説明

洗車機用洗浄ブラシ及び洗車機

【課題】ブラシ片が被洗浄面上の洗浄水を堰き止めると共に、堰き止められた洗浄水を積極的に吸収し、被洗浄面に付着している汚れにたいして、界面張力を低下させ、汚れとの接触面積を大きくすることにより、被洗浄面に均一に密着して的確に汚れを除去し、高い洗浄性能を発揮する洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供する。
【解決手段】洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ片2と軸体3を有し、前記ブラシ片2は前記軸体3の外周部に形成されてあると共に、上部ブラシ部材4と下部ブラシ部材5を有し、前記上部ブラシ部材4は前記下部ブラシ部材5の被洗浄面側で且つ前記下部ブラシ部材5の端面16よりも前記軸体3側に接合されてあり、前記下部ブラシ部材5は前記上部ブラシ部材4の接合側端面17の近傍に通水手段が形成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機に関しては、使用目的に応じて、さまざまな改良がなされ、例えば、布帛の中心を貫通する形で回転軸が挿入された複数枚のブラシ用布帛が積層されてなる洗車用ブラシにおいて、該ブラシ用布帛が通水可能な貫通孔を複数個有することを特徴とする洗車用ブラシが、特開2004−123091号公報に開示されてある。
【0003】
また、回転体の外周に多数のブラシ片を固定した洗車用ブラシにおいて、前記ブラシ片が、回転体に固定される取付基部から中間部まで延在する発泡合成樹脂片と、発泡合成樹脂片の延在端に接合されて先端部まで延在する不織布片とを有してなることを特徴とする洗車用ブラシが、特開2006−62484号公報に開示されてある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−123091号公報
【特許文献2】特開2006−62484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機は、例えば、上記の如くの特徴を有する技術が開示されてあるが、洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機は、一般的に、洗車機に備えられたノズルから洗浄水、洗浄剤等が被洗浄面にたいして噴出される。そして、洗車機用洗浄ブラシが被洗浄面を洗浄する。その際、洗車機用洗浄ブラシのブラシ片が被洗浄面に当接すると共に、洗浄水を吸収し、被洗浄面に付着している汚れにたいして、界面張力を低下させ、汚れを除去する。界面張力とは、固体と液体が接している境界面において、接触面積を小さくする方向に働く張力のことをいう。従って、界面張力が低下するということは、固体と液体の接触面積が大きくなることであり、固体である汚れと、ブラシ片に吸収された液体である洗浄水との接触面積が大きくなる。その為、洗浄水を積極的に吸収するブラシ片は、汚れにたいする接触面積が大きくなり、被洗浄面に均一に密着することができるので、汚れを除去しやすくなり、洗浄性能が向上することになる。
【0006】
しかしながら、特開2004−123091号公報に開示されてある技術においては、ブラシ用布帛は通水可能な貫通孔を複数個有しているものの、洗車用ブラシのブラシ片は布帛のみで形成されており、被洗浄面上の洗浄水は貫通孔を通過する為、洗浄水を堰き止める機能は無く、貫通孔により、ブラシ用布帛が洗浄水を吸収する機能は無かった。また、貫通孔は洗車中にブラシ用布帛の表面に付着した洗浄水を、洗車用ブラシの回転中に、排水する手段として作用しており、ブラシ用布帛の外部に排出された洗浄水は洗浄に寄与することができない。その為、ブラシ用布帛は被洗浄面に付着している汚れにたいして界面張力を低下させることができず、被洗浄面に均一に密着することはできないので、洗い残しが発生し、洗浄性能を向上させることはできないという課題を有していた。
【0007】
また、特開2006−62484号公報に開示されてある技術においては、ブラシ片は洗浄側の不織布片と、回転体の取付基部側の発泡合成樹脂片が接合されて形成されてあるので、不織布片の接合側の端面において被洗浄面上の洗浄水を堰き止めることはできる。さらに、弾力性に優れた発泡合成樹脂片により毛腰を強く設定し、柔軟な不織布片を被洗浄面に当接させることもできる。