説明

洗車機

【課題】乾燥用空気を吹き付けて車体を乾燥させる送風ノズルを用いると共に、未乾燥部分を生じず乾燥効率を向上して良好な乾燥効果を発揮する洗車機を提供する。
【解決手段】洗浄手段と乾燥手段を備える洗車機において、乾燥手段が、乾燥用空気を被洗浄車両に吹き付ける送風ノズル23(23A、23B)を備え、この送風ノズルは、乾燥用空気を下向きに吹出しながら上から下に向けて移動する乾燥工程DAと、乾燥用空気を吹き出さずに下から上に向けて移動する非乾燥工程UBとを具備する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給油所に設置され洗車に使用される洗車機に関し、特に、洗浄後に乾燥用空気を吹き付けて乾燥する送風ノズルを備える洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給油所などに設置されている洗車機は、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両に貯液タンクに貯留された液剤や洗浄水を噴射して洗車を行う構成とされている。また、液剤や洗浄水を噴射しながらブラッシングして洗浄することや、洗浄後に乾燥用空気を吹き付けて乾燥することが行われている。
【0003】
洗浄工程においては、先ず、洗浄水を用いて汚れを落とし、次いでシャンプーなどの液剤を用いて洗浄し、さらに洗浄水を用いて水洗いする。この洗浄工程の後で、各送風ノズルから送風して乾燥する乾燥工程が行われる。また、必要に応じてワックスや撥水コートなどの液剤塗布工程を適宜組み合わせて洗車を行う。このように、洗車の際に用いる液剤としては、各種のシャンプーやワックスやコート類が用いられており、それぞれ専用の貯液タンクに貯留され、タンク内に挿入されたチューブを介して、洗車工程の処理に応じて噴射され消費される。また、複数の洗車モードから所望のモードを選択し、使用する液剤の種類を選択して所定の洗車モードに設定する操作パネルやリモートパネルを備えている。操作パネルは洗車機本体に配設しているが、リモートパネルは洗車機本体から離れた位置に設置して、このリモートパネルと操作パネルとを電気的に接続して、リモートパネルに設定された洗車モードにより、洗車機を駆動可能にしている。
【0004】
操作パネルやリモートパネルを備える洗車機の一例について図8を用いて説明する。この洗車機WBは、複数のブラシを備える洗浄部材と、ブロワと複数の送風ノズルを備える乾燥部材とを一体に装着し、被洗浄車両CAを跨ぐように門型とされる洗車機本体1を備えた構成であり、被洗浄車両CAと洗車機本体1を前後方向に相対移動させながら、複数の貯液タンクに貯留された液剤をそれぞれ水により希釈して前記被洗浄車両へ噴射して、前記被洗浄車両の洗車を行う。
【0005】
例えば、洗車機本体1が、車輪3を介してレール2上に沿って走行移動する構成とし、被洗浄車両CAを、該被洗浄車両CAを跨ぐ門型とされる洗車機の左右一対のレール間の所定の位置に停車して、洗車機本体1に設置する操作パネル7もしくは洗車機本体1から離れた位置に設置するリモートパネル7Aに、所望の洗車モードを設定し、スタートボタンを操作して、洗車操作を開始する。
【0006】
門型の洗車機本体1は、被洗浄車両CAを洗浄するブラシとして、例えば、被洗浄車両CAの上面を洗浄するトップブラシ4と、被洗浄車両CAの両側面と前後面を洗浄する左右一対のサイドブラシ5と、被洗浄車両CAの両側面下部を洗浄する左右一対のロッカーブラシ6を備えている。
【0007】
また、ブラッシングの際に使用する洗浄水や各種液剤を噴射する各種ノズルや各種液剤を貯液する貯液タンクを備えている。各種液剤を貯液する複数の貯液タンクは、洗車機本体1に設けられるタンク収納部50に収納されており、電磁式の開閉弁と副給水ホースを備える分配配管部51を介して各ノズルに分配している。液剤を噴射するノズルとしては、例えば、第一浄水ノズル11、第一洗剤ノズル12、第二浄水ノズル13、撥水コートノズル14、第二洗剤ノズル15、ワックスノズル16などが配設されている。
【0008】
さらに、乾燥のために、ブロワ20と該ブロワ20からの送風を吹き付ける昇降自在なトップ送風ノズル21と左右一対のサイド送風ノズル22を備えている。また、洗車機本体1に配設する操作パネル7、もしくは、洗車機本体1から離れた位置に設置するリモートパネル7Aを介して、洗車機WBの駆動条件を設定し、設定された条件に基づいて洗車機WBを駆動する構成としている。8は、被洗浄車両CAの有無および車高を検知するセンサであって、例えば、光電センサや超音波を利用したソニックセンサが好適に用いられる。
