説明

洩れ検査装置

【課題】感温部材にて温度補正する洩れ検査装置において、様々な検査対象物の内部空間の大きさや形状に簡単に対応可能な感温部材を提供する。
【解決手段】洩れ検査装置1の感温部材70内の感温室72と、検査対象物9の被検室9aにそれぞれ高圧気体を導入し、これら室72,9aを互いに独立した閉鎖系とした後、被検室9aの圧力変化を測定するとともに、感温室72の圧力変化を測定することにより実質的に被検室9aの温度変化のデータを得、被検室9aの圧力変化と温度変化のデータに基づいて洩れ判定を行なう。感温部材70を管にて構成し、好ましくは検査対象物9の内部空間の形状に合わせて巻回又は折曲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査対象物内に高圧気体を導入してその圧力変化を測定することにより洩れ検査を行なう装置に関し、特に温度変化に伴う圧力変化分を感温部材を用いて補正する洩れ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に差圧式の洩れ検査では、検査対象物の内部空間と基準容器(マスタ)内の基準空間とに圧縮エア等の高圧気体を導入した後、この内部空間と基準空間とを互いに遮断して各々閉鎖系とする。検査対象物から洩れがあったときは、これが差圧として検出される。これによって、検査対象物の良否を判定することができる。
【0003】
検査対象物の内部空間に高圧気体を導入すると、断熱圧縮により昇温し、その後、経時的に放熱し、温度が下がる。また、検査対象物が加温又は冷却され周辺の設備や雰囲気との間に温度差があったり、高圧気体が検査対象物とは異なる温度であったりすると、検査対象物の内部温度が経時的に変動する。このような温度変化も圧力変化の原因となる。従って、洩れ判定の精度を高めるためには、圧力変化のうち温度変化による分が除かれている必要がある。一般的な方法としては、検査対象物の内部空間に例えば熱電対のような一般的な温度計を設けて温度変化を把握し補正することである。この方法の場合、ある程度の容積を有する検査対象物の内部空間のうち、温度計の位置する一点の温度のみを局所的に測定することになるため、内部空間に温度分布がある場合には対応しきれない。温度計を複数個設置することも考えられるが、むやみに増やせば補正回路が複雑になる。また、検査対象物の形状や大きさが異なると、適切に配置することが難しい。
【0004】
そこで、特許文献1では、検査対象物をその内部空間の開口部を下にして台座上に設置し、かつ検査対象物内に感温部材を収容する。感温部材は、例えばアルミニウム製の容器にて構成され、外周面及び内周面にフィンが設けられている。感温部材の内部空間が、密閉された感温室を構成している。検査対象物の内面と感温部材との間には、被検室が画成される。これら感温室及び被検室に高圧気体をそれぞれ導入する。そして、感温室の圧力変化を測定するとともに、被検室の圧力変化を測定する。感温室の圧力変化は、主に被検室の温度変化に起因する。したがって、感温室の圧力変化の測定データに基づいて、被検室の圧力変化の測定データを補正し、該圧力変化のうち温度変化に起因する分を除くことができる。補正後のデータに基づいて洩れ判定する。これにより、洩れ判定ひいては検査対象物の良否判定の精度を高めることができる。
【0005】
特許文献2では、差圧変化を未知係数を含む指数関数で表した差圧方程式を設定しておき、検出した差圧データを上記差圧方程式にフィッティングさせて上記未知係数を確定し、これによって洩れを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−064737号公報
【特許文献2】特開2004−061201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上掲特許文献1では、被検室の熱が感温部材のフィン及び周壁を伝って内部の感温室まで届くのには時間がかかることがある。また、台座に伝わる熱量のほうが感温室に伝わる熱量より大きくなることもあり、台座の大きさや形状に影響を受けやすい。更に、感温部材を構成する容器の大きさ及び形状を検査対象物の内部空間の大きさ及び形状に合わせる必要があり、設計及び製造が煩雑でコスト高になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために提案されたものであり、内部に感温室を有して検査対象物内に収容される良熱伝導性の感温部材を備え、前記検査対象物の内周と前記感温部材との間に画成された被検室と、前記感温室とに、それぞれ高圧気体を導入し、これら室を互いに独立した閉鎖系とした後、前記被検室の圧力変化を測定するとともに、前記感温室の圧力変化を測定することにより実質的に被検室の温度変化のデータを得、前記被検室の圧力変化と温度変化のデータに基づいて洩れ判定を行なう洩れ検査装置において、前記感温部材が巻回又は折曲された曲管部を有する管状であることを特徴とする。
