説明

洗車機及びその騒音制御方法

【課題】 ブロワによる乾燥効果を確保しながら、ブロワによる騒音を低減すること。
【解決手段】 車両1に乾燥用空気を吹付けるブロワ30を備えてなる洗車機10の騒音制御方法において、洗車機10の周辺に騒音規制点Pと、当該騒音規制点Pにおける騒音目標値Aを定め、洗車機本体12が騒音規制点Pから離隔した走行距離Lxと、洗車機本体12が当該走行距離Lxに位置するときに騒音規制点Pの騒音が騒音目標値Aを実現する、ブロワ30を駆動するモータ30Aの回転数Nxとの関係に基づくマップ制御により、洗車機本体12の走行距離Lxに応じて、上記モータ30Aの回転数Nxを制御するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗車機及びその騒音制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗車機は、洗車機本体を車両に対して移動させながら、回転ブラシにより車両の表面をブラッシング洗浄し、ブラッシング洗浄された車両にブロワにより乾燥用空気を吹付け、車両の表面に付着した水滴を吹飛ばしてこれを乾燥する。
【0003】
特許文献1に記載の洗車機では、ブロワが発する騒音対策として、夜間等の所定の時間帯で、ブロワを駆動するモータの回転数を低下させることとしている。
【特許文献1】特開平7-32983
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の洗車機では、所定の時間帯におけるモータの回転数を、洗車機本体が車両に対するいずれの走行位置にあっても、低下させる。このため、ブロワによる乾燥効果が全乾燥工程で低下する。
【0005】
本発明の課題は、ブロワによる乾燥効果を確保しながら、ブロワによる騒音を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車両に乾燥用空気を吹付けるブロワを備えてなる洗車機において、ブロワを駆動するモータの回転数を制御する制御手段を有し、制御手段は、洗車機本体が洗車機の周辺に定めた騒音規制点から離隔した走行距離と、洗車機本体が当該走行距離に位置するときに騒音規制点の騒音が騒音目標値を実現する上記モータの回転数との関係に基づくマップ制御により、洗車機本体の走行距離に応じて、上記モータの回転数を制御するようにしたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記洗車機本体が走行距離検出器を備え、制御手段は走行距離検出器が検出した洗車機本体の走行距離に応じて、前記モータの回転数を制御するようにしたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記制御手段が前記モータのインバータを周波数制御するようにしたものである。
【0009】
請求項4の発明は、車両に乾燥用空気を吹付けるブロワを備えてなる洗車機の騒音制御方法において、洗車機の周辺に騒音規制点と、当該騒音規制点における騒音目標値を定め、洗車機本体が騒音規制点から離隔した走行距離と、洗車機本体が当該走行距離に位置するときに騒音規制点の騒音が騒音目標値を実現する、ブロワを駆動するモータの回転数との関係に基づくマップ制御により、洗車機本体の走行距離に応じて、上記モータの回転数を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1、4)
(a)洗車機について予め定めた洗車機本体の走行距離とブロワを駆動するモータの回転数とのマップデータを用いることにより、洗車機本体が各走行位置のそれぞれにあるときに、騒音規制点の騒音を騒音目標値に規制しながら、ブロワを駆動するモータの回転数を最適制御する。従って、ブロワによる乾燥効果を確保しながら、ブロワによる騒音を低減することができる。
【0011】
(請求項2)
(b)洗車機本体が備える走行距離検出器により、洗車機本体の走行距離を高精度に検出できる。
【0012】
(請求項3)
(c)ブロワを駆動するモータのインバータを制御することにより、モータの回転数を高精度に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は洗車機を示す模式図、図2は洗車機本体の走行位置の変化を示す模式図、図3は洗車機の騒音制御回路を示すブロック図、図4は洗車機本体の走行距離とブロワの回転数の関係を示す模式図である。
