説明

活動性結核菌感染を潜在性結核菌感染と対比させる血中転写サイン

本発明は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に感染していることが疑われる患者において、活動性結核菌感染と、潜在性結核菌感染とを識別するための方法、システム、及びキットを包含し、この方法は、結核菌に感染していることが疑われる患者から、患者の遺伝子発現データセットを得るステップと、前記患者の遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連する1又は2以上の遺伝子モジュールに類別するステップと、1又は2以上の遺伝子モジュールの各々に対する前記患者の遺伝子発現データセットを、非患者に由来する遺伝子発現データセットと比較するステップであって、前記1又は2以上の遺伝子モジュールに対する前記患者の遺伝子発現データセットにおける全遺伝子発現の増大又は減少が、活動性結核菌感染を示唆するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、結核菌感染の分野に関し、より具体的には、潜在性又は無症候性と考えられる活動性結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染、並びに治療前、治療中、及び治療後における疾患の増悪を診断、予後診断、及びモニタリングするための方法、キット、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定しない限りにおいて、その背景を、結核菌感染の同定及び治療との関連において説明する。
【0003】
肺結核(PTB)は、結核菌(M. tuberculosis)により全世界で引き起こされる罹患及び死亡の、主要で増大しつつある原因である。しかし、結核菌に感染した個体の大半は、無症候性を維持し、感染を潜在形態で保持し、この潜在状態は、活性免疫反応により維持されると考えられている(WHO. (World Health Organization, Geneva, 2008); Kaufmann, SH & McMichael, AJ., Nat Med, 2005)。これは、クローン病患者又は関節リウマチ患者を、抗TNF抗体で治療すると、自己免疫症状が結果として改善されるが、他方では、かつて結核菌に接触した患者においてTBの再活性化を引き起こすことを示す報告(Keane, J. et al. Tuberculosis associated with infliximab, a tumor necrosis factor alpha-neutralizing agent. N Engl J Med 345, 1098-104 (2001))により裏付けられる。結核菌に対する免疫反応は、多因子性であり、Th1軸のTNF、IFN−γ、及びIL−12など、遺伝子的に決定される宿主因子を包含する(Casanova, J. L. & Abel, L. Genetic dissection of immunity to mycobacteria: the human model. Annu Rev Immunol 20, 581-620 (2002)において総説されている)。しかし、成人の肺TB患者に由来する免疫細胞は、IFN−γ、IL−12、及びTNFを生成させる可能性があり、IFN−γ療法は、疾患を改善する一助とはならない(Reljic, 2007, J Interferon & Cyt Res., 27, 353-63において総説されている)ことから、結核菌に対する防御及び潜在性の維持には、より広範な数の宿主免疫因子が関与していることが示唆される。したがって、活動性TBと対比した潜在性TBにおいて誘導される宿主因子についての知識は、結核菌による感染を制御しうる免疫反応に関する情報をもたらしうる。
【0004】
多くの理由で、PTBの診断は、困難且つ問題含みでありうる。第1に、顕微鏡検査により痰における典型的な結核桿菌の存在を裏付けること(スメア陽性)の感度は、50〜70%に過ぎず、陽性診断には、培養による結核菌の単離が必要とされ、これには最大8週間を要しうる。加えて、一部の患者が、痰ではスメア陰性であるか、又は痰を生成させることが不可能であり、したがって、侵襲性の手順である気管支鏡検査により、さらなる試料採取が必要とされる。PTB診断におけるこれらの限界のために、スメア陰性患者が、ツベルクリン(PPD)皮膚反応について検査を受ける場合もある(Mantoux)。しかし、ツベルクリン(PPD)皮膚反応では、BCGによるワクチン接種、潜在性TB、又は活動性TBを識別することができない。この問題については、BCGでは認められない特定の結核菌抗原に対する免疫反応性を裏付けるアッセイが開発されている。しかし、インターフェロンγ放出アッセイ(IGRA)において、血液細胞によるIFN−γの生成を介して測定されるこれらの結核菌抗原に対する反応性では、潜在性疾患が活動性疾患から区別されない。
【0005】
潜在性TBは、臨床において、臨床症状若しくは臨床徴候、又は活動性疾患を示唆するX線写真の非存在下において、IGRA陽性結果と併せて、患者がPPDで皮内感作されたときの遅延型の過敏反応により定義される。潜在性/休眠性結核(TB)の再活性化は、他の個体に伝染する危険性を伴う、保健上の大きな危険であり、特に、抗マイコバクテリア薬による治療は困難であり、重篤な副作用を結果としてもたらしうるので、潜在性TB患者と活動性TB患者との差違を反映するバイオマーカーであれば、疾患の管理に有用であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】WHO. (World Health Organization, Geneva, 2008)
【非特許文献2】Kaufmann, SH & McMichael, AJ., Nat Med, 2005
【非特許文献3】Keane, J. et al. Tuberculosis associated with infliximab, a tumor necrosis factor alpha-neutralizing agent. N Engl J Med 345, 1098-104 (2001)
【非特許文献4】Casanova, J. L. & Abel, L. Genetic dissection of immunity to mycobacteria: the human model. Annu Rev Immunol 20, 581-620 (2002)
【非特許文献5】Reljic, 2007, J Interferon & Cyt Res., 27, 353-63
【非特許文献6】Mantoux
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結核菌に感染した個体の大半は、無症候性を維持し、世界の人口の3分の1が結核菌に潜在的に感染していると推定され、したがって、結核の蔓延の巨大な予備軍をもたらしている。潜在的感染と説明されるこれらの個体のうち、5〜15%は、一生のうちに活動性TBを発症する(Schoch, O. D. et al. Diagnostic yield of sputum, induced sputum, and bronchoscopy after radiologic tuberculosis screening. Am J Respir Crit Care Med 175, 80-6 (2007)、Storla, D. G., Yimer, S. & Bjune, G. A. A systematic review of delay in the diagnosis and treatment of tuberculosis. BMC Public Health 8, 15 (2008))。したがって、潜在性TB患者は、一生の間無症候性を維持する大部分から、疾患の再活性化に増悪する患者に及ぶ、臨床的に異質な類型を表わす(Comstock, G. W., Livesay, V. T. & Woolpert, S. F. The prognosis of a positive tuberculin reaction in childhood and adolescence. Am J Epidemiol 99, 131-8 (1974))。潜在性TBの診断は、古典的には、ワクチンであるBCGを含めた、非病原性マイコバクテリアに対する陽性反応によりその特異度が損なわれる検査である、結核菌抗原に対する皮膚反応による免疫感作の証拠だけに基づいている。特定の結核菌抗原に対する、血液細胞によるIFN−γの分泌を決定する、より近年のアッセイ(IGRA)は、この問題をはらむ度合いが皮膚検査ほど大きくはないが、潜在性疾患を活動性疾患から区別することが可能でなく、活動性疾患に増悪しうる患者を明確に同定することも可能でない(Vynnycky, E. & Fine, P. E. Lifetime risks, incubation period, and serial interval of tuberculosis. Am J Epidemiol 152, 247-63 (2000))。抗マイコバクテリア薬による治療は長期に及び、重篤な副作用を結果としてもたらしうるので、再活性化の危険性が最も大きい患者を同定すれば、標的化予防治療の一助となることは重要であろう。したがって、診断、治療、及びワクチン接種のための新たなツールは火急の用にあるが、TBの根底にある複雑な発症機序の理解が不完全であることにより、これらのツールを開発しようとする試みが制限されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、健常対照と比較した、潜在性結核(TB)患者を、活動性結核患者と対比して同定するための方法及びキットを包含する。一実施形態では、顕著で相互的な免疫特徴を有する血液についてのマイクロアレイ解析を用い、潜在性結核(TB)患者を、活動性結核患者と対比して決定、診断、追跡、及び治療する。本発明は、潜在性TBを伴うどの個体に、潜在性/無症候性のTB感染のためではなく、活動性TB感染のために、抗マイコバクテリア化学療法を施すべきかを決定するのに用いうる、異質なTB感染を識別する能力を初めて提供する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、潜在性/無症候性と考えられる活動性結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染を予測する方法であって、結核菌感染を疑われる患者から、患者の遺伝子発現データセットを得るステップと、該患者の遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連する1又は2以上の遺伝子モジュールに類別するステップと、該1又は2以上の遺伝子モジュールの各々に対する該患者の遺伝子発現データセットを、同様に同じ遺伝子モジュールに類別した非患者に由来する遺伝子発現データセットと比較するステップであって、該1又は2以上の遺伝子モジュールに対する該患者の遺伝子発現データセットにおける全遺伝子発現の増大又は減少が、潜在性/無症候性の結核菌感染ではなく、活動性結核菌感染を示唆するステップとを含む方法を包含する。一態様では、該方法は、遺伝子産物について決定した比較情報を用いて、診断、予後診断、又は治療計画のうちの少なくとも1つを下すか、又は策定するステップをさらに含む。別の態様では、該方法はまた、潜在性TB患者を、活動性TB患者から識別するステップもさらに含みうる。一態様では、患者の遺伝子発現データセットは、全血、末梢血単核細胞、又は痰のうちの少なくとも1つにおける細胞に由来する。別の態様では、患者の遺伝子発現データセットを、表2の遺伝子から選択される、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、又は393遺伝子と比較する。別の態様では、患者の遺伝子発現データセットを、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200の遺伝子と比較する。別の態様では、結核菌感染と関連する遺伝子モジュールを、モジュールM1.3、モジュールM2.8、モジュールM1.5、モジュールM2.6、モジュールM2.2、及びモジュール3.1からなる群から選択する。別の態様では、結核菌感染と関連する遺伝子モジュールは、B細胞関連遺伝子の減少、T細胞関連遺伝子の減少、骨髄関連遺伝子の増大、好中球関連転写物遺伝子及びインターフェロン誘導性(IFN)遺伝子の増大の変化により選択される。別の態様では、患者の疾患状態を、患者の肺の放射線解析によりさらに決定する。別の態様では、該方法はまた、患者を治療した後において、該治療した患者の遺伝子発現データセットを決定し、該治療した患者の遺伝子発現データセットが、正常な遺伝子発現データセットに復帰したかどうかを決定し、これにより、該患者を治療したかどうかを決定するステップをさらに含む。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、結核菌に感染していることが疑われる患者において、活動性結核菌感染と、潜在性結核菌感染とを識別する方法であって、活動性結核菌感染を伴う第1の臨床群から得られる第1の遺伝子発現データセット、潜在性結核菌感染患者を伴う第2の臨床群から得られる第2の遺伝子発現データセット、及び非感染個体の臨床群から得られる第3の遺伝子発現データセットを得るステップと、該第1のデータセット、第2のデータセット、及び第3のデータセットのうちのいずれか2つの間で示差的な遺伝子発現を含む遺伝子クラスターのデータセットを作成するステップと、潜在性感染、活動性感染、又は健常であることを示唆する、固有の発現/表出パターンを決定するステップであって、該患者の遺伝子発現データセットが、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも6、10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、又は200の遺伝子を含むステップとを含む方法である。
【0011】
さらに別の実施形態では、本発明は、結核菌に感染していることが疑われる患者における感染を診断するためのキットであって、患者からその遺伝子発現データセットを得るための遺伝子発現検出器であって、該発現した遺伝子を該患者の全血から得る検出器と;該遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連し、感染患者と非感染患者とを識別する、あらかじめ規定された遺伝子モジュールデータセットと比較することが可能なプロセッサーであって、全血が、対応する非感染患者と比較して、1又は2以上の転写物遺伝子発現モジュールにおけるポリヌクレオチドレベルの総計の変化を示し、これにより、活動性結核菌感染と、潜在性結核菌感染とを識別するプロセッサーとを含むキットである。一態様では、患者の遺伝子発現データセットを、末梢血単核細胞から得る。別の態様では、患者の遺伝子発現データセットを、表2の遺伝子から選択される、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、又は393遺伝子と比較する。別の態様では、患者の遺伝子発現データセットを、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200の遺伝子と比較する。別の態様では、結核菌感染と関連する遺伝子モジュールは、モジュールM1.3、モジュールM2.8、モジュールM1.5、モジュールM2.6、モジュールM2.2、及びモジュール3.1からなる群から選択される。別の態様では、結核菌感染と関連する遺伝子モジュールは、B細胞関連遺伝子の減少、T細胞関連遺伝子の減少、骨髄関連遺伝子の増大、好中球関連転写物遺伝子及びインターフェロン誘導性(IFN)遺伝子の増大の変化により選択される。別の態様では、遺伝子は、PDL−1、CASP5、CR1、CASP5、TLR5、MAPK14、STX11、BCL6、及びC5から選択される。
【0012】
本発明の別の実施形態は、活動性結核菌感染を伴う患者、及び潜在性結核菌感染を伴う患者を診断するシステムであって、患者からその遺伝子発現データセットを得るための遺伝子発現検出器であって、該発現した遺伝子を該患者の全血から得る検出器と;該遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連し、感染患者と非感染患者とを識別する、あらかじめ規定された遺伝子モジュールデータセットと比較することが可能なプロセッサーであって、全血が、対応する非感染患者と比較して、1又は2以上の転写物遺伝子発現モジュールにおけるポリヌクレオチドレベルの総計の変化を示し、これにより、活動性結核菌感染と、潜在性結核菌感染とを識別し、該遺伝子モジュールデータセットが、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つを含むプロセッサーとを含むシステムである。一態様では、患者の遺伝子発現データセットを、表2の遺伝子から選択される、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、又は393遺伝子と比較する。別の態様では、患者の遺伝子発現データセットを、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200の遺伝子と比較する。別の態様では、結核菌感染と関連する遺伝子モジュールは、モジュールM1.3、モジュールM2.8、モジュールM1.5、モジュールM2.6、モジュールM2.2、及びモジュール3.1からなる群から選択される。別の態様では、結核菌感染と関連する遺伝子モジュールは、B細胞関連遺伝子の減少、T細胞関連遺伝子の減少、骨髄関連遺伝子の増大、好中球関連転写物遺伝子及びインターフェロン誘導性(IFN)遺伝子の増大の変化により選択される。別の態様では、遺伝子は、PDL−1、CASP5、CR1、CASP5、TLR5、MAPK14、STX11、BCL6、及びC5から選択される。
【0013】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、ここで、付属の図面と共に、本発明についての詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a−1c】活動性TBの顕著な全血中の転写サインについて示す図である。ヒートマップの各行は、個々の遺伝子を表わし、各列は、個々の被験者を表わす。図幅全体において、転写物の相対量を、図の下方のカラースケールで示す(赤色:高量;黄色:中程度量;青色:低量)。(1a)階層クラスタリングにより構成される、訓練集合における、393の最も有意な示差的発現遺伝子を示す図である。(1b)同じ遺伝子系統樹内で序列化された同じ393転写物のリストを用いて、条件ツリー(ヒートマップの水平の上端に沿った)を創出する平均リンケージとのスピアマン相関による階層クラスタリングと、各プロファイルの下方にカラーブロックとして示される研究群分け(すなわち、臨床表現型)とを伴う、独立のテスト集合に由来するデータを解析した図である。(1c)上記の通り、南アフリカにおいて募集した独立の検証集合を解析した図である。
【図2a−2c】活動性TBの転写サインが、X線写真による疾患程度と相関することを示す図である。他のデータに対して盲検とされた3名の独立の医師に、訓練集合及び独立のテスト集合における各患者の胸部X線写真を評価させた(図9a)。(2a)独立のテスト集合における各活動性TB患者について、393転写物のプロファイルを示す図である。進行した疾患、中等度の疾患、軽度の疾患、及び疾患なしを表わすX線写真の例を例示する。(2b、2c)群間を比較するための、ダンの多重比較による事後検定と共に、クルスカル−ワリスによるANOVAを用いて比較した各群について、X線写真による疾患程度、及び平均の「健常までの分子的距離」(「さらなる方法」)に従い、プロファイルを群分けした図である(p<0.0001)。
【図3a−3d】奏効する治療においては、活動性TBの転写サインが減殺されることを示す図である。(3a)抗マイコバクテリア治療を開始した2カ月後及び12カ月後において、活動性TB患者(「活動性」)7例から再度試料採取し、独立のテスト集合に由来する健常対照(「対照」;n=12)と比較した図である。(3b)患者7例中2例(「4」又は「7」と表示した患者)について、診断時、及び抗マイコバクテリア治療を開始した2カ月後及び12カ月後における胸部X線写真を示す図である。これらの個体についてのプロファイルを、同じ番号指示子により上方に示す。(3c)各時点において、各患者についての「健常までの分子的距離」を計算し、スピアマン相関を用いて、治療開始後の時点と比較した図である。(3d)時点間を比較するための、ダンの多重比較による事後検定と共に、フリードマンによる検定を用いて、各時点について、平均の「健常までの分子的距離」を比較した図である。水平バーは、中央値、第5百分位数、及び第95百分位数を示す。
【図4a−4e】活動性TBの全血中の転写サインが、細胞成分の顕著な変化、及び遺伝子発現の絶対レベルの変化の両方を反映することを示す図である。(4a)健常対照と比較した、活動性TBの遺伝子発現を、あらかじめ定義したモジュールフレームワーク内にマップすることを示す図である。スポットの強度は、各モジュールについて、有意な示差的発現転写物の比率を表わす(赤色=増大した転写物量、青色=減少した転写物量)。文献による不偏プロファイリングによりあらかじめ決定した機能の解釈を、下方のカラーコードグリッドにより示す。(4b)CD3CD4T細胞及びCD3CD8T細胞及びCD19CD20B細胞についてのフローサイトメトリーにより、テスト集合の健常対照(「対照」)、及び活動性TB患者(「活動性」)に由来する全血を解析した図である。誤差バー=中央値。(4c)CD14単球、CD14CD16炎症性単球、及びCD16好中球についてのフローサイトメトリーにより、テスト集合の健常対照(「対照」)、及び活動性TB患者(「活動性」)に由来する全血を解析した図である。誤差バー=中央値。(4d)Ingenuity Pathways解析の、インターフェロンによるシグナル伝達についてのカノニカル経路を、その機能に対応する記号により同定した各遺伝子産物(右側の凡例)と共に表示し、訓練集合の活動性TB患者において過剰表出した転写物には赤色の影を付した図である。(4e)健常対照(「対照」)及び活動性肺TB患者(「活動性」)に由来する、CXCL10(IP10)の血清レベルを示す図である。両側マン−ホイットニー検定を用いて、統計的比較を実施した。水平のバーは、各群についての平均を示し、ウィスカーは、95%信頼区間を示す。