【0009】
管状の感温部材を巻回又は折曲することで、様々な検査対象物の内部空間の大きさや形状に簡単に合わせることができる。被検室内に広く行き渡るように簡単に配置することができ、検査対象物の内面に近接させて沿わせることも容易である。これによって、感温部材の設計、製造を容易化でき、製造コストを低廉化できるだけでなく、被検室の温度変化に確実に感応するようにできる。被検室内に温度分布があっても偏り無く感応するようにできる。検査対象物の温度が周辺温度と異なっていたときは、検査対象物からの放熱や吸熱に確実に感応するようにできる。管状感温部材の外径を小さくすることで単位容積当たりの比表面積を大きくでき、被検室の温度変化に対する感度を高めることができる。管状感温部材の肉厚を小さくすることで、熱が感温室に短時間で伝わるようにでき、応答性を高めることができる。
【0010】
前記曲管部が、螺旋状であることが好ましい。これによって、管状感温部材を被検室内に確実に行き渡るように配置できる。又は管状感温部材を検査対象物の内面に簡単に沿うように配置することができる。
前記管状の感温部材が、その径方向に突出する凸部と、前記径方向に凹む凹部とを有していてもよい。前記管状の感温部材が、拡径された拡径部と、縮径された縮径部とを管軸方向に交互に有していてもよい。これによって、管状感温部材の比表面積を大きくでき、被検室の温度変化に対する感度を高めることができる。
前記管状の感温部材の外周面にフィンが設けられていてもよい。これによって、被検室の熱を確実に捕捉でき、被検室の温度変化に対する感度を高めることができる。
【0011】
前記検査対象物の内部空間の開口を塞ぐ台座と、前記検査対象物の前記開口側の縁と前記台座との間をシールするシール部材とを備え、前記台座には、前記縁と接触する支持突起が、前記シール部材の周方向に間隔を置いて複数設けられていてもよい。前記支持突起は、小凸片状であることが好ましく、ピン状であることがより好ましい。
検査対象物と台座との接触面積を小さくすることで、検査対象物の熱が台座へ伝わるのを抑えることができる。その分だけ、熱が管状感温部材に確実に伝わるようにでき、感度を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感温部材を様々な検査対象物の内部空間の大きさや形状に簡単に合わせることができ、感温部材の設計、製造を容易化でき、製造コストを低廉化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】洩れ検査装置の概略構成を示す回路図である。
【図2】上記洩れ検査装置の検査部の断面図である。
【図3】上記検査部の台座の変形例を示す平面図である。
【図4】上記洩れ検査装置の管状感温部材の変形例を示す断面図である。
【図5】上記洩れ検査装置の管状感温部材の変形例を示す側面図である。
【図6】上記洩れ検査装置の管状感温部材の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る洩れ検査装置1を示したものである。洩れ検査装置1は、検査対象物9の内部空間に高圧気体を導入して洩れを検査することで、検査対象物9の良否を判定する。検査対象物9は、特に限定がなく、例えばエンジンのシリンダブロックやミッションケース等である。
【0015】
洩れ検査装置1は、洩れ検査回路2と、コントローラ8(制御手段)と、上記検査対象物9を設置する台座60を備えている。洩れ検査回路2は、ブロック内に形成されていてもよく、配管によって形成されていてもよい。洩れ検査回路2は、共通路10と、被検路20と、感温路30を含む。共通路10には、基端コネクタ11と、レギュレータ12(減圧弁)と、圧力計13と、方向制御弁14が上流側から順次設けられている。基端コネクタ11にエアコンプレッサ等の高圧気体源3が接続されている。レギュレータ12は、高圧気体源3からの高圧気体の圧力を試験圧力になるよう調節する。方向制御弁14は、二位置三方型電磁弁にて構成され、オフ(第1位置)のとき、該方向制御弁14より上流側(高圧気体源3の側)の共通路10を閉止し、かつ該方向制御弁14より下流側の共通路10を大気に開放する。方向制御弁14がオン(第2位置)のとき、共通路10が開通する。共通路10の下流端から被検路20と感温路30が分岐されている。
