説明

洗濯用助剤組成物

【課題】木綿繊維を使用した衣料等の布類そのものの性質を利用することにより、洗濯途中において助剤を添加する等煩雑な工程を経ることなく、すすぎ時の環境を酸性にすることができ、これにより洗浄性能を向上させることができる。
【解決手段】酸物質と、これを被覆するポリマーとを有する洗濯用助剤を含有する洗濯用助剤組成物であって、該ポリマーが、20℃の水中で10分間攪拌した際に、水に対しpH10で10%以下、かつpH6で80%以上の溶解率を有する洗濯用助剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗濯用助剤組成物、これを含有する洗剤組成物、及び該洗剤組成物を用いる洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯水中のカルシウムは、洗浄剤成分のアニオン性界面活性剤と結合して不溶化し、洗浄性能を低下させることが知られており、このような水中のカルシウム分に関連して、洗浄性能を向上させるための多くの試みがなされていた。
また、近年、全自動洗濯機の普及に伴い、洗濯の全工程が終了するまで基本的に作業者が立ち会わないことが多くなり、途中工程において助剤等を添加する等の煩雑な作業が敬遠される傾向になってきており、一方で、消費者の節約意識や環境保護に対する意識の高まりを背景に、洗濯時の水量が少量で済むように設計された洗濯機が主流となり、洗濯系において洗濯水量に対する衣料の量の比率が大幅に増加してきたことから、上記洗浄性能の向上については、水中のカルシウム分に加えて衣料の性質についても十分考慮した新たな発想に基づく検討が必要になってきた。
このような状況下において、本発明者らは、衣料の性質に着目し、衣料を積極的に洗浄に活用することにより、簡便な方法で洗浄性能を向上させることについて検討を行った。なお、この検討の経過において、特許文献1、特許文献2等を検討したが、これらの特許文献はいずれも、上記のような洗浄性能向上等を意図したものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−185187号公報
【特許文献2】特開平6−228871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、木綿繊維を使用した衣料等の布類そのものの性質を利用することにより、洗濯途中において助剤を添加する等煩雑な工程を経ることなく、すすぎ時の環境を酸性にすることができ、これにより洗浄性能を向上させることができる洗濯用助剤組成物、上記洗濯用助剤組成物を含有する洗剤組成物、及び該洗剤組成物を用いた洗濯方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の点から、木綿繊維を使用した衣料等の布類について、それが微量のカルボキシル基を有することに着目し、これと水中のカルシウムとの反応を利用して、洗浄剤の洗浄性能を向上しうることを見出した。
すなわち、本発明は、酸物質と、これを被覆するポリマーとを有する洗濯用助剤を含有する洗濯用助剤組成物であって、該ポリマーが、20℃の水中で10分間攪拌した際に、水に対しpH10で10%以下、かつpH6で80%以上の溶解率を有する洗濯用助剤組成物、該濯用助剤組成物を含有する洗剤組成物及び該洗剤組成物を用いた洗濯方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、木綿繊維を使用した衣料等の布類そのものの性質を利用することで、洗濯途中において助剤を添加する等煩雑な工程を経ることなく、すすぎ時の環境を酸性にすることができ、この結果、洗浄性能を向上させることができ、特に2度目以降の洗濯において、その洗浄性能を有効に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、木綿繊維を使用した衣料等の布類そのものの性質を利用することにより、すすぎ時等の洗濯途中において助剤を添加する等煩雑な工程を経ることなく、すすぎ時の環境を酸性にすることができ、これにより洗浄性能を向上させることができる洗濯用助剤組成物に関するものである。このような洗濯用助剤組成物は、酸物質と、これを被覆するポリマーとを有する洗濯用助剤を含有する洗濯用助剤組成物であって、該ポリマーが、20℃の水中で10分間攪拌した際に、水に対しpH10で10%以下、かつpH6で80%以上の溶解率を有する(以下、このポリマーを「pH感応型ポリマー」という)洗濯用助剤組成物である。
洗濯用助剤及び洗濯用助剤組成物
以下に、洗濯用助剤及び洗濯用助剤組成物について説明する。
