説明

活動量計

【課題】使用者が自動運動器具を用いて受動的な運動を行っている場合でも、正確な活動量を算出できる活動量計を提供することにある。
【解決手段】活動量計は、人体に装着され互いに直交する3軸の加速度を検出する加速度検出手段1と、使用者の運動状態を判定する運動状態判定手段2と、運動状態判定手段2の判定結果に基づいて加速度検出手段1により得られた加速度から活動量を算出する活動量算出手段3とを備え、運動状態判定手段2は、使用者の運動状態が、使用者が能動的に行った能動運動と、使用者に所定の運動を行わせる自動運動器具により受動的に行われた受動運動のいずれであるかを判定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の活動量を算出する活動量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体に装着され互いに直交する3軸の加速度を検出する加速度センサと、加速度センサにより得られた加速度を元にして活動量を算出する演算処理部とを備えた活動量計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示すような活動量計では、アメリカスポーツ医学会で用いられている、運動時の消費エネルギが安静時の消費エネルギの何倍になっているか示す値である「METs」値からなる運動強度を活動量として算出するように構成されており、活動量を算出するにあたっては、加速度センサにより得られた加速度の変動平均(分散)と活動量との相関関係を示す演算式(すなわち、加速度の変動平均を運動強度に変換する換算式)を利用している。
【特許文献1】特開2006−204446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、運動不足や肥満を解消するための自動運動器具として、人に所定の運動を行わせることで、人に受動的に運動を行わせる自動運動器具(他動運動器具)が普及してきている。この種の自動運動器具としては、例えば、図5に示すように、使用者が乗馬姿勢で着座する座席部110と、座席部110を、重力方向に交差する方向(例えば、前後方向や、左右方向)に揺動させる駆動装置120とを備え、使用者に乗馬運動を行わせる乗馬運動器具100が提案されている。
【0005】
そして、上記自動運動器具の普及に伴って日常の運動に上記自動運動器具による運動(受動運動)を取り入れる人が増えてきている。そのため、上記自動運動器具で受動運動を行っている場合においても、活動量計が使用されるケースが増えてきている。
【0006】
しかしながら、従来の活動量計は、上述したように加速度の変動平均と活動量との相関関係を利用して活動量の算出を行うようになっており、このような相関関係は、ウォーキングや、ランニングなどの人が能動的に行う能動運動を行ったときのデータに基づくものであるから、上記自動運動器具による受動運動を行っている人の活動量を正確に評価することができていなかった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、使用者が自動運動器具を用いて受動的な運動を行っている場合でも、正確な活動量を算出できる活動量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を解決するために、請求項1の発明では、人体に装着され加速度を検出する加速度検出手段と、使用者の運動状態が、使用者が能動的に行った能動運動と使用者に所定の運動を行わせる自動運動器具により受動的に行われた受動運動のいずれであるかを判定する運動状態判定手段と、運動状態判定手段の判定結果に基づいて加速度検出手段により得られた加速度から活動量を算出する活動量算出手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、使用者の運動状態が、使用者が能動的に行った能動運動と、使用者に所定の運動を行わせる自動運動器具により受動的に行われた受動運動のいずれであるかを判定して、その判定結果に基づいて加速度検出手段により得られた加速度から活動量を算出するから、使用者が自動運動器具を用いて受動的な運動を行っている場合でも、正確な活動量を算出できる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、自動運動器具は、使用者が乗