説明

洗車機における洗車用ブラシ

【課題】洗車後に、保温シャッターを下ろすなどの余分な作業を必要とせずに且つ安価な構成でもってブラシ材が凍りつくのを防止し得る洗車用ブラシを提供する。
【解決手段】洗車機に設けられる洗車用ブラシであって、ブラシ材24として、布製のシート状部材を用いるとともに、このシート状部材を扇子状に折り畳み、このシート状部材の表面、例えばその山部24aまたは谷部24bに、線状の吸湿発熱材31を貼り付けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車機における洗車用ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗車機における洗車用ブラシとしては、例えば回転される支持軸体の周囲に、円筒状にブラシが取り付けられたものが用いられており、またこのブラシは、組立て上および交換などを考慮して、支持軸体の軸心方向で、複数に分割されている。そして、この分割された分割ブラシは、支持軸体に外嵌し得る穴部が設けられたリング部材と、このリング部材の外周に所定間隔おきに形成された保持溝に保持される複数のブラシ材とから構成されるとともに、リング部材の外周複数箇所に形成された保持溝内に、扇形状に所定幅でもって折り畳まれた布製のものが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平08−56750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記ブラシ材の素材としては、布製のシート状部材が用いられており、つまり縦繊維と横繊維とで編み上げたものが用いられて、撥水性と吸水性とが考慮されていた。
ところで、この洗車用ブラシは、四季を通じて同じ生地を使用しているため、冬季に−5度以下となるような寒冷地域では、洗車後にブラシ材に残った水分が凍結して洗車することができない状態になってしまう。
【0004】
このため、−5度以下となるような寒冷地域では、洗車が行われていないときに凍結したブラシを解凍したり、または洗車機に保温ランプを設けたり、若しくは洗車機本体の前後に保温シャッターなどを取り付けることにより、ブラシ材が凍りつくのを防止する処置が講じられているが、洗車後に、一々、保温シャッターを下ろすなどの作業が非常に面倒であり、当然、解凍作業についても非常に面倒なものであるとともに、保温ランプ、保温シャッターを設ける場合には、洗車機自体の製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、例えば洗車後に、保温シャッターを下ろすなどの余計な作業を必要とせずに且つ安価な構成でもってブラシ材が凍りつくのを防止し得る洗車機における洗車用ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る洗車機における洗車用ブラシは、洗車機に設けられる洗車用ブラシであって、
ブラシ材として、天然繊維または合成繊維により形成されたシート状部材を用いるとともに、このシート状部材に発熱材を配置したものである。
【0007】
また、請求項2に係る洗車機における洗車用ブラシは、請求項1に記載の洗車用ブラシにおいて、発熱材をシート状部材に、縫い付けて若しくは貼り付けて、またはサンドイッチ形式にて保持させたものである。
【0008】
また、請求項3に係る洗車機における洗車用ブラシは、請求項1または2に記載の洗車用ブラシにおいて、シート状部材を扇子状に折り畳んだものである。
また、請求項4に係る洗車機における洗車用ブラシは、請求項1乃至3のいずれかに記載の洗車用ブラシにおいて、発熱材を線状に且つ所定間隔おきに配置したものである。
【0009】
また、請求項5に係る洗車機における洗車用ブラシは、請求項3に記載の洗車用ブラシにおいて、発熱材を、シート状部材の、少なくとも、山部または谷部に沿って線状に配置したものである。
【0010】
また、請求項6に係る洗車機における洗車用ブラシは、請求項1乃至5のいずれかに記載の洗車用ブラシにおいて、発熱材として、太陽光または赤外線を吸収し、遠赤外線などの熱として発熱する材料を用いたものである。
【0011】
さらに、請求項7に係る洗車機における洗車用ブラシは、請求項1乃至5のいずれかに記載の洗車用ブラシにおいて、発熱材として、水分を吸収して発熱する吸湿発熱材を用いたものである。
【発明の効果】
【0012】
上記各洗車用ブラシの構成によると、洗車用のブラシ材に、例えば太陽光などを吸収し、その後、発熱する発熱材、または水分を吸収して発熱する吸湿発熱材を配置したので、洗車作業の終了後においても、自然に発熱するため、外気温度が低下して零下になっても、ブラシ材自身が凍りつくというような事態が防止される。すなわち、従来のように、洗車作業の休止中に、保温措置、例えば洗車機の前後を保温シャッターなどで覆う必要がないとともに、保温ランプなどを作動させる必要がなく、勿論、解凍作業も必要とせず、したがって保温措置などの作業を必要としないとともに、洗車機自体の製造コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る洗車用ブラシを図面に基づき説明する。
