洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシ
【課題】強度低下が少なく、耐久性が高く、且つ、洗車の際に自動車の被洗浄面を傷つけずに優れた洗浄性能を発揮することができ、更に、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い洗浄素材及びこれを用いた洗車用ブラシを提供する。
【解決手段】洗車用ブラシ10に用いられる洗浄素材は、ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなる。合成ゴム及び/又は天然ゴムとしては、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等からなる群から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
【解決手段】洗車用ブラシ10に用いられる洗浄素材は、ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなる。合成ゴム及び/又は天然ゴムとしては、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等からなる群から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシに関し、更に詳しくは、柔軟性に優れた熱可塑性樹脂と合成ゴムの混合素材とからなり、且つ、所定構造を備えることにより、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音を低減することができ、且つ、自動車の被洗浄面を傷つけずに高い洗浄性能、及び、高い耐久性を発揮することができる洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フリンジ部と交差する方向に山折りと谷折りが交互に繰り返され、回転軸への取付け側が束ねられて腰部となった扇体をなす洗浄シートが、その山折り部及び谷折り部を回転軸の中心軸方向に向けて回転軸に取り付けられた自動洗車ブラシが開示されている。
【0003】
特許文献2には、洗車機の洗浄ブラシとして、不織布により円盤状に形成され、その放射方向に複数の山折と谷折とを交互に有し、周方向に波状に形成された洗浄体素材を備え、この洗浄体素材が複数枚重ねて設けられるとともに、同心円状に縫合して構成されている洗浄体素材を備えたものが開示されている。
【0004】
特許文献3には、洗車装置の回転ブラシとしてその請求項1には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は、柔軟な素材からなり、基端部に複数回折り重ねて作られた複数の取付部を有し、その複数の取付部が回転体に該回転体の円周方向に全体にわたって取り付けられており、
(c)隣り合う全ての前記取付部の間は、基端から所定距離の非繋がり部による隙間を有しておりその非繋がり部よりも他端側で繋がっていることを特徴とする回転ブラシが開示されている。
その請求項2には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は、略長方形をした柔軟な素材からなる複数の洗浄体部品からなり、前記洗浄体部品は素材のときの一方の長辺側に該長辺を複数回折り重ねた取付部を有し、
(c)これらの洗浄体部品の素材のときの短辺と隣り合った洗浄体部品の素材のときの短辺とは、全て前記一方の長辺から所定距離の間が非接続部となるように接続され、
(d)前記取付部が回転体に該回転体の円周方向に間隔を開けて取り付けられており、
(e)隣り合う取付部の間に、前記非接続部による隙間を有していることを特徴とする洗車装置の回転ブラシが開示されている。
その請求項3には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は略長方形をした柔軟な素材からなり、該洗浄体は素材のときの一方の長辺側に所定深さの複数の切込みで分割して作られた複数の取付部を有し、
(c)その複数の取付部は、それぞれ複数回折り重ねられ回転体に該回転体の円周方向に間隔を開けて取り付けられており、
(d)隣り合う全ての取付部の間は、前記一方の長辺側に非繋がり部による隙間を有しており、その非繋がり部よりも他方の長辺側で繋がっていることを特徴とする洗車装置の回転ブラシが開示されている。
【0005】
特許文献4には、液晶表示パネルの基板を洗浄するための処理装置にて、搬送される基板を洗浄するためのブラシロールシャフトとして、炭素繊維強化プラスチックで作製した円筒状の芯材にて形成されたロールシャフト本体と、該ロールシャフト本体の外周面に装着したロールブラシとを備えたものが開示されている。ここで、ロールシャフト部の外周面の全部及び前記支軸の外周面の少なくとも一部を被覆して形成された外皮部分は、PVC熱収縮管を熱収縮させたものである。
【0006】
特許文献5には、湖または人工の大きい水体を含むことが可能な構造の底をクリーニングするための吸込み機器として、クリーニングされる表面上の連続移動するための回転手段と、吸込管とクリーニングされる材料を除去するブラシラインとからなるクリーニング手段等を備えたものが開示されている。当該クリーニング手段は、縦型PVC管によって形成される吸込管を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3079414号
【特許文献2】特開2008−189013
【特許文献3】特許第3585178号
【特許文献4】特開2009−165971
【特許文献5】特開2009−165971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の自動洗車ブラシは、その洗浄シートがフリンジ部と交差する方向に山折りと谷折りが交互に繰り返され、この山折り部及び谷折り部が回転軸の中心軸方向に向けて回転軸に取り付けられたものであるため、洗車時に山折り部及び谷折り部が衝突したり、短冊部分同士が衝突してブラッシング時に発生する洗浄音が大きいという問題がある。
特に、ドライブスルー方式の洗車では、運転者が洗車中車内に居るため、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い洗車ブラシが求められている。このような状況において、特許文献1の自動洗浄ブラシは、洗浄音の点で要求特性を満たすものではなかった。
【0009】
特許文献2に記載の洗車機の洗浄ブラシは、洗浄体素材を山折り及び谷折りにしたり、洗浄体素材を同心円状に縫合したりする等、製造に手間がかかるといった問題がある。
【0010】
特許文献3に記載の洗車装置の回転ブラシの場合、「複数回折り重ねた取付部」は、波形や略台形、パルス型を意味し、なおかつ、折り曲げ加工されたものと解釈される(特許文献3の0010、同じく図1)ことから、洗車ブラッシング時における洗浄音が大きいという問題がある。
更に、「非繋がり部による隙間」とは、特許文献3における非連続部となっている5’A,5’A部分によって形成される隙間と解されるが、このような隙間は洗浄音を抑えないか、又は、却って洗浄音を発生させる原因となると考えられる。
【0011】
特許文献4,5は、ポリ塩化ビニルの用途例を示すが、従来、洗車用ブラシとしてポリ塩化ビニルを用いた例は知られていない。ポリ塩化ビニルからなる発泡体を洗車用ブラシとして用いると強度が低いという問題点があるからである。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、強度低下が少なく、耐久性が高い洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供することにある。
