説明

洗顔用具および洗顔用泡立て方法

【課題】洗顔料を使用して洗顔をするに際して、非常にきめ細かなクリーミィな泡をより多く発生させ得るとともに、かつその大量のきめ細かなクリーミィな泡・泡立ちを良好に持続し得て、毛穴の奥や小鼻の脇などの落ちにくい顔の汚れや古い角質の除去などの洗顔動作を、より繊細な使用感覚とタッチで行うことを可能とし、結果として、より精美で優れた洗顔効果を得ることを可能にする洗顔用具とその洗顔用具を用いた洗顔用泡立て方法を提供すること。
【解決手段】単繊維繊度が0.001dtex以上、1dtex以下の合成繊維で構成された布帛(a)2と、編目密度が20個/cm2 以上、1000個/cm2 以下である編物(b)3からなり、かつ該編物(b)が複数枚積層された構成で使用され、全体が袋状物に形成されてなる洗顔用具であり、また該洗顔用具を用いた洗顔用泡立て方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗顔用具と洗顔用泡立て方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、洗顔時に、洗顔料によるきめ細かくクリーミィな泡を形成させて洗顔するのに好適に用いることのできる洗顔用具と洗顔用泡立て方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、1.1デシテックス以下などの極細繊維(以下、マイクロファイバーということがある)からなる布帛を洗顔時に用いることにより、石けんなどの洗顔料をクリーミィに泡立たせて洗顔をすることが可能となり、それにより毛穴の奥とか鼻の脇等にまで効果的な洗顔効果を与え得ることが知られている。
【0004】
そして、そのような1.1デシテックス以下などの極細繊維からなる布帛を、洗顔時に扱いやすくするなどの観点から特別な形態をなして構成させた洗顔用具なども提案されている。
【0005】
例えば、1デニール(約1.1デシテックス)以下の極細繊維よりなる布材で布袋を形成し、その開口部周縁にメッシュ状の泡立て部材を取り付け、布袋は、二重布としてこの布には多数の小孔を設けて洗顔具を形成すること、そして、その使用方法としては、該メッシュ状の泡立て部材へ洗顔料をとり、当該泡立て部材を揉んで洗顔料を泡立て、該泡立った洗顔料が附着した泡立て部材を布袋の内側へ押し込み、その上で、布袋を手先にはめて、泡立った洗顔料を布袋に設けた小孔から外部へ押し出しながら該布袋を皮膚にあてて洗顔するという提案がされている(特許文献1)。
【0006】
また、化粧落とし及び洗顔用に用いるミトン型手袋で、手袋本体の内側はマイクロファイバー製の布で、手袋の裏面はメッシュの布で周りをテープ状の布で縫製して、かつ親指を通すための輪を設けたという洗顔用の手袋が提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、これらの提案になるものは、きめ細かなクリーミィな泡をより大量に発生させて、かつその大量のきめ細かなクリーミィな泡・泡立ちを、洗顔動作中、良好に継続・保持し得て、より効果的な洗顔動作を行うという点ではいまだ不十分なものであった。
【特許文献1】特開2005−95252号公報
【特許文献2】特開2005−240254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、洗顔料を使用して洗顔をするに際して、非常にきめ細かなクリーミィな泡をより多く発生させ得るとともに、かつその大量のきめ細かなクリーミィな泡・泡立ちを良好に持続し得て、毛穴の奥や小鼻の脇などの落ちにくい顔の汚れや古い角質の除去などの洗顔動作を、より繊細な使用感覚とタッチで行うことを可能とし、結果として、より精美で優れた洗顔効果を得ることを可能にする洗顔用具とその洗顔用具を用いた洗顔用泡立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成する本発明の洗顔用具は、以下の(1)の構成からなる。
(1)単繊維繊度が0.001dtex以上、1dtex以下の合成繊維で構成された布帛(a)と、編目密度が20個/cm2 以上、1000個/cm2 以下である編物(b)からなり、かつ該編物(b)が複数枚積層された構成で使用され、全体が袋状物に形成されてなることを特徴とする洗顔用具。
【0010】
かかる本発明の洗顔用具において、より具体的な態様として、好ましくは、以下の(2)〜(8)のいずれかに記載のものである。
