説明

洗車機

【課題】
本発明は、トップブラシの昇降の構造を簡略化して洗車機本体を小型化できる洗車機を提供する。
【解決手段】
被洗浄車両CAを跨ぐ洗車機本体1の上部に前記被洗浄車両CAの上面を洗浄するトップブラシ4を配した洗車機において、前記トップブラシ4に接続して前記トップブラシ4を吊り下げるワイヤ63と、前記ワイヤ63が嵌合する環状の溝部82を周面に凹設して前記ワイヤ63を巻き取る巻取部81と、前記巻取部81を回転駆動して前記ワイヤ63の巻き取り及び繰り出しを行うことにより前記トップブラシ4を昇降させる昇降モータ65と、を備え、前記巻取部81が軸方向Mに1本の前記ワイヤ63を前記溝部82内に巻回した単層巻に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油所等に設置して被洗浄車両の洗車を行う洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所等に設置される従来の洗車機は特許文献1に開示される。この洗車機は被洗浄車両の前後に開口部が形成された門型の洗車機本体を備えている。洗車機本体が被洗浄車両を跨いで被洗浄車両に対して前後に相対移動する。
【0003】
洗車機本体には被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシと、トップブラシの重量に対応するつり合いおもりと、がワイヤに接続される。トップブラシの左右両端は長さの違うワイヤを介して吊り下げられ、それぞれのワイヤは右側部に設けられたつり合いおもりに接続される。トップブラシはつり合いおもりの重量を利用して被洗浄車両の上面まで上昇させられ、被洗浄車両の上面と当接して洗浄する。さらにトップブラシの昇降速度を緩衝するためにシリンダが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−118663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される洗車機はトップブラシに対してつり合いおもり、シリンダが夫々ワイヤに接続されており構造が複雑であるという問題がある。また、つり合いおもり、シリンダが昇降自在になるための空間がそれぞれ必要となるという問題がある。
【0006】
本発明は、トップブラシの昇降の構造を簡略化して洗車機本体を小型化できる洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、被洗浄車両を跨ぐ洗車機本体の上部に前記被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを配した洗車機において、前記トップブラシに接続して前記トップブラシを吊り下げるワイヤと、前記ワイヤが嵌合する環状の溝部を周面に凹設して前記ワイヤを巻き取る巻取部と、前記巻取部を回転駆動して前記ワイヤの巻き取り及び繰り出しを行うことにより前記トップブラシを昇降させる昇降モータと、を備え、前記巻取部が軸方向に1本の前記ワイヤを前記溝部内に巻回した単層巻に構成されることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、被洗浄車両を跨ぐ洗車機本体の上部に被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシが配される。洗車機本体が設定された洗車条件に基づいて、被洗浄車両に対して前後方向に相対移動しながらトップブラシを用いて洗浄を行う。トップブラシはワイヤにより吊り下げられ、昇降モータによりワイヤの巻き取り及び繰り出しを行ってトップブラシが昇降する。昇降モータに連結される巻取部は環状の溝部が設けられ、溝部内は1本のワイヤを巻回した単層巻に構成される。
【0009】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記ワイヤを2本設けてそれぞれ前記トップブラシの軸方向の両端を吊り下げ、前記ワイヤにそれぞれ対応する一対の前記溝部を前記巻取部の軸方向に並設したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記巻取部の軸方向を前記洗車機本体の前後方向に配置したことを特徴とする。また、本発明は上記構成の洗車機において、前記溝部の外周端縁に面取りを施したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記ワイヤの巻き取り量を検知する巻取センサを備え、前記巻取センサ及び前記昇降モータは前記トップブラシに対して一方の側方に配されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、トップブラシの昇降の構造を簡略化して洗車機本体を小型化できる洗車機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の洗車機の全体構成を示す側面図
