説明

洗車機における洗車方法

【課題】 本発明の課題は、車形検出と洗車処理を同時進行で行ったときに、車形検出が正常に行われなかった場合、洗車機を異常停止させず、手作業による補正作業を不要とした洗車方法を提案するものである。
【解決手段】 本体フレーム1の往行に伴い、車形検出装置16による車形検出と洗車処理装置8〜13による洗浄処理を同時に実行し、この車形・洗浄工程で正常に車形検出が行われなかったとき、本体フレーム1の復行に伴い、車形・洗車工程で行った洗浄処理で車体面に付着した成分を取り除く補正作業を行い、次の本体フレームの往行に伴い、再び車形検出を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車する自動車の形状に沿って洗車処理装置を作用させて自動車車体を洗車処理する洗車機において、自動車の車形検出が正常に行えなかった場合の洗車方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
門型状の本体フレーム内に、洗車する自動車の形状を検出する車形検出装置と、自動車の車体面に作用する洗車処理装置を備え、この本体フレームと自動車の相対移動に伴い自動車の形状に沿って洗車処理を施す洗車機に知られている。車形検出装置としては、上下方向に複数の発光素子を配列した発光部と、この発光部の発光素子と対をなす受光素子を配列した受光部を本体フレームの内側面に対面させ、本体フレームが所定距離走行する毎に発光部を発光させて受光部での透光/遮光状態を検出することで自動車を抽出する装置が用いられる。洗車処理装置としては、自動車の車体面をブラッシングする洗浄ブラシ、自動車の車体面をブローする乾燥ノズル、洗浄水や洗剤・ワックス等を車体面に噴射する噴射ノズル等が用いられる。このような洗車機では、車形検出装置を各洗車処理装置よりも先行させて配置してあり、本体フレームを1往行させる間に、車形検出と洗車処理を同時に行うことができるようになっている。
【0003】
車形検出と洗車処理を同時に行うことは、洗車時間を短縮する上で非常に有効な手段であるが、洗剤噴射や洗浄ブラシの回転を伴う洗車処理を同時進行すると、車形検出に悪影響を及ぼす危険がある。例えば、外気温が低い状態での温水噴射による湯気の発生や、強風時でのジェット噴射による水滴や泡の飛散があると、これらを車体の一部と誤認して正常な車形検出ができなくなる。そして、このような車形検出エラーが起こると、洗車処理は途中で中断されることになるため、洗剤が吹き付けられた車体の補正作業に相当な労力を費やすこととなる。
【0004】
これに対処し、本出願人は洗車機の往行に伴い、車形検出のみを実行する洗車機を提案した(特許文献1)。しかし、この洗車機では全体的な洗車処理時間が長くなってしまうことから、効率性・収益性の面で店舗への導入を敬遠されることが少なくない。また、車形検出のみを実行している時に、洗車機が走行しているにもかかわらず洗車が行われないことから、顧客に不信感を持たせる原因となっていた。
【特許文献1】特開2000−127920号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明が解決すべき課題は、車形検出と洗車処理を同時進行で行ったときに、車形検出が正常に行われなかった場合、洗車機を異常停止させず、手作業による補正作業を不要とした洗車方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明は、洗浄する自動車の形状を検出する車形検出手段と、自動車の車体面に作用して洗浄を図る洗車処理装置とを装備した本体フレームを、自動車を跨いで往復走行させ、車形検出手段で検出する自動車の形状に沿って洗車処理装置を作用させて自動車車体を洗車処理する洗車機において、前記本体フレームの往行に伴い、前記車形検出手段による車形検出と前記洗車処理装置による洗浄処理を同時に実行する工程を行い、この車形・洗浄工程で正常に車形検出が行われなかったとき、前記本体フレームの復行に伴い、車形・洗車工程で行った洗浄処理で車体面に付着した成分を取り除く補正作業を行い、次の本体フレームの往行に伴い、再び車形検出を行うようにした。
【0007】