【図4f−4g】活動性TBの全血中における顕著な86遺伝子の転写サインが、他の疾患の特徴とは異なることを示す図である。(4f)それぞれの対照に照らして標準化したTB患者及び他の疾患を伴う患者における、86遺伝子の特徴の比較を示す図である;TB患者(訓練集合:n=13;対照:n=12)、TB患者(南アフリカ:n=20;対照=12)、A群連鎖球菌(Streptococcus)属患者(連鎖球菌:n=23;対照=12)、ブドウ球菌(Staphylococcus)属患者(ブドウ球菌:n=40;対照=12)、スティル病患者(スティル病:n=31;対照=22)、成人SLE患者(SLE:n=29;対照=16)、及び小児SLE患者(pSLE:n=49;対照=11)。(4g)TB患者における治療の2カ月後及び12カ月後における、86遺伝子の特徴の発現レベルを示す図である。
【図4h】あらかじめ定義したモジュールフレームワーク内にマップした、TB(テスト集合)及び異なる疾患の遺伝子発現(健常対照と対比させた疾患の遺伝子発現)を示す図である。スポットの強度は、転写物量を表わす(赤色=増大した転写物量、青色=減少した転写物量)。
【図5a−5b】活動性TBにおける、インターフェロン誘導性遺伝子発現を示す図である。(5a)活動性TBに由来する全血試料(訓練集合、テスト集合、及び検証集合)における、インターフェロン誘導性遺伝子の転写物量;及び(5b)テスト集合の血液から区分された白血球集団における、インターフェロン誘導性遺伝子の発現を示す図である。健常対照の中央値(図1に表示した)と比較して、遺伝子量/遺伝子発現を示す。テスト集合及び区分された集団において示される番号は、個別の患者に対応する。
【図6a−6d】PDL1(CD274)が、主に好中球によるその過剰発現のために、活動性TB患者の全血において過剰に豊富に存在することを示す図である。(6a)活動性TB患者(「活動性」)及び健常対照(「対照」)(又は南アフリカの潜在性患者)の全血におけるPDL1の量(全試料の中央値に照らして標準化した)を示す図である。また、代表的患者及び対照に由来する全血中の白血球におけるPDL1の幾何平均による蛍光強度(MFI)も示す。MFIレベルを、矢印により、PDL1の発現プロファイルと連関させる。グラフは、11例の活動性TB患者おおび11例の健常対照からプールされたMFIデータを示す(誤差バー=平均±95%CI)。(6b)全白血球におけるPDL1のMFI(赤色)、及び全細胞のアイソタイプ対照におけるPDL1のMFI(緑色)と比較した、異なる細胞部分集団におけるPDL1のMFI(青色)を示す図である。対照及び患者を示す。グラフは、同じ数の活動性TB患者及び健常対照からプールされたMFIデータ(誤差バー=平均±95%CI)を示す。(6c)全試料の中央値に照らして標準化されたPDL1の発現を、濃縮した細胞部分集団における4例の対照及び7例の活動性TB患者について示す図である。(6d)テスト集合に由来する12例の健常対照(「対照」)と比較した、抗マイコバクテリア治療の0カ月後、2カ月後、及び12カ月後における、7例の活動性TB患者(「活動性」)の全血におけるPDL1量を示す図である。
【図7a−7c】訓練集合、テスト集合、及び検証集合の形成について示す図である。各コホートは、独立に募集されただけでなく、全段階のRNAプロセッシング及びマイクロアレイ解析もまた完全に独立に実施した。(7a)英国、ロンドンにおける訓練集合コホートの募集について示す図である;(7b)英国、ロンドンにおける独立のテスト集合コホートの募集について示す図である;(7c)南アフリカ、ケープタウンにおける独立の検証集合コホートの募集について示す図である。
【図8a−8d】患者プロファイルの階層クラスタリングを示す図である。(8a)訓練集合についての、1836転写物の発現プロファイルを、条件ツリー(ヒートマップの上端に沿った)を創出する平均リンケージとのスピアマン相関による、教師なし(unsupervised:以下同)の階層クラスタリングにかけた。次いで、これらの患者クラスターを、ヒートマップの下端に沿った各プロファイルの下方のブロックに示した、臨床パラメータ及び人口パラメータと比較することができる。図の下方に凡例を示す。クラスターは、距離に従い均等に分割した。(8b)平均リンケージとのピアソン相関によりクラスタリングしたテスト集合について、393転写物の発現プロファイルを示す図である。(8c)平均リンケージとのピアソン相関によりクラスタリングした検証集合について、393転写物の発現プロファイルを示す図である。(8d及び8e)検証集合における22〜34歳の患者だけについての、393転写物の患者発現プロファイルを示す図である。
【図9a−9c】活動性TBの転写サインを、X線写真による疾患程度と比較した図である。(9a)疾患の程度に従い胸部X線写真をグレード付けするのに用いられる分類スキームを示す図である。(9b)診断時に撮影した、対応する胸部X線写真と共に、訓練集合における13例の活動性TB患者すべてについて393転写物の発現プロファイルを示す図であり、いずれも、分類スキームによるX線写真グレートに従い群分けした。所与の患者の発現プロファイル及びX線写真に、同じ数字による指示子を与える。(9c)テスト集合における21例の活動性TB患者についての、393転写物の発現プロファイル及び胸部X線写真を示す図である。
【図10a−10d】活動性TBの全血中の転写サインが、細胞組成物における顕著な変化、及び遺伝子発現の絶対レベルの変化の両方を反映することを示す図である。健常対照と比較した、活動性TBの遺伝子発現を、あらかじめ定義したモジュールフレームワーク内にマップした。スポットの強度は、各モジュールについて、有意な示差的発現転写物の比率を表わす(赤色=転写物量の増大、青色=転写物量の減少)。文献による不偏プロファイリングによりあらかじめ決定した機能の解釈は、主に、図4のカラーコードグリッドで表示する。(10a)訓練集合;(10b)テスト集合;(10c)検証集合(南アフリカ)において過剰表出(赤色)又は過少表出(青色)した、各モジュールにおける遺伝子の百分率を示す図である。(10d)各患者について、重みづけした健常までの分子的距離を、ベースラインの治療前(0カ月)、抗マイコバクテリア治療開始の2カ月後及び12カ月後において計算した図である。個々の患者番号は、図3a〜3dに示した患者番号に対応する。
【図11a−11c】活動性TB患者及び対照の血液におけるリンパ球の解析について示す図である。(11a)T細胞及びB細胞について、テスト集合の健常対照及び活動性TB患者に由来する全血を解析するのに用いられる、フローサイトメトリーによるゲート戦略を示す図である。上行のパネルは、その後のゲーティングで用いられるリンパ球についてのFSC/SSCゲートを決定するのに用いられるバックゲート戦略を示す。まず、大規模なFSC/SSCゲートをかけ(左パネル)、次いで、CD3と対比したCD45について解析した。CD45CD3細胞をゲーティングし(中パネル)、それらのFSC/SSCプロファイルを決定した(右パネル)。次いで、このプロファイルを使用して適切なリンパ球についてのFSC/SSCゲートを決定した(第2行、左パネルを参照されたい)。このバックゲート手順はまた、CD45CD19(B細胞)についてゲーティングして、これらの細胞が、リンパ球ゲート(図示しない)内に包含されることを確認するためにも実施した。第2行のパネルは、T細胞集団を同定するのに用いられるゲート戦略を示す。リンパ球についてのFSC/SSCゲートをかけ、CD3と対比したCD45についてこれらの細胞を評価した(左から2番目のパネル)。次いで、CD45細胞をゲーティングし、CD8と対比したCD3について評価した。CD3T細胞をゲーティングし、CD4及びCD8の発現について評価した。次いで、CD4サブセット及びCD8サブセットをゲーティングした。行3〜6は、メモリーT細胞のサブセットを定義するのに用いられるゲーティング戦略を示す。行2でゲーティングしたCD4 T細胞及びCD8 T細胞を、CCR7の発現と対比したCD45RA、及びアイソタイプ対照に基づく四分セット(行5及び6)について評価し、ナイーブ(CD45RACCR7)T細胞、中枢メモリー(CD45RACCR7)T細胞、エフェクターメモリー(CD45RACCR7)T細胞、及びCD8T細胞の場合は、終末分化エフェクター(CD45RACCR7)T細胞を定義する。また、CD62L発現についても、これらのサブセットを評価した。パネルの下行は、B細胞をゲーティングするのに用いられる戦略を示す。リンパ球についてのFSC/SSCゲートをかけ、CD19と対比したCD45について細胞を評価した。CD45細胞をゲーティングし、CD19及びCD20について評価した。CD19CD20細胞として、B細胞を定義した。(11b)メモリーT細胞集団についての多重パラメータによるフローサイトメトリーにより、11例のテスト集合の健常対照(「対照」)及び9例のテスト集合の活動性TB患者(「活動性」)に由来する全血を解析した図である。フローサイトメトリーの完全なゲート戦略を図11aに示す。グラフは、ナイーブT細胞のサブセット、中枢性メモリーT細胞(TCM)のサブセット、エフェクターメモリーT細胞(TEM)のサブセット、及び終末分化エフェクターT細胞(TD、CD8T細胞に限る)のサブセットの百分率(各群の上行)、並びに各細胞サブセットについての細胞数(×10個/ml)(各群の下行)について、すべての個体についてプールしたデータを示す。各記号は、個別の患者を表わす。水平線は、中央値を表わす。(11c)(i)活動性TBに由来する全血試料(訓練集合、テスト集合、及び検証集合)におけるT細胞遺伝子の転写物量;及び(ii)テスト集合の血液から区分した白血球集団におけるT細胞遺伝子の発現を示す図である。健常対照の中央値(図1に表示した)と比較した遺伝子の量/発現を示す。テスト集合及び区別した集団において示される番号は、個別の患者に対応する。
【図12a−12c】活動性TB患者及び対照の血液における骨髄細胞の解析について示す図である。(12a)テスト集合の健常対照及び活動性TB患者に由来する全血を、単球及び好中球について解析するのに用いられる、フローサイトメトリーによるゲート戦略を示す図である。大規模なFSC/SSCゲートをかけ(上行の左パネル)、次いで、CD14と対比したCD45について解析した。CD45細胞をゲーティングし(中パネル)、CD16と対比したCD14について評価した。単球をCD14と定義し、炎症性単球をCD14CD16と定義し、好中球をCD16と定義した。この図にはまた、CD16好中球と、CD16を発現するNK細胞との可能な重複を評価するのに用いられるゲート戦略も示される。好中球及びNK細胞の両方を包含するように、大規模なFSC/SSCゲートをかけた。(12b)次いで、CD56(NK細胞のマーカー)と対比したCD16について、CD45細胞を評価した図である。CD16好中球は、高レベルのCD16を発現したが、CD56は発現しなかった(アイソタイプの対照プロットにより示される;下パネル)。CD56NK細胞は、中間レベルのCD16を発現したが、高度CD16細胞とは重複しなかった。CD56中程度CD16細胞と、高度CD16細胞とは、FSC/SSC特性が異なっていた。(12c)(i)活動性TBに由来する全血試料(訓練集合、テスト集合、及び検証集合)における骨髄遺伝子の転写物量;及び(ii)テスト集合の血液から区分した白血球集団における骨髄遺伝子の発現を示す図である。健常対照の中央値(図1に表示した)と比較した遺伝子の量/発現を示す。テスト集合及び区別した集団において示される番号は、個別の患者に対応する。
【図13a−13b】393転写物の特徴についてのIngenuity Pathways解析について示す図である。(13a)カノニカルの生物学的経路の各々が、有意に過剰表出する確率(BH多重検定補正を伴うフィッシャーによる正確検定により計算されるp値の−logとしての確率)を、橙色の四角で表示する図である。単色の着色バーは、解析される遺伝子リスト内に存在する経路(各バーの右側縁辺に太字で示される)を含む遺伝子総数の百分率を表わす。バーの色は、訓練集合における健常対照と比較した、活動性TB患者の全血における転写物の量を示す。(13b)訓練集合によるマイクロアレイ解析に用いられる、12例の健常対照、及び13例の活動性TB患者について、インターフェロンアルファ2a(IFN−2a)及びインターフェロン−ガンマ(IFN−γ)の血清レベルを示す図である。両側マン−ホイットニー検定を用いたところ、いずれのサイトカインについても、群間の有意差は観察されなかった。水平線は、各群の平均を示し、ウィスカーは、95%の信頼区間を示す。
【図14a−14b】個別の健常対照及び活動性TB患者に由来する全血及び細胞部分集団におけるPDL1(CD274)の発現について示す図である。(14a)フローサイトメトリーにより、PDL1の発現について、11例のテスト集合の健常対照(「対照」)及び11例のテスト集合の活動性TB患者(「活動性」)に由来する全血を解析した図である。評価されるアイソタイプ対照(緑色)と比較した、すべての白血球及び幾何平均によるPDL1の蛍光強度(MFI)(赤色)を包含するように、大規模なFSC/SSCゲートをかけた。活動性TB患者の各々は、異なる日に解析し、健常対照は小さな群(左から、試料1及び2、3及び4、6〜8、並びに9〜11を併せて解析したが、試料5は単独で解析した)で解析し、各群内の試料は、アイソタイプ対照を共有した。(14b)また、パートaと同じ11例のテスト集合の健常対照(「対照」)及び11例のテスト集合の活動性TB患者(「活動性」)の血液に由来する細胞の部分集団も、PDL1の発現について、フローサイトメトリーにより解析した図である。図6bと同様に細胞の部分集団を定義し、アイソタイプ対照(緑色)と比較したPDL1のMFI(赤色)をプロットした。
【図15a−f】研究群の順に並べ、遺伝子記号と共に拡大して示した、訓練集合の393転写物のプロファイルを、右側で一覧する図である。重要な転写物は、大きな文字列で強調する。各図の左側には、全遺伝子系統樹及びヒートマップを表示し、黒色の四角で、拡大した領域に印をつける。図の下方のカラースケール(図1と同様のスケール)により、転写物の相対量を示す。
【図16a−16】その右側に列挙した各種の遺伝子について、対照、潜在性、及び活動性を比較するヒートマップである。
【図17a−17c】各種の訓練集合、テスト集合、及び検証集合について、統計、すなわち、各種の内訳と共に、性別、出身国、及び民族性を列挙する表である。
【図18a−18c】各種の訓練集合、テスト集合、及び検証集合について、統計、すなわち、TST状態、BCGによるワクチン接種状態、及びスメア状態についての検査結果を列挙する表である。
【図19】各種の試料供給源間における、訓練集合、テスト集合、及び検証集合の特異度及び感度についての結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の各種の実施形態の実施及び使用を以下で詳細に論じるが、本発明が、広範な各種の具体的文脈で実施されうる、本発明の適用可能な多くの概念を提供することを理解されたい。本明細書で論じられる特定の実施形態は、本発明を実施し、用いるための特定の形を例示するだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0016】
本発明の理解を容易にするため、以下で多くの用語を定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連する領域の当業者により一般的に理解される意味を有する。「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その」などの用語は、単数の実体だけを指すことを意図するものではなく、その具体例を例示のために用いうる一般的なクラスを包含する。本明細書における用語法は、本発明の特定の実施形態について説明する目的で用いるものであり、それらの用法は、特許請求の範囲で概括される場合を除き、本発明を限定するものではない。別段に定義しない限り、本明細書で用いられる技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明で用いられる用語の多くについての一般的な定義を当業者に提供する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2d ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5TH ED., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991); and Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。
【0017】
当技術分野では、各種の生化学的方法及び分子生物学的方法が周知である。例えば、国際特許公開第WO97/10365号パンフレット;国際特許公開第WO97/27317号パンフレット; Chapter 3 of Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization with Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, (P. Tijssen, ed.) Elsevier, N.Y. (1993); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (1989); and Current Protocols in Molecular Biology, (Ausubel, F. M. et al., eds.) John Wiley & Sons, Inc., New York(1987-1999), including supplementsでは、核酸を単離及び精製する方法について詳細に説明されている。
【0018】
バイオインフォマティクスについての定義
本明細書で用いられる「オブジェクト」とは、任意の所望の項目又は情報(名詞、動詞、形容詞、副詞、語句、文、記号、数字などを含め、一般に文字項目又は文字情報)を指す。したがって、オブジェクトとは、関係を形成しうる何かであり、情報源から得られ、同定され、且つ/又は検索される何かである。「オブジェクト」には、遺伝子、タンパク質、疾患、表現型、機構、薬物など、所望の実体が含まれるがこれらに限定されない。以下でさらに説明する通り、一部の態様では、オブジェクトが、データでありうる。
【0019】
本明細書で用いられる「関係」とは、同じ単位(例えば、語句、文、2行以上の文字列、段落、ウェブページの節、頁、雑誌、論文、書籍など)におけるオブジェクトの共起を指す。関係は、文字列、記号、数、及びこれらの組合せでありうる。
【0020】
本明細書で用いられる「メタデータの内容」とは、データ供給源における文字列の構成についての情報を指す。メタデータは、ダブリンコアメタデータなど、標準的なメタデータを含む場合もあり、コレクション特異的な場合もある。メタデータフォーマットの例には、図書館の目録に用いられるMachine Readable Catalog(MARC)記録、Resource Description Format(RDF)、及びExtensible Markup Language(XML)が含まれるがこれらに限定されない。メタオブジェクトは、手作業により作成することもでき、自動情報抽出アルゴリズムを介して作成することもできる。
【0021】
本明細書で用いられる「エンジン」とは、他のプログラムのコア機能又は必須機能を実行するプログラムを指す。例えば、エンジンは、オペレーティングシステム内の中心的プログラムの場合もあり、他のプログラムの全体的なオペレーションを連係させるアプリケーションプログラムの場合もある。「エンジン」という用語はまた、変化させうるアルゴリズムを含有するプログラムも指す場合がある。例えば、それが関係を同定する手法を変化させて、関係を同定及びランク付けする新たな規則を反映しうるように、知識発見エンジンを設計することができる。
【0022】
本明細書で用いられる「意味論的解析」とは、例えば、語尾の除去若しくは語幹形成により、又はシソーラスを用いることにより、類似の概念を表わす語間の関係を同定することを指す。「統計的解析」とは、各用語(語、語根、語幹、nグラム、語句など)の生起回数を数えることに基づく技法を指す。主題について無制限のコレクションでは、異なる文脈で用いられる同じ語句が、異なる概念を表わす場合がある。語句の共起についての統計解析は、語の意味の曖昧さを解消する一助となる。「統語解析」は、品詞解析により、曖昧さをさらに低減するのに用いることができる。本明細書で用いられる、このような解析のうちの1又は2以上を、より一般的に、「字句解析」と称する。「人工知能(AI)」とは、コンピュータなど、人間以外のデバイスが、人間が有意義又は「知的」であるとみなすタスクを実行する方法を指す。例には、写真の同定、発話された語又は書かれた文字列の理解、及び問題の解決が含まれる。
【0023】
「データ」、「データセット」、及び「情報」などの用語は、「情報」及び「知識」と同様、互換的に用いられることが多い。本明細書で用いられる「データ」とは、経験的な測定値又は経験的な測定値のセットである、最も根本的な単位である。データは、情報に寄与するようにコンパイルされるが、情報には根本的に依存せず、データのセットであるデータセットに統合することができる。これに対し、情報は、関心から導出されるものであり、例えば、心血管疾患の危険性と相関する変数を見出す目的で、民族性、性別、身長、体重、及び食餌についてのデータ(単位)をまとめることができる。しかし、同じデータを用いて、食餌の選好、すなわち、スーパーマーケットである製品が売れる可能性が高いことについての定式を発生させるか、又はこれについての「情報」を創出することができるであろう。