本発明の他の目的は、洗車の際に自動車の被洗浄面を傷つけずに優れた洗浄性能を発揮することができる洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供することにある。
本発明の他の目的は、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供することにある。
すなわち、本発明はドライブスルー方式の洗車において洗車用ブラシが破損する等のトラブルがなく、且つ、洗浄中車内の運転者がブラッシング音に煩わされることがない洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材は、
ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、
合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、
各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなることを要旨とする。
この場合に、前記各種添加剤は、柔軟剤15重量部以上25重量部以下と、炭酸カルシウム3重量部以上18重量部以下と、発泡剤0超4重量部以下と、顔料0超10重量部以下とからなるものが好ましい。
この場合に、前記合成ゴム及び/又は天然ゴムは、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、及び、ポリイソブチレン(ブチルゴムIIR)からなる群から選ばれる少なくとも一種であればよい。
合成ゴム及び天然ゴムの両者を添加する場合には、合成ゴム85〜95重量部に対して天然ゴム15〜5重量部の比率で添加するとよい。
二種以上の合成ゴムを添加する場合には、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)85〜98重量部に対してクロロプレンゴム(CR)15〜2重量部の比率で添加するとよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗車用ブラシは、
隣接する取付穴が軸方向にシフトして形成された回転軸と、
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材からなる洗浄体であって、後端部が前記取付穴に取り付けられ、先端部が複数に分岐(n股分岐(n:n>1の整数))した又は分岐しない短冊状の複数の洗浄片を備えた複数の長方形状の無継合シートからなる洗浄体とを備え、
前記洗浄体は、全ての隣接する前記各無継合シートの両側端縁部が前記回転軸のラジアル方向に沿って継合されていることを要旨とする。
【0015】
この場合に、前記取付穴の前記回転軸方向での所定間隔Kが、式(1)の関係を満たすものであることが好ましい。
0<K<Dsinθ…式(1)
但し、K:取付穴の軸方向での所定間隔、D:洗車用ブラシの洗浄体の直径、θ:周方向隣接取付穴群が回転軸の軸方向に対して垂直な面に対して傾斜した角度θ。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、所定量のポリ塩化ビニル樹脂と、所定量の合成ゴム及び/又は天然ゴムとを含有するものであるから、強度低下が少なく、耐久性が高いという効果がある。
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、所定量のポリ塩化ビニル樹脂と、所定量の合成ゴム及び/又は天然ゴムとを含有するものであるから、洗車の際に自動車の被洗浄面を傷つけずに優れた洗浄性能を発揮するという効果がある。
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、所定量のポリ塩化ビニル樹脂と、所定量の合成ゴム及び/又は天然ゴムとを含有するものであるから、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低いという効果がある。
【0017】
本発明に係る洗車用ブラシは、隣接する取付穴が軸方向にシフトして形成された回転軸の取付穴に、複数の長方形状の無継合シートによって構成される洗浄体の後端部が取り付けられ、その洗浄体は全ての隣接する各無継合シートの両側端縁部が回転軸のラジアル方向に沿って継合されている。従って、洗車時のブラッシング時に被洗浄面へ洗浄体が確実に当たるため、洗浄効果を高めることができるという効果がある。また、洗浄体は全ての隣接する各無継合シートの両側端部が回転軸のラジアル方向に沿って継合されているため、各無継合シートがバラバラであったり、山折り・谷折りとされている場合に比べて、各無継合シート同士が衝突することにより生じる洗浄音を低減させることができるという効果がある。すなわち、本発明に係る洗車用ブラシによれば、洗浄音を低減させることができるため、ドライブスルー方式の洗車において洗浄中車内の運転者がブラッシング音に煩わされることがないという効果がある。また、当該洗浄体として本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材を用いるため、洗浄性能、及び、制音性能(騒音の抑制性能)がより高まるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12を回転軸14に取り付けた状態を示す上面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12を回転軸14に取り付けた状態を示す一部切り欠き正面図である。
【図3】回転軸14の展開図である。
【図4】取付穴18,18の取付間隔Kを説明するための図である。
【図5】無継合シート16の平面図である((a)〜(d)の4パターン)。
【図6】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って溶着した状態を示す図面代用写真である。
【図7】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って溶着した状態を示す図面代用写真である。
【図8】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って縫合した状態を示す図面代用写真である。
【図9】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って縫合した状態を示す図面代用写真である。
【図10】引裂強度、引張強度、取付け穴引裂強度の測定方法を説明するための図である。
【図11】表面摩擦抵抗の測定方法を説明するための図である。
【図12】洗浄音測定試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10に用いられる洗浄素材F、及び、これを用いた洗車用ブラシ10について説明する。
(洗浄素材F)
洗浄素材Fは、洗車用ブラシ10の洗浄体12の材料であり、具体的には、回転軸14に取り付けられる各無継合シート16,16…の材料である(図1参照)。洗浄素材Fは、ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなる。ここで、各種添加剤は、柔軟剤15重量部以上25重量部以下と、炭酸カルシウム3重量部以上18重量部以下と、発泡剤0超4重量部以下と、顔料0超10重量部以下とからなる。各種添加剤は、この組成に限定されるものではなく、他の添加剤に代えて又は更に追加して含有させてもよい。
【0020】
合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上としたのは、強度低下が少なく、耐久性が高まるという理由によるものである。合成ゴム及び/又は天然ゴムを二種以上とすると更に強度低下を防止でき耐久性が高まる効果がある。