【0009】
操作パネル7やリモートパネル7Aには、水洗いモードや、洗剤を用いた洗浄モードや、ワックスを塗布するワックスモードや、撥水剤をコートする撥水モードなどの各種洗車モードを選択する選択ボタンや、ブラシの回転数を制御するブラシ回転スイッチや、スタート・ストップボタンなどが設けられている。
【0010】
また、洗車機本体1を、洗浄部材を備えた洗浄機本体と乾燥部材を備えた乾燥機本体との別体として、それぞれが、被洗浄車両CAを跨ぐように門型とされ、被洗浄車両CAと洗浄機本体と乾燥機本体とを前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両CAの洗車を行う構成の洗車機も知られている。この構成であっても、各種ブラシと各種ノズルを備え、操作パネル7もしくはリモートパネル7Aを備えていることは同じである。
【0011】
上記した従来の洗車機WBにおいては、被洗浄車両CAの上面を乾燥するためのトップ送風ノズルと、側面を乾燥するためのサイド送風ノズルを備えている。トップ送風ノズルは、上から下に向けて乾燥用空気を吹き付け、サイド送風ノズルは、横から乾燥用空気を吹き付けている。
【0012】
トップ送風ノズルは、上から下に向けて乾燥用空気を吹き付けているので、車体上面に付着した水滴を下に吹き飛ばす。また、車体上面の広範囲に亘って乾燥用空気を吹き付けるために、ノズルの吹出し面を、中央部から両端部に向かって漸次反り上がるように傾斜させて、両側の広範囲に吹出して、車体上面に付着した水滴を残らず吹き落とすとした洗車機のトップノズルが既に本出願人から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
また、サイド送風ノズルの吹き出し口を、上部が前側に下部が後側になるように傾斜させて、車体の側面に付着した水滴が、上部のものがより先に落下し、上下の水滴が一箇所に集中しないようにして、未乾燥部分が残らないようにした乾燥装置が既に公開されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−92751号公報
【特許文献2】実開昭62−137861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
トップ送風ノズルから乾燥用空気を吹き付けて車体上面を乾燥することができる。また、サイド送風ノズルを介して、車体の側面部に付着した水滴を吹き飛ばして乾燥することができる。しかし、トップ送風ノズルが吹き飛ばす水滴が車体の側面部に付着すると、未乾燥部分が残ってしまい乾燥効果が悪化する虞が生じる。
【0016】
そのために、トップ送風ノズルを用いて車体上面に付着した水滴を吹き飛ばした後、サイド送風ノズルを用いて車体側面部の水滴を吹き飛ばすことが好ましい。また、水滴は上から下に向けて吹き飛ばしたほうが、横方向に吹き飛ばしたときと比較して乾燥効率がよいので、サイド送風ノズルを用いて水滴を吹き飛ばす際にも、上から下に向けて乾燥用空気を吹き付けることが好ましい。
【0017】
また、各送風ノズルの吹き付け角度は同一の角度を維持した状態で吹き付けるのではなく、吹き付ける車体表面の形状に応じて、適当な吹き付け角度に調整して吹き付けることが、乾燥効果を発揮するのに好ましいといえる。
【0018】
そのために、車体に付着した水滴を吹き飛ばして乾燥させる送風ノズルは、乾燥用空気を上から下に向けて吹き付けると共に、車体の上部から下部に向けて所定の吹き出し角度に調整しながら順次吹き付けることが好ましい。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑み、乾燥用空気を吹き付けて車体を乾燥させる送風ノズルを用いると共に、未乾燥部分を生じず乾燥効率を向上して良好な乾燥効果を発揮する洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、洗浄手段と乾燥手段を備え、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、前記乾燥手段が、乾燥用空気を生成するブロワと、該ブロワにより生成された乾燥用空気を被洗浄車両に吹き付ける送風ノズルとを備え、前記送風ノズルは、乾燥用空気を下向きに吹出しながら上から下に向けて移動する乾燥工程と、乾燥用空気を吹き出さずに下から上に向けて移動する非乾燥工程とを具備することを特徴としている。