【0024】
本明細書で用いられる「データベース」という用語は、データフィールド内に多様な情報ファセットが見出されうる場合であっても、生データ又はコンパイルされたデータのリポジトリーを指す。データベースは、1又は2以上のデータセットを包含しうる。データベースは、構築されることが典型的であり、そのため、その内容は、アクセス、管理、及び更新が可能である(例えば、データベースは動的である)。データ及び情報の一次情報源は、データベースであるため、本発明ではまた、「データベース」及び「情報源」という用語も互換的に用いられる。しかし、「情報源データベース」又は「情報源データ」とは一般に、データ、例えば、オブジェクトを同定し、関係を決定するためのシステムに入力される、構造化されていない文字列及び/又は構造化されたデータを指す。情報源データベースは、関係データベースの場合もあり、関係データベースではない場合もある。しかし、システムデータベースは通常、関係データベース、又はオブジェクト間の関係に関する値を保存する、一部の同等種類のデータベースを包含する。
【0025】
本明細書で用いられる「システムデータベース」と「関係データベース」とは、互換的に用いられ、あらかじめ定義されたカテゴリーに適合するデータを含有する表のセットとして構築される、1又は2以上のデータコレクションを指す。例えば、データベース表は、列により定義される1又は2以上のカテゴリー(例えば、属性)を含みうる一方で、データベースの行は、列により定義されるカテゴリーに固有のオブジェクトを含有しうる。したがって、遺伝子の種類などのオブジェクトは、遺伝子の存在、非存在、及び/又は遺伝子の発現レベルについての列を有しうる。関係データベースの行はまた、「セット」とも称することができ、一般に、その列の値により定義される。関係データベースの文脈における「ドメイン」とは、列などのフィールドが包含しうる妥当な値の範囲である。
【0026】
本明細書で用いられる「知識のドメイン」とは、システムが作動的である研究領域、例えば、すべての生物医学データを指す。複数のドメインに由来するデータ、例えば、生物医学データと工学データとを統合することには利点があることを指摘すべきであるが、それは、この多様なデータが、場合によって、1つの領域又は調査/研究(1つのドメイン)だけに精通している通常の関係者ではまとめることができない事柄を連関させうるからである。「分配データベース」とは、ネットワーク内の異なる点の間で分散する場合もあり、複製される場合もあるデータベースを指す。
【0027】
本明細書で用いられる「情報」とは、数字、文字、数字のセット、文字のセットを包含しうるデータセット、又はデータのセットから結果として得られるか若しくは導出される結論を指す。よって、「データ」とは、測定値又は統計、及び情報の根本的単位である。「情報」はまた、語、記号、構造化されていない自由な文字列などの文字列、コードなど、他の種類のデータも包含しうる。「知識」とは、原因及び結果をモデル化するのに十分な、システムについての理解をもたらす情報のセットとして緩やかに定義される。前出の例を拡張すると、人口、性別、及び過去の購買についての情報を用いて、食品販売のための地域的マーケティング戦略を開発しうる一方で、購買者は、国籍についての情報を、製品を輸入するための指針として用いうるであろう。データ、情報、及び知識の間には厳密な境界が存在せず、これら3つの用語は、時として、同義であると考えられることに注目することは重要である。一般に、データは観察に由来し、情報は相関づけに由来し、知識はモデル化に由来する。
【0028】
本明細書で用いられる「プログラム」又は「コンピュータプログラム」とは一般に、特定のプログラム言語の規則に準拠し、ある機能、タスク、又は問題を、解くか又は実行するのに必要とされる「コードセグメント」に分割可能な宣言及び文又は命令からなる、統語単位を指す。プログラム言語は一般に、プログラムを表現するための人工言語である。
【0029】
本明細書で用いられる「システム」又は「コンピュータシステム」とは一般に、データ処理を実行する、1又は2以上のコンピュータ、周辺機器、及びソフトウェアを指す。「ユーザー」又は「システムオペレーター」は一般に、データ処理及び情報交換を目的として、「ユーザーデバイス」(例えば、コンピュータ、無線デバイスなど)を介してアクセスされるコンピュータネットワークを用いる関係者を包含する。「コンピュータ」とは一般に、人間の介入なしに、多数の数値演算及び論理演算を含め、実質的な計算を実行しうる機能単位である。
【0030】
本明細書で用いられる「アプリケーションソフトウェア」又は「アプリケーションプログラム」とは一般に、応用問題の解決に特化したソフトウェア又はプログラムを指す。「応用問題」とは一般に、エンドユーザーにより提出され、それを解決するための情報処理を必要とする問題である。
【0031】
本明細書で用いられる「自然言語」とは、その規則が、特別に規定されることのない現行の用法に基づく言語、例えば、英語、スペイン語、又は中国語を指す。本明細書で用いられる「人工言語」とは、その規則が、その使用前に明示的に確立されている言語、例えば、C、C++、Java、BASIC、FORTRAN、又はCOBOLなどのコンピュータプログラム言語を指す。
【0032】
本明細書で用いられる「統計的関与性」とは、ある関係が、無作為の可能性により予測されるより高頻度で生じるならば、それを統計的に関与性であると判定する、1又は2以上のランク付けスキーム(O/E比、強度など)の使用を指す。
【0033】
本明細書で用いられる「協調制御遺伝子」又は「転写物モジュール」という用語は、特定の遺伝子についての、群分けした遺伝子発現プロファイル(例えば、特定の遺伝子配列と関連するシグナル値)を指す。各転写物モジュールは、2つの重要なデータ部分である、文献検索部分と、遺伝子マイクロアレイから得られる、実際の経験的な遺伝子発現値データとを相関させる。転写物モジュールに選択される遺伝子のセットは、遺伝子発現データの解析に基づく(上記で説明したモジュール抽出アルゴリズム)。さらなるステップは、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Chaussabel, D. & Sher, A. Mining microarray expression data by literature profiling. Genome Biol 3, RESEARCH0055 (2002)(http://genomebiology.com/2002/3/10/research/0055)、及び所望の疾患又は状態、例えば、全身性エリテマトーデス、関節炎、リンパ腫、癌腫、黒色腫、急性感染症、自己免疫障害、自己炎症障害などから得られる発現データにより教示される。
【0034】
以下の表は、文献検索部分又は転写物モジュールへの寄与を発生させるのに用いたキーワードの例を列挙する。当業者は、他の状態、例えば、特定の癌、特定の感染性疾患、移植などには、他の用語を容易に選択しうることを認識するであろう。例えば、本明細書の下記では、T細胞の活性化と関連する遺伝子についての遺伝子及びシグナルをモジュールID「M2.8」として記載し、特定のキーワード(例えば、リンパ腫、T細胞、CD4、CD8、TCR、胸腺、リンパ球、IL2)を用いて、重要なT細胞関連遺伝子、例えば、T細胞表面マーカー(CD5、CD6、CD7、CD26、CD28、CD96);リンパ球系列の細胞により発現する分子(リンホトキシンベータ、IL2誘導性T細胞キナーゼ、TCF7;及びT細胞分化タンパク質であるmal、GATA3、STAT5B)を同定した。次に、これらの遺伝子について、患者集団に由来するデータを相関させて、転写物モジュールを作成することにより、完全なモジュールを発生させた(プラットフォーム、上方制御及び/又は下方制御の存在及び/又は非存在にかかわらず)。場合によっては、遺伝子プロファイルが、(この時点では)これらの疾患状態及びデータについての任意の特定の遺伝子クラスタリングに適合せず、一部の生理学的経路(例えば、cAMPシグナル伝達、亜鉛フィンガータンパク質、細胞表面マーカーなど)は、「不明」モジュール内に見出される。実際、キーワード検索に適合させる前に、遺伝子発現データセットを用いて、協調発現を示す遺伝子を抽出することができる、すなわち、交差参照を行う前に、いずれのデータセットも、第2のデータセットと相関させることができる。
【0035】
【表1】



【0036】
生物学的定義
本明細書で用いられる「アレイ」という用語は、1又は2以上のペプチド又は核酸プローブを支持体に結合させた固体の支持体又は基質を指す。アレイは、1又は2以上の異なる核酸又はペプチドプローブを、基質表面の既知の異なる位置に結合させていることが典型的である。また、「マイクロアレイ」又は「遺伝子チップ」としても説明されるこれらのアレイは、既知のゲノム、例えば、ヒトゲノムに基づき、10,000、20,000、30,000、又は40,000個の同定可能な異なる遺伝子を有しうる。これらの汎用アレイを用いて、試料中で発現するか又は見出される遺伝子の全「トランスクリプトーム」又は転写物プール、例えば、RT及び/又はRT−PCRにかけて、相補的なDNAの単位複製配列セットを作製しうる、RNA、mRNAなどとして発現する核酸を検出する。アレイは、機械的合成法、リソグラフ以外の方法及び/又は光リソグラフ法と固相合成法との組合せを組み込む光指向の合成法などを用いて作製することができる。
【0037】
これらの核酸アレイを合成するための各種の技法が説明されている、例えば、事実上任意の形態の表面上で作製され、なお又は複数の表面上でも作製されている。アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー表面、光ファイバーなどのファイバー、ガラス、又は他の任意の適切な基質上のペプチド又は核酸でありうる。アレイは、診断、又は包含されるすべてのデバイスの他の操作を可能とする形でパッケージ化することができる(例えば、その関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,955,788号を参照されたい)。
【0038】
本明細書で用いられる「疾患」という用語は、細胞の任意の異常な生物学的状態を伴う、生物の生理学的状態を指す。疾患には、固有の場合もあり、遺伝性の場合もあり、感染により引き起こされる場合もあり、細胞機能の異常、細胞分裂の異常などにより引き起こされる場合もある、細胞、組織、身体機能、系、又は器官の中断、停止、又は障害が含まれるがこれらに限定されない。「疾患状態」をもたらす疾患は一般に、生物学的系、すなわち、疾患の宿主に対して有害である。本発明との関連では、疾患又は障害と関連する、感染(例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、蠕虫感染など)、炎症、自己炎症、自己免疫、アナフィラキシー、アレルギー、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、手術、移植、生理学的状態など、任意の生物学的状態を、疾患状態と考える。病理学的状態は一般に、疾患状態の同等物である。
【0039】
疾患状態はまた、異なる疾患状態のレベルへも類別することができる。本明細書で用いられる疾患又は疾患状態のレベルは、疾患又は疾患状態の増悪、並びに治療時、治療中、及び治療後における生理学的反応を反映する任意の尺度である。一般に、疾患又は疾患状態は、該疾患の影響が重度を増してゆくレベル又は病期を通して増悪する。疾患状態のレベルは、試料における細胞の生理学的状態により影響されうる。
【0040】
本明細書で用いられる「治療」又は「治療レジメン」という用語は、疾患状態を緩和するか、又は変化させる目的で実施される医療ステップ、例えば、薬理学的技法、手術的技法、食餌的技法、及び/又は他の技法を用いて疾患の影響又は症状を低減又は除去することを意図する治療のコースを指す。治療レジメンは、処方用量の1若しくは2以上の薬物又は手術を包含しうる。治療は、有益であり、疾患状態を低減することも極めて多いが、治療の効果が望ましくないか、又は副作用をもたらす場合も多い。治療の効果はまた、宿主の生理学的状態、例えば、年齢、性別、遺伝学的特質、体重、他の疾患状態などによっても影響される。
【0041】
本明細書で用いられる「薬理学的状態(pharmacological state)」又は「薬理学的状態(pharmacological status)」とは、試料における1又は2以上の核酸の薬理学的状態、例えば、薬理学的介入の結果としての新たな転写状態、安定化状態、及び/又は不安定化状態に影響しうる、1又は2以上の薬物、手術などにより処理するか、処理しているか、及び/又は処理した試料を指す。試料の薬理学的状態は、薬物処理前、薬物処理中、及び/又は薬物処理後における生物学的状態の変化に関し、本明細書で教示される通り、診断機能又は予後診断機能を果たしうる。薬物処理又は手術後における一部の変化は、疾患状態に関与性の場合もあり、且つ/又は治療に関連しない副作用の場合もある。薬理学的状態の変化は、治療の期間、処方される薬物の種類及び用量、所与の治療コースに対する服薬順守の度合い、並びに/又は処方されていない薬物の摂取の結果である可能性が高い。
【0042】
本明細書で用いられる「生物学的状態」という用語は、発現の変化を解析するために単離及び精製した、細胞試料のトランスクリプトーム(すなわち、RNA転写物の全コレクション)の状態を指す。生物学的状態は、細胞成分の量及び/又は活性の測定、並びに形態学的表現型、又は転写物を検出するための方法の組合せによる特徴づけを介して、試料における細胞の生理学的状態を反映する。
【0043】
本明細書で用いられる「発現プロファイル」という用語は、RNA、DMAの相対量、又はタンパク質の量若しくは活性レベルを指す。発現プロファイルは、例えば、任意の数の方法を介し、市販品が容易に入手可能な、遺伝子発現を決定及び/又は解析するための、任意の数の遺伝子チップ、遺伝子アレイ、ビーズ、多重PCR、定量的PCR、ランオンアッセイ、ノーザンブロット解析、ウェスタンブロット解析、タンパク質の発現、FACS(蛍光活性化細胞分取)、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、化学発光研究、酵素アッセイ、増殖研究、又は他の任意の方法、装置、及びシステムを用いた、転写状態又は翻訳状態の測定値でありうる。
【0044】
本明細書で用いられる、試料の「転写状態」という用語は、RNA分子種、とりわけ、試料中に存在するmRNAの種類及び相対量を包含する。本明細書ではまた、RNAの種類及び量の組合せである試料の全転写状態を、トランスクリプトームとも称する。一般に、試料における全RNA分子種の全セットのすべての関連成分の実質的画分を測定する。
【0045】
本明細書で用いられる「モジュール転写物ベクトル」という用語は、「示差的に発現する遺伝子の比率」を反映する転写物発現データを指す。例えば、各モジュールについて、少なくとも2つの群(例えば、健常対象を患者と対比する)間で示差的に発現した転写物の比率を反映する転写物発現データを指す。このベクトルは、2つの試料群を比較することにより誘導される。各モジュール内の疾患特異的な転写物セットを選択するには、第1の解析ステップを用いる。次に、「発現レベル」を比較する。所与の疾患について群間比較することにより、各モジュールについて、示差的に発現する転写物のリストがもたらされる。異なる疾患により、モジュール転写物の異なるサブセットが得られることが判明した。次いで、この発現レベルと共に、示差的に発現しているものとして同定された遺伝子の、疾患特異的なサブセットの発現値を平均することにより、単一試料の各モジュール(複数可)についてのベクトルを計算することが可能となる。この手法は、単一試料について、モジュール発現ベクトルのマップ、例えば、本明細書で開示されるモジュールマップにより説明されているマップの作製を可能とする。これらのベクトルによるモジュールマップは、各試料について誘導しうる各モジュールの平均発現レベル(示差的に発現した遺伝子の比率ではなく)を表わす。
【0046】
本発明を用いると、モジュールレベルだけでなく、遺伝子レベルでも疾患を同定及び識別することが可能となる、すなわち、2つの疾患は、同じベクトル(示差的に発現する転写物の比率が同一であること、同一の「極性」)を有しうるが、該ベクトルの遺伝子成分は、なおも疾患特異的でありうる。遺伝子レベルの発現は、解析の解像度を大きく増大させる顕著な利点をもたらす。さらに、本発明は、複合転写物マーカーを利用する。本明細書で用いられる「複合転写物マーカー」という用語は、個別の遺伝子をマーカーとして用いることと比較した、複数の遺伝子(モジュールのサブセット)の平均発現値を指す(また、これらのマーカーの複合は疾患特異的でありうる)。使用者が、例えば、SLE患者における疾患の重症度を評価するか、又は本明細書で開示される発現ベクトルを導出する目的で、多変量マイクロアレイスコアを発生させうるため、この複合転写物マーカー法は独自のものである。本発明の複合モジュール転写物マーカーを用いると、マイクロアレイプラットフォームを通じて、本明細書で見出される結果が再現可能であり、これにより、規制機関による承認を得るための信頼性が増大する。
【0047】
本発明と共に用いられる遺伝子発現モニタリングシステムは、1又は2以上の標的疾患に特異的であり、且つ/又はカスタマイズされた、限定的及び/又は基本的な数の遺伝子によりカスタマイズされた遺伝子アレイを包含しうる。日常的に用いられる一般的な汎用ゲノムアレイとは異なり、本発明は、特殊なプラットフォームを用いる必要なしに、遺伝子及びゲノムの遡及解析のための、これらの一般的な汎用アレイの使用を提供するだけではなく、何千もの他の非関与遺伝子を必要としない、解析に最適な遺伝子セットをもたらす、カスタマイズされたアレイの開発も提供することがより重要である。既存の技術に対する、本発明によるアレイ及びモジュールの最適化の1つの顕著な利点は、経費(例えば、アッセイ1回当たりの費用、材料、機器、時間、人員、研修などの経費)の節減であるが、データの大半が非関与である汎用アレイを製造する環境費用の節減でもあることがより重要である。本発明のモジュールは、シグナル対ノイズ比を最大化しながら、最小数のプローブにより最適のデータをもたらす、簡素な特注アレイを設計することを初めて可能とする。解析される遺伝子の総数を削減することにより、例えば、大量の非関与データをもたらす汎用遺伝子チップの製造時に、光リソグラフィー用の何千もの高価な白金製マスクを製造する必要性をなくすことが可能となる。本発明を用いて、例えば、市販品が容易に入手可能な、遺伝子発現を決定及び/又は解析するための、デジタル式光化学アレイ、球状ビーズアレイ、ビーズ(例えば、Luminex)、多重PCR、定量的PCR、ランオンアッセイ、ノーザンブロット解析、なお若しくは、タンパク質解析では、例えば、ウェスタンブロット解析、2D及び3Dのゲルタンパク質発現、MALDI、MALDI−TOF、FACS(蛍光活性化細胞分取)(細胞表面又は細胞内における)、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、化学発光研究、酵素アッセイ、増殖研究、又は他の任意の方法、装置、及びシステムと共に、本発明の限定されたプローブセット(複数可)を用いれば、マイクロアレイの必要を完全に回避することが可能となる。
【0048】
本発明の「分子フィンガープリントシステム」は、異なる細胞若しくは組織、同じ細胞若しくは組織の異なる部分集団、同じ細胞若しくは組織の異なる生理学的状態、同じ細胞若しくは組織の異なる発生段階、又は同じ組織の異なる細胞集団における発現についての、他の疾患細胞対照及び/又は正常細胞対照に対する比較解析を容易とし、且つ、これを実施するのに用いることができる。場合によって、正常又は野生型の発現データは、同時に又はほぼ同時に解析される試料に由来する場合もあり、既存の遺伝子アレイ発現データベース、例えば、NCBI Gene Expression Omnibusデータベースなどの公表データベースから得られるか、又は選択される発現データの場合もある。
【0049】
本明細書で用いられる「示差的に発現する」という用語は、2つ以上の試料、例えば、疾患試料と正常試料との間で異なる、細胞成分(例えば、核酸、タンパク質、酵素活性など)の測定値を指す。細胞成分は、オン又はオフ(存在又は非存在)の場合もあり、基準と比べて上方制御される場合もあり、基準と比べて下方制御される場合もある。遺伝子チップ又は遺伝子アレイと共に用いられる場合、核酸、例えば、mRNA又は他のRNA(miRNA、siRNA、hnRNA、rRNA、tRNAなど)の示差的な遺伝子発現を用いて、細胞種類又は核酸を識別することができる。最も一般的には、細胞の転写状態の測定は、定量的逆転写酵素(RT)及び/又は定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ゲノム発現解析、翻訳後解析、ゲノムDNAに対する修飾、転座、in situハイブリダイゼーションなどにより達成される。
【0050】