【0008】
<酸物質>
本発明において洗濯用助剤を構成する酸物質とは、すすぎ時の環境を酸性にすることができる物質をいい、そのような性質を有するものであれば特に制限はないが、例えば、酸などの酸性物質、酸を生成しうる物質等があり、具体的には、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、硝酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸などの有機酸等が挙げられ、好ましくは、フマル酸、クエン酸等の多価カルボン酸が挙げられる。
本発明においては、取扱い、被覆性、保存安定性等の点から、酸物質として、固体酸あるいは酸を固体担体に担持させた形態のものを用いることが好ましい。固体担体としては、例えば、無水珪酸、硫酸ナトリウムなどの無機塩や、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミド系樹脂などの有機化合物などを使用することができる。
上記酸物質は、単独で使用することもできるが、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、洗濯用助剤組成物中における酸物質の含有量は、すすぎ時の目標とするpH値やポリマーへの内包されやすさ等に応じて適宜調整することができるが、洗濯用助剤組成物100質量部に対し5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは10〜40質量部含有する。
【0009】
<pH感応型ポリマー>
本発明において、pH感応型ポリマーは、上記酸物質を被覆しうるポリマーであり、20℃の水中で10分間攪拌した際に、水に対しpH10で10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下、かつpH6で80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の溶解率を有するポリマーである。
ここで、「溶解率」とは、該ポリマーのフィルムをpH10あるいはpH6の硬水中で一定時間攪拌した際に、水中に溶解したポリマーの質量割合として求めた値を指し、具体的には後述する。
本発明において、上記pH感応型ポリマーとしては、上記条件で、pH8での溶解率が50%以上であるものが更に好ましく用いられる。
【0010】
このpH感応型ポリマーは、アルカリ領域では溶解せず、中性乃至酸性領域(たとえばpH4以上7未満の領域)で溶解するポリマーであり、20℃で10分間攪拌した際の水への溶解率が、pH10で10%以下であり、pH6で80%以上であるポリマーであれば特に制限なく使用できる。また、そのガラス転移点は、保存中の洗濯用助剤粒子の凝集やポリマー被覆膜が破壊されたりあるいは逆に硬すぎることを防止する等の観点から、20〜120℃、更に30〜100℃であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、pH感応型ポリマーとしては、具体的には、メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸ブチル/メタアクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、ポリビニルアセタールジアルキルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレ−トコポリマー、ジアルキルアミノアルキルアクリル酸アミドコポリマー等を挙げることができる。ここで、ポリビニルアセタールジアルキルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレ−トコポリマー、ジアルキルアミノアルキルアクリル酸アミドコポリマーの各々におけるアルキル基としては、例えば炭素数1〜4のものが好ましく使用できる。
これらの中で、本発明においては、酸物質の被覆性、耐アルカリ性、酸性あるいは中性領域での溶解性等の観点から、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートとジメチルアミノプロピルアクリル酸アミドコポリマーが好ましく用いられる。
上記pH感応型ポリマーは、単独で使用することもできるが、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、洗濯用助剤組成物中におけるpH感応型ポリマーの含有量は、酸物質の量等によって適宜調整可能であるが、洗濯用助剤組成物100質量部に対し、5〜100質量部、更に10〜50質量部含有することが好ましい。
