説明

洗車機用洗浄ブラシのブラシ片及び洗車機用洗浄ブラシ及び洗車機

【課題】ブラシ片が軸体に巻き付き、作用半径が小さくなることが無く、長期間に亘り、洗い残しの発生が無い高い洗浄性能が発揮されると共に、静音性能を有する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、及びそのブラシ片を配した洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供する。
【解決手段】自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片1において、前記ブラシ片1は布帛又は/及び擬革を有する洗浄部材2及び不織布11からなる補強部材3を有すると共に、前記補強部材3は前記洗浄部材2により挟まれて形成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、及びそのブラシ片を配した洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗浄ブラシのブラシ片、そのブラシ片を配した洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機に関しては、使用目的に応じて、さまざまな改良がなされ、例えば、回転体にブラシを取り付けた洗車用ブラシにおいて、前記ブラシが、見掛け密度が0.2〜1g/cmで、熱圧着面積が4〜45%で部分熱圧着され、かつ撥水度が50以上である合成長繊維不織布からなることを特徴とする洗車用ブラシが、特許第3191534号に開示されてある。
【0003】
また、洗浄部材と取付部材で構成され、取付部材が門型洗車機の回転筒に取り付けられる布ブラシにおいて、前記洗浄部材は、不織布で作られた細長袋と合成樹脂で作られた補強シートで構成され、補強シートは細長袋内に先端部を没して配置され、前記取付部には複数の洗浄部材が取り付けられていることを特徴とした門型洗車機の回転筒に取り付けられる布ブラシが、特許第3525754号に開示されてある。
【0004】
また、回転体の外周に多数のブラシ片を固定した洗車用ブラシにおいて、前記ブラシ片が、回転体に固定される取付基部から先端部まで延在する不織布片と、不織布片の取付基部から中間部に渡る裏面に重ねられる発泡合成樹脂片とを有してなる洗車用ブラシが、特開2006−62483号公報に開示されてある。
【0005】
【特許文献1】特許第3191534号
【特許文献2】特許第3525754号
【特許文献3】特開2006−62483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、そのブラシ片を配した洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機は、例えば、上記の如くの特徴を有する技術が開示されてあるが、特許第3191534号に開示されてある技術においては、洗車用ブラシは、合成長繊維不織布からなる為、洗車中に合成長繊維不織布からなるブラシが洗浄水を含むと、ブラシの重量が重くなると共に、ブラシの毛腰が失われ、ブラシは回転体に巻き付きながら回転する。その為、回転体の回転中心から被洗浄面に当接するブラシまでの距離を表わすブラシの作用半径が小さくなり、ブラシが被洗浄面に当接しない部分が生じるので、洗い残しが発生するという課題を有していた。
【0007】
また、特許第3525754号に開示されてある技術においては、合成樹脂で作られた補強シートが、不織布で作られた細長袋内に先端部を没して洗浄部材が構成されているので、洗浄部材は補強シートにより毛腰を維持しながら被洗浄面に当接することができる。しかしながら、補強シートは、合成樹脂からなる為、極めて少ない外力にて短期間であれば弾性変形することはできるが、洗浄部材が被洗浄面への当接を繰り返すと、補強シートに割れ、折れが発生し、補強シートは洗浄部材に毛腰を付与することができなくなる。その為、布ブラシの毛腰が失われ、作用半径が小さくなり、布ブラシが被洗浄面に当接しない部分が生じるので、長期間に亘り、布ブラシは、洗い残しの発生が無い優れた洗浄性能を発揮することが難しいという課題を有していた。
【0008】