【実施例】
【0014】
洗車機10は、図1に示す如く、洗車場に設けた左右のレール11上を往復走行することにて、両レール11の間の床面上に停車させた車両1に沿って移動する門型フレーム状の洗車機本体12を有し、この洗車機本体12にトップブラシ21、サイドブラシ22、トップノズル31、サイドノズル32を備える。
【0015】
トップブラシ21とサイドブラシ22は、車両をブラッシング処理する回転ブラシ20を構成し、それらの回転軸の周囲にブラシを植毛して構成される。洗車機10は、清水供給管やワックス供給管等の配管類を洗車機本体12に備え、清水やワックスの供給下で、トップブラシ21とサイドブラシ22を待機位置から車両1の側に移動し、トップブラシ21の回転により車両1の上面を、サイドブラシ22の回転により車両1の側面をブラッシング洗浄する。
【0016】
トップノズル31とサイドノズル32は、ブロワ30に接続される。ブロワ30は、モータ30Aにより駆動され、トップノズル31とサイドノズル32に乾燥用空気を圧送する。トップノズル31とサイドノズル32は待機位置から車両1の側に移動し、それらの吹出し口を車両1の表面に対する適宜の角度にチルトして傾け、トップノズル31が吹出す乾燥用空気を車両1の上面に吹付けてこれを乾燥し、サイドノズル32が吹出す乾燥用空気を車両1の側面に吹付けてこれを乾燥する。
【0017】
洗車機10は、走行距離検出器41、車形検出器42、制御手段50を有する。走行距離検出器41は、洗車機本体12の走行車輪等に備えられ、洗車機本体12の走行距離を検出する。車形検出器42は、例えば、洗車機10の往復方向の前端寄りで、洗車エリアを挟む洗車機本体12の左右両側に投光センサ群と受光センサ群を対向設置し、投光センサ群の鉛直方向に沿う検出ライン上に縦列配置させた各投光センサからの投光が車両1に遮られるか否かを、受光センサ群の鉛直方向に沿う検出ライン上に縦列配置させた各受光センサで検知することにより、検出ライン上での車体の有無を検出し、洗車機本体12の各走行位置における、この検出結果を車形データとしてメモリに格納する。
【0018】
制御手段50は、走行距離検出器41が検出した洗車機本体12の各走行位置における車形データに基づいて、トップブラシ21とサイドブラシ22を制御してブラッシング洗浄し、ブロワ30とトップノズル31とサイドノズル32を制御して乾燥処理し、車両1の洗車を行なう。
【0019】
しかるに、洗車機10は、ブロワ30を駆動するモータ30Aの回転数(回転速度)を制御し、ブロワ30による乾燥効果を確保しながら、ブロワ30が周辺民家等に及ぼす騒音を低減するため、以下の構成を具備する。
【0020】
制御手段50は、図2に示す如く、洗車機10の周辺に騒音規制点Pと、当該騒音規制点Pにおける騒音目標値Aを定める。洗車機10は、左右のレール11に沿って洗車機本体12を待機位置(走行起点)から往復走行させて洗車するとき、洗車機本体12を騒音規制点Pに対して離隔〜接近させるものになる。尚、図2において、101は民家、102は洗車場と民家101との境界に設置された壁を示す。
【0021】
制御手段50は、洗車機10の洗車中に、左右のレール11上を往復走行する洗車機本体12が騒音規制点Pから離隔した走行距離Lxと、洗車機本体12が当該走行距離Lxに位置するときに騒音規制点Pで測定される騒音が騒音目標値Aを実現するモータ30Aの回転数Nxとの関係(マップデータ)に基づくマップ制御により、走行距離検出器41が検出する洗車機本体12の走行距離Lxに応じて、モータ30Aの回転数を制御する。
【0022】
制御手段50は、走行距離検出器41の検出結果を得て、図3に示す如く、ブロワ30を駆動するモータ30Aのインバータ30Bを周波数制御する。
【0023】
このとき、制御手段50のメモリに格納されるマップデータは、洗車機10が現実に設置された洗車場及びその周辺において実測される等により作成され、洗車機本体12が騒音規制点Pから離隔した走行距離Lxに位置するときに、騒音規制点Pで測定される騒音が騒音目標値Aを実現するモータ30Aの回転数の最大値を採用するものとされる。これにより、騒音規制点Pにおいて騒音目標値Aを実現しながら、ブロワ30により可及的に最大の乾燥効果を確保可能とする。