まず、洗車機の概略構成を図1に基づき簡単に説明しておく。
【0014】
この洗車機には、正面視が門型形状のフレーム本体(洗車機本体でもある)1の上部に、車両Cの上面を洗浄するためのトップブラシ2が設けられるとともに、フレーム本体1の両側部には、車両Cの側面を洗浄するためのサイドブラシ3が設けられ、さらに両側部の下方には、タイヤなどを洗浄するためのロッカーブラシ4が設けられている。なお、以下、これら各ブラシ2〜4を、洗車用ブラシ11と称して説明する。
【0015】
この洗車用ブラシ11は、図2に示すように、回転される支持軸体12に円筒状のブラシ13が取り付けられたものであり、さらにこのブラシ13は、組立て上および交換などを考慮して、支持軸体12の軸心方向で、複数に分割して取り付けられている。以下、この分割された分割ブラシ13′について説明する。
【0016】
すなわち、図3に示すように、この分割ブラシ13′は、支持軸体12に外嵌し得る穴部22が設けられたリング部材21と、このリング部材21の外周に所定間隔おき(所定角度おき)に形成された複数の保持溝23にそれぞれ保持されるブラシ材24とから構成されている。なお、図3においては、ブラシ材24は一つだけ図示しているが、勿論、外周全体に亘って複数配置される。
【0017】
そして、このブラシ材24は、図4および図5に示すように、例えば矩形状の布(天然繊維により編まれたもの)を所定幅Bで交互に(ジグザク状に)折り畳んだものを、その真ん中を中心にして同一平面内で折り畳み、扇子状(扇型ともいえる)にしたものである。
【0018】
また、このブラシ材24のリング部材21への取り付けは、下記のように行われる。
すなわち、保持溝23は、円形の穴部23aと、この穴部23aに接続されるとともに当該穴部23aの内径よりも狭い幅の溝部23bとから構成されており、ブラシ材24の当該保持溝23への取り付けに際しては、ブラシ材24の折り畳み部分が溝部23bおよび穴部23a内に挿入されるとともに、当該ブラシ材24が外れるのを防止するために、穴部23a内に芯材として円柱状の係止部材25が挿入される。
【0019】
さらに、この布製のブラシ材24の適当位置、例えば折り畳んだ山部24aまたは谷部24bに沿って、吸湿発熱繊維により構成された線状の吸湿発熱材31が配置されている。具体的に説明すれば、図5に示すように、矩形状の布製のシート状部材Sに、所定間隔おきでもって、吸湿発熱材31が線状(発熱量を確保するために、ある程度の幅を有する)に配置され、さらにこの線状に配置された吸湿発熱材31も、その長手方向で断続的(連続したものでもよい)に配置されている。例えば、この吸湿発熱材31の部分が、丁度、折り畳んだ際に、その山部24aおよび/または谷部24bに沿うとともにそれぞれ山部24aおよび/または谷部24bに位置するのが望ましい。
【0020】
また、吸湿発熱材31の配置面としては、折り畳んだ際に、他のブラシ材および洗浄車両の車体と接触しないように内面側に位置するのが好ましいため、図5の破線にて示すように、山部24aでは裏側に配置され、谷部24bでは、実線で示すように、表側に配置される(勿論、いずれかの面に、纏めて配置してもよい)。また、線状の吸湿発熱材31を断続的ではなく、一本の線状に、つまり連続させて配置するようにしてもよい。
【0021】
この吸湿発熱材31を構成する繊維としては、例えば綿、ナイロン(ポリアミド樹脂)の約7倍という高い吸湿性を備え、環境に応じて、吸湿および放湿を繰り返し、しかも吸湿時には、吸着熱を発生するという性質を有するアクリレート系繊維が用いられる。例えば、吸湿率は40%程度(25℃,相対湿度65%時)で、吸湿発熱量は、1400J/g程度(25℃,相対湿度80%時)である。
【0022】
そして、上記吸湿発熱材31を布製のブラシ材24に取り付ける方法としては、一枚の布の一方の表面(例えば、裏面)に当該吸湿発熱材31を配置した後、この吸湿発熱材31よりも、少なくとも、一回り大きい布(ブラシ材と同一の布でもよく、または異なる材質の布であってもよい)でもって、当該吸湿発熱材31を覆い挟み込むように、縫い付けてもまたは接着剤などで貼り付けてもよい。勿論、二枚の布の間に吸湿発熱材31を配置するサンドイッチ形式でもよい。この場合、吸湿発熱材31の配置面については、表裏の区別をする必要がなくなる。
【0023】
したがって、上記構成に係る洗車用ブラシにより、通常の洗車が行われて洗車が終了すると、洗車機本体は所定の退避位置に戻り停止される。
ところで、洗車作業の終了後には、当然、ブラシ材24には、水分がかなり含まれており、ブラシ材24に配置されている吸湿発熱材31がこの水分を吸うことにより発熱する。したがって、外気の温度が零下であっても、その発熱により、ブラシ材24が凍りつくというような事態が防止される。
【0024】
すなわち、従来のように、洗車作業の休止中に、保温措置、例えば洗車機の前後を保温シャッターなどで覆う必要がないとともに、保温ランプなどを作動させる必要もなく、また解凍作業なども必要としないので、煩わしい作業を不要にし得るとともに、洗車機の製造コストの低減化を図ることができる。