一部の疾患状態については、とりわけ、該疾患状態の初期レベルでは、細胞又は形態の差違を同定することが可能である。本発明は、細胞の遺伝子モジュール自体を検討することにより、又は、より重要なことであるが、それらの通常の生理学的文脈内で作用している免疫エフェクター細胞、すなわち、免疫の活性化、免疫寛容、又は免疫のアネルギーにおいて作用している免疫エフェクター細胞に由来する遺伝子の、細胞内におけるRNA発現のモジュールを検討することにより、これらの特異的な突然変異、又は1若しくは2以上の遺伝子を同定する必要を回避する。遺伝子の突然変異が、遺伝子群の発現レベルの劇的な変化を結果としてもたらしうるのに対し、生物学的な系は、他の遺伝子の発現を変化させることにより、変化を代償することが多い。これらの内部的な代償反応の結果として、多くの撹乱が生物学的な系の観察可能な表現型に及ぼす影響は最小限となりうるが、細胞成分の組成に対しては深甚な影響が及ぶ可能性がある。同様に、遺伝子転写物の実際のコピーは、増大する場合もあり、減少する場合もあるが、転写物の寿命又は半減期が影響を受け、タンパク質の生成を大幅に増大させる可能性がある。本発明は、一実施形態において、単一のメッセージ及び/又は突然変異ではなく、エフェクター細胞(例えば、白血球、リンパ球、及び/又はこれらの部分集団)を検討することにより、実際のメッセージを検出する必要性がなくなる。
【0051】
当業者は、試料を、例えば、単一細胞、細胞コレクション、組織、細胞培養物などを含めた各種の供給源から得ることができることを容易に理解するであろう。ある場合には、例えば、尿試料、血液試料、唾液試料、組織試料、又は生検試料などにおいて見出される細胞から十分なRNAを単離することもなお可能でありうる。ある状況下では、粘液分泌物、糞便、涙液、血漿、腹水、間質液、髄腔内液、脳脊髄液、汗、又は他の体液から、十分な細胞及び/又はRNAを得ることができる。例えば、組織供給源又は細胞供給源に由来する核酸供給源には、組織生検試料、1又は2以上の分取細胞集団、細胞培養物、細胞クローン、形質転換細胞、生検、又は単一細胞が含まれうる。組織供給源には、例えば、脳、肝臓、心臓、腎臓、肺、脾臓、網膜、骨、神経組織、リンパ節、内分泌腺、生殖器官、血液、神経、血管組織、及び嗅上皮が含まれうる。
【0052】
本発明は、単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできる、以下の基本的な構成要素、すなわち、1若しくは2以上のデータマイニングアルゴリズム;1若しくは2以上のモジュールレベルの解析過程;白血球転写物モジュールの特徴づけ;ヒト疾患を分子診断/分子予後診断するための多変量解析における集約モジュールデータの使用;並びに/又はモジュールレベルのデータ及び結果の画像化を包含する。本発明を用いるとまた、複合転写物マーカーを発生させ、解析することも可能となり、これを、単一の多変量スコアにさらに集約することもできる。
【0053】
データ収集速度の急激な増大は、マイクロアレイデータ及び生物医学的知識を利用するためのマイニングツール及びアルゴリズムの開発を促進してきた。転写系のモジュール構成及びモジュール機能を明らかにすることを目的とする手法は、疾患の頑健な分子特徴を同定するための有望な方法を構成する。実際、このような解析は、マイクロアレイデータを、個別の遺伝子又は遺伝子リストのレベルを超えて概念化することにより、大スケールの転写物研究に対する認識を転換しうる。
【0054】
本発明者らは、現在のマイクロアレイベースの調査が、「ノイズが大きい」ことが周知のデータ、すなわち、解釈が困難であり、検査室及びプラットフォームを超えた比較が十分になされないデータの解析を伴う、重大な難題に直面していることを認識している。マイクロアレイデータを解析するのに広く受容されている手法は、研究群間の発現が異なる遺伝子サブセットの同定で始まる。次に、使用者は、続いて、パターン発見アルゴリズム及び既存の科学的知識を用いて、結果として得られる遺伝子リストを「解明」しようと試みる。
【0055】
本発明者らは、2以上のプラットフォームにわたる多大なばらつきに対処するのではなく、解析の早期段階における、生物学的に関与性である遺伝子の選択を重視する戦略を開発した。略述すると、該方法は、大規模なデータコレクションに由来する協調発現遺伝子又は転写物モジュールの群を解析及び抽出するために、それについての改良型のデータマイニングアルゴリズムが開発された、所与の生物学的な系を特徴づける転写物成分の同定を包含する。
【0056】
肺結核(PTB)は、結核菌(M. tuberculosis)種により引き起こされる全世界的な罹患及び死亡の、主要且つ増大しつつある原因である。しかし、結核菌に感染した個体の大半は、無症候性を維持し、感染を潜在的形態で保持し、この潜在的状態は、活性免疫反応により維持されていると考えられる。血液は、免疫系のパイプラインであり、それ自体、そこから個体の健康状態及び免疫状態を確立しうる、理想的な生物学的物質である。本明細書において、本発明者らは、血液細胞における全ゲノムの活性を評価するのにマイクロアレイ法を用いて、活動性肺結核患者及び潜在性結核患者において、顕著で相互的な血中転写物バイオマーカー特徴を同定した。これらの特徴はまた、対照個体における特徴とも異なっていた。潜在性結核患者は、感染しているが、大半が顕在的な疾患を発症しないので、全血における免疫による細胞傷害性遺伝子の発現を過剰に表出した潜在性結核の特徴は、結核感染に対する防御的免疫因子を決定する一助となりうる。また、活動性TB患者及び潜在性TB患者に由来する、この顕著な転写物バイオマーカー特徴を用いて、感染を診断し、抗マイコバクテリア薬による治療の応答をモニタリングすることができる。加えて、活動性結核患者における特徴は、免疫病原性に関与する因子を決定し、おそらくは、免疫療法的介入の戦略をもたらす一助となるであろう。本発明は、感染を診断するための、血中転写物バイオマーカーの使用についての特許請求を主張した先行出願に関する。しかし、この先行出願は、活動性結核及び潜在性結核について、バイオマーカーの存在を開示したわけではなく、むしろ、他の急性感染症を伴う小児に焦点を当てたものである(Ramillo, Blood, 2007)。
【0057】
今回の、活動性TB患者と対比した潜在性TB患者に由来する血液における転写サインの同定は、結核菌感染が疑われる患者のほか、健常者に対する結核のスクリーニング/早期検出のための検査にも用いることができる。本発明はまた、抗マイコバクテリア薬による治療応答の評価も可能とする。この文脈でならば、検査はまた、特に、多剤耐性患者における薬物治療を評価するための薬物試験の文脈でも、特に有用であろう。さらに、本発明は、ワクチン接種試験における防御的免疫反応をより十分に定義する目的で、潜在性結核の免疫特徴に由来する、短期データ、中期データ、及び長期データを得るのにも用いることができる。また、活動性結核患者における特徴は、免疫病原性に関与する因子を決定し、おそらくは、免疫療法的介入の戦略をもたらす一助となるであろう。
【0058】
結核菌に対する免疫反応は複雑であり、多因子性である。T細胞、並びにTNF、IFN−γ、及びIL−12などのサイトカインが、免疫による結核菌の制御にとって重要であることは知られている(Casanova, J. L. & Abel, L. Genetic dissection of immunity to mycobacteria: the human model. Annu Rev Immunol 20, 581-620 (2002)、Cooper, A. M. Cell-mediated immune responses in tuberculosis. Annu Rev Immunol 27, 393-422 (2009)、Flynn, J. L. & Chan, J. Immunology of tuberculosis. Annu Rev Immunol 19, 93-129 (2001)、Keane, J. et al. Tuberculosis associated with infliximab, a tumor necrosis factor alpha-neutralizing agent. N Engl J Med 345, 1098-104 (2001))が、防御又は発症機序を決定する宿主因子の理解は依然として不完全である(Flynn, J. L. & Chan, J. Immunology of tuberculosis. Annu Rev Immunol 19, 93-129 (2001))。炎症性疾患には血中転写物プロファイリングが適用されて、診断及び疾患発症機序の理解を改善するのに成功している(Chaussabel, D. et al. A modular analysis framework for blood genomics studies: application to systemic lupus erythematosus. Immunity 29, 150-64 (2008)、Pascual, V. et al. How the study of children with rheumatic diseases identified interferon-alpha and interleukin-1 as novel therapeutic targets. Immunol Rev 223, 39-59 (2008))。しかし、作成されるデータのサイズ及び複雑性のために解釈は困難となり、研究者は、さらなる研究のために一握りの候補遺伝子に焦点を当てざるを得ないことが多く(Benoist, C., Germain, R. N. & Mathis, D. A plaidoyer for 'systems immunology'. Immunol Rev 210, 229-34 (2006))、これは、診断のための特異的バイオマーカーとしては不十分な可能性があり、疾患の発症機序についてもたらされる情報はわずかとなる可能性がある。個別且つ相補的なバイオインフォマティクス法を用いて、本発明者らは、活動性TB患者の転写サインを定義し、これにより、さらなる免疫学的解析を駆動した。本発明者らによる、総合的な不偏サーベイは、この複雑な疾患の免疫病原性に対する重要な洞察をもたらし、その理解の改善は、TB管理を進歩させる一助となるであろう。
【0059】
活動性結核に顕著な全血中転写サイン
結核菌感染に対する宿主反応について、総合的な不偏サーベイを得るために、Illumina HT12ビーズアレイを用いて、活動性TB患者、潜在性TB患者、及び健常対照の血液に由来する、ゲノム規模の転写物プロファイルを作成した。試料採取は、すべての患者から治療前に行った。結核菌についての陽性培養物により、活動性TBの診断を裏付けた。潜在性TB患者は、活動性TB患者に対する無症候性の家庭内接触者、又は流行国からの新規の入国者であり、ツベルクリン皮膚検査(TST)(ロンドン)の陽性、及びIGRA(ロンドン及び南アフリカ)の陽性により規定した。健常対照は、ロンドンで募集したものであり、上記の基準すべてについて陰性であった。3つのコホート:訓練集合(2007年1月〜9月にロンドンで募集した;13例の活動性肺TB患者;17例の潜在性TB患者;及び12例の健常対照);テスト集合(2007年10月〜2009年2月にロンドンで募集した;21例の活動性TB患者;21例の潜在性TB患者;12例の健常対照);及び検証集合(2008年5月〜2009年2月に南アフリカ(SA)、ケープタウン近郊、ケイエリチャタウンシップの高負荷流行地域で募集した;20例の活動性TB患者;31例の潜在性TB患者)(図16及び17;図7)を個別に募集し、そこから試料採取した。同様に、3つのコホートに由来する試料の処理及び解析も、すべて個別に実施した。知識の発見及び試料サイズの適合性評価には、訓練集合を用いた。「方法」で説明される通りに、全血試料からRNAを抽出し、処理した。結果として得られるデータにフィルターをかけて、検出されなかった転写物を除去したところ(α=0.01)、データセットを構成する試料の10%超において、標準化した表現で、全試料の中央値からの偏差が2倍未満であった。この教師なしのフィルター処理により、1836転写物のリストが得られ、これにより、活動性TB群において顕著な特徴が明らかとなった(図8a)。次いで、この1836転写物のリストを用いて、群間で有意に(クルスカル−ワリスによるANOVA;BH(Benjamini-Hochberg)多重検定補正を用いて、偽発見率を0.01に等しくした)示差的発現した特徴遺伝子を同定した。これにより、393転写物のリストが得られ、これらを、平均リンケージを2つのクラスター間の距離の尺度とするピアソン補正により階層クラスタリングにかけ、相対量が同様である転写物の遺伝子系統樹を創出した。これを、ヒートマップの左の系統図として示し、各個体に由来するデータを、臨床診断に基づき群分けされて示される、固有の転写物プロファイルに構成した(図1a)。これにより、潜在性TB患者又は健常対照に由来する試料の大半では見られなかった、活動性TBに顕著な特徴が明らかとなった。
【0060】
活動性TBについての推定転写サインを同定すると、これらの知見を、独立の患者コホートにおいて裏付けることが重要であった。マイクロアレイ解析は、方法論的ばらつき、技法的ばらつき、及び統計的ばらつきに対して脆弱である(Allmark, P. Should research samples reflect the diversity of the population? J Med Ethics 30, 185-9 (2004)、Cottin, V. et al. Small-cell lung cancer: patients included in clinical trials are not representative of the patient population as a whole. Ann Oncol 10, 809-15 (1999)、Simon, R., Radmacher, M. D., Dobbin, K. & McShane, L. M. Pitfalls in the use of DNA microarray data for diagnostic and prognostic classification. J Natl Cancer Inst 95, 14-8 (2003))。加えて、TBは、民族性、地域、合併感染症、年齢、及び社会経済的状態により影響される可能性が極めて高い、結核菌感染に対する、多様な範囲にわたる免疫反応を表出する可能性が高い(Young, D. B., Gideon, H. P. & Wilkinson, R. J. Eliminating latent tuberculosis. Trends Microbiol 17, 183-8 (2009)、Ottenhoff, T. H. Overcoming the global crisis: "yes, we can", but also for TB ... ? Eur J Immunol 39, 2014-20 (2009))。こうして、本発明者らによる知見が、広範にわたり適用可能であることを確認するため、本発明者らは、その後に募集した、2つのさらなる独立のコホートにおいて、これらの知見を裏付けた。これらの2つの独立のコホートに由来する試料である、テスト集合(ロンドン)及び検証集合(南アフリカ)を処理し、データを、訓練集合に関して標準化した。これらのさらなる検証の目的は、訓練集合において定義された特徴を個別に裏付けることであったので、転写物のフィルタリング又は選択は実施しなかった。むしろ、あらかじめ選択した393転写物のリスト、及び訓練集合のデータを解析することにより定義した遺伝子系統樹を、独立のテスト集合及び検証集合(南アフリカ)から得られたデータに適用した。スピアマン補正及びクラスター間距離の尺度としての平均リンケージを用いて、階層クラスタリングアルゴリズムを、テスト集合及び検証集合(南アフリカ)による393転写物のプロファイルに適用して、それらの類似性により、個別の遺伝子発現プロファイルを群にまとめ、ヒートマップの上端に沿って示される「条件ツリー」を創出した(図1b及び1c)。テスト集合及び検証集合の両方(南アフリカ)による患者転写物プロファイルについての、この教師なしの階層クラスタリングは、活動性TB患者が、潜在性TB患者及び健常対照(図1b、ロンドン)又は潜在性TB患者(図1c;南アフリカ)とは独立してクラスタリングされ、クラスターと研究群との間の有意の連関(ピアソンによるカイ二乗検定;p<0.0005)を伴う(図1b及び1c)が、民族性、年齢、及び性別との連関は伴わない(図8b、8c、及び8d)ことを明確に示す。しかし、少数の潜在性TB患者の転写物プロファイル(ロンドンのテスト集合21例中2例:約10%;検証集合(南アフリカ)31例中3例)は、活性化TB患者の転写物プロファイルと合わせてクラスタリングされた(テスト集合では†及び▲で印をつけた:図1b;並びに南アフリカの検証集合ではΣ、Ω、及びδで印をつけた:図1c)。次いで、本発明者らは、臨床診断の知識を伴わずに、K近傍クラス予測法に基づくクラス予測ツールを用いて、393転写物のリストが、テスト集合及び検証集合の試料を、活動性TB又はそれ以外(健常又は潜在性TB)として適正に分類する能力を調べた。予測モデルは、テスト集合において、試料44例の適正な予測、試料9例の不適正な予測をもたらし、試料1例には予測をもたらさなかった。これは、61.67%の感度、93.75%の特異度、及び1.9%の不定率に等しかった。テスト集合における不適正な予測は、上記のクラスタリング解析で示唆された通り、活動性TB患者として分類された5例の潜在性TB患者;活動性TB患者ではないと予測された4例の活動性TB患者を含んだ。南アフリカの検証集合では、試料45例の適正な予測、試料2例の不適正な予測(1例の活動性TB、1例の潜在性TB)がなされ、試料4例には予測がなされなかった。これは、94.12%の感度及び96.67%の特異度をもたらしたが、7.8%の不定率をもたらした(図19)。
【0061】
【表2】























【0062】
中程度負荷の地域(ロンドン)出身の活動性TB患者、及び高度負荷の地域(南アフリカ)出身の活動性TB患者両方の血液における転写サインを同定したところ、これは、階層クラスタリング及び盲検処理したクラス予測により示される通り、潜在性TB患者の特徴、及び健常対照の特徴とは異なる。潜在性TBの特徴は、分子的な異質性を示した。2つの独立の患者コホートにおける、活動性TBの転写サインと類似する転写サインを示す潜在性患者の数は、活動性TBに増悪する群における患者の予測頻度と符合する(Vynnycky, E. & Fine, P. E. Lifetime risks, incubation period, and serial interval of tuberculosis. Am J Epidemiol 152, 247-63 (2000))。次に、潜在性TBについてのこれらのプロファイルは、無症状の活動性TBを有するか、又は高度負荷を有する患者について、潜在性感染が決定されたことを表わし、したがって、これらの患者が、活動性TBに増悪する危険性が高いことを表わす(Young, D. B., Gideon, H. P. & Wilkinson, R. J. Eliminating latent tuberculosis. Trends Microbiol 17, 183-8 (2009)、Barry, C. E., 3rd et al. The spectrum of latent tuberculosis: rethinking the biology and intervention strategies. Nat Rev Microbiol 7, 845-55 (2009))。
【0063】
活動性TBの転写サインはX線写真による疾患程度と相関する
本発明者らの結果(図1a〜1c)からは、活動性TB患者の転写サインについて、分子的異質性が見られることが明らかであった。大半の患者は、393遺伝子について同じ発現プロファイルを示したが、異なる転写物プロファイル又はよりあいまいな転写物プロファイルを示す少数の異常例が明らかであった。例えば、活動性TB群のテスト集合における21例の患者のうち、4例は、他の活動性TB患者と共にクラスタリングされることがなく、健常対照又は潜在性TB患者のプロファイルとより強く符合した(図1bでは、●、#、■、◆で表わす)。上記で論じた通り、これらが、K近傍アルゴリズムにより誤分類された4例の活動性患者であった。
【0064】
活動性TB群における分子的異常値は、多くの理由で生じうるであろう。第1に、既に報告されている通り(Center for Communicable Disease Control and Prevention. Misdiagnosis of tuberculosis resulting from laboratory cross-contamination of Mycobacterium tuberculosis cultures. MMWR, New Jersey 49, 413-16 (2000))、検査室における交差汚染から生じる偽陽性培養物による誤診断の可能性が存在する。代替的に、分子的/転写物的異質性は、疾患程度における異質性を反映する可能性もあるだろう。この問題に取り組むため、訓練集合及びテスト集合において、患者の各々について診断時に撮影した胸部X線写真を得、これらを、2名の胸部医師及び放射線科医師がグレード付けして、X線写真による疾患程度を評価した。この評価は、臨床診断又は転写物プロファイルの知識なしに、X線写真により、疾患を、疾患なし、軽度の疾患、中等度に進行した疾患、及びかなり進行した疾患に分類する、U.S. National Tuberculosis and Respiratory Disease Association Schemeの改定版(Falk A, 1969;及び図9a)を用いて実施した。訓練集合における活動性TB患者13例すべてについての393転写物のプロファイル(図9b)、及びテスト集合における活動性TB患者21例すべてについての393転写物のプロファイル(図9c)を、X線写真による疾患程度についてのそれらのグレードにより、ヒートマップ中で序列化した(訓練集合、図9b;テスト集合、図9c)。図2aにそれらの例を示す、この、転写物プロファイルとX線写真によるグレードとの比較は、転写物プロファイルが、疾患程度と相関しうることを示唆した。これを正式に取り扱うため、本発明者らは、各TB患者について、転写サインにより反映される分子的撹乱の定量的スコアである「健常までの分子的距離」を計算した。これは、健常対照によるベースラインから著明に異なるプロファイルにおける転写物数と、この差違の程度とによる複合スコアである(Pankla, R. et al. Genomic Transcriptional Profiling Identifies a Candidate Blood Biomarker Signature for the Diagnosis of Septicemic Melioidosis. Genome Biol Re-submitted (2009))。各TB患者の393転写物のプロファイルについてこのスコアを計算し、次いで、これを、訓練集合及びテスト集合における各潜在性TB患者(n=38)及び各活動性TB患者(n=30)についてのX線写真によるグレードと比較した。この場合は、X線写真による疾患程度のグレードが、X線写真による数値スコアに変換されるように、X線写真による疾患程度を評価するためのスキームを改変する。X線写真による疾患程度に従い群分けされたプロファイルは、X線写真による疾患程度が上昇すると共に、平均の「健常までの分子的距離」も増大する(p<0.001;群間を比較するための、ダンの多重比較による事後検定と共に、クルスカル−ワリスによるANOVAを用いる)ことを示した(図2b)。これらの結果は、血液中の分子特徴が、活動性TB患者における疾患程度の定量的測定値をもたらしうることを初めて示し、血中転写物プロファイルが、疾患部位における変化を反映しうることを裏付ける。このようにして、本発明者らは、システム生物学法を用いて、中程度負荷の状況及び高度負荷の状況の両方における活動性肺TBについて、X線写真による疾患程度と相関する、頑健な血中転写サインを同定する。この方法を用いて、疾患程度をモニタリングすることができ、おそらく、治療レジメンを導く一助となりうる。