(2)前記編物(b)が複数枚積層された構成で使用されている該編物(b)積層部分における単位面積当たりの総繊維表面積が1.0m2 /m2 以上、100m2 /m2 以下であることを特徴とする上記(1)記載の洗顔用具。
(3)前記編物(b)が複数枚積層された構成で使用されている該編物(b)積層部分における単位面積当たりの総編目個数が50個/cm2 以上、5000個/cm2 以下であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の洗顔用具。
(4)前記布帛(a)が、単繊維繊度0.001dtex以上、0.02dtex以下の極細合成繊維が織成された極細合成繊維織物であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の洗顔用具。
(5)前記布帛(a)を構成する極細合成繊維が、丸断面の極細合成繊維であることを特徴とする上記(4)記載の洗顔用具。
(6)前記編物(b)が、実質的にプレーンな編物生地であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の洗顔用具。
(7)前記布帛(a)が、複数枚重ね合わされた構成で使用されて前記袋状物を構成していることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の洗顔用具。
【0011】
また、上述した目的を達成する本発明の洗顔用泡立て方法は、以下の(8)の構成からなる。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の洗顔用具を使用して、袋状物内に粉末状洗顔料を収納して、泡立てに供することを特徴とする洗顔用泡立て方法。
【0012】
かかる本発明の洗顔用泡立て方法において、より具体的態様として、好ましくは、以下の(9)に記載のものである。
(9)粉末状洗顔料として、平均粒径10μm以上1000μm以下のものを用いることを特徴とする上記(8)に記載の洗顔用泡立て方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗顔用具によれば、洗顔料を使用して洗顔をするに際して、非常にきめ細かな泡を簡単により多く発生させることができるとともに、かつ、その大量のきめ細かな泡・泡立ち状況を良好に持続することができ、そのきめ細かな泡によって毛穴の奥や小鼻の脇や奥などの落ちにくい顔の汚れや古い角質の除去などの洗顔動作をより繊細な使用感覚とタッチで行うことを可能にして、結果として、より精美で優れた洗顔効果を得ることを可能にする洗顔用具が提供される。
【0014】
本発明の洗顔用具、洗顔方法(洗顔用泡立て方法)によれば、きめ細かなクリーミィな泡・泡立ちを途絶えさせてしまうことなく洗顔動作を継続でき、それにより、極細繊維布使いによる繊細でミクロな泡立ち効果と、マイクロファイバーによる繊細で微妙なタッチで、皮膚表面に該ミクロでクリーミィな大量の泡を適用することができ、その相乗効果として精美で優れた洗顔効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面などを用いて、更に詳しく本発明の洗顔用具と洗顔用泡立て方法について説明する。
【0016】
本発明の洗顔用具は、単繊維繊度が0.001dtex以上、1dtex以下の合成繊維で構成された布帛(a)と、編目密度が20個/cm2 以上、1000個/cm2 以下である編物(b)からなり、かつ該編物(b)が複数枚積層された構成で使用され、全体が袋状物に形成されてなるものである。
【0017】
図1は、本発明の洗顔用具の一実施態様例をモデル的に示した概略正面図であり、本発明の洗顔用具1は、単繊維繊度が0.001dtex以上、1dtex以下の合成繊維で構成された布帛(a)2と、編目密度が20個/cm2 以上、1000個/cm2 以下である編物(b)3からなり、かつ該編物(b)3が複数枚が積層された構成で使用されて、全体が袋状物に形成されていることを特徴とする。
【0018】
図1において、5は吊り紐部であり、本発明の洗顔用具1を使用していないときはこの吊り紐部5を用いて洗面所や浴室などにあるフックに引っ掛けて吊し、乾燥などをさせることができる。表側の面の大部分は単繊維繊度が0.001dtex以上、1dtex以下の合成繊維で構成された布帛(a)2によって構成されている。
【0019】
図2は、 図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具を背面(裏面)から見た概略背面図であり、編物(b)3が背面の大部分を成している。
【0020】