しかしながら、ブラシ片は、不織布片の接合側の端面において堰き止めた洗浄水を吸収する為の手段を有していないので、堰き止められた洗浄水は、端面により被洗浄面上を移動してしまう為、ブラシ片は、堰き止められた洗浄水を吸水することはできず、洗浄性能を向上させることは難しいという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ブラシ片が被洗浄面上の洗浄水を堰き止めると共に、堰き止められた洗浄水を積極的に吸収し、被洗浄面に付着している汚れにたいして、界面張力を低下させ、汚れとの接触面積を大きくすることにより、被洗浄面に均一に密着して的確に汚れを除去し、高い洗浄性能を発揮する洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決する為に、本発明の洗車機用洗浄ブラシは、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片と軸体を有し、前記ブラシ片は前記軸体の外周部に形成されてあると共に、上部ブラシ部材と下部ブラシ部材を有し、前記上部ブラシ部材は前記下部ブラシ部材の被洗浄面側で且つ前記下部ブラシ部材の端面よりも前記軸体側に接合されてあり、前記下部ブラシ部材は前記上部ブラシ部材の接合側端面の近傍に通水手段が形成されてあるもので、ブラシ片が被洗浄面に当接すると、上部ブラシ部材の接合側の端面が、被洗浄面上の洗浄水を堰き止め、堰き止められた洗浄水は、下部ブラシ部材に形成された通水手段を介して、上部ブラシ部材の表面に運ばれることにより、上部ブラシ部材は、洗浄水を被洗浄面との当接面の裏面に、一時的に所定の時間、保持できる。保持された洗浄水は、洗車機用洗浄ブラシの回転に伴い、ブラシ片から流されて被洗浄面に移動する。そして、隣接するブラシ片が被洗浄面に当接すると、隣接するブラシ片を構成する上部ブラシ部材は、前のブラシ片から被洗浄面に流された洗浄水と接触するので、被洗浄面に付着している汚れにたいして、上部ブラシ部材と被洗浄面上との界面張力を低下させ、汚れとの接触面積が大きくなる。その為、雑巾、タオル、洗車スポンジ等で拭き取るようにして手洗い洗車をするが如く、ブラシ片は被洗浄面に均一に密着して的確に汚れを除去するので、高い洗浄性能が発揮される。
【0010】
また、本発明の洗車機は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から4のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載したもので、被洗浄面に付着している汚れを的確に除去する高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性能が発揮される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片が被洗浄面に当接すると、上部ブラシ部材の接合側の端面が、被洗浄面上の洗浄水を堰き止め、下部ブラシ部材に形成された通水手段を介して、洗浄水は上部ブラシ部材の被洗浄面との当接面の裏面に運ばれ、一時的に保持されると共に、洗車機用洗浄ブラシの回転に伴い、ブラシ片から流されて被洗浄面に移動する。そして、隣接するブラシ片が被洗浄面に当接すると、隣接するブラシ片を構成する上部ブラシ部材は、前のブラシ片から被洗浄面に流された洗浄水と接触するので、被洗浄面に付着している汚れにたいして、界面張力を低下させ、汚れとの接触面積が大きくなる。その為、雑巾、タオル、洗車スポンジ等で拭き取るようにして手洗い洗車をするが如く、ブラシ片は被洗浄面に均一に密着して的確に汚れを除去するので、高い洗浄性能を発揮することができる。
【0012】
また、本発明の洗車機は、被洗浄面に付着している汚れを的確に除去する高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片と軸体を有し、前記ブラシ片は前記軸体の外周部に形成されてあると共に、上部ブラシ部材と下部ブラシ部材を有し、前記上部ブラシ部材は前記下部ブラシ部材の被洗浄面側で且つ前記下部ブラシ部材の端面よりも前記軸体側に接合されてあり、前記下部ブラシ部材は前記上部ブラシ部材の接合側端面の近傍に通水手段が形成されてあるもので、ブラシ片が被洗浄面に当接すると、上部ブラシ部材の接合側の端面が、被洗浄面上の洗浄水を堰き止め、下部ブラシ部材に形成された通水手段を介して、上部ブラシ部材の表面に運ばれることにより、上部ブラシ部材は、洗浄水を被洗浄面との当接面の裏面に、一時的に所定の時間、保持できる。保持された洗浄水は、洗車機用洗浄ブラシの回転に伴い、ブラシ片から流されて被洗浄面に移動する。そして、隣接するブラシ片が被洗浄面に当接すると、隣接するブラシ片を構成する上部ブラシ部材は、前のブラシ片から被洗浄面に流された洗浄水と接触するので、被洗浄面に付着している汚れにたいして、界面張力を低下させ、汚れとの接触面積が大きくなる。