【0016】
被検路20は、幹路21と、基準側枝路22と、被検側枝路23を有している。幹路21は共通路10の下流端に連なっている。幹路21に常開の電磁開閉弁24が設けられている。幹路21の下流端から基準側枝路22と被検側枝路23が分岐されている。基準側枝路22には常開の電磁開閉弁25が設けられている。基準側枝路22の下流端が、基準容器29に連なっている。被検側枝路23には常開の電磁開閉弁26が設けられている。被検側枝路23は、上記台座60へ延びている。
【0017】
枝路22,23どうし間に圧力センサ40が設けられている。圧力センサ40は、ダイヤフラム41と、基準側センサ室42と、被検側センサ室43を有するダイヤフラム式差圧センサにて構成されている。ダイヤフラム41によって2つの室42,43が仕切られている。センサ室42のポートは、接続路44を介して開閉弁25と基準容器29の間の基準側枝路22に接続されている。センサ室43のポートは、接続路45を介して開閉弁26より下流(台座60側)の被検側枝路23に接続されている。ダイヤフラム41が二つのセンサ室42,43の圧力差に応じて変位する。差圧センサ40は、この変位を電圧に変換してコントローラ8へ出力する。
【0018】
感温路30は、幹路31と、基準側枝路32と、感温側枝路33を有している。幹路31が共通路10から分岐して延びている。幹路31に常開の電磁開閉弁34が設けられている。幹路31の下流端から基準側枝路32と感温側枝路33が分岐されている。基準側枝路32には常開の電磁開閉弁35が設けられている。感温側枝路33は、上記台座60へ延びている。
【0019】
枝路32,33どうし間に圧力センサ50が設けられている。圧力センサ50は、ダイヤフラム51と、基準側センサ室52と、感温側センサ室53を有するダイヤフラム式差圧センサにて構成されている。ダイヤフラム51によって2つの室52,53が仕切られている。基準側枝路32における開閉弁35より下流側の基準路部分32cが、センサ室52のポートに接続されている。基準路部分32cは、差圧センサ50に基準圧力を与える基準容器の役目を果たす。路部分32cに別途、ある程度の内容積を有する基準容器を接続してもよい。センサ室53のポートは、接続路55を介して感温側枝路33に接続されている。ダイヤフラム51が二つのセンサ室52,53の圧力差に応じて変位する。差圧センサ50は、この変位を電圧に変換してコントローラ8へ出力する。
【0020】
コントローラ8は、弁14,24,25,26,34,35を操作する駆動回路、差圧センサ40,50の測定データに基づいて検査対象物9を洩れ判定する判定部、制御データを記憶する記憶部等を含み、洩れ検査装置1全体の動作を制御する。判定部及び記憶部等はマイクロコンピュータにて構成されていてもよい。
【0021】
図2に示すように、台座60の上面に検査対象物9が開口部を下にして載置されている。台座60によって検査対象物9の開口部が塞がれ、検査対象物9の内部空間が密封されている。台座60の上面に支持突起61が設けられている。支持突起61の上端面が検査対象物9の開口側の縁に当たって検査対象物9を支持している。支持突起61は、検査対象物9の開口側の縁に沿う環状になっている。支持突起61の巾(図2において左右方向の寸法)は十分に小さい。したがって、支持突起61と検査対象物9の接触面積は十分に小さい。支持突起61の上端部が先細に尖っていてもよい。支持突起61の内側には、パッキンやOリング等からなる環状のシール部材62が設けられている。シール部材62によって、検査対象物9の開口側の縁と台座60との間がシールされている。
【0022】
台座60には感温部材70が設けられている。感温部材70は、良熱伝導性の材料からなる管(チューブ)にて構成されている。管状感温部材70の材料は、好ましくは塑性、曲げ性、加工性に富む。例えば、管状感温部材70の材料として、銅、アルミニウム等の金属が挙げられる。管状感温部材70は、巻回又は折曲された曲管部71を有している。曲管部71は、螺旋状(コイル状)になっている。ここでは、環状感温部材70のほぼ全体が、螺旋状の曲管部71にて構成されている。管状感温部材70の管内空間が、感温室72になっている。曲管部71内の感温室72は、細くて長い螺旋状の空間になっている。