かかる本発明の洗顔用具は、布帛(a)2と編物(b)3とが、縫合部4において、かがり縫いなどによって縫合されて全体構造を形成している。
【0021】
図3は、図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具の矢印A方向矢視図(底面図)であり、布帛(a)2と編物(b)3の間に形成される空間部分(内部収納部)6には、通常、親指から小指までの手指のほぼ全体を底部から入れてミトン状にして使用することができるようにされている。本発明においては、この内部収納部6には、手指の他に、微粉末状、粉状、塊状、固形直方体状もしくは固形柱状等あるいは液体状、ペースト状、クリーム状などの洗顔料をも収納させながら洗顔を行うことが好ましいものであり、そのようにして使用することにより、クリーミィな泡立ちの継続発生・保持をほとんど完璧に行うことができる。特に、粉末状洗顔料の使用に対して、後述するような利点を有する。
【0022】
本発明の洗顔用具において、布帛(a)2は、単繊維繊度が0.001dtex以上、1dtex以下の極細合成繊維で構成された布帛を用いてなるものである。該布帛は、織物地のようにしっかりとした寸法安定性を有するもので形成するのが最も好ましいが、編地やあるいは不織布で形成されているものでもよい。織物地のようにしっかりとした寸法安定性を有する生地で形成をすれば、本発明においては該布帛(a)2の表面に位置する極細合成繊維によって皮膚表面に触れて該皮膚表面にミクロな泡を適用するものであるが、その際に生地面が伸びたりすることもなく、精緻で正確な微妙さとタッチで洗顔を行うことができるものである。
【0023】
編物(b)3は、編目密度が20個/cm2 以上、1000個/cm2 以下のものであること、かつ該編物(b)3は複数枚が積層された構成で使用されるものであることが肝要であり、編目密度が上述した範囲を外れる場合は、形成したミクロな泡の保持性と泡の継続発生性の点で劣り、本発明の所期の効果を得ることは難しい。また、編物(b)3は複数枚が積層された構成で使用されていることにより、該編物の有効面積が大きなものとなり上述のミクロな泡の保持性と泡の継続発生性の点でより優れたものとなっている。
【0024】
本発明において、編目密度は、該編物の1インチ当たりのウエール数とコース数を掛けてその値を編目数として、単位面積として1cm2 当たりの個数に換算したものである。
【0025】
図4は、図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具のB−B断面をモデル的に示した概略断面図であり、編物(b)3が2枚の編物31、32の積層として形成され、布帛(a)2が布帛21、22の積層として構成されている状態を示したものである。
【0026】
図5は、図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具のC−C断面をモデル的に示した概略断面図であり、それぞれ2枚の編物、2枚の布帛の積層状態は、袋状底部において折り返されて縫合されていることにより形成されているものである。
【0027】
布帛(a)2と編物(b)3とを縫合して袋状物を形成するに際しては、図5や図1に示したように、その底部開口部において、編物(b)3の端部が布帛(a)2の端部よりも2mm〜20mm長くなるようにして縫合して袋状を形成してもよい。そのようにすると水や湯に濡れた状態のときでも、底部開口部を開けやすくなり手指や洗顔料を内部収納部に入れやすくなるので好ましい。
【0028】
本発明の洗顔用具において、ミクロな泡の保持性と泡の継続発生性の点で、編物(b)3が複数枚積層されて構成されている該編物(b)積層部分における単位面積当たりの総繊維表面積は、1.0m2 /m2 以上、100m2 /m2 以下であることが好ましい。
【0029】
また、編物(b)3が複数枚積層されて構成されている該編物(b)積層部分における単位面積当たりの総編目個数は50個/cm2 以上、5000個/cm2 以下であることが好ましい。総繊維表面積と総編目個数のそれぞれが、上述の範囲を満足することにより、ミクロな泡の保持性と泡の継続発生性でより好ましいものとなる。
【0030】
また、編物(b)は、実質的にプレーンな編物生地であることが好ましい。プレーンな編物生地とは、編目による凹凸構造が激しくなく、例えば、編組織で言えば、ハーフ編みや逆ハーフ編み、サテン編みなどをいうものである。
【0031】
本発明において、布帛(a)は、単繊維繊度が0.001dtex以上、0.02dtex以下の極細合成繊維が用いられて織成された極細合成繊維織物であることが好ましい。このような細さの極細合成繊維で形成された織物を用いることにより、ミクロでクリーミィな泡を形成させてかつ該泡を良好に保持して、皮膚に該泡を適用することがより良好にできる。