【図2】本発明の実施形態の洗車機本体の構成を示す正面図
【図3】本発明の実施形態の洗車機本体の要部構成を示す正面図
【図4】本発明の実施形態の巻取部を示す正面図
【図5】本発明の実施形態の巻取部を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は本実施形態の洗車機を示す側面図、正面図である。洗車機WAは洗車機本体1を備え、洗車機本体1の進入経路上にはリモートパネル7Aが配される。被洗浄車両CAはリモートパネル7Aの面前で停車し、リモートパネル7Aの操作によって洗車の受け付け等を行う。
【0015】
洗車機本体1は前後に開口し、被洗浄車両CAを跨ぐ門型に形成される。洗車機本体1の底面には地面に設けられた左右一対のレール2上に配される車輪3が設けられる。これにより、洗車機本体1はレール2上を走行して被洗浄車両CAに対して前後に相対移動する。
【0016】
洗車機本体1には被洗浄車両CAをブラッシングする複数の回転するブラシを設けている。ブラシはトップブラシ4、サイドブラシ5及びロッカーブラシ6から成っている。トップブラシ4は被洗浄車両CAの上面を洗浄し、水平な回転軸(軸方向)4A(図3参照)に布(織布、編布、不織布等)や樹脂繊維から成るブラシ毛を放射状に固着して形成される。
【0017】
サイドブラシ5は左右一対設けられ、被洗浄車両CAの両側面と前後面に摺動して被洗浄車両CAを洗浄する。ロッカーブラシ6は左右一対設けられ、被洗浄車両CAのタイヤを含む側面下部を洗浄する。サイドブラシ5及びロッカーブラシ6もトップブラシ4と同様の回転軸及びブラシ毛を有している。
【0018】
洗車機本体1の一方の側方には洗剤やワックス等の各種液剤を貯液する複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部50が配される。タンク収納部50の上方には市水及び各貯液タンクからの液剤を電磁弁等を介して分配する分配配管部51が設けられる。分配配管部51には第1、第2浄水ノズル11、13、第1、第2洗剤ノズル12、15、撥水コートノズル14、ワックスノズル16が導出される。
【0019】
第1、第2浄水ノズル11、13は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して市水を噴射する。第1、第2洗剤ノズル12、15は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して洗剤を噴射する。撥水コートノズル14は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対して撥水コート剤を噴射する。ワックスノズル16は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対してワックスを噴射する。
【0020】
また、洗車機本体1には被洗浄車両CAを乾燥させるトップ送風ノズル21とサイド送風ノズル22とを設けている。洗車機本体1の中央上部にはトップ送風ノズル21が設けられ、両側方にはサイド送風ノズル22が設けられる。トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22はブロワ20からの送風を被洗浄車両CAに対して吹き付けて乾燥させる。
【0021】
洗車機本体1の前面上部には車両センサ8が設けられている。車両センサ8は光電センサや超音波センサ等から成り、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの外面形状を検知する。
【0022】
洗車機本体1の一方の側方の前面には操作パネル7が配される。操作パネル7はリモートパネル7Aと同様の操作ボタンを備え、被洗浄車両CAから降車したユーザ等の操作により洗車の受け付けや洗車条件の設定を行う。
【0023】