【0012】
<耐酸性水溶性ポリマー層>
上記洗濯用助剤は、上記酸物質とこれを被覆するpH感応型ポリマーの間に、更に耐酸性水溶性ポリマー(非pH感応型ポリマーともいう)の層を有することが、酸物質及びpH感応型ポリマーを保護する観点から好ましい。
酸物質とpH感応型ポリマーが、長期間接触すると化学変化が起こり、溶解性が変化する場合があるため、それを防ぐため、これらの間に耐酸性水溶性ポリマー層を有することが好ましい。耐酸性水溶性ポリマー層を構成する耐酸性水溶性ポリマーは、酸物質と長期間接触(例えば、温度30℃、湿度70%で1カ月程度)させても、化学変化を起こしにくく、溶解性が変化しにくい性質を有するものであり、初期の溶解率に対する酸接触保存後の溶解率(各々20℃、pH6での溶解率)の変化率、すなわち、[(初期溶解率(%)−保存後溶解率(%))/初期溶解率(%)]×100、が±20%以下であるものが好ましく、より好ましくは±10%以下であるものである。
【0013】
耐酸性水溶性ポリマーの具体例としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリエチルオキサイド、アクリル酸ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
本発明においては、これらの中で、被覆性の点で、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリピニルピロリドンを好ましく用いることができる。
上記耐酸性水溶性ポリマーは、単独で使用することもできるが、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、洗濯用助剤組成物中における耐酸性水溶性ポリマーの含有量は、酸物質やpH感応型ポリマーの量に応じて適宜調整しうるが、洗濯用助剤組成物中に、洗濯用助剤組成物100質量部に対し、5〜100質量部、更に7〜50質量部含有することが好ましい。
【0014】
<洗濯用助剤>
上記洗濯用助剤における上記酸物質とpH感応型ポリマーの含有割合は、被覆性と溶解性の点から、上記酸物質/pH感応型ポリマー質量比で100/5〜100/100、更に100/10〜100/50であることが好ましい。また、耐酸性水溶性ポリマーは、pH感応型ポリマーに対して被覆性の観点から、耐酸性水溶性ポリマー/pH感応型ポリマー質量比で100/500〜100/10、更に100/300〜100/50であることが好ましい。
【0015】
上記洗濯用助剤は、酸物質がpH感応型ポリマーあるいはこれと耐酸性水溶性ポリマーに被覆されたものであればよく、その形状には特に制限はなく、粉末、粒状、錠剤等いずれの形状のものであってもよい。本発明において、「被覆する」とは、単一の酸物質が、pH感応型ポリマーに完全に内包されているものはもちろん、酸物質が上記ポリマー中に複数分散されて内包された形態のものも含み、その他、酸物質が上記ポリマーに完全に内包されていなくても、洗濯時のアルカリ領域では酸物質が溶解して環境のpHを変動させることなく中性乃至酸性領域で溶解してすすぎ時の環境を酸性にすることができる形態のものも包含する。
上記洗濯用助剤の平均粒径は、洗剤組成物の取り扱い、洗濯液、すすぎ液中の溶解性等の観点から、50〜2000μm、更には100〜1500μmであることが好ましい。ここで、上記粒径はJIS Z 8801に規定される標準ふるいを用いて測定することができる。
【0016】
上記洗濯用助剤は、上記酸物質とpH感応型ポリマーを前記割合で、また、耐酸性水溶性ポリマーを使用する場合は、上記酸物質と水溶性ポリマーとpH感応型ポリマーを前記割合で配合することにより製造することができる。この際、各ポリマーは必要に応じて適当な溶剤に溶解あるいは分散して用いることにより酸物質を被覆することができる。被覆方法としては、通常用いられている方法、例えば、洗濯用助剤が粉末、粒状もしくは錠剤の場合、流動層法、液中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥造粒法、界面重合法等をいずれも使用することができ、これらの方法のうち、被覆性の点から、被覆剤を適当な溶剤に溶解させておき、この溶液をスプレーする噴霧乾燥造粒法、あるいは流動層コーティング装置等を用いる流動層法が好ましく用いられる。
【0017】
<洗濯用助剤組成物>
