供給して磁場を発生させる。可変弾性体206が磁場内に置かれて剛性が低下し、筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203a(図6参照)の剛性が低下する。制御装置6は、同様に外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203aの剛性を低下させる。
【0063】
回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが第1共振回転速度ωs1より低いとき、筐体側緩衝機構22c1(図1参照)、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203aの剛性が高く、洗濯機1(図1参照)の剛性kがk2になる。このとき共振回転速度ωsは第2共振回転速度ωs2であり、回転ドラム3の回転速度ωは共振回転速度ωsより低い。したがって、洗濯機1は共振せず筐体1a(図1参照)に振動は発生しない。
【0064】
回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが上昇して第1共振回転速度ωs1より高い所定の切替回転速度ωscなると、筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203a(図6参照)の剛性が低くなって洗濯機1(図1参照)の剛性kがk1になる。そして共振回転速度ωsが第1共振回転速度ωs1に変更されて、回転ドラム3の回転速度ωが共振回転速度ωsより高くなる。その後、回転ドラム3の回転速度ωが上昇しても、回転ドラム3の回転速度ωは共振回転速度ωsより高く共振回転速度ωsと一致しない。したがって、洗濯機1は共振せず筐体1a(図1参照)に振動は発生しない。
【0065】
第1共振回転速度ωs1、第2共振回転速度ωs2は、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の緩衝部203a(図6参照)の剛性等によって決定される固有値である。
また、緩衝部203aの剛性は、電磁石202(図6参照)が発生する磁場量、可変弾性体206の材質等によって決定される設計値である。
さらに制御装置6(図1参照)が緩衝部203aの剛性を変化させる切替回転速度ωscは、例えば、洗濯機1の剛性kがk1のときにピークから低下する左右振動と、剛性kがk2のときにピークに向かって上昇する左右振動の交点となる回転速度とすれば、洗濯機1の剛性kを変化する前後での左右振動の大きさを好適に抑えることができる。
【0066】
このように、第2の実施形態においては、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが上昇しても共振回転速度ωsと一致することがなく洗濯機1(図1参照)の共振を回避できる。そして、筐体1a(図1参照)に振動が発生することを抑制できる。
【0067】
以上、左右振動に基づいて説明したが、第2の実施形態を前後振動、すりこぎ振動に対して適用することも可能である。例えば、図8に示すように洗濯機1(図1参照)の剛性kがk1のとき、前後振動のピークは回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωがωs3となる点にある。また、洗濯機1の剛性kがk1より大きいk2のとき、前後振動のピークは回転ドラム3の回転速度ωがωs3より高いωs4となる点にある。そして、一般的に前後振動は左右振動よりも高い回転速度で発生することから、洗濯機1の剛性kがk1のときに前後振動がピークとなる回転速度ωs3は第2共振回転速度ωs2より高い。
【0068】
この場合、制御装置6(図1参照)は、回転ドラム3(図1参照)の回転速度ωが第2共振回転速度ωs2を超えたときに電磁石202(図6参照)への電力の供給を停止して、洗濯機1(図1参照)の剛性kをk2にする。そして回転ドラム3の回転速度ωが上昇してωs3を超えたときに制御装置6は電磁石202へ電力を供給する。洗濯機1の剛性kがk1になって前後振動がピークとなる回転速度がωs3になる。その後、回転ドラム3の回転速度ωが上昇しても、前後振動がピークとなる回転速度と一致することがない。したがって、回転ドラム3の回転速度ωは、外槽2(図1参照)等の前後振動がピークとなる回転速度と一致することがなく、外槽2等の前後振動によって筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0069】
また、すりこぎ振動は、前後振動よりさらに高い回転速度でピークとなり、洗濯機1(図1参照)の剛性kによって、すりこぎ振動がピークとなる回転速度が変化することから、左右振動、前後振動と同様に、外槽2(図1参照)等のすりこぎ振動によって筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0070】
以上のように、第2の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、図6に示す可変弾性体206の剛性を変化させることで、外槽2(図1参照)に発生する左右振動、前後振動、すりこぎ振動によって筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0071】
なお、筐体側緩衝機構22c1の変形例として、例えば図9に示すように、リング状を呈する可変弾性体206を下側緩衝ゴム200bの周囲に配置する構成としても良い。
前記したように、防振装置22が傾倒するとき、緩衝ゴム200の周囲の変形量が大きいことから、リング状の可変弾性体206を例えば下側緩衝ゴム200bの周囲に配置する構成としても図6に示す構成と同等の効果を得ることができる。また、可変弾性体206の使用量を削減することができコストを削減できる。
さらに、外槽側緩衝機構22c2(図1参照)を図9に示す構成としてもよい。
【0072】
また、例えば、図10に示すように、コイルバネ22bを係止する係止部22gと、ロッド22eに備わる台座部22hの間に、電磁石202で周囲を囲まれた可変弾性体206を備え、係止部22gを可変弾性体206で支持する構成とすれば、防振装置22の上下方向の剛性を変化させることができ、上下振動が筐体1a(図1参照)に伝達されることを抑制できる。