洗車条件の設定としてはシャンプー、ワックス掛け、撥水コート等を水洗いに追加するボタンが操作パネル7及びリモートパネル7Aに設けられる。また、高級なシャンプー、高級なワックス、高級な撥水コート、特殊なコート等を行うボタンも設けられている。さらに、フロントガード有り、フェンダーポール有り、ドアミラー有り、リヤワイパー有り、該当装備品無し等の装備品設定ボタンが設けられている。
【0024】
図3は洗車機本体1のトップブラシ4の要部構成を示す正面図である。トップブラシ4の回転軸4Aはトップブラシ4の中心から左右方向に伸び、左右に設けられたホルダ61によって回転自在に支持される。トップブラシ4を回転させる回転モータ60は右側方に配されて伝達機構58を介してトップブラシ4の回転軸4Aに連結される。これにより回転モータ60はトップブラシ4を回転させる。
【0025】
ホルダ61はワイヤ63Aに接続される右側方のホルダ61Aとワイヤ63Bに接続される左側方のホルダ61Bとから構成される。ホルダ61A、Bにはそれぞれ上下に配される第1ガイドローラ62A及び第2ガイドローラ62Bが軸支される。
【0026】
洗車機本体1の両側部には上下方向に伸びる案内部59が設けられる。案内部59は水平断面図がコ字状に形成され、第1ガイドローラ62A及び第2ガイドローラ62Bが当接して転動する。これによりホルダ61A、61Bは案内部59の案内によって上下に移動可能になっている。
【0027】
右側方のホルダ61Aの上部はワイヤ63Aに接続され、上方に配される滑車64Aを介して巻取部81へ接続される。ホルダ61Bの上部はワイヤ63Bに接続され、上方に配される滑車64B及び滑車64Aを介して巻取部81へ接続される(図4参照)。
【0028】
滑車64Aと巻取部81との間にはワイヤ63A、63Bの緩みを検出する緩み検出部75が配される。緩み検出部75は引っ張りバネ70A、70Bと、レバー71A、71Bと、滑車69A、69Bと、緩み検知センサ74と、を有している。引っ張りバネ70A、70Bは一端を洗車機本体1に接続され、他端をレバー71A、71Bの上端に固定される。
【0029】
レバー71A、71Bは支点73A、73Bを洗車機本体1に支持されて回動自在に配される。滑車69A、69Bはレバー71A、71Bの下端に回転自在に支持され、それぞれのワイヤ63A、63Bに接して配される。緩み検知センサ74はレバー71A、71Bの移動を検出する。ワイヤ63A及びワイヤ63Bの少なくとも一方が緩むと緩み検知センサ74の検知によって緩み検出部75は異常動作であると判定し、制御部(不図示)を介してトップブラシ4の回転を上昇させる。さらに異常動作を検知し続けると洗車機本体1の洗浄動作を全て停止する。
【0030】
巻取部81は昇降モータ65のモータ軸と連結されており、昇降モータ65の巻回によってホルダ61A及びホルダ61Bは昇降する。これにより、トップブラシ4はワイヤ63により吊り下げられて被洗浄車両CAとの距離を一定に維持される。そして、昇降モータ65の駆動によりワイヤ63の巻き取り及び繰り出しを行うことにより昇降自在になっている。
【0031】
また、ワイヤ63の巻き取り量を検知する巻取センサ67を備え、巻取センサ67はトップブラシ4に対して昇降モータ65と同じ右側方に配される。このためトップブラシ4の高さ位置を正確に把握するとともに、洗車機本体1を小型化することができる。
【0032】
図4、図5は巻取部81の正面図及び側面断面図を示している。ワイヤ63A、63Bは巻取部81に設けられた接続部79にそれぞれの一端が接続される。巻取部81は昇降モータ65のモータ軸65aに固定され、ワイヤ63が嵌合する環状の溝部82が設けられる。
【0033】
溝部82は巻取部81の周面に凹設して設けられる。また、溝部82は一対の溝部82A、82Bから構成され、溝部82A、82Bはワイヤ63A、63Bにそれぞれ対応して巻取部81の軸方向Mに並設される。
【0034】
巻取部81は軸方向Mに1本のワイヤ63を溝部82内に巻回した単層巻に構成される。即ち、溝部82はワイヤ63を1本だけ嵌合して受け入れることができる幅Uを有する。このため、ワイヤ63は軸方向Mに一定の巻回位置で径方向へ積み重なるように巻回される。
【0035】
軸方向Mは洗車機本体1の前後方向に設けられる。この時、溝部82A、82Bは軸方向Mに並設されるために洗車機本体1の横幅を小さくして小型化することができる。
【0036】
溝部82の外周端縁には面取り83が施される。これにより、ワイヤ63が溝部82に容易に進入し、ワイヤ63の脱落を防止することができる。尚、溝部82の表面を樹脂コーティングしてもよい。これにより、ワイヤ63の破損を防止することができる。