【0021】
この構成によると、乾燥用空気を上から下向きに吹き付けるので、車体に付着した水滴が下に落下し易くなって乾燥効率が向上する。また、車体の上面から側面に向けて順次吹き付けていくので、車体に付着した水滴を上から下に順に落下させることができ、未乾燥部分を生じず乾燥効率を向上して良好な乾燥効果を発揮可能な洗車機を得ることができる。
【0022】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記送風ノズルは、洗車機本体に設ける車形検出センサによって検出される車形データに従い、および/または、当該送風ノズルの空気吹出口の下方に設けるセンサ部材によって検知される車体表面に沿って、移動しながら乾燥用空気を下向きに吹き出すことを特徴としている。この構成によると、空気吹出口の位置を車体表面から適当な位置に接近させることができ、所定の乾燥降下を発揮することができる。
【0023】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記空気吹出口は細長い形状とされ、前記送風ノズルは左右一対の細長い送風ノズルからなり、前記左右一対の送風ノズルが、被洗浄車両の上部の中央部に長手方向に並設した状態で配設される待機位置から、被洗浄車両の上面に近接した乾燥開始位置まで昇降自在であり、この乾燥開始位置から、予め定める開閉距離開閉移動可能で、予め定める下限位置まで昇降移動可能とされ、前記乾燥開始位置からそれぞれ左右に分かれて被洗浄車両の側面部に至るまで開閉移動し、側面部の下部に至る降下位置まで昇降移動して乾燥工程を行うことを特徴としている。この構成によると、細長い空気吹出口を車体に接近させた状態で乾燥用空気を上から下に向けて吹き付けるので、左右一対の送風ノズルを用いて、車体の両面を未乾燥部分を生じずに乾燥させることができる。
【0024】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記送風ノズルは、乾燥用空気の吹き付け方向を鉛直方向下向きから角度を持たせるように当該送風ノズルの長手方向と直交する方向に傾動自在とされることを特徴としている。この構成によると、車体表面の形状に応じて、適当な吹き付け角度に調整して吹き付け可能となって、さらに良好な乾燥効果を発揮することができる。
【0025】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記送風ノズルは、被洗浄車両の側面を移動する際に、前記乾燥工程中は洗車機本体が停止した状態であることを特徴としている。この構成によると、送風ノズルから乾燥用空気を吹き付けながら下降移動し、車体側面を良好に乾燥させることができる。
【0026】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記送風ノズルは、被洗浄車両の側面を移動する際に、前記非乾燥工程中に洗車機本体を所定距離移動させることを特徴としている。この構成によると、送風ノズルから乾燥用空気を吹き付けながら下降移動し、降下位置から待機位置に戻ると次に乾燥開始位置まで自動的に移動可能となる。
【0027】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記所定距離は、前記送風ノズルの長さ程度の距離であることを特徴としている。この構成によると、被洗浄車両の全長に亘って乾燥するのに必要な乾燥工程と非乾燥工程との繰り返し回数が最小となるので、乾燥効率を向上することができる。
【0028】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記送風ノズルは、その長手方向の上下に対して首振り自在とされることを特徴としている。この構成によると、被洗浄車両の長手方向の上下に対しても傾動自在となるので、長手方向に傾斜した車体表面であっても、この車体表面に沿って傾動して、乾燥用空気を吹き付けて、さらに良好な乾燥効果を発揮することができる。