【0021】
合成ゴム及び/又は天然ゴムは、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、及び、ポリイソブチレン(ブチルゴムIIR)からなる群から選ばれる少なくとも一種から選ばれるものであればよい。その理由は強度低下が少なく、耐久性を高める効果が高いためである。合成ゴム及び/又は天然ゴムを二種以上とすると更にこの効果が高まる。
上記のうち特に、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)が好ましい。その理由は強度低下を防止し、耐久性を高める効果が特に高いからである。
【0022】
洗浄素材Fは、上記の成分組成を有することにより、例えば、後述する表2及び表3に示す実施例に係る特性を備え、洗車用の無継合シート16に洗浄素材Fを用いると、
(1)強度低下が少なく、耐久性が高い、
(2)洗車の際に自動車の被洗浄面(自動車の塗装表面や窓ガラス・フロントガラス、タイヤ等の外装表面)を傷つけずに(柔軟性を具備)、優れた洗浄性能を発揮する、
(3)洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い、
(4)樹脂のねばりが小さく洗車時における車体への突起物への絡みつきを防止することができるという効果が得られる。
【0023】
(洗車用ブラシ10の構成)
洗浄素材Fを用いた洗車用ブラシ10について説明する。図1は洗車用ブラシ10の洗浄体12を回転軸14に取り付けた状態を示す上面図、図2はその正面図である。図3は回転軸14の展開図、図4はその取付穴18,18の取付間隔Kを説明するための図、図5は無継合シート16の平面図である。図6〜図9は、洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の側端部同士を回転軸14のラジアル方向に沿って継合させた状態を示す図面代用写真である。
これらの図において、洗車用ブラシ10は、被洗浄車両をその側面側及び上面側から覆う走行フレームの左右両側に鉛直方向を軸方向として設けられる回転軸14と、この回転軸14に取り付けられる洗浄体12とを備える。
【0024】
図3及び図4に示すように、回転軸14は、洗浄体12を取り付けるための取付穴18,18…が形成される。各列L1〜Lm(mは2以上の整数、図3に示すkは1<k<mの整数)は、回転軸14の軸方向に所定間隔(又は任意間隔)を開けて形成された複数の取付穴18,18…からなる。各列Lに隣接する他列Lは、回転軸14の周方向に所定間隔(又は任意間隔)を開け、かつ、回転軸14の軸方向に所定間隔(又は任意間隔)シフトして形成される。すなわち、隣接する取付穴18,18…は、軸方向にシフトして形成される。
【0025】
そして、取付穴18,18…は、その当該各列L1〜Lmが回転軸14の軸方向にシフトして形成されなかったとした場合に円を形成する取付穴であって周方向に隣接する取付穴18,18…(これらを特に周方向隣接取付穴群Gという)が楕円を構成する。周方向隣接取付穴群Gは、回転軸14の中心軸上の点を中心として回転軸14の軸方向、周方向又はラジアル方向に対して傾斜した平面上(例えば、周方向隣接取付穴群Gが回転軸14の軸方向に対して垂直な面に対して角度θ(図4の角度θ参照)傾斜した平面上)で楕円を構成する。
【0026】
回転軸14に形成される取付穴18,18…の軸方向での所定間隔Kは、以下の式(1)の関係を満たすものが好ましい。回転軸14の軸方向(すなわち、鉛直方向)で被洗浄面に未洗浄部分が残らないようにするためである。
0<K<Dsinθ…式(1) 但し、K:取付穴18,18…の軸方向での所定間隔、D:洗車用ブラシ10の洗浄体12の直径、θ:周方向隣接取付穴群Gが回転軸14の軸方向に対して垂直な面に対して傾斜した角度θ。
【0027】
図1〜図9に示す本実施形態に係る洗車用ブラシ10は、回転軸14の外周が16等分され、その16等分された外周面上の軸方向上に取付穴18,18…の各列L1〜Lmが形成される。取付穴18,18…は、周方向隣接取付穴群Gが回転軸14の軸方向に対して垂直な面に対して12.5°傾斜して形成される。回転軸14の外周の分割数や周方向隣接取付穴群Gの傾斜角度はこれらに限定されるものではないが、分割数としては4〜20が好ましく、傾斜角度は5〜30°が好ましい。
【0028】
洗浄体12は、図5(a)〜同図(d)に示すように、先端部が複数に分岐(n股分岐(n:n>1の整数))した又は分岐しない短冊状の複数の洗浄片16aと回転軸14に取り付けるための取付穴20とを備えた長方形状の無継合シート16からなる。図1に示す洗浄体12は、4枚の無継合シート16を両側端縁部22,22のところで回転軸14のラジアル方向に沿って縫合又は溶着したものである。ここで、無継合シート16とは、本出願書類においては、当該シートを縫合や溶着その他の手法によって繋ぎ合わせていないものをいう。本実施形態においては、無継合シート16は、後述するように洗車用洗浄素材をその素材とするため、洗車用洗浄素材をカットすることによって作製したものをいう。
特に、本実施形態においては、洗浄体12の一方の端縁部22は、洗浄片16aを備えず、切れた構成を備える。この洗浄片16aを備えない端縁部22は、その端縁部22の全体が他の洗浄体12の端縁部22に縫合や溶着その他の手法によって繋ぎ合わされる。これは、隣り合う取付部あるいは繋ぎ目部分の回転軸側に非連結部分を形成させないことにより、洗浄体12,12…の振動を抑制し洗浄音を抑えるためである。また、洗浄体12が車体表面に当たりやすくし洗浄効果を高めるためである。
【0029】
洗浄体12は、1枚〜数枚(2〜10枚)の無継合シート16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って継合し、筒状にしたものの後端部24付近をヒダ状(図6及び図7参照)又はボックス状(図8及び図9参照)に湾曲させたものによって構成される。この湾曲形状は機械加工による折り部分・曲げ部分が「明確なものではない方」が制音性の点で好ましい。洗浄体12は、図1に示すように上面視ドーナツ型である。
【0030】
継合する手法は、特に限定されないが、無継合シート16として洗浄素材Fを用いる場合には、溶着により継合しても(図5(a)〜同図(d)の両側端縁部22,22、図6及び図7参照)、縫製により継合してもよい(図5の両側端縁部22,22、図8及び図9参照)。
本実施形態の洗車用ブラシ10は、無継合シート16の両側端縁部22が筒状に継合されているため、上面視ドーナツ型に加工して回転軸14に取り付けて洗車機を運転しても、無継合シート16がバラバラにならないため、無継合シート16同士が衝突することによって生ずる衝突音が低減される。従って、ドライブスルー方式の洗車において洗浄中車内の運転者がブラッシング音に煩わされることがない。
洗浄体12の回転軸14への取付けは、取付穴18,18…の上を無継合シート16,16…の後端部24,24…で被った上から取付具28で後端部24,24…及び取付穴18,18…を抜脱不能に貫通させることによりなされる。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例及び比較例について説明する。
(洗浄素材Fの作製)
表1に示す成分組成で実施例及び比較例について洗浄素材F及び無継合シート16を作製した。洗浄素材F及び無継合シート16の作製手順は、
(1)表1に示す成分組成となるように各原料を計量し配合する、
(2)各原料を混練した後、加熱しながら十分に練り込み、3mm厚さに押し出してシート化する(洗浄素材Fが得られる)、