本発明の洗濯用助剤組成物は、上記洗濯用助剤を含むが、更に必要に応じて、洗濯用助剤の水中での分散、溶解を促進するための分散促進剤や、目的に応じて、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、蛍光増白剤、アイロン滑りをよくするシリコーン等を含有することもできる。洗濯用助剤組成物中における上記各種添加剤の含有量は、0〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明の洗濯用助剤の形態は特に限定されないが、固体状、例えば粉末、粒状、顆粒等のいずれであってもよい。また、造膜性水溶性ポリマーと混合しフィルム化したり、或いはそのフィルム上に吸着・吸収させてもよい。
本発明の洗濯用助剤組成物は、洗剤組成物とは別途保存し、洗浄に際して個々に洗剤組成物中に投入してもよい。また、洗剤と併用することなく単独で使用することもできるが、本発明においては、洗剤中に配合し、洗剤組成物として用いるのが便利である。
【0019】
洗剤組成物
本発明において、上記洗濯用助剤組成物は洗剤中に配合し、洗剤組成物として用いることが、すすぎ時等の洗濯途中において助剤を別途添加する等煩雑な行程を経る必要がないことから好ましい。以下に洗剤組成物について説明する。
本発明の洗剤組成物は、上記洗濯用助剤組成物を含有するが、その含有量は、少なくとも、洗濯後のすすぎ時に、そのpHを後述の範囲とするような酸物質を残存させうる量に相当する量であることが好ましい。更に、洗浄性の観点から、例えば、洗濯用助剤組成物の含有量は、洗剤組成物中1〜50質量%、更に5〜35質量%であることが好ましい。
【0020】
酸性でのすすぎによる繊維からのカルシウム除去を効果的に行うためには、洗濯液のpHは高いことが好ましいことから、組成物中にアルカリ剤を含有することが好ましい。洗濯液のpHは、具体的には、pH8以上が好ましく、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上である。
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、遊離エタノールアミンや非定型のケイ酸ナトリウム(例えば、JIS1号、2号ケイ酸ナトリウム等)、結晶性のケイ酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
洗剤組成物には、一般に洗浄剤として用いられる成分、例えば、界面活性剤、硬度成分捕捉剤、香料、酵素、蛍光染料等を含有することができる。
本発明で用いられる界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上を挙げることができるが、好ましくは陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤である。
陰イオン界面活性剤としては、アルコール若しくはそのアルコキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩若しくはそのエステル塩又は脂肪酸塩が好ましい。このうち、アルキル鎖の炭素数が10〜14、更に12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、対イオンとしては、アルカリ金属類やアミン類、具体的には、ナトリウム及び/又はカリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンが好ましい。
【0022】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーやポリオキシアルキレンアルキロールアミドが好ましく挙げられる。このうち、炭素数10〜18のアルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを4〜20モル付加した〔HLB値(グリフィン法で算出)が10.5〜15.0、好ましくは11.0〜14.5である〕ポリオキシアルキレンアルキルエーテルや、下記式(1) で表されるポリオキシアルキレンアルキロールアミド(式中、AOはオキシエチレン基、オキシプロピレン基又はそれらの混合物であるオキシアルキレン基を表す。)の中で、R1 が平均炭素数11〜13の飽和の炭化水素基であり、xが1≦x≦5のものがより好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
上記界面活性剤は、通常、洗剤組成物中、5〜50質量%含有される。