【0029】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記送風ノズルは、その長手方向の中央部に揺動回転自在支持部を備え、この揺動回転自在支持部を介して前記傾動自在に、また、前記首振り自在に支持されると共に水平方向に回転可能とされることを特徴としている。この構成によると、細長い送風ノズルを被洗浄車両の長手方向に沿う姿勢から水平方向に90°回転して、車体の幅方向に沿う姿勢とし、この姿勢を維持して車体表面に沿うように昇降移動させて乾燥用空気を吹き付けて、車体の上面を、さらに良好に乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、送風ノズルが具備する乾燥工程は、乾燥用空気を下向きに吹出しながら上から下に向けて移動する乾燥工程であり、乾燥用空気を上から下向きに吹き付けて乾燥するので、車体に付着した水滴が下に落下し易くなって乾燥効率が向上する。また、車体の上面から側面に向けて順次吹き付けていくので、車体に付着した水滴を上から下に順に落下させることができ、未乾燥部分を生じず乾燥効率を向上して良好な乾燥効果を発揮可能な洗車機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る送風ノズルの動きを説明する平面図である。
【図2】本発明に係る送風ノズルの動きを説明する正面図である。
【図3】本発明に係る送風ノズルの動きを説明する側面図である。
【図4】送風ノズルのその他の実施形態を示す平面図であって、(a)は、一個の送風ノズルを被洗浄車両の長手方向と直交する方向に回転させて乾燥工程を行う第一例であり、(b)は、二個の送風ノズルを被洗浄車両の長手方向と直交する方向に回転させて乾燥工程を行う第二例を示す。
【図5】送風ノズルの別実施形態の動きを説明する平面図である。
【図6】送風ノズルの一例の構成を示す概略斜視図である。
【図7】洗車機の概略正面図である。
【図8】洗車機の全体構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。また、同一構成部材については同一の符号を用い、詳細な説明は適宜省略する。
【0033】
本実施形態の洗車機WAは、洗浄手段と乾燥手段を備え、洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両の洗車を行う洗車機であって、先に説明した図8に示す洗車機WBと同様な構成とされている。ただし、乾燥用空気を吹き付けるトップ送風ノズル21とサイド送風ノズル22に替えて送風ノズル23を備えている点が異なる。そのために、図7に示すように、車輪3を介してレール2上に沿って走行移動する門型の洗車機本体1に、被洗浄車両CAの上面を洗浄するトップブラシ4と、被洗浄車両CAの両側面と前後面を洗浄する左右一対のサイドブラシ5と、被洗浄車両CAの足回りを洗浄するロッカーブラシ6を備え、乾燥手段として、ブロワ20と該ブロワ20からの乾燥用空気を、車体の上面、および側面に吹き付ける変位移動自在な送風ノズル23を備えた構成とされる。
【0034】
8Aは、被洗浄車両CAのボンネット高さを検知するボンネット高さ検知センサであって、前述した被洗浄車両CAの有無および車高を検知するセンサ8と同様に光電式もしくは超音波式の反射型センサを用いることができる。また、これらのセンサの配設位置を考慮して一個のセンサを兼用して被洗浄車両CAの有無とボンネット高さを検知することも可能である。
【0035】
また、ボンネット高さ検知センサ8Aに替えて透過式光電センサからなる車形検出センサ(不図示)を用いることもできる。この場合には、洗車機本体の一方の側部の上下方向に投光器を併設し、これらの投光器に対向する他方の側部の上下方向に受光器を併設することで、洗浄位置に進入してくる被洗浄車両の車形およびボンネット高さを検知する。
【0036】
次に、送風ノズル23の構成と作用について図1〜図3を用いて説明する。
【0037】
図1に示すように、本実施形態では、送風ノズル23として、左右一対の細長い送風ノズル23A、23Bを備える。これらの送風ノズル23A、23Bは、待機状態において、被洗浄車両CAの上部の中央部に長手方向に並設した状態で配設される。つまり、この被洗浄車両CAの上方に並設された位置が待機位置となる。
【0038】