【0023】
曲管部71が、台座60上に配置されている。管状感温部材70における曲管部71より下側の基端部が、台座60を貫通して、感温側枝路33に連なっている。曲管部71の先端部(上端部)ひいては環状感温部材70の先端部は塞がっている。これによって、感温室72が密封されている。
【0024】
検査対象物9が管状感温部材70に被さり、管状感温部材70が検査対象物9内に収容されている。曲管部71が、検査対象物9の内周面に近接し、かつ検査対象物9の内周に沿うように螺旋状に巻かれている。検査対象物9の内周と管状感温部材70との間に被検室9aが形成されている。被検室9aに被検側枝路23の先端が連なっている。
【0025】
螺旋状の感温部材70の内側に中子スペーサ4が設けられている。中子スペーサ4は、樹脂等の低熱伝導性の材料にて構成されている。中子スペーサ4の体積分だけ被検室9aの正味の容積が小さくなっている。
【0026】
管状感温部材70の外径は、熱に対する感度の観点からは、なるべく小さいことが好ましい。管状感温部材70の外径があまり大きいと、単位体積あたりの比表面積が小さくなり、熱に対する感度が落ちる。
管状感温部材70の肉厚は、熱伝達性を確保するために、なるべく薄いことが好ましい。管状感温部材70の肉厚が大きいと、外部の熱が感温室72に伝わるまでの時間が長くなり、温度変化に対する応答が遅くなる。管状感温部材70の肉厚は、熱の伝わりの観点からはできるだけ薄いことが好ましく、例えば数十μm〜0.数mm程度が好ましいが、実施に当たっては耐圧を考慮して最適な厚さに設定する。
管状感温部材70の内径は、感温室72内の圧力伝達に支障を来さない程度の大きさが確保されていることが好ましい。管状感温部材70の内直径は、3mm〜5mm程度が好ましい。管状感温部材70の内径があまり小さいと感温室72内の圧力伝達が悪くなる。
感温室72の内容積は、温度変化による内圧変化がダイヤフラム51の圧力による容積変化によって大きな影響を受けないよう、十分に大きいことが好ましい。これによって、ダイヤフラム51を確実に作動させることができる。感温室72の内容積の下限は、差圧センサの種類によって異なるが、現在、多く使用されている差圧センサでは例えば30cc〜50cc程度であることが好ましい。
感温室72の上記内容積が確保されるように管状感温部材70の長さを設定することが好ましい。
【0027】
洩れ検査装置1によって検査対象物9の洩れ検査を行なう方法を説明する。
洩れ検査の手順は、上掲特許文献1に記載された内容と同様である。すなわち、予め、後記の本検査工程と同じ手順で洩れ検査回路2を操作することで、差圧センサ40,50の検出差圧の経時変化データを取得する。この経時変化データに基づいて、被検室9aの圧力変化と感温室72の圧力変化の相関関係、ひいては被検室9aの圧力変化と被検室9aの温度変化の相関関係を表す式を求める(相関関係取得工程)。相関関係式は一次式でもよく指数関数を含む式でもよい。相関関係式が指数関数を含む場合は、特許文献2に記載の非線形フィッティングを行ない、上記相関関係式の未知係数を確定することにしてもよい。そのうえで、実際に検査すべき検査対象物9に対し本検査工程を行なう。
【0028】
本検査工程では、まず方向制御弁14をオンして共通路10を連通させ、かつ開閉弁24,26,25,34,35をすべて開く。これによって、高圧気体源3の高圧気体が、レギュレータ12によって試験圧力にされたうえで、それより下流の洩れ検査回路2を経て、被検室9a及び感温室72に導入される。次に、開閉弁24,34を閉じる。続いて、開閉弁25,26を閉じ、かつ開閉弁35を閉じる。これによって、被検室9aと感温室72が互いに独立した閉鎖系になる。なお、基準容器29内及び基準路32cについても、試験圧力が導入されてそれぞれ独立した閉鎖系になる。
【0029】