馬姿勢で着座する座席部と、座席部を重力方向に交差する方向に揺動させる駆動装置とを備え、使用者に乗馬運動を行わせる乗馬運動器具であって、加速度検出手段は、重力方向の加速度と水平方向の加速度を検出するように構成され、運動状態判定手段は、前記重力方向の加速度と前記水平方向の加速度との比率を元にして運動状態を判定するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、乗馬運動器具は着座部を重力方向に交差する方向に揺動させることで使用者に乗馬運動を促すものであり、乗馬運動器具による受動運動によって人体に生じる加速度が、人の歩行、走行などの能動運動よりも重力方向の加速度が小さく、水平方向の加速度が大きくなる点に着目して、重力方向の加速度と水平方向の加速度との比率を元にして運動状態を判定するので、歩行や走行などの能動運動と受動運動との判定精度が向上し、さらに正確な活動量を算出できる。
【0012】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、自動運動器具は、使用者が乗馬姿勢で着座する座席部と、座席部を重力方向に交差する方向に揺動させる駆動装置とを備え、使用者に乗馬運動を行わせる乗馬運動器具であって、運動種別判定手段は、加速度検出手段により得られた加速度の周期性を元にして使用者の運動状態を判定するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、乗馬運動器具は着座部を重力方向に交差する方向に揺動させることで使用者に乗馬運動を促すものであり、乗馬運動器具による受動運動によって人体に生じる加速度が、家事やデスクワークなどのあまり移動を伴わない生活活動である能動運動によって生じる加速度に比べれば所定の周期性を有する点に着目して、加速度検出手段により得られた加速度の周期性を元にして運動状態を判定するので、生活活動である能動運動と受動運動との判定精度が向上し、さらに正確な活動量を算出できる。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、使用者の運動状態を選択する選択手段を備え、運動種別判定手段は、選択手段の選択結果を元にして運動状態を判定するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、使用者自らが運動状態を選択できるから、運動状態が能動運動と受動運動のいずれであるかを確実に判定でき、正確な活動量を算出できる。
【0016】
請求項5の発明では、請求項1〜4のうちいずれか1項の発明において、活動量算出手段は、加速度から活動量を算出する際に使用する演算式を運動状態毎に有し、行動シーン判定手段の判定結果に基づいて使用する演算式を選択するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、1つの演算式だけで活動量の算出を行う場合に比べて正確な活動量を算出できる
【発明の効果】
【0018】
本発明は、使用者が自動運動器具を用いて受動的な運動を行っている場合でも、正確な活動量を算出できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態の活動量計は、図1に示すように、人体に装着され互いに直交する3軸の加速度を検出する加速度検出手段1と、使用者の運動状態を判定する運動状態判定手段2と、運動状態判定手段2の判定結果に基づいて加速度検出手段1により得られた加速度から活動量を算出する活動量算出手段3と、活動量算出手段3で算出した活動量などを表示する表示手段4と、加速度検出手段1により得られた加速度などの種々のデータが記憶されるRAMやHDDなどの記憶装置からなる記憶手段5と、活動量計のオンオフ操作などを行うための操作手段(図示せず)と、活動量計を駆動する電池などの電源手段(図示せず)と、これらを収納する筐体(図示せず)とを備えている。なお、上記筐体は、例えば樹脂成形品などからなり、人が携行可能な大きさに形成されている。
【0020】
加速度検出手段1は、例えば、互いに垂直な3軸の各加速度をアナログ形式で出力する3軸の加速度センサ(図示せず)と、当該3軸の加速度センサの出力を所定周期でサンプリングしデジタル形式に変換して出力する加速度検出回路(図示せず)とを備えている。なお、上記3軸の加速度センサとしてはデジタル形式で出力するものを利用してもよく、この場合は、A/D変換を行う加速度検出回路を省略できる。