乾燥工程が開始されると、図2に示すように、待機位置HS1にある送風ノズル23(23A、23B)が降下し、空気吹出口が被洗浄車両CAの上面に近接した乾燥開始位置OS1に到達して停止する。この近接位置は、前述した車形検出センサを介して検出された車形データに従い定めることができる。または、空気吹出口の下方に設けられ車両および装着物を検知するセンサ部材を介して検知することができる。
【0039】
乾燥開始位置OS1にて一旦停止した送風ノズル23A、23Bは、例えば、送風ノズル23Aは、図面に向かって左側に移動しながら、乾燥用空気を被洗浄車両CAに向けて吹き付ける。また、送風ノズル23Bは、図面に向かって右側に移動しながら、乾燥用空気を被洗浄車両CAに向けて吹き付ける。
【0040】
送風ノズル23A、23Bは、車形検出センサによって検出された車形データに従い、および/または、当該送風ノズルの空気吹出口の下方に設けるセンサ部材によって検知される車体表面に沿って、上から下に向けて移動しながら乾燥用空気を下向きに吹き出す。また、車形検出センサによって検出された車形データに従って移動させると共に、空気吹出口の下方に設けるセンサ部材を介して被洗浄車両の上面および側面を再確認する構成とし、送風ノズル23A、23Bに設けるセンサ部材を安全センサとして用いてもよい。
【0041】
この構成であれば、乾燥用空気を上から下向きに吹き付けるので、車体に付着した水滴が下に落下し易くなって乾燥効率が向上する。また、車体の上面から側面に向けて順次吹き付けていくので、車体に付着した水滴を上から下に順に落下させることができ、未乾燥部分を生じず乾燥効率を向上して良好な乾燥効果を発揮可能な洗車機WAを得ることができる。
【0042】
このように、左右一対の細長い送風ノズル23A、23Bが、被洗浄車両の上部の中央部に長手方向に並設した状態で配設される待機位置HS1から、被洗浄車両の上面に近接した乾燥開始位置OS1まで昇降自在であり、この乾燥開始位置OS1から、予め定める開閉距離開閉移動可能で、予め定める下限位置まで昇降移動可能とされ、センサ部材を介して、乾燥開始位置OS1からそれぞれ左右に分かれて被洗浄車両の側面部に至るまで開移動し、側面部の下部に至る降下位置OE1まで降下移動しながら乾燥工程を行う構成である。
【0043】
上記の構成であれば、降下中に乾燥用空気を吹き付けるので、上から順に乾燥させることができる。そのために、左右一対の送風ノズルを用いて、車体の両面を未乾燥部分を生じずに乾燥させることができる。また、上面と側面の両方を、下向きの乾燥用空気を吹き付けるので、良好な乾燥効果を発揮することができる。
【0044】
乾燥開始位置OS1から降下位置OE1まで移動した送風ノズル23A、23Bは、次の乾燥開始位置まで上昇移動して戻る。この上昇移動の際には、乾燥用空気は吹き出さず、そのまま上昇する。また、この上昇移動は、先の降下移動の軌跡に沿って戻る移動であっても、車体表面から側方に離れてそのまま上昇する移動であってもよく、特に限定するものではない。
【0045】
ただし、この上昇移動により次の乾燥開始位置まで戻る構成であれば、直ちに次の乾燥工程に移ることが可能となるので好ましい。そのために、本実施形態では、図3に示すように、待機位置HS1にある送風ノズル23(23A、23B)が乾燥開始位置OS1に降下(破線に示す工程DB)し、それから乾燥用空気を吹き付けながら降下位置OE1まで移動(実線に示す工程DA)する。その後、破線に示す工程UBに沿って上昇し、第二の乾燥開始位置OS2に至る。
【0046】
第二の乾燥開始位置OS2に到達した送風ノズル23(23A、23B)は、再び乾燥工程に入り、図中の実線に示す工程DAに沿って乾燥しながら降下して、第二の降下位置OE2に至る。
【0047】
同様にして、第二の降下位置OE2から乾燥用空気を吹き出さず上昇移動して第三の乾燥開始位置OS3に至る。それから、乾燥用空気を吹き付けながら降下して、第三の降下位置OE3に至る。これを繰り返して、第三の降下位置OE3から第四の乾燥開始位置OS4に、第四の乾燥開始位置OS4から第四の降下位置OE4に、第四の降下位置OE4から第五の乾燥開始位置OS5に、第五の乾燥開始位置OS5から第五の降下位置OE5に、第五の降下位置OE5から第六の乾燥開始位置OS6に、第六の乾燥開始位置OS6から第六の降下位置OE6に至る。この第六の降下位置OE6が乾燥終了位置であれば、そこから上昇して待機位置HS1に戻る。
【0048】