また、特開2006−62483号公報に開示されてある技術においては、発泡合成樹脂片が不織布片に毛腰を付与しながら、ブラシ片は被洗浄面に当接する。また、発泡合成樹脂片は、弾性変形することが可能である為、ブラシ片が被洗浄面への当接を繰り返しても、割れ、折れが発生することが無い。しかしながら、発泡合成樹脂片は、不織布片の裏面に重ねられているのみなので、洗車用ブラシの回転中に、発泡合成樹脂片と不織布片が一体化して被洗浄面に当接することは難しく、バタツキ音が発生し、ブラシ片の被洗浄面にたいする当接音が増大するという課題を有していた。さらに、不織布片から外れた発泡合成樹脂片が被洗浄面に当接した場合には、洗浄性能が劣化するという課題も有していた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ブラシ片が軸体に巻き付き、作用半径が小さくなることが無く、長期間に亘り、洗い残しの発生が無い高い洗浄性能が発揮されると共に、静音性能を有する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、及びそのブラシ片を配した洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決する為に、本発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記ブラシ片は布帛又は/及び擬革を有する洗浄部材及び不織布からなる補強部材を有すると共に、前記補強部材は前記洗浄部材により挟まれて形成されてあるもので、補強部材は不織布からなる為、合成樹脂シートの如く、割れ、折れが発生するこが無い。また、補強部材は洗浄部材に挟まれてある為、洗浄部材に強い毛腰を付与すると共に、洗浄部材の作用半径を維持しながら被洗浄面に当接するので、長期間に亘り、洗い残しの発生を抑え、高い洗浄性能を発揮することができる。さらに、補強部材は不織布からなる為、補強部材が被洗浄面に当接した場合においても、高い洗浄性能を維持できる。
【0011】
また、ブラシ片は、補強部材が洗浄部材に挟まれて形成されているので、洗浄部材と補強部材が一体化して、被洗浄面に当接する為、バタツキ音の発生が無く、優れた静音性能が発揮される。
【0012】
また、本発明の洗車機用洗浄ブラシは、軸体及び請求項1から2のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片を有し、前記軸体に前記ブラシ片が形成されてあるもので、ブラシ片は、補強部材が洗浄部材に挟まれて一体化しながら回転して被洗浄面に当接する。その為、ブラシ片が軸体に巻き付くことが無く、洗浄部材の作用半径を維持しながら被洗浄面に当接するので、洗い残しの無い、高い洗浄性能が発揮されると共に、優れた静音性能を有する。
【0013】
また、本発明の洗車機は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項3に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載したもので、洗い残しの無い高い洗浄性能、及び静音性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能、及び静音性能が発揮される。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片は、布帛又は/及び擬革を有する洗浄部材及び不織布からなる補強部材を有すると共に、補強部材が洗浄部材に挟まれて形成されている為、補強部材は洗浄部材に強い毛腰を付与すると共に、ブラシ片は洗浄部材の作用半径を維持しながら被洗浄面に当接することができる。その為、本発明のブラシ片は、長期間に亘り、高い洗浄性能、及び静音性能が発揮される非常に優れたものである。
【0015】
請求項2の発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片は、特に、請求項1の発明のブラシ片において、補強部材が熱可塑性エラストマー繊維からなる不織布にて形成されているので、ブラシ片は熱可塑性エラストマー特有の効果である弾性変形をすることが可能である為、より長期間に亘り、高い洗浄性能、及び静音性能を有することができる。
【0016】
請求項3の発明の洗車機用洗浄ブラシは、請求項1から2のいずれかの発明における洗車機用洗浄ブラシのブラシ片を有している為、ブラシ片が軸体に巻き付くこと無く、洗浄部材の作用半径を維持しながら被洗浄面に当接するので、洗い残しの無い、高い洗浄性能を有すると共に、優れた静音性能を発揮することができる。
【0017】
請求項4の発明の洗車機は、請求項3の発明における洗車機用洗浄ブラシが搭載されている為、優れた洗浄性能、及び静音性能を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記ブラシ片は布帛又は/及び擬革を有する洗浄部材及び不織布からなる補強部材を有すると共に、前記補強部材は前記洗浄部材により挟まれて形成されてあるもので、補強部材は不織布からなる為、合成樹脂シートの如く、割れ、折れが発生するこが無い。また、補強部材は洗浄部材に挟まれてある為、洗浄部材に強い毛腰を付与すると共に、洗浄部材の作用半径を維持しながら被洗浄面に当接するので、長期間に亘り、洗い残しの発生を抑え、高い洗浄性能を発揮することができる。さらに、補強部材は不織布からなる為、補強部材が被洗浄面に当接した場合においても、高い洗浄性能を維持できる。