(3)所定の形状になるように裁断加工を行う(無継合シート16が得られる)、である。
【0032】
【表1】
【0033】
(強度試験及びその評価)
実施例1及び比較例2,3について、作製した洗浄素材を裁断加工することにより、図5(a)の無継合シート16を作製し、試験片とした。表1に各試験片のシート形状、すなわち、厚み、スリット幅、スリット穴径を併せて示した。
試験片の一端を固定し、固定した試験片の他端を測定器(プッシュ・プル計(株)イマダ製、型番:DPSH100)に連結し、
(1)引裂強度を測定する場合には、図10(a)に示す態様で引っ張り、試験片に亀裂が入ったときの目盛りが示す値を引裂強度とし、
(2)引張強度を測定する場合には、図10(b)に示す態様で引っ張り、試験片に亀裂が入ったときの目盛りが示す値を引張強度とし、
(3)取付け穴の引裂強度を測定する場合には、図10(c)態様で引っ張り、試験片に亀裂が入ったときの目盛りが示す値を取付け穴の引裂強度とした。
表2に結果を示す。
【0034】
実施例1は、比較例2、3に比べ高い特性を示し、特に、引裂強度及び引張強度については高い特性を示した。実施例1はポリ塩化ビニルに加えて、合成ゴムを添加したことにより強度が高くなったためと考えられる。
【0035】
(表面摩擦抵抗の測定及びその評価(洗浄力))
実施例1及び比較例1について、
(1)作製した洗浄素材を10cm角に切り出したもの(ドライ)と、
(2)作製した洗浄素材を10cm角に切り出して水に1分間浸漬し、水切りしたもの(ウエット)とを用意しこれらを試験片として用いた。
表面摩擦抵抗は次のようにして測定した。まず、試験片を自動車用塗料を塗布した塗装板に載せ(図11参照)、その上に480gの重りを載せた。そして、試験片を測定器(プッシュ・プル計(株)イマダ製、型番:DPSH100)に連結し、その測定器を介して試験片を水平に牽引した。試験片が動き始めたときの力(初期力)をその測定器から読み取り表面摩擦抵抗とした。そして、同一条件で2回測定し、ドライ及びウエットについてそれぞれ平均値を求めた。
表2に結果を示す。
【0036】
同表に示すように、実施例1のポリ塩化ビニルに合成ゴムを添加した洗浄素材は、比較例1のポリ塩化ビニルに各種添加剤を添加した洗浄素材に比べてウエット時もドライ時の両者において表面摩擦抵抗が高かった。また、いずれも試験時にアルミ板の塗装表面を損傷させることはなかった。このことから、本発明品は、車体表面を損傷させることなく高い洗浄力を発揮できることがわかった。実施例1の試験片の表面摩擦抵抗を測定したところ、0.2kgf以上1.5kgf以下の要求特性を満たすことがわかった。
【0037】
(洗車用ブラシ10の作製)
実施例及び比較例で作製した洗浄素材を用いて洗車用ブラシ10を作製した。
【0038】
(シート亀裂及び塗装板の傷の有無の観察、洗浄音の測定及びこれらの評価)
実施例1〜4及び比較例1〜3について、洗車用ブラシ10(トップブラシ)を洗車装置に取り付け車体を洗浄した。洗浄中の洗浄音を測定した後、洗浄後にシート亀裂及び塗装板の傷の有無を観察した。
騒音測定は、騒音計(カスタム 多機能騒音計SL−1370)を運転席に座らせた人の膝上に置いて洗車中の音を測定することにより実施した。図12に示す位置1〜8は、洗車用ブラシの洗浄位置を示す。
亀裂発生の有無は、35時間連続運転により、洗車を実施した後のシートの亀裂の有無を目視で判断することにより調査した。
表2に洗車用ブラシが位置1〜8に来たときに測定された洗浄音及び亀裂の発生の有無を示す。
【0039】
実施例の円板状の洗車用ブラシは、位置1〜8のいずれの測定位置においても、比較例の短冊状に取り付けた洗車用ブラシに比べて、ピーク値で10〜16db騒音値が低いことがわかった。その理由として、実施例等の洗車用ブラシは、両側端縁部が継合されているため、シート同士が衝突することによって生ずる騒音が低いためと考えられる。これに対し、比較例の騒音が大きかったのは、両側端縁部を継合せずに短冊状にしたためこれらが互いに衝突し合ったためと考えられる。また、実施例の洗車用ブラシを用いた場合の洗浄後の車体表面を観察したところ、被洗浄面及び車体突起物の損傷がなく、かつ、洗浄力が高いことがわかった。
【0040】
【表2】
【0041】
(一般特性)
表3に、実施例1の洗浄素材の一般的な特性を測定した結果をエチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルとの比較により示す。このことから、実施例1は自己消化性を示し、安全性も高いことがわかる。実施例2〜4についても、ポリ塩化ビニルに合成ゴム及び/又は天然ゴムを添加した基本的な構成を有するため同様のことが類推される。
【0042】
【表3】
【0043】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、強度や耐久性に優れるうえに被洗浄面の洗浄効果を高めつつ、洗浄音を低減させることができるため、ガソリンスタンドをはじめとする洗車業界で産業上利用価値が高い。
【符号の説明】
【0045】
10 洗車用ブラシ
12 洗浄体
14 回転軸
16 無継合シート
16a 洗浄片
18,20 取付穴
22 両側端縁部
24 後端部
28 取付具
L1〜Lm 各列
G 周方向隣接取付穴群
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシに関し、更に詳しくは、柔軟性に優れた熱可塑性樹脂と合成ゴムの混合素材とからなり、且つ、所定構造を備えることにより、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音を低減することができ、且つ、自動車の被洗浄面を傷つけずに高い洗浄性能、及び、高い耐久性を発揮することができる洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フリンジ部と交差する方向に山折りと谷折りが交互に繰り返され、回転軸への取付け側が束ねられて腰部となった扇体をなす洗浄シートが、その山折り部及び谷折り部を回転軸の中心軸方向に向けて回転軸に取り付けられた自動洗車ブラシが開示されている。
【0003】
特許文献2には、洗車機の洗浄ブラシとして、不織布により円盤状に形成され、その放射方向に複数の山折と谷折とを交互に有し、周方向に波状に形成された洗浄体素材を備え、この洗浄体素材が複数枚重ねて設けられるとともに、同心円状に縫合して構成されている洗浄体素材を備えたものが開示されている。
【0004】
特許文献3には、洗車装置の回転ブラシとしてその請求項1には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は、柔軟な素材からなり、基端部に複数回折り重ねて作られた複数の取付部を有し、その複数の取付部が回転体に該回転体の円周方向に全体にわたって取り付けられており、
(c)隣り合う全ての前記取付部の間は、基端から所定距離の非繋がり部による隙間を有しておりその非繋がり部よりも他端側で繋がっていることを特徴とする回転ブラシが開示されている。
その請求項2には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は、略長方形をした柔軟な素材からなる複数の洗浄体部品からなり、前記洗浄体部品は素材のときの一方の長辺側に該長辺を複数回折り重ねた取付部を有し、
(c)これらの洗浄体部品の素材のときの短辺と隣り合った洗浄体部品の素材のときの短辺とは、全て前記一方の長辺から所定距離の間が非接続部となるように接続され、
(d)前記取付部が回転体に該回転体の円周方向に間隔を開けて取り付けられており、
(e)隣り合う取付部の間に、前記非接続部による隙間を有していることを特徴とする洗車装置の回転ブラシが開示されている。