弁25,26,35の上記閉操作後、2〜3秒程度の安定化期間を経た時点(時間t=t)で差圧センサ40,50をリセットして差圧測定を開始する。差圧センサ40は、被検室9aと基準容器29との間の差圧を測定する。この差圧センサ40による測定差圧データは、検査対象物9からの洩れに起因する分の他、断熱圧縮後の放熱等による被検室9aの温度変化に起因する分が含まれている。被検室9aの温度変化が管状感温部材70の管壁を伝って感温室72に及ぶことで、感温室72の内圧が変化する。これによって、感温室72と基準路部分32cとの間に差圧が生じ、この差圧を差圧センサ50によって検出できる。感温室72の圧力変化は、被検室9aの温度変化に起因するものであるから、差圧センサ50の測定差圧データは、実質的に被検室9aの温度変化のデータに相当する。
【0030】
そして、上記時間tから一定時間t経ったときの差圧センサ40,50の測定差圧をそれぞれピックアップする。このピックアップデータのうち、差圧センサ40による被検室9aの差圧データを、差圧センサ50による感温室72の差圧データと上記相関関係式とに基づいて補正する。これによって、被検室9aの洩れだけに起因する差圧変化量を得ることができる。この差圧変化量に基づいて、検査対象物9の良否判定を行なう。すなわち、差圧変化量が許容限度以下であれば検査対象物9を良品と判定し、許容限度を上回っていれば、検査対象物9を不良品と判定する。
【0031】
管状感温部材70は、巻き回し、折り曲げ等の変形が容易であるから、様々な検査対象物9の大きさや形状に簡単に合わせることができ、被検室9a内に広く行き渡るように簡単に配置することができ、更には検査対象物9の内面に近接して沿うように配置することも容易である。これによって、感温部材の設計、製造を容易化でき、製造コストを低廉化できるだけでなく、被検室9aの温度変化に確実に感応するようにでき、感度を高めることができる。管状感温部材70を被検室9a内に広く行き渡らせることで、被検室9a内に温度分布があっても、偏り無く感応することができる。管状感温部材70を検査対象物9の内面に近接して沿わせることで、検査対象物9の温度が周辺温度と異なっていたとき、検査対象物9の熱が感温室72に伝わりやすくなり、台座60への熱伝達の影響を小さくできる。また、支持突起61と検査対象物9の接触面積を十分に小さくすることで、検査対象物9から台座60への熱伝達を抑えることができる。これによって、管状感温部材70の感度を一層高めることができる。
また、管状感温部材70の外径を小さくすることで単位容積当たりの比表面積を大きくでき、被検室9aの温度変化に対する感度を高めることができる。更に管状感温部材70の肉厚を小さくすることで、熱が感温室72に短時間で伝わるようにでき、応答性を高めることができる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する部分に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、台座60の支持突起が、複数のピン状の支持突起63にて構成されていてもよい。ピン状の支持突起63は、シール部材62の周方向に間隔を置いて、ひいては検査対象物9(図3において二点鎖線)の開口側の縁に沿って間隔を置いて環状に並べられている。これによって、支持突起63と検査対象物9との接触面積を一層小さくでき、検査対象物9の熱が台座60に伝わるのを確実に抑制できる。
【0033】
管状感温部材70は、一様な円形断面の管に限られない。例えば、図4に示すように、管状感温部材70が、径方向に突出する凸部73と、径方向に凹む凹部74とを有していてもよい。これら凸部73と凹部74が管状感温部材70の周方向に交互に並び、管状感温部材70が星型の断面になっていてもよい。これによって、管状感温部材70の比表面積を大きくでき、被検室9aの温度変化に対する感度を高めることができる。
凸部73及び凹部74は、管状感温部材70の管軸(図4において紙面と直交する方向)に沿って真っ直ぐ延びていてもよく、管状感温部材70の管軸に対して捻じれて螺旋状に延びていてもよい。
【0034】
図5に示すように、管状感温部材70が、拡径された拡径部75と、縮径された縮径部76とを管軸方向に交互に有し、蛇腹状ないしはベローズ状になっていてもよい。蛇腹状の管は市販品を用いることができる。これによって、管状感温部材70の比表面積を大きくでき、被検室9aの温度変化に対する感度を高めることができるとともに、材料コストを抑えることができる。なお、拡径部75は、凸部73を管状感温部材70の周方向に環状にしたものに相当する。縮径部76は、凹部74を管状感温部材70の周方向に環状にしたものに相当する。
【0035】