補正作業において、取り除かれる成分は、次の車形検出に影響を与える泡剤の除去である。また、再車形検出を行うとき、車形検出への影響が多い洗浄処理を実行せず、車形検出への影響が少ない洗浄処理のみを実行するようにした。
【発明の効果】
【0008】
このような洗車方法によれば、本体フレームを1往行させる間に、車形検出と洗車処理を同時に行う工程で、車形検出が正常に行われなかった場合、本体フレームをスタート位置に戻してから再往行させ、その再往行の工程で車形検出のみを実行させるようにしたので、洗車機を異常停止させることがない。また、本体フレームをスタート位置に戻す復行時に、次の再往行による車形検出に影響がでる車体面の泡剤を洗い流すようにし、更に再往行の車形検出では、車形検出の失敗原因となる洗車処理は実行しないようにしたので、車形検出のリトライを確実に成功させることができる。
【実施例1】
【0009】
以下、図面を基に、本発明の実施例について説明する。図1は本発明の実施例の側面図、図2は本発明の実施例の正面図である。1は自動車車体を跨ぐように門型状に形成した本体フレームで、正転逆転可能な走行モータ4,4により、車輪2,2を回転駆動して、レール3,3に沿って往復走行する。5は走行エンコーダで、走行モータ4の出力軸に連結し、走行モータ4の回転方向を検出しながら単位角度回転毎にパルス信号を出力して本体フレーム1の走行位置を与えている。6はフレーム位置センサで、レール3前端のドック7a及びレール3後端のドック7bに接触して、本体フレーム1の前進リミット及び後進リミットを与えている。
【0010】
8は主に車体上面をブラッシングする上面洗浄ブラシ、9は主に車体前後面及び車体側面をブラッシングする側面洗浄ブラシ、10は車体上面に高圧の洗浄水を吹き付ける噴射ノズル、11は洗浄水・洗剤・撥水剤を切り替えて散布する液剤ノズル、12はワックスを散布するワックスノズル、13は泡剤を散布する泡ノズル、14は車体上面に高圧エアを吹き付ける上面乾燥ノズル、15は車体側面に高圧エアを吹き付ける側面乾燥ノズルであり、車体の洗浄,乾燥等の処理を行う洗車処理装置を構成する。これら洗車処理装置は、本体フレーム1の前方から、噴射ノズル10,液剤ノズル11,上面洗浄ブラシ8,側面洗浄ブラシ9,ワックスノズル12,泡ノズル13,上面乾燥ノズル14,側面乾燥ノズル15の順に設けられている。この構成により、自動車の前方から洗車を開始し、自動車の後方で洗車が終了する洗車動作が可能となり、洗車終了後は自動車を前進させて退場させるドライブスルー方式となる。
【0011】
16は洗浄する自動車の形状を検出する車形検出装置で、本体フレーム1の内側面前方に設けられ、垂直上下方向に所定間隔で発光素子を配列した発光部16Aと、この発光部16Aの発光素子と対をなす受光素子を配列した受光部16Bとを対面させ、各発光/受光素子間の光軸が車体によって遮られたのを検知して車体の有無を検出するものである。この車形検出装置16は、本体フレーム1に備えられるどの洗車処理装置よりも前方に配置されている。この構成により、洗車処理装置よりも先行して自動車の形状を検出することが可能になるため、本体フレーム1を1往行させる間に車形検出とこの車形に基づく洗車処理装置により洗浄が可能となる。
【0012】
17は洗車受付装置で、洗車スペースCの入場口に設置され、前面に備えた操作パネル18で洗車料金や洗車内容の選択入力等を行うものである。19は洗車受付装置17と洗車スペースCの間に設置されるゲートで、駐車場などで公知のポールを回動して昇降させるタイプのもので、洗車スペースCへの自動車の進入を禁止/許可する。20は洗車受付装置17に設けられる車体検知センサで、反射型の超音波センサからなり、洗車受付装置17に自動車が接近したことを検出する。
【0013】
21は自動車誘導灯で、洗車スペースCの退場口側に設置され、洗車受付装置17で待機している自動車及び洗車スペースで洗車を受けた自動車に対して「前進」・「停止」・「後進」等の各種情報を提供するものである。22は洗車機の前面に設けられる管理パネルで、日計・月計といった集計作業・発生した異常の報知・再開を行うものである。
【0014】
図3は本実施例1の制御系を示すブロック図である。