【0065】
治療の奏効は活動性TBの転写サインを減殺する
これらの知見は、活動性TBの転写サインが、X線写真による疾患程度と相関することを示す。この転写サインが、TBの治療中に減殺され、治療効果を反映するかどうかを決定することは、所望であった。これはまた、この特徴が、TB疾患を真に反映することも裏付けるであろう。これを調べるため、抗マイコバクテリア治療を開始した2カ月後及び12カ月後において、活動性TB患者7例から再度試料採取し、それらの血液を、独立のテスト集合(n=12)に由来する、それらのベースラインにおける治療前の試料、及び健常対照試料と併せて、前出で説明した通りに、再度マイクロアレイ解析にかけた。活動性TB患者における393転写物の特徴は、ここでもまた、健常対照の393転写物の特徴とは異なることが観察された(図3a)。活動性TB患者の特徴が、健常対照の特徴により酷似し始めるように、治療の2カ月後、大半の活動性TB患者において、この転写サインは減殺され、治療の12カ月後には完全に消失した。治療の2カ月後における転写物プロファイルのこの変化は、転写物量の増大との関連でより顕著であり、TB患者の約50%では転写物量の増大が減殺された。これは、量の減少する転写物と対照的であり、量の減少する転写物は、治療の2カ月後にはまだ存在したが、治療の12カ月後にはベースラインの発現に復帰した。活動性TB患者の治療中に血中転写サインが消失したことは、X線写真による改善を反映すると考えられた(図3b)。次に、本発明者らは、治療中の各時点間における、健常までの分子的距離スコアの差違を解析した。治療の12カ月後における活動性TB患者の「健常までの分子的距離」スコアは、ベースラインの治療前より有意に低かった(p<0.001;フリードマンによる反復測定検定)(図3c及びd)。これらのデータは、活動性TB患者の血液における転写サインを用いて、治療の有効性をモニタリングしうることを示唆する。さらに、このことは、393転写物の特徴が、結核菌感染に対する宿主反応を真に反映することの証拠ももたらす。こうして、奏効する治療においては、活動性TBの転写サインが減殺され、これにより、新規の治療剤についての臨床試験を含めた、抗マイコバクテリア治療の効果を定量的にモニタリングする方法がもたらされる。
【0066】
南アフリカ及びロンドンにおけるTB患者は同じモジュール特徴を示す
転写サインの解析を迅速化し、これに焦点を当て、活動性TB疾患における宿主反応を特徴づけるため、本発明者らは、モジュールデータマイニング戦略(Chaussabel, D. et al. A modular analysis framework for blood genomics studies: application to systemic lupus erythematosus. Immunity 29, 150-64 (2008))を用いた。この戦略は、遺伝子のクラスターが、ある範囲にわたる、異なる炎症性疾患及び感染性疾患において協調発現するという観察に基づく。このような遺伝子の離散的クラスターは、文献による不偏プロファイリングを介して、一貫した機能的関係を有することがしばしば示されうる特定のモジュールとして定義することができる(Chaussabel, D. et al. A modular analysis framework for blood genomics studies: application to systemic lupus erythematosus. Immunity 29, 150-64 (2008))。モジュール解析は、健常対照と比較した、活動性TB患者の血液における、機能的関与性を有する転写物量の変化の評価及び同定(少なくとも2例の個体において検出されなかった転写物だけをフィルタリングにより除外した(α=0.01)、全マイクロアレイのデータセットについて実施した)を容易とした(図4a)。健常対照と比較した、活動性TB患者の血液において観察されるモジュール特徴(モジュール)は、ロンドンにおける訓練集合及びテスト集合についても、南アフリカにおける独立の検証集合についても、画像的に極めて類似し(図4a)、古典的なクラスタリング解析を用いて観察される転写サインの再現性が、個別の不偏解析を介して裏付けられた(図1)。活動性TB患者のモジュール特徴は、B細胞関連転写物(モジュールM1.3)量及びT細胞関連転写物(モジュールM2.8)量の減少、並びに骨髄関連転写物(モジュールM1.5及びモジュールM2.6)量の増大を明らかにし、より程度は劣るが、好中球関連転写物(モジュールM2.2)量の増大を明らかにした。活動性TB患者の血液において、対照と比較して変化する転写物の最大部分は、インターフェロン(IFN)誘導性モジュール(モジュール3.1;転写物のうちの75〜82%)内の転写物であった(図4a;及び図10a〜10c)。
【0067】
血液は、異質性の組織であり、したがって、本発明者らが、活動性TB患者において定義した転写サインは、遊走、アポトーシス、又は細胞増殖を介する細胞組成の変化を表わすことも可能であろうし、離散的な細胞集団における遺伝子発現の変化を表わすことも可能であろう。活動性TB患者の血液における全白血球(white blood cell/leucocyte)カウントは、健常対照における全白血球カウントと有意には異ならなかった(スチューデントのt検定;p=0.085)。モジュール解析により明らかとなる、B細胞転写物及びT細胞転写物の見かけの低減(図4a)が、血液における細胞数の変化、及び/又は異なる細胞における遺伝子発現の変化から結果として生じるのかどうかに取り組むため、テスト集合の活動性TB患者及び健常対照に由来する全血を、多重パラメータ型フローサイトメトリーにより解析した(図4b;図11a及び11b)。活動性TB患者の血液においては、CD4T細胞の百分率及び数、並びにCD8T細胞及びB細胞の百分率のいずれもが、健常対照と比較して著明に低減された(図4b)。CD4T細胞数の低減は大部分、中枢性メモリー細胞の著明な減少に帰せられたが、エフェクターメモリーCD4T細胞及びナイーブCD4T細胞に対する影響はわずかであり、著明なものではなかった。しかし、ナイーブT細胞コンパートメントでは、CD8T細胞数の減少が主に観察された。T細胞関連遺伝子の転写物量の減殺が、これらの遺伝子の発現の減少ではなく、細胞数の低減から結果として生じたことを裏付けるため、本発明者らは、全血と比較した、精製CD4T細胞及び精製CD8T細胞における多数の代表的なT細胞関連遺伝子について、遺伝子発現プロファイルを評価した(図11c)。健常対照と比較した、活動性TB患者の全血中では、これらのT細胞転写物が、低量であることが示された(図11c(i))。しかし、活動性TB患者の血液から精製したCD4T細胞及びCD8T細胞におけるこれらのT細胞特異的遺伝子の発現は、健常対照に由来する血液から精製したCD4T細胞及びCD8T細胞におけるこれらのT細胞特異的遺伝子の発現と比較して、差違が見られなかった(図11c(ii))。まとめると、これらのデータは、活動性TB患者の血液におけるT細胞遺伝子の転写物量の低下が、細胞数の低減だけから結果として生じることを示唆する。多数の研究が、CD8T細胞及びB細胞に対する影響がより変化に富むものであるにもかかわらず、活動性TB患者の血液におけるCD4T細胞の百分率及び/又は数の減少を報告している(Beck, J. S., Potts, R. C., Kardjito, T. & Grange, J. M. T4 lymphopenia in patients with active pulmonary tuberculosis. Clin Exp Immunol 60, 49-54 (1985)、Rodrigues, D. S. et al. Immunophenotypic characterization of peripheral T lymphocytes in Mycobacterium tuberculosis infection and disease. Clin Exp Immunol 128, 149-54 (2002))ことは、本発明者らによる知見と符合する。しかし、本発明者らの研究におけるTB患者と対照との差違の程度は、この現象が、結核菌抗原特異的なT細胞だけの遊走を超えて広がり、循環T細胞集団全体の実質的部分に影響を及ぼすことを示唆する。
【0068】
モジュールM1.5及びM2.6について、活動性TB患者では、分子レベルにおける骨髄細胞関連転写物の実質的な増大が、健常対照と対比して観察された。これが、細胞数の変化及び/又は遺伝子発現の変化から結果として生じるかどうかに取り組むため、まず、フローサイトメトリーにより、全血を、骨髄型細胞の変化について解析した(図12a)。健常対照と比較した、テスト集合の活動性TB患者の血中では、単球(CD14、CD16)の百分率、又は好中球(CD16、CD14)の百分率、又は細胞数の変化が見られなかった(図4c)。健常対照と比較した、活動性TB患者の血中では、炎症性単球(CD14、CD16)の百分率及び細胞数の、わずかではあるが有意な増大が観察されたことは興味深い。健常対照と比較した、活動性TB患者の血中では、代表的な骨髄細胞関連転写物が、過剰に豊富であることが示された(図12b(i))。精製単球(CD14)では、この発現の増大がそれほど顕著ではなかった(図12b(ii))が、これらの骨髄関連転写物の発現が増大したとしても、それがCD14炎症細胞サブセット、CD16炎症細胞サブセットなど、単球の小集団に制約されたなら、それらの発現の増大は希釈された可能性があるだろう。炎症性疾患及び感染性疾患では、炎症性単球が増大することが、既に示唆されている(Auffray, C., Sieweke, M. H. & Geissmann, F. Blood monocytes: development, heterogeneity, and relationship with dendritic cells. Annu Rev Immunol 27, 669-92 (2009))。したがって、骨髄モジュールにおける変化は、対照と対比した活動性TB患者の血中における遺伝子発現の変化によりある程度まで説明されうるが、対照と対比した活動性TB患者の血中における炎症性単球数の変化から結果として生じる可能性がある。
【0069】
TB特徴では好中球におけるインターフェロン誘導性の遺伝子発現が優勢である
モジュール解析により示された活動性TB患者におけるIFN誘導性遺伝子の過剰表出(表4a)を裏付けるため、Ingenuity Pathway Analysisソフトウェアを用いて、393転写物の特徴を構成する転写物を解析した。文献により例示された他の生物学的経路と比較した、BH多重検定補正を伴うフィッシャーによる正確検定(p<0.0000001)を用い、393転写物において最も有意に過剰表出した機能経路として、IFNによるシグナル伝達経路が裏付けられた(図13)。活動性TB患者の血中では、IFN−γ受容体によるシグナル伝達及びI型IFNα/β受容体によるシグナル伝達の両方の下流にある遺伝子が、有意に過剰表出した(図4dでは赤色で印をつけた)ことは興味深い。活動性TB患者の血清中では、IFN−α2aタンパク質又はIFN−γタンパク質のいずれも検出されなかった(図13b及び13c)が、活動性TB患者の血中では、対照と対比して、IFN誘導性ケモカインであるCXCL10(IP10)レベルの上昇が検出されたことは、注目に値する(図4c)。
【0070】
マイコバクテリアを含めた、細胞内病原体に対する免疫反応においては、IFN−γが防御性であることが示されている(Casanova, J. L. & Abel, L. Genetic dissection of immunity to mycobacteria: the human model. Annu Rev Immunol 20, 581-620 (2002)、Cooper, A. M. Cell-mediated immune responses in tuberculosis. Annu Rev Immunol 27, 393-422 (2009)、Flynn, J. L. & Chan, J. Immunology of tuberculosis. Annu Rev Immunol 19, 93-129 (2001)、Sher, A. & Coffman, R. L. Regulation of immunity to parasites by T cells and T cell-derived cytokines. Annu Rev Immunol 10, 385-409 (1992))が、I型IFNの役割はそれほど明確ではない。ウイルス感染に対する防御には、I型IFNR(IFN−αβR)を介するシグナル伝達が極めて重要である(Theofilopoulos, A. N., Baccala, R., Beutler, B. & Kono, D. H. Type I interferons (alpha/beta) in immunity and autoimmunity. Annu Rev Immunol 23, 307-36 (2005))が、細胞内の細菌感染においては、IFN−αβが有害であることが示されている(Auerbuch, V., Brockstedt, D. G., Meyer-Morse, N., O'Riordan, M. & Portnoy, D. A. Mice lacking the type I interferon receptor are resistant to Listeria monocytogenes. J Exp Med 200, 527-33 (2004)、Carrero, J. A., Calderon, B. & Unanue, E. R. Type I interferon sensitizes lymphocytes to apoptosis and reduces resistance to Listeria infection. J Exp Med 200, 535-40 (2004)、O'Connell, R. M. et al. Type I interferon production enhances susceptibility to Listeria monocytogenes infection. J Exp Med 200, 437-45 (2004))。しかし、TB感染におけるIFN−αβの役割は不明である;多くの論文は、有害な役割を示唆している(Bouchonnet, F., Boechat, N., Bonay, M. & Hance, A. J. Alpha/beta interferon impairs the ability of human macrophages to control growth of Mycobacterium bovis BCG. Infect Immun 70, 3020-5 (2002)、Manca, C. et al. Hypervirulent M. tuberculosis W/Beijing strains upregulate type I IFNs and increase expression of negative regulators of the Jak-Stat pathway. J Interferon Cytokine Res 25, 694-701 (2005)、Stanley, S. A., Johndrow, J. E., Manzanillo, P. & Cox, J. S. The Type I IFN response to infection with Mycobacterium tuberculosis requires ESX-1-mediated secretion and contributes to pathogenesis. J Immunol 178, 3143-52 (2007));しかし、他の論文は有害な役割を示唆していない(Cooper, A. M., Pearl, J. E., Brooks, J. V., Ehlers, S. & Orme, I. M. Expression of the nitric oxide synthase 2 gene is not essential for early control of Mycobacterium tuberculosis in the murine lung. Infect Immun 68, 6879-82 (2000)、Shi, S. et al. Expression of many immunologically important genes in Mycobacterium tuberculosis-infected macrophages is independent of both TLR2 and TLR4 but dependent on IFN-alphabeta receptor and STAT1. J Immunol 175, 3318-28 (2005))。C型肝炎ウイルス感染に対するIFN−γ治療と、結核菌感染に対するIFN−γ治療との連関を示唆する症例報告がいくつか見られる(Farah, R. & Awad, J. The association of interferon with the development of pulmonary tuberculosis. Int J Clin Pharmacol Ther 45, 598-600 (2007)、Telesca, C. et al. Interferon-alpha treatment of hepatitis D induces tuberculosis exacerbation in an immigrant. J Infect 54, e223-6 (2007))。
【0071】
本発明者らは、他の細菌性疾患及び炎症性疾患を伴う患者と比較した有意性(Allantaz, F. et al. Blood leukocyte microarrays to diagnose systemic onset juvenile)を解析することにより、全血におけるTB特異的な86遺伝子の特徴を同定した。次いで、この86遺伝子の特徴を、クラス予測(k近傍法)により、7つの個別のデータセットに由来するそれら固有の対照に照らして標準化した患者について調べた(図4f)。TB訓練集合及びTB検証集合における感度は、それぞれ92%及び90%であり、83%のプール特異度で、活動性TBを他の疾患から識別する。393遺伝子の特徴の場合と同様に、この86遺伝子の特徴も、治療に応答して減殺され(図4g)、患者に由来する同一の試料において、同じ異質性を反映した。
【0072】
活動性TBにおける宿主による転写物反応の機能的構成要素を同定するため、本発明者らは、異なる疾患において協調発現し、且つ、文献による不偏プロファイリングを介して、一貫した機能的関係を示すことが多い特定のモジュールとして定義されている(Chaussabel, D. et al. A modular analysis framework for blood genomics studies: application to systemic lupus erythematosus. Immunity 29, 150-64 (2008))遺伝子セットを用いる、モジュールデータマイニング戦略を用いた。健常対照と比較した、活動性TB患者における血中モジュール特徴(少なくとも2例の個体において、α=0.01で検出されなかった転写物だけをフィルタリングにより除外する)は、3つのTBデータセットすべてにおいて同様であり(図4h)、転写サインの再現性が裏付けられる。
【0073】