【0032】
布帛(a)を構成する極細合成繊維は、丸断面の極細合成繊維であることが好ましく、断面が尖った部分を持つ三角形状やくさび型などの断面を持つ極細合成繊維は、極細による効果の上にさらに加えて強固なそぎ落とし作用を皮膚面に与える場合があるので、優しいケアを行うために一般的には使用しない方が好ましい。
【0033】
布帛(a)は、編物(b)と同様に、複数枚重ね合わされて前記袋状物を構成していることが好ましく、複数枚重ね合わされて使用されることにより、該布帛の使用面積が大きくなり本発明の所期の効果をより大きく得ることができる。
【0034】
本発明の洗顔用具を使用して洗顔を行うに際しては、袋状物内に種々の形態の洗顔料を収納して泡立てに供することができる。特に、粉末状洗顔料を用いる使用方法が最も本発明の洗顔用具に最もマッチした使用方法である。本発明の用具では、粉末状などの洗顔料が泡立ちに寄与せず袋状物から脱落するようなことも少ない。特に、裏側をネット状の目の粗い網地や編物とした場合には、洗顔料が脱落するほか、泡の保持性も劣るものになる。
【0035】
粉末状洗顔料は、脂肪酸塩、N−アシル化グルタミン酸塩等の粉末状界面活性剤を基剤とし、デンプン、コーンスターチ等の糖類や、タルク、カオリン、酸化チタン等の無機粉体を賦形剤または増量剤として組み合わせてなる粉末状組成物である。かかる粉末状洗顔料を手に取って使用する場合、手からこぼれ落ちて使用性が悪かったり、泡立たせにくいことがある。本発明の洗顔用具を使用して粉末状洗顔料を洗顔に用いることで、このような不具合が生じにくく、良好な泡立ちを達成することができる。
【0036】
粉末状洗顔料としては、平均粒径10μm以上1000μm以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは30μm以上500μm以下である。このような微粉末状のものを用いることにより、よりクリーミィな泡立ちを可能にすることができる点も本発明の特徴である。
【0037】
本発明において、布帛(a)を構成する単繊維繊度が0.001dtex以上、1.0dtex以下の極細繊維は、特に限定されないが、ポリエステル系繊維やポリアミド系繊維などを使用でき、また、円形断面のものや異形断面(非円形断面)のものなどを適宜に使用することができる。それらの極細繊維は、ポリエステル系繊維あるいはポリアミド系繊維などのうちの単独の使用であってもよく、あるいは、ポリエステル系繊維とポリアミド系繊維などの混用使用であってもよい。
【0038】
本発明において、布帛とは、織物や編物、あるいは不織布のいずれをも含み総称する概念であり、これら単独でも使用でき、さらにはこれらが組合わされた複合布帛としても使用できる。
【0039】
また、布帛は、立毛パイルを持つ立毛布やタオル地などでもよく、その場合は、立毛パイルを構成する繊維が、単繊維繊度0.001〜1.0dtexの極細繊維からなるものとするのがよい。
【0040】
このような単繊維繊度0.001〜1.0デシテックスの極細合成繊維で構成された布帛を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、複数の成分から構成される複合繊維を用いて、該複合成分のうち、一成分を溶出除去する、あるいは各成分ごとに分割する等の、後の極細化加工により極細化が可能にされてなる複合繊維を原料繊維に用いて製布すること等により製造できる。
【0041】
このような極細繊維を有する繊維布帛の製造は、近年、合成繊維関係業界では広く行われてきているものであり、極細化加工は、繊維の段階や、その集合体たる糸の段階、あるいは繊維布帛に形成された後などの段階で行うことができる。
【0042】
編物(b)を構成する編糸の構成繊維は、0.001〜1.0デシテックスレベルの極細繊維としてもよいが、特に極細繊維である必要はなく、通常の衣料用などの太さ(1〜5デシテックスなど)の繊維使いでも十分に良いものでり、その方がある程度のハリ、コシを編物側からも与えることができることから好ましく、洗顔料の泡の存在下、むしろ手の動きと皮膚面へのタッチ感を自在なものになし得る点で、2〜4デシテックス程度の繊維を使用するのが好ましい。
【0043】
本発明において、編物(b)は、織物などの布帛(a)よりも、一般的に伸び縮みがしやすいものであり、手指の挿入・動きや洗顔料の挿入による全体の変形は、該編物(b)の伸縮でも吸収がされるようにするものであり、特に極細繊維を使用する必要はなく、編目の密度の細かさと総存在個数が重要な要素なのである。