23はマイクロコンピュータを含む制御部で、走行エンコーダ5からのパルス信号により本体フレーム1の走行位置を検出する走行位置検出部23aと、車形検出装置16からの透光/遮光信号により自動車の上面レベルを検出する上面レベル検出部23bと、両検出部23a・23bから自動車の形状を検出する車形データ検出部23cと、検出した車形データから自動車の基準点を認識する基準点認識部23dと、検出した自動車の突起物を特定する突起物認識部23eと、各データを記憶するデータ記憶部23fと、各洗車処理装置を駆動する洗車駆動部23gと、本体フレーム1の走行を制御する走行駆動部23hを備え、操作パネル18が接続されている。
【0015】
次に、制御部23における各部の機能について説明する。
走行位置検出部23aは、走行エンコーダ5から発信されるパルス信号をカウントして本体フレーム1の走行位置を検出するもので、走行スイッチ6がドック7aと接触して与えられる本体フレーム1の走行開始位置を起点として走行モータ4が正転して本体フレーム1が前進する時にパルス入力されると+1カウントし、走行スイッチ6がドック7bと接触して走行モータ4が逆転し本体フレーム1が後退する時にパルス入力されると−1カウントして、このカウント数で本体フレーム1の走行位置を与える。上面レベル検出部20bは、走行エンコーダ5から発信されるパルス信号をトリガとして車形検出装置16を駆動し、受光部16Bでの受光レベルから透光/遮光を検出するもので、透光と遮光の境界部を自動車の上面として上面レベルを与える。車形データ検出部23cは、前記両検出部23a・23bで与える本体フレーム1の走行位置と、各走行位置での自動車上面レベルとをテーブル化して車形データを作成する。
【0016】
基準点認識部23dは、車形データ検出部23cで順次作成される車形データから、車体の前端、ボンネットとフロントガラスの境界、ルーフ前端、ルーフ後端、車体の後端といった自動車の基準点を認識していく。突起物認識部23eは、基準点認識部23dで認識した自動車の基準点と上面レベルの変化に基づき突起物の有無を認識し、突起物を認識したときは自動車車体における突起物の位置によって突起物の種類を特定する。データ記憶部23fは、作成した車形データ・車体基準点・突起物のデータを記憶していく。洗車駆動部23gは、車形データに沿って洗車処理装置を作用させるべく、車体検出装置16の車体検出位置から各処理装置までの距離差を補正しながら各処理装置を動作させるものである。走行駆動部23hは、本体フレーム1の走行モータ4の回転数を制御するインバータを備え、走行モータ4に供給する電源の周波数を変更してモータ4の回転数を変えることで、洗車機の走行速度を適宜変更するものである。
【0017】
操作パネル18は、洗車機の操作ガイドなどを表示するLCD表示器24、洗車コースを選択するコースキー25、洗車の開始を指示するスタートキー26、洗車を中止するストップキー27、洗車料金を受け付ける料金受付装置28を備えている。管理パネル22は、操作ガイドなどを表示するLCD表示器29、電源の入切や管理モード,運転モードを切り換えるキースイッチ30を備えている。
【0018】
続いて、このように構成する実施例1の動作について、図4を用いて説明する。
洗車受付装置で洗車の受付が行われ、所定の停車位置に自動車が停車されると、受け付けた洗車の内容(コース・突起物指定等)に応じて洗車動作が実行される。ここで、本体フレーム1が1.5往復するのに伴い撥水コートまでを実行する洗車コースについて説明していく。
【0019】
洗車がスタートすると、待機位置にいる本体フレーム1が前進を開始する。この本体フレーム1の第1往行に伴い、先行する車形検出装置16において、洗浄する自動車の車形検出が行われ、後行する洗車処理装置において、噴射ノズル10によるジェット洗浄と、洗浄水ノズル11から車体面に洗剤を散布しながら車形に応じて上面洗浄ブラシ8と側面洗浄ブラシ9を駆動するブラッシング洗浄と、泡ノズル13から泡剤を吹き付ける泡散布が順次実行される。次に、本体フレーム1の第1復行に伴い、ワックスノズル12から消泡ワックス剤を散布しながら車形に応じて上面洗浄ブラシ8と側面洗浄ブラシ9を駆動するブラッシング洗浄と、洗浄水ノズル11から撥水剤を吹き付ける撥水コーティングが順次実行される。最後に、本体フレーム1の第2往行に伴い、洗浄水ノズル11から水を散布して撥水剤を流し、高圧エアを噴射しながら上面乾燥ノズル14と側面乾燥ノズル15を車形に沿って駆動するブロワ乾燥が順次実行される。