モジュールによるTB特徴は、B細胞転写物(モジュールM1.3)量及びT細胞転写物(M2.8)量の減少、並びに骨髄関連転写物(M1.5及びM2.6)量の増大を明らかにした。TBでは、所与のモジュールにおける転写物の変化の比率が最大となるのが、IFN誘導性モジュール(M3.1;IFNモジュール転写物の75〜82%(図4h))においてであった。SLE患者に由来する末梢血単核細胞では、疾患の発症機序と連関するI型IFN誘導性特徴が示されている(Baechler, E. C. et al. Interferon-inducible gene expression signature in peripheral blood cells of patients with severe lupus. Proc. Natl Acad. Sci. USA 100, 2610-2615 (2003)、Bennett, L. et al. Interferon and granulopoiesis signatures in systemic lupus erythematosus blood. J. Exp. Med. 197, 711-723 (2003))ため、本発明者らは、他の疾患を伴う患者に由来する全血のモジュール特徴を比較した。SLE患者は、IFN誘導性モジュール(M3.1(図4h))の過剰表出を示したが、TBでは見られない形質細胞関連モジュール(M1.1(図4h))も示した。A群連鎖球菌属感染患者、又はブドウ球菌属感染患者、又はスティル病患者に由来する血中モジュール特徴は、IFN誘導性モジュール(M3.1)で示す変化が微小〜変化なしであったが、好中球関連モジュール(M2.2)の顕著な過剰表出を示し、これらの疾患をTBから識別する(図4h)。したがって、IFN誘導性特徴は、すべての炎症反応に共通するわけではなく、一部の疾患において優先的に誘導されることから、防御又は発症機序を反映する可能性がある。SLEとTBとは、IFN誘導性反応など、共通の炎症性構成要素を共有するが、転写物変化の全体的なパターン(図4h)及びそれらの振幅が、1つの疾患を別の疾患から識別する。
【0074】
活動性TB患者の血液におけるIFN誘導性遺伝子の転写物量が高量であることが、特定の細胞型に帰せられるかどうかを決定するため、本発明者らは、全血と比較した、精製好中球、精製単球、並びに精製CD4T細胞及び精製CD8T細胞における、IFN−γ受容体によるシグナル伝達経路、及びI型IFNα/β受容体によるシグナル伝達経路の両方について、遺伝子の発現を評価した(図5)。活動性TB患者の全血中では、健常対照の全血中と比較して、IFN誘導性転写物の代表的なセットが、より豊富であることが示された(図5a)。活動性TB患者の血液から精製した好中球では、且つ、より程度は劣るが、活動性TB患者の血液から精製した単球では、健常対照に由来する同等の細胞と比較して、IFN誘導性転写物が、実質的に過剰発現することが示された(図5b)ことは、驚くべきことである。これに対し、活動性TB患者の血液から精製されたCD4T細胞及びCD8T細胞は、健常対照個体から精製されたCD4T細胞及びCD8T細胞と比較して、これらのIFN誘導性遺伝子の発現で差違を示さなかった(図5b)。
【0075】
好中球は、TB患者において急速に複製される結核菌に感染する主要な細胞型であることが示されている、特化した食細胞である(Eum, S. Y. et al. Neutrophils are the predominant infected phagocytic cells in the airways of patients with active pulmonary tuberculosis. Chest (2009))。遺伝子的に耐性のマウスと比較した、遺伝子的に感受性のマウスにおける、有病率及び好中球の反応から、TBによる炎症では、好中球が、宿主の防御ではなく、病態に寄与しているという理論が導かれる(Eruslanov, E. B. et al. Neutrophil responses to Mycobacterium tuberculosis infection in genetically susceptible and resistant mice. Infect Immun 73, 1744-53 (2005))。本発明者らの研究も、TBの発症機序における好中球の役割を裏付ける。これは、IFN−γ及びI型IFNのいずれによっても好中球が過剰活性化される結果として生じる可能性があり、ここで、本発明者らは、IFN−γ及びI型IFNが、主に好中球において発現する、活動性TB患者の血中で優勢な転写サインであることを示す(図5)。
【0076】
活動性TB患者では好中球を介してPDL−1が過剰発現する
活動性TB患者の血中で量が増大し、IFN誘導性転写物と共にクラスタリングする1つの遺伝子は、多様な細胞において発現する免疫制御性リガンドである、プログラム細胞死リガンド1(また、CDE274及びB7−H1としても表記される、PDL−1)であった(図6)。PDL−1は、慢性ウイルス感染において、プログラム細胞死1受容体(PD−1)に結合することにより、T細胞の増殖及びエフェクター機能を抑制することが報告されている(Barber, D. L. et al. Restoring function in exhausted CD8 T cells during chronic viral infection. Nature 439, 682-7 (2006)、Day, C. L. et al. PD-1 expression on HIV-specific T cells is associated with T-cell exhaustion and disease progression. Nature 443, 350-4 (2006))。どの細胞がPDL−1を過剰発現させうるのかを決定するため、フローサイトメトリーにより活動性TB患者及び健常対照に由来する全血集団を解析したところ、活動性TB患者の全白血球では、対照/検証(南アフリカ)集合における潜在性TB患者と比較して、PDL−1が上方制御されることが示された(図6a及び図14)。PDL−1発現の増大は、活動性TB患者に由来する好中球において最も明らかであり、程度は劣るが、活動性TB患者に由来する単球でも明らかであったが、活動性TB患者に由来するリンパ球では明らかでなかった(図6b及び図14)。活動性TB患者から精製した好中球が発現するPDL−1転写物レベルが、健常対照に由来する好中球が発現するPDL−1転写物レベルより高レベルであったことは、フローサイトメトリーによるこれらの知見と符合する。これに対し、単球においてPDL−1が発現したのは、活動性TB患者7例中の2例に過ぎず、T細胞では検出可能な発現が見られなかった(図6c)。活動性TB患者の血液におけるPDL−1転写物量の増大は、大半の患者において、治療開始の2カ月後でもなお存在したが、治療が奏効した後では消失した(図6d)。
【0077】
これらの知見は、活動性TB患者の血液におけるPDL−1の存在が、病態、及び疾患を管理できないことと関連しうることを示し、慢性ウイルス感染における報告(Barber, D. L. et al. Restoring function in exhausted CD8 T cells during chronic viral infection. Nature 439, 682-7 (2006)、Day, C. L. et al. PD-1 expression on HIV-specific T cells is associated with T-cell exhaustion and disease progression. Nature 443, 350-4 (2006))と符合する。さらに、超音波処理した結核菌H37Rv菌株で刺激したTB患者に由来するヒトT細胞でも、PDL−1の発現が増大することが報告されており、PDL−1/PD−1に対する遮断抗体は、抗原特異的IFN−γ反応及び細胞傷害性CD8T細胞反応を増強することが可能であった(Jurado, J. O. et al. Programmed death (PD)-1:PD-ligand 1/PD-ligand 2 pathway inhibits T cell effector functions during human tuberculosis. J Immunol 181, 116-25 (2008))。単球及びCCR5T細胞における、HIVに誘導されるPDL−1の発現が、IFN−αには依存するが、IFN−γには依存しないと示されていることは、本発明者らの知見にとって重要である(Boasso, A. et al. PDL-1 upregulation on monocytes and T cells by HIV via type I interferon: restricted expression of type I interferon receptor by CCR5-expressing leukocytes. Clin Immunol 129, 132-44 (2008))。したがって、本発明者らが本明細書で示す通り、好中球におけるI型インターフェロンに応答するPDL−1の発現増大は、インターフェロンの過剰発現が宿主反応に対して有害となりうる1つの形でありうるだろう。PDL−1/PD−1によるシグナル伝達の遮断が、防御反応の増強をもたらしうるかどうかは、感染の種類及び病期/ワクチン接種に依存し(Einarsdottir, T., Lockhart, E. & Flynn, J. L. Cytotoxicity and secretion of gamma interferon are carried out by distinct CD8 T cells during Mycobacterium tuberculosis infection. Infect Immun 77, 4621-30 (2009)、Ha, S. J., West, E. E., Araki, K., Smith, K. A. & Ahmed, R. Manipulating both the inhibitory and stimulatory immune system towards the success of therapeutic vaccination against chronic viral infections. Immunol Rev 223, 317-33 (2008))、特定の細胞及び部位を該遮断の標的として、免疫病原性を回避しながら、防御の増強を達成することを必要とする場合がある(Barber, D. L. et al. Restoring function in exhausted CD8 T cells during chronic viral infection. Nature 439, 682-7 (2006))。したがって、細菌感染における、免疫反応に対するPDL−1の影響は、当初考えるより複雑である可能性があり、これは、活動性TB患者の血液における好中球ではPDL−1の発現が高度であるが、T細胞又は単球ではPDL−1の発現が高度ではないという本発明者らによる知見により裏付けられる。
【0078】
診断、ワクチン接種、及び治療を改善するには、TBにおける宿主反応の理解を改善することが不可欠である(Youngら、2008、JCI)。この複雑な疾患に対する洞察は、臨床的に明確な潜在性TBが、実際には、マイコバクテリア生菌の消滅〜無症状疾患にわたるスペクトルを表わすという事実を含めた多数の理由で損なわれている(Young et al., 2009, Trends Micro)。本明細書において、本発明者らは、ロンドン及び南アフリカ出身の患者の血液において、潜在性TB患者及び健常対照の大半では見られない、活動性TBについての393遺伝子の転写サイン(図1、14、及び15)を定義した。さらに、この手法、及び有意性を達成するのに必要とされる数のTB患者及び健常対照に対する解析により、本発明者らは、この疾患の異質性を示すことができた。例えば、活動性TBの特徴がまた、潜在性TB患者のうちの10%の血液においても観察されたことは、おそらく、将来活動性TBを発症しうる個体を明らかにする。これは、TBの異質性を裏付ける最初の分子的証拠であり、この分子的手法が、潜在性TBを伴うどの個体に抗マイコバクテリア化学療法を施すべきかを決定するのに有用でありうることを示唆する。この特徴が、潜在性患者における将来的なTB疾患を真に予測することを裏付けるには、将来の長期的研究が必要とされる。
【0079】
作成されるマイクロアレイデータのサイズ及び複雑性のために解釈は困難となり、研究者は、さらなる研究のために一握りの候補遺伝子に焦点を当てざるを得ないことが多く(Jacobsen, M. et al. Candidate biomarkers for discrimination between infection and disease caused by Mycobacterium tuberculosis. J Mol Med 85, 613-21 (2007)、Mistry, R. et al. Gene-expression patterns in whole blood identify subjects at risk for recurrent tuberculosis. J Infect Dis 195, 357-65 (2007))、これは、診断のための特異的バイオマーカーとしては不十分な可能性があり、疾患の発症機序についてもたらされる情報はわずかとなる可能性がある。TBの発症機序の根底にある宿主因子についての理解を改善するため、本発明者らは、転写サインにより明らかとなる生物学的経路に対する洞察をもたらす目的で、モジュール解析、経路解析、及び遺伝子レベル解析という、3つの、異なるが相補的な解析法を用いた。各手法は、結核菌に対する宿主の転写物反応に関与する共通の生物学的経路を同定し、活動性肺TBにおける免疫特徴の重要部分を形成する遺伝子として、IFN誘導性遺伝子を同定した。モジュール解析が、最も高度に教師なしの手法であり、したがって、偏差をおびる傾向が小さいので、本発明者らはまず、モジュール解析を用いた。モジュールは、複数の独立したデータセットに由来し、実験データと、蓄積された文献に由来する知識とを強力に統合する文献プロファイリング(Chaussabel, D. et al. A modular analysis framework for blood genomics studies: application to systemic lupus erythematosus. Immunity 29, 150-64 (2008))により注釈された。このモジュール解析は、活動性TB疾患に優勢なIFN誘導性特徴を明らかにした。これを、公表された文献に完全に由来するIngenuity Pathways解析を用いる独立の手法により検証し、IFN誘導性特徴の優勢を裏付け、それが、IFN−γ遺伝子及びI型IFN誘導性遺伝子からなることをさらに明らかにした。これら2つの手法は、異なる転写物のリストを解析するので、いずれの方法でも共通である生物学的過程の同定は、本発明者らによる知見の頑健さを裏付ける。さらなる検証レベルとして、個別の遺伝子レベルの解析を裏付けたが、また、他の解析法による知見にもこれを拡張した。これらの手法及びさらなる免疫学的解析を用い、本発明者らは、結核菌に対する宿主の血中転写物反応の重要な構成要素を、治療の奏効により消失する、好中球により駆動されるIFN誘導性特徴として明らかにした。この研究は、根本的なTB生物学に対する理解を改善し、診断及び治療のための将来的な指針をもたらしうる。
【0080】
血液は、好中球、樹状細胞及び単球、又はBリンパ球及びTリンパ球を含めた、自然免疫系細胞及び後天免疫系細胞それぞれの貯留コンパートメント及び遊走コンパートメントを表わし、感染時には、組織内の感染作用物質に曝露されることになる。この理由で、感染個体に由来する全血は、組織における癌(Alizadeh AA., 2000; Golub, TR., 1999; Bittner, 2000)、及び自己免疫(Bennett, L. et al. Interferon and granulopoiesis signatures in systemic lupus erythematosus blood. J. Exp. Med. 197, 711-723 (2003);Baechler, E. C. et al. Interferon-inducible gene expression signature in peripheral blood cells of patients with severe lupus. Proc. Natl Acad. Sci. USA 100, 2610-2615 (2003); EC, 2003; Burczynski, ME, 2005; Chaussabel, D., 2005; Cobb, JP., 2005; Kaizer, EC., 2007; Allantaz, 2005;Allantaz, F. et al. Blood leukocyte microarrays to diagnose systemic onset juvenile)、並びに血液又は組織(Bleharski, JR et al., 2003)における炎症(Thach, DC., 2005)及び感染性疾患(Ramillo, Blood, 2007)について既に説明されている遺伝子発現マイクロアレイを用いて、不偏分子表現型を得ることが可能な、臨床的に関与性である材料の入手可能な供給源をもたらす。白血球における遺伝子発現についてのマイクロアレイ解析は、診断及び予後診断のための遺伝子発現特徴を同定しており、これらは、疾患の発症機構及び治療効果に対するより良好な理解をもたらしている(Bennett, L. et al. Interferon and granulopoiesis signatures in systemic lupus erythematosus blood. J. Exp. Med. 197, 711-723 (2003); Rubins, KH., 2004;Baechler, E. C. et al. Interferon-inducible gene expression signature in peripheral blood cells of patients with severe lupus. Proc. Natl Acad. Sci. USA 100, 2610-2615 (2003); Pascual, V., 2005;Allantaz, F. et al. Blood leukocyte microarrays to diagnose systemic onset juvenile)。活動性TB及び潜在性TBを研究するのに、これらのマイクロアレイ法が試みられているが、もたらされた示差的発現遺伝子は少数に限られており(Jacobsen, M., Kaufmann, SH., 2006;Mistry, R. et al. Gene-expression patterns in whole blood identify subjects at risk for recurrent tuberculosis. J Infect Dis 195, 357-65 (2007))、且つ、比較的少数の患者においてのものであり(Mistry, R. et al. Gene-expression patterns in whole blood identify subjects at risk for recurrent tuberculosis. J Infect Dis 195, 357-65 (2007))、他の炎症性疾患及び感染性疾患と識別するのに十分に頑健なわけではない。
【0081】
さらなる方法
被験者の募集及び患者の特徴づけ:St.Mary's Hospital London、UKの地域研究倫理委員会(REC 06/Q0403/128)、及びUniversity of Cape Town、Cape Town、Republic of South Africaの地域研究倫理委員会(REC 012/2007)が、研究を承認した。すべての被験者は、18歳を超え、書面による説明同意文書を提出した。被験者は、St. Mary's Hospital and Hammersmith Hospital、Imperial College Healthcare NHS Trust、London、UK;Hillingdon Hospital、The Hillingdon Hospitals NHS Trust、Uxbridge、UK;及びthe Ubuntu TB/HIV clinic、Khayelitsha、Cape Town、South Africaから募集された。患者は、抗マイコバクテリア治療を開始する前に、将来を見越した形で募集及び試料採取したが、関与する研究群の臨床基準を完全に満たした場合に限り、最終的な解析に組み入れた。ロンドンで募集した第1のコホートに募集された活動性TB患者の部分集合からはまた、治療開始の2カ月後及び12カ月後にも試料採取した。妊娠しているか、免疫抑制されているか、又は糖尿病若しくは自己免疫疾患を有する患者は、不適格とされ、本研究からは除外された。南アフリカでは、すべての被験者に、Abbott Determine(登録商標)HIV1/2迅速抗体アッセイ検査キット(Abbott Laboratories社、Abbott Park、Illinois、USA)を用いて、日常的なHIV検査を施した。The Royal Brompton Hospital Mycobacterial Reference Laboratory、London、UK;又はThe Reference Lab of the National Health Laboratory Service、Groote Schuur Hospital、Cape Townが実施した感受性検査による呼吸器標本(痰又は気管支肺胞洗浄液)のマイコバクテリア培養物上で、検査室における結核菌の単離を行うことにより、活動性TB患者を確認した。英国では、IGRAを用いる陽性結果と併せて陽性TSTを伴う、TB診療室への照会患者から、潜在性TB患者を募集した。南アフリカにおける潜在性TB被験者は、Ubnutu TB/HIV診療所におけるボランティア検査診療室に自己照会する個体から募集し、TSTの結果によらず(TSTもなお実施したが)、IGRAが陽性であることだけを用いて、診断を裏付けた。健常対照被験者は、National Institute for Medical Research (NIMR)、Mill Hill、London, UKにおけるボランティア被験者から募集した。研究に組み入れるための最終的な基準を満たすには、健常ボランティア被験者が、TST及びIGRAのいずれによっても陰性でなければならなかった。
【0082】