【0044】
本発明の洗顔用具において、全体をポリエステル系合成繊維を使用して構成するのが速乾性に優れ、衛生面でも好ましいと言える。ただし、特に限定されるものでもなく、肌への優しさなどをねらい一部に天然繊維などを使用しても差し支えないものである。
【実施例】
【0045】
以下、実施例、比較例により、本発明の洗顔用具の具体的構成、効果について更に説明する。なお、本発明の説明で用いたパラメータは、以下の測定方法によるものである。
(1)編物(b)の編目密度:
編物をほぼ皺なく広げた無張力の状態で2.54cm当たりのウエール数とコース数を測定し、その値を掛け合わせた値を編目密度(個/cm2 )とした。
(2)編物(b)積層部分における単位面積当たりの総繊維表面積:
編物(b)の目付(g/cm2 )とその編物(b)を構成する繊維の繊度(デシテックス)(構成する繊維が複数の場合は、各繊維の繊度とその構成比)から単位面積当たりの総繊維表面積(m2 /m2 )を算出した。積層されている場合、積層された各編物の単位面積当たり総繊維表面積(m2 /m2 )を足し合わせ単位面積当たりの総繊維表面積(m2 /m2 )とした。
(3)編物(b)積層部分における単位面積当たりの総編目個数:
編物部(b)を構成する積層された各編物の編目密度の和を単位面積当たりの総編目個数(個/cm2 )とした。
実施例1
海島型複合繊維として、トータル繊度66デシテックス、9フィラメント(70島/フィラメント)の海島型ポリエステル複合繊維で、島成分がポリエチレンテレフタレートで、海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムイソフタル酸の共重合でアルカリ熱水可溶ポリエステルからなる繊維(海島比率は20:80)を用いた。この繊維をタテ密度141本/2.54cm、ヨコ密度107本/2.54cmの平織を通常の織機で製織した。得られた生織を130℃×30分間マレイン酸処理することにより海成分を脆化させた後、80℃×45分間水酸化ナトリウム処理することにより、その海成分を完全に除去した。その後、9.8MPaの高圧水流で表面処理を行った。
【0046】
得られた極細繊維の単繊維繊度は0.08デシテックスで断面形状は丸断面、織物の厚さは0.15mmであり、タテ密度169本/2.54cm、ヨコ密度124本/2.54cm(それぞれの本数は、分割前の本数)であった。
【0047】
一方、トータル繊度33デシテックス、12フィラメントのポリエチレンテレフタレートでギャクハーフ組織の経編の編地を用意した。ウエル数は36/2.54cm、コース数は56/2.54cmで、編目密度は312個/cm2 であり、単位面積当たりの総繊維表面積は10m2 /m2 であった。この布帛と編地を用いて、図1から図5に示すようにそれぞれ2枚ずつ積層した後縫製し、本発明の洗顔用具を作製した。得られた編地の単位面積当たりの総編目個数は624個/cm2 であった。
【0048】
この洗顔用具をお湯に浸し、軽く絞った後、図5の矢印A方向から、以下の組成からなる粉末状洗顔料を入れ、両手で揉むように泡立てを行った。
【0049】
ラウリン酸K 5質量%
ミリスチン酸K 10質量%
ステアリン酸K 5質量%
バレイショデンプン 20質量%
コーンスターチ 20質量%
マンニトール 20質量%
タルク 20質量%
(合計 100質量%)
この粉末状洗顔料の平均粒径は、50μmであった。
【0050】
泡状洗顔料はこぼれ出ることもなく、かつ編地が2枚積層していたため適度に伸縮し編地どおしがこすれ合うためか、きめ細やかでクリーミィな泡が発生した。発生した泡を布帛の上に載せ泡を介して洗顔したところ、痛みはなく優しい肌触りであった。
【0051】
次に、石鹸を洗い落とし、洗顔した皮膚をビデオマイクロスコープで観察したところ、毛穴の周りにあった皮脂や汚れはきれいに取り除かれていた。
比較例1
直径80ミクロンメートルのナイロンモノフィラメントを用いて、平編み組織の編地を用意した。ウエル数は10/2.54cm、コース数は10/2.54cmで、編目密度は16個/cm2 であり、単位面積当たりの総繊維表面積は1m2 /m2 であった。
【0052】
この編地と実施例1で用いた布帛を用いて、布帛は2枚重ね、編地は1枚で用いた他は実施例1と同様に縫製し洗顔用具を作製した。
【0053】
この洗顔用具を用いて、実施例1と同様に粉末状洗顔料を入れたところ、入れた洗顔料の一部が編地の目からこぼれ落ちた。
【0054】