この図3において、実線に示す工程DAが、乾燥用空気を吹き付けながら移動する乾燥工程であり、破線に示す工程DB、および、UBが、乾燥用空気を吹き出さずに移動する非乾燥工程である。つまり、送風ノズル23は、乾燥工程と非乾燥工程を具備する。
【0049】
この移動工程を実現するためには、洗車機本体1に対して、送風ノズル23(23A、23B)が、被洗浄車両CAの幅方向に水平移動可能で、上下に昇降移動可能であればよく、また、被洗浄車両CAに向かう方向(空気吹出口を車体表面に向かせる方向)に傾動自在な構成であればよい。
【0050】
また、洗車機本体1をレール2に沿って前後に移動することで、被洗浄車両CAの長手方向に対する位置を変更し、調整することができる。そのために、乾燥工程中は洗車機本体1を停止状態とし、非乾燥工程中に洗車機本体1を所定距離移動させ、この乾燥工程と非乾燥工程を繰り返すことで、乾燥用空気を上から下向きに吹き付ける乾燥工程を用いて被洗浄車両CAの長手方向の全長に亘って乾燥することができる。また、この繰り返し回数を少なくして短い時間で良好な乾燥効果を得るためには、非乾燥工程中に移動させる距離は、送風ノズル23(23A、23B)の長さ程度の距離が好ましい。
【0051】
次に、本実施形態に係る送風ノズル23(23A、23B)の構成について図6を用いて説明する。
【0052】
送風ノズル23は、被洗浄車両の長手方向に延在した細長い形状の空気吹出口を車両の表面に沿って移動して被洗浄車両を乾燥する送風ノズルであって、支持部材(不図示)を介して、図中の矢印HZに示す水平方向(被洗浄車両の幅方向)と矢印VTに示す上下方向に移動自在に支持されている。また、車両の表面に接近し送風して、洗浄後の車両を乾燥するために、送風ノズル23の空気吹出口23a下方に、車体表面や障害物を検知するためのセンサ部材S(SA、SB)を備えている。また、本実施形態では、図に示すように、細長い矩形状とされる送風ノズル23の空気吹出口23aの下方に、この空気吹出口を囲む四方に、第一センサSA1と第二センサSA2、および、第三センサSB1と第四センサSB2を配設している。
【0053】
第一センサSA1と第二センサSA2は、例えば、側板25Aに装着され、第三センサSB1と第四センサSB2は、側板25Bに装着されている。また、これらのセンサは、トップ送風ノズルの空気吹出口23aから予め定める所定距離H離間した下方位置に設けられている。そのために、第一センサSA1と第二センサSA2(合わせてセンサ部材SAと称する)を介して、送風ノズル23の長手方向の一方の端部位置を、被洗浄車両に近接させることができ、第三センサSB1と第四センサSB2(合わせてセンサ部材SBと称する)を介して、送風ノズル23の長手方向の他方の端部位置を、被洗浄車両に近接させることができる。
【0054】
また、送風ノズル23を揺動回転自在支持部24を介して揺動回転自在に支持することで、図中の矢印YTに示す横方向に傾動可能で、図中の矢印PTに示す長手方向に首振り可能で、図中の矢印RTに示す鉛直軸に対して回転可能な構成となる。
【0055】
矢印YTに示す横方向に傾動可能であれば、被洗浄車両の側面部を乾燥する際に、空気吹出口23aを鉛直方向下向きから角度を持たせるように傾けて、車体に向けて配置させることができる。
【0056】
この際に、送風ノズル23の長手方向と直交する方向に鉛直方向下向きから角度を持たせる傾動角度を予め規定しておいてもよく、所定角度傾斜した姿勢で、乾燥用空気を下向きに吹き出す構成としてもよい。
【0057】
また、矢印PTに示す長手方向に首振り可能であれば、被洗浄車両の上面部の湾曲形状に沿わせるようにして、空気吹出口23aを被乾燥部位と略平行に配置させることができる。
【0058】
矢印RTに示すように回転可能な構成であれば、送風ノズル23を被洗浄車両の長手方向と直交する方向に配置可能となり、このまま被洗浄車両の前後方向に移動して被洗浄車両の上面を連続して乾燥することが可能になる。
【0059】
上記したように、送風ノズル23は、水平方向と上下方向に移動自在に支持する支持部材を介して、図中の矢印HZ方向に水平移動自在であり、矢印VT方向に上下移動自在であると共に、揺動回転自在支持部24を介して、矢印YT方向に傾動自在で、矢印PT方向に首振り自在で、矢印RT方向に回転自在となる。
【0060】