【0021】
ここで、上記3軸の加速度センサは、重力方向の加速度と、水平方向の加速度とを検出するために用いられるものであって、人体の前後(進行)方向(以下、「x軸方向」と称する)と、人体の幅(横)方向(以下、「y軸方向」と称する)と、人体の身長(上下)方向(以下、「z軸方向」と称する)との加速度を検出可能なように人体に装着され、x軸方向の加速度とy軸方向の加速度の合成加速度が水平方向の加速度として、z軸方向の加速度が重力方向の加速度としてそれぞれ用いられる。なお、加速度検出回路には、3軸の加速度センサの各軸と、x軸方向、y軸方向、z軸方向それぞれの方向とのずれを補正する機能を設けるようにしてもよい。
【0022】
上記3軸の加速度センサとしては、例えば、小型で低消費電力なMEMS(MicroElectro Mechanical Systems)を利用した加速度センサを用いている。なお、加速度センサとしては、ピエゾ抵抗型の加速度センサや、静電容量型の加速度センサなどを採用することができる。また、3軸の加速度センサとしては、2軸の加速度センサと1軸の加速度センサとを組み合わせて3軸の加速度値を出力可能としたものを用いてもよいし、1軸の加速度センサを3つ用いて3軸の加速度値を出力可能としたものを用いてもよい。
【0023】
運動状態判定手段2は、使用者の運動状態が、例えば、ウォーキングや、ランニング、サイクリングなどの使用者が能動的に行った能動運動(自発運動)と、使用者に所定の運動を行わせる自動運動器具により受動的に行われた受動運動(他動運動)、本実施形態では図5に示すような乗馬運動器具100による乗馬運動のいずれであるかを判定するものである。
【0024】
図5に示すような乗馬運動器具100は、着座部110を重力方向に交差する方向に揺動させることで、使用者に乗馬運動を促すものであるから、乗馬運動器具100による受動運動では、人の歩行、走行などの能動運動よりも重力方向の加速度が小さく、水平方向の加速度が大きくなる。また、乗馬運動器具100による受動運動によって人体に生じる加速度は、家事やデスクワークなどのあまり移動を伴わない生活活動である能動運動によって生じる加速度に比べれば所定の周期性を有することになる。
【0025】
そこで、本実施形態における運動状態判定手段2では、乗馬運動器具100では能動運動よりも重力方向の加速度が小さく水平方向の加速度が大きくなる点と、乗馬運動器具100による受動運動によって人体に生じる加速度が所定の周期性を有する点とに着目して、重力方向の加速度の変動平均Svと水平方向の加速度の変動平均Shとの比率からなる第1判定値T1と、加速度検出手段1により得られた加速度のノルムの周期性を示す振動数からなる第2判定値T2とを元にして運動状態を判定するように構成されている。
【0026】
ここで、第1判定値T1は、重力方向の加速度の変動平均をSv、水平方向の加速度の変動平均をShとすれば、次式(1)で表される。すなわち、本実施形態における第1判定値T1は、水平方向の加速度の変動平均Shに対する重力方向の加速度の変動平均Svの比率を示している。なお、次式(1)からも明らかなように第1判定値T1は無次元の値である。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、重力方向の加速度の変動平均Svは、z軸方向の加速度の変動平均であり、水平方向の加速度の変動平均Shは、x軸方向の加速度の変動平均とy軸方向の加速度の変動平均との合成値である。したがって、x軸方向の加速度の変動平均をSx、y軸方向の加速度の変動平均をSy、z軸方向の加速度の変動平均をSzとすれば、Sv=Sz、Sh=(Sx+Sy1/2となる。
【0029】
そして、各軸方向の加速度の変動平均Sx,Sy,Szは、各軸方向の加速度の標準偏差であるから、加速度検出手段1により得られたx軸方向の加速度をAx、y軸方向の加速度をAy、z軸方向の加速度をAzとすれば、変動平均Sx,Sy,Szは次式(2)〜(4)で表すことができる。なお、標準偏差を算出するにあたっては、標本分散ではなく不偏分散を用いている。また、nは、一定時間における各加速度のサンプリング数を示す整数である。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、Sh=(Sx+Sy1/2であるから、Shは、次式(5)で表すことができる。