その為、雑巾、タオル、洗車スポンジ等で拭き取るようにして手洗い洗車をするが如く、ブラシ片は被洗浄面に均一に密着して的確に汚れを除去するので、高い洗浄性能を発揮することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記通水手段として穴、メッシュ部、連続気泡、多数の細孔、穴スリットの少なくともいずれか一つが形成されてあるもので、穴、メッシュ部、連続気泡、多数の細孔、穴スリットを介して、ブラシ片は被洗浄面から積極的に洗浄水を吸収することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1から第2の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記上部ブラシ部材に穴、メッシュ部、連続気泡、多数の細孔、穴スリットの少なくともいずれか一つが形成されてあるもので、上部ブラシ部材は、下部ブラシ部材に形成された通水手段を介して、上部ブラシ部材の表面に運ばれた洗浄水を、穴、メッシュ部、連続気泡、多数の細孔、穴スリットを介して通過させた後、被洗浄面側の当接面に移動させる。その為、被洗浄面に付着している汚れにたいして、界面張力を容易に低下させることができるので、洗浄性能が大幅に向上する。
【0016】
第4の発明は、特に、第1から第3の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記上部ブラシ部材の被洗浄面側に凹凸部が形成されてあるもので、上部ブラシ部材は、被洗浄面に付着している汚れにたいして、界面張力を低下させながら均一に密着すると共に、被洗浄面側に形成された凹凸部が、被洗浄面に強固に付着している汚れも、凹凸部の有する角部により掻き取るように除去する。その為、洗浄性能が飛躍的に向上する。
【0017】
第5の発明は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、第1の発明から第4の発明のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機としたもので、被洗浄面に付着している汚れを的確に除去する高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性能を発揮することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、図1(b)は、図1(a)の断面図、図2は、本発明の洗車機用洗浄ブラシの洗車時の使用状態を示す部分断面図、図3(a)から(d)は、他の実施の形態におけるブラシ片を前面側から見た斜視図、図5は本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図である。
【0020】
図1(a)、及び図1(b)において、洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ片2が、アルミニウム等の金属材料からなる略円筒形状の軸体3の外周等分4箇所に設けられた突起状の溝部9に概V字断面を有するように挿入され、リベット10にて固定して形成されてある。一片のブラシ片2は、洗浄側近傍に位置する2枚の上部ブラシ部材4が、軸体3側に位置する1枚の下部ブラシ部材5の外側面15で且つ端面16よりも軸体3側にて、縫製により接合された接合部6を介して一体化されると共に、概V字断面を有するよう長手方向の略中央部にて折り合わされて形成されてある。また、上部ブラシ部材4の表面には裏面にまで貫通した多数の細孔8、下部ブラシ部材5には上部ブラシ部材4の接合側端面17の近傍に表面から裏面にまで貫通した複数の穴7が設けられている。なお、ブラシ片2は、概V字断面以外にも、概M字断面等を有するよう折り合わせても構わない。また、軸体3の外周面に設けられた溝部9は、等分4箇所以外にも、6箇所、8箇所、12箇所等、使用目的に応じて、適時、設定できる。
【0021】
洗車機用洗浄ブラシ1は、下記の手順にて製作される。
【0022】
最初に、ブラシ片2を次の手順にて製作する。一片のブラシ片2は、平板状の上部ブラシ部材4の一方の端面17にたいして、平板状の下部ブラシ部材5の一方の端面16を重ね合わせると共に、下部ブラシ部材5の他方の端面16にたいして、他の上部ブラシ部材4の一方の端面17が重ね合わされ、縫製による接合部6を介して一体化される。また、下部ブラシ部材5の長手方向の略中央部には、トムソン型等により形成された取付孔(図示せず)が設けられている。次に、上部ブラシ部材4の接合部6側の端面17が外方となるように、概長板形状に形成されたブラシ片2の長手方向の略中央部にて二つ折りする。そして、概V字断面を有するよう形成されたブラシ片2は、軸体3の溝部9に挿入され、前記取付孔にリベット10が挿入されると共に、リベッター等でリベット10を打ち付け、軸体3にブラシ片2が固定されて洗車機用洗浄ブラシ1が形成される。なお、接合部6の形成方法は、前記縫製以外にも、ネジ止め、リベット止め、面ファスナー、編み込み等の物理的接合方法、接着、溶着、融着等の化学的接合方法を用いても構わない。
【0023】