その請求項3には、(a)回転体の外周に円盤状にまたは軸方向にずらしながら螺旋状に洗浄体を取付けた、洗車装置の回転ブラシにおいて、
(b)前記洗浄体は略長方形をした柔軟な素材からなり、該洗浄体は素材のときの一方の長辺側に所定深さの複数の切込みで分割して作られた複数の取付部を有し、
(c)その複数の取付部は、それぞれ複数回折り重ねられ回転体に該回転体の円周方向に間隔を開けて取り付けられており、
(d)隣り合う全ての取付部の間は、前記一方の長辺側に非繋がり部による隙間を有しており、その非繋がり部よりも他方の長辺側で繋がっていることを特徴とする洗車装置の回転ブラシが開示されている。
【0005】
特許文献4には、液晶表示パネルの基板を洗浄するための処理装置にて、搬送される基板を洗浄するためのブラシロールシャフトとして、炭素繊維強化プラスチックで作製した円筒状の芯材にて形成されたロールシャフト本体と、該ロールシャフト本体の外周面に装着したロールブラシとを備えたものが開示されている。ここで、ロールシャフト部の外周面の全部及び前記支軸の外周面の少なくとも一部を被覆して形成された外皮部分は、PVC熱収縮管を熱収縮させたものである。
【0006】
特許文献5には、湖または人工の大きい水体を含むことが可能な構造の底をクリーニングするための吸込み機器として、クリーニングされる表面上の連続移動するための回転手段と、吸込管とクリーニングされる材料を除去するブラシラインとからなるクリーニング手段等を備えたものが開示されている。当該クリーニング手段は、縦型PVC管によって形成される吸込管を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3079414号
【特許文献2】特開2008−189013
【特許文献3】特許第3585178号
【特許文献4】特開2009−165971
【特許文献5】特開2009−165971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の自動洗車ブラシは、その洗浄シートがフリンジ部と交差する方向に山折りと谷折りが交互に繰り返され、この山折り部及び谷折り部が回転軸の中心軸方向に向けて回転軸に取り付けられたものであるため、洗車時に山折り部及び谷折り部が衝突したり、短冊部分同士が衝突してブラッシング時に発生する洗浄音が大きいという問題がある。
特に、ドライブスルー方式の洗車では、運転者が洗車中車内に居るため、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い洗車ブラシが求められている。このような状況において、特許文献1の自動洗浄ブラシは、洗浄音の点で要求特性を満たすものではなかった。
【0009】
特許文献2に記載の洗車機の洗浄ブラシは、洗浄体素材を山折り及び谷折りにしたり、洗浄体素材を同心円状に縫合したりする等、製造に手間がかかるといった問題がある。
【0010】
特許文献3に記載の洗車装置の回転ブラシの場合、「複数回折り重ねた取付部」は、波形や略台形、パルス型を意味し、なおかつ、折り曲げ加工されたものと解釈される(特許文献3の0010、同じく図1)ことから、洗車ブラッシング時における洗浄音が大きいという問題がある。
更に、「非繋がり部による隙間」とは、特許文献3における非連続部となっている5’A,5’A部分によって形成される隙間と解されるが、このような隙間は洗浄音を抑えないか、又は、却って洗浄音を発生させる原因となると考えられる。
【0011】
特許文献4,5は、ポリ塩化ビニルの用途例を示すが、従来、洗車用ブラシとしてポリ塩化ビニルを用いた例は知られていない。ポリ塩化ビニルからなる発泡体を洗車用ブラシとして用いると強度が低いという問題点があるからである。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、強度低下が少なく、耐久性が高い洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供することにある。
本発明の他の目的は、洗車の際に自動車の被洗浄面を傷つけずに優れた洗浄性能を発揮することができる洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供することにある。
本発明の他の目的は、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供することにある。
すなわち、本発明はドライブスルー方式の洗車において洗車用ブラシが破損する等のトラブルがなく、且つ、洗浄中車内の運転者がブラッシング音に煩わされることがない洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材は、
ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、
合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、
各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなることを要旨とする。
この場合に、前記各種添加剤は、柔軟剤15重量部以上25重量部以下と、炭酸カルシウム3重量部以上18重量部以下と、発泡剤0超4重量部以下と、顔料0超10重量部以下とからなるものが好ましい。
この場合に、前記合成ゴム及び/又は天然ゴムは、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、及び、ポリイソブチレン(ブチルゴムIIR)からなる群から選ばれる少なくとも一種であればよい。
合成ゴム及び天然ゴムの両者を添加する場合には、合成ゴム85〜95重量部に対して天然ゴム15〜5重量部の比率で添加するとよい。
二種以上の合成ゴムを添加する場合には、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)85〜98重量部に対してクロロプレンゴム(CR)15〜2重量部の比率で添加するとよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗車用ブラシは、
隣接する取付穴が軸方向にシフトして形成された回転軸と、
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材からなる洗浄体であって、後端部が前記取付穴に取り付けられ、先端部が複数に分岐(n股分岐(n:n>1の整数))した又は分岐しない短冊状の複数の洗浄片を備えた複数の長方形状の無継合シートからなる洗浄体とを備え、
前記洗浄体は、全ての隣接する前記各無継合シートの両側端縁部が前記回転軸のラジアル方向に沿って継合されていることを要旨とする。
【0015】
この場合に、前記取付穴の前記回転軸方向での所定間隔Kが、式(1)の関係を満たすものであることが好ましい。
0<K<Dsinθ…式(1)
但し、K:取付穴の軸方向での所定間隔、D:洗車用ブラシの洗浄体の直径、θ:周方向隣接取付穴群が回転軸の軸方向に対して垂直な面に対して傾斜した角度θ。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、所定量のポリ塩化ビニル樹脂と、所定量の合成ゴム及び/又は天然ゴムとを含有するものであるから、強度低下が少なく、耐久性が高いという効果がある。
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、所定量のポリ塩化ビニル樹脂と、所定量の合成ゴム及び/又は天然ゴムとを含有するものであるから、洗車の際に自動車の被洗浄面を傷つけずに優れた洗浄性能を発揮するという効果がある。