【0032】
【数3】

【0033】
第2判定値T2は、各軸方向の加速度をベクトル成分とするノルムの振動数(周波数)であり、単位時間(本実施形態では1分)当たりのノルムのピーク数によって与えられる。したがって、第2判定値T2の単位は「回/分」である。なお、ピーク数のカウントは、例えば、ピーク値が所定の閾値を越えるピークの数をカウントすることにより行われる。また、ピーク数をカウントする方法は、従来周知のものを採用できるから詳細な説明は省略する。
【0034】
そして、運動状態判定手段2は、上述したようにして得られる第1判定値T1および第2判定値T2を元にして、使用者の運動状態が、能動運動と受動運動のいずれであるかを判定する。例えば、図2に示すように、第1判定値T1が0.5未満で且つ第2判定値T2が30以上であれば、受動運動と判定し、それ以外であれば、能動運動と判定する。
【0035】
なお、図2に示すような数値は、あくまで一例であって、これに限定する趣旨ではない。また、運動状態の判定に用いる数値は、実際に加速度検出手段1より得た第1判定値T1および第2判定値T2の値と、そのときの人の運動状態との統計的なデータにより設定すればよい。
【0036】
活動量算出手段3は、運動状態判定手段2の判定結果を受け取った際に、加速度検出手段1により得られた加速度、本実施形態では加速度検出手段1により得られた各軸の加速度をベクトル成分とするノルムの所定時間における変動平均Sa=(Sx+Sy+Sz1/2により活動量を算出するものであって、活動量を算出するにあたっては、運動状態判定手段2の判定結果に基づいた演算式を使用するように構成されている。
【0037】
つまり、活動量算出手段3は、加速度から活動量を算出する際に使用する演算式(加速度を活動量に換算する換算式)を運動状態毎に有し、運動状態判定手段2の判定結果に基づいて活動量の算出に使用する演算式を選択する。例えば、運動状態判定手段2により運動状態が能動運動と判定された場合には能動運動用の演算式を使用し、受動運動と判定された場合には受動運動用の演算式を使用する。
【0038】
これら運動状態に対応する演算式は、人の運動状態はそのままで、その運動の強さのみを変化させた際の変動平均Saと活動量の相関関係を利用した近似式により求めることができる。例えば、活動量をI[METs]とすれば、能動運動用の演算式は下式(6)で、受動運動用の演算式は下式(7)でそれぞれ表される。なお、a,bは上記近似により得られる係数であり、一般にa>bとなる。
【0039】
【数4】

【0040】
したがって、本実施形態の活動量計における変動平均Saと活動量Iとの関係は、図3に示すグラフのようになる。なお、図3に示すグラフでは、Aが能動運動、Pが受動運動をそれぞれ示している。
【0041】
ところで、活動量算出手段3は、上記のように活動量を算出する機能の他に、1時間や1日などの単位時間における活動量の平均や、エクササイズ[METs・h]、1日のエクササイズ量、消費カロリ、歩数、運動時間など、人の活動に関する種々のデータ(以下、「活動データ」と称する)を算出するように構成されていてもよい。なお、エクササイズや、消費カロリなどの算出方法は、従来周知のものを利用できるから詳細な説明を省略する。また、活動量算出手段3は、活動データを記憶手段5に記憶させることで、各活動データの履歴を残すように構成されている。
【0042】
なお、運動状態判定手段2および活動量算出手段3は、例えば上記筐体に収納されたマイクロコンピュータなどのハードウェア資源からなる演算処理手段(図示せず)と、当該演算処理手段に情報の演算、加工などを行わせるソフトウェアとにより実現されている。また、上記演算処理手段は、運動状態判定手段2および活動量算出手段3の他に、表示手段4を制御する表示制御手段(図示せず)など、活動量計の種々の機能を発揮するために必要な手段を備えている。
【0043】
表示手段4は、液晶ディスプレイ(LCD)などの画像表示装置(図示せず)およびその駆動回路(図示せず)で構成されたものであって、上記表示制御手段により、記憶手段5に記憶された活動データを上記画像表示装置に表示するように制御される。また、操作手段は、活動量計のオンオフ操作用のスイッチや、活動量の演算を開始させるスイッチ、活動量の表示をリセットするスイッチ、表示する活動データを切り替えるためのスイッチなどを備えているものである。