上部ブラシ部材4、及び下部ブラシ部材5の材質としては、平板状の不織布、織布、編物等の布帛、合成樹脂発泡体、フィルム状樹脂組成物、熱可塑性エラストマーシート、合成ゴムシート、合成樹脂シート等が採用される。
【0024】
また、上部ブラシ部材4の表面に形成された多数の細孔8は、予めトムソン型、ニードルパンチング機等により形成しておく。下部ブラシ部材5の表面に形成された複数の穴7についても、予めトムソン型等を用い、打ち抜いて形成しておく。
【0025】
次に、図2、及び図5を用いて、洗車機用洗浄ブラシ1の動作、作用について説明する。
【0026】
洗車機用洗浄ブラシ1は、洗車機81に取り付けられ、駆動源82により矢印Aの方向に回転しながら、被洗浄面である車体11に当接している。洗車機81に設けられた複数のノズル83からは洗浄水13が車体11にたいして噴出され、車体11の表面には汚れ12が付着している。なお、汚れ12は、土砂や埃等の砂塵、煤煙、排気ガスの残渣、舗道から転移するアスファルトやピッチ、ワックスやシリコーン等を主成分とする水垢汚れ、鉄道線路から転移する鉄粉等が混在しているものである。
【0027】
洗車機用洗浄ブラシ1は、矢印Aの方向に回転しながら、車体11に当接すると、ブラシ片2を構成する上部ブラシ部材4の接合部6側の端面17が、洗浄水13を堰き止める。堰き止められた洗浄水13は、下部ブラシ部材5の接合部6近傍の表面に設けられた穴7が通水手段として作用し、穴7を介して矢印の如く、下部ブラシ部材5の裏面にまで通水して浮き出てくる。さらに、下部ブラシ部材5の裏面に浮き出た洗浄水13は、矢印の如く、車体11に当接している上部ブラシ部材4に設けられた細孔8を介して、上部ブラシ部材4に吸水された後、車体11上に移動する。
【0028】
上記に示したように、洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ片2が上部ブラシ部材4の端面17により堰き止められた洗浄水13を積極的に吸水するので、ブラシ片2は車体11に当接する際、車体11に付着している汚れ12にたいして、界面張力を低下させ、汚れ12との接触面積を大きくすることができる。その為、雑巾、タオル、洗車スポンジ等で拭くように手洗い洗車をするが如く、ブラシ片2を構成する上部ブラシ部材4は、車体11に均一に密着して的確に汚れ12を除去するので、洗浄性能が向上する。
【0029】
なお、汚れ12の内、土砂、アスファルト等の大粒な汚れ12は、穴7を通過後、上部ブラシ部材4の裏面上を移動して、洗車機用洗浄ブラシ1の外部に排出される。また、汚れ12の内、水垢汚れ等の車体11にこびり付いた汚れ12は、細孔8から車体11上に移動した洗浄水13により、接触面積を大きくして掻き出される。
【0030】
また、穴7を介して上部ブラシ部材4の裏面に移動した洗浄水13の一部は、上部ブラシ部材が車体11から離れた時に、車体11に流れ落ちる。その為、隣接する上部ブラシ部材4が車体11に当接した時には、既に車体11には洗浄水13が有るので、拭き取り効果が向上し、高い洗浄性能が発揮される。
【0031】
なお、車体11に当接する上部ブラシ部材4の軸体3の軸心と垂直な方向における長さは、ブラシ片2が折り合わされた部分からの下部ブラシ部材5の長さと同等、乃至3倍程度に設定されるのが望ましい。軸体3の軸心と垂直な方向における上部ブラシ部材4の長さが、ブラシ片2が折り合わされた部分からの下部ブラシ部材5の長さより短いと作用半径が小さくなり、効率的に汚れ12を除去することが難しくなり、3倍より大の場合においては、吸水によりブラシ片2の重量が重くなり、洗車機81の駆動源82にたいする負荷が増大し、洗車機用洗浄ブラシ1の回転が不安定となる。
【0032】
また、図3に示す他の実施の形態におけるブラシ片22、32、42、52を用いても、洗車機用洗浄ブラシ1は、前記と同様の作用を得ることができる。
【0033】
図3(a)において、ブラシ片22は、メッシュ部23を有する2枚の上部ブラシ部材24と、無数の連続気泡21を有する1枚の下部ブラシ部材25が、溶着による接合部26を介して、概V字断面を有するよう形成されてある。連続気泡21が通水手段として作用し、メッシュ部23を介して上部ブラシ部材24は積極的に吸水し、車体11に当接する。
【0034】
なお、メッシュ部23は、予めトムソン型等を用い、打ち抜いて形成しておいてもよいし、網目状に形成された平織等の織布、ニット編等の編物を採用してもよい。また、連続気泡21は、合成樹脂を発泡させた連続気泡発泡体を採用することにより得られる。連続気泡21は、気泡が完全に気泡壁に囲まれておらず、隣接する気泡と連通しているもののことをいう。従って、隣接気泡間の気泡壁の一部が欠けている為、洗浄水13等の液体の流通が可能であり、通水手段として作用するのである。
【0035】