また、硬度成分捕捉剤としては、アルミノ珪酸塩、結晶性珪酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アミノカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、アクリル酸重合物、マレイン酸重合物、アクリル−マレイン酸共重合物等が挙げられる。このような硬度成分捕捉剤は、通常、洗剤組成物中、5〜50質量%含有される。
【0025】
洗濯方法
また、本発明は、(1)カルボキシル基を含有する木綿繊維を有する布類を上記の洗剤組成物を用いて洗浄する工程、及び(2)洗浄後の布類を酸性下ですすぎを行う工程、を有する洗濯方法に関する。
木綿繊維には、原綿由来のカルボキシル基やセルロースの変質基としてのカルボキシル基が含有される。すなわち、原綿中の不純物の残存物中に存在するウロン酸、マレイン酸、クエン酸等のカルボキシル基、原綿の単離、精製、漂白処理の過程でセルロースの水酸基やアルデヒド基の酸化によって生成するカルボキシル基が存在する。このようなカルボキシル基は、アルカリ領域下では水中のカルシウム分と反応し水の硬度を下げる一方で、酸性領域下ではカルシウム分を補足しない性質を有するものである。上記工程(1)は、このような木綿繊維を有する衣料等の布類を、上記洗剤組成物を用いて洗浄する工程であるが、本発明はこのような場合に好適に用いられる。
【0026】
工程(2)は、洗浄後の布類を酸性領域下ですすぎを行う行程であるが、本発明においては、上記アルカリ洗浄後の布類を、例えば水等のすすぎ液で処理することにより、上記洗剤組成物に含有される洗濯用助剤のpH感応型ポリマー及び水溶性ポリマーが溶解あるいは崩壊し、内包されていた酸物質がすすぎ液中に溶出して、すすぎ液のpHを好ましくは4以上7未満、更に好ましくは5以上7未満などの弱酸性領域とする。このようなpH領域ですすぎ処理することにより、木綿繊維が有するカルボキシル基からカルシウムが脱理し、木綿繊維が有するカルボキシル基がイオン状態のまま、洗濯を終えることになる。このようなイオン状態のカルボキシル基を含有する木綿繊維を有する衣料等の布類は、次回以降の洗濯に供される場合、上記イオン状態のカルボキシル基を有することから、洗濯の際、アルカリ領域下洗濯液中のカルシウム分を捕捉し、液中のカルシウム含有量を低減することにより、洗浄性能を向上させることができる。
【実施例】
【0027】
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
(酸剤の調製)
流動層コーティング装置(フロイント産業(株)製SPIR−A−FLOW)を用いて、以下のとおり酸剤の調製を行なった。なお、各pH値での溶解率は以下の方法で測定した。
【0028】
(溶解率の測定)
(1)ポリマーフィルムの調製
10質量%のpH感応型ポリマー溶液(エタノールなどのポリマーを溶解しうる有機溶媒を用いて調製する)を、バーコーター(第一理化(株)製、No.80)を用いて塗工し、常温で乾燥してフィルムを調製する。このフィルムを砕き、JIS Z 8801の標準ふるい目開き3mmと5mmを用いて5分間振動し、3〜5mmのフィルム片を得る。
(2)溶解率の測定
上記得られたフィルム片0.1gを秤取し、これを。20℃で、71.2mgCaCO3/Lに相当する1リットルの硬水(Ca/Mgモル比=7/3)に水酸化ナトリウムを加えてpH10に、あるいは塩酸でpH6に調製したものに加えて10分間攪拌する。攪拌は、1リットルビーカーと長さ35mm、直径8mmの攪拌子を用い、マグネティックスターラーで800rpmの回転数により行う。
ポリマー片投入から10分後にポリマー分散液を質量既知のJIS Z 8801に規定の目開き37μmの標準ふるいでろ過し、60℃にて1時間乾燥した後、ふるいとポリマーの溶残物の合計の質量を測定し、次の式によりポリマーの溶解率を算出する。
溶解率(%)=[1−(T/S)]×100
S:投入したポリマーの質量(g)
T:ふるい上に残存するポリマーの溶残物の乾燥質量(g)
【0029】
(人工汚染布の調製)
オレイン酸100gに色素(オイルオレンジSS)を0.5gを添加し、これと木綿ブロード布(6cm×6cm)に80mg塗布して人工汚染布を調製した。
【0030】
実施例1 助剤組成物1の調製
フマル酸300gにポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA:三共社製)(溶解率がpH6で98%、pH10で5%)の30質量%エタノール溶液300gを添加速度5g/min、AG回転数90rpmにて添加して、上記流動層コーティング装置を用いて助剤組成物1を調製した。得られた助剤の粒径は、600μmであった。上記助剤の粒径は前述の方法で測定した。