そのために、送風ノズル23は、被洗浄車両の上部の中央部に長手方向に並設した状態で配設される待機位置HS1から、被洗浄車両の上面に近接した乾燥開始位置OS1まで昇降自在であり、この乾燥開始位置OS1から、それぞれ左右に分かれて被洗浄車両の側面部に至るまで開閉移動可能である。また、側面部の下部に至る降下位置OE1まで昇降移動可能であると共に、この側面部にあるときに、空気吹出口23aを被洗浄車両に向けて、乾燥用空気を車体表面に吹き付けることが可能となる。
【0061】
また、乾燥開始位置OS1にある送風ノズル23を、被洗浄車両の長手方向と直交する方向に回転して、この車体の幅方向に沿う姿勢を維持して乾燥工程を行うことができる。この乾燥工程について、図4、図5を用いて説明する。
【0062】
図4(a)には、一個の送風ノズルを被洗浄車両の長手方向と直交する方向に回転させて乾燥工程を行う第一例を示す。図4(b)には、二個の送風ノズルを被洗浄車両の長手方向と直交する方向に回転させて乾燥工程を行う第二例を示す。
【0063】
例えば、図4(a)に示す第一例のように、一個の送風ノズル23A(または、送風ノズル23B)を、被洗浄車両CAの長手方向と直交する方向に配置して、洗車機本体1を走行させて被洗浄車両CAの上面を乾燥する。この際に、送風ノズル23Aを昇降移動して、車体の上面高さに応じた乾燥用空気吹き付け位置に変位させる。
【0064】
このように、一個の送風ノズル23A(または、送風ノズル23B)を用いて、被洗浄車両CAの上面を乾燥することができる。また、図4(b)に示すように、二個の送風ノズル23A、23Bを同時に用いてもよく、それぞれを、被洗浄車両CAの長手方向と直交する方向に配置して、洗車機本体1を走行させて被洗浄車両CAの上面を乾燥する。この際に、送風ノズル23A、23Bを昇降移動して、車体の上面高さに応じた乾燥用空気吹き付け位置に変位させる。
【0065】
前述したように、送風ノズル23A、23Bはそれぞれセンサ部材を備えているので、それぞれを個別に昇降移動させることができ、片側に障害物があっても、この障害物を回避するように移動させながら乾燥することができる。
【0066】
また、図5に示すように、被洗浄車両CAの長手方向に沿う送風ノズル23A、23Bと、長手方向と直交する方向に配置される送風ノズル23Cを同時に用いた構成であってもよく、乾燥開始位置OS1から、送風ノズル23Aは、図面に向かって左側に移動し、乾燥工程DAと非乾燥工程UBを繰り返しながら移動して、乾燥工程DAにおいて乾燥用空気を被洗浄車両CAに向けて吹き付ける。また、送風ノズル23Bは、図面に向かって右側に移動し、乾燥工程DAと非乾燥工程UBを繰り返しながら移動して、乾燥用空気を被洗浄車両CAに向けて吹き付ける。
【0067】
送風ノズル23Cを用いる場合には、送風ノズル23A、23Bの可動範囲を規制して、中央部分を空ける構成とし、この空いた領域に送風ノズル23Cを降下して乾燥工程を実行する。そのために、送風ノズル23Cの待機位置を送風ノズル23A、23Bの待機位置よりも上としておき、送風ノズル23Cを用いる場合のみ、送風ノズル23A、23Bを退避させるとよい。
【0068】
また、送風ノズル23Cを備えず、送風ノズル23A、23Bの二個のみを用いる場合には、いずれか一方の送風ノズルを、長手方向と直交する方向に回転して用いることができる。また、送風ノズル23A、23Bを用いて、乾燥工程DAと非乾燥工程UBを繰り返しながら移動して、一回目の乾燥工程の後に、送風ノズル23A、23Bのいずれか一方、もしくは両方の送風ノズルを長手方向と直交する方向に回転して、被洗浄車両CAの長手方向に沿って再度乾燥工程を行う構成としてもよい。
【0069】
以上、説明したように、本実施形態に係る洗車機WAは、乾燥用空気を下向きに吹出しながら上から下に向けて移動する乾燥工程を具備する送風ノズルを備え、乾燥用空気を上から下向きに吹き付けながら乾燥するので、車体に付着した水滴が下に落下し易くなって乾燥効率が向上する。また、車体の上面から側面に向けて順次吹き付けていくので、車体に付着した水滴を上から下に順に落下させることができ、未乾燥部分を生じず乾燥効率を向上して良好な乾燥効果を発揮可能な洗車機を得ることができる。
【0070】