【0037】
上記構成により、洗車機本体1が設定された洗車条件に基づいて被洗浄車両CAに対して前後方向に相対移動する。そして被洗浄車両CAには貯液タンク50から液剤が供給され、洗車機本体1に設けた回転ブラシが被洗浄車両CAに摺動して被洗浄車両CAが洗車される。この時、車両センサ8の検知によってトップブラシ4は昇降モータ65の駆動により被洗浄車両CAの上面に沿って一定の距離を維持して昇降し、被洗浄車両CAの上面を傷つけずに洗浄することができる。
【0038】
本実施形態によると、トップブラシ4を昇降させる昇降モータ65と、ワイヤ63が嵌合する環状の溝部82を設けてワイヤ63を巻き取る巻取部81と、を備え、巻取部81が軸方向Mに1本のワイヤ63を溝部82内に巻回した単層巻に構成される。トップブラシ4の昇降の構造を簡略化できる。また、ワイヤ63は巻取部81の径方向に1本ずつ積み重なるように巻回される。これにより、巻取部81の軸方向Mを小さくして洗車機本体1を小型にすることができる。
【0039】
また、ワイヤ63A、63Bを設けてそれぞれトップブラシ4の両端の軸方向4Aを吊り下げ、前記ワイヤ63A、63Bにそれぞれ対応する一対の溝部82A、82Bを巻取部81の軸方向Mに並設した。これにより、一つの巻取部81で2本のワイヤ63を巻回でき、洗車機本体1の小型化をより図ることができる。
【0040】
また、軸方向Mを洗車機本体1の前後方向に配置したため、洗車機本体1の小型化をさらに容易に図ることができる。
【0041】
また、溝部82の外周端縁83に面取りを施したため、ワイヤ63が溝部82に容易に進入し、ワイヤ63の脱落を防止することができる。
【0042】
また、ワイヤ63の巻き取り量を検知する巻取センサ67を備え、巻取センサ67及び昇降モータ65はトップブラシ4に対して側方に配される。このため、トップブラシ4の高さ位置を正確に把握するとともに、洗車機本体1を小型化することができる。
【0043】
本実施形態において、巻取センサ67及び昇降モータ65はトップブラシ4に対して左側方に配されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によると、給油所等に設置して被洗浄車両の洗車を行う洗車機に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 洗車機本体
4 トップブラシ
4A 回転軸
5 サイドブラシ
6 ロッカーブラシ
7 操作パネル
7A リモートパネル
60 回転モータ
63 ワイヤ
65 昇降モータ
67 巻取センサ
81 巻取部
82 溝部
83 面取り
CA 被洗浄車両
M 軸方向
U 幅
WA 洗車機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄車両を跨ぐ洗車機本体の上部に前記被洗浄車両の上面を洗浄するトップブラシを配した洗車機において、
前記トップブラシに接続して前記トップブラシを吊り下げるワイヤと、
前記ワイヤが嵌合する環状の溝部を周面に凹設して前記ワイヤを巻き取る巻取部と、
前記巻取部を回転駆動して前記ワイヤの巻き取り及び繰り出しを行うことにより前記トップブラシを昇降させる昇降モータと、
を備え、
前記巻取部が軸方向に1本の前記ワイヤを前記溝部内に巻回した単層巻に構成されることを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記ワイヤを2本設けてそれぞれ前記トップブラシの軸方向の両端を吊り下げ、
前記ワイヤにそれぞれ対応する一対の前記溝部を前記巻取部の軸方向に並設したことを特徴とする請求項1に記載の洗車機。
【請求項3】
巻取部の軸方向を前記洗車機本体の前後方向に配置したことを特徴とする請求項2に記載の洗車機。
【請求項4】
前記溝部の外周端縁に面取りを施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗車機。
【請求項5】
前記ワイヤの巻き取り量を検知する巻取センサを備え、前記巻取センサ及び前記昇降モータは前記トップブラシに対して一方の側方に配されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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