【0019】
また、ブラシ片は、補強部材が洗浄部材に挟まれて形成されているので、洗浄部材と補強部材が一体化して、被洗浄面に当接する為、バタツキ音の発生が無く、優れた静音性能を発揮することができる。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記補強部材は熱可塑性エラストマー繊維からなる不織布にて形成されてあるもので、補強部材は弾力性を有している為、ブラシ片は弾性変形することが可能である。その為、ブラシ片は毛癖が付き難く、洗浄部材は破れ、切れ、ほつれ等の発生を防ぐことができるので、ブラシ片は、より長期間に亘り、高い洗浄性能、及び静音性能が発揮され、優れた耐久性を有することができる。
【0021】
なお、熱可塑性エラストマーは、分子中に弾力性を有するゴム成分であるソフトセグメント(軟質相)と、塑性変形を防止する為の分子拘束成分、即ち樹脂成分であるハードセグメント(硬質相)の両成分を有しており、ハードセグメントである樹脂成分を重合する際に、ソフトセグメントであるゴム成分も同時に重合することにより形成され、合成樹脂と合成ゴムの双方の機能を併せ持つ。前記の如くの熱可塑性エラストマーを溶融紡糸した熱可塑性エラストマー繊維は、ゴム成分であるソフトセグメントにより弾力性を有している為、前記熱可塑性エラストマー繊維からなる不織布にて形成された補強部材も弾力性を有することができるのである。
【0022】
第3の発明は、軸体及び第1から第2の発明のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片を有し、前記軸体に前記ブラシ片が形成されてある洗車機用洗浄ブラシとしたもので、ブラシ片は、補強部材が洗浄部材に挟まれて一体化しながら回転して被洗浄面に当接する。その為、ブラシ片が軸体に巻き付くことが無く、洗浄部材の作用半径を維持しながら被洗浄面に当接するので、洗車機用洗浄ブラシは、洗い残しの無い、高い洗浄性能が発揮されると共に、優れた静音性能を有することができる。
【0023】
第4の発明は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、第3の発明の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機としたもので、洗い残しの無い高い洗浄性能、及び静音性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能、及び静音性能を発揮することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、図1(b)は、図1(a)の断面図、図2(a)は、補強部材の平面図、図2(b)は、洗浄部材の展開平面図、図2(c)は、本発明の第1の実施例におけるブラシ片の平面図、図2(d)は、図2(c)のA−A断面図である。
【0026】
図1(a)、及び図1(b)において、洗車機用洗浄ブラシ7は、ブラシ片1が、アルミニウム等の金属材料からなる略円筒形状の軸体8の外周等分4箇所に設けられた溝部9に概V字断面を有するように挿入され、リベット10にて固定して形成されてある。ブラシ片1は、補強部材3が洗浄部材2に挟まれ、洗浄部材2の端部は縫製により縫い合わされた接合部4が形成されてあると共に、洗浄側に段差状に設けられたスリット5により細分割された複数の分割片6を有するよう形成されている。なお、軸体8の外周面に設けられた溝部9は、等分4箇所以外にも、6箇所、8箇所、12箇所等、使用目的に応じて、適時、設定できる。
【0027】
次に、図1、及び図2を用いて、洗車機用洗浄ブラシ7の製造手順について説明する。
【0028】
最初に、図2(a)の如く、平板状の不織布11からなる補強部材3を、所望の寸法に切断する。次に、図2(b)の如く、略長方形の平板状の布帛又は擬革からなる洗浄部材2を用意し、トムソン型等を用いて、端部にスリット5を設けて複数の分割片6を形成すると共に、洗浄部材2の短手方向の略中央部に4箇所の取付孔14を形成する。次いで、補強部材3を、洗浄部材2の上に重ねた後、洗浄部材2の長手方向の略中央部にて補強部材3を覆うようにして洗浄部材2を折り合わせ、図2(c)、及び図2(d)の如く、折り合わされた洗浄部材2の端部を、補強部材3の長手方向の長さと略同一の長さにて縫製により接合部4を形成して、ブラシ片1を形成する。ブラシ片1は、図2(d)の如く、補強部材3が、洗浄部材2の洗浄側15の反対側16に挟まれて形成されてある。次に、ブラシ片1を、長手方向の略中央部にて二つ折りして、概V字断面を有するよう形成する。概V字断面を有するよう形成されたブラシ片1は、軸体8の溝部9に挿入され、取付孔14にリベット10が挿入されると共に、リベッター等でリベット10を打ち付け、軸体8にブラシ片1が固定されて洗車機用洗浄ブラシ7が製作される。