【0044】
以上述べた本実施形態の活動量計では、例えば、第1判定値T1が0.5未満で且つ第2判定値T2が30以上であれば、運動状態判定手段2により使用者の運動状態が、自動運動器具を利用した受動運動であると判定され、上式(7)を用いて活動量Iの算出が行われる。また、それ以外の場合では、運動状態判定手段2により使用者の運動状態が、使用者が能動的に運動を行う能動運動であると判定され、上式(6)を用いて活動量Iの算出が行われる。
【0045】
したがって、本実施形態の活動量計によれば、使用者の運動状態が、使用者が能動的に行った能動運動と、使用者に所定の運動を行わせる自動運動器具により受動的に行われた受動運動のいずれであるかを判定して、その判定結果に基づいて加速度検出手段1により得られた加速度から活動量を算出するから、使用者が自動運動器具を用いて受動的な運動を行っている場合でも、正確な活動量を算出できる。
【0046】
特に、本実施形態の活動量計では、自動運動器具として、図5に示すように、使用者が乗馬姿勢で着座する座席部110と、座席部110を重力方向に交差する方向に揺動させる駆動装置120とを備え、使用者に乗馬運動を行わせる乗馬運動器具100を想定しており、このような乗馬運動器具100は着座部110を重力方向に交差する方向に揺動させることで、使用者に乗馬運動を促すものであるので、乗馬運動器具100による受動運動では、人の歩行、走行などの能動運動よりも重力方向の加速度が小さく、水平方向の加速度が大きくなる。このような乗馬運動の特性に鑑みて、運動状態判定手段2では、重力方向の加速度の変動平均Svと水平方向の加速度の変動平均Shとの比率からなる第1判定値T1を元にして運動状態を判定するから、歩行や走行などの能動運動と受動運動との判定精度が向上し、さらに正確な活動量を算出できる。
【0047】
ところで、人の身体活動は、歩行や走行などの運動レベルの活動が1日のうち1〜2時間程度で、他の時間は家事やデスクワークなどのあまり移動を伴わない生活活動であることが多く、このような生活活動は、水平方向および重力方向それぞれの加速度が小さい。そのため、重力方向の加速度と水平方向の加速度との比率、すなわち第1判定値T1を利用した判定方法では、歩行や走行などの能動運動と受動運動とを判定することはできるが、生活活動などの能動運動と受動運動とを判定することは難しい。
【0048】
そこで、本実施形態の運動状態判定手段2では、乗馬運動器具100による受動運動によって人体に生じる加速度が、上記生活活動によって生じる加速度に比べれば所定の周期性を有する点に着目して、第1判定値T1だけではなく、加速度検出手段1により得られた加速度の周期性を示す振動数からなる第2判定値T2を元にして運動状態を判定するので、能動運動が生活活動である場合であっても、このような能動運動と受動運動とを判定できるから、生活活動である能動運動と受動運動との判定精度が向上し、さらに正確な活動量を算出できる。
【0049】
また、活動量算出手段3では、運動状態判定手段2により判定された運動状態に対応して演算式を選択するから、1つの演算式だけで活動量の算出を行う場合に比べて正確な活動量を算出できる
ところで、本実施形態における運動状態判定手段2は、運動状態が、能動運動と受動運動のいずれであるかを判定するようになっているが、運動状態が能動運動である場合には、さらに能動運動がどのような運動かまで判定するようにしてもよい。
【0050】
例えば、図4に示すように、第1判定値T1が0.5未満で且つ第2判定値T2が30以上であれば、受動運動と判定し、第1判定値T1が0.5以上1.0未満で且つ第2判定値T2が60以上であれば、歩行と判定し、第1判定値T1が1.0以上で且つ第2判定値T2が60以上であれば、走行と判定し、受動運動、歩行、走行のいずれにも該当しない場合(すなわち、第2判定値T2が30未満、および第1判定値T1が0.5以上で且つ第2判定値T2が60未満である場合)には、生活活動と判定する。ここで、生活活動、歩行、走行は、能動運動に分類される。
【0051】
この場合、活動量算出手段3は、受動運動用の演算式と、生活活動用の演算式、歩行用の演算式、および走行用の演算式からなる能動運動用の演算式とを有するように構成し、運動状態判定手段2の判定結果に基づいて活動量の算出に使用する演算式を選択するようにすればよい。なお、生活活動用、歩行用、および走行用それぞれの演算式は、能動運動用の演算式と同様の方法により求めればよい。