【0073】
また、第2の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、筐体側緩衝機構22c1(図6参照)と外槽側緩衝機構22c2(図1参照)の両方の緩衝部203a(図6参照)の剛性を変化可能に構成されているが、例えば、筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203aのみの剛性を変化可能に構成してもよいし、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203aのみの剛性を変化可能に構成してもよい。
【0074】
《第3の実施形態》
第1の実施形態では防振装置22(図1参照)を筐体1a(図1参照)および外槽2(図1参照)に接続する筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203(図2参照)の粘性を変更して筐体1aに発生する振動を抑制し、第2の実施形態では筐体側緩衝機構22c1、外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203a(図6参照)の剛性を変更して筐体1aに発生する振動を抑制している。
これに対し、第3の実施形態は、防振装置22を筐体1aに接続する筐体側緩衝機構22c1と防振装置22を外槽2に接続する外槽側緩衝機構22c2を、同じ材質の素材で減衰力(粘性係数)の異なる部材で構成し、かつ、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2の減衰力より大きく設定する。
【0075】
図11に示すように、上方の質点Wt1と下方の質点Wt2を有する回転体が回転する場合、回転速度が低いときに上方の質点Wt1と下方の質点Wt2が同位相で共振する1次モードが発生し(図11の(a))、さらに回転速度が上昇すると上方の質点Wt1と下方の質点Wt2が逆位相で共振する2次モードが発生する(図11の(b))。2次モードの共振が発生した状態からさらに回転速度が上昇すると、徐々に振動が低下して定常状態になる(図11の(c))。定常状態では振動の大きさが小さく、1次モードと2次モードの振動が合成された振動が発生している。つまり、下部の質点Wt2は傾斜し、上部の質点Wt1は傾斜しない状態となる。
【0076】
図12の(a)、(b)に示すように、外槽2の重心位置(振動部重心位置)を上方の質点Wt1、外槽2の下部位置を下方の質点Wt2として洗濯機1をモデル化し、2つの防振装置22で外槽2を支持する構成とすると、図12の(a)に示すように、共振時(1次モード)は外槽2が傾斜した状態になり、図12の(b)に示すように、定常時では外槽2が傾斜しない状態となる。
外槽2が傾斜しない状態では、2つの外槽側緩衝機構22c2の高さが等しく、外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1の変形量は等しくなる。
一方、外槽2が傾斜した状態では、外槽側緩衝機構22c2より筐体側緩衝機構22c1が大きく変形する。
【0077】
したがって、外槽2が傾斜しない定常時には外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1の減衰エネルギがほぼ等しくなり、外槽2から筐体1a(図1参照)に伝達される力に与える影響は外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1とでほぼ等しい。
一方、外槽2が傾斜する共振時は、筐体側緩衝機構22c1の変形が大きく、減衰エネルギが外槽側緩衝機構22c2より大きくなる。
【0078】
そこで、緩衝機構22cの減衰力を高めて外槽2から筐体1a(図1参照)に伝達される振動を抑制する場合、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2より大きくすることが好ましい。
そこで、第3の実施形態においては、同じ素材の緩衝ゴム200で筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2を形成するとともに、筐体側緩衝機構22c1と外槽側緩衝機構22c2の形状を変えて、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2より大きくする。例えば、防振装置22が接続される緩衝ゴム200の面の面積を、外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1とで変えることで、外槽側緩衝機構22c2と筐体側緩衝機構22c1の減衰力を変更できる。
具体的に、図13に示すように、防振装置22が接続される筐体側緩衝機構22c1(緩衝ゴム200)の面の面積S1を、防振装置22が接続される外槽側緩衝機構22c2(緩衝ゴム200)の面の面積S2より大きくすることで、筐体側緩衝機構22c1の粘性係数が外槽側緩衝機構22c2の粘性係数より大きくなって、筐体側緩衝機構22c1の減衰力が外槽側緩衝機構22c2の減衰力より大きくなる。
【0079】
このように、筐体側緩衝機構22c1(緩衝ゴム200)の粘性係数を外槽側緩衝機構22c2(緩衝ゴム200)の粘性係数より大きくして、筐体側緩衝機構22c1の減衰力を外槽側緩衝機構22c2より大きくすることによって、洗濯機1に発生する1次モードの共振を筐体側緩衝機構22c1および外槽側緩衝機構22c2で吸収することができ、筐体1aに発生する振動を抑制できる。
【0080】
以上のように、第1の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、外槽2(図1参照)を支持する防振装置22(図1参照)と外槽2を接続する外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203(図2参照)の粘性と、防振装置22と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203の粘性を、回転ドラム3(図1参照)の回転速度に応じて変化させて、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0081】