【0025】
ところで、上記実施の形態においては、吸湿発熱材を、扇子状に折り畳んだ、山部または谷部にくるように配置したが、山部と谷部との間の中間平面部に配置してもよく、またはシート状部材の平面上に、その折り目と平行に、所定間隔おきでもって線状に吸湿発熱材を配置し、そしてこのシート状部材を所定幅でもって折り畳むようにしてもよい(この場合、山部または谷部に吸湿発熱材が位置するとは限らない)。さらに、線状の吸湿発熱材を断続的に配置したが、図6に示すように、一本の線状の吸湿発熱材31を、シート状部材Sの表側から裏側に通した後、裏側から表側に通すようにして、つまり吸湿発熱材31をシート状部材Sそのものに縫い付けるように配置してもよい。
【0026】
また、上記実施の形態においては、ブラシ材の材料として、通常の布(所謂、天然繊維を編んだもの)を用いたが、例えばナイロンなどの合成繊維を編んだものを用いてもよい。
【0027】
また、上記実施の形態においては、発熱材として吸湿発熱材を用いたが、例えば太陽光(所謂、日光)または赤外線などを吸収し、そして遠赤外線などの熱として発熱し得る材料を用いてもよい。この場合、吸湿発熱材は、太陽光がよく当たる位置、例えば山部に配置される。このような材料を用いた場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0028】
また、上記実施の形態においては、シート状部材をジグザグ状に折り畳んだものを、その中間部をさらに折ることにより扇子状に形成したが、例えばシート状部材をジグザグ状に折り畳んだものを、その中間部を折ることなく、そのまま用いてもよい。すなわち、ジグザグ状に折り畳んだシート状部材の一方の縁部(内周部)をリング部材側に固定するとともに、他方の縁部(外周部)を広げるようにしたものでもよい。すなわち、扇子の骨部がなく、紙でできた扇面部に相当するものをリング部材の周囲に配置するようにしてもよい。
【0029】
さらに、上記実施の形態においては、ブラシ材として、シート状部材を折り畳んだものとして説明したが、このような形状に限定されるものではなく、例えば折り畳まないもの、例えば支持軸体の軸心に直交する平面内に配置される平面状のもの、つまり環状シート部材にでも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗車用ブラシを用いた洗車機の概略構造を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る洗車用ブラシの斜視図である。
【図3】同洗車用ブラシの分割ブラシを示す斜視図である。
【図4】同分割ブラシの要部斜視図である。
【図5】同分割ブラシを構成するシート状部材を示す平面図である。
【図6】同分割ブラシを構成するシート状部材の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 フレーム本体
11 洗車用ブラシ
12 支持軸体
13 ブラシ
13′ 分割ブラシ
21 リング部材
23 保持溝
24 ブラシ材
24a 山部
24a 谷部
24a 中間平面部
31 吸湿発熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車機に設けられる洗車用ブラシであって、
ブラシ材として、天然繊維または合成繊維により形成されたシート状部材を用いるとともに、このシート状部材に発熱材を配置したことを特徴とする洗車機における洗車用ブラシ。
【請求項2】
発熱材をシート状部材に、縫い付けて若しくは貼り付けて、またはサンドイッチ形式にて保持させたことを特徴とする請求項1に記載の洗車機における洗車用ブラシ。
【請求項3】
シート状部材を扇子状に折り畳んだことを特徴とする請求項1または2に記載の洗車機における洗車用ブラシ。
【請求項4】
発熱材を線状に且つ所定間隔おきに配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗車機における洗車用ブラシ。
【請求項5】
発熱材を、シート状部材の、少なくとも、山部または谷部に沿って線状に配置したことを特徴とする請求項3に記載の洗車機における洗車用ブラシ。
【請求項6】
発熱材として、太陽光または赤外線を吸収し遠赤外線などの熱として発熱する材料を用いたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の洗車機における洗車用ブラシ。
【請求項7】
発熱材として、水分を吸収して発熱する吸湿発熱材を用いたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の洗車機における洗車用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−279785(P2008−279785A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122919(P2007−122919)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】