【0029】
次に、図2を用いて、ブラシ片1について詳述する。
【0030】
ブラシ片1を構成する補強部材3は、図2(a)の如く、熱可塑性エラストマーから溶融紡糸された繊維12を熱圧着した平板状の不織布11よりなり、繊維12の間には空隙部13が形成されてある。
【0031】
補強部材3は、次の手順にて製造される。最初に、熱溶融した熱可塑性エラストマーを連続的に紡糸して繊維12を形成し、次に、繊維12を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維12を結合して不織布11を形成する。前記の如くの方法は、一般的にスパンボンド法と呼ばれている。なお、熱ロールを用いずに、加熱状態の複数の繊維12を互いに接触させ、水中に浸漬することにより冷却して、繊維12を結合して不織布11を形成することもできる。
【0032】
なお、繊維12は、長繊維にて形成されてあるが、例えば、ニードルパンチング、ケミカルバインダー接着等の方法を用いて、短繊維にて不織布11を形成することもできる。一般的に、長繊維とは糸長が50mmを超える繊維12のことであり、短繊維とは糸長が50mm以下の繊維のことである。
【0033】
前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等が単独使用、あるいは併用される。
【0034】
ポリスチレン樹脂とスチレンゴムからなるスチレン系熱可塑性エラストマーは優れた弾力性を有し、ポリエチレン樹脂とエチレン−プロピレンゴム、あるいはポリプロピレン樹脂とエチレン−プロピレンゴムからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーは軽量性を有し、ポリウレタン樹脂とウレタンゴムからなるウレタン系熱可塑性エラストマーは高い強度を有し、芳香族ポリエステルと非晶性ポリエステルとからなるポリエステル系熱可塑性エラストマーは高い耐熱性を有し、ナイロンとポリオールからなるポリアミド系熱可塑性エラストマーは優れた耐摩耗性を有し、1,2ポリブタジエンとブタジエンゴムからなる1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーは高い柔軟性を有し、塩化ビニル樹脂とビニルゴムからなる塩化ビニル系熱可塑性エラストマーは優れた弾力性を有し、フッ素樹脂とフッ素ゴムからなるフッ素系熱可塑性エラストマーは優れた防汚性を有している。
【0035】
また、合成樹脂を溶融紡糸した繊維12からなる不織布11を形成し、補強部材3として用いても構わない。前記合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等が単独使用、あるいは併用される。
【0036】
補強部材3は、ブラシ片1にたいして、長期間に亘り、強い毛腰を付与すると共に、洗車中にブラシ片1が洗浄水を含んでも重量の増加が極めて少なく、且つ軸体8に巻き付かないという観点から、厚みは0.5〜15mm程度、見掛け密度は0.05〜0.2g/cm未満にて設定される。厚みが0.5mm未満の場合、ブラシ片1に強い毛腰を付与することができず、15mmを超える場合、厚すぎて軸体8にブラシ片1を取り付ける作業が煩雑となる。見掛け密度が0.05g/cm未満の場合、繊維12の量が少なく、ブラシ片1が被洗浄面に当接を続けると、繊維12が切れやすく、耐久性が劣ることなになり、0.2g/cm以上の場合、繊維12の量が多く、洗車中に補強部材3は洗浄水を含みやすくなり、ブラシ片1の重量が増加して、ブラシ片1が軸体8に巻き付きやすくなる。
【0037】
図2(b)において、洗浄部材2は、平板状の布帛又は擬革からなる。一般的に、布帛とは、織布、不織布、編物のことであり、擬革とは、天然皮革に類似した人造の甲革類似品の総称で、いわゆる人工皮革、合成皮革、人造皮革、レザークロス等のことである。洗浄部材2に用いられる布帛又は/及び擬革の種類の選択については、洗車機用洗浄ブラシ7の使用環境、コスト等の各種条件により、適宜、決定されるものである。
【0038】