ツベルクリン皮膚検査:これは、0.1ml(2TU)のツベルクリンPPD(RT23、Serum Statens Institute社、Copenhagen、Denmark)を用いる英国のガイドライン(WHO. (World Health Organization, Geneva, 2008))に従い実施した。英国の国定ガイドライン(Anderson, S. R., Maguire, H. & Carless, J. Tuberculosis in London: a decade and a half of no decline [corrected]. Thorax 62, 162-7 (2007))によれば、BCGのワクチン接種を行っていなければ6mm以上、BCGのワクチン接種を行っていれば15mm以上を陽性TSTとする。
【0083】
インターフェロンガンマ放出アッセイによる検査:製造元の指示書に従い、QuantiFERON(登録商標)Gold In-Tubeアッセイ(Cellestis社、Carnegie、Australia)を実施した。
【0084】
全白血球カウント及び白血球分画:2mlの全血を、5mlのTerumo Venosafe K2-EDTA試験管(Terumo Europe社、Leuven、Belgium)に回収した。次いで、4時間以内に、日本光電MEK-6400型自動血液解析装置(日本、東京、日本光電工業株式会社)を用いて、試料を解析した。
【0085】
X線写真による疾患程度の評価:ロンドンで募集されたすべての患者について、胸部単純X線写真をデジタル画像として得、U.S. National Tuberculosis and Respiratory Disease Associationによる分類システムの改訂版(Trunz, B. B., Fine, P. & Dye, C. Effect of BCG vaccination on childhood tuberculous meningitis and miliary tuberculosis worldwide: a meta-analysis and assessment of cost-effectiveness. Lancet 367, 1173-80 (2006))を用いて、転写物プロファイル及び臨床データに対して盲検とされた3人の個別の医師に評価させた。このシステムは、病変の密度及び広がり、並びに空洞の存在又は非存在に基づく基準により、X線写真による疾患程度を、「軽度」の病期、「中等度に進行」した病期、又は「かなり進行」した病期に特徴づける。本発明者らは、該システムがまた、「疾患なし」の分類も包含し、胸膜疾患又はリンパ節症の存在も対象とするよう、本発明者らの研究で用いるのにこれを改変した。次いで、該システムを、分類の一助となる決定木に変換した(図9a)。
【0086】
マイクロアレイ解析のためのRNAの試料採取、抽出、及び処理:3mlの全血をTempus試験管(Applied Biosystems社、Foster City、CA、USA)に回収し、回収の直後に十分に混合し、−20℃〜−80℃で保存してから、RNAを抽出した。1.5mlの全血、及びPerfectPure RNA Bloodキット(5 PRIME Inc.社、Gaithersburg、MD、USA)を用いて、訓練集合試料からRNAを単離した。製造元の指示書に従い、MagMAX(商標)96 Blood RNA Isolation Kit(Applied Biosystems/Ambion社、Austin、TX、USA)を用いて、1mlの全血から、テスト集合試料及び検証集合試料(南アフリカ)を抽出した。次いで、製造元の指示書に従い、GLOBINNclear(商標)96ウェルフォーマットキット(Applied Biosystems/Ambion社、Austin、TX、USA)を用いて、2.5mgの単離全RNAをグロビン還元した。RIN(RNA integrity number)が7〜9.5の品質を示すAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies社、Santa Clara、CA、USA)を用いて、全RNAの完全性及びグロビン還元RNAの完全性を評価した。RNA収量は、Nanodrop 1000分光光度計(NanoDrop製品; Thermo Fisher Scientific Inc.社、Wilmington、DE、USA)を用いて評価した。次いで、Illumina CustomPrep RNA増幅キット(Applied Biosystems/Ambion社、Austin、TX、USA)を用いて、200〜250ngのグロビン還元RNAから、ビオチニル化し、増幅した、相補的RNA標的(cRNA)を調製した。750ngの標識cRNAを、一晩にわたり、48,000を超えるプローブを含有するIllumina Human HT-12 BeadChipアレイ(Illumina Inc.社、San Diego、CA、USA)とハイブリダイズさせた。次いで、アレイを、洗浄し、ブロッキングし、染色し、製造元のプロトコールに従いIllumina BeadStation 500により走査した。Illumina BeadStudio v2ソフトウェア(Illumina Inc.社、San Diego、CA、USA)を用いて、走査からシグナル強度値を発生させた。
【0087】
区分した細胞の単離及びRNAの抽出:全血をEDTA中に回収した。製造元の指示書に従い、Dynabeadsを用いて、好中球(CD15)、単球(CD14)、CD4T細胞、及びCD8T細胞を逐次単離した。全血からRNAを抽出する(5'Prime Perfect Pureキット)か、又は細胞集団を区分し(Qiagen RNEasy Mini Kit)、使用まで−80℃で保存した。
【0088】
マイクロアレイによるデータ解析
標準化:Illumina BeadStudio v2ソフトウェアを用いて、バックグラウンドを差し引き、各試料についての平均シグナル強度を、全試料についての全平均シグナル強度に照らして計量した。遺伝子発現解析ソフトウェアプログラムであるGeneSpring GX、version 7.1.3(Agilent Technologies社、Santa Clara、CA、USA;以後、GeneSpringと称する)を用いて、さらなる標準化を実施した。10未満の全シグナル強度値を、10に等しいとした。次に、各試料中の各プローブのシグナル強度を、全試料にわたる該プローブの中央値の強度で除することにより、遺伝子ごとの標準化を適用した。以下で詳述する、健常までの分子的距離の評価を除き、これらの標準化データを下流の解析すべてに用いた。
【0089】
クラスの予測:本発明者らは、GeneSpringにおいて使用可能なクラス予測ツールのうちの1つを用いた。該予測モデルは、10個の近傍点を伴い、p値のカットオフ率を0.5とする、K近傍アルゴリズムを用いた。393転写物のリストに由来するすべての遺伝子を予測に用いた。活動性異常例である1例を除外し、訓練集合における交差検証により、予測モデルを洗練した。次いで、このモデルを用いて、独立のテスト集合及び検証集合における試料の分類を予測した。予測がなされなかった場合は、これを、不定結果として記録した。GraphPad Prism version 5.02 for Windowsを用いて、感度、特異度、及び95%信頼区間(95%CI)を決定した。フィッシャーによる両側正確検定を用いて、P値を決定した。
【0090】
教師あり(supervised、以下同)の解析:(i)転写物の分散又は「健常までの分子的距離」:この技法は、既に説明されている通りに実施した(Young, D. B., Perkins, M. D., Duncan, K. & Barry, C. E., 3rd. Confronting the scientific obstacles to global control of tuberculosis. J Clin Invest 118, 1255-65 (2008))。この技法は、転写物量の値を、健常ベースラインと比較した、所与の試料についての、転写物の撹乱の程度を示唆する表出スコアに転換することを目的とする。これは、所与の試料の発現値が、健常対照の平均から2標準偏差の範囲の内側にあるか、又は外側にあるかを決定することにより実施する。
【0091】
教師ありの解析:(ii)経路解析:Ingenuity Pathways Analysis(Ingenuity(登録商標)Systems, Inc.社、Redwood、CA、USA、www.ingenuity.com)を用いて、示差的発現遺伝子についてのさらなる機能解析を実施した。カノニカル経路解析では、Ingenuity Pathways Analysisによる経路のうち、データセット中で最も有意に表出した経路を同定した。フィッシャーによる正確検定を用いて、データセットとカノニカル経路との連関の有意性を測定し、多重検定のためのBH補正を適用して、データセット中の転写物とカノニカル経路中の転写物との連関が、偶然だけによって説明される確率を表わすp値を計算した。該プログラムはまた、カノニカルネットワークをマップし、これをデータセットに由来する発現データと共に重ね合せるのにも用いることができる。
【0092】
教師ありの解析:(iii)転写物モジュールの解析:この解析は、既に説明した通りに実施した(Young, D. B., Perkins, M. D., Duncan, K. & Barry, C. E., 3rd. Confronting the scientific obstacles to global control of tuberculosis. J Clin Invest 118, 1255-65 (2008)、Center for Communicable Disease Control and Prevention. (ed. U.S. Department of Health and Human Services, C.) XX (Atlanta, GA, 2007))。本研究の文脈では、Affymetrix HG U133A&B GeneChipsを用いてモジュールフレームワークを導出したので、Illuminaプラットフォーム上で、モジュールを含むプローブを、それらの同等物に翻訳することが必要であった。RefSeq IDを用いて、Affymetrix HG U133プラットフォームのプローブと、Illumina WG-6 V2プラットフォームのプローブとをマッチさせた。5,348のAffymetrixプローブセットのうち2,109セットについて、明確なマッチが見出され、これらのセットを、本発明のモジュール解析で用いた。マッチするプローブは、それらの元のモジュール内に保存した。全体としての健常対照群と対比した、全体としての疾患群について、全体的な転写物変化をグラフ表示するために、スポットをグリッド上に整列させるが、それらの元の定義に基づき、各位置は異なるモジュールに対応する。スポットの強度が、そのモジュールについて検出される全転写物数のうちで、示差的に発現する転写物の百分率が示される方向に変化することを示すのに対し、スポットの色は、変化の極性(赤色=過剰表出、青色=過少表出)を示す。
【0093】
血清タンパク質の多重測定:1〜4mlの血液を、血清凝血塊活性化試験管(1mlのGreiner BioOne Vacuette試験管、型番454098;Greiner BioOne社、Kremsmuenst、Austria;又は4mlのBD Vacutainer試験管、型番368975; Becton Dickinson社)に回収した。試験管を室温、2000gで5分間にわたり遠心分離し、血清部分を抽出し、解析までの間−80℃で凍結させた。Milliplex(登録商標)Multi-Analyte Profilingシステム(Millipore社、Billerica、MA、USA)を用いるMillipore UK社(Millipore UK Ltd社、Dundee、UK)によるサイトカインビーズベースの多重イムノアッセイを介して、解析を実施した。各試料において、63のサイトカイン、ケモカイン、可溶性受容体、増殖因子、接着分子、及び急性相タンパク質を、このようにして測定した。MMP−9、C反応性タンパク質、血清アミロイドA、EGF、エオタクシン、FGF−2、Flt−3リガンド、フラクタルカイン、G−CSF、GM−CSF、GRO、IFN−α2、IFN−γ、IL−10、IL−12p40、IL−12p70、IL−13、IL−15、IL−17、IL−1α、IL−1β、IL−1Rγ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、CXCL10(IP10)、MCP−1、MCP−3、MIP−1α、MIP−1β、PDGF−AA、PDGF−AB/BB、RANTES、可溶性CD40リガンド、可溶性IL−2RA、TGF−α、TNF−α、VEGF、MIF、可溶性Fas、可溶性Fasリガンド、tPAI−1、可溶性ICAM−1、可溶性VCAM−1、可溶性CD30、可溶性gp130、可溶性IL−1RII、可溶性IL−6R、可溶性RAGE、可溶性TNF−RI、可溶性TNF−RII、IL−16、TGFβ1、TGF−β2、及びTGFβ−3のレベルについて、試料をアッセイした。
【0094】
フローサイトメトリー:染色パネル1枚当たり200μlの全血(ナトリウム−ヘパリン試験管内に回収した)を、暗所、室温で20分間にわたり、適切な抗体と共にインキュベートした。次いで、BD FACS溶解液(BD Biosciences社)を用いて赤血球を溶解し、暗所、室温で10分間にわたりインキュベートした。細胞をスピンダウンして、2mlのFACS緩衝液(PBS/BSA/アジド)中で洗浄してから、1%のパラホルムアルデヒドにより固定した。次いで、Summit Software Version 3.02を用いる、Beckman Coulter Cyan上で、試料を送流した。FlowJo Version 8.7.3 for Macintosh(Tree Star, Inc.社)を用いて解析を実施した。用いたゲート戦略を、図11及び12に示す。適切な場合は、マン−ホイットニーによるランクサムU検定を用いて、プールしたフローサイトメトリーデータを、有意性について検定した。Bechman Coulter社から購入したCD45RAを除き、すべての抗体は、BD Pharmingen社又はCaltag Laboratories(Invitrogen社)から購入した。
【0095】
統計学的解析: Microsoft Excel 2003(Microsoft社、Redmond、WA、USA)を用いて、健常までの分子的距離及びモジュールフレームワーク解析の計算を実施した。GraphPad Prism version 5.02 for Windows(GraphPad Sotware社、San Diego California USA、www.graphpad.com)を用いて、連続変数の統計的解析及び相関解析を実施した。SPSS version 14 for Windows(Chicago、Illinois、USA)を用いて、カテゴリー変数の解析を実施した。
【0096】
図10a〜図10d:活動性TBの全血中の転写サインは、細胞組成物における顕著な変化、及び遺伝子発現の絶対レベルの変化の両方を反映する。健常対照と比較した、活動性TBの遺伝子発現を、あらかじめ定義したモジュールフレームワーク内にマップした。スポットの強度は、各モジュールについて、有意な示差的発現転写物の比率を表わす(赤色=転写物量の増大、青色=転写物量の減少)。文献による不偏プロファイリングを介してあらかじめ決定した機能の解釈は、主に、図4のカラーコードグリッドで表示する。(10a)訓練集合;(10b)テスト集合;(10c)検証集合(南アフリカ)において過剰表出(赤色)又は過少表出(青色)した、各モジュールにおける遺伝子の百分率をこれらの図に示す。(10d)各患者について、重みづけした健常までの分子的距離を、ベースラインの治療前(0カ月)、抗マイコバクテリア治療の2カ月後及び12カ月後において計算した。個々の患者番号は、図3a〜3dに示した患者番号に対応する。
【0097】
図11a〜11c:活動性TB患者及び対照の血液におけるリンパ球の解析について示す図である。(11a)T細胞及びB細胞について、テスト集合の健常対照及び活動性TB患者に由来する全血を解析するのに用いられる、フローサイトメトリーによるゲート戦略を示す。上行のパネルは、その後のゲーティングで用いられるリンパ球についてのFSC/SSCゲートを決定するのに用いられるバックゲート戦略を示す。まず、大規模なFSC/SSCゲートをかけ(左パネル)、次いで、CD3と対比したCD45について解析した。CD45CD3細胞をゲーティングし(中パネル)、それらのFSC/SSCプロファイルを決定した(右パネル)。次いで、このプロファイルを使用して適切なリンパ球についてのFSC/SSCゲートを決定した(第2行、左パネルを参照されたい)。このバックゲート手順はまた、CD45CD19(B細胞)についてゲーティングして、これらの細胞が、リンパ球ゲート(図示しない)内に包含されることを確認するためにも実施した。第2行のパネルは、T細胞集団を同定するのに用いられるゲート戦略を示す。リンパ球についてのFSC/SSCゲートをかけ、CD3と対比したCD45についてこれらの細胞を評価した(左から2番目のパネル)。次いで、CD45細胞をゲーティングし、CD8と対比したCD3について評価した。CD3T細胞をゲーティングし、CD4及びCD8の発現について評価した。次いで、CD4サブセット及びCD8サブセットをゲーティングした。行3〜6は、メモリーT細胞のサブセットを定義するのに用いられるゲーティング戦略を示す。行2でゲーティングしたCD4 T細胞及びCD8 T細胞を、CCR7の発現と対比したCD45RA、及びアイソタイプ対照に基づく四分セット(行5及び6)について評価し、ナイーブ(CD45RACCR7)T細胞、中枢メモリー(CD45RACCR7)T細胞、エフェクターメモリー(CD45RACCR7)T細胞、及びCD8T細胞の場合は、終末分化エフェクター(CD45RACCR7)T細胞を定義する。また、CD62L発現についても、これらのサブセットを評価した。パネルの下行は、B細胞をゲーティングするのに用いられる戦略を示す。リンパ球についてのFSC/SSCゲートをかけ、CD19と対比したCD45について細胞を評価した。CD45+細胞をゲーティングし、CD19及びCD20について評価した。CD19CD20細胞として、B細胞を定義した。(11b)メモリーT細胞集団についての多重パラメータによるフローサイトメトリーにより、11例のテスト集合の健常対照(対照)及び9例のテスト集合の活動性TB患者(活動性)に由来する全血を解析した。フローサイトメトリーの完全なゲート戦略を図11aに示す。グラフは、ナイーブT細胞のサブセット、中枢性メモリーT細胞(TCM)のサブセット、エフェクターメモリーT細胞(TEM)のサブセット、及び終末分化エフェクターT細胞(TD、CD8T細胞に限る)のサブセットの百分率(各群の上行)、並びに各細胞サブセットについての細胞数(×10個/ml)(各群の下行)について、すべての個体についてプールしたデータを示す。各記号は、個別の患者を表わす。水平線は、中央値を表わす。(11c)遺伝子(i)活動性TBに由来する全血試料(訓練集合、テスト集合、及び検証集合)におけるT細胞転写物量;及び(ii)テスト集合の血液から区分した白血球集団におけるT細胞遺伝子の発現を示す図である。健常対照の中央値(図1に表示した)と比較した遺伝子の量/発現を示す。テスト集合及び区別した集団において示される番号は、個別の患者に対応する。
【0098】
図12a〜12c:活動性TB患者及び対照の血液における骨髄細胞の解析について示す図である。(12a)テスト集合の健常対照及び活動性TB患者に由来する全血を、単球及び好中球について解析するのに用いられる、フローサイトメトリーによるゲート戦略を示す。大規模なFSC/SSCゲートをかけ(上行の左パネル)、次いで、CD14と対比したCD45について解析した。CD45細胞をゲーティングし(中パネル)、CD16と対比したCD14について評価した。単球をCD14と定義し、炎症性単球をCD14CD16と定義し、好中球をCD16と定義した。この図にはまた、CD16好中球と、CD16を発現するNK細胞との可能な重複を評価するのに用いられるゲート戦略も示される。好中球及びNK細胞の両方を包含するように、大規模なFSC/SSCゲートをかけた。(12b)次いで、CD56(NK細胞のマーカー)と対比したCD16について、CD45細胞を評価した。CD16好中球は、高レベルのCD16を発現したが、CD56は発現しなかった(アイソタイプの対照プロットにより示される;下パネル)。CD56NK細胞は、中間レベルのCD16を発現したが、高度CD16細胞とは重複しなかった。CD56中程度CD16細胞と、高度CD16細胞とは、FSC/SSC特性が異なっていた。(12c)(i)活動性TBに由来する全血試料(訓練集合、テスト集合、及び検証集合)における骨髄遺伝子の転写物量;及び(ii)テスト集合の血液から区分した白血球集団における骨髄遺伝子の発現を示す図である。健常対照の中央値(図1に表示した)と比較した遺伝子の量/発現を示す。テスト集合及び区別した集団において示される番号は、個別の患者に対応する。
【0099】
図13a及び13b:393転写物の特徴についてのIngenuity Pathways解析について示す図である。(13a)カノニカルの生物学的経路の各々が、有意に過剰表出する確率(BH多重検定補正を伴うフィッシャーによる正確検定により計算されるp値の−logとしての確率)を、橙色の四角で表示する。単色の着色バーは、解析される遺伝子リスト内に存在する経路(各バーの右側縁辺に太字で示される)を含む遺伝子総数の百分率を表わす。バーの色は、訓練集合における健常対照と比較した、活動性TBを伴う患者の全血における転写物の量を示す。(13b)この図では、訓練集合によるマイクロアレイ解析に用いられる、12例の健常対照、及び13例の活動性TB患者について、インターフェロンアルファ2a(IFN−2a)及びインターフェロン−ガンマ(IFN−γ)の血清レベルを示す。両側マン−ホイットニー検定を用いたところ、いずれのサイトカインについても、群間の有意差は観察されなかった。水平線は、各群の平均を示し、ウィスカーは、95%の信頼区間を示す。