また、第2の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、外槽2(図1参照)を支持する防振装置22(図1参照)と外槽2を接続する外槽側緩衝機構22c2の緩衝部203a(図6参照)の剛性と、防振装置22と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1の緩衝部203aの剛性を、回転ドラム3(図1参照)の回転速度に応じて変化させて、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0082】
また、第3の実施形態に係る洗濯機1(図1参照)は、防振装置22(図1参照)と筐体1a(図1参照)を接続する筐体側緩衝機構22c1の減衰力(粘性係数)を防振装置22と外槽2を接続する外槽側緩衝機構22c2の減衰力(粘性係数)より大きくすることで、筐体1aに発生する振動を好適に抑制できる。
【0083】
なお、第1の実施形態〜第3の実施形態は、図1に示すドラム式の洗濯機1に限定されず、例えば外槽と内槽が上方に開口するように備わる縦型の洗濯機にも適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 洗濯機
2 外槽
3 回転ドラム(内槽)
6 制御装置
22 防振装置
22c 緩衝機構
22c1 筐体側緩衝機構
22c2 外槽側緩衝機構
200 緩衝ゴム(緩衝部材)
203,203a 緩衝部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に配設されて内槽を収容する外槽と、
前記外槽を前記筐体に防振支持する防振装置と、を備え、
前記防振装置が緩衝機構を介して前記筐体および前記外槽と接続される洗濯機において、
前記緩衝機構の緩衝部は、剛性または粘性が変化することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記防振装置を前記筐体に接続する前記緩衝機構の緩衝部の剛性または粘性が変化することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記緩衝部の剛性または粘性を変化させる制御装置を備え、
前記制御装置は、前記内槽の回転速度に応じて前記緩衝部の剛性または粘性を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内槽の回転速度が所定の回転速度以下のときには前記緩衝部の粘性を増大し、前記内槽の回転速度が前記所定の回転速度より高いときには前記緩衝部の粘性を減少することを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記内槽の回転速度が所定の回転速度以下のときには前記緩衝部の剛性を増大し、前記内槽の回転速度が前記所定の回転速度より高いときには前記緩衝部の剛性を減少することを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項6】
筐体の内部に配設されて内槽を収容する外槽と、
前記外槽を前記筐体に防振支持する防振装置と、
前記防振装置を前記外槽に接続する外槽側緩衝機構と、
前記防振装置を前記筐体に接続する筐体側緩衝機構と、を有する洗濯機において、
前記外槽側緩衝機構に備わって前記防振装置を前記筐体に接続する緩衝部材と前記筐体側緩衝機構に備わって前記防振装置を前記筐体に接続する緩衝部材が同一の素材で形成されるとともに、前記筐体側緩衝機構に備わる前記緩衝部材の粘性係数が前記外槽側緩衝機構に備わる前記緩衝部材の粘性係数より大きいことを特徴とする洗濯機。
【請求項1】
筐体の内部に配設されて内槽を収容する外槽と、
前記外槽を前記筐体に防振支持する防振装置と、を備え、
前記防振装置が緩衝機構を介して前記筐体および前記外槽と接続される洗濯機において、
前記緩衝機構の緩衝部は、剛性または粘性が変化することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記防振装置を前記筐体に接続する前記緩衝機構の緩衝部の剛性または粘性が変化することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記緩衝部の剛性または粘性を変化させる制御装置を備え、
前記制御装置は、前記内槽の回転速度に応じて前記緩衝部の剛性または粘性を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内槽の回転速度が所定の回転速度以下のときには前記緩衝部の粘性を増大し、前記内槽の回転速度が前記所定の回転速度より高いときには前記緩衝部の粘性を減少することを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記内槽の回転速度が所定の回転速度以下のときには前記緩衝部の剛性を増大し、前記内槽の回転速度が前記所定の回転速度より高いときには前記緩衝部の剛性を減少することを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項6】
筐体の内部に配設されて内槽を収容する外槽と、
前記外槽を前記筐体に防振支持する防振装置と、
前記防振装置を前記外槽に接続する外槽側緩衝機構と、
前記防振装置を前記筐体に接続する筐体側緩衝機構と、を有する洗濯機において、
前記外槽側緩衝機構に備わって前記防振装置を前記筐体に接続する緩衝部材と前記筐体側緩衝機構に備わって前記防振装置を前記筐体に接続する緩衝部材が同一の素材で形成されるとともに、前記筐体側緩衝機構に備わる前記緩衝部材の粘性係数が前記外槽側緩衝機構に備わる前記緩衝部材の粘性係数より大きいことを特徴とする洗濯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−250852(P2011−250852A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124917(P2010−124917)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
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