洗浄部材2は、段差状に設けられたスリット5により細分割された複数の分割片6が形成されてある。スリット5の長さは、20〜200mm程度、分割片6の幅は、1〜10mm程度に設定される。スリット5の長さが20mm未満の場合、被洗浄面の細かな凹凸部分に分割片6が当接しにくく、洗浄性能が劣ることになり、200mmを超える場合、分割片6が車体のアンテナやワイパー等の装備品に絡み付きやすくなり、装備品の破損につながる。また、分割片6の幅が1mm未満の場合、分割片6が切れやすく、耐久性が劣り、10mmを超える場合、分割片6は被洗浄面の細かな凹凸部分に付着している汚れを除去しにくく、洗浄性能が劣ることになる。
【0039】
なお、本実施例においては、スリット5を、洗浄部材2の側縁部にたいして平行となるように形成したが、洗浄部材2の側縁部にたいして傾斜角度を有するようスリット5を形成しても構わない。
【0040】
図2(c)、及び図2(d)において、ブラシ片1は、上記の如くの構成となっている補強部材3が、洗浄部材2の洗浄側15の反対側16に挟まれると共に、洗浄部材2の端部が、補強部材3の長手方向の長さと略同一の長さにて縫製による接合部14を形成するよう縫い合わされている。補強部材3は、洗車中に被洗浄面に当接しないよう洗浄部材2より小にて設定されるのが望ましい。また、接合部4の形成方法は、前記縫製以外にも、ネジ止め、リベット止め等の物理的接合方法、接着、溶着、熱圧着等の化学的接合方法を用いても構わない。
【0041】
次に、本発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片の洗浄性能について試験した。下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0042】
断面が長方形である幅40mm×厚み7mm×長さ160mmで、ポリエステル系エラストマー繊維からなり、見掛け密度0.1g/cmの不織布からなる補強部材を4枚切り出した。次に、断面が長方形である幅110mm×厚み0.5mm×長さ226mmで、ポリエステル繊維をニット編した編物からなる洗浄部材を4枚切り出した。次いで、補強部材を洗浄部材に乗せ、補強部材が洗浄部材に挟まれるよう洗浄部材の短手方向の略中央部にて折り合わせると共に、折り合わされた洗浄部材の端部を160mmに亘って縫製により接合し、実施例の帯状試験片を4枚用意した。なお、洗浄部材の洗浄側端部に、長さ30mmのスリットを9本形成すると共に、幅5mmの分割片を10本形成した。
【0043】
また、比較例として、上記実施例の洗浄部材と同一仕様で、補強部材が形成されていない帯状試験片を4枚用意した。
【0044】
そして、直径が114mmで且つ長さが360mmの円筒状軸体の外周面における長さ方向の中央部に、各試験片をその長さ方向の中央部分から二つ折りした上で、幅方向が軸体の長さ方向に合致し且つ試験片の屈曲部外面が軸体の外周面に当接した状態にして、各試験片を4枚ずつ軸体の周方向に等間隔毎に取り付けた。
【0045】
次に、上記軸体を240rpmの一定の回転速度で回転させる一方、一面に人工汚れを塗布した白色ソリッド塗装鋼板を用意し、前記回転速度で回転している軸体の外周面に取り付けた各試験片の先端が描く仮想円上から30mmだけ軸体の回転軸方向に近接した位置に前記白色ソリッド塗装鋼板を、その汚れ面が軸体に対向した状態に配設すると共に、6L毎分の散布量にて洗浄水を吹き付けながら1分間に亘って鋼板の汚れ面に試験片を順次、摺接させることによって鋼板の汚れを除去した。
【0046】
そして、洗浄性能として、鋼板の汚れ面における試験片によって汚れを除去した部分の明度を、日本電色工業株式会社製の色差計NR−1で測定して、下記基準により判断した。
○・・・明度の向上が+5以上
×・・・明度の向上が+5未満
【0047】
また、試験後の鋼板の洗い残しを目視観察して、下記基準により判断した。
○・・・洗い残しが無い
×・・・洗い残しが有る
【0048】
【表1】

【0049】
実施例の試験片においては、補強部材が洗浄部材に挟まれて形成されてある為、補強部材により強い毛腰が試験片に付与されると共に、軸体に試験片が巻き付くこと無く、作用半径を維持しながら鋼板に当接するので、洗い残しの発生が無く、高い洗浄性能を有するものであった。
【0050】
一方、比較例の試験片においては、補強部材が形成されていない為、試験片の毛腰が弱く、軸体に試験片が巻き付きながら回転するので、作用半径が小さくなり、試験片が鋼板に当接しない部分については洗い残しが発生し、洗浄性能については劣るものであった。
【0051】
上記のように構成されたブラシ片1、及び洗車機用洗浄ブラシ7の動作、作用は下記の通りである。
【0052】
ブラシ片1は、布帛又は擬革からなる洗浄部材2、及び不織布11からなる補強部材3を有すると共に、補強部材3は洗浄部材2により挟まれて形成されてある為、補強部材3は洗浄部材2に強い毛腰を付与すると共に、作用半径を維持しながら被洗浄面に当接する。また、補強部材3は不織布11にて形成されているので、合成樹脂シートの如く、折れや割れが発生することが無い。その為、ブラシ片1は、長期間に亘り、洗い残しの発生を抑え、高い洗浄性能を発揮することができる。