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、所定量のポリ塩化ビニル樹脂と、所定量の合成ゴム及び/又は天然ゴムとを含有するものであるから、洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低いという効果がある。
【0017】
本発明に係る洗車用ブラシは、隣接する取付穴が軸方向にシフトして形成された回転軸の取付穴に、複数の長方形状の無継合シートによって構成される洗浄体の後端部が取り付けられ、その洗浄体は全ての隣接する各無継合シートの両側端縁部が回転軸のラジアル方向に沿って継合されている。従って、洗車時のブラッシング時に被洗浄面へ洗浄体が確実に当たるため、洗浄効果を高めることができるという効果がある。また、洗浄体は全ての隣接する各無継合シートの両側端部が回転軸のラジアル方向に沿って継合されているため、各無継合シートがバラバラであったり、山折り・谷折りとされている場合に比べて、各無継合シート同士が衝突することにより生じる洗浄音を低減させることができるという効果がある。すなわち、本発明に係る洗車用ブラシによれば、洗浄音を低減させることができるため、ドライブスルー方式の洗車において洗浄中車内の運転者がブラッシング音に煩わされることがないという効果がある。また、当該洗浄体として本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材を用いるため、洗浄性能、及び、制音性能(騒音の抑制性能)がより高まるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12を回転軸14に取り付けた状態を示す上面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12を回転軸14に取り付けた状態を示す一部切り欠き正面図である。
【図3】回転軸14の展開図である。
【図4】取付穴18,18の取付間隔Kを説明するための図である。
【図5】無継合シート16の平面図である((a)〜(d)の4パターン)。
【図6】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って溶着した状態を示す図面代用写真である。
【図7】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って溶着した状態を示す図面代用写真である。
【図8】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って縫合した状態を示す図面代用写真である。
【図9】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って縫合した状態を示す図面代用写真である。
【図10】引裂強度、引張強度、取付け穴引裂強度の測定方法を説明するための図である。
【図11】表面摩擦抵抗の測定方法を説明するための図である。
【図12】洗浄音測定試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシ10に用いられる洗浄素材F、及び、これを用いた洗車用ブラシ10について説明する。
(洗浄素材F)
洗浄素材Fは、洗車用ブラシ10の洗浄体12の材料であり、具体的には、回転軸14に取り付けられる各無継合シート16,16…の材料である(図1参照)。洗浄素材Fは、ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなる。ここで、各種添加剤は、柔軟剤15重量部以上25重量部以下と、炭酸カルシウム3重量部以上18重量部以下と、発泡剤0超4重量部以下と、顔料0超10重量部以下とからなる。各種添加剤は、この組成に限定されるものではなく、他の添加剤に代えて又は更に追加して含有させてもよい。
【0020】
合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上としたのは、強度低下が少なく、耐久性が高まるという理由によるものである。合成ゴム及び/又は天然ゴムを二種以上とすると更に強度低下を防止でき耐久性が高まる効果がある。
【0021】
合成ゴム及び/又は天然ゴムは、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、及び、ポリイソブチレン(ブチルゴムIIR)からなる群から選ばれる少なくとも一種から選ばれるものであればよい。その理由は強度低下が少なく、耐久性を高める効果が高いためである。合成ゴム及び/又は天然ゴムを二種以上とすると更にこの効果が高まる。
上記のうち特に、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)が好ましい。その理由は強度低下を防止し、耐久性を高める効果が特に高いからである。
【0022】
洗浄素材Fは、上記の成分組成を有することにより、例えば、後述する表2及び表3に示す実施例に係る特性を備え、洗車用の無継合シート16に洗浄素材Fを用いると、
(1)強度低下が少なく、耐久性が高い、
(2)洗車の際に自動車の被洗浄面(自動車の塗装表面や窓ガラス・フロントガラス、タイヤ等の外装表面)を傷つけずに(柔軟性を具備)、優れた洗浄性能を発揮する、
(3)洗車ブラッシング時に発生する洗浄音が低い、
(4)樹脂のねばりが小さく洗車時における車体への突起物への絡みつきを防止することができるという効果が得られる。
【0023】
(洗車用ブラシ10の構成)
洗浄素材Fを用いた洗車用ブラシ10について説明する。図1は洗車用ブラシ10の洗浄体12を回転軸14に取り付けた状態を示す上面図、図2はその正面図である。図3は回転軸14の展開図、図4はその取付穴18,18の取付間隔Kを説明するための図、図5は無継合シート16の平面図である。図6〜図9は、洗車用ブラシ10の洗浄体12の各無継合シート16,16の側端部同士を回転軸14のラジアル方向に沿って継合させた状態を示す図面代用写真である。
これらの図において、洗車用ブラシ10は、被洗浄車両をその側面側及び上面側から覆う走行フレームの左右両側に鉛直方向を軸方向として設けられる回転軸14と、この回転軸14に取り付けられる洗浄体12とを備える。
【0024】
図3及び図4に示すように、回転軸14は、洗浄体12を取り付けるための取付穴18,18…が形成される。各列L1〜Lm(mは2以上の整数、図3に示すkは1<k<mの整数)は、回転軸14の軸方向に所定間隔(又は任意間隔)を開けて形成された複数の取付穴18,18…からなる。各列Lに隣接する他列Lは、回転軸14の周方向に所定間隔(又は任意間隔)を開け、かつ、回転軸14の軸方向に所定間隔(又は任意間隔)シフトして形成される。すなわち、隣接する取付穴18,18…は、軸方向にシフトして形成される。
【0025】
そして、取付穴18,18…は、その当該各列L1〜Lmが回転軸14の軸方向にシフトして形成されなかったとした場合に円を形成する取付穴であって周方向に隣接する取付穴18,18…(これらを特に周方向隣接取付穴群Gという)が楕円を構成する。周方向隣接取付穴群Gは、回転軸14の中心軸上の点を中心として回転軸14の軸方向、周方向又はラジアル方向に対して傾斜した平面上(例えば、周方向隣接取付穴群Gが回転軸14の軸方向に対して垂直な面に対して角度θ(図4の角度θ参照)傾斜した平面上)で楕円を構成する。
【0026】
回転軸14に形成される取付穴18,18…の軸方向での所定間隔Kは、以下の式(1)の関係を満たすものが好ましい。回転軸14の軸方向(すなわち、鉛直方向)で被洗浄面に未洗浄部分が残らないようにするためである。
0<K<Dsinθ…式(1) 但し、K:取付穴18,18…の軸方向での所定間隔、D:洗車用ブラシ10の洗浄体12の直径、θ:周方向隣接取付穴群Gが回転軸14の軸方向に対して垂直な面に対して傾斜した角度θ。
