説明

洗車用ブラシ

【目的】車体を損傷させることなく高い洗浄力を備え、かつ、耐久性・防火性(難燃性・自己消火性)に優れた洗車用ブラシを提供すること。
【解決手段】洗車用ブラシは、軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子複合材料からなるフィラメントからなる。洗車用ブラシの洗浄片10の断面形状は、断面多角形状、断面星形形状、断面の周囲に凹凸が施された形状、断面の周囲に鋭角部分が施された形状からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車用ブラシに関し、更に詳しくは、自動車の塗装表面や窓ガラス・フロントガラス、タイヤ等の外装表面を傷つけることなく高い洗浄力を備え、更に、耐久性・防火性(難燃性・自己消火性)にも優れた洗車用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンド等で多用されている洗車用ブラシに関し、特許文献1に記載の洗車用ブラシ用の洗浄片が知られている。これは、洗車用ブラシを構成する多数の柔軟な洗浄片を、メタロセン触媒を用いてα−オレフィンを共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含む樹脂の発泡体から構成するようにしたものである。
更に、特許文献2に記載の炭素繊維を含む洗車用ブラシや、本出願人によって出願された特許文献3,4に記載の炭素繊維束を用いたブラシが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−180780
【特許文献2】特開2008−296848
【特許文献3】特開2008−196102
【特許文献4】特開2008−036106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の洗車用ブラシの洗浄片は、車体を損傷させることがない点では優れているものの、洗浄力が弱いという問題がある。
また、上記特許文献2〜4に記載されている炭素繊維を用いたブラシは、耐熱性に優れているが、燃えやすく、防火性(難燃性・自己消化性)が良くない。尚、本明細書においては、防火性とは、燃えにくい性質又は不燃性を包含する意味である。また、本明細書においては、防火性に含まれる性質のうち、難燃性・自己消化性は、同義で用いている。そして、難燃性・自己消火性は、燃えにくいというだけではなく、火が付いた状態で火元に置いておくと燃焼し続けるが、火を遠ざけると自然に鎮火する性質、すなわち、延焼を最小限にくい止める性質を指す。
更に、一般的に炭素繊維は硬いため、加工せずに洗車用ブラシとして用いると車体を傷つけるという問題もある。
【0005】
そこで、車体を損傷させないだけではなく、洗浄力が高い洗車用ブラシが求められている。また、コスト等を低減させるべく、耐久性の高い洗車用ブラシが求められてる。更に、ガソリンスタンド等において万が一火災が発生した場合に被害を最小限に食い止めるべく、防火性(難燃性・自己消火性)に優れた洗車用ブラシが求められている。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、車体を損傷させることなく高い洗浄力を備え、かつ、耐久性・防火性(難燃性・自己消火性)に優れた洗車用ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者等は、車体を損傷させることなく高い洗浄力を備え、かつ、耐久性・防火性(難燃性・自己消火性)に優れた洗車用ブラシを得るために鋭意研究を行ったところ、洗車用ブラシの洗浄片を軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子複合材料からなるフィラメントによって構成すればよいことを知見するに至った。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
本発明に係る洗車用ブラシは、軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子複合材料からなるフィラメント状の洗浄片からなることを要旨とする。
この場合に、前記洗浄片は、断面多角形状、断面星形形状、断面の周囲に凹凸が施された形状、又は、断面の周囲に鋭角部分が施された形状であることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る洗車用ブラシは、軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子複合材料からなるフィラメント状の洗浄片からなるものであるから、車体を損傷させることなく高い洗浄力を備え、かつ、耐久性・防火性(難燃性・自己消火性)に優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシの洗浄片10の断面を含む斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシの洗浄片10の断面を含む斜視図である。この洗浄片10は、軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子複合材料からなるフィラメントによって構成される。この洗浄片10は、軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子複合材料を溶融・混合したものを、押出成形し、冷却して得られる。押出成形に用いられる型の形状は、特に限定されないが、押し出される洗浄片10の表面のいずれかに突条部分が形成されているものが好ましい。例えば、断面多角形状、断面星形形状、断面の周囲に凹凸が施された形状、断面の周囲に鋭角部分が施された形状が好ましい。
【0011】
洗浄片10を一又は複数本束ねてなる本実施形態に係る洗車用ブラシは、自動車の塗装表面や窓ガラス・フロントガラス、タイヤ等の外装表面を損傷させることがない上、適度な硬度を備えるためコシがあり、高い洗浄力を発揮する。しかも、本実施形態に係る洗車用ブラシは、軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子樹脂からなるフィラメント状のものからなるため、
(1)耐寒性に優れ、
(2)経時変化により強度が低下せず耐久性にも優れ、かつ、
(3)防火性(難燃性・自己消火性)にも優れる。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例及び比較例について説明する。
(試験片の作製)
各実施例1〜4について、軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子材料を溶融・混合し、断面星形形状の成形型を用いて押し出し成形を行い、フィラメント状の洗浄片を得た。このようにして得た各洗浄片を各試験片とした。
【0013】
(各種測定・各種試験)
実施例1〜4について、比重(JIS K 7112)、硬さ(JIS K 6253)を測定するとともに、耐寒性(JIS K 6723)の試験、及び、引張試験(JIS K 6723)を行った。表1はその結果を示す。
【0014】
【表1】

【0015】
(評価)
表1に示すように、実施例1〜4の軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子材料からなるフィラメント状の試験片は、耐寒性に優れ、適度な硬さ・強度を備えることがわかった。また、実施例1〜4のフィラメント状の試験片を束ねて試験用ブラシとし、各試験用ブラシを用いて塗装アルミ板を洗浄したところ、その塗装表面を損傷させることなく洗浄することができた。このことから、実施例1〜4に係る試験用ブラシは、車体表面を損傷させることなく高い洗浄力を発揮できることがわかった。
更に、これらの試験用ブラシに点火し火元から離して放置したところ、いずれも鎮火した。このことから、実施例1〜4に係る試験用ブラシは、防火性(難燃性・自己消火性)に優れることがわかった。
【0016】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に係る洗車用ブラシは、車体を損傷させることなく高い洗浄力を備え、かつ、耐久性・防火性(難燃性・自己消火性)に優れるため、ガソリンスタンドをはじめとする洗車業界において産業上利用価値が高い。
【符号の説明】
【0018】
10 洗浄片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質塩化ビニル樹脂を主成分として含む高分子複合材料からなるフィラメント状の洗浄片からなることを特徴とする洗車用ブラシ。
【請求項2】
前記洗浄片は、断面多角形状、断面星形形状、断面の周囲に凹凸が施された形状、又は、断面の周囲に鋭角部分が施された形状であることを特徴とする請求項1に記載の洗車用ブラシ。

【図1】
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