さらに、泡立てようとしたところ、泡立ちは良かったが、きめの細かな泡を立てることができず、その泡を用いて洗顔しても満足のいく洗顔ができなかった。
比較例2
84デシテックス、24フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維100%で平織りの織物を用意した。繊維断面は丸断面で、タテ密度は90本/2.54cm、ヨコ密度は82本/2.54cmであった。
【0055】
この布帛と実施例1で用いた編地を用いて図1から図5に示すようにそれぞれ2枚ずつ積層した後、縫製し洗顔用具を作製した。
【0056】
この洗顔用具を用いて実施例1と同様に粉末状洗顔料を入れ泡立てたところ、布帛が硬すぎうまく泡立たなかっただけでなく、泡自体の大きさも大きなものとなった。また、この布帛で泡を介して顔をこすったが、布帛が直接肌に触り痛くて使用できるものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の洗顔用具の一実施態様例をモデル的に示した概略正面図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具を背面(裏面)から見た概略背面図である。
【図3】図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具を矢印A方向から見たA方向矢視概略図(底面図)である。
【図4】図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具のB−B断面をモデル的に示したB−B断面概略図である。
【図5】図1に示した本発明の一実施態様例である洗顔用具のC−C断面をモデル的に示したC−C断面概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1:洗顔用具
2、21、22:布帛(a)
3、31、32:編物(b)
4:縫合部
5:吊り紐部
6:内部収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が0.001dtex以上、1dtex以下の合成繊維で構成された布帛(a)と、編目密度が20個/cm2 以上、1000個/cm2 以下である編物(b)からなり、かつ該編物(b)が複数枚積層された構成で使用され、全体が袋状物に形成されてなることを特徴とする洗顔用具。
【請求項2】
前記編物(b)が複数枚積層された構成で使用されている該編物(b)積層部分における単位面積当たりの総繊維表面積が1.0m2 /m2 以上、100m2 /m2 以下であることを特徴とする請求項1に記載の洗顔用具。
【請求項3】
前記編物(b)が複数枚積層された構成で使用されている該編物(b)積層部分における単位面積当たりの総編目個数が50個/cm2 以上、5000個/cm2 以下であることを特徴とする請求項1または2記載の洗顔用具。
【請求項4】
前記布帛(a)が、単繊維繊度0.001dtex以上、0.02dtex以下の極細合成繊維が織成されてなる極細合成繊維織物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗顔用具。
【請求項5】
前記布帛(a)を構成する極細合成繊維が、丸断面の極細合成繊維であることを特徴とする請求項4記載の洗顔用具。
【請求項6】
前記編物(b)が、実質的にプレーンな編物生地であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗顔用具。
【請求項7】
前記布帛(a)が、複数枚重ね合わされた構成で使用されて前記袋状物を構成していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗顔用具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の洗顔用具を使用して、袋状物内に粉末状洗顔料を収納して、泡立てに供することを特徴とする洗顔用泡立て方法。
【請求項9】
粉末状洗顔料として、平均粒径10μm以上1000μm以下のものを用いることを特徴とする請求項9に記載の洗顔用泡立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−296018(P2007−296018A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124855(P2006−124855)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】