【0027】
図1〜図9に示す本実施形態に係る洗車用ブラシ10は、回転軸14の外周が16等分され、その16等分された外周面上の軸方向上に取付穴18,18…の各列L1〜Lmが形成される。取付穴18,18…は、周方向隣接取付穴群Gが回転軸14の軸方向に対して垂直な面に対して12.5°傾斜して形成される。回転軸14の外周の分割数や周方向隣接取付穴群Gの傾斜角度はこれらに限定されるものではないが、分割数としては4〜20が好ましく、傾斜角度は5〜30°が好ましい。
【0028】
洗浄体12は、図5(a)〜同図(d)に示すように、先端部が複数に分岐(n股分岐(n:n>1の整数))した又は分岐しない短冊状の複数の洗浄片16aと回転軸14に取り付けるための取付穴20とを備えた長方形状の無継合シート16からなる。図1に示す洗浄体12は、4枚の無継合シート16を両側端縁部22,22のところで回転軸14のラジアル方向に沿って縫合又は溶着したものである。ここで、無継合シート16とは、本出願書類においては、当該シートを縫合や溶着その他の手法によって繋ぎ合わせていないものをいう。本実施形態においては、無継合シート16は、後述するように洗車用洗浄素材をその素材とするため、洗車用洗浄素材をカットすることによって作製したものをいう。
特に、本実施形態においては、洗浄体12の一方の端縁部22は、洗浄片16aを備えず、切れた構成を備える。この洗浄片16aを備えない端縁部22は、その端縁部22の全体が他の洗浄体12の端縁部22に縫合や溶着その他の手法によって繋ぎ合わされる。これは、隣り合う取付部あるいは繋ぎ目部分の回転軸側に非連結部分を形成させないことにより、洗浄体12,12…の振動を抑制し洗浄音を抑えるためである。また、洗浄体12が車体表面に当たりやすくし洗浄効果を高めるためである。
【0029】
洗浄体12は、1枚〜数枚(2〜10枚)の無継合シート16の両側端縁部22,22を回転軸14のラジアル方向に沿って継合し、筒状にしたものの後端部24付近をヒダ状(図6及び図7参照)又はボックス状(図8及び図9参照)に湾曲させたものによって構成される。この湾曲形状は機械加工による折り部分・曲げ部分が「明確なものではない方」が制音性の点で好ましい。洗浄体12は、図1に示すように上面視ドーナツ型である。
【0030】
継合する手法は、特に限定されないが、無継合シート16として洗浄素材Fを用いる場合には、溶着により継合しても(図5(a)〜同図(d)の両側端縁部22,22、図6及び図7参照)、縫製により継合してもよい(図5の両側端縁部22,22、図8及び図9参照)。
本実施形態の洗車用ブラシ10は、無継合シート16の両側端縁部22が筒状に継合されているため、上面視ドーナツ型に加工して回転軸14に取り付けて洗車機を運転しても、無継合シート16がバラバラにならないため、無継合シート16同士が衝突することによって生ずる衝突音が低減される。従って、ドライブスルー方式の洗車において洗浄中車内の運転者がブラッシング音に煩わされることがない。
洗浄体12の回転軸14への取付けは、取付穴18,18…の上を無継合シート16,16…の後端部24,24…で被った上から取付具28で後端部24,24…及び取付穴18,18…を抜脱不能に貫通させることによりなされる。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例及び比較例について説明する。
(洗浄素材Fの作製)
表1に示す成分組成で実施例及び比較例について洗浄素材F及び無継合シート16を作製した。洗浄素材F及び無継合シート16の作製手順は、
(1)表1に示す成分組成となるように各原料を計量し配合する、
(2)各原料を混練した後、加熱しながら十分に練り込み、3mm厚さに押し出してシート化する(洗浄素材Fが得られる)、
(3)所定の形状になるように裁断加工を行う(無継合シート16が得られる)、である。
【0032】
【表1】
【0033】
(強度試験及びその評価)
実施例1及び比較例2,3について、作製した洗浄素材を裁断加工することにより、図5(a)の無継合シート16を作製し、試験片とした。表1に各試験片のシート形状、すなわち、厚み、スリット幅、スリット穴径を併せて示した。
試験片の一端を固定し、固定した試験片の他端を測定器(プッシュ・プル計(株)イマダ製、型番:DPSH100)に連結し、
(1)引裂強度を測定する場合には、図10(a)に示す態様で引っ張り、試験片に亀裂が入ったときの目盛りが示す値を引裂強度とし、
(2)引張強度を測定する場合には、図10(b)に示す態様で引っ張り、試験片に亀裂が入ったときの目盛りが示す値を引張強度とし、
(3)取付け穴の引裂強度を測定する場合には、図10(c)態様で引っ張り、試験片に亀裂が入ったときの目盛りが示す値を取付け穴の引裂強度とした。
表2に結果を示す。
【0034】
実施例1は、比較例2、3に比べ高い特性を示し、特に、引裂強度及び引張強度については高い特性を示した。実施例1はポリ塩化ビニルに加えて、合成ゴムを添加したことにより強度が高くなったためと考えられる。
【0035】
(表面摩擦抵抗の測定及びその評価(洗浄力))
実施例1及び比較例1について、
(1)作製した洗浄素材を10cm角に切り出したもの(ドライ)と、
(2)作製した洗浄素材を10cm角に切り出して水に1分間浸漬し、水切りしたもの(ウエット)とを用意しこれらを試験片として用いた。
表面摩擦抵抗は次のようにして測定した。まず、試験片を自動車用塗料を塗布した塗装板に載せ(図11参照)、その上に480gの重りを載せた。そして、試験片を測定器(プッシュ・プル計(株)イマダ製、型番:DPSH100)に連結し、その測定器を介して試験片を水平に牽引した。試験片が動き始めたときの力(初期力)をその測定器から読み取り表面摩擦抵抗とした。そして、同一条件で2回測定し、ドライ及びウエットについてそれぞれ平均値を求めた。
表2に結果を示す。
【0036】
同表に示すように、実施例1のポリ塩化ビニルに合成ゴムを添加した洗浄素材は、比較例1のポリ塩化ビニルに各種添加剤を添加した洗浄素材に比べてウエット時もドライ時の両者において表面摩擦抵抗が高かった。また、いずれも試験時にアルミ板の塗装表面を損傷させることはなかった。このことから、本発明品は、車体表面を損傷させることなく高い洗浄力を発揮できることがわかった。実施例1の試験片の表面摩擦抵抗を測定したところ、0.2kgf以上1.5kgf以下の要求特性を満たすことがわかった。
【0037】
(洗車用ブラシ10の作製)
実施例及び比較例で作製した洗浄素材を用いて洗車用ブラシ10を作製した。
【0038】
(シート亀裂及び塗装板の傷の有無の観察、洗浄音の測定及びこれらの評価)
実施例1〜4及び比較例1〜3について、洗車用ブラシ10(トップブラシ)を洗車装置に取り付け車体を洗浄した。洗浄中の洗浄音を測定した後、洗浄後にシート亀裂及び塗装板の傷の有無を観察した。
騒音測定は、騒音計(カスタム 多機能騒音計SL−1370)を運転席に座らせた人の膝上に置いて洗車中の音を測定することにより実施した。図12に示す位置1〜8は、洗車用ブラシの洗浄位置を示す。
亀裂発生の有無は、35時間連続運転により、洗車を実施した後のシートの亀裂の有無を目視で判断することにより調査した。
表2に洗車用ブラシが位置1〜8に来たときに測定された洗浄音及び亀裂の発生の有無を示す。
【0039】
実施例の円板状の洗車用ブラシは、位置1〜8のいずれの測定位置においても、比較例の短冊状に取り付けた洗車用ブラシに比べて、ピーク値で10〜16db騒音値が低いことがわかった。その理由として、実施例等の洗車用ブラシは、両側端縁部が継合されているため、シート同士が衝突することによって生ずる騒音が低いためと考えられる。これに対し、比較例の騒音が大きかったのは、両側端縁部を継合せずに短冊状にしたためこれらが互いに衝突し合ったためと考えられる。また、実施例の洗車用ブラシを用いた場合の洗浄後の車体表面を観察したところ、被洗浄面及び車体突起物の損傷がなく、かつ、洗浄力が高いことがわかった。