【0053】
また、ブラシ片1は、補強部材3が洗浄部材2に挟まれて形成されているので、洗浄部材2と補強部材3が一体化して、被洗浄面に当接する為、優れた静音性能を発揮することができる。
【0054】
また、補強部材3は熱可塑性エラストマーを溶融紡糸した繊維12からなる不織布11にて形成されてあるので、補強部材3は弾力性を有することができる。その為、補強部材3を挟んだ洗浄部材2は弾性変形することができる。また、洗浄部材2は破れ、切れ、ほつれ等の発生を防ぐことができる。従って、ブラシ片1は、毛癖が付き難く、優れた耐久性を有する。
【0055】
さらに、洗浄部材2は、スリット5により細分割された複数の分割片6を有しているので、分割片6が被洗浄面の細かな凹凸部分にも当接し、汚れを掻き取る為、洗浄性能が大幅に向上する。
【0056】
また、ブラシ片1は、補強部材3が洗浄部材2に挟まれて一体化しながら回転して被洗浄面に当接する。その為、洗車機用洗浄ブラシ7は、ブラシ片1が軸体8に巻き付くことが無く、洗浄部材2は作用半径を維持しながら被洗浄面に当接するので、洗い残しの無い、高い洗浄性能が発揮されると共に、優れた静音性能を有することができる。
【0057】
なお、本実施例では、洗浄部材2の材質として布帛又は擬革のみを使用しているが、布帛又は/及び擬革を有しているのであれば、布帛又は/及び擬革と他の材質、例えば、合成樹脂発泡体、フィルム状樹脂組成物、合成樹脂繊維、熱可塑性エラストマーシート等と、補強部材3を接合、重ね合わせ、併用等をして、ブラシ片1を形成しても構わない。
【0058】
また、洗車機用洗浄ブラシ7の構造に関しては、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、適時、設定することができる。
【0059】
(実施例2)
図3(a)は、洗浄部材を前面側から見た斜視図、図3(b)は、補強部材を前面側から見た斜視図、図3(c)は、本発明の第2の実施例におけるブラシ片を前面側から見た斜視図、図3(d)は、図3(c)のブラシ片を長手方向の略中央部にて折り合わせた場合の斜視図、図3(e)は、図3(c)の断面図である。
【0060】
図3(a)において、洗浄部材22は、平板状の布帛又は擬革が、2箇所の空間部25を有し、断面形状が概M字形となるよう折り合わせて形成されてある。長手方向の略中央部には、リベット(図示せず)にて軸体(図示せず)に固定される為に設けられた取付孔24が形成されている。なお、洗浄部材22は、概N字断面を有するよう形成してもよい。
【0061】
図3(b)において、補強部材23は、熱可塑性エラスマーを溶融紡糸した繊維32を熱圧着した平板状の不織布31であり、繊維32の間には空隙部33が形成されてある。
【0062】
図3(c)、及び図3(e)において、ブラシ片21は、概M字断面を有する洗浄部材22の一方の空間部25に、概四角形断面を有する補強部材23が挿入されると共に、洗浄部材22の洗浄側35の反対側36に、補強部材23が縫製による接合部34を介して洗浄部材22に縫い合わされ、洗浄部材22と補強部材23が一体化して形成されている。なお、接合部34の形成方法は、前記縫製以外にも、ネジ止め、リベット止め等の物理的接合方法、接着、溶着、熱圧着等の化学的接合方法を用いても構わない。
【0063】
そして、図3(d)の如く、洗浄部材22の一方の空間部25に挿入された補強部材23が、補強部材23が挿入されていない他方の空間部25の外方側となるように、ブラシ片21を長手方向の略中央部にて二つ折りし、取付孔24にリベット(図示せず)を挿入して軸体(図示せず)に固定することにより、洗車機用洗浄ブラシ(図示せず)が構成される。なお、洗浄部材の一方の空間部25に挿入された補強部材23が、補強部材23が挿入されていない他方の空間部25の内方側となるように、ブラシ片21を長手方向の略中央部にて二つ折りしても構わない。さらに、洗浄部材22の両方の空間部25に補強部材23を挿入して、接合部34を介して洗浄部材22と補強部材23を一体化し、ブラシ片21を長手方向の略中央部にて二つ折りした形態も採用できる。なお、使用目的に応じて、接合部34を形成すること無く、補強部材を空間部25に挿入した形態も採用できる。
【0064】
上記のように構成されたブラシ片21の動作、作用は下記の通りである。
【0065】