【0052】
このようにすれば、使用者の運動状態をより詳細に分類できるから、さらに正確な活動量の算出が行えるようになる。
【0053】
なお、本実施形態では、受動運動として乗馬運動を、能動運動として生活活動、歩行、走行を例示しているが、これらに限定する趣旨ではない。また、上記変動平均から活動量を算出するにあたっては、上式(6),(7)に示すような演算式ではなく、データテーブルなどを利用してもよい。
【0054】
ところで、本実施形態における運動状態判定手段2では、第1判定値T1および第2判定値T2の両方を利用して運動状態を判定するようにしているが、いずれか一方のみを利用して運動状態を判定するようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態の活動量計に、使用者の運動状態を選択するスイッチなどからなる選択手段(図示せず)を備え、運動種別判定手段2では、第1判定値T1および第2判定値T2の算出を行わずに、選択手段の選択結果を元にして運動状態を判定するようにしてもよく、このようにすれば、使用者自らが運動状態を選択できるから、運動状態が能動運動と受動運動のいずれであるかを確実に判定でき、正確な活動量を算出できる。
【0056】
なお、本実施形態における加速度検出手段1は、互いに直交する3軸の加速度を検出する加速度センサを利用したものであったが、互いに直交する2軸の加速度を検出する加速度センサを利用するようにしてもよい。また、第1判定値T1を利用しないのであれば、1軸の加速度センサであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態の活動量計のブロック図である。
【図2】同上における説明図である。
【図3】加速度の変動平均と活動量との関係を示すグラフである。
【図4】同上の他例における説明図である。
【図5】自動運動器具の外観図である。
【符号の説明】
【0058】
1 加速度検出手段
2 運動状態判定手段
3 活動量算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着され加速度を検出する加速度検出手段と、使用者の運動状態が、使用者が能動的に行った能動運動と使用者に所定の運動を行わせる自動運動器具により受動的に行われた受動運動のいずれであるかを判定する運動状態判定手段と、運動状態判定手段の判定結果に基づいて加速度検出手段により得られた加速度から活動量を算出する活動量算出手段とを備えていることを特徴とする活動量計。
【請求項2】
自動運動器具は、使用者が乗馬姿勢で着座する座席部と、座席部を重力方向に交差する方向に揺動させる駆動装置とを備え、使用者に乗馬運動を行わせる乗馬運動器具であって、
加速度検出手段は、重力方向の加速度と水平方向の加速度を検出するように構成され、
運動状態判定手段は、前記重力方向の加速度と前記水平方向の加速度との比率を元にして運動状態を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の活動量計。
【請求項3】
自動運動器具は、使用者が乗馬姿勢で着座する座席部と、座席部を重力方向に交差する方向に揺動させる駆動装置とを備え、使用者に乗馬運動を行わせる乗馬運動器具であって、
運動種別判定手段は、加速度検出手段により得られた加速度の周期性を元にして使用者の運動状態を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の活動量計。
【請求項4】
使用者の運動状態を選択する選択手段を備え、
運動種別判定手段は、選択手段の選択結果を元にして運動状態を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の活動量計。
【請求項5】
活動量算出手段は、加速度から活動量を算出する際に使用する演算式を運動状態毎に有し、行動シーン判定手段の判定結果に基づいて使用する演算式を選択するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の活動量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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