また、送風ノズルは、その長手方向の中央部に揺動回転自在支持部を備え、この揺動回転自在支持部を介して、傾動自在に、また、首振り自在に支持されると共に、水平方向に回転可能とされる。そのために、細長い送風ノズルを被洗浄車両の長手方向に沿う姿勢から水平方向に90°回転して、車体の幅方向に沿う姿勢とし、この姿勢を維持して車体表面に沿うように昇降移動させて乾燥用空気を吹き付けて、車体の上面を、さらに良好に乾燥させることができる。
【0071】
上記したように、本発明に係る洗車機によれば、乾燥効率が向上するので、ブロワの容量を小さくでき、静音化やコストダウンを図ることが可能となる。また、洗浄用のノズルと乾燥用のノズルの駆動部を共用する構成であれば、洗車機全体の小型化とコストダウンを図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
そのために、本発明に係る洗車機は、給油所などに設置するために、小型化、低コスト化、および、静音化が求められる洗車場の洗車機として好適に適用される。
【符号の説明】
【0073】
1 洗車機本体
2 レール
3 車輪
5 サイドブラシ
20 ブロワ
21 トップ送風ノズル
22 サイド送風ノズル
23、23A、23B 送風ノズル(本発明に係る)
23a 空気吹出口
24 揺動回転自在支持部
DA 乾燥工程
UB 非乾燥工程
HS1 待機位置
OS1 乾燥開始位置
OE1 降下位置
S、SA、SB センサ部材
CA 被洗浄車両
WA 洗車機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄手段と乾燥手段を備え、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
前記乾燥手段が、乾燥用空気を生成するブロワと、該ブロワにより生成された乾燥用空気を被洗浄車両に吹き付ける送風ノズルとを備え、
前記送風ノズルは、乾燥用空気を下向きに吹出しながら上から下に向けて移動する乾燥工程と、乾燥用空気を吹き出さずに下から上に向けて移動する非乾燥工程とを具備することを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記送風ノズルは、洗車機本体に設ける車形検出センサによって検出される車形データに従い、および/または、当該送風ノズルの空気吹出口の下方に設けるセンサ部材によって検知される車体表面に沿って、移動しながら乾燥用空気を下向きに吹き出すことを特徴とする請求項1に記載の洗車機。
【請求項3】
前記空気吹出口は細長い形状とされ、前記送風ノズルは左右一対の細長い送風ノズルからなり、
前記左右一対の送風ノズルが、被洗浄車両の上部の中央部に長手方向に並設した状態で配設される待機位置から、被洗浄車両の上面に近接した乾燥開始位置まで昇降自在であり、この乾燥開始位置から、予め定める開閉距離開閉移動可能で、予め定める下限位置まで昇降移動可能とされ、前記乾燥開始位置からそれぞれ左右に分かれて被洗浄車両の側面部に至るまで開閉移動し、側面部の下部に至る降下位置まで昇降移動して乾燥工程を行うことを特徴とする請求項2に記載の洗車機。
【請求項4】
前記送風ノズルは、乾燥用空気の吹き付け方向を鉛直方向下向きから角度を持たせるように当該送風ノズルの長手方向と直交する方向に傾動自在とされることを特徴とする請求項3に記載の洗車機。
【請求項5】
前記送風ノズルは、被洗浄車両の側面を移動する際に、前記乾燥工程中は洗車機本体が停止した状態であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の洗車機。
【請求項6】
前記送風ノズルは、被洗浄車両の側面を移動する際に、前記非乾燥工程中に洗車機本体を所定距離移動させることを特徴とする請求項5に記載の洗車機。
【請求項7】
前記所定距離は、前記送風ノズルの長さ程度の距離であることを特徴とする請求項6に記載の洗車機。
【請求項8】
前記送風ノズルは、その長手方向の上下に対して首振り自在とされることを特徴とする請求項4に記載の洗車機。
【請求項9】
前記送風ノズルは、その長手方向の中央部に揺動回転自在支持部を備え、この揺動回転自在支持部を介して前記傾動自在に、また、前記首振り自在に支持されると共に水平方向に回転可能とされることを特徴とする請求項8に記載の洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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