【0024】
表1は、制御手段50が用いるマップデータの一例を示すものである。騒音規制点Pにおける騒音目標値Aは60dBとした。このマップデータを図示すれば、図4の如くになる。
【0025】
【表1】

【0026】
制御手段50により、洗車機本体12の各走行距離Lxにおいて、表1のマップデータが定める回転数Nxでモータ30Aのインバータ30Bをマップ制御したとき、騒音規制点Pで測定された騒音Bxは表1に付記した通りである。ブロワ30を駆動するモータ30Aの回転数は、洗車機本体12が騒音規制点Pから離隔するに従って、増速制御されて乾燥効果を高められる。洗車機本体12が騒音規制点Pに対するいずれの走行位置にあるときにも、騒音規制点Pの騒音Bxは騒音目標値A以下に規制される。
【0027】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)洗車機10について予め定めた洗車機本体12の走行距離Lxとブロワ30を駆動するモータ30Aの回転数Nxとのマップデータを用いることにより、洗車機本体12が各走行位置のそれぞれにあるときに、騒音規制点Pの騒音を騒音目標値Aに規制しながら、ブロワ30を駆動するモータ30Aの回転数Nxを最適制御する。従って、ブロワ30による乾燥効果を確保しながら、ブロワ30による騒音を低減することができる。
【0028】
(b)洗車機本体12が備える走行距離検出器41により、洗車機本体12の走行距離Lxを高精度に検出できる。
【0029】
(c)ブロワ30を駆動するモータ30Aのインバータ30Bを制御することにより、モータ30Aの回転数Nxを高精度に制御できる。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は洗車機を示す模式図である。
【図2】図2は洗車機本体の走行位置の変化を示す模式図である。
【図3】図3は洗車機の騒音制御回路を示すブロック図である。
【図4】図4は洗車機本体の走行距離とブロワの回転数の関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
10 洗車機
12 洗車機本体
30 ブロワ
30A モータ
30B インバータ
41 走行距離検出器
50 制御手段
A 騒音目標値
P 騒音規制点
Lx 走行距離
Nx 回転数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乾燥用空気を吹付けるブロワを備えてなる洗車機において、
ブロワを駆動するモータの回転数を制御する制御手段を有し、
制御手段は、
洗車機本体が洗車機の周辺に定めた騒音規制点から離隔した走行距離と、洗車機本体が当該走行距離に位置するときに騒音規制点の騒音が騒音目標値を実現する上記モータの回転数との関係に基づくマップ制御により、
洗車機本体の走行距離に応じて、上記モータの回転数を制御することを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記洗車機本体が走行距離検出器を備え、制御手段は走行距離検出器が検出した洗車機本体の走行距離に応じて、前記モータの回転数を制御する請求項1に記載の洗車機。
【請求項3】
前記制御手段が前記モータのインバータを周波数制御する請求項1又は2に記載の洗車機。
【請求項4】
車両に乾燥用空気を吹付けるブロワを備えてなる洗車機の騒音制御方法において、
洗車機の周辺に騒音規制点と、当該騒音規制点における騒音目標値を定め、
洗車機本体が騒音規制点から離隔した走行距離と、洗車機本体が当該走行距離に位置するときに騒音規制点の騒音が騒音目標値を実現する、ブロワを駆動するモータの回転数との関係に基づくマップ制御により、
洗車機本体の走行距離に応じて、上記モータの回転数を制御することを特徴とする洗車機の騒音制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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