【0040】
【表2】
【0041】
(一般特性)
表3に、実施例1の洗浄素材の一般的な特性を測定した結果をエチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルとの比較により示す。このことから、実施例1は自己消化性を示し、安全性も高いことがわかる。実施例2〜4についても、ポリ塩化ビニルに合成ゴム及び/又は天然ゴムを添加した基本的な構成を有するため同様のことが類推される。
【0042】
【表3】
【0043】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る洗車用ブラシに用いられる洗浄素材、及び、これを用いた洗車用ブラシは、強度や耐久性に優れるうえに被洗浄面の洗浄効果を高めつつ、洗浄音を低減させることができるため、ガソリンスタンドをはじめとする洗車業界で産業上利用価値が高い。
【符号の説明】
【0045】
10 洗車用ブラシ
12 洗浄体
14 回転軸
16 無継合シート
16a 洗浄片
18,20 取付穴
22 両側端縁部
24 後端部
28 取付具
L1〜Lm 各列
G 周方向隣接取付穴群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、
合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、
各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなることを特徴とする洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項2】
前記各種添加剤は、
柔軟剤15重量部以上25重量部以下と、炭酸カルシウム3重量部以上18重量部以下と、発泡剤0超4重量部以下と、顔料0超10重量部以下とからなることを特徴とする請求項1に記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項3】
前記合成ゴム及び/又は天然ゴムは、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、及び、ポリイソブチレン(ブチルゴムIIR)からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項4】
合成ゴム85〜98重量部に対して天然ゴム15〜2重量部の比率で添加されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項5】
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)85〜98重量部に対してクロロプレンゴム(CR)15〜2重量部の比率で添加されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項6】
隣接する取付穴が軸方向にシフトして形成された回転軸と、
請求項1〜5のいずれかに記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材からなる洗浄体であって、後端部が前記取付穴に取り付けられ、先端部が複数に分岐(n股分岐(n:n>1の整数))した又は分岐しない短冊状の複数の洗浄片を備えた複数の長方形状の無継合シートからなる洗浄体とを備え、
前記洗浄体は、全ての隣接する前記各無継合シートの両側端縁部が前記回転軸のラジアル方向に沿って継合されていることを特徴とする洗車用ブラシ。
【請求項7】
前記取付穴の前記回転軸方向での所定間隔Kが、式(1)の関係を満たすものであることを特徴とする請求項6に記載の洗車用ブラシ。
0<K<Dsinθ…式(1)
但し、K:取付穴の軸方向での所定間隔、D:洗車用ブラシの洗浄体の直径、θ:周方向隣接取付穴群が回転軸の軸方向に対して垂直な面に対して傾斜した角度θ。
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂を5重量部以上45重量部以下と、
合成ゴム及び/又は天然ゴムを20重量部以上60重量部以下と、
各種添加剤を18重量部超57重量部以下とからなることを特徴とする洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項2】
前記各種添加剤は、
柔軟剤15重量部以上25重量部以下と、炭酸カルシウム3重量部以上18重量部以下と、発泡剤0超4重量部以下と、顔料0超10重量部以下とからなることを特徴とする請求項1に記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項3】
前記合成ゴム及び/又は天然ゴムは、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR))、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、特殊エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、及び、ポリイソブチレン(ブチルゴムIIR)からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項4】
合成ゴム85〜98重量部に対して天然ゴム15〜2重量部の比率で添加されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項5】
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)85〜98重量部に対してクロロプレンゴム(CR)15〜2重量部の比率で添加されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材。
【請求項6】
隣接する取付穴が軸方向にシフトして形成された回転軸と、
請求項1〜5のいずれかに記載の洗車用ブラシに用いられる洗浄素材からなる洗浄体であって、後端部が前記取付穴に取り付けられ、先端部が複数に分岐(n股分岐(n:n>1の整数))した又は分岐しない短冊状の複数の洗浄片を備えた複数の長方形状の無継合シートからなる洗浄体とを備え、
前記洗浄体は、全ての隣接する前記各無継合シートの両側端縁部が前記回転軸のラジアル方向に沿って継合されていることを特徴とする洗車用ブラシ。
【請求項7】
前記取付穴の前記回転軸方向での所定間隔Kが、式(1)の関係を満たすものであることを特徴とする請求項6に記載の洗車用ブラシ。
0<K<Dsinθ…式(1)
但し、K:取付穴の軸方向での所定間隔、D:洗車用ブラシの洗浄体の直径、θ:周方向隣接取付穴群が回転軸の軸方向に対して垂直な面に対して傾斜した角度θ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−206270(P2011−206270A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77023(P2010−77023)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306030921)米津ブラシ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306030921)米津ブラシ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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