図3(b)において、ブラシ片32は、無数の連続気泡31を有する2枚の上部ブラシ部材34と、貫通した多数の細孔38を接合部36側に有する1枚の下部ブラシ部材35が、縫製による接合部36を介して、概V字断面を有するよう形成されてある。細孔38が通水手段として作用し、連続気泡31を介して上部ブラシ部材34は積極的に吸水し、車体11に当接する。
【0036】
なお、連続気泡31は、合成樹脂を発泡させた連続気泡発泡体を採用することにより得られる。また、細孔38は、予めトムソン型、ニードルパンチング機等により形成しておく。
【0037】
図3(c)において、ブラシ片42は、貫通した複数の穴スリット49を有する2枚の上部ブラシ部材44と、貫通した複数の穴スリット49を接合部46側に有する1枚の下部ブラシ部材45が、縫製による接合部46を介して、概V字断面を有するよう形成されてある。下部ブラシ部材45に形成された穴スリット49が通水手段として作用し、上部ブラシ部材44は表面に形成された穴スリット49を介して積極的に吸水し、車体11に当接する。
【0038】
なお、穴スリット49は、予めトムソン型、カッター等を用いて形成しておく。
【0039】
図3(d)において、ブラシ片52は、貫通した複数の穴57を有する2枚の上部ブラシ部材54と、メッシュ部53を接合部56側に有する1枚の下部ブラシ部材55が、縫製による接合部56を介して、概V字断面を有するよう形成されてある。メッシュ部53が通水手段として作用し、穴57を介して上部ブラシ部材54は積極的に吸水し、車体11に当接する。
【0040】
なお、穴57、及びメッシュ部53は、予めトムソン型等を用い、打ち抜いて形成しておく。
【0041】
また、平板状の不織布、織布、編物等、通水可能なものであるならば、上部ブラシ部材4、24、34、44、54、及び下部ブラシ部材5、25、35、45、55の通水手段として採用できる。
【0042】
(実施例2)
図4(a)は、実施例2のブラシ片を前面側から見た斜視図、図4(b)は、実施例2の洗車機用洗浄ブラシの洗車時の使用状態を示す部分断面図である。
【0043】
図4(a)において、ブラシ片62は、貫通した多数の細孔68を有する2枚の上部ブラシ部材64と、貫通した複数の穴67を接合部66側に有する1枚の下部ブラシ部材65が、縫製による接合部66を介して、概V字断面を有するよう形成されてある。また、上部ブラシ部材64の被洗浄面側には、複数の凹部74が形成されてあると共に、凹部74が形成されることにより、必然的に形成される凸部75が設けられている。
【0044】
上部ブラシ部材64の表面に形成された多数の細孔68は、予めトムソン型、ニードルパンチング機等により形成しておく。下部ブラシ部材65の表面に形成された複数の穴67についても、予めトムソン型等を用い、打ち抜いて形成しておく。また、上部ブラシ部材64の被洗浄面側に形成されてある凹部74、及び凸部75は、エンボスロール等により加熱、加圧することにより形成される。
【0045】
次に、図4(b)を用いて、洗車機用洗浄ブラシ61の動作、作用について説明する。
【0046】
洗車機用洗浄ブラシ61は、ブラシ片62が、アルミニウム等の金属材料からなる略円筒形状の軸体63の外周に設けられた突起状の溝部69に概V字断面を有するように挿入され、リベット70にて固定して形成されてある。なお、特に図示しないが、軸体63の外周に設けられた溝部69は、円周等分4箇所に設けられている。そして、洗車機用洗浄ブラシ61は、洗車機に取り付けられ、駆動源により矢印Bの方向に回転しながら、被洗浄面である車体71に当接している。洗車機に設けられた複数のノズルからは洗浄水73が車体71にたいして噴出され、車体71の表面には汚れ72が付着している。なお、汚れ72は、土砂や埃等の砂塵、煤煙、排気ガスの残渣、舗道から転移するアスファルトやピッチ、ワックスやシリコーン等を主成分とする水垢汚れ、鉄道線路から転移する鉄粉等が混在しているものである。
【0047】
洗車機用洗浄ブラシ61は、矢印Bの方向に回転しながら、車体71に当接すると、ブラシ片62を構成する上部ブラシ部材64の接合部66側の端面77が、洗浄水73を堰き止める。堰き止められた洗浄水73は、下部ブラシ部材65の接合部66近傍の表面に設けられた穴67が通水手段として作用し、穴67を介して矢印の如く、下部ブラシ部材65の裏面にまで通水して浮き出てくる。さらに、下部ブラシ部材65の裏面に浮き出た洗浄水73は、矢印の如く、車体71に当接している上部ブラシ部材64に設けられた細孔68を介して、上部ブラシ部材64に吸水される。
【0048】