【0100】
図14a及び14b:個別の健常対照及び活動性TB患者に由来する全血及び細胞部分集団におけるPDL1(CD274)の発現について示す図である。(14a)フローサイトメトリーにより、PDL1の発現について、11例のテスト集合の健常対照(対照)及び11例のテスト集合の活動性TB患者(活動性)に由来する全血を解析した。評価されるアイソタイプ対照(緑色)と比較した、すべての白血球及び幾何平均によるPDL1の蛍光強度(MFI)(赤色)を包含するように、大規模なFSC/SSCゲートをかけた。活動性TB患者の各々は、異なる日に解析し、健常対照は小さな群(左から、試料1及び2、3及び4、6〜8、並びに9〜11を併せて解析したが、試料5は単独で解析した)で解析し、各群内の試料は、アイソタイプ対照を共有した。(14b)また、パートaと同じ11例のテスト集合の健常対照(対照)及び11例のテスト集合の活動性TB患者(活動性)の血液に由来する細胞の部分集団も、PDL1の発現について、フローサイトメトリーにより解析した。図6bと同様に細胞の部分集団を定義し、アイソタイプ対照(緑色)と比較したPDL1のMFI(赤色)をプロットした。
【0101】
図15a〜f:研究群の順に並べ、遺伝子記号と共に拡大して示した、訓練集合の393転写物のプロファイルを、図の右側で一覧する。重要な転写物は、大きな文字列で強調する。各図の左側には、全遺伝子系統樹及びヒートマップを表示し、黒色の四角で、拡大した領域に印をつける。図の下方の着色スケール(図1と同様のスケール)により、転写物の相対量を示す。
【0102】
図16a〜16は、その右側に列挙した各種の遺伝子について、対照、潜在性患者、及び活動性患者を比較するヒートマップである。
【0103】
図17a〜17cは、各種の訓練集合、テスト集合、及び検証集合について、統計、すなわち、各種の内訳と共に、性別、出身国、及び民族性を列挙する表である。
【0104】
図18a〜18cは、各種の訓練集合、テスト集合、及び検証集合について、統計、すなわち、TST状態、BCGによるワクチン接種状態、及びスメア状態についての検査結果を列挙する表である。
【0105】
図19は、各種の試料供給源間における、訓練集合、テスト集合、及び検証集合の特異度及び感度についての結果をまとめた表である。
【0106】
方法についての参考文献
1. Salisbury, D., Ramsay, M. Immunization against infectious diseases - the Green Book. D.O.Health, LondonThe Stationery Office, 391-408 (2006).
2. National Institute for Health and Clinical Excellence. (Royal College of Physicians, UK, 2006).
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5. Chaussabel, D. et al. A modular analysis framework for blood genomics studies: application to systemic lupus erythematosus. Immunity 29, 150-64 (2008).
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】



【0109】
【表5】


【0110】
【表6】



【0111】
【表7】



【0112】
【表8】



【0113】
本明細書で論じた任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬、又は組成物について実装することができ、この逆もまた真であることが意図される。さらに、本発明の組成物を用いて、本発明の方法を達成することができる。
【0114】
本明細書で説明される特定の実施形態は、本発明の例示を目的として示されるものであり、本発明の限定として示されるものではないことが理解されるであろう。本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて、各種の実施形態で、本発明の主要な特徴を用いることができる。当業者は、日常的な実験だけを用いて、本明細書で説明される特定の手順に対する多数の同等物を認識するか、又は確認することができるであろう。このような同等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲により対象とされる。
【0115】
本明細書で言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関与する技術分野における当業者のレベルを示すものである。すべての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物又は特許出願が、参照により特異的且つ個別に組み込まれることが示されたと仮定した場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
特許請求の範囲及び/又は明細書における「含む」という用語と共に用いられる場合の「ある(a)」又は「ある(an)」という語の使用は、「1つの」を意味しうるが、また、「1以上の」、「少なくとも1つの」、及び「1又は2以上の」とも符合する。本開示は、代替物だけ、並びに「及び/又は」を指す定義を支持するが、特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物だけを示すことが明示的に示されるか、又は代替物が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するのに用いられる。本出願の全体において、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するのに用いられるデバイス、方法に内在的な誤差のばらつき、又は被験者間に存在するばらつきを包含することを示すのに用いられる。
【0117】
本明細書及び特許請求の範囲(2つ以上の請求項)において用いられる「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」など、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」など、有する(having)の任意の形態)、「包含する(including)」(並びに「包含する(includes)」及び「包含する(include)」など、包含する(including)の任意の形態)、又は「含有する(containing)」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」など、含有する(containing)の任意の形態)という語は、包含的又はオープンエンドであり、列挙されていないさらなる要素又は方法ステップを除外しない。
【0118】
本明細書で用いられる「又はこれらの組合せ」という用語は、この用語に先行して列挙される項目についてのすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCのうちの少なくとも1つを包含することを意図し、特定の文脈で順序が重要である場合はまた、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを包含することを意図する。この例を続けると、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、1又は2以上の項目又は項の反復を含有する組合せが、明示的に包含される。当業者は、文脈から別段に明らかでない限り、項目又は項の数にはいかなる組合せにおいても制限がなされないことが典型的であることを理解するであろう。
【0119】
本明細書で開示及び主張されるすべての組成物及び/又は方法は、本開示に照らして不要な実験なしに作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を、好ましい実施形態との関連で説明してきたが、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱しない限りにおいて、本明細書で説明される組成物、及び/又は方法、並びに方法のステップ又はステップの連鎖に変化を適用しうることは、当業者に明らかであろう。当業者には明らかな、このような類似の置換及び改変のすべては、付属の特許請求の範囲により規定される、本発明の精神、範囲、及び概念の範囲内にあるとみなされる。
【0120】
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【図1】

【図2】

【図3】

【図4a−e】

【図4f−g】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在性/無症候性と考えられる活動性結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染を検出する方法であって、
潜在性/無症候性の結核菌感染を疑われる患者から、患者の遺伝子発現データセットを得るステップと、
前記患者の遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連する1又は2以上の遺伝子モジュールに類別するステップと、
前記1又は2以上の遺伝子モジュールの各々に対する前記患者の遺伝子発現データセットを、同様に同じ遺伝子モジュールに類別した非患者に由来する遺伝子発現データセットと比較するステップであって、前記1又は2以上の遺伝子モジュールに対する前記患者の遺伝子発現データセットにおける全遺伝子発現の増大又は減少が、潜在性/無症候性の結核菌感染ではなく、活動性結核菌感染を示唆するステップと
を含む方法。
【請求項2】
遺伝子産物について決定した比較情報を用いて、診断、予後診断、又は治療計画のうちの少なくとも1つを下すか、又は策定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
潜在性結核(TB)患者を、活動性TB患者から識別するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者の遺伝子発現データセットを、全血、末梢血単核細胞、又は痰のうちの少なくとも1つから得られる細胞から得る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
患者の遺伝子発現データセットを、表2の遺伝子から選択される、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、又は393遺伝子と比較する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者の遺伝子発現データセットを、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200の遺伝子と比較する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
結核菌感染と関連する遺伝子モジュールが、モジュールM1.3、モジュールM2.8、モジュールM1.5、モジュールM2.6、モジュールM2.2、及びモジュール3.1からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
結核菌感染と関連する遺伝子モジュールが、B細胞関連遺伝子の減少、T細胞関連遺伝子の減少、骨髄関連遺伝子の増大、好中球関連転写物及びインターフェロン誘導性(IFN)遺伝子の増大の変化により選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
患者の疾患状態を、患者の肺の放射線解析によりさらに決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
患者を治療した後において、前記治療した患者の遺伝子発現データセットを決定し、前記治療した患者の遺伝子発現データセットが、正常な遺伝子発現データセットに復帰したかどうかを決定し、これにより、前記患者を治療したかどうかを決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
潜在性/無症候性と考えられる結核菌感染が、活動性結核菌感染となるかどうかを予測する方法であって、
活動性結核菌感染を伴う第1の臨床群から得られる第1の遺伝子発現データセット、潜在性結核菌感染患者を伴う第2の臨床群から得られる第2の遺伝子発現データセット、及び非感染個体の臨床群から得られる第3の遺伝子発現データセットを得るステップと、
前記第1のデータセット、第2のデータセット、及び第3のデータセットのうちのいずれか2つの間で示差的な遺伝子発現を含む遺伝子クラスターのデータセットを作成するステップと、
潜在性感染、活動性感染、又は健常であることを示唆する、固有の発現/表出パターンを決定するステップであって、前記患者の遺伝子発現データセットが、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも6、10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、又は200の遺伝子を含み、1又は2以上の遺伝子モジュールに対する前記患者の遺伝子発現データセットにおける全遺伝子発現の増大又は減少が、潜在性/無症候性の結核菌感染ではなく、活動性結核菌感染を示唆するステップと
を含む方法。
【請求項12】
結核菌に感染していることが疑われる患者における感染を診断するためのキットであって、
前記患者から患者の遺伝子発現データセットを得るための遺伝子発現検出器であって、前記発現した遺伝子を前記患者の全血から得る検出器と、
前記遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連し、感染患者と非感染患者とを識別する、あらかじめ規定された遺伝子モジュールデータセットと比較することが可能なプロセッサーであって、全血が、対応する非感染患者と比較して、1又は2以上の転写遺伝子発現モジュールにおけるポリヌクレオチドレベルの総計の変化を示し、これにより、潜在性/無症候性の結核菌感染と、活動性となる結核菌感染とを識別するプロセッサーと
を含むキット。
【請求項13】
患者の遺伝子発現データセットを、末梢血単核細胞から得る、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
患者の遺伝子発現データセットを、表2の遺伝子から選択される、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、又は393遺伝子と比較する、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
患者の遺伝子発現データセットを、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200の遺伝子と比較する、請求項12に記載のキット。
【請求項16】
結核菌感染と関連する遺伝子モジュールが、モジュールM1.3、モジュールM2.8、モジュールM1.5、モジュールM2.6、モジュールM2.2、及びモジュール3.1からなる群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項17】
結核菌感染と関連する遺伝子モジュールが、B細胞関連遺伝子の減少、T細胞関連遺伝子の減少、骨髄関連遺伝子の増大、好中球関連転写物及びインターフェロン誘導性(IFN)遺伝子の増大の変化により選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項18】
遺伝子が、PDL−1、CASP5、CR1、CASP5、TLR5、MAPK14、STX11、BCL6、及びC5から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項19】
潜在性/無症候性と考えられる活動性結核菌感染を検出するシステムであって、
患者から患者の遺伝子発現データセットを得るための遺伝子発現検出器であって、前記発現した遺伝子を前記患者の全血から得る検出器と、
前記遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連し、且つ、活動性疾患に増悪するリスクのある、潜在性結核菌感染を伴う患者を識別する、あらかじめ規定された遺伝子モジュールデータセットと比較することが可能なプロセッサーであって、全血が、対応する非感染患者と比較して、1又は2以上の転写遺伝子発現モジュールにおけるポリヌクレオチドレベルの総計の変化を示し、これにより、活動性疾患に増悪するリスクのある、潜在性結核菌感染を伴う患者を識別し、前記遺伝子モジュールデータセットが、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つを含むプロセッサーと
を含むシステム。
【請求項20】
患者の遺伝子発現データセットを、表2の遺伝子から選択される、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、又は393遺伝子と比較する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
患者の遺伝子発現データセットを、モジュールM1.3、M2.8、M1.5、M2.6、M2.2、及びM3.1のうちの少なくとも1つにおける遺伝子から得られる、少なくとも10、20、40、50、70、80、90、100、125、150、200の遺伝子と比較する、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
結核菌感染と関連する遺伝子モジュールが、モジュールM1.3、モジュールM2.8、モジュールM1.5、モジュールM2.6、モジュールM2.2、及びモジュール3.1からなる群から選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
結核菌感染と関連する遺伝子モジュールが、B細胞関連遺伝子の減少、T細胞関連遺伝子の減少、骨髄関連遺伝子の増大、好中球関連転写物及びインターフェロン誘導性(IFN)遺伝子の増大の変化により選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
遺伝子が、PDL−1、CASP5、CR1、CASP5、TLR5、MAPK14、STX11、BCL6、及びC5から選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
治療剤の試験において有効性をモニタリングする方法であって、
結核菌に感染していることが疑われる患者から、患者の遺伝子発現データセットを得るステップと、
前記患者の遺伝子発現データセットを、結核菌感染と関連する1又は2以上の遺伝子モジュールに類別するステップと、
前記1又は2以上の遺伝子モジュールの各々に対する前記患者の遺伝子発現データセットを、非患者に由来する遺伝子発現データセットと比較するステップと、
前記患者を、前記治療剤により治療するステップと、
前記治療剤が、前記患者の遺伝子発現プロファイルを、非患者に由来する前記遺伝子発現データセットに変化させたかどうかを決定するステップであって、前記1又は2以上の遺伝子モジュールに対する前記患者の遺伝子発現データセットにおける全遺伝子発現の増大又は減少が、活動性結核菌感染を示唆するステップと
を含む方法。


【図4h】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図12a−b】
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【図12c】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図14e】
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【図14f】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図16e】
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【図16f】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−511981(P2013−511981A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541071(P2012−541071)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/046042
【国際公開番号】WO2011/066008
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.SUMMIT
【出願人】(509004712)ベイラー リサーチ インスティテュート (38)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
【出願人】(503276997)メディカル リサーチ カウンシル (10)
【出願人】(510337403)インペリアル カレッジ ヘルスケア エヌエイチエス トラスト (2)
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE HEALTHCARE NHS TRUST
【Fターム(参考)】