図6に示すように、管状感温部材70の外周面にフィン77が設けられていてもよい。これによって、被検室9aの熱を確実に捕捉でき、被検室9aの温度変化に対する感度を高めることができる。フィン77は、螺旋状になっている。
フィン77は、円環状であってもよい。複数の円環状のフィン77が管状感温部材70の管軸に沿って間隔を置いて設けられていてもよい。
【0036】
本発明は、上記実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
管状感温部材70は、螺旋状に限られず、例えば蛇行状に折り曲げられていてもよく、折曲部と真っ直ぐな直管部とが交互に連続していてもよい。
洩れ検査回路2は、適宜改変可能である。例えば、被検路20と感温路30とが、互いに異なる高圧気体源に接続されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば密封ワークの良否判定を行なう検査装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 洩れ検査装置
2 洩れ検査回路
3 高圧気体源
4 中子スペーサ
8 コントローラ(制御手段)
9 検査対象物
9a 被検室
10 共通路
11 基端コネクタ
12 レギュレータ(試験圧力調節手段)
13 圧力計
14 方向制御弁
20 被検路
21 幹路
22 基準側枝路
23 被検側枝路
24 被検幹路開閉弁
25 基準枝路開閉弁
26 被検枝路開閉弁
29 基準容器
30 感温路
31 幹路
32 基準側枝路
32c 基準路部分
33 感温側枝路
34 感温幹路開閉弁
35 基準枝路開閉弁
40 被検路差圧センサ(圧力センサ)
41 ダイヤフラム
42 基準側センサ室
43 被検側センサ室
44 基準側接続路
45 被検側接続路
50 感温路差圧センサ(圧力センサ)
51 ダイヤフラム
52 基準側センサ室
53 感温側センサ室
55 感温側接続路
60 台座
61 環状支持突起
62 シール部材
63 ピン状支持突起
70 管状感温部材
71 曲管部
72 感温室
73 凸部
74 凹部
75 拡径部
76 縮径部
77 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に感温室を有して検査対象物内に収容される良熱伝導性の感温部材を備え、前記検査対象物の内周と前記感温部材との間に画成された被検室と、前記感温室とに、それぞれ高圧気体を導入し、これら室を互いに独立した閉鎖系とした後、前記被検室の圧力変化を測定するとともに、前記感温室の圧力変化を測定することにより実質的に被検室の温度変化のデータを得、前記被検室の圧力変化と温度変化のデータに基づいて洩れ判定を行なう洩れ検査装置において、
前記感温部材が巻回又は折曲された曲管部を有する管状であることを特徴とする洩れ検査装置。
【請求項2】
前記曲管部が、螺旋状であることを特徴とする請求項1に記載の洩れ検査装置。
【請求項3】
前記管状の感温部材が、その径方向に突出する凸部と、前記径方向に凹む凹部とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の洩れ検査装置。
【請求項4】
前記管状の感温部材が、拡径された拡径部と、縮径された縮径部とを管軸方向に交互に有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の洩れ検査装置。
【請求項5】
前記管状の感温部材の外周面にフィンが設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の洩れ検査装置。
【請求項6】
前記検査対象物の内部空間の開口を塞ぐ台座と、前記検査対象物の前記開口側の縁と前記台座との間をシールするシール部材とを備え、前記台座には、前記縁と接触する支持突起が、前記シール部材の周方向に間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の洩れ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122805(P2012−122805A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272685(P2010−272685)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(390019035)株式会社フクダ (23)
【Fターム(参考)】