上記に示したように、洗車機用洗浄ブラシ61は、ブラシ片62が上部ブラシ部材64の端面77により堰き止められた洗浄水73を積極的に吸水するので、ブラシ片62は車体71に当接する際、車体71に付着している汚れ72にたいして、界面張力を低下させ、汚れ72との接触面積を大きくすることができる。その為、雑巾、タオル、洗車スポンジ等で手洗い洗車をするが如く、ブラシ片62を構成する上部ブラシ部材64は、車体71に均一に密着して的確に汚れ72を除去すると共に、上部ブラシ部材64の被洗浄面側に設けられた凹部74と凸部75の間に形成された角部76が、汚れ72を掻き取るように除去する。特に、汚れ72の成分の内、車体71に強固に付着しているピッチ、水垢汚れ、鉄粉等を、角部76により効率よく確実に除去することができるので、洗浄性能が飛躍的に向上する。
【0049】
(実施例3)
図5は、本発明の洗車機用洗浄ブラシ1が搭載されてある洗車機の正面図である。
【0050】
図5において、洗車機81は、本発明の洗車機用洗浄ブラシ1が搭載されてあり、洗車機用洗浄ブラシ1は駆動源82により回転駆動される。ノズル83からは、被洗浄面である車体にたいして、洗浄剤、及び洗浄水等が散布され、洗車機用洗浄ブラシ1により、車体に付着している汚れが除去され、洗浄後は洗車機81の乾燥手段である乾燥機84により車体が乾燥される。
【0051】
洗車機81は、車体に付着している汚れを的確に除去する高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシ1が搭載されてある為、駆動源82により洗車機用洗浄ブラシ1の回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の洗車機用洗浄ブラシは、主に、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に搭載する洗車機用洗浄ブラシとして使用する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、(b)図1(a)の断面図
【図2】本発明の洗車機用洗浄ブラシの洗車時の使用状態を示す部分断面図
【図3】(a)他の実施の形態におけるブラシ片を前面側から見た斜視図、(b)他の実施の形態におけるブラシ片を前面側から見た斜視図、(c)他の実施の形態におけるブラシ片を前面側から見た斜視図、(d)他の実施の形態におけるブラシ片を前面側から見た斜視図
【図4】(a)実施例2のブラシ片を前面側から見た斜視図、(b)実施例2の洗車機用洗浄ブラシの洗車時の使用状態を示す部分断面図
【図5】本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図
【符号の説明】
【0054】
1、61 洗車機用洗浄ブラシ
2、22、32、42、52、62 ブラシ片
3、63 軸体
4、24、34、44、54、64 上部ブラシ部材
5、25、35、45、55、65 下部ブラシ部材
6、26、36、46、56、66 接合部
7、57、67 穴
8、38、68 細孔
9、69 溝部
10、70 リベット
11、71 車体
12、72 汚れ
13、73 洗浄水
15 外側面
16、17、77 端面
21、31 連続気泡
23、53 メッシュ部
49 穴スリット
74 凹部
75 凸部
76 角部
81 洗車機
82 駆動源
83 ノズル
84 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片と軸体を有し、前記ブラシ片は前記軸体の外周部に形成されてあると共に、上部ブラシ部材と下部ブラシ部材を有し、前記上部ブラシ部材は前記下部ブラシ部材の被洗浄面側で且つ前記下部ブラシ部材の端面よりも前記軸体側に接合されてあり、前記下部ブラシ部材は前記上部ブラシ部材の接合側端面の近傍に通水手段が形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記通水手段として穴、メッシュ部、連続気泡、多数の細孔、穴スリットの少なくともいずれか一つが形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記上部ブラシ部材に穴、メッシュ部、連続気泡、多数の細孔、穴スリットの少なくともいずれか一つが形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記上部ブラシ部材の被洗浄面側に凹凸部が形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項5】
駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から4のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−87721(P2008−87721A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273551(P2006−273551)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】