ブラシ片21は、洗浄部材22と補強部材23が接合部34を介して一体化している為、洗車中に洗浄部材22と補強部材23が離れて被洗浄面に当接することが無い。その為、補強部材23は、洗浄部材22にたいして常に強い毛腰を付与すると共に、洗浄部材22と補強部材23が一体化して被洗浄面に当接するので、ブラシ片21の洗浄性能、及び静音性能が飛躍的に向上する。
【0066】
(実施例3)
図4は、本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図である。
【0067】
図4において、洗車機41は、本発明の洗車機用洗浄ブラシ47が搭載されてあり、洗車機用洗浄ブラシ47は駆動源42により回転駆動される。ノズル43からは、被洗浄面にたいして、洗浄剤、及び洗浄水等が散布され、洗車機用洗浄ブラシ47により、被洗浄面に付着している汚れが除去され、洗浄後は洗車機41の乾燥手段である乾燥機44により被洗浄面が乾燥される。
【0068】
なお、洗車機用洗浄ブラシ47に装着されているブラシ片は、上記実施例におけるブラシ片1、21のいずれかと同一である。
【0069】
上記のように構成された洗車機41の動作、作用は下記の通りである。
【0070】
洗車機41は、洗い残しの無い高い洗浄性能、及び静音性能を有する洗車機用洗浄ブラシ47が搭載されてある為、駆動源42により洗車機用洗浄ブラシ47の回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能、及び静音性能が発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片は、主に、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に搭載する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片として使用する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(a)本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、(b)図1(a)の断面図
【図2】(a)補強部材の平面図、(b)洗浄部材の展開平面図、(c)本発明の第1の実施例におけるブラシ片の平面図、(d)図2(c)のA−A断面図
【図3】(a)洗浄部材を前面側から見た斜視図、(b)補強部材を前面側から見た斜視図、(c)本発明の第2の実施例におけるブラシ片を前面側から見た斜視図、(d)図3(c)のブラシ片を長手方向の略中央部にて折り合わせた場合の斜視図、(e)図3(c)の断面図
【図4】本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図
【符号の説明】
【0073】
1、21 ブラシ片
2、22 洗浄部材
3、23 補強部材
4、34 接合部
5 スリット
6 分割片
7、47 洗車機用洗浄ブラシ
8 軸体
9 溝部
10 リベット
11、31 不織布
12、32 繊維
13、33 空隙部
14、24 取付孔
15、35 洗浄側
16、36 反対側
25 空間部
41 洗車機
42 駆動源
43 ノズル
44 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記ブラシ片は布帛又は/及び擬革を有する洗浄部材及び不織布からなる補強部材を有すると共に、前記補強部材は前記洗浄部材により挟まれて形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシのブラシ片。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記補強部材は熱可塑性エラストマー繊維からなる不織布にて形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシのブラシ片。
【請求項3】
軸体及び請求項1から2のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片を有し、前記軸体に前記ブラシ片が形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項4】
駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項3記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−174125(P2008−174125A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10172(P2007−10172)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】