【0031】
実施例2 助剤組成物2の調製
フマル酸300gにポリビニルアルコール(クラレポバールPVA−420:クラレ製)の30質量%エタノール溶液200gを、添加速度5g/min、AG回転数90rpmにて添加した後、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA:三共社製)の30質量%エタノール溶液を300gを添加速度5g/min、AG回転数90rpmにて添加して、上記流動層コーティング装置を用いて助剤組成物2を調製した。得られた助剤の粒径は650μmであった。上記助剤の粒径は前述の方法で測定した。
【0032】
実施例3、4及び比較例1
表1に記載の配合の洗浄剤組成物を用いて以下の方法で洗浄し、下記のように洗浄率を評価した。
〔洗浄方法〕
洗濯は、ターゴトメーターを使用して、温度20℃、71.2mgCaCO3/L相当の硬水(Ca/Mg=7/3)を用いて以下のようにして行なった。
洗浄工程1:水1Lに、木綿メリヤス布10g及び表1記載の各洗剤組成物を加えて5分間攪拌した。
洗浄工程2:木綿メリヤス布を取り出し、水1Lに加え5分間攪拌した。
洗浄工程3:木綿メリヤス布を取り出し、脱水後自然乾燥した。
洗浄工程4:乾燥した木綿メリヤス布10gに上記人工汚染布を加え、表1に記載の各洗剤組成物にて5分間洗浄を行なった。
洗浄工程5:人工汚染布を取り出し、脱水・乾燥後、下記の方法で測定した反射率から洗浄率を算出した結果を表1に示す。
【0033】
〔洗浄率の評価〕
原布及び洗浄前後の反射率(460nm)を測色色査計(日本電色工業(株)製、ND-300A)にて測定し、次式によって洗浄率D(%)を算出した。その結果を表1に併せて示す。
D=(L2-L1)/(L0-L1)×100(%)
0:原布の反射率
1:洗浄前汚染布の反射率
2:洗浄後汚染布の反射率
【0034】
【表1】

【0035】
実施例5
実施例3の助剤組成物において、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートに代えてジメチルアミノプロピルアクリル酸アミドコポリマー(特開平6−256794号公報に記載の方法に準じて調整したもの)を用いた以外は同様にして洗浄剤組成物を得た。洗浄率は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の洗濯用助剤組成物は、木綿繊維を使用した衣料等の布類の洗浄に好適に使用することができ、特に2度目以降の洗濯において、その洗浄性能を有効に向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸物質と、これを被覆するポリマーとを有する洗濯用助剤を含有する洗濯用助剤組成物であって、該ポリマーが、20℃の水中で10分間攪拌した際に、水に対しpH10で10%以下、かつpH6で80%以上の溶解率を有する洗濯用助剤組成物。
【請求項2】
酸物質が固体酸である請求項1記載の洗濯用助剤組成物。
【請求項3】
酸物質が、酸を固体担体に担持させたものである請求項1記載の洗濯用助剤組成物。
【請求項4】
酸物質を被覆するポリマーが、ポリビニルアセタールジアルキルアミノアセテート及びジアルキルアミノアルキルアクリル酸アミドコポリマーから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯用助剤組成物。
【請求項5】
酸物質とこれを被覆するポリマーの間に、耐酸性水溶性ポリマー層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の洗濯用助剤組成物。
【請求項6】
木綿繊維を有する布類の洗浄に用いる請求項1〜5のいずれかに記載の洗濯用助剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯用助剤組成物を含有する洗剤組成物。
【請求項8】
下記工程を有する洗濯方法。
(1)カルボキシル基を含有する木綿繊維を有する布類を請求項7記載の洗剤組成物を用いて洗浄する工程、及び
(2)洗浄後の布類に酸性下ですすぎを行う工程
【請求項9】
工程(2)を、pH4以上7未満の酸性領域下で行う請求項8記載の洗濯方法。

【公開番号】特開2007−254500(P2007−254500A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76934(P2006−76934)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】