【0020】
さて、本体フレーム1の第1往行では、車形検出と洗浄作業が同時進行で行われるが、風が強い日にはジェット洗浄で飛散した飛沫洗浄水が、気温が低い日にはジェット洗浄で発生した湯気がノイズとなって車形検出装置16に影響を与えてしまい、正常に車形検出が行えない場合がある。例えば、水滴が車体後部に連続する遮光データとした現れると、この水滴が車体の一部と認識されてしまい車体後端が判断できず、車体検出異常となってしまう。本実施例1の洗車機では、第1往行で車形検出に失敗した場合、第1復行時に車体の補正処理を行い、第2往行時に再度車形検出をするようにしている。
【0021】
この車体補正処理と再車形検出の動作について、図5を用いて説明する。
車体補正処理は、本体フレーム1の復行に伴い、前記第1往行の最後に車体へ吹き付けた泡剤を取り除き、車形の輪郭を露出させる処理であり、洗浄水ノズル11から水を散布する、噴射ノズル10からジェット噴射する、乾燥ノズル14,15から高圧エアを吹き付ける、いずれかの方法により実行される。(ここでは、噴射ノズル10からジェット噴射して泡の除去を図っている。)
【0022】
次に、再車形検出は、車形検出に最も影響を与えるジェット洗浄を行わないものとし、且つユーザに対して不信感を与えないよう、車形検出に影響が少ない洗剤を散布しながらのブラッシング洗浄を実行する。ちなみに、泡散布はランニングコストが嵩むことから、実行しないようにしてもよい。
【0023】
このように、1回目の車形検出に失敗しても、再度車形検出を行うことで、洗車機の異常停止を極力低減させることができる。また、再車形検出の際に、本体フレーム1の第1往行に伴う車形検出と洗浄を同時に行う工程を実行していても、その洗浄動作で車体に付着した泡などを除去する補正作業を行ってから再車形検出を行うようにしたので、正確な車形検出が可能になる。更に、再車形検出の際には、車形検出の障害となる洗浄動作を伴わずに実行するようにしたので、繰り返し車形検出が失敗することを防ぐことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の洗車機を示す側面図である。
【図2】実施例1の洗車機を示す正面図である。
【図3】実施例1の制御系を示すブロック図である。
【図4】実施例1の洗車動作を説明図である。
【図5】実施例1の車形失敗時の洗車動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 本体フレーム
8 上面洗浄ブラシ
9 側面洗浄ブラシ
10 噴射ノズル
11 洗浄水ノズル
12 ワックスノズル
13 泡ノズル




【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄する自動車の形状を検出する車形検出手段と、自動車の車体面に作用して洗浄を図る洗車処理装置とを装備した本体フレームを、自動車を跨いで往復走行させ、車形検出手段で検出する自動車の形状に沿って洗車処理装置を作用させて自動車車体を洗車処理する洗車機において、
前記本体フレームの往行に伴い、前記車形検出手段による車形検出と前記洗車処理装置による洗浄処理を同時に実行する工程を行い、この車形・洗浄工程で正常に車形検出が行われなかったとき、前記本体フレームの復行に伴い、車形・洗車工程で行った洗浄処理で車体面に付着した成分を取り除く補正作業を行い、次の本体フレームの往行に伴い、再び車形検出を行うことを特徴とする洗車機における洗車方法。
【請求項2】
前記補正作業において、取り除かれる成分は、次の車形検出に影響を与える泡剤の除去であることを特徴とする上記請求項1記載の洗車方法。
【請求項3】
前記再車形検出を行うとき、車形検出への影響が多い洗浄処理を実行せず、車形検出への影響が少ない洗浄処理のみを実行する